title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... ·...

108
Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 調和の重要性( Dissertation_全文 ) Author(s) 堤, 璃水 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2015-05-25 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19169 Right 許諾条件により本文は2016-05-01に公開 Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University

Upload: others

Post on 24-Jan-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間調和の重要性( Dissertation_全文 )

Author(s) 堤, 璃水

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2015-05-25

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k19169

Right 許諾条件により本文は2016-05-01に公開

Type Thesis or Dissertation

Textversion ETD

Kyoto University

Page 2: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

1

両生類の四肢関節再生における

残存部と再生部の組織間調和の重要性

京都大学大学院理学研究科

生物科学専攻生物物理学教室

分子発生学講座

堤 璃水

Page 3: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

2

目次

緒言 ............................................................................................................................................... 3

第一章:イモリ(Cynops pyrrhogaster)の関節再生過程における残存部と再生部の組織間調和 . 18

要旨 ......................................................................................................................................... 19

序論 ......................................................................................................................................... 20

結果 ......................................................................................................................................... 24

考察 ......................................................................................................................................... 36

実験方法と材料 ....................................................................................................................... 44

第二章:組織間調和のメカニズムに基づくカエル(Xenopus laevis)の機能的な関節再生 ........... 50

要旨 ......................................................................................................................................... 51

序論 ......................................................................................................................................... 52

結果 ......................................................................................................................................... 58

考察 ......................................................................................................................................... 70

実験方法と材料 ....................................................................................................................... 78

総括 ............................................................................................................................................. 82

謝辞 ............................................................................................................................................. 86

引用文献 ...................................................................................................................................... 88

Page 4: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

3

緒言

種間の比較による再生原理へのアプローチ

再生とは、「一度失われた生物体の部分が、形の点でもまた機能の点でも、ほぼ元通り

に復元される生命現象」を指す(江口 1980)。一部の生物が見せる驚異的な再生能力は、発

生プログラムが潜在的にいかに可塑的で頑健でありうるかを示す興味深い生命現象である

といえよう。多くの動物種間において再生能力を比較すると、実は比較的近縁な分類群に

あっても、再生能力は様々に異なっていることが知られている(Agata and Inoue 2012)。

近年、再生能力の高い生物に再生のメカニズムを学び、近縁で再生能力の低い動物と比較

することで“再生できない動物を再生できるようにする”ことが行われている(Umesono

et al. 2013)。これらの研究を通して、再生原理のより本質的な理解を得るとともに、ひい

ては再生医療への応用のきっかけを得ることができると期待される。

残存部と再生部の相互作用に基づく二種のプラナリアの再生能力の違い

再生能力の高い動物種としてよく研究されているものに、プラナリアとイモリがあげら

れる。プラナリアのなかでもナミウズムシ(Dugesia japonica)の場合、体を切断される

と、できた断片の数だけ完全な個体として再生することができる。この再生過程ではプラ

ナリアを切断すると、切断部に“再生芽”と呼ばれる白い細胞塊がつくられることが知ら

れている(Brøndsted 1955; Tasaki et al. 2011)。かつては、再生芽に幹細胞が集まって、

その中で自律的に失った部分を再生していると考える説もあった(Kido 1959, 1961)。しか

Page 5: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

4

し、現在は、再生芽の中で細胞はまず失った部分の先端のアイデンティティを速やかに獲

得し(ディスタリゼーションと呼ぶ)、残存部と再生部が相互作用*する中で体の領域を再編

することで体全体を再生することが知られている (インターカレーションと呼ぶ)(Agata et

al. 2003)(Fig. 0-1A)。この仕組みがあるからこそ、切断後プラナリアの体は形態のみなら

ず、元の機能を取り戻すことができるのである(Inoue et al. 2004)。

ナミウズムシと異なり、コガタウズムシ(Phagocata kawakatsui)の場合、体を尾部で切

った場合、頭部を再生することはできない。ところが本研究室では、再生できない原因は

残存部と再生部の相互作用がうまく行われないためではなかと考察し、この相互作用のバ

ランスを RNAi法で調整することで、コガタウズムシにおいて本来再生できなかった頭部

を再生させることに成功している(Umesono et al. 2013)(Fig. 0-1B)。

*本論文では、相互作用を interactionの訳語として、あるものから別のものへの一方向性

の作用も含んで指すものとする。

Page 6: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

5

Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い

(A)ナミウズムシ(Dugesia japonica)は、切断されると、再生芽が頭部の端の位置情報(青

色)を獲得(ディスタリゼーション)し、残存部の尾部の位置情報(淡紅色)との相互作用の中

で体の領域を再編し(インターカレーション)、完全な体を再生する。(B)コガタウズムシ

(Phagocata kawakatsui)は、潜在的にディスタリゼーションは起こしうるが、尾部側のシ

グナルに頭部側のシグナルがかき消され、頭部を再生することができない(上段)。一方、

尾部側の位置情報を担うシグナルを RNAiで抑制することで、再生芽のもつ頭部の位置情

報と残存部のもつ尾部の位置情報の相互作用のバランスを調整すると、ナミウズムシと同

様ディスタリゼーション、インターカレーションが起こり再生できるようになる(下段)。

Page 7: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

6

両生類における四肢再生能力の違い

イモリ(Cynops pyrrhogaster)は、四肢をどの位置で切断されても、関節を含む完全な肢

の構造を再生することができる(Iten and Bryant 1973)。一方、イモリと同じ両生綱に属

するカエル(Xenopus laevis)の成体では、四肢を切断されると元の構造を再生することは

なく、切断された骨の延長上にスパイクと呼ばれる尖頭様の軟骨を形成する(Suzuki et al.

2006)。運動器としての四肢の機能において特に重要な点は、イモリは機能的な関節を再

生できるのに対し、カエルは関節を再生できないことにあるといえる(Fig. 0-2)。

機能的な関節は、向かいあう骨組織同士の形態が相補的に組み合わさっており、その骨

組織同士を靭帯がつなぎとめ、関節の間を滑膜につつまれた滑液が満され、さらに筋肉が

関節をまたいで腱を介して骨組織と結合することでできあがる(Fig. 0-3)。機能的な関節の

形成には、複数の組織の相互作用が重要であると考えられている(Pacifici et al. 2005;

Schweitzer et al. 2010)。

Page 8: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

7

Figure. 0-2 イモリとカエルの再生能力の違い

イモリは、関節を含む完全な肢の構造を再生することができる(上段)。一方、カエルはス

パイクと呼ばれる尖頭様の構造を再生するのみで、関節を再生することができない(下

段)。

Figure 0-3. 複数の組織が構造的に調和して機能的な関節ができる

Page 9: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

8

四肢再生の仕組み

イモリでもカエルでも、肢を切断されると、表皮がすみやか傷口を覆い、傷上皮とよば

れる構造ができる。その後、傷上皮は肥厚して apical epithelial cap(AEC)と呼ばれる構造

をつくる。AECは再生を開始するためのシグナルセンターの一つとなると考えられている

(Christensen and Tassava 2000; Christensen et al. 2002; Yokoyama et al. 2011a)。ただ

し、再生をおこすには AECに由来するシグナルだけでは不十分で、切断によって露出し

た神経から分泌される因子も再生に不可欠であることが知られている(Stocum 2011)。

AECや神経から分泌される因子の中で重要なものは Fgf、Wnt、および Bmp であると考

えられている(Yokoyama et al. 2011b; Makanae et al. 2014b)。AECや神経からのシグナ

ルを受け取ることで、残存部の組織はその分化形質を失って増殖を開始し、再生芽と呼ば

れる細胞集団を形成する(Fig. 0-4)。

イモリの再生芽の中には、筋肉、軟骨、腱など、正常な肢と同等なあらゆる組織をうみ

だすあらゆる細胞が含まれており、これらが四肢の発生過程と同様に Fgf, Shhなどのシグ

ナルを受けながら形態形成を行うと考えられている。一方、カエルの再生芽は軟骨をうみ

だすのみで、筋肉、石灰化した硬骨、腱や靭帯を再生することはなく、そのために正常な

形態形成を行うための相互作用がおこらないと考えられる(Endo et al. 2000; Satoh et al.

2005a; Satoh et al. 2006; Suzuki et al. 2006)。

Page 10: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

9

Figure 0-4. 両生類における四肢切断後の再生芽形成のメカニズム

Page 11: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

10

四肢関節の発生における組織間の相互作用

四肢の発生は、発生の特定の時期に、側板中胚葉に由来する細胞が上皮-間充織転換を経

て体壁の特定の 4か所に集まり、肢芽と呼ばれる半円形の隆起をつくることにはじまる

(Gros and Tabin 2014)。肢芽部分では、体壁を覆う外胚葉が肥厚して、外胚葉性頂堤

(apical ectodermal ridge: AER)と呼ばれる構造に変化し、肢芽の間充織に対しシグナルを

送ることで、肢芽の間充織の増殖が活性化し、肢芽の伸長が進む(ten Berge et al. 2008)。

側板中胚葉由来の間充織細胞はのちに軟骨、腱、靭帯、真皮などを生みだすのに対し、筋

肉細胞は別の系譜に由来しており、肢芽がある程度発生した時期に体節中胚葉に由来する

細胞集団が肢芽に侵入してつくられる(Buckingham et al. 2003)(Fig. 0-5)。

Page 12: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

11

Figure 0-5. 発生期における肢芽の形成のメカニズム

肢芽は、胴体部の背腹の境界が半円形に隆起してできる。肢の軟骨、腱、靭帯、真皮など

は側板中胚葉(緑)、筋肉は体節中胚葉が分かれた筋節(黄色)から、それぞれ肢芽に移動して

作られる。

Page 13: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

12

発生過程において、軟骨の原基は間充織の細胞が Y字型に凝集した形として認められる

ようになり、この時点で Y字の分岐点が肘関節になることがきまる(Hinchliffe and

Johnson 1980)。その後、将来関節になる部分の細胞は中間層細胞に分化し、それ以外の

部分の凝集した間充織細胞は軟骨細胞に分化することで、軟骨凝集塊は関節の部分で区切

れる(Holder 1977; Mitrovic 1978)。関節形成に重要な役割をもつ遺伝子のひとつが、Bmp

ファミリーに属する Gdf5である(Storm et al. 1994; Satoh et al. 2005b; Koyama et al.

2008)。発生過程では、Gdf5は中間層細胞に限局して発現し(Fig. 0-6A)、Gdf5陽性の中間

層細胞は最終的に、滑膜表層、靭帯、関節軟骨など、関節を形成する多くの組織をつくり

だす(Storm et al. 1994; Francis-West et al. 1999; Satoh et al. 2005b; Koyama et al.

2008)。関節の両側の骨格要素で凹凸がうまく組み合わさった形態ができる仕組みについ

てはあまりよくわかっていない。ただ、関節の両側で軟骨細胞分化と細胞分裂が互いを押

し合うように起こるという知見があり、関節を構成する軟骨同士の相互作用が重要な役割

をはたすことが示唆されている(Pacifici et al. 2005)(Fig. 0-6B)。

Page 14: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

13

Figure 0-6. 関節発生のメカニズム

(A)Xenopus laevis幼生ステージ 54の後肢における Gdf5の発現を in situハイブリダイゼ

ーションにより観察したもの。(B)肢芽における関節発生過程。中間層細胞の分化と、それ

により区切られた二つの骨格要素の軟骨分化、細胞分裂により関節の形態が作られる。な

お、この模式図では柱脚と軛脚だけを示しており、自脚の軟骨は省略した。

Page 15: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

14

関節の発生おいて、筋肉、腱、軟骨が機能的に組み合わさることにも、それぞれの組織

の相互作用が重要であることがわかっている。軟骨細胞と腱細胞はいずれも側板中胚葉に

由来しており、同一起源の細胞から分化する(Kardon 1998; Pryce et al. 2009)。bHLHタ

イプの転写因子をコードする Scxは腱の発生に重要な役割をもち、未熟な腱前駆細胞か

ら、成熟した腱細胞に至るまで腱(および靭帯)の系列の細胞のマーカーとなる(Cserjesi et

al. 1995; Schweitzer et al. 2001; Satoh et al. 2006)。Scx発現細胞ははじめに背側と腹側

の外肺葉の下で観察される(Schweitzer et al. 2001; Satoh et al. 2006; Murchison et al.

2007)(Fig. 0-7A)。ニワトリでは、外胚葉が肢芽の間充織で Fgf/Mapkシグナルを活性化さ

せることによって Scxの発現を誘導することが示されている(Schweitzer et al. 2001)。さ

らに、筋肉と軟骨からの Tgf-βシグナルや Fgfシグナルの活性化をうけて腱前駆細胞はさ

らに誘導され、集合していく(Edom-Vovard et al. 2002; Eloy-Trinquet et al. 2009; Pryce

et al. 2009; Havis et al. 2014)(Fig. 0-7B)。その結果、腱の分化は筋肉と軟骨の間だけで進

んでいく。腱前駆細胞から腱細胞への分化の過程で、Scxは腱の発生に関連する I型コラ

ーゲンαI鎖や、tenomodulinなどの遺伝子の発現を促す(Shukunami et al. 2006; Léjard

et al. 2007)。成熟した腱の中では、腱細胞はコラーゲンやスモールロイシンリッチプロテ

オグリカンといった ECMを大量に分泌することで、自身は腱組織の内部に埋まっている

(Yang et al. 2013)。しかも、Ggf5も腱の分化を制御する働きがある(Wolfman et al. 1997;

Page 16: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

15

Mikic et al. 2001)。このように、腱の分化が筋肉と軟骨に大きく依存していることで、筋

肉、腱、軟骨は機能的に組み合わさることができる。

Figure 0-7 腱の発生のメカニズム

Page 17: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

16

残存部と再生部の組織の調和に着目した本研究の位置づけ

私は再生部を含む肢が機能的な四肢として再生するためには、再生部のなかで起こる相

互作用だけではなく、プラナリアに見られるように残存部と再生部の相互作用にもとづく

組織間調和が重要であると考えた。イモリの再生では、再生芽ははじめに失われた部分の

肢のミニチュア構造を再生し、その部分が次第に大きくなって元の形にもどる(Iten and

Bryant 1973)。これはおそらく、発生期の肢芽のパターン形成に用いられる分子勾配は、

分子の拡散などの物理法則に依存しており、再生時に同様のメカニズムを流用するために

は大きさに限界があるためだと推測できる。驚くべきことに、再生部がまだミニチュアの

段階にあっても、残存部と再生部の組織の間で大きさが異なるにも関わらず、再生肢を動

かすことができる。すなわち、大きな残存部と、小さな再生部の間で、大きさのギャップ

を埋めて機能的な関節を作る道のメカニズムが存在することになり、私はこの点に興味を

もって研究を進めた。

第一章では、イモリの前肢を関節で切断した場合に大きさの異なる残存部と再生部が機

能的な関節を再生する過程を、三次元的な組織学的な観察をすることで、残存部と再生部

との組織間での相互作用について考察した。第二章では、第一章のイモリの関節再生で得

た知見をもとに、残存部と再生部の相互作用に基づく組織の調和を意図的に惹起すること

で、本来関節を再生できないカエルにおいても、機能的な関節を再生させることに成功し

たことを報告する。

Page 18: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

17

本研究は、四肢の機能的な形態の再生における、残存部と再生部の組織が調和するメカ

ニズムの重要性を示すとともに、再生医療の実現に向けてこれまでになかった発想を提起

するものである。

本論の内容に入る前に、四肢の構造を理解するための解剖学的な情報をまとめた。ま

ず、肢はそれぞれ関節によって区切られた 3つの部位にわけることができる。体壁と接す

る最も基部側の部位を柱脚、肘/膝関節から手首/足首関節までの中間部位を軛脚、最も先

端側の部位を自脚と呼ぶ。イモリの前肢の場合、柱脚の骨を上腕骨という。軛脚は二本の

骨からなり、親指側を橈骨、小指側を尺骨という。カエルの場合も基本的には同様である

が、軛脚の橈骨、尺骨は癒合して一本になっており、橈尺骨とよぶ。また、哺乳類と異な

り、尺骨の延長上に、後肢の膝蓋骨にあたる種子骨が認められる(Fig. 0-8)。

Figure 0-8. イモリ、カエル前肢の解剖学用語

解説

Page 19: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

18

第一章

イモリ(Cynops pyrrhogaster)の関節再生過程における

残存部と再生部の組織の調和

Page 20: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

19

要旨

イモリをはじめとする有尾両生類は、四肢をどこで切断しても関節を含む機能的な構造を

再生することができる高い再生能力をもつ。四肢再生過程では、ひとたび基部-先端軸が特

定化されると、そのあとは再生芽が残存部とは独立して自律的に形態形成を行うことがで

きると考えられてきた。しかし、再生した肢が全体として機能的であるために、残存部と

再生部の組織は構造(大きさや形)をうまく調和するメカニズムがあるはずである。二つの

骨格要素が機能的に組み合わさった関節は、特に組織構造の調和が重要となる部位である

と考え、本研究では再生過程における組織の調和のメカニズムを解析するモデルとして、

イモリの関節再生をモデルとした。四肢を切断すると、はじめに失った部分のミニチュア

が再生し、その後再生部は成長していく。一方、前肢を肘関節で切断した場合、関節は残

存部と再生部の組織との間で再生する。私は、切断後ミニチュアとして再生した軟骨は、

残存部の骨の大きさに合わせて相互に組み合わさった関節構造をつくるため、関節の周り

では太くなっていることを見出した。さらに、再生の過程で残存部の関節の ECMが消失

していることを見出し、残存部の組織が再生部の形態形成に影響を与えている可能性を示

唆する結果を得た。本研究の結果は、残存部と再生部の骨格要素の大きさが関節の部分で

合うことで、機能的な構造の調和が実現されることを示している。

Page 21: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

20

序論

イモリをはじめとする有尾両生類は驚異的な再生能力を持ち、四肢のどの位置で切っても

機能的な肢を再生することができる(Bryant et al. 2002)。肢を切断すると、切断面に再生芽

と呼ばれる未分化細胞の集団が形成される。再生芽は、発生過程における肢芽とほぼ共通の

分子メカニズムを使って四肢を再生することが知られている(Gardiner et al. 2002; Endo et

al. 2004; Stoick-Cooper et al. 2007; Nacu and Tanaka 2011)。

再生過程では、切断された位置によって基部側から位置情報を与えられ、どの部位を再生

するかが決まるが、一旦基部-先端軸が決まると、前肢の再生芽を後肢の切断面や背ビレな

ど、体の別の場所に移植しても、再生芽は移植先で前肢の構造をつくる(Pietsch 1961;

Stocum 1968; Stocum and Melton 1977; Maden 1982, 1983) 。このことから、再生芽は、

基部-先端軸が決定されたあとはもはや残存部の影響を受けることなく、切断されたところ

から先の構造を、関節を含めて完全な形を自律的に再生することができると考えられてき

た。

スムーズに動く機能的な関節の形成には、二つ以上の骨の間で骨組織の凹凸が厳密に組

み合わさった関節の構造になる必要がある。ヒトでも、股関節の形成異常によって関節の凹

凸の組み合わせが悪いと、胎児期、成長期、成人後にいたるまで様々な段階で骨関節炎を引

き起こすことが知られている(Baker-LePain and Lane 2010)。関節の前後の骨組織の凹凸

が厳密に組み合わさった形態になる仕組みに関して、指の関節形成過程において、基部側の

骨格要素は中心部が局所的に成長し、先端部側の骨格要素は辺縁部で細胞分裂が盛んに起

Page 22: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

21

こり、これらが向き合った方向に起こることで協調的な形態形成が可能になることを示唆

する報告がある(Fig. 0-6B参照)(Pacifici et al. 2005)。また、Hox11変異マウスでは軛脚の

骨格要素の形態が異常になるが、このときでも正常な形態の柱脚と異常な形態になった軛

脚との間には機能的に組み合わさった関節ができることが知られている(Koyama et al.

2010)。これらの知見は、関節の形態はあらかじめ決まっているのではなく、関節の前後の

軟骨組織の相互作用によって可塑的につくられるということを示唆している。

再生過程において、再生芽は残存部の組織に影響がなくても肢の形態をつくることがで

きることは先に述べたが、再生後の肢が全体として機能的になるためには、再生した組織と

残存部の組織が構造的に調和する仕組みが必ずあるはずである(Carlson 2007; McCusker

and Gardiner 2014)。しかし、多くの場合、再生した組織と残存部の組織とが連続的な構造

になっているために、その仕組みの存在が認識されていない可能性が高い。そこで、私は関

節の再生に着目することにした。機能的な関節形成には基部側と先端側の骨格要素が構造

的に調和する必要があることから、関節の基部を残すような切断をすれば、再生した組織と

残存部の組織が調和する仕組みを解明するための解析系ができるのではないかと考え、ア

カハライモリ(Cynops pyrrhogaster)を用いた関節の再生実験系の開発を試みた。本研究で

は、イモリの肢を以下に述べる 3 つの方法で切断した後、再生してきた軟骨の形態を比較

した。(1) 前肢を肘関節で切断した後、柱脚の他の組織(皮膚、筋肉、腱等)を残したまま上

腕骨を切断し、除去した(Fig. 1-1A)。この場合、上腕骨は完全には再生しないで、橈骨、尺

Page 23: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

22

骨が上腕骨と不連続な状態で再生することが期待される(Bischler 1926)。(2) 前肢を柱脚で

切断した(Fig. 1-1B)。(3) 前肢を肘関節で切断した(Fig. 1-1C)。この場合、残存部に残した

柱脚の骨と連結して軛脚の骨が再生すると期待される。

Figure 1-1. 切断方法

(A)肘関節と上腕骨の切断実験。前肢を肘関節よりわずかに先端側で切断し、残った橈骨と

尺骨を完全に取り除いた。さらに、上腕骨をその中央部で切断した。(B)柱脚での切断実験。

前肢を柱脚の中央部で切断し、突出した上腕骨を再び切断してトリミングを行った。(C)肘

関節での切断実験。前肢を肘関節よりわずかに先端側で切断し、残った橈骨と尺骨を完全に

取り除いた。

Page 24: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

23

私は、組織の形態を定量的に評価するため、組織の厳密な三次元画像を得ようと考えた。

しかし、切断後、再生途中の肢では、残存部の骨格要素は石灰化した骨であるのに対し、再

生した骨格要素は軟骨でできており、このような硬組織と軟組織を両方含んだ組織の形態

を三次元的に観察することはマイクロ CT や MRI, 超音波撮影装置等を用いた方法では困

難であった。そこで、私は京都大学医学研究科山田重人教授との共同研究で、EFIC(episcopic

fluorescence image capturing)と呼ばれる技術を用いて再生したイモリ肢の三次元画像を

得た(Weninger and Mohun 2002; Rosenthal et al. 2004; Tsuchiya and Yamada 2014)。

EFICとは、ミクロトームと顕微鏡を組み合わせた装置であり、パラフィンブロックに包埋

した組織を、ミクロトームで自動的に薄切していきながら、ブロックの表面に露出した組織

の自家蛍光を CCDカメラ(charge-coupled device)で検出することで、Z軸方向に一定間隔

おきに歪みのない組織像を取得する手法である。取得した画像は、それぞれ XY軸方向には

同じ視野で撮影されているため、三次元画像として擬似的に再構築が可能である。また、薄

切した切片は回収可能であり、その後組織染色を行って組織の種類を同定することもでき

る。この手法を用いることで、イモリ前肢の再生過程における組織形態の調和という現象を

定量的に記述することが可能になった。本研究の結果は、両生類の四肢再生において、組織

が相互作用しながら形態を調和させるしくみの解明に寄与すると期待できる。

Page 25: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

24

結果

再生芽はどこまで自律的に形態を再生できるか

まず、再生芽が自律的に肢の形態を再生できるという過去の知見を確かめるため、イモリ

前肢を肘関節で切断した上で、柱脚の筋肉や腱など骨組織以外を残して上腕骨だけを切断

した。(Fig. 1-1A)。その結果、Bischlerが報告したように(Bischler 1926)、柱脚は完全には

再生せず、軛脚と自脚が上腕骨と不連続に再生した(Fig. 1-2A, B)。尺骨と橈骨が上腕骨の

肘関節がない状態でも再生できたという結果は、再生芽は、基部側の残存部に依存すること

なく失った組織の構造を自律的に再生できることを示唆した。ところが、興味深いことに、

骨染色や EFIC による三次元画像を用いた詳細な観察をすると、再生した軛脚の骨格要素

(尺骨と橈骨)は完全な形態をもつわけではないことを見出した。特に、再生した軛脚の骨格

要素の基部側には関節の形態が形成されておらず、尖頭様の構造が観察された(Fig. 1-2A-

C)。この観察結果は、過去の報告にあるように再生芽はほぼ自律的に元の構造を構築できる

ものの、関節の形態の再生は、関節の基部側と先端側の骨格要素の相互作用に依存している

可能性を示唆している。

Page 26: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

25

Figure 1-2. 残存部の上腕骨との相互作用を受けずに再生した場合の橈骨及び尺骨の形態

(A)肘関節と上腕骨の切断ののちに再生した前肢の骨組織を EFIC で撮影した三次元画像。

残存部の組織を淡紅色、再生した組織を青で色づけした。(B)肘関節と上腕骨の切断ののち

に再生した骨格要素の透明骨格標本。硬骨はマゼンタ、軟骨は青で染色されている。橈骨と

尺骨は残存部の上腕骨との相互作用を受けずに再生しており、この場合、橈骨と尺骨の肘関

節部の構造は不完全で、尖頭様の形に再生している(矢頭)。(C)再生した骨格形態の模式図。

Page 27: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

26

柱脚や肘関節でイモリ前肢を切断すると、機能的な関節が再生する

再生芽が失われた組織を再生する過程において、残存部と再生部の相互作用の役割を検

討するため、イモリ前肢を上腕の中央(Fig. 1-1B)と肘関節(Fig. 1-1C)という 2通りの部位で

切断したのち、70 日後に再生した肘関節を詳細に観察することにした。再生した肘関節が

機能的なものであるかを検討するため、イモリに穴を通らせたときの肘関節の動きを観察

した。対照実験として正常個体に穴を通らせた場合、肘関節の曲げ伸ばし運動を動画及び連

続写真で観察することができた(Fig. 1-3A, A’, A’’ 黄色矢頭)。上腕の中央で切断した再生個

体に穴を通らせた場合でも、再生した肘関節は正常個体の肘と同様に滑らかな曲げ伸ばし

運動を示した(Fig. 1-3B, B’, B’’, 黄色矢頭)。この結果は、上腕の中央で切断した場合、少な

くとも 70日でイモリは機能的な肘関節を再生したことを示している。

さらに、上腕を肘関節の部分で切断して 70日後の再生個体に穴を通らせた場合も、再生

した肘関節の曲げ伸ばし運動を観察し、機能的な関節再生を認めることができた(Fig. 1-3C,

C’, C’’, 黄色矢頭)。再生した軛脚と自脚は大きさが切断前のものより小さい(Fig. 1-3A’’と C’’

の括弧を比較のこと)にも関わらず、大きな残存部の柱脚との間に機能的な肘関節を再生し

たという結果は、残存した柱脚と再生した軛脚が調和する仕組みがあることを示唆してい

る。

Page 28: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

27

Figure 1-3. 柱脚または肘関節で切断した場合の肘関節の動き

(A, A’, A’’)正常個体の肘関節の曲げ伸ばし運動。黄色矢頭は肘関節の位置を示す。(B, B’, B’’)

柱脚で切断 70日後に再生した肘関節の曲げ伸ばし運動。(C, C’, C’’)肘関節で切断後 70日後

に再生した肘関節の曲げ伸ばし運動。切断 70日後で、再生した軛脚と自脚は切断前の軛脚、

自脚と比べて大きさが小さい(括弧)。

Page 29: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

28

再生した軟骨は大きさの異なる残存部の組織と調和している

正常個体と、先に述べた二つの切り方をした場合の再生個体において、再生した肘関節の

骨格の構造を観察するため、アルシアンブルーとアリザリンレッドを用いて透明骨格標本

を作製した。正常個体の肢では、長骨の骨幹部の硬骨はアリザリンレッド、軟骨はアルシア

ンブルーで染色された(Fig. 1-4A)。柱脚の中央部で切断して 70日後の前肢では、再生部の

大きさが正常個体の同一部位に比べ小さかった(Fig. 1-4A, B)。この場合、肘関節はいずれ

も大きさの小さい再生部の柱脚の軛脚の間につくられることになるため、肘関節をつくる

二つの骨格要素の間に大きさの不一致はないと考えられる。一方、肘関節で切断後 70日後

の前肢においては、肘関節は大きな残存部の柱脚と小さな再生部の軛脚という大きさの異

なる二つの骨格要素の間に再生していた(Fig. 1-4C)。この結果は、イモリは大きさの異なる

残存部と再生部の組織を調和させて機能的な関節を再生する能力があることを示している。

Page 30: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

29

Figure 1-4. 再生した前肢の骨格構造

(A)正常個体の前肢、(B)柱脚で切断 70 日後に再生した前肢、(C)肘関節で切断 70 日後に再

生した前肢の透明骨格標本。硬骨はマゼンタ、軟骨は青で染色されている。白矢頭は切断し

た位置、黒矢頭は肘関節の位置を示している。

Page 31: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

30

正常個体及び再生個体の前肢組織の形態の三次元画像の取得と定量化

残存部の組織と再生部の組織が調和する仕組みを解析するため、EFICを用いて正常個体

及び再生個体の三次元画像を取得することで、前肢組織の大きさを正確に測定し、形態を定

量化することを試みた。EFICで取得したすべての二次元画像について、コンピュータ上で

組織染色の画像を適宜参考にしつつ残存部の骨組織(硬骨及び軟骨)を淡紅色、再生部の骨組

織(軟骨)を青に色付けした(Fig. 1-5)。

こうして得た二次元画像を三次元再構築することで、正常個体の前肢(Fig. 1-6A)、柱脚の中

央部で切断して 70 日後の再生前肢(Fig. 1-6B)、肘関節で切断して 70 日後の再生前肢(Fig.

1-6C)の三次元画像を得た。この方法で得られた三次元画像を用いて、正常個体の前肢、柱

脚の中央部で切断して 70 日後の再生前肢、肘関節で切断して 70 日後の再生前肢のそれぞ

れにおいて、橈骨の体積と、橈骨の肘関節部の表面積(Fig. 1-6D,E,Fの黄色く塗った面の面

積)を測定した。

Figure 1-5. EFIC画像の色づけ

(A)EFICで実際に得られる画像。標本組織の自家蛍光が検出される。 (B)EFIC 撮影時に

回収した切片をエラスチカ・ワン・ギーソン染色した像。EFICで撮影した画像の中で各

組織の種類を同定するため、EFICのミクロトームで薄切した組織切片を組織染色した。

(C)EFICで得られた画像を色づけしたもの。染色像を参考にして、画像中の残存部の骨組

織(硬骨と軟骨)を淡紅色、再生した骨組織(軟骨)を青色でそれぞれ色付けし、肘関節面を黄

色の線でなぞった。

Page 32: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

31

Figure 1-6. EFICで撮影した骨組織の三次元再構築画像

(A)正常個体の前肢、(B)柱脚で切断 70 日後に再生した前肢、(C)肘関節で切断 70 日後に再

生した前肢の骨格要素を EFICで撮影し、三次元再構築した画像。残存部の組織を淡紅色、

再生した組織を青で色づけしている。 (D)正常個体の橈骨、(E)柱脚で切断 70日後に再生し

た橈骨、(F)肘関節で切断 70日後に再生した橈骨の三次元画像。これら画像をもとに、橈骨

の体積と肘関節の表面積(D-Eにおいて黄色で色づけした部分の面積)を定量した。

Page 33: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

32

再生した橈骨の軟骨は、残存部と再生部の境界で太くなっていた

私は、作業仮説として、再生した組織の構造は、単に再生部の中で自律的に形成されるの

ではなく、切断部の周囲では残存部の組織の形態に影響をうけて可塑的に変化することで、

再生部と残存部が調和することができると考えた。この可能性を検討するため、まず前提と

して、再生部の中で、切断部から遠い部分の構造は自律的に形態形成が起こり、正常個体の

同一部位とほぼ相似形となるかどうかを検討した。再生部の軟骨の形態が正常個体の同一

部位の骨組織とほぼ相似形であるなら、これらの体積の三乗根と、それぞれにおいて対応す

る部位の表面積の二乗根の比率が等しくなるはずである。

柱脚の中央部で切断して 70日後の前肢において再生した橈骨の肘関節部の表面積と、橈骨

全体の体積を測定すると(Fig. 1-7A, 青色三角)、肘関節部の体積の三乗根(√𝑉3

)と表面積の二

乗根 (√S j)の比率がほぼ一定 (同一直線上にプロットされる )であることがわかった

(R2=0.976)。しかも、正常個体前肢の橈骨において、橈骨全体の体積と肘関節部の表面積を

測定したところ、正常個体の橈骨における (Fig. 1-7A, 橙色四角)は、柱脚で切断したのち

の再生個体の橈骨における比率とほぼ等しいことがわかった(R2=0.997)。この結果は、再生

した橈骨は正常個体の橈骨と相似形をなしており、切断部から遠いところで再生した橈骨

の形態は、再生部の中で自律的に決まっているという仮説を支持するものであった。

一方、肘関節で切断して 70日後の前肢橈骨における√𝑉3と√Sjをグラフ上にプロットする

と(Fig. 1-7A, 赤色菱形)、プロットされた点は、柱脚で切断した標本の点や正常個体の標本

Page 34: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

33

の点をもとに描いた回帰直線上に乗らないことがわかった(Fig. 1-7A)。次に、橈骨全体の体

積の三乗根に対する橈骨の肘関節部の表面積の二乗根の比率(√Sj /√𝑉3

)を計算してグラフを

作成した(Fig. 1-7B)。グラフから、肘関節で切断した場合の再生橈骨の√Sj /√𝑉3の値は、柱

脚の中央で切断した場合や正常個体の橈骨における値に比べて優位に高いことがわかった

(それぞれWilcoxon-Mann-Whitney U testによる検定で P=0.014、P=0.025)。この結果は、

肘関節で切断した場合、再生した橈骨は肘関節部で相対的に太くなっていることを意味し

ており、残存部と再生部の境界周辺においては、残存部の組織の形態が再生した軟骨の形態

に影響を与えていることを示唆している。

Figure 1-7. 再生した肘関節の形態測

(A) 橈骨の体積の三乗根(√𝑉3

:x軸)と、

肘関節の表面積の二乗根(√Sj:y 軸)を

プロットした散布図。橙色四角は正常

個体の橈骨、青色三角は柱脚で切断70

日後の再生した橈骨、赤色菱形は肘関

節で切断 70 日後の再生した橈骨を示

す。点線は正常個体と柱脚で切断 70

日後の再生個体での橈骨の点をもと

に描いた回帰直線を示す。(B) √Sj と

√𝑉3の比率を示すグラフ。肘関節で切

断後 70 日で再生した橈骨は、正常個

体の橈骨や柱脚で切断後 70 日で再生

した橈骨に比べ、有意に肘関節部が太

く なって いる (p<0.05, Wilcoxon-

Mann-Whitney test)。

Page 35: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

34

肘関節で切断した場合、再生過程で残存部の関節の ECMの組成が変化している

再生した組織が残存部の組織の形態の情報を受け取る仕組みについての手がかりを得る

ため、再生過程の前肢の組織切片を作製し、エラスチカ・ワン・ギーソン染色を行った。エ

ラスチカ・ワン・ギーソン染色では、軟骨の弾性繊維を紫、筋肉や腱の膠原繊維を赤、筋肉

を黄色、核を黒に染める。まず、切断前の関節は、弾性繊維の紫色で強く染色された(Fig. 1-

8A)。肘関節で切断後 10 日後では、切断面は傷上皮で完全に覆われていたが、未だ再生芽

は形成されていなかった(Fig. 1-8B)。このとき、残存部の関節の染色に目立った変化はみら

れなかった(Fig. 1-8B)。一方、切断後 50日後では再生芽細胞は軟骨への分化をはじめてい

る様子が確認でき、切断後 60日後では再生部の中に再生した軟骨組織が確認できた(Fig. 1-

8C, D)。このとき、残存部の関節の弾性繊維の染色が失われている様子が観察された(Fig.

1-8C,D, 矢頭)。この観察は、残存部の関節組織の組成が再生過程で変化していることを示

唆している。

Page 36: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

35

Figure 1-8. 肘関節で切断後の再生過程

(A)切断前、(B)肘関節で切断 10日後、(C)切断 50日後、(D)切断 70日後の組織切片をエラ

スチカ・ワン・ギーソン染色で染色した。軟骨の弾性繊維は紫、硬骨と腱の膠原繊維は

赤、筋肉は黄色、核は黒で染色されている。切断 50日後、および 70日後において、膠原

繊維のシグナルは消失している(矢頭)。

Page 37: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

36

考察

関節再生における組織の調和のメカニズムの重要性

本研究により、前肢を柱脚の中央部で切断した場合、再生した肘関節の形態は切断前の肘

の形態と相似形をなしていることが示された。近年、有尾両生類の四肢における関節の再生

は、発生過程での関節形成と同様のメカニズムを経ておこることが報告された(Lee and

Gardiner 2012)。この知見を考慮すると、本研究において切断面からある程度離れた場所で

肘関節を再生させた実験では、肘関節は四肢の発生過程における関節形成と同様の方法で

形成され、その後肘関節は、生後の成長過程と同様に各骨格要素の形をほぼ保って相似拡大

していったと考えられる(Fig. 1-9A)。

一方、前肢を肘関節で切断し、上腕骨をそのまま残して再生させると、再生した橈骨は正

常個体の橈骨の形に比べて、肘関節が相対的に大きくなっていた(Fig. 1-7A, B)。この結果

は、残存部と再生部の骨格要素の間で肘関節が再生する場合、再生した骨格要素の形態(大

きさ)は、残存部の関節の大きさに影響をうけたということを示唆している(Fig. 1-9B)。こ

のことは、イモリの四肢再生過程では残存部と再生部の組織が調和するメカニズムがあり、

このメカニズムにおいて再生中の組織は何らかの方法で残存部の組織の形態の情報を受け

取って、その情報をもとに調和をはかっているという考えを支持するものである。さらに、

本研究では肘関節で切断したのちの関節再生過程を観察することによって、残存部と再生

部の調和を明確に示すことができたが、私は残存部と再生部の組織の調和するメカニズム

は、肢をどこで切断して再生させた場合でも同様にして働いていると考えている。そのため、

Page 38: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

37

本研究は関節で切断して再生を観察することで、組織形態の調和という現象を定量的に記

述し、組織の調和のメカニズムを解析するためのモデル系を提唱したという意義がある。

Figure 1-9. 残存部と再生部の組織の調和の模式図

(A)柱脚で切断後、肘関節は橈骨における√Sjと √𝑉3の比率を保ちながら、正常な肘関節のミ

ニチュアとして再生する。このとき、発生過程や生後と同様の過程を経て再生し、成長する

ものと考えられる。(B)肘関節で切断後、再生した軟骨は肘関節の周囲で太くなっており、

残存部の上腕骨の大きさの影響を受けて形態を可塑的に変化させるメカニズムを介して再

生したことを示唆している。

Page 39: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

38

組織の調和には再生芽非依存的な再生システムが働いているのではないか

近年、過剰肢付加モデル(accessory limb model: ALM)を用いた実験により、有尾両生類

の四肢再生が二つのシステムによってなされていることが提唱された。過剰肢付加モデル

とは有尾両生類において、柱脚の側面の皮膚をはがし、肢の神経を切断した上で神経の断面

を傷口に露出し、さらに露出した部分の反対側の皮膚を傷口にのせることで、肢の側面に異

所的に再生芽形成を誘導し過剰肢形成を起こさせるという実験系で、3つの限定的な条件を

与えることで四肢再生と同等の過程を誘導できるモデルとして研究に用いられている(Fig.

1-10A)(Endo et al. 2004)。通常の方法で過剰肢を形成させた場合、形成された肢の骨格要

素はもとあった肢の骨格とは不連続に、軟組織の上に形成される。一方、通常の ALMの手

技に加え、もとあった肢の骨を傷つけると、形成された骨格要素はもと元の骨格につながっ

た形で形成される(Satoh et al. 2010b)。このことから、有尾両生類の再生は、再生芽が発生

プログラムを踏襲することで、切断によって失われた先端側の構造を付加的に再生する再

生芽依存的な再生システムとともに、それとは別に付加的に再生した組織と残存部の組織

をつなぐ再生芽非依存的な再生システムが協調的にはたらいて実現されると考えられる

(Makanae et al. 2014a)。この再生芽非依存的な再生システムは、有尾両生類の肢の内部で

骨の一部を切り取って取り除いた場合にも見ることができる(Fig. 1-10B)(Goss 1969;

Hutchison et al. 2007; Satoh et al. 2010a)。この手技を行うと、取り除かれてできた骨の

間隙が特定の大きさ(critical size)より小さい場合、間隙は両側の骨が伸長することで埋めら

Page 40: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

39

れる。しかもこのとき、取り除いた骨が関節の片側を含む場合、関節を内部に再生すること

もできる(Lee and Gardiner 2012)。以上のことから、再生芽非依存的な再生システムは基

部-先端軸に沿った組織のインターカレーションに基づいておこるものであると考えられ、

さらに残存した関節と再生した関節の調和はこの再生システムによっておこるのではない

かと考えられる(McCusker and Gardiner 2014)。

Figure 1-10. 再生芽非依存的

再生システムの存在を示す実

(A)過剰肢付加モデル (ALM)

は、まず肢の柱脚の前側の皮

膚を剥離し、肢の神経を切っ

て皮膚を剥離した部分に露出

させ、さらに反対側の肢の後

側からとった皮膚を、剥離し

た部分にのせることで、そこ

から過剰肢が形成されるとい

うモデルである。このとき、元

の骨に傷をつけないと、元の

骨格とは不連続に軛脚、自脚

が形成され(上段)、骨に傷をつ

けると元の骨格と過剰肢の柱

脚が繋がった形で過剰肢形成

がおこる。

(B)肢の内部から、骨の骨幹部

を取り除くと、取り除かれた

部分の長さが一定より短けれ

ば、その間隙を埋めるように

骨の再生がおこる。

Page 41: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

40

組織の調和はどのような細胞・分子メカニズムでおこるのか?

本研究でもイモリ前肢を肘関節で切断したのち、残存した上腕骨の関節の弾性繊維のシ

グナルの消失として確認できたように(Fig. 1-8)、有尾両生類の肢を切断するとマトリック

スメタロプロテアーゼが発現し、ECMの分解、再構成、残存部の細胞の脱分化がおこるこ

とが知られている (Yang and Byant 1994; Yang et al. 1999; Vinarsky et al. 2005;

Stevenson et al. 2006; Satoh et al. 2011)。脱分化した細胞によってつくられる再生芽の細

胞は、由来する細胞の位置情報を一旦失って、基部側の細胞と位置情報を連続させる

(McCusker and Gardiner 2013)。原則的には再生芽の細胞は、由来する細胞より先端側の

肢の組織をつくるのに寄与するといわれているが、少なくとも筋肉細胞においては、由来す

る細胞よりも基部側の組織にも入り込むという報告がある(McCusker and Gardiner 2013;

Nacu et al. 2013)。これらのことから、残存部と再生芽の間には明確な境界はなく、残存部

の組織と再生した組織が混在する中間的な領域があるはずだと考えられ、この中間的な領

域でおこっている現象に着目することが、残存部と再生部の調和のメカニズムを理解する

のに重要なのだろう。

組織の調和のメカニズムのひとつとして、残存部の組織の大きさによって、脱分化した細

胞の増殖や誘引を促す増殖因子の量が異なるという可能性が考えられる。本研究では、再生

過程で残存部の関節の ECM に変化が見られたことを示した(Fig. 1-8)。関節軟骨において

軟骨細胞の周りを囲う ECMは、軟骨組織の力学特性を決めているだけでなく、ECMとシ

Page 42: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

41

グナル分子が結合して細胞がうけとるシグナル分子の量や局在を制御したり、ECM-細胞間

相互作用によってインテグリンを介したシグナル伝達を制御したりすることで、軟骨細胞

の細胞特性を決める働きもある(García-Carvajal et al. 2013; Loeser 2014)。そのため、再

生過程では、残存部の組織の ECMの組成が変化することで、残存部の組織のシグナル分子

の局在が変化し、それによって再生芽の細胞の細胞分裂や誘引、分化が制御されているのか

もしれない。また、イモリの顎の再生過程では、残存部の細胞の特定の遺伝子発現が切断に

よる刺激を受けて活性化していることも報告もあり(Kurosaka et al. 2008)、ECMの変化に

よって残存部の細胞が活性化され、再生部の形態形成に寄与するシグナルを送っているの

かもしれない。

また別の可能性として、肘関節で切断した場合、残存部の上腕骨の関節がより多くの細胞

を供給することで、柱脚で切断して肘関節が再生する場合に比べより多くの細胞が再生部

の肘関節を構成するのに寄与するというものも考えられる。発生過程では、関節をつくる軟

骨細胞は、長骨の中央部をつくる軟骨細胞とは異なる集団に由来することがわかっている

(Koyama et al. 2008; Blitz et al. 2013; Sugimoto et al. 2013)。しかし、私はこの可能性は

あまり高くないのではないかと考えている。なぜなら、再生過程では再生した軟骨細胞の由

来は残存部の軟骨だけに限定されているわけではなく、真皮の細胞も分化転換を経て軟骨

の細胞に寄与できることが知られているためである(Kragl et al. 2009)。

さらに、再生中の関節が残存部と調和した形態形成を行うためには、残存部の関節との物

Page 43: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

42

理的な接触により、残存部の形態が再生した関節の型となっている可能性や、肘の曲げ伸ば

し運動による力学的な作用を受けることが重要である可能性も考えられる。マウスやニワ

トリでは、発生期の筋肉収縮が関節の正常な形態形成に必要であるという報告もある(Kahn

et al. 2009; Roddy et al. 2011)。近年、イモリにおける分子生物学的実験手法の開発が劇的

に進められており、トラスジェニック技術やゲノム編集技術を利用できるようになってき

た(Inoue et al. 2012; Hayashi, Toshinori et al. 2014)。今後は、残存部と再生部の調和の分

子、細胞メカニズムを解明していきたい。

再生能力の低い動物に関節を再生させることはできるか?

再生生物学の大きな目標の一つは、再生能力の低い動物を再生できるようにすることで

ある(Agata and Inoue 2012)。有尾両生類は高い四肢再生能をもつのに対し、哺乳類は指先

の第一関節から先端を切断された場合しか再生させることができない(Muneoka et al.

2008)。Xenopusのような無尾両生類も再生研究によく用いられているが、Xenopusの場合

四肢再生能力は不完全で、切断されると、再生芽ができたあと完全に元の形を再生すること

はできず、切断面の延長上にスパイクと呼ばれる一本の尖頭様の軟骨が再生する(Goode

1967; Suzuki et al. 2006)。そして、スパイクの中に関節が再生することはない。従って、

Xenopus の四肢再生能力は有尾両生類と哺乳類の中間に位置づけられる再生モデルとして

研究されている。Xenopusのスパイク形成過程では、再生芽の中で ShhやHoxといった四

Page 44: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

43

肢の形態形成に必要な遺伝子が適切に発現しないことが知られており、そのために

Xenopus の再生芽が、発生期の肢芽のもつ自律的な形態形成システムを再現できないのだ

と考えられている(Endo et al. 2000; Yakushiji et al. 2007; Ohgo et al. 2010)。それに対し

て、本研究での発見は非自律的で残存部との相互作用に依存した再生システムが存在し、そ

れが関節形成に重要な影響を与えることを示唆しており、この再生システムを利用するこ

とで、再生能力の低い動物での再生を誘導できるかもしれないと期待できる。この可能性に

ついて、第二章で検証した。

Page 45: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

44

実験方法と材料

実験動物

本研究では、滋賀県で採集したアカハライモリ Cynops pyrrhogaster の成体を用いた。

実験動物は 19℃に保ったフィルター処理水を飼育水としてプラスチック製の飼育容器の中

で飼育し、一週間に一度餌を与えた。すべての実験は、京都大学動物実験委員会の定める指

針に基づいて行った。

前肢の切断

切断を行う前に、終濃度 0.2%の 3-アミノ安息香酸エチルメタンスルホン酸塩(トリカイ

ン)(Sigma-Aldrich Co. LLC., St. Louis, MO )を飼育水に加え、飼育動物を 10分間その中

に入れておくことで麻酔をかけた。

肘関節および上腕骨の切断実験では、前肢を肘関節よりわずかに先端側で切断し、残った

尺骨と橈骨をピンセットで完全に取り除いた。さらに、柱脚の筋肉や結合組織を上腕骨から

引きはがし、上腕骨をその中央部で切断した(Fig. 1-1A)。

柱脚での切断実験では、前肢を柱脚の中央部で切断し、残った筋肉の収縮によって切断面

から突出した上腕骨を再び切断することで切断面を平らにした(Fig. 1-1B)。

関節での切断実験では、切断面を平らにし、上腕骨の骨頭部が切断面から突出して分解さ

れることを防ぐために、前肢を肘関節よりわずかに先端側で切断し、残った尺骨と橈骨をピ

ンセットで完全に取り除いた(Fig. 1-1C)。

Page 46: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

45

再生した前肢は 4%PFA/10%メタノール/70%PBS 溶液で室温で一晩固定し、22.5%ギ酸、

10%クエン酸ナトリウム、70%PBSで 1~2日間処理して脱灰した。

EFIC撮影

サンプルの準備方法及び EFIC での撮影方法は、以下に挙げる論文を参考にした

(Weninger and Mohun 2002; Rosenthal et al. 2004; Yamada et al. 2010; Takaishi et al.

2014; Tsuchiya and Yamada 2014)。固定した前肢標本は 25%、 50%、 75%エタノール

/62.5%ホルトフレーター溶液、100%エタノール、75%エタノール/25%キシレン、及びキシ

レンに 1時間ずつ浸漬することで脱水した。その後、25%バイバー/4.4%ステアリン酸/0.4%

スダン IV/70%パラフィンに液交換しながら一晩浸漬し、包埋した。包埋したブロックは

Leica SM2500 sliding microtome (Leica Microsystems)を用いて、10 µmの厚みで薄切し

た。1 回薄切するごとに、ブロックの表面に露出した標本組織の自家蛍光を Hamamatsu

ORCA-ER low-light CCD camera(浜松ホトニクス)で検出した。

三次元再構築と定量解析

EFIC で撮影された標本組織の二次元画像群は、Adobe Photoshop ver. 13(Adobe

Systems Incorporated)を用いて、コントラスト、明るさを調整したうえで残存部と再生部

の骨組織を色づけした。色づけした二次元画像群は、Volocity (Improvision/Perkin Elmer)

Page 47: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

46

を用いて三次元再構築した。

関節面の表面積を定量するため、各二次元画像(解像度 5.12 µm/pixel)上では線状に見え

る関節面を Adobe Photoshop ver. 13(Adobe Systems Incorporated)を用いて 5 pixelの太

さでなぞってから、Volocity (Improvision/Perkin Elmer)を用いてこれらの線を積み重ねる

ことで三次元再構築した。こうして作成した関節面の三次元画像は、Volocity

(Improvision/Perkin Elmer)を用いて体積 V を測定し、また同ソフトウェアの機能で X、

Y、Z軸すべての方向に 1 pixelずつ縮小させ、その体積 Vsも測定した。

得られた数値を用いて、関節の表面積は以下の方法で算出した。

Sj= (V – Vs)/2RT

ただし、Sjは関節の表面積、Vは関節面の立体の体積(µm3)、Vsは関節面の立体に縮小操作

を行ったものの体積(µm3)、Rは画像の解像度(µm/pixel)、Tは縮小操作によって小さくなっ

た厚み(この場合 1 µm)。関節面の立体は円盤状の形をしているので、関節面の立体と関節

面に縮小操作を行った立体の差分は、1 µmの厚みをもった円盤の表層とみなすことができ

る。円盤の側面の部分を誤差として無視すると、残るのは厚み 1 µmの円盤の表と裏二層の

平たい立体である。従って、この立体の体積を厚み 1 µmで割ったものが円盤の表面と裏面

の面積になるので、これをさらに 2で割ったものが求めたい関節面の面積となる。

体積の定量は、標本組織の二次元画像(解像度 5.12 µm/pixel)のうち橈骨を色づけし、

Volovityで三次元再構築したのちに、できた橈骨の体積を同ソフトウェアで計算した。

Page 48: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

47

エラスチカ・ワン・ギーソン染色

組織学的解析のために、固定した前肢は固定した前肢標本は 25%、 50%、 75%エタノー

ル/62.5%ホルトフレーター溶液、100%エタノール、75%エタノール/25%キシレン、キシレ

ン、50%パラフィン/50%キシレンに 1 時間ずつ浸漬することで脱水し、パラフィンで包埋

した。ブロックは 10 µmの厚みで薄切した。薄切切片は、脱パラフィン、脱キシレン、水

洗ののち、1%塩酸/70%EtOH を通してから、前田変法レゾルシンフクシン液(武藤化学)で

1時間染色し、100%EtOHで分別し、5分間水洗した。次に、ワイゲルト鉄ヘマトキシリン

液(武藤化学)で 5 分間染色し、10 分間水洗した。その後、ワンギーソン液(武藤化学)で 10

分間染色し、1秒間水洗して、脱水、透徹ののちオイキットで封入した。

染色像はコンピュータ制御生物顕微鏡 BX62(オリンパス)と CCD カメラ CoolSNAP

fx(Photometrics)を用いて撮影した。

透明骨格標本作製

透明骨格標本作製のために、前肢標本は 70%エタノール、100%エタノールに 1時間ずつ

浸漬して固定し、軟骨を 0.002%アルシアンブルー/20%酢酸/80%エタノールで一晩浸漬し

て染色し、4-5日間かけて 100%エタノールで洗浄した。さらに、標本の軟組織を 0.5%水酸

化カリウムで 3 時間処理して脱色し、皮膚や血管の色素は 0.1%過酸化水素水で脱色した。

Page 49: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

48

骨は 0.01%アリザリンレッド/0.5%水酸化カリウムで 6時間浸漬して染色し、グリセロール

を用いてさらに透明化した。標本は実体顕微鏡 Leica M125(Leica Microsystems)で撮影し

た。

Page 50: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

49

Page 51: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

50

第二章

組織間調和のメカニズムに基づく

カエル(Xenopus laevis)の機能的な関節再生

Page 52: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

51

要旨

関節が機能的であるためには、複数の組織が関節の周囲で統合している必要がある。すな

わち、関節を構成する骨格要素が相補的な形状で組み合わさり、関節をまたいで筋肉が腱

を介して骨組織に挿入されていなければならない。イモリは肢の切断後機能的な関節を再

生させることができるが、Xenopus laevisはスパイクと呼ばれる分岐のない尖頭様の軟骨

を再生するのみで、関節を再生することはできない。第一章では、イモリの関節再生過程

で残存部と再生部の組織の相互作用のメカニズムが再生した軟骨の形態形成に大きな影響

を与えることを述べた。この知見を受けて、私はカエルをイモリと同様に肘関節で切断し

たことで、カエルは残存部の組織と再生したスパイクとの間に機能的な関節を再生できる

ことを見出した。このとき、スパイクの軟骨の基部側端に肘関節の構造が再生したのみな

らず、残存部の筋肉が腱を介して再生したスパイクの軟骨に挿入されていたことを観察し

た。さらに、Gdf5と Scleraxisの in situハイブリダイゼーションにより、カエルの機能

的な関節再生のメカニズムについての洞察を得ることができた。本研究は、モデル動物で

ある Xenopus laevisを使うことで関節再生の分子、細胞機序を理解できる道を切り開い

た。

Page 53: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

52

序論

四肢の再生能力は脊椎動物の中でもさまざまである(Wallace 1981; Agata and Inoue

2012)。ヒトを含め哺乳類の場合、指の第一関節より基部側を切断されると再生できず、

従って関節を再生することはできない(Douglas 1972; Illingworth 1974; Han et al. 2008;

Muneoka et al. 2008)。一方、多くの有尾両生類(イモリやサンショウウオ)は、生涯を通し

て、四肢をどこで切断後されても完全な構造を再生できる高い再生能力を保っている。無

尾両生類(カエル)の場合は、完全な四肢再生能力は幼生期に限られ、変態後は肢の完全な

構造を再生させることはできなくなる(Dent 1962; Goode 1967)。例えば、アフリカツメガ

エル(Xenopus laevis)の成体では、肢をどの位置で切っても、残存部の延長上にスパイク

と呼ばれる分岐のない一本の尖頭様の軟骨が再生し、関節、筋肉、石灰化した硬骨、腱や

靭帯を再生することはないと言われている(Endo et al. 2000; Tassava 2004; Satoh et al.

2005a; Satoh et al. 2006; Suzuki et al. 2006)。従って、成体のカエルの四肢再生は両生類

と哺乳類の再生能力の間に位置するモデルとして研究されている(Fig. 2-1)。

Page 54: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

53

Figure 2-1. 有尾両生類、無尾両生類、哺乳類の四肢再生能力の比較

Page 55: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

54

有尾両生類でも無尾両生類でも、四肢の切断後速やかに傷口は傷上皮で覆われ、その下で

残存部の組織にある幹細胞や前駆細胞が活性化し、また一部の細胞ではその分化形質を失

って増殖を開始し、再生芽ができる(Christensen and Tassava 2000; Christensen et al.

2002; Agata et al. 2007)。再生芽形成ののち、再生芽は発生プログラムを再利用すること

で、失われた先端側の肢の構造を自律的に付加再生で再生すると考えられている。有尾両生

類では、再生芽で発生期の肢芽で発現する遺伝子を再び発現することが知られている

(Gardiner et al. 2002; Endo et al. 2004; Stoick-Cooper et al. 2007; Nacu and Tanaka 2011)。

その一方で、カエルの肢の再生芽はこれらの遺伝子を適切に発現させることができず、その

ために四肢の発生プログラムを再利用することができないと考えられている(Endo et al.

2000; Yakushiji et al. 2007)。そのため、四肢発生のメカニズムに関する知見を応用するこ

とで、カエルの肢の再生能力を引き上げようとする試みは多くおこなわれてきた。特に、機

能的な関節の再生は再生能力の高い動物と低い動物の間を埋めるための重要なステップで

あると考えられる。関節の発生過程では、関節を作る部分でBmpファミリーに属するBmp4

や Gdf5が重要な役割を果たす(Storm et al. 1994; Koyama et al. 2008)。また、関節が運動

器として機能的であるためには、筋肉が骨組織に腱を介して適切な位置に挿入されること

も必要である(Schweitzer et al. 2010)。。

発生過程での関節形成メカニズムをカエルの再生芽で再現するという方針で、カエルで

関節を再生させようという試みはこれまでいくつかなされている。カエルのスパイク再生

Page 56: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

55

過程で Bmp4 のビーズを埋め込むと、スパイクの軟骨が関節様に区切れるという報告があ

る(Satoh et al. 2005b)。また、カエルの肢を切断後、Wnt/β-cateninシグナルを強制的に活

性化した幼生期の肢芽の細胞と、Shh, Fgf10, thymoshin β4を切断部に付与することで、

関節様の構造を含む分岐した構造が再生するという報告もなされている(Lin et al. 2013)。

このように、人工的な操作を加えることで関節様の構造を再生させることは可能になって

いるが、カエルで機能的な関節の再生を実現するには至っていないのが現状である。

一方、第一章で述べたように、我々はイモリを用いて、前肢を肘関節で切断して再生させ

ると、残存部と再生部の組織の相互作用が肘関節の形態形成に重要な影響を及ぼし、それに

よって残存部と再生部の組織が構造的に調和し、機能的な肘関節を再生することを報告し

た(Tsutsumi et al. 2015)。この発見をカエルに応用することで、私はこれまでの研究とは

異なる発想で関節再生を引き起こそうと考えた。すなわち、カエルの前肢を肘関節で切断す

ることで、残存部と再生部の相互作用がおこり、それにより肘関節を再生するのではないか

という仮説をたてて実験を行った。その結果、肘関節で切断すると、カエルでも再生したス

パイクの軟骨の根元に機能的な肘関節の構造を再生できることを発見した。さらに、第一章

で用いた EFIC による観察によって、再生した関節では残存部の骨組織と再生したスパイ

クの軟骨が組み合わさっているだけでなく、残存部の筋肉は腱を介してスパイクの軟骨に

挿入され、様々な組織が機能的に調和していることを示した。この発見は、実験動物として

実験手法がよく確立された Xenopus laevisを用いることで、関節再生の分子、細胞メカニ

Page 57: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

56

ズムを解析できる可能性を切り開くものである。

Page 58: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

57

Page 59: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

58

結果

Xenopus laevisにおける機能的な肘関節の再生

カエルにおいて、四肢再生過程で再生部の形態形成に対する残存部の組織の影響を調べ

るため、カエルの前肢を肘関節よりわずかに先端側で切断し、残った橈尺骨の断片を取り除

いた(Fig. 2-2)。この切断のあとで、89.5%(17/19)のカエルで肘関節からスパイクの再生を

認めた(Fig. 2-3A)。これは、カエルの前肢を軛脚で切断した場合と同様の結果である

(Tassava 2004)。次に、このとき残存部の上腕骨と再生したスパイクの間に機能的な関節が

再生したかどうかを検証するため、再生した前肢の肘関節の動きを観察した。興味深いこと

に、切断の手技によって肘関節の先端側の骨格要素は完全に取り除いたにも関わらず、再生

した前肢の肘関節において曲げ伸ばし運動を確認することができた (Fig. 2-3A-C)。この結

果は、カエルは残存部の上腕骨と再生したスパイクとの間に、生体力学的に機能的な肘関節

を再生したことを示している。機能的な関節が再生したという結果は、肘関節の基部側の骨

格要素に対して相補的な関節構造が、再生したスパイクの軟骨に形成されたことを強く示

唆している。それのみならず、関節が機能するためには関節の周囲で筋肉、腱、骨や軟骨な

どの組織が統合している必要があるため、柱脚の伸筋と屈筋が腱を介して再生したスパイ

クの軟骨に挿入されていることも強く示唆された。

Page 60: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

59

Figure 2-2. 前肢の切断方法

肘関節での切断後にスパイクの再生を観察するため、カエル前肢を肘関節よりわずかに先

端側で切断し、残った橈尺骨の断片をピンセットで完全に取り除いた。

Figure 2-3. 再生した肘関節の曲げ伸ばし運動

肘関節で切断後、再生したカエルの前肢の動きを

撮影したものの一部を静止画として抽出した。

(A)カエルは再生した前肢の肘を伸ばしている。

(B)前肢の肘関節を曲げた。(C)一度曲げた肘関節

を再び伸ばした。黄色の矢印は残存部の柱脚と再

生したスパイクの間に再生した肘関節の位置を

示している。背景の方眼は 1 cm四方である。

Page 61: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

60

肘関節で切断後、肘関節の凹型の構造が再生した

正常個体と再生個体の前肢の骨組織の形態を観察するため、透明骨格標本を作製するこ

とにした(Fig. 2-4A, B)。再生前肢では、残存部の上腕骨の肘関節の形態は正常個体のそれ

とほぼ変化しておらず、再生したスパイクの軟骨は残存部の上腕骨とは不連続に形成され

ていることがわかった(Fig. 2-4A,B)。この観察結果は、再生したスパイクの基部側の端部に、

肘関節の凹型の構造が再生していることを示唆している。この可能性を検証するため、再生

したスパイクの構造を、EFICを用いて三次元的に観察することにした。EFIC によって得

られた画像では、残存部の骨組織を淡紅色で、再生した軟骨を青で色づけしている(Fig. 2-

3C-F)。三次元画像の観察によって、正常個体の橈尺骨と同様に、スパイクの基部側の端部

は、残った上腕骨の凸型の肘関節と相補的に組み合わさっていることがわかった(Fig. 2-4C,

D)。また、スパイクの基部側の端部には、正常個体の橈尺骨と同様の凹型の構造が再生して

いることも観察できた(Fig. 2-4E, F)。

Page 62: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

61

Figure 2-4. スパイクの基部側端には関節構造が再生していた

(A)正常個体の前肢の透明骨格標本。(B)肘関節で切断後の再生した前肢の透明骨格標本。硬

骨はマゼンタ、軟骨は青に染まっている。黒色矢頭は肘関節の位置を示す。(C)正常個体の

前肢および(D)肘関節で切断後再生した前肢の骨組織を EFIC を用いて撮影し、三次元再構

築した画像。(E)正常個体の前肢および(F)再生した前肢(スパイク)の三次元再構築画像にお

いて、上腕骨の像を除いて肘関節の構造を示した。白頭が肘関節の凹型の形態を示している。

Page 63: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

62

柱脚の伸筋と屈筋はともに再生したスパイクの軟骨に挿入されていた

次に、肘関節で切断後に再生した前肢について、硬骨、軟骨に加えて筋肉、腱の構造も観

察するため、EFICで得られた画像で筋肉と腱も色づけすることにした。ここでは、正常個

体で橈尺骨に挿入される筋肉と腱のうち、主要な屈筋である上腕二頭筋(m. sternoradialis)

とそれに付随する腱(Fig. 2-5 黄色)と、主要な伸筋である上腕三頭筋(m. triceps brachii)と

それに付随する腱(Fig. 2-5 緑色)に着目した(Ecker 1889)。その結果、正常個体と同様に、

肘関節で切断したのちに再生した前肢では、スパイクの軟骨の基部端の前側に上腕二頭筋

の腱が挿入されている様子が観察できた(Fig. 2-5A, B, 矢頭)。また、上腕三頭筋の腱はスパ

イクの軟骨の基部端の後ろ側に挿入されており、これも正常個体のものと同様であった(Fig.

2-5C, D, 矢頭)。従って、正常個体の前肢と同様に、肘の曲げ伸ばし運動に寄与する主要な

屈筋と伸筋が再生したスパイクの軟骨に挿入されていることがわかった(Fig. 2-5E, F)。

Page 64: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

63

Figure 2-5. 残存部の筋肉は腱を介して再生したスパイクの軟骨に挿入されていた

(A)正常個体の前肢および(B)肘関節で切断後再生した前肢の骨組織と筋肉、及び腱を三次元

再構築した像。残存部の骨格要素は淡紅色、再生した軟骨(スパイク)は青で色づけしている。

上腕二頭筋(m. sternoradialis)とそれに付随する腱は黄色、上腕三頭筋(m. triceps brachii)

とそれに付随する腱は緑色に色づけしている。矢頭は上腕二頭筋の挿入位置を示している。

(C-D)同一三次元画像を別の角度から見た図。矢頭は上腕三頭筋の挿入位置を示している。

(E)正常個体の前肢および(F)再生した前肢の筋骨格系の構造を示した模式図。

Page 65: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

64

肘関節で切断後、機能的な関節再生の過程

カエルで肘関節を切断したあとの関節再生の過程を観察するため、再生過程の組織切片

を作製し、エラスチカ・ワン・ギーソン染色を行って観察した。エラスチカ・ワン・ギーソ

ン染色では、軟骨の弾性繊維は紫、骨と腱の膠原繊維は赤、筋肉繊維は黄色、核は黒に染ま

る(Fig. 2-6A)。まず、切断直後に肘関節の上腕骨側は傷つかずに残っていることと、橈尺骨

は完全に取り除かれていることを確認した(Fig. 2-6B)。切断一週間後では、傷上皮が切断面

を覆っていることが確認できた(Fig. 2-6C)。切断 2週間後、残存した上腕骨の関節の軟骨と

傷上皮との間に再生芽が形成されていた(Fig. 2-6D)。切断 1 週間と 2 週間後では、いずれ

も残存部の関節の形は変化しておらず、形態が変わるほど大きく分解されているという様

子は観測されなかったものの、弾性繊維の紫のシグナルが消失しており(Fig. 2-6C, D, 黄色

矢頭)、残存部の関節の組織の組成が変化していることが示唆された。切断 3 週間後では、

再生芽の中に分化したスパイクの軟骨がはじめて観測された(Fig. 2-6E)。重要なことに、こ

の時期では残存部の上腕骨の関節の軟骨は、再生したスパイクの軟骨と連続していた様子

が観察された(Fig. 2-6E’)。この観察結果は、関節の再生過程でスパイクの軟骨ははじめに

関節の残存部の軟骨と連続的に再生し、それがのちに肘関節の部分で区切れることを示唆

している。切断 4週間後では、関節の形態がスパイクの基部側端に再生しており、柱脚の筋

肉に付随する腱がスパイクの軟骨に挿入されている様子が観察された(Fig. 2-6F, 矢印)。

Page 66: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

65

Figure 2-6. 関節再生途中で、残存部の関節の ECMが失われていた

(A)正常個体の前肢、(B)肘関節で切断後 0 日、(C)切断後 1 週間、(D)切断後 2 週間、(E)切

断後 3週間、(F)切断後 4週間の前肢の組織切片をエラスチカ・ワン・ギーソン染色で染色

した。(E’)は Eの四角で囲った部分の拡大図で、残存部の軟骨と再生した軟骨が連続してい

る様子を示している。黄色矢頭は残存した上腕骨の関節で弾性繊維のシグナルが消失して

いるところを示す。

Page 67: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

66

再生したスパイクの軟骨では Gdf5の発現が見られる

関節を形成する細胞の分化過程を観察するため、軟骨細胞のマーカーである Sox9

(Wright et al. 1995; Bi et al. 1999)と、関節軟骨、滑膜表層、靭帯をつくる関節細胞のマー

カーである Gdf5 (Koyama et al. 2008)の発現を、カエルの関節再生過程で in situハイブリ

ダイゼーションを行って観察することにした。まず、Sox9と Gdf5に対して作製した RNA

プローブの妥当性を確認するため、陽性対照実験として Xenopus laevisのオタマジャクシ

の発生ステージ 54の後肢の標本で in situハイブリダイゼーションを行った。ステージ 54

の後肢では、Sox9の発現を示すシグナルは発生中の軟骨において特異的に検出できた(Fig.

2-7A)。一方 Gdf5 の発現を示すシグナルは関節細胞で特異的に検出できた(Fig. 2-7B)。こ

れらのシグナルのパターンは、Xenopus laevis や他の脊椎動物の発生過程において報告さ

れた Sox9 と Gdf5 の発現パターンと一致していることから(Storm et al. 1994; Francis-

West et al. 1999; Satoh et al. 2005b)、今回作製したプローブによって、Sox9発現細胞と

Gdf5発現細胞をそれぞれ有効に標識できると判断した。

次に、肘関節で切断したのちにスパイクを再生中の前肢標本の連続切片を作製し、in situ

ハイブリダイゼーションで Sox9と Gdf5の発現を観察した(Fig. 2-7C, D)。組織の種類を同

定するために、in situ ハイブリダイゼーションに使った切片の連続切片でエラスチカ・ワ

ン・ギーソン染色を行った(Fig. 2-7E)。Sox9はスパイクの軟骨全体の細胞で発現を確認し

た(Fig. 2-7C, Eと比較のこと)。驚いたことに Gdf5発現細胞は、Sox9の発現とほぼ重なる

Page 68: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

67

スパイクの再生軟骨全体の領域で観察できた(Fig. 2-7D, Cおよび Eと比較のこと)。

Figure 2-7. 再生したスパイクにおける関節のマーカー遺伝子の発現

(A)ステージ 54 のオタマジャクシの後肢で Sox9 の in situ ハイブリダイゼーションを行っ

た。シグナルは軟骨細胞において観測された。(B)同一標本の連続切片上で Gdf5の in situ

ハイブリダイゼーションを行った。シグナルは関節軟骨と、軟骨系列以外の関節細胞におい

て観測された。(C)Sox9と、(D)Gdf5の発現を、再生したスパイクの連続切片を作製し、in

situハイブリダイゼーションで観察した。(E)同一標本の連続切片上で、エラスチカ・ワン・

ギーソン(EVG)染色を行ったもの。軟骨の弾性繊維は紫、硬骨と腱の膠原繊維は赤、筋肉は

黄色、核は黒で染色されている。Sox9 と Gdf5 の発現は再生したスパイクの軟骨において

ほぼ同様の領域で発現を示した。

Page 69: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

68

腱は再生したスパイクの中で新規に再生し、スパイクの軟骨に挿入されていた

Fig. 2-5B, Dで示したように、残存部の筋肉に付随する腱がスパイクの軟骨に挿入されて

いたことから、肘関節で切断ののち、スパイクの中で腱が再生し、腱と軟骨の接合部がつく

られたことが強く示唆された。腱そのものと、腱と軟骨の接合部の再生過程を観察するため、

腱の発生に重要な役割を持つ Scxの発現を観察することにした。まず、Scxに対して作製し

た RNA プローブの妥当性を調べるため、陽性対照実験として、発生ステージ 54 の後肢に

対して in situハイブリダイゼーションを行った。その結果、Scxの発現を示すシグナルは

発生中の腱細胞と軟骨の一部において認めることができた(Fig. 2-8A, B と比較のこと)。こ

のシグナルのパターンは Xenopus laevisや他の脊椎動物の発生過程で過去に報告された発

現パターンと同様であったため(Schweitzer et al. 2001; Satoh et al. 2006)、今回作製した

プローブは Scxの発現を有効に検出できると判断した。

次に、肘関節で切断後にスパイクを再生した前肢で連続切片を作製し、Sox9と Scxの発

現を観察した(Fig. 2-8C, D)。組織の種類は同一標本の連続切片上でエラスチカ・ワン・ギ

ーソン染色を行うことで同定した(Fig. 2-8E)。スパイクの再生過程において、Scxの発現は

まず、ほぼ Sox9の発現と重なるスパイクの軟骨の領域で見られた(Fig. 2-8D, C と比較のこ

と)。さらに、Scxの発現細胞は再生途中のスパイクの中で Sox9を発現していない領域にお

いても観測された(Fig. 2-8D, 黒色及び橙色矢印)。組織染色像との比較によって、これらの

Scx 単独陽性細胞は、再生部において間充織の一部と(Fig. 2-8D’と E’の黒矢印を比較のこ

と)、エラスチカ・ワン・ギーソン染色で赤に染色される成熟した腱の延長上の領域にある

Page 70: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

69

こと(Fig. 2-8D’と E’の橙色矢印を比較のこと)がわかった。一方、成熟した腱では Scxの発

現は確認できなかった(Fig. 2-8D’と E’の緑矢印を比較のこと)。この結果は、腱の前駆細胞

は再生部の間充織の中で新たに分化しはじめ、残存部の腱の延長上と、再生したスパイクの

軟骨との間をつないでいることを示唆した。

Figure 2-8 再生し

たスパイクにおけ

る腱のマーカー遺

伝子の発現

(A)ステージ 54 のオ

タマジャクシの後肢

における Scx の in

situハイブリダイゼ

ーション。シグナル

はパッチ上に分布す

る腱前駆細胞におい

て観察された。(B)

同一標本の連続切片

上でのエラスチカ・

ワ ン ・ ギ ー ソ ン

(EVG)染色。(C)再生

したスパイクにおけ

る、Sox9 の in situ

ハイブリダイゼーシ

ョン。Sox9の発現は

再生したスパイクの

軟骨において観測さ

れた。(D)同一標本の連続切片上での Scxの in situハイブリダイゼーション。Scx の発現はスパ

イク軟骨および、再生部のスパイク軟骨の外側に斑点状の領域で観察された(黒矢印および橙色

矢印)。(E)同一標本の連続切片上での EVG 染色。関節の弾性繊維は紫、硬骨と腱の膠原繊維は

赤、筋肉は黄色、核は黒で染色されている。(C’, D’, E’) C,D,Eの四角で囲った部分を拡大したも

の。Scx の発現は間充織(黒矢印)、成熟した腱組織の延長上(橙色矢印)で観測され、成熟した腱

組織では観測されなかった(緑色矢印)。

Page 71: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

70

考察

本研究は、Xenopus laevis において曲げ伸ばし運動の可能な機能的な肘を再生させたは

じめての報告である(Fig. 2-3)。EFICを用いた観察により、再生したスパイクの基部側端に

肘関節の構造が再生した様子を明確に示すことができた(Fig. 2-4)。さらに、柱脚に残存し

たすべての筋肉が再生した軟骨と繋がっていることを確認したわけではないものの、少な

くとも主要な屈筋と伸筋に付随する腱は再生したスパイクの軟骨に機能的なパターンをも

って挿入されていることも明らかにした(Fig. 2-5)。これらの結果は、残存部と再生部の組

織の関節を間に挟んだ相互作用によって、再生した軟骨において関節形態を引き起こすこ

とができるのみならず、機能的な関節を再生させるための複数種の組織の調和をも引き起

こすことができることを示唆した。

カエルの関節再生を可能にする細胞機序

本研究でカエルの関節再生過程を観察することにより、関節再生を可能にする細胞機序

に関していくつかの洞察を得ることができた。まず、イモリの関節再生過程でも観察された

のと同様に(Tsutsumi et al. 2015)、カエルの関節再生過程でも残存部の関節の軟骨におい

て弾性繊維のシグナルが消失している様子が観察された (Fig. 2-6C, D)。関節において、

ECMの組成は関節軟骨の特性にさまざまな影響をおよぼしており、軟骨の力学的な性質を

決めるだけでなく、シグナル分子を吸着させて分子の局在を制御したり、ECM-細胞間相互

作用を介したインテグリンシグナルを伝達したりすることによって軟骨細胞の細胞特性も

Page 72: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

71

制御している(García-Carvajal et al. 2013; Loeser 2014)。このことから、本研究で観察さ

れた ECMの組成の変化は、それによりカエルの関節再生過程でシグナル分子の局在が変化

することで、再生芽細胞や再生部の分化細胞に関節の形成を促すシグナル伝達が行われた

可能性を示唆しているのかもしれない。一方で、関節の再生過程で、再生中のスパイクの軟

骨と残存部の関節の軟骨が癒合するという観察結果を考慮すると(Fig. 2-6E’)、ECMの組成

の変化に伴って残存部の関節の軟骨中の軟骨細胞の特性が変化し、脱分化や増殖を引き起

こし、スパイクの軟骨の再生に寄与したという可能性も十分に考えられる。

他の脊椎動物で見られる関節の再生において、中間層細胞の存在は非常に重要である。ア

ホロートルでは、肢の切断後、中間層様の細胞が再生してくることで、関節の再生に寄与し

ていることが示されている(Lee and Gardiner 2012)。さらに、アホロートルで長骨の骨幹

部から骨の一部を切除し、そこに中間層の組織を移植することで、切除された領域に関節が

異所的に形成されるという報告がある(Cosden-Decker et al. 2012)。ニワトリは胎児期も含

め生涯にわたって四肢再生能力を持たないが、それでも胎児期の肢芽の将来肘をつくる部

分に”窓”をあけて関節を形成する部分の軟骨を取り除いた場合、軟骨の周りの関節前駆細胞

が残っていさえすれば関節を再生させることができることが報告されている(Özpolat et al.

2012)。本研究では、残存部の関節の軟骨と再生したスパイクの軟骨は組織として連続して

いるものの、これら二つの間には境界を認めることができた(Fig. 2-6E’)。以上を合わせて

考慮すると、本研究の観察結果は、カエルの関節再生過程では、残存部の軟骨と再生したス

Page 73: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

72

パイクとの間の境界において、軟骨細胞が中間層様の細胞に分化したことが考えられる(Fig.

2-9 左枠)。

Figure 2-9. カエルの関節再生のメカニズムについての仮説

(左枠)中間層細胞が残存部の関節軟骨(淡紅色)と再生したスパイクの軟骨(青)の境界で分化

したことで、その場所で関節が形成されたのではないかと考えられる。(右枠)発生過程にお

いて報告された仕組みと同様にして、再生したスパイクの関節の軟骨(青)と残存部の筋肉

(橙色)からのシグナルによって、腱細胞の誘導と分化が促進され、それにより再生したスパ

イクの軟骨と残存部の筋肉の間に腱の挿入部位が再生したと考えられる(図は Pryce et al.

2009を参考にして描いた)。

カエルの関節再生を可能にする分子機序

本研究で観測されたカエルの再生中のスパイクにおける Sox9、Gdf5、Scxの発現パター

ンは、スパイクの軟骨全体で見られたという点で過去に報告された知見とは異なっている

(Fig. 2-7, 8) (Satoh et al. 2005b; Satoh et al. 2006)。

特に Gdf5 が関節の発生過程で見られたように関節部のみで発現がみられたわけではな

く、再生したスパイクの軟骨全体での発現が見られたことは驚きであった(Fig. 2-7)。生体

内および培養化において行われた Gdf5の機能欠失実験や機能獲得実験の結果は、脊椎動物

Page 74: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

73

において Gdf5 は軟骨形成を促進する働きをもつことを示すものであった(Storm et al.

1994; Storm and Kingsley 1996; Francis-West et al. 1999; Merino et al. 1999; Storm and

Kingsley 1999)。しかし、Gdf5陽性の中間層細胞からは、最終的に関節軟骨だけではなく、

滑膜表層や靭帯といった軟骨以外の関節を構成する組織も構成する(Koyama et al. 2008)。

Gdf5陽性細胞がこれら軟骨以外の系列に分化し、軟骨を区切れさせて関節の形態形成を行

うためには、Wnt/β-catenin シグナルや noggin によって軟骨形成を阻害する作用をうける

必要がある(Brunet et al. 1998; Hartmann and Tabin 2000; Guo et al. 2004; Später, D.

et al. 2006; Später, Daniela et al. 2006; Koyama et al. 2008)。

脊椎動物の四肢発生過程において、関節がつくられる前に、将来軟骨をつくる凝集した間

充織において Gdf5の発現がはじめに観測される(Francis-West et al. 1999)。この知見を考

慮すると、スパイクの軟骨で Sox9の発現と Gdf5の発現が両方見られたという本研究の結

果は、スパイクの軟骨は未分化な状態を保っており、そのために残存部の関節からの刺激を

受け取ると関節構造を形成することができるという可能性を示唆するものとして興味深い。

実際、スパイクの軟骨は骨化することはなく、また関節軟骨、成長板軟骨、骨幹部の軟骨の

いずれに分類することもできない(Egawa et al. 2014)。カエルの再生過程においてWnt/β-

catenin シグナルや noggin などの、軟骨形成を阻害する活性を調べることで、関節再生の

仕組みにより深くせまることができるかもしれない。

Page 75: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

74

関節再生における組織間の協調的な相互作用の重要性

発生過程の研究によって、関節において複数の組織が機能的な調和は、筋骨格系の組織の

発生の相互依存性に依拠していることが明らかになってきている。肢の発生過程において、

軟骨細胞と腱細胞はともに側板中胚葉由来の間充織細胞から分化する(Kardon 1998; Pryce

et al. 2009)。さらに、腱の分化過程は筋肉と軟骨に大きく依存している(Fig. 0-6 B 参照)。

アホロートルの肢の再生においても発生過程と同様に、自脚に限っては筋肉がなくても腱

がつくられるものの、柱脚と軛脚においては筋肉は腱の発生に必要であることが示されて

いる(Holder 1989)。

これらの知見を合わせて考えると、過去にカエルのスパイクの再生において観察されて

いたように(Satoh et al. 2006)、再生途中のカエルのスパイクの中の間充織で腱の前駆細胞

は分化をはじめていると考えられる(Fig. 2-8D, E, 黒色矢印)。これらの腱の前駆細胞は、残

存部の筋肉やそれに付随する腱と、再生したスパイクの軟骨との間でさらに分化をすすめ、

成熟した腱組織を再生することができるのだと考えられる(Fig. 2-8D, E 橙色矢印および

Fig. 2-9 右枠)。

本研究の in situ ハイブリダイゼーションの結果は、再生したスパイクの軟骨は Sox9 と

Scxを両方発現していることを示した(Fig. 2-8D)。近年、発生過程で腱と軟骨の接合部がで

きる仕組みが明らかにされた。軟骨の中央部はSox9単独陽性細胞の系譜からできる一方で、

腱と軟骨の接合部は、軟骨細胞にも腱細胞にもなれる分化能を持つ Sox9/Scx両陽性細胞を

Page 76: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

75

経てつくられるのである(Blitz et al. 2013; Sugimoto et al. 2013)。そして、Scx単独陽性細

胞がすでにできた腱と軟骨の隙間に入り込んで腱で埋めていくことで、腱と軟骨が途切れ

なく繋がる(Huang et al. 2013)。以上のことから、カエルの関節再生においても同様にして、

Sox9/Scx両陽性のスパイク軟骨の細胞から、腱/軟骨の接合部が再生していると推察される。

カエルの関節再生には、力学的な作用も関わっているかもしれない。マウスの胎児では、

筋肉の収縮が中間層細胞の細胞運命決定に必要であり、筋肉の収縮がないと中間層細胞は

軟骨に分化してしまい、関節が癒合してしまう(Kahn et al. 2009)。また、ニワトリの胎児

でも、筋肉を麻痺させることで、関節部の細胞分裂が局所的に変化し、膝関節の形態が異常

になる(Roddy et al. 2011)。これらのことから、カエルの関節再生過程でも、残存部の筋肉

と再生したスパイクの軟骨が繋がったあとで、残存部の筋肉の収縮によって生み出された

力学的な作用も、スパイクの軟骨の根元で、残存部の関節と相補的に組み合わさった関節形

態の再生に関わっているのかもしれない。カエルを関節で切断し、再生芽が形成されたあと

で筋肉を麻痺させることで、関節再生における力学的作用の関与について重要な知見を得

られるかもしれない。

Page 77: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

76

今後の展望

私は、今回見出した、カエルの前肢を肘関節で切断したのちの関節再生は、イモリで同様

の切断を行った場合の関節再生と同様の現象がおこったものと考えている(Tsutsumi et al.

2015)。Xenopus laevisおよび tropicalisは発生学のモデル動物として用いられてきており、

利用可能な実験手法が豊富にあることから、Xenopus を使って関節再生を解析できること

を見出したという本研究の結果は、関節再生の分子、細胞メカニズムの解明に向けて大きく

可能性を切り開いたものと考えている。Xenopus を使うことで利用可能な遺伝学的解析手

法としては、Cre-LoxP システムや、ヒートショックプロモーター、Tet-onシステムによる

遺伝子発現誘導系を用いたライブイメージングや細胞系譜追跡実験、TALEN や CRISPR

システムに基づくゲノム編集技術などがあげられる(Rankin et al. 2011; Yokoyama et al.

2011b; Ishibashi et al. 2012; Takagi et al. 2013; Hayashi, Shinichi et al. 2014b;

Nakayama et al. 2014)。今後明らかにすべき重要な問いとしては、Wnt/β-cateninシグナ

ルがカエルの関節再生に関わっているかという点がある。この点に関しては、過去に

Xenopus laevis で遺伝子導入を行い、ヒートショックプロモーター制御下で Dkk1 の発現

を誘導することで、Wnt/β-catenin シグナルを阻害したという報告があり、(Yokoyama et

al. 2011b) このシステムを用いることで検証可能だと考えられる。また、残存した上腕骨の

関節部の軟骨が、再生したスパイクの軟骨の細胞の供給源となっているかという点も、今後

検証していきたい課題である。この点に関しては、BrdUパルスラベルと細胞系譜追跡実験

Page 78: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

77

を行うことで検証可能と考えらえる。細胞系譜実験には遺伝子のシス調節配列を導入する

必要があるが、近年 Xenopus laevisのゲノム情報はさらに充実してきており、より一層扱

いやすいモデル動物になってきている(Ogino et al. 2012; Horb et al. 2014)。

有尾両生類の四肢再生の過程で見られる自律的な付加再生のシステムに比べ、残存部と

再生部の組織間調和はより多くの種間で一般的に見られるシステムであると考えられ、カ

エルで得られた知見をマウスの再生に流用できる可能性は十分にあると期待している

(Egawa et al. 2014; Makanae et al. 2014a; Mitogawa et al. 2014)。マウスにおいては、切

断後に Bmpを加えることで骨の再生を活性化でき、切断面に対して次の関節のところまで

は再生させることができるが、新たに関節を再生させることはできない(Yu et al. 2010; Ide

2012; Yu et al. 2012)。私は、残存部の組織と再生部の組織の相互作用に基づく調和のメカ

ニズムは、哺乳類の機能的な関節再生を実現する手がかりを与えてくれると期待している。

Page 79: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

78

実験方法と材料

実験動物

Xenopus laevisの変態直後の個体(フログレットと呼ぶ)と幼生(オタマジャクシ)は、ワタ

ナベ増殖(兵庫県)から購入した性成熟個体を交配させ、卵から育てることで得た。実験動物

は、プラスチック製の飼育容器にカルキ抜き処理を行った水道水を入れて飼育水とし、一日

に一度餌を与えて飼育した。すべての実験は、京都大学動物実験委員会の定める指針に基づ

いて行った。

前肢の切断

切断手技の前に、フログレットは終濃度 0.2% の 3-アミノ安息香酸エチルメタンスルホ

ン酸塩(トリカイン)(Sigma-Aldrich Co. LLC.)を飼育水に溶かした溶液になかに入れるこ

とで麻酔した。十分に麻酔がかかっていることを確認したうえで、前肢を肘関節よりもわず

かに先端側で切断し、残った橈尺骨の断片をピンセットで完全に取り除くことで、切断面を

平らにし、再生過程で上腕骨が切断面から飛び出して分解されるのを防いだ(Fig. 2-2)。

透明骨格標本作製

透明骨格標本作製のために、フログレットの前肢は 70%エタノールに一時間、100%エタ

ノールに 1 時間浸漬して固定した。軟骨は 0.002%アルシアンブルー 8GX(Sigma-Aldrich

Co. LLC.)/20%酢酸/80%エタノールで三日間染色し、その後 4-5日間かけて 100%エタノー

Page 80: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

79

ルで洗浄した。組織は 0.3%KOH で一時間処理することで透明化し、皮膚や血管などにあ

る色素は 0.1%H2O2 で一晩処理することで脱色した。骨はアリザリンレッド S(Sigma-

Aldrich Co. LLC.)/0.3% KOH で染色した。組織はグリセロールを用いてさらに透明化し、

実体顕微鏡 Leica M125 (Leica Microsystems)で撮影した。

EFIC撮影と 3次元再構築

EFIC撮影のための標本準備と撮影は、以下の文献の方法を参考にすこし改変して行った

(Weninger and Mohun 2002; Rosenthal et al. 2004; Yamada et al. 2010; Takaishi et al.

2014; Tsuchiya and Yamada 2014; Tsutsumi et al. 2015)。前肢は 4%パラホルムアルデヒ

ド/10%メタノール/70%PBSに 4℃で一晩浸漬して固定し、22.5%ギ酸/10%クエン酸ナトリ

ウム/70%PBSで二日間処理して脱灰を行った。その後、エタノールとキシレンで脱水し、

25%Vyber/4.4%ステアリン酸/0.4%スダン IV/70%パラフィンで包埋した。ブロックは Leica

SM2500滑走式ミクロトーム(Leica Microsystems)を用いて 10µmの厚みで薄切した。一回

薄切するごとに、ブロックの表面に露出した標本組織の自家蛍光をHamamatsu ORCA-ER

low-light CCD camera(浜松ホトニクス)を用いて検出した。

EFIC によって得られたモノクロ画像は、 Adobe Photoshop (Adobe Systems

Incorporated)を用いてコントラスト、明るさを調整したうえで色付けを行った。組織の種

類は回収した切片をエラスチカ・ワン・ギーソン染色で染色することで同定した。こうして

Page 81: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

80

色づけされた二次元画像は、Volocity(Improvision)を用いて三次元再構築した。

エラスチカ・ワン・ギーソン染色

ステージ 54 のオタマジャクシ(Nieuwkoop and Faber 1994)とフログレットの前肢標本

は MEMFA で室温で一晩浸漬することで固定し、10%スクロース /70%PBS 及び

20%PBS/70%PBSを浸透させたのちに O. C. T. compound (サクラファインテック)で包埋

した。ブロックは 10 µmの厚みで薄切し、エラスチカ・ワン・ギーソン染色で染色した。

画像は正立顕微鏡 BX62(オリンパス)と CCD カメラ CoolSNAP fx(Photometrics)を用いて

撮影した。

RNAプローブ合成

Xenopus laevisの Sox9, Gdf5, Scxの cDNA断片は、Xenopus laevisのオタマジャクシ

の全身標本に由来する cDNAをテンプレートとして RT-PCRを行って得た。プライマーは、

以 下 の 配 列 を 用 い た 。 Xenopus laevis Sox9b (forward primer, 5’-

CAAGACGCTGGGGAAGTTATGGA-3’; reverse primer, 5’-

GGATTGATGGAACTCCCGTTGTG-3’; NM_001094473.1), Gdf5 (forward primer, 5’-

CTTTGACATCAGTGCTTTGG-3’; reverse primer, 5’-TTCTTATTAGGCCTCTTCCC-3’;

NM_001092997.1(Satoh et al. 2005b)), Scx (forward primer, 5’-

Page 82: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

81

TGTCTGATGAGGAGGAGGAGGAGA-3’; reverse primer, 5’-

CTGGTTGCTGAGGCAGAAGGTG-3’; NM_001098682.1)。PCR産物は TOPO TA クロー

ニングキット(Life Technologies)を用いてクローニングした。アンチセンス、センス鎖の

DIG 標識 RNA プローブは、T7 RNA Polymerase (Life Technologies)及び Sp6 RNA

Polymerase (Promega)を用いて合成した。

In situハイブリダイゼーション

In situ ハイブリダイゼーションは過去に報告された方法を改変して行った(Ohgo et al.

2010)。まず、標本組織をMEMFAで固定し、O.C.T. compound(サクラファインテック)で

包埋し、厚さ 10 µmの凍結切片を作製した。その後、5 µg/mlの proteinase Kで 37℃8分

間処理した。次に 4%パラホルムアルデヒド/PBSで 20分間後固定を行い、ハイブリダイゼ

ーション液(50%ホルムアミド/5x SSC (pH 5.0)/10 µg/ml yeast tRNA/0.1% CHAPS/100

ng/ml heparin/1x Denhardt’s solution/10 mM EDTA (pH8.0)/0.1% Tween 20)に溶かした

DIG標識 RNAプローブを 58℃で一晩ハイブリダイゼーションさせた。つぎに、DIG標識

プローブに対して、AP標識抗 DIG抗体(1/2000)(Roche Applied Science)で免疫反応を行っ

た。発色は、200 µm/ml NBT(Roche Applied Science)と 175 µm/ml BCIP(Roche Applied

Science)をNTMTに溶かした発色液を用いて行った。シグナルは正立顕微鏡 BX62(オリン

パス)と CCDカメラ CoolSNAP fx(Photometrics)を用いて検出した。

Page 83: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

82

総括

第一章では、イモリの肢を肘関節で切断した場合、再生した関節の形態は残存部と再生部の

相互作用の影響を大きく受け、それによって残存部と再生部の形態が調和しながら機能的

な関節を再生することを示した。第二章では、カエルの肢をイモリと同様に肘関節で切断す

ると、関節部で残存部と再生部の相互作用が起こることで、スパイクの基部側に今までカエ

ルでは再生できないといわれていた機能的な関節構造を再生させることに成功した。

再生生物学としては、ここから大局的に目指す目標は大きく二つ考えられる。一つは、カ

エルのスパイクの内部での関節再生を実現することである。特に、再生したスパイクの軟骨

で Gdf5の発現が全体に見られたことは、スパイク内部でも関節再生が可能であることを期

待させる結果である。前述したように、これまで様々な方法でカエルのスパイクをより完全

な形態に再生させようという試みがなされてきた。関節再生に目指したアプローチの他に

も、古くは、後肢の神経を前肢に引き込んで切断することで、神経からのシグナルを増強す

るとスパイクに分岐ができるという報告(Singer 1954)や、四肢の形態形成において重要な

モルフォゲンとして働く Shh のシグナルを活性化させることで、スパイクに分岐をつくっ

たという報告(Yakushiji et al. 2007)もある。本研究で得られた知見を考慮すると、これら

の研究のようにスパイクの軟骨にある程度の形態を持たせることができたうえで、さらに

複数の組織が正しい位置関係の中で相互作用しなければ、機能的な関節を再生させること

はできないのではないかと考えられる。カエルではイモリよりも Cre-loxP などを用いた

種々の遺伝子操作ツールが整備されているため、本研究によって、カエルのスパイクの軟骨

Page 84: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

83

において関節構造が再生するための相互作用を司る分子基盤を解明する道筋を切り開くこ

とができた。さらに、IR-LEGOと呼ばれる、赤外線を用いて局所的に細胞を熱し、ヒート

ショックプロモーターを介して遺伝子発現を誘導するシステムの開発も進められている

(Kamei et al. 2009; Hayashi, Shinichi et al. 2014a)。また、通常スパイクの中で筋肉が再

生することはないが、HGFを分泌する細胞を与えることで筋肉の再生を引き起こすことは

可能である(Satoh et al. 2005a)。これらの知見を集めれば、それぞれの組織の位置関係を制

御しながら相互作用を誘発し、スパイクの中に新たに機能的な関節を再生することも十分

可能であると期待できる。

もう一つは、哺乳類における関節再生の実現である。具体的には、マウスの肢を関節部で

切断した上で、Bmp を添加することで先端側に骨形成を誘発することで、再生した骨組織

と残存部の関節との相互作用の中で関節が再生するのではないかという仮説は検証する価

値がある。医療応用としては、失われた関節が一ヵ所再生するだけでも、十分に生活の質の

改善をもたらすことができるだろう。

また、本研究の与える示唆をさらに幅広く解釈するならば、組織の形態は、組織間の相互

作用の中で可塑的に変化する余地を残すことで、体の一部に変化が生じても機能を保つこ

とができるということであろう。イモリの四肢再生の場合、切断、再生の結果、肢の一部の

サイズが小さくなっているし、カエルの再生の場合、切断、再生の結果、肢の一部の形態が

異常になっている。いずれも体の一部分で正常な発生プログラムの中では想定しえない変

Page 85: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

84

化がおこっており、それでも全体としての機能を保つことができたのは、形成しうる形態が

あらかじめ厳格にプログラムされているのではなく、組織の相互作用に応じて可塑的に決

められるからなのだと考えられる。

再生に限らず、発生期、あるいは生後に与えられた一部の変化に対して、他の組織が可塑

的に対応することで、機能的な形態を保つ例はほかにも知られている。例えば、ニワトリの

発生中の後肢において金箔片を挿入することで脛骨の伸長を阻害すると、脛骨は短くなり、

爬虫類様の骨格の形態を示す。このとき、骨格の形態の変化に合わせて筋肉の形態も爬虫類

様に変化したのだという(Hampé 1959; Müller 1989)。また、生まれつき前肢が麻痺してい

たことで、生後二足歩行を続けていたヤギを解剖すると、骨盤や胸骨などの形態、及びそれ

に付随する筋肉や腱の付着の仕方がカンガルーのように二足歩行する動物のそれのように

変化していたという報告もある(Slijper 1942)。遺伝的な要因が変化の発端となって、その

変化に組織が可塑的に対応して全体の機能を保つケースも当然考えられる。Hox11 変異マ

ウスで軛脚の形態に著しい異常が見られたときも、上腕骨と橈骨、尺骨の間には相補的に組

み合わさった関節が形成されており、さらに、肘に哺乳類以外の前肢に見られるような種子

骨が形成されていた(Koyama et al. 2010)。もしもこのような遺伝的な変異が自然界で起こ

った場合、形態の変化は機能を保ったまま次世代に引き継がれていくのであろう。個体の生

涯、あるいは世代を重ねるなかで経験する体の形態の変化に対して、組織間の相互作用に基

づいて構造が可塑的に対応して機能性を維持する仕組みがあることが、生物の形態の多様

Page 86: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

85

性が許容される理由を説明するのかもしれない。

Page 87: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

86

謝辞

京都大学大学院理学研究科分子発生学講座教授・阿形清和博士は私がこの道を選ぶきっか

けをくださっただけでなく、丸八年の長きに渡り私の身勝手を許しつつ最高のご指導とサ

ポートをくださいました。京都大学大学院理学研究科再生生物学特別講座特定助教・井上

武博士は、文字通りピペットマンの握り方から、聞き分けの悪い私に忍耐強く研究の基礎

を叩き込んでくださいました。

京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻教授・山田重人博士ならびに先天異常標本解

析センター及び人間健康科学専攻黒木研の皆様には、EFICを使い倒して研究を遂行する

ことを快諾くださり、多大なご協力をいただきました。

東北大学大学院生命科学研究科器官形成分野・林真一博士にはカエルの in situハイブリダ

イゼーションのご指導をいただきました。また、京都大学大学院理学研究科動物発生学分

科・川地輝明氏には透明骨格標本作製のご指導をいただきました。

京都大学大学院理学研究科分子発生学講座・エリザベス中島博士には、原著論文投稿時に

研究内容を深く理解してくださり、丁寧な英文校正をいただきました。

京都大学大学院理学研究科分子発生学講座・浦田悠子氏、山下航氏のご支援とご協力がな

ければ、私は博士課程をやり遂げることはできなかったでしょう。本研究を遂行するにあ

たり、分子発生学講座の皆様、ならびに京都大学大学院理学研究科動物発生学分科教授・

高橋淑子博士をはじめ、動物発生学分科の皆様には貴重なご意見、ご討論をいただきまし

た。

Page 88: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

87

私の人生において母の献身的な貢献への感謝は言葉ではとても語り尽くせないものがあり

ます。また、父はアカデミアとは無縁だったにも関わらず私を応援し続けてくれました。

特に、「プロとしてやる上で最も武器にすべきは志だ」と「お前は生き物の命を犠牲に研

究をしているのだから形にするまでやり切れ」との言葉は胸を打つものがありました。

最後に、本研究で犠牲になったイモリ、カエルたちに心から感謝したいと思います。

この場を借りて皆様に厚く御礼を申し上げたいと思います。

Page 89: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

88

引用文献

Agata, K., T. Tanaka, C. Kobayashi, K. Kato and Y. Saitoh. 2003. Intercalary regeneration in

planarians. Developmental Dynamics 226:308-316.

Agata, K., Y. Saito and E. Nakajima. 2007. Unifying principles of regeneration I:

Epimorphosis versus morphallaxis. Development, Growth & Differentiation 49:73-78.

Agata, K. and T. Inoue. 2012. Survey of the differences between regenerative and non-

regenerative animals. Development, Growth & Differentiation 54:143-152.

Baker-LePain, J. C. and N. E. Lane. 2010. Relationship between joint shape and the

development of osteoarthritis. Current Opinion in Rheumatology 22:538-543.

Bi, W., J. M. Deng, Z. Zhang, R. R. Behringer and B. de Crombrugghe. 1999. Sox9 is required

for cartilage formation. Nat Genet 22:85-89.

Bischler, V. 1926. L'influence du squelette dans la régénération et les potentialités des divers

territoires du membre chez Triton cristatus. Revue Suisse De Zoologie 33:431-558.

Blitz, E., A. Sharir, H. Akiyama and E. Zelzer. 2013. Tendon-bone attachment unit is formed

modularly by a distinct pool of Scx- and Sox9-positive progenitors. Development

140:2680-2690.

Brøndsted, H. V. 1955. PLANARIAN REGENERATION. Biological Reviews 30:65-126.

Brunet, L. J., J. A. McMahon, A. P. McMahon and R. M. Harland. 1998. Noggin, Cartilage

Morphogenesis, and Joint Formation in the Mammalian Skeleton. Science 280:1455-

Page 90: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

89

1457.

Bryant, S. V., T. Endo and D. M. Gardiner. 2002. Vertebrate limb regeneration and the origin

of limb stem cells. The International Journal of Developmental Biology 46:887-896.

Buckingham, M., L. Bajard, T. Chang, P. Daubas, J. Hadchouel, S. Meilhac, et al. 2003. The

formation of skeletal muscle: from somite to limb. Journal of Anatomy 202:59-68.

Carlson, B. M. 2007. Chapter 8 - Reintegrative Processes in Regeneration. In:(Principles of

Regenerative Biology), {ed. B. M. Carlson}. Academic Press, Burlington, 165-188.

Christensen, R. N. and R. A. Tassava. 2000. Apical epithelial cap morphology and fibronectin

gene expression in regenerating axolotl limbs. Developmental Dynamics 217:216-224.

Christensen, R. N., M. Weinstein and R. A. Tassava. 2002. Expression of fibroblast growth

factors 4, 8, and 10 in limbs, flanks, and blastemas of Ambystoma. Developmental

Dynamics 223:193-203.

Cosden-Decker, R. S., M. M. Bickett, C. Lattermann and J. N. MacLeod. 2012. Structural and

functional analysis of intra-articular interzone tissue in axolotl salamanders.

Osteoarthritis and Cartilage 20:1347-1356.

Cserjesi, P., D. Brown, K. L. Ligon, G. E. Lyons, N. G. Copeland, D. J. Gilbert, et al. 1995.

Scleraxis: a basic helix-loop-helix protein that prefigures skeletal formation during

mouse embryogenesis. Development 121:1099-1110.

Page 91: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

90

Dent, J. N. 1962. Limb regeneration in larvae and metamorphosing individuals of the South

African clawed toad. Journal of Morphology 110:61-77.

Douglas, B. S. 1972. Conservative management of guillotine amputation of the finger in

children. Journal of Paediatrics and Child Health 8:86-89.

Ecker, A. 1889. The anatomy of the frog, translated with numerous annotations and additions

by G. Haslam. Clarendon Press, Oxford,

Edom-Vovard, F., B. Schuler, M.-A. Bonnin, M.-A. Teillet and D. Duprez. 2002. Fgf4 Positively

Regulates scleraxis and Tenascin Expression in Chick Limb Tendons. Developmental

Biology 247:351-366.

Egawa, S., S. Miura, H. Yokoyama, T. Endo and K. Tamura. 2014. Growth and differentiation

of a long bone in limb development, repair and regeneration. Development, Growth

& Differentiation 56:410-424.

Eloy-Trinquet, S., H. Wang, F. Edom-Vovard and D. Duprez. 2009. Fgf signaling components

are associated with muscles and tendons during limb development. Developmental

Dynamics 238:1195-1206.

Endo, T., K. Tamura and H. Ide. 2000. Analysis of Gene Expressions during Xenopus

Forelimb Regeneration. Developmental Biology 220:296-306.

Endo, T., S. V. Bryant and D. M. Gardiner. 2004. A stepwise model system for limb

Page 92: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

91

regeneration. Developmental Biology 270:135-145.

Francis-West, P. H., A. Abdelfattah, P. Chen, C. Allen, J. Parish, R. Ladher, et al. 1999.

Mechanisms of GDF-5 action during skeletal development. Development 126:1305-

1315.

García-Carvajal, Z. Y., D. Garciadiego-Cázares, C. Parra-Cid, R. Aguilar-Gaytán, C.

Velasquillo, C. Ibarra, et al. 2013. Cartilage Tissue Engineering: The Role of

Extracellular Matrix (ECM) and Novel Strategies. In:(Regenerative Medicine and

Tissue Engineering), {ed. J. A. Andrades}. InTech, 365-398.

Gardiner, D. M., T. Endo and S. V. Bryant. 2002. The molecular basis of amphibian limb

regeneration: integrating the old with the new. Seminars in Cell & Developmental

Biology 13:345-352.

Goode, R. P. 1967. The regeneration of limbs in adult anurans. Journal of Embryology and

Experimental Morphology 18:259-267.

Goss, R. J. 1969. Principles of regeneration. Academic Press, New York, 299.

Gros, J. and C. J. Tabin. 2014. Vertebrate Limb Bud Formation Is Initiated by Localized

Epithelial-to-Mesenchymal Transition. Science 343:1253-1256.

Guo, X., T. F. Day, X. Jiang, L. Garrett-Beal, L. Topol and Y. Yang. 2004. Wnt/β-catenin

signaling is sufficient and necessary for synovial joint formation. Genes &

Page 93: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

92

Development 18:2404-2417.

Han, M., X. Yang, J. Lee, C. H. Allan and K. Muneoka. 2008. Development and regeneration

of the neonatal digit tip in mice. Developmental Biology 315:125-135.

Hartmann, C. and C. J. Tabin. 2000. Dual roles of Wnt signaling during chondrogenesis in

the chicken limb. Development 127:3141-3159.

Havis, E., M.-A. Bonnin, I. Olivera-Martinez, N. Nazaret, M. Ruggiu, J. Weibel, et al. 2014.

Transcriptomic analysis of mouse limb tendon cells during development.

Development 141:3683-3696.

Hayashi, S., H. Ochi, H. Ogino, A. Kawasumi, Y. Kamei, K. Tamura, et al. 2014a.

Transcriptional regulators in the Hippo signaling pathway control organ growth in

Xenopus tadpole tail regeneration. Developmental Biology 396:31-41.

Hayashi, S., K. Tamura and H. Yokoyama. 2014b. Yap1, transcription regulator in the Hippo

signaling pathway, is required for Xenopus limb bud regeneration. Developmental

Biology 388:57-67.

Hayashi, T., K. Sakamoto, T. Sakuma, N. Yokotani, T. Inoue, E. Kawaguchi, et al. 2014.

Transcription activator-like effector nucleases efficiently disrupt the target gene in

Iberian ribbed newts (Pleurodeles waltl), an experimental model animal for

regeneration. Development, Growth & Differentiation 56:115-121.

Page 94: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

93

Hinchliffe, J. R. and D. R. Johnson. 1980. The Development of the Vertebrate Limb: An

Approach Through Experiment, Genetics, and Evolution. Oxford University Press,

New York, 284.

Holder, N. 1977. An experimental investigation into the early development of the chick elbow

joint. Journal of Embryology and Experimental Morphology 39:115-127.

Holder, N. 1989. Organization of connective tissue patterns by dermal fibroblasts in the

regenerating axolotl limb. Development 105:585-593.

Horb, M., A. Zorn, J. Baker, D. Buchholz, S. Moody, D. Rokhsar, et al. 2014. Xenopus

Community White Paper 2014. Available at:

http://www.xenbase.org/moxiemanager/tinymce/plugins/moxiemanager/data/files/bo

b/pdfs/XWP_2014.pdf. Last accessed 2015-02-27

Huang, Alice H., Timothy J. Riordan, L. Wang, S. Eyal, E. Zelzer, John V. Brigande, et al.

2013. Repositioning Forelimb Superficialis Muscles: Tendon Attachment and Muscle

Activity Enable Active Relocation of Functional Myofibers. Developmental Cell

26:544-551.

Hutchison, C., M. Pilote and S. Roy. 2007. The axolotl limb: A model for bone development,

regeneration and fracture healing. Bone 40:45-56.

Ide, H. 2012. Bone pattern formation in mouse limbs after amputation at the forearm level.

Page 95: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

94

Developmental Dynamics 241:435-441.

Illingworth, C. M. 1974. Trapped fingers and amputated finger tips in children. Journal of

Pediatric Surgery 9:853-858.

Inoue, T., H. Kumamoto, K. Okamoto, Y. Umesono, M. Sakai, A. S. Alvarado, et al. 2004.

Morphological and Functional Recovery of the Planarian Photosensing System

during Head Regeneration. Zoological Science 21:275-283.

Inoue, T., R. Inoue, R. Tsutsumi, K. Tada, Y. Urata, C. Michibayashi, et al. 2012. Lens

regenerates by means of similar processes and timeline in adults and larvae of the

newt Cynops pyrrhogaster. Developmental Dynamics 241:1575-1583.

Ishibashi, S., R. Cliffe and E. Amaya. 2012. Highly efficient bi-allelic mutation rates using

TALENs in Xenopus tropicalis. Biology Open 1:1273-1276.

Iten, L. and S. Bryant. 1973. Forelimb regeneration from different levels of amputation in

the newt,Notophthalmus viridescens: Length, rate, and stages. W. Roux' Archiv f.

Entwicklungsmechanik 173:263-282.

Kahn, J., Y. Shwartz, E. Blitz, S. Krief, A. Sharir, D. A. Breitel, et al. 2009. Muscle

Contraction Is Necessary to Maintain Joint Progenitor Cell Fate. Developmental Cell

16:734-743.

Kamei, Y., M. Suzuki, K. Watanabe, K. Fujimori, T. Kawasaki, T. Deguchi, et al. 2009.

Page 96: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

95

Infrared laser-mediated gene induction in targeted single cells in vivo. Nat Meth

6:79-81.

Kardon, G. 1998. Muscle and tendon morphogenesis in the avian hind limb. Development

125:4019-4032.

Kido, T. 1959. Location of the New Pharynz in Regenerating Piece of Planaria. The science

reports of the Kanazawa University 5:77-84.

Kido, T. 1961. Studies on the Pharynx Regeneration in Phanarian,Dugesia gonocephala

I.Historogical Observation in the Transected Pieces. The science reports of the

Kanazawa University 7:107-124.

Koyama, E., Y. Shibukawa, M. Nagayama, H. Sugito, B. Young, T. Yuasa, et al. 2008. A

distinct cohort of progenitor cells participates in synovial joint and articular cartilage

formation during mouse limb skeletogenesis. Developmental Biology 316:62-73.

Koyama, E., T. Yasuda, N. Minugh-Purvis, T. Kinumatsu, A. R. Yallowitz, D. M. Wellik, et al.

2010. Hox11 genes establish synovial joint organization and phylogenetic

characteristics in developing mouse zeugopod skeletal elements. Development

137:3795-3800.

Kragl, M., D. Knapp, E. Nacu, S. Khattak, M. Maden, H. H. Epperlein, et al. 2009. Cells keep

a memory of their tissue origin during axolotl limb regeneration. Nature 460:60-65.

Page 97: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

96

Kurosaka, H., T. Takano-Yamamoto, T. Yamashiro and K. Agata. 2008. Comparison of

molecular and cellular events during lower jaw regeneration of newt (Cynops

pyrrhogaster) and West African clawed frog (Xenopus tropicalis). Developmental

Dynamics 237:354-365.

Léjard, V., G. Brideau, F. Blais, R. Salingcarnboriboon, G. Wagner, M. H. A. Roehrl, et al.

2007. Scleraxis and NFATc Regulate the Expression of the Pro-α1(I) Collagen Gene

in Tendon Fibroblasts. Journal of Biological Chemistry 282:17665-17675.

Lee, J. and D. M. Gardiner. 2012. Regeneration of Limb Joints in the Axolotl (Ambystoma

mexicanum). PLoS ONE 7:e50615.

Lin, G., Y. Chen and Jonathan M. W. Slack. 2013. Imparting Regenerative Capacity to Limbs

by Progenitor Cell Transplantation. Developmental Cell 24:41-51.

Loeser, R. F. 2014. Integrins and chondrocyte–matrix interactions in articular cartilage.

Matrix Biology 39:11-16.

Müller, G. B. 1989. Ancestral patterns in bird limb development: A new look at Hampé's

experiment. Journal of Evolutionary Biology 2:31-47.

Maden, M. 1982. Vitamin A and pattern formation in the regenerating limb. Nature 295:672-

675.

Maden, M. 1983. The effect of vitamin A on the regenerating axolotl limb. Journal of

Page 98: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

97

Embryology and Experimental Morphology 77:273-295.

Makanae, A., K. Mitogawa and A. Satoh. 2014a. Implication of two different regeneration

systems in limb regeneration. Regeneration 1:1-9.

Makanae, A., K. Mitogawa and A. Satoh. 2014b. Co-operative Bmp- and Fgf-signaling inputs

convert skin wound healing to limb formation in urodele amphibians. Developmental

Biology 396:57-66.

McCusker, C. D. and D. M. Gardiner. 2013. Positional Information Is Reprogrammed in

Blastema Cells of the Regenerating Limb of the Axolotl (Ambystoma mexicanum).

PLoS ONE 8:e77064.

McCusker, C. D. and D. M. Gardiner. 2014. Understanding positional cues in salamander

limb regeneration: implications for optimizing cell-based regenerative therapies.

Disease Models & Mechanisms 7:593-599.

Merino, R., D. Macias, Y. Gañan, A. N. Economides, X. Wang, Q. Wu, et al. 1999. Expression

and Function ofGdf-5during Digit Skeletogenesis in the Embryonic Chick Leg Bud.

Developmental Biology 206:33-45.

Mikic, B., B. J. Schalet, R. T. Clark, V. Gaschen and E. B. Hunziker. 2001. GDF-5 deficiency

in mice alters the ultrastructure, mechanical properties and composition of the

Achilles tendon. Journal of Orthopaedic Research 19:365-371.

Page 99: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

98

Mitogawa, K., A. Hirata, M. Moriyasu, A. Makanae, S. Miura, T. Endo, et al. 2014. Ectopic

blastema induction by nerve deviation and skin wounding: a new regeneration model

in Xenopus laevis. Regeneration 1:26-36.

Mitrovic, D. 1978. Development of the diarthrodial joints in the rat embryo. American

Journal of Anatomy 151:475-485.

Muneoka, K., C. H. Allan, X. Yang, J. Lee and M. Han. 2008. Mammalian regeneration and

regenerative medicine. Birth Defects Research Part C: Embryo Today: Reviews

84:265-280.

Murchison, N. D., B. A. Price, D. A. Conner, D. R. Keene, E. N. Olson, C. J. Tabin, et al. 2007.

Regulation of tendon differentiation by scleraxis distinguishes force-transmitting

tendons from muscle-anchoring tendons. Development 134:2697-2708.

Nacu, E. and E. M. Tanaka. 2011. Limb Regeneration: A New Development? Annual Review

of Cell and Developmental Biology 27:409-440.

Nacu, E., M. Glausch, H. Q. Le, F. F. R. Damanik, M. Schuez, D. Knapp, et al. 2013.

Connective tissue cells, but not muscle cells, are involved in establishing the proximo-

distal outcome of limb regeneration in the axolotl. Development 140:513-518.

Nakayama, T., I. L. Blitz, M. B. Fish, A. O. Odeleye, S. Manohar, K. W. Y. Cho, et al. 2014.

Chapter Seventeen - Cas9-Based Genome Editing in Xenopus tropicalis. In:(Methods

Page 100: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

99

in Enzymology), {ed. A. D. Jennifer and J. S. Erik}. Academic Press, 355-375.

Ogino, H., H. Ochi, C. Uchiyama, S. Louie and R. Grainger. 2012. Comparative Genomics-

Based Identification and Analysis of Cis-Regulatory Elements. In:(Xenopus

Protocols), {ed. S. Hoppler and P. D. Vize}. Humana Press, 245-263.

Ohgo, S., A. Itoh, M. Suzuki, A. Satoh, H. Yokoyama and K. Tamura. 2010. Analysis of hoxa11

and hoxa13 expression during patternless limb regeneration in Xenopus.

Developmental Biology 338:148-157.

Özpolat, B. D., M. Zapata, J. Daniel Frugé, J. Coote, J. Lee, K. Muneoka, et al. 2012.

Regeneration of the elbow joint in the developing chick embryo recapitulates

development. Developmental Biology 372:229-238.

Pacifici, M., E. Koyama and M. Iwamoto. 2005. Mechanisms of synovial joint and articular

cartilage formation: Recent advances, but many lingering mysteries. Birth Defects

Research Part C: Embryo Today: Reviews 75:237-248.

Pietsch, P. 1961. Differentiation in regeneration I. The development of muscle and cartilage

following deplantation of regenerating limb blastemata of Amblystoma larvae.

Developmental Biology 3:255-264.

Pryce, B. A., S. S. Watson, N. D. Murchison, J. A. Staverosky, N. Dünker and R. Schweitzer.

2009. Recruitment and maintenance of tendon progenitors by TGFβ signaling are

Page 101: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

100

essential for tendon formation. Development 136:1351-1361.

Rankin, S. A., A. M. Zorn and D. R. Buchholz. 2011. New doxycycline-inducible transgenic

lines in Xenopus. Developmental Dynamics 240:1467-1474.

Roddy, K. A., P. J. Prendergast and P. Murphy. 2011. Mechanical Influences on Morphogenesis

of the Knee Joint Revealed through Morphological, Molecular and Computational

Analysis of Immobilised Embryos. PLoS ONE 6:e17526.

Rosenthal, J., V. Mangal, D. Walker, M. Bennett, T. J. Mohun and C. W. Lo. 2004. Rapid high

resolution three dimensional reconstruction of embryos with episcopic fluorescence

image capture. Birth Defects Research Part C: Embryo Today: Reviews 72:213-223.

Satoh, A., H. Ide and K. Tamura. 2005a. Muscle formation in regenerating Xenopus froglet

limb. Developmental Dynamics 233:337-346.

Satoh, A., M. Suzuki, T. Amano, K. Tamura and H. Ide. 2005b. Joint development in Xenopus

laevis and induction of segmentations in regenerating froglet limb (spike).

Developmental Dynamics 233:1444-1453.

Satoh, A., Y. Nakada, M. Suzuki, K. Tamura and H. Ide. 2006. Analysis of scleraxis and

dermo-1 genes in a regenerating limb of Xenopus laevis. Developmental Dynamics

235:1065-1073.

Satoh, A., G. M. C. Cummings, S. V. Bryant and D. M. Gardiner. 2010a. Neurotrophic

Page 102: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

101

regulation of fibroblast dedifferentiation during limb skeletal regeneration in the

axolotl (Ambystoma mexicanum). Developmental Biology 337:444-457.

Satoh, A., G. M. C. Cummings, S. V. Bryant and D. M. Gardiner. 2010b. Regulation of

proximal-distal intercalation during limb regeneration in the axolotl (Ambystoma

mexicanum). Development, Growth & Differentiation 52:785-798.

Satoh, A., A. makanae, A. Hirata and Y. Satou. 2011. Blastema induction in aneurogenic state

and Prrx-1 regulation by MMPs and FGFs in Ambystoma mexicanum limb

regeneration. Developmental Biology 355:263-274.

Schweitzer, R., J. H. Chyung, L. C. Murtaugh, A. E. Brent, V. Rosen, E. N. Olson, et al. 2001.

Analysis of the tendon cell fate using Scleraxis, a specific marker for tendons and

ligaments. Development 128:3855-3866.

Schweitzer, R., E. Zelzer and T. Volk. 2010. Connecting muscles to tendons: tendons and

musculoskeletal development in flies and vertebrates. Development 137:2807-2817.

Shukunami, C., A. Takimoto, M. Oro and Y. Hiraki. 2006. Scleraxis positively regulates the

expression of tenomodulin, a differentiation marker of tenocytes. Developmental

Biology 298:234-247.

Singer, M. 1954. Induction of regeneration of the forelimb of the postmetamorphic frog by

augmentation of the nerve supply. Journal of Experimental Zoology 126:419-471.

Page 103: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

102

Slijper, E. J. 1942. Biologic-anatomical investigations on the bipedal gait and upright posture

in mammals, with special reference to a little goat, born without forelegs. Proc.

Koninklijke Nederlandse Akademie Van Wetenschappen 45:

Später, D., T. P. Hill, M. Gruber and C. Hartmann. 2006. Role of canonical Wnt-signalling in

joint formation. European cells & materials 12:71-80.

Später, D., T. P. Hill, R. J. O'Sullivan, M. Gruber, D. A. Conner and C. Hartmann. 2006.

Wnt9a signaling is required for joint integrity and regulation of Ihh during

chondrogenesis. Development 133:3039-3049.

Stevenson, T. J., V. Vinarsky, D. L. Atkinson, M. T. Keating and S. J. Odelberg. 2006. Tissue

inhibitor of metalloproteinase 1 regulates matrix metalloproteinase activity during

newt limb regeneration. Developmental Dynamics 235:606-616.

Stocum, D. L. 1968. The urodele limb regeneration blastema: A self-organizing system: II.

Morphogenesis and differentiation of autografted whole and fractional blastemas.

Developmental Biology 18:457-480.

Stocum, D. L. and D. A. Melton. 1977. Self-organizational capacity of distally transplanted

limb regeneration blastemas in larval salamanders. Journal of Experimental Zoology

201:451-461.

Stocum, D. L. 2011. The role of peripheral nerves in urodele limb regeneration. European

Page 104: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

103

Journal of Neuroscience 34:908-916.

Stoick-Cooper, C. L., R. T. Moon and G. Weidinger. 2007. Advances in signaling in vertebrate

regeneration as a prelude to regenerative medicine. Genes & Development 21:1292-

1315.

Storm, E. E., T. V. Huynh, N. G. Copeland, N. A. Jenkins, D. M. Kingsley and S.-J. Lee. 1994.

Limb alterations in brachypodism mice due to mutations in a new member of the

TGF[beta]-superfamily. Nature 368:639-643.

Storm, E. E. and D. M. Kingsley. 1996. Joint patterning defects caused by single and double

mutations in members of the bone morphogenetic protein (BMP) family. Development

122:3969-3979.

Storm, E. E. and D. M. Kingsley. 1999. GDF5 Coordinates Bone and Joint Formation during

Digit Development. Developmental Biology 209:11-27.

Sugimoto, Y., A. Takimoto, H. Akiyama, R. Kist, G. Scherer, T. Nakamura, et al. 2013.

Scx+/Sox9+ progenitors contribute to the establishment of the junction between

cartilage and tendon/ligament. Development 140:2280-2288.

Suzuki, M., N. Yakushiji, Y. Nakada, A. Satoh, H. Ide and K. Tamura. 2006. Limb

Regeneration in Xenopus laevis Froglet. TheScientificWorldJOURNAL 6:26-37.

Takagi, C., K. Sakamaki, H. Morita, Y. Hara, M. Suzuki, N. Kinoshita, et al. 2013. Transgenic

Page 105: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

104

Xenopus laevis for live imaging in cell and developmental biology. Development,

Growth & Differentiation 55:422-433.

Takaishi, R., T. Aoyama, X. Zhang, S. Higuchi, S. Yamada and T. Takakuwa. 2014. Three-

dimensional reconstruction of rat knee joint using episcopic fluorescence image

capture. Osteoarthritis and Cartilage 22:1401-1409.

Tasaki, J., N. Shibata, O. Nishimura, K. Itomi, Y. Tabata, F. Son, et al. 2011. ERK signaling

controls blastema cell differentiation during planarian regeneration. Development

138:2417-2427.

Tassava, R. A. 2004. Forelimb spike regeneration in Xenopus laevis: Testing for adaptiveness.

Journal of Experimental Zoology Part A: Comparative Experimental Biology

301A:150-159.

ten Berge, D., S. A. Brugmann, J. A. Helms and R. Nusse. 2008. Wnt and FGF signals interact

to coordinate growth with cell fate specification during limb development.

Development 135:3247-3257.

Tsuchiya, M. and S. Yamada. 2014. High-resolution histological 3D-imaging: Episcopic

fluorescence image capture is widely applied for experimental animals. Congenital

Anomalies 54:250-251.

Tsutsumi, R., T. Inoue, S. Yamada and K. Agata. 2015. Reintegration of the regenerated and

Page 106: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

105

the remaining tissues during joint regeneration in the newt Cynops pyrrhogaster.

Regeneration n/a-n/a.

Umesono, Y., J. Tasaki, Y. Nishimura, M. Hrouda, E. Kawaguchi, S. Yazawa, et al. 2013. The

molecular logic for planarian regeneration along the anterior-posterior axis. Nature

500:73-76.

Vinarsky, V., D. L. Atkinson, T. J. Stevenson, M. T. Keating and S. J. Odelberg. 2005. Normal

newt limb regeneration requires matrix metalloproteinase function. Developmental

Biology 279:86-98.

Wallace, H. 1981. Vertebrate limb regeneration. John Wiley & Sons, New York, 276.

Weninger, W. J. and T. Mohun. 2002. Phenotyping transgenic embryos: a rapid 3-D screening

method based on episcopic fluorescence image capturing. Nat Genet 30:59-65.

Wolfman, N. M., G. Hattersley, K. Cox, A. J. Celeste, R. Nelson, N. Yamaji, et al. 1997. Ectopic

induction of tendon and ligament in rats by growth and differentiation factors 5, 6,

and 7, members of the TGF-beta gene family. The Journal of Clinical Investigation

100:321-330.

Wright, E., M. R. Hargrave, J. Christiansen, L. Cooper, J. Kun, T. Evans, et al. 1995. The

Sry-related gene Sox9 is expressed during chondrogenesis in mouse embryos. Nat

Genet 9:15-20.

Page 107: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

106

Yakushiji, N., M. Suzuki, A. Satoh, T. Sagai, T. Shiroishi, H. Kobayashi, et al. 2007.

Correlation between Shh expression and DNA methylation status of the limb-specific

Shh enhancer region during limb regeneration in amphibians. Developmental

Biology 312:171-182.

Yamada, S., R. R. Samtani, E. S. Lee, E. Lockett, C. Uwabe, K. Shiota, et al. 2010.

Developmental atlas of the early first trimester human embryo. Developmental

Dynamics 239:1585-1595.

Yang, E. V. and S. V. Byant. 1994. Developmental Regulation of a Matrix Metalloproteinase

during Regeneration of Axolotl Appendages. Developmental Biology 166:696-703.

Yang, E. V., D. M. Gardiner, M. R. J. Carlson, C. A. Nugas and S. V. Bryant. 1999. Expression

of Mmp-9 and related matrix metalloproteinase genes during axolotl limb

regeneration. Developmental Dynamics 216:2-9.

Yang, G., B. B. Rothrauff and R. S. Tuan. 2013. Tendon and Ligament Regeneration and

Repair: Clinical Relevance and Developmental Paradigm. Birth defects research.

Part C, Embryo today : reviews 99:203-222.

Yokoyama, H., T. Maruoka, A. Aruga, T. Amano, S. Ohgo, T. Shiroishi, et al. 2011a. Prx-1

Expression in Xenopus laevis Scarless Skin-Wound Healing and Its Resemblance to

Epimorphic Regeneration. J Invest Dermatol 131:2477-2485.

Page 108: Title 両生類の四肢関節再生における残存部と再生部の組織間 ... · 2017-10-05 · 5 Figure 0-1. 二種のプラナリアの再生能力の違い (A)ナミウズムシ(Dugesia

107

Yokoyama, H., T. Maruoka, H. Ochi, A. Aruga, S. Ohgo, H. Ogino, et al. 2011b. Different

Requirement for Wnt/β-Catenin Signaling in Limb Regeneration of Larval and Adult

Xenopus. PLoS ONE 6:e21721.

Yu, L., M. Han, M. Yan, E.-C. Lee, J. Lee and K. Muneoka. 2010. BMP signaling induces digit

regeneration in neonatal mice. Development 137:551-559.

Yu, L., M. Han, M. Yan, J. Lee and K. Muneoka. 2012. BMP2 induces segment-specific

skeletal regeneration from digit and limb amputations by establishing a new

endochondral ossification center. Developmental Biology 372:263-273.

江口 吾朗 1980. 水晶体の再生 -組織細胞の分化転換-. 岩波書店, 東京, 日本