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194
Title Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価とその空力振動 特性に関する研究( Dissertation_全文 ) Author(s) 大東, 義志 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2006-09-25 URL https://doi.org/10.14989/doctor.r11912 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

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Page 1: Title Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価とそ … Girderを有する斜張橋の耐風性評価と その空力振動特性に関する研究 平成18 年8月 大東義志

Title Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価とその空力振動特性に関する研究( Dissertation_全文 )

Author(s) 大東, 義志

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2006-09-25

URL https://doi.org/10.14989/doctor.r11912

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価と

その空力振動特性に関する研究

平成 18年 8月

大東 義志

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Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価と

その空力振動特性に関する研究

平成 18年 8月

大東 義 志

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目次

第 1章緒論

1. 1 概説

1. 2 研究目的

参考文献

1

8

第 2章従来の研究および概要

2. 1 概説

2. 2 従来の研究

2. 3 風洞試験概要

2. 3. 1 模型および風洞試験の概要

2. 3. 2 フラッター解析法の概要

参考文献

11

12

26

30

第3章 端2主桁断面 (EdgeGirder)の基本的空力振動特性

.3.. 1 概説

3. 2 π型断面としての空力振動応答特性

3. 3 主桁形状変化が及ぼす基本的空力特性の把握

3. 4 1桁断面の主桁位置変化にともなう空力応答現象

3. 5 風の傾斜角の影響および、乱流中における空力振動応答の挙動

3. 6 端2主桁断面の空力特性に及ぼす断面辺長比〈主桁高)の影響

参考文献

aU門

4

A

u

n

d

o

a

A

I

4

4

5

5

6

6

第4章 端2主桁断面 (EdgeGirder)の渦励振およびフラッターの発現機構

4. 1 概説

4. 2 π型断面における渦励振応答特性

4. 2. 1 自由振動応答特性から推定する St数

4. 2. 2 端2主桁断面における自己励起型渦励振の特性

4. 3 π型断面におけるフラッタ一発現機構

4. 3. 1 端2主桁断面のフラッタ一発現機構

4. 3. 2 フラッタ一安定化メカニズムに関する考察

4. 3. 3 主桁を内側に設置した断面のフラッター特性

4. 3. 4 風の傾斜角の変化によるフラッター特性の考察

参考文献

72

73

75

i

ρ

o

a

u

'

i

8

8

9

m

1

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第 5章耐風設計から見た斜張橋の力学特性

5. 1 概説 106

5. 2 マルチケーブル斜張橋の力学特性

5. 2. 1 既存の斜張橋における固有振動数を用いた全体制性の分析 107

5. 2. 2 マルチケーブル形式が斜張橋全体剛性に及ぼす影響 111

5. 3 端2主桁断面の斜張橋適用可能支関長の検討

5. 3. 1 構造的観点からの適用可能支間長の概要 122

5. 3. 2 空力特性から見た適用可能支間長の実験的検討 123

参考文献

第 6章-端2主桁断面 (EdgeGirder)の長大斜張橋への適用性

6. 1 概説 131

6. 2 振動発生メカニズムの基づく合理的な制振対策の考案

6. 2. 1 各種制振対策部材の設置による耐風安定化効果 133

6. 2. 2 合理的な制振対策断面の空力振動特性 139

6. 2. 3 制振対策断面の安定化メカニズムに関する考案 142

6.3 渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の影響 148

6.4 実橋を想定した端2主桁断面の空力特性に関する考察 153

6. 5 端2主桁断面の経済性に関する一考察 163

参考文献

第 7章結論 168

謝 辞 170

APPENDIX

11

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<主な記号の説明>

:断面の主流方向長さ〈断面の弦長)

:断面主流直角方向長さ(桁高)

B

D

:断面辺長比BID

"",・:半弦長b

:主桁位置〈断面端部から主桁中心までの距離)

:抗力係数

:揚力係数

:ピッチングモーメント係数

:平均圧力係数

c

FWChp切一

GNφ :変動圧力係数

:変位と変動圧力との位相差

:無次元仕事

:たわみ変位

V

W全

η

:ねじれ変位

:振動数

:たわみ振動数 (Hz)

:ねじれ振動数 (Hz)

fん

必 :スクルートン数 (Scruton数)

:ストローハル数 (Strouhal数)St数

:風速V

:換算無次元風速l1-

:実橋換算風速予告

:風の傾斜角(迎角〉α

:下フランジ傾斜角θ

:空気密度p

:対数減衰率d

m

:鉛直たわみの等価質量

:ねじれの等価慣性モーメント

m

I

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第 1章緒論

1. 1 概説

近年,これまでの公共事業の主眼が社会資本整備というハード面から福祉・医療といっ

たソフト面に転換しつつあるなか,本四架橋に代表されるような国家フロジェクトの長大

橋梁建設には経済性を優先とした合理化が求められている.長支聞を渡すのに有利とされ

る橋梁形式の吊橋は現在,豊予海峡大橋,紀淡海峡大橋,津軽海峡大橋などに建設構想は

あるものの,それらの実現には技術的な課題の他に,昨今の経済情勢はじめ,国民レベル

の合意形成など多くの障壁を乗り越える必要がある.一方,中規模支聞を渡すのに適して

いるとされる斜張橋は,それがもっ景観性,シンボル性から多くの需要があり,各地で建

設されている.そのため景観に優れ,経済性を有する合理化斜張橋建設技術を蓄積するこ

とは,将来の長大斜張橋技術を構築するなかで必要不可欠である.

桁をケーブルで、斜めに吊って補強する考えは,竹製の歩行部を“重"で吊ったものが熱

帯地方に見られるようで,これが斜張橋の原型と言われている[1].斜張橋の歴史[1]"-' [12]

は吊橋よりも浅く, 19世紀前半に当時の土木技術の権威者である L.H.Navier (1785-1836)

が,材料学的・構造解析学的(不静定)未発達な時代背景も重なり r吊り橋の方が斜張橋

よりも力学的に進んでいるJと発表したため,近代吊橋の最初とされる Brooklyn橋(1883,

486m)から約 70年後のSt必msund橋 (1955,183m,スウェーテ'ン,写真 1・1・1)まで遅

れることになる.これより前の 1938年に戦後ドイツの橋梁復興計画のなかで, Dischinger

が吊橋のケーブルにステイケーブルを組み合わせ,剛性を高くした吊形式橋梁を提唱して

写真 1・1-1 St必msund橋 ,(1955, 183m,スウェーデン)[13]

1

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いたが,実際の橋梁に採用されることはなかった.しかし,ステイケーブルのみを用いた

いわゆる斜張橋を生み出す引き金になったことは間違いない.また, 1950年代は計算機技

術の発達も著しく,これまで手計算では解くことが困難であった不静定構造を精度良く解

くことができたことも斜張橋がこれ以降に急速に発達した要因でもある.このような背景

から Stめmsund橋をもって近代斜張橋の幕開けを迎えたのである. Strりmsund橋はケーブ

ルにロックドコイルを使用したこと,架設は張り出し工法によっていること, ケーブル定

着部は架設時の張力導入作業を考慮した構造であることなど,その後の斜張橋の模範とな

るものであった. St凶msund橋に続いて ケーブルシステムとしては最初のハープ形式が

採用された TheodorHeuss橋 (1957,260m)が建設され,さらに初めてA形主塔が採用

された Severins橋 (1959,320m),続いて Friedrich-Ebert橋 (1967,280m)では初の

マルチケーブル形式が採用された.そして 当時斜張橋としては世界最長を誇る Knie橋

(1969, 319m)へと続いていく.このKnie橋はπ型断面の主桁形式を有し,さらに 114m

と比較的高い主塔形式を持つにもかかわらず, H 形の主塔の聞には橋軸直角方向の安定を

確保するストラットや対傾構はなく 2本の独立柱を有することが構造的な特徴である.

このように斜張橋の建設が盛んになった背景として,先に述べた計算機技術の発達の他に

高強度材料の開発,特にケーブル用の高強度材料の開発や鋼床版構造の開発,すなわち軽

量な桁構造の開発なども挙げられる.一方,圏内では 1960年の勝瀬橋 (128m)をはじめ,

1975年には国内最初のマルチケーブルを採用したかもめ大橋 (240m),1977年には世界

で最初となるダブルデ、ッキを有する六甲大橋 (220m)が建設され, 1989年の横浜ベイブ

写真 1-1・2 多々羅大橋 (1998,890m)

2

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リッジ (460m), 1993年の東神戸大橋 (485m)に続いて,現在でも斜張橋としては世界

最大の支関長を有する多々羅大橋 (1998,890m,写真 1・1・2)へと発展し続けている[14]

--(16] (図 1・1・1).

最大支間長 (m)

1000

900

800

700

600

500

400

300

200

100

0

--&-ー海外の斜張橋ーー・一ー日本の斜張橋

Duisburg-Neuenkamp

1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985. 1990 1995 2000 2005 竣工年

図 1・1・1 鋼斜張橋の最大支関長の変遷〈※複合構造橋)(2] (17] (18] . '

斜張橋は図 1・1・1で示すように,ここ 50年ほどの聞に急激に発展・普及してきた橋梁形

式訟][17](18]であるため,斜張橋には解決すべき数々の問題・課題がある.しかし,斜張橋

が将来にさらに発展するためには,ただ,支間長を大きくすることだけでなく,前述した

ように,我が国における昨今の財政状況を踏まえたより一層のコスト縮減が重要な課題の

一つである.そこで,経済的でかつ合理的な斜張橋形式を考案するにあたって,図 1・1・2に

斜張橋の材料的な構造の分類を整理する.橋梁はその用途・自然条件・経済性・橋長・支

間割り・外観などの様々な要因によって,コンクリート構造,鍋構造の他に,鋼とコンク

リートのそれぞれの材料特性を生かした複合構造に分けられる(2].経済的な長大斜張橋建

設の実現には,コンクリート橋のメリットの一つである経済性と鍋橋のメリットの一つで

ある靭性との両特性を生かした複合構造が解決策の一つである(14].

複合構造の斜張橋としては過去にスペインの Rande橋 (1978,400m)がある包0]. こ

の橋はRC主塔に鋼床版を有するπ型,いわゆる 2主桁形式の斜張橋である.これまで独自

の発展をたど、ってきた鋼製斜張橋と PC斜張橋とが,この橋によりその両方の技術的節点を

共有したのである.

3

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鋼橋 合成構造

〈鋼とコンクリートの組合せによって

d 断面が構成される構造,例えば合成桁断

面を用いたもの)

斜張橋 複合構造橋

コンクリート橋 混合構造

〈鋼とコンクリートからなる部材を紐

み合わせた構造,例えばコンクリート製

主塔と鋼桁を用いたもの)

図 1-}・2 斜張橋の材料による分類凶

複合構造のなかでも主桁への合成構造を本格的に採用した長大斜張橋〈以下,合成斜張

橋と呼ぶ)には 1991年まで世界最長の支関長を誇っていたカナダ、のAlexFraser橋(1986,

465m,図 1・1・3)がある.Alex Fraser橋の主桁断面は,端部に配置した I桁を横桁で連結

した鋼桁システムとコンクリート床版を合成させた2主桁形式であり,当時では異例の安

価で建設されている.それ以来,海外では経済性を有する主桁形式として注目され, PC斜

張橋や鋼斜張橋の代案として数多く建設されている{1].

。。ON

図 1-1-3 Alex Fraser橋の一般図{21]

4

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表1-1-1

代表的な合成斜張橋の一覧表[1]

主桁

床版

主塔

橋名

所在

地完

成年

橋長

主径

関長

総(幅 m)員

断面

主桁

間隔

桁高

辺長

比種

別厚さ

支関

長支

聞方

向強

度材

料形

状高さ

備考

(m)

(m)

(m)

(m)

B/D

(岨)

(m)

(MPa)

(m)

Alex Praser

(Annacis)

カナ

ダ1986

930.5

465

32

28

2

14.4

プレキャスト

21.5

4.5

機軸

55

=ン夕日ート

H

154.3

Quincy 8ay

YIew

アメリカ

1987

542.5

274.3

14.17

13.26

1.83

6.9

プレキャスト

22.9

2.21

橋輪種E角

41

ロンク))-ト

H

71.4

Weirton-Steubenville

アメリカ

1990

456.6

249.9

28.04

27.43

場所打ら

21.6

2.44

橋軸ii:角

ロン夕日』・ト

A

111.3

非対

(南N浦ar大lpl橋1

)

中国

1991

765

423

30.35

24.44

2.1

12.9

プレキャスト

26

4.5

橋車直

60

ロシ夕日]ト

H

150

(VSeidcyoansd agFfaor oSde1t1u y)

インド

1992

823

457.2

35

29.1

2

15.7

場所打ち

23

4.1

檎輸♂

35

鋼H

122

8urlington

アメリカ

1993

379.5

201.2

26.5

25.7

1.52

14~9

プレキャスト

25.4

4.57

橋輪

41

zン夕日一ト

H

98.7

非対

Kamali River

ネパーノレ

1993

500

325

11.3

トラス

10

3

3.5

プレキャスト

22.9

3.33

機輪車角

35

鋼H

124.6

非対

0'1

Mezcala

メキシコ

19.93

938.9

311.4/

18;5

18.1

2.59

6.6

場所打ち

20

4

橋戦

コン夕日開ト

H

241.8

4径間

299.5

(楊Y滞m

大gp橋ll)

中国

1993

1172

602

30.35

箱25

2.7

10.3

プレキャスト

26 '" 40

4.5

橋軸

60

ヨン夕日】ト

逆Y

208

Clark

アメリカ

1994

414.5

230.4

31.85

30.5

1.9

14.7

プレキャスト

26.7

橋軸

ロン夕日ート

1本

柱86.3

Prod Hert:m

an

アメリカ

1995

674.8

381

2X23.83

2X23.83 1.54

13.7

プレキャスト

20

5.2

橋軸

41

ヨンク))-ト

ダプノレ

120.8

主繕ー体の並列橋、

(Baytown)

ダイアモンド

Second Sevem

イギリス

1996

946.6

456

34.6

25.2

2.63

12.2

プレキャスト

20 -35

3.65

橋輸

70

ロン夕日一ト

H

137

k(a汲p

水Sb叫門橋MU)11

香港

1996

930.5

465

32

28

2

14.4

プレキャスト

21.5

4.5

橋軸

55

ロンクリート

H

154.3

ダブルデ恨ッ,IJ径キ道間路PC鉄桁道併用機

Xupu

中国

1997

1074

590

35.95

箱33.25

2.7

12.1

プレキャスト

26 '" 46

橋軸

ヨンクロート

A

217

側径間

PC桁

Karkistetlsalmi

フィンランド

1997

460

240

12.8

10.7

1.6

6.9

場所打ち

26

4.8

橋軸

ロン夕日】ト

H

94.6

Raippaluoto

フィンランド

1997

440

250

12

13

1.5

8

プレキャスト

4.67

橋軸

出シ夕日ート

ダイアモンド

82.5

Ting Kau

香港

1998

1177

448/

2X 18.77

2X 18.77

1.75

9.4

プレキャスト

24 '" 30

4.5,

檎軸

60

ロン夕日』ト

1本

柱20

1.4 4 径

問、主塔共有の並列橋

475

平均断面辺長比※

11.0

※(総幅員)/(桁高+床版厚)

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ここで,これまでに建設された合成斜張橋のうち,スパンが200mを超える主な橋梁を表

1・1・1に示す.合成斜張橋はここ 10年程度の間に北米,ヨーロッパ諸国,中国で急速に施

工例が増加しており,現在,世界最大支関長を有する合成斜張橋は中国の楊浦大橋 (1993,

602m,図 1・1・4)[22]であり,主桁形式は箱桁を採用している.同じ中国にもAlexFraser

橋と同じように主桁形式に I桁を採用している南浦大橋 (1991,423m,図 1-1-5).[22]が

ある.

図 1・1・4 楊浦大橋の一般図包2]

図 1・1・5 南浦大橋の一般図[22]

このように海外で多くの施工実績があるものの,国内で、は本格的に長大橋へ合成斜張橋

を採用した施工例は見られない.そこで,表 1・1-1に示した合成斜張橋に共通する一般的な

特徴を以下に述べることで,わが国における技術的課題[1]を考察する.

(1 ) 比較的桁高さの低い I桁を橋の幅員方向の両端部に配置した単純な構造〈端2主桁

断面)である.

(2) 耐風安定性に劣り,耐風対策が必要になることが多い.

6

議開輯持務員硝占面持品←一一 ι←←一一一一【寸ザー..,.,.....,....".. ,--,~..-ヤヶ一一~一一一 一

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(3) ファンタイプのマルチケーブルを採用し,主桁のケーブル定着点はスパン中央から

塔付近までほぼ等間隔で密に配置されている.

(4) 床版間隔が広く,床販を横桁で支持する場合が多く,床版のスパン〈主筋方向)は

橋軸方向になる.

これら技術的な特徴のうち, (1)や (4)に関して,現在も!日日本道路公団をはじめと

して,全国にPC床板を有する少数主桁構造の合理化主桁形式を用いた鋼橋として盛んに

建設が進められている. (3)について,主桁断面に作用する軸力による材科学的な圧縮強

度の問題や合理的なケーブル定着構造の開発などの課題があるが,海外でいくつもの実績

があることを考えれば,これまで国内で合成斜張橋が建設されなかった直接的な理由とは

考えにくい.つまり,日本のような厳しい自然条件,特に橋梁にとっての厳しい風環境に

おいて,旧 Tacoma.Narrows橋主桁断面 (H型断面)[23]と幾何学的類似牲を有するπ型

断面であるため" (2)の耐風安定性に劣るという疑念が,これまで国内で施工されなかっ

た最大の要因であると考えられる.実際に各種空力振動問題に対して,斜張橋への適用を

目的とし,少数主桁形式を有する実構造断面を対象とした耐風性検討は散見するものの,

系統立てた基本的な空力特性の把握や振動発生メカニズムにまで言及したものは少ないの

が現状である.

そこで,耐風性安定性を確保するには風による構造物の挙動を正確に把握し,それに対

する適切な対策を施すことが重要である.斜張橋のみならず,橋梁にとって長大化・長支

開化することは橋梁自体が軽量化・柔構造化し,その結果,構造減衰やねじれ剛性が低下

する.そのため風によるフラッター,渦励振,ギャロッピング,レインパイプレーション

などの種々の空力不安定現象が橋桁やケーブル,主塔に発生する.フラッターやギャロッ

ピングのような破壊的な発散振動は橋梁に重大な被害をもたらすため,他の空力現象と比

べて比較的高い安全率が設定される.一方,物体の背後や側面に生成される周期的な渦に

より励起される渦励振は設計風速よりもはるかに低い風速域で発生することから,発生頻

度が高い振動現象であり,構造物の疲労破壊や施工性・使用性に問題となることがある.

本研究ではこのような背景から斜張橋に適用する主桁形式として, Alex Fraser橋の主桁

形式のようなコンクリート床版の端部に 2本の主桁を設けた断面(以下,端2主桁断面

(Edge Girder) [24]と呼ぶ)を対象に,上下非対称断面であるπ型断面の空力振動特性に

ついて論じるとともに,それらに発生する渦励振およびフラッターを中心とした空力振動

特性を把握し,新たな観点から,その振動発生機構について論じることとする.

7

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1. 2 研究目的

本論文では,上下非対称のπ型断面である端2主桁断面に発現する空力振動現象に関し

て,系統立てた,幾何学形状変化とその空力振動特性との関係を把握し,その振動発生機

構を明らかにすることを目的とする.さらにそれら断面の長大斜張橋への適用性を考究す

るものである.

はじめに,本論文ではBluffBodyの空力特性における端2主桁断面の位置付けを明確に

した上で,上下非対称のπ型断面である端2主桁断面が,どのような空力振動特性を有す

るのか, H 型断面および矩形断面の振動応答特性と比較して,基本的な空力振動特牲につ

いて考察する.さらには主桁形状および主桁位置や桁高(断面辺長比)を変化させること

で,、端2主桁断面の空力特性に及ぼす影響を把握する.次に渦励振特性やフラッター特性

に着目して,自由振動応答特性および非定常圧力特性から断面周りの流れ場を把握した上

で,下側形状変化がなぜ上面の流れ場に影響を及ぼし,全体の応答特性を決定づけるのか,

H 型断面や矩形断面の空力特性と比較しながら,その振動メカニズムについて論じる.次

に斜張橋の固有値解析より主桁のねじり剛性をパラメータに,ねじれ振動数に着目したマ

ルチケーブルの斜張橋全体剛位への寄与について考察する.また,端2主桁断面の長大斜

張橋への適用可能な支関長について,その耐風特性の観点から述べる.特に支間長,主桁

位置およびフラッタ一発現風速の関係を明らかにすることで,今後の合理化桁斜張橋を計

画する際の有効な耐風基礎データを示す.さらに,長大斜張橋への適用牲に関して,本研

究で明らかにした振動発生メカニズムに基づく合理的でかつ,耐風安定性に優れた耐風対

策を考案し,その耐風性能を確認する.最後に,実橋を想定した合理的な斜張橋主桁形式

を考案し,その耐風性評価を行うとともに経済評価も含めた総合的な検討を行う.

なお,本研究で対象とする端2主桁断面の断面辺長比は,表 1・1・1にあるようなこれまで

施工実績のある合成斜張橋の断面辺長比の平均値BID=11.0であることに加え,長大斜張橋

への適用を考慮して,断面辺長比 BID=10とした断面を対象として,その空力振動特性に

ついて論じることとする.

九まず,第1章では,本論文の研究背景と研究目的を述べ,本研究の位置付けを明確にし

た.第2章ではこれまで行われてきた既往の研究を整理し, Bluff Bodyの空力特性におけ

る端2主桁断面の位置付けについて述べる.また,本研究で行った実験および解析の概要

について述べる.

第3章では, H型断面および矩形断面の振動応答特性と比較して,非対称断面としての

基本的な空力振動特性を考察する.さらに幾何学形状の違いによる基本的な空力特性につ

いて述べる.

8

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第4章では第3章で明らかにした把握した基本的な空力振動特性をもとに,上下非対称

である端2主桁断面の渦励振応答特性やフラッター特性について論じる.

H 型断面と幾何学的な類似性を有する端2主桁断面にとって,いくつものケーブルで支

持すること(マルチケーブル)により斜張橋の全体剛性を上げることが耐風性を確保する

上で重要である.そのため,第5章では斜張橋の力学特性として,マルチケーブルが及ぼ

す斜張橋全体制性への寄与について考察する.また,端2主桁断面が,どの程度の支関長

を有する斜張橋にまで適用が可能か,耐風設計の観点から長大斜張橋への適用可能な支関

長について述べる.

第 6章では,前章までの振動応答特性に基づいた合理的な制振対策を考案し,実橋想定

断面における端2主桁断面の長大斜張橋への適用性について耐風性検討を中心とした考察

を行う.最後に経済的な評価について一考察を行う.

以上を受けて,第7章では全体をまとめるとともに今後の課題および展望について述べ

る.

9

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<参考文献>

(1]土木学会:ケーブル・スペース構造の基礎と応用 1999.

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[6]大田孝二・深沢誠:橋と鋼

[7] 'JII田忠樹:近代吊橋の歴史 一経済性と剛性の相克一

(8]成田信之:鍋橋の未来; ....:. 2 1世紀への挑戦一

ω,] N.J.Gimsing: Cable Supported Bridges (吊形式橋梁 一計画と設計一)

(10]伊藤準,川田忠樹:超長大橋時代の幕開け一技術者達の新たな挑戦-

[11]長井正嗣,井沢衛,中村宏:斜張橋の基本計画設計法, 1997.

[12]藤野陽三,長井正嗣:吊り形式橋梁の現状と将来,構造工学論文集, JSSC,第 1巻 3

号, 1994.

[13] 'David Goodyear : Elements in the Design and Construction ofCable-Stayed Bridges,

OTEC, 2002.10

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[18](をO建設コンサルタンツ協会近畿支部:鋼橋の合理化設計および耐風・耐震設計に関す

る調査研究

[19]橋と風:橋と風編集グループ

(20]成瀬輝男:スペインの犬型斜張橋,橋梁と基礎, pp.12・15,1977.11

[21] HI田忠樹監修:複合構造橋梁, 1994.

[22]林元培,謝旭,中崎俊三:中国の長大合成桁斜張橋の設計と施工一南浦大橋と揚

浦大橋一:橋梁と基礎, ,pp.25・34,1996.6

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包4]吊形式橋梁の合理化桁の耐風性向上の検討:住友重機械工業(掬受託研究報告書,平成

9年 3月

10

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第 2章従来の研究および概要

2. 1 概説

橋梁設計における動的耐風性の重要性を認識させ,今日の耐風工学の契機になったのは,

言うまでもなく, 1940年に起きた旧 TacomaNarrows橋 (1940,853m)の落橋事故(写

真 2-1-1)である.この事故は,ねじれフラッターによる空力不安定現象が主な原因とされ

ている[1]. その後,多くの研究機関で静的な風荷重の評価に加えて,動的な振動現象の研

究が加速度的に進み,各種空力振動現象の発生機構や特性が解明されつつある.そして,

これらの研究成果が現在の世界各国において見られる長大橋梁建設の重要な役割を担って

いる.

写真 2・1・1 旧TacomaNarrows橋 (1940,853m,アメリカ)

橋梁は様々な部材要素で構成されている.桁,塔,ケーブルのみならず,高欄,添加物

など,それぞれに作用する空力不安定現象について,これまで数々の研究や報告がある.

特に橋梁の桁に作用する動的空力不安定現象としては 風の乱れによるパフェッティング

振動,一般的には風速発散型とされるフラッター,ギャロッピング,風速・振幅ともその

振動範囲が限定される渦励振などが挙げられる.本章ではこれまで種々の研究機関で行わ

れてきた研究のうち,本論文で対象とする空力振動現象であるフラッターと渦励振につい

て,その代表的な研究成果をとりまとめる.さらに,そこから得られている知見をまとめ

るとともに端2主桁断面の耐風性に関する他の研究機関の研究成果を列挙して, BluffBody

の空力特性における端2主桁断面の位置付けを明確にする.

本論文では風洞試験を中心に空力振動発生メカニズムの解明を試みているため,本章で

は本研究で実施した風洞試験および解析について,それらの概要を述べることにする.

11

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2. 2 従来の研究

構造物に風が作用すれば,構造物は風圧により静的な変形をしたり,時間的に変動する

空気力により動的な振動をしたりする[2]. 静的な構造物の挙動には単なる静的変形以外に

発散的変形であるダイパージェンスや横座屈などの静的不安定現象がある.一方,動的不

安定現象に起因する空気力(構造物自身の運動に伴う時間的に変化する空気力),すなわち

非定常空気力には構造物の振動性状にあまり影響されず強制的な外力として作用する強制

空気力と,流体中で構造物が振動することによって流れ場が変化し,それにより励起され

る自励空気力とに分けることができる.それぞれの空気力の作用による振動は強制振動お

よび自励振動と呼ばれる.強制振動にはバフェッティング現象などがその代表で,自励振

動にはギャロッピング,フラッターなどがある.また,自励振動と強制振動の両方の要素

を併せ持つ振動としてカルマン渦励振がある(図 2・2・1).これらの空力不安定現象のうち,

本論文で主として対象とする動的不安定現象は渦励振とフラッターであり,本節では,こ

れら空力現象に関する現在までに報告されている代表的な研究成果をとりまとめる.

空力不安定現象

【渦励振】

自励振動

強制振動

L

ギャロッピング(曲げ 1自由度フラッター)

ねじれフラッター

連成フラッター

自己励起型渦励振

カルマン渦型渦励振

パフヱツティング現象

図2・2-1 構造物に生じる各種空力振動現象

渦励振とは物体の背後や側面に生成される周期的な渦により励起され,その発現風速域

と振動振幅が限定されている振動である.ギャロッピング等の発散振動のように,構造物

を直接破壊至らしめるものではないが,設計風速よりもはるかに低い風速で発生すること

から,発生頻度の高い振動現象と言える.そのため,構造物の疲労や施工性,使用性の点

で問題となっている場合がある.さらに近年,橋梁断面において力学上または美観上の特

徴を生かすという観点から,流体学的に Bluffな断面を有する場合も多く,渦励振の発生す

る可能性がより高くなっている.

ィ 、、戸内 、

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物体が気流に曝されると,その物体が Bluffな断面の場合,断面形状のいかんを関わず,

必ず後流渦が形成される.これらの渦放出現象の放出周波数は次式のストローハル数 (St

と呼ばれる無次元渦放出周波数で表される凶.数)

St= fD V

(2.1)

V:限界風速ただし,f .交番渦の放出振動数,D:代表長〈桁高),

ストローハル数は断面の幾何学形状とレイノルズ数と呼ばれる次式の無次元量と関連付

Re=空γ

けられる.

(2.2)

γ:動粘性係数ただい

一般的にはレイノ

ルズ数変化の影響は小さいとされている.それに対し,断面辺長比 BID(B:桁幅, D:桁

矩形断面周りの流れでは,剥離点が上流側の角に固定されるために,

によって断面まわりの流れ場は大きく異なってくる.矩形断面の断面辺長比 BIDによ

って,前縁からの剥離せん断層や剥離せん断層の不安定性による渦の挙動が変化するため,

図2・2・2に示すように抗力係数や揚力係数,

高)

ストローハル数は複雑に変化する[3].

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'l

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i

0.20 3

qU援活nh

0.05

2

cu--説経出和

態 3 界断

→面

2 唱止

篠界断面

-AO

白V

ストローハル数と断面辺長比の関係[3]

13

ギャロッピング

角柱の背圧係数,抗力係数,図2・2・2

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中口ら[3]は種々の辺長比を持つ矩形断面を対象に風洞試験を行い,断面辺長比B/D==O.62

付近において抗力係数が最大になることや,断面辺長比 B/D=2.8および 6.0付近において

ストローハル数が不連続に変化する性質を示した.

しかし,前述したように矩形断面ではレイノルズ数の影響を比較的受けにくいと言われ

るが,レイノルズ数の変化に伴って矩形断面から放出されるカルマン渦の渦放出周波数が

変化するとの報告[4]もあり,矩形断面の空力特性に対するレイノルズ数の影響については

現在も研究が行われている.

ス 0.15F ロ

Jレ

数{品)0.1.0

O.旬.b 2 4 6'8 10

辺長比(BID)

口:Re=O.6xlぴ

• : R,,=1.1xI04

A : R,,= 2.1x 10'

A.! R,,=3.2XI()f

o :R,=-4.2xl0'

図2・2・3 矩形断面の辺長比によるストローハル数の変化[4]

矩形断面の空力特性は,前縁からの剥離せん断層の断面側面への再付着の有無により特

徴づけられる.つまり,断面辺長比により,完全剥離型と非定常剥離非定常再付着型,完

全再付着型に分類されている.図 2・2-2や図 2・2-3に見られるように断面辺長比 BID=2.8

および 6.0付近でストローハル数が不連続に変化する.断面辺長比 BID<2.8の断面では前

縁から剥離した流れが,断面側面に再付着することなく断面背後に巻き込む完全剥離型断

面である.これらは剥離せん断層が巻き込んで生じるカルマン渦により励起されるカルマ

ン渦型渦励振が生じる断面と言える.このようなカルマン渦によるカルマン渦型渦励振の

他に,断面前縁部からの剥離渦に起因する渦励振の存在も小林[5]お],中村[7][8],松本ら

[9][10][11]により指摘されている(図 2・2・4). 断面辺長比 BID>6.0の断面では,前縁から

の剥離は断面側面に定常的に再付着する完全再付着型断面である.一方, BIDく6.0の断面

では瞬間的には再付着したり離れたりする非定常剥離非定常再付着型断面と言え,また,

2.8<BID<6.0の断面では,時間平均的には剥離流れが断面側面に再付着する断面と言える.

14

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能、一

15

10

。1 oi

V=41

Group3

5 10

図2・2・4 各種断面の曲げ渦励振限界風速と辺長比の関係[10]

特に松本ら[11]は,これらの矩形断面の渦励振について,水槽中での可視化実験から,物

体の振動にともなって前縁剥離渦と後縁2次渦が断面後縁部近傍で一体化することを観察

し,これを前縁剥離型渦励振(自己励起型渦励振)と名付けた.さらに流れの可視化およ

び鉛直たわみ,ねじれの渦励振時の断面側面での非定常圧力特性から前縁剥離渦の断面を

流下する速度が,接近流速の約 60%になることを見出した.鉛直たわみならびにねじれ振

動における自己励起型渦励振の開始無次元風速は,それぞれ以下の式で示されるとした.

鉛直たわみ渦励振開始無次元風速: に'n οIN)・(1/0.6)・(BID) (2~3)

ねじれ渦励振開始無次元風速 Von

~ (2/(2N ~1)) ・ (1/0.6) ・ (BID) (2ρ

ただし,N=l, 2, 3,・・九 B:幅員,D:;桁高

さらに,松本ら[12]は,断面周りの流れのパターン,渦励振発現風速ストローハル数より

決まる共振風速との関連性,鉛直たわみとねじれの渦励振開始無次元風速の関係から,渦

励振を完全剥離渦型,前縁事j離渦型,付着型および混在型の4種類に分類し,さらに完全

剥離型では前縁からの剥離流が,前縁剥離型では前縁剥離渦と後縁2次渦が,付着型では

後縁2次渦が,渦励振発現の重要な要素となっていると指摘しており,渦励振の詳細な発

15

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現機構を解明している.

また,近年ではこのようなストローハル数の不連続牲について,嶋田ら(13]が行った

Two-Layerモデルを用いた修正型 k.ε モデルによる 2次元解析によって再現されており,

数値流体解析の分野でもめざましい研究がなされている.

松本ら[14]は,自己励起型渦励振は物体自身の振動によって,物体周りの剥離せん断層の

不安定性が増幅されやすい特定の周波数領域で,その不安定牲が発現するとした.また,

剥離せん断層は,物体自身の運動の他に,f1.owimpingement,applied sound, pulsating f1.ow

等の外的撹乱によっても影響を受け,不安定性が増幅されることが知られている[15][16].

また,松本ら[14]は脈流中における 2次元矩形断面の渦励振に関する研究を行い,断面側面

上で圧力変動と脈流周波数が同期する領域,すなわち剥離せん断層の不安定性増幅領域は

自己励起型渦励振の生じる周波数領域に良い一致が見られるとしている.したがって,こ

れらの渦励振は剥離せん断層の不安定性増幅領域の発現によって始まり,その領域の終わ

りとともに振動も収まると結論づけている.このようにカルマシ渦と自己励起型渦励振に

起因する前縁剥離渦の研究は現在も進められており,さらにその相互干渉についても詳細

な議論がなされている.

(2曹/1))

0.1

Aω凸

Ea

0.0

10 20 換算風速 WljD)

A コ 42

也止L軍士{単位:mm:模型寸法) μ叫

図2・2・5 橋梁主桁断面の空力応答特性(乱流効果)[17]

一方,橋梁断面の渦励振特性の評価に関して,橋面に設置される地覆や高欄などの橋梁

付属物の影響についても考慮する必要がある.一般的な高欄形式として,ある充実率をも

っポスト形式の高欄や充実率が 100%となる壁高欄などがあるが,最近では,高さ方向に途

中まで壁高欄で,その上がポスト形式の半壁高欄や,さらには都市高速道路などに見られ

る防音壁や遮風壁なども増えている.それらが断面の空力特性に影響し,空力応答特性が

16

、Uγ 一 ι 1 宇d 一 、

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g

X、

草色;

・・Eーーーー

大きく変化する場合がある.例えば,一般的に渦励振は乱流中では一様流中に比べ安定化

する傾向にあるが,図 2・2・5に示すように逆に乱流中でその応答特性が大きくなる場合もあ

る[17][18].

これまで述べてきたように渦励振については,様々な研究機関でその発現機構の解明が

なされており,それらをもとにした制振対策がいくつもの橋梁に適用されていることは周

知の通りである.

【フラッター】

構造物の空力不安定振動を大別すると,前述したように自励振動と強制振動に分けられ

る.上述の自己励起型渦励振は前縁と後縁での渦形成のタイミングがその発生機構に重要

な要素となっており,自励的な振動と言える.つまり,自励振動とは構造物の振動を助長

あるいは持続させる周期的外力が構造物自体の振動によって供給される振動であり,その

発散的な自励振動としてはフラッタ{現象が挙げられる.このフラッター現象には振動モ

ードや振動挙動によって,ギャロッピング〈曲げ1自由度フラッタ時ーにねじれフラッター,

曲げ・ねじれフラッター〈以下,達成フラッター)などに分けられる.特にこのねじれフ

ラッターが 1940年に起こったf8TacomaNa町 ows橋(1940,853m)の落橋事故の主因[19]

と言われていることは先に述べた.つまり,フラッター現象の多くは一度限界風速に達す

ると,振動に励起されて振幅が増大していく発散振動であり,構造物にとって極めて危険

な現象である.

9

1.0 1.5

。2.0 2.5

B/H

。L 3.0 3.5

図2・2・6 矩型断面のねじれ応答特性[20]

17

。4.0

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フラッター現象のうち,ねじれフラッターとは,ある中心軸周りに自励的に回転振動す

る現象を言い,大築・鷲津ら[20]は断面辺長比 BID=1--4の6種類の矩形断面について迎角

を変えて,ねじれフラッターの発生領域を示した(図 2・2・6).矩形断面の場合,振動は渦

励振で始めり,流速増加と共にねじれフラッターに移行する場合が多いようである.

U/tD

20-1

3.33

1.11

Limit Cycle

2

、町、唱,,

4

• :by Y oshimura et al. .. . :Resonant Wind Verocity for H ~Section

Bρ 6 8 10 12 20

図2・2・7 H型断面のねじれ応答特性包1]

一方,松本ら[21]は様々な断面辺長比 (BID=2--20) を有する H型断面の応答を一様流

中と格子乱流中で計測し,興味深い情報が得られている.すなわち, H型断面のねじれフ

ラッター特性は断面比によって限定型,発散型,安定型の 3種類に分類することができ,

その境界となる断面辺長比BIDは3.4および 10付近にあるとしている〈図 2・2・7).このよ

うに,断面の幾何学形状によって,ねじれフラッタ一発生領域の模様はかなり複雑であり,

特に複雑な形状を有する橋梁断面の応答の推定には,これまでの風洞試験の結果を用いて,

経験的に発現風速を予想する方法をとらざるを得ないと言える.

これらのフラッタ一発生メカニズムについては,種々の研究機関により更なる解明が進

められている.松本ら[22]の研究によれば,フラッターは3タイフに分類され,一つは流れ

が剥離することに起因し,“物体の姿勢及び速度が変化したとき,流れは瞬間的に変化せず,

主流により剥離流の後方まで伝えられるまで定常状態に達しない"という「流れの遅れJ

の効果によるもの,また一つは,渦の流下に起因する“Low Speed Flutter" (ねじれフラ

ッタータイプ),さらに比較的扇平な断面に発生し,前縁の局所的な剥離流れにより励振す

18

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・・・・・ーー-

る連成ヲラッタータイプとに分類される.これらは様々な辺長比を持つ矩形断面や H型断

面に隠する風洞試験によって確認している.

達成フラッターとは曲げ・ねじれ振動間の空気力学的連成によって生じる 2自由度連成

振動であり,このとき作用する非定常空気力は薄翼あるいは平板を対象とする Tbeooorsen

の研究包3][24]としてよく知られており,解析的に連成空気力が求められている.連成フラ

ッターが発現する構造物として,飛行機の翼が代表的であるが,明石海峡大橋のような長

大スパンを有する吊橋においても,桁断面の形状によっては連成フラッターが発生する.

これらの連成フラッターに対する安全性の評価を行うのに風洞試験によって個別に非定常

空気力を求める以外に,充実率の小さいトラス桁の場合には,これを平板とみなして

Theodorsenの空気力を用いるなど,種々の評価式[25][26]がある.、それらのなかで,

Selherg[25]のー提案する経験式があるが,これは翼理論に基づいて誘導されたのであるため,

橋梁断面のような剥離を伴う断面や複雑な振動モード系の場合には必ずしも適合しないこ

とに注意が必要である.

断面に作用する非定常空気力也7]は, Scanlanにより、提唱された曲げ・ねじれ2自由度振

動系の運動方程式(詳細は次節以降に記す)を 8つの非定常空気力係数 (Aerodynamic

Derivatives)として表現される.さらに,それら個々の非定常空気力係数の役割を明確に

する解析法として,松本ら訟8]が提唱した Step.by.step、解析法〈詳細は次節以降に記載す

る〉がある.そのなかで, Torsional Branch[29]の制御にはk*,Al*, 1るが重要な役割を

果たし, Heaving Branch[29]の制御には Hl*,Al*, 1るが重要な役割を果たすことが明ら

かになっており,各種フラッター現象の制御機構が解析的にも解明されつつある包9].特に

連成フラヴターに関する最近の研究によれば,その Step.by叫 ep解析から,ねじれフラツ

ターは基本的にはTorsional'Branchにより空力減衰が負となるが,断面辺長比BID=20,

振動数比ん/ι=1.1、の矩形断面の Step.by.step解析包8]では, Torsional Branchから

0.8 r'.opr昔前由IJeCl咽聞‘ , S r f(Hz] …:α,Y(HB) 一一:CEY(TB)

4 Q:SBS伺劫 . :SBS(TB)

0.4 。:M,側副吋但B1) • :Me鎚 uredσB1)

d.:M儲 sured(HB 2) • : Measured (TB 2)

+:M掛町吋(CoupledS匂.te) X :Me制 redσB3)2

0.0

B=0.3叫ん=3.26Hζ1.0=3.84 Hz,

m = 2.98 kglm, 1 = 0.0198 kgm, -0.4 0

9 10 司m/s] 0 10 司凶s] 8110= 0.0124,8;0= 0.0413

図2・2・8 矩形断面(BID=20)のStep-by.step解析結果[30]

19

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」一

Heaving Branchへのスイッチング現象包8)[30]も確認されたとして,連成フラッターを制

御する新しい方向性が見出されている(図 2・2-8).

一方,実橋においては,これら断面辺長比により決定される各種空力振動現象の発現風

速が,風洞試験結果と合わないこともある.この要因の一つに,異なる流れ場により励起

される空力振動現象が近接した風速域で共存する空力干渉現象が挙げられる.実際,辺長

比 1=4矩形断面[31]や旧 TacomaNarrows橋の主桁断面においても,その空力干渉現象が

確認されたとの報告もある[32](図 2・2・9).空力干渉現象には以下のようなものが挙げられ

る.

( 1 )ーせん断層不安定性に起因する渦とカルマン渦との干渉

(2 )ねじれフラッターとカルマン渦との干渉

(3)たわみモードのカルマン渦型渦励振によるねじれフラッターの抑制

(4)ねじれフラッターによるたわみモードのカルマン渦型渦励振の抑制

(5 )たわみモードのカルマン渦型渦励振によるねじれモードのカルマン渦型渦励振の

励起

国圃:Heavingvibration

~:Torsional vibration

CTII:Heaving & To'rsional vibratioD

…・:強制加援実験に基づくフラッタ一発現風速 (lDOF)

u ・“:たわみ漏励援の最大応答倍振幅

図2・2・9 H型断面の Sc数による応答変化特性[32]

このように渦励振やフラッターといった空力振動現象のみならず,それらが複雑に影響

を及ぼす空力干渉現象など,実橋断面にはこれら以外にも様々な空力現象が観測されてい

るが,その具体的な発生メカニズムや制御法など,未解明な点が多く残されている.

20

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【端2主桁主桁形式の耐嵐性】

これまで,主として矩形断面と H型断面を対象にした渦励振とフラッターに関する従来

の研究についてまとめた.本論文で対象とする端2主桁断面はいわゆる上下非対称のπ型

断面である.そのπ型断面では基本的な空力特性を評価したものより,実際の橋梁断面と

しての耐風性を評価・確認する研究が比較的多く見られる.ここでは,それら各研究機関

で行われた代表的な研究についてとりまとめる.

前章でも述べたように,床版端部に2本の主桁の有する長大斜張橋にはカナダのAlex

Fraser橋が有名であり,また,中国の楊浦大橋や南浦大橋もその代表例である.いずれも

主桁断面の耐風性について,設計上の安全性に関わる検討は行っているものの,その振動

発生メカニズムの解明までは至っていないのが現状である.

Irwin[33]はカナダのAlexFraser橋 (1986,465m,図、1・1・3)の桁断面についで図2・2・10

に示すような耐風評価を行っている.主桁を内側に配置すると①の応答のようにねじれフ

ラッターの発現風速が高風速域に移動するが,ゲーブルの定着構造を考慮すると②の断面

ように主桁は床販端部に置く方が合理的であるとし,主桁を床版端部に置いたままで断面

端部に EdgePlateを設けることで,③のような応答となることを確認し,所定の耐風性を

確保している.

8

@

6

4

。。五M

4

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〆合同

EEBBEEFBEE---EE

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ZO一ωgoト

CABlE ATTACH旋回TPOINT

4---f-----32. (B ) ----t4 I I _21 SlOPE_ ¥ I

① :tn 占日占a

・王2m

②寸叫 u← ③寸u E 4/E

図2・2・10 Alex Fraser橋(1986,465m)のねじれ応答図[33]

また,スペインの大型斜張橋の Rande橋 (1978,400~14m) [34]の主桁断面は, π型の

2主桁形式を採用しており,路面断面には三角形の閉断面の耳桁があり,ケーブル定着部

と鋼床版端部の補強を兼用するとともに,耐風性向上を図っている.

一方,国内でも横山ら[35]により 2主桁斜張橋については,フラッターに対する対策の必

要性を指摘した上で,エッジフレートと鉛直スタビライザーの組み合わせが有効であると

の報告もなされている〈図2・2・11).

21

">

員五

・・・ーーー

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→ヲエマジプレー p

ょを 一一品川丹」

¥

a a

0:ェ';1ジプレートのみ

口:スタピライザーのみ

ふ:組み合せ

5.0

4.0 o

ロ企

。。o口

3.0 掻

。Au a

O

o 0 A

口 。 d~ AA-

2.0

1.0

ー幅

deg

風速(1/8)

2主桁斜張橋の耐風性 (α=+30

) [35]

80 60 40 20 。

図2・2・11

士ブ135..

510.

て±

d ±ア-~畑

ω.幽し*5付e鋼管Zま4西園町萄

L 510. J 'I

u=ーーーー一ー『ーーーーーーー::-:-rJ ~0闘i込 ωPCI~?ガーダ- (.r.~?側同l510.圃、|

し」ーーーーーーーーーーーーー~I4畑町日ωPCエヲジガーダ-(.r.':Iジ欄叫

ω鋼管2~.肩書E本.蘭

60‘圃510踊h

て士

υcif.B

PCエッジガーダー

。ねじれ100F

。 ~OOF

10

Ucif.S 鋼管街基本断面

・ねじれ100fo 200F

強出し庫版銅曽桁

A ねじれ100F

a 200F

-7-5 -3 0 +3 +5 +7 迎角α{伽g.)

(b)PCエッジガーダー(2m)

-7 -5 -3 _ 0 +3 . +5 +7 迎角 ø~伽g.)(a)鋼管桁断面

鋼管2主桁と PCエッジガーダーの耐風性[37]

22

図 2・2-12

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-・ー-

さらに近年になって,プレートガーダ一橋やアーチ橋などの一般橋梁にも少数主桁形式

の合理化断面が積極的に採用されている.一方,斜張橋にもそのような少数主桁形式の適

用が再注目され,各種研究機関でこれらの耐風性に関する検討[36]--[52]が加えられている.

ここでは本論文の完成に至る研究[44]--[52]以外に他の研究機関でなされていた斜張橋

への適用を目的とした 2主桁断面の耐風性に関する最近の研究についてまとめる.

酒井ら[36]はI桁を主桁とする 2主桁断面の基本的な応答特性を把握するとともに, 床版

を外側に 2D(D:桁高)張り出すことによる安定化効果について検討している.

新原ら[37]--[39]は鋼管2主桁断面と PCエッジガーダーについてその耐風特性について

自由振動応答特性の観点から評価し,耐風対策'の必要性を述べている(図2・2・12).

@

図2-2-13 高欄を有する π型断面の可視化映像[40]

。dd

鋼管内側位置。d no 鋼管肉側位置(前流側のみ}

ず鋼管下一肉側中間位置

-3

フラツター限界風速(m/s)

40 ~ー現状(鋼管下}

30 一合ー鋼管肉側

20 r~ー鋼管内側;前流側のみ10 ト~ー鋼管下一肉側中間

o 迎角{度)

3

図2-2・14 PC床版を有する鋼管2主桁断面の空力特性μ2]

23

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久保ら[40][41]は非定常圧力測定や可視化実験などにより,床版端部の設置した壁高欄に

より床版上面における励振力が卓越するが,壁高欄を床版端部と壁高欄上端とのなす角度

。が 300

となる位置に設置することで耐フラッター性が向上するなどとしている(図

2・2・13).

図 2・2・14に示すように本田ら'[42]は経済性を考慮して,主桁形式を鋼管とした断面を提

案し,主桁に設置する検査車レールの位置と床板上面端部の切り込み形状により耐風性の

向上を図っている.その結果,フラッターに対しては軽微な空力対策によって改善が可能

であるとの目処付けができたと結んでいる.

さらに村上ら[43]は主桁形状を箱桁とし,その端部に隅切りを設けて耐風性向上を図って-

Jいる.特に正迎角の風に対して有効であるとしている(図 2・2・1&). このような隅切り断面

はこれまで抗力の軽減効果が期待できるとして5吊り形式橋梁の主塔[53]やアーチリブ[54]

にも採用されてきた.

e 週角{必g.)

(a) フラッタ一発現風速特性

門吋150 鞍鰐り 99n血一…晶一A

--0一本本隅切i;:(国一1(b)xu喝 Ocm

X白45cm)

怠utCμ仏I 一一n 主ιJ ~r;:二LνJ

お Xl ¥締下宿切り

XL=O -450 (b) 隅切り対策断面 単位:mm

図2・2・152主桁断面の耐風性検討の一例[43]

以上,本論文に関係する研究報告以外で,他の研究機関で行われた斜張橋に適用する 2

主桁の耐風特性について述べた.これら研究成果においては,いずれも実橋を想定した断

24

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面を対象に,斜張橋に適用する際には端2主桁断面単体だけでは,その耐風性確保が難し

く,耐風対策の必要性を論じている.

本論文では高欄や中央分離帯といった橋梁付属物を設置していない端2主桁断面,いわ

ゆる上下非対称である π型断面の空力振動特'性を研究対象としており,図 2・2~16 に示すよ

うに上面が矩形断面,下面がH型断面の幾何学的類似'f生を示している.このことから, Bluff

Bodyの基本的な空力特性を示すことになる矩形断面や H 型断面の空力特性と比較しなが

ら, π型断面の空力振動特'性について述べることが重要であると考えられる.また,本研

究ではπ型断面の主桁形状変化に伴う基本的な空力振動特性を体系的に調べるとともに,

矩形断面や H型断面の空力特性と照らし合わせた振動発生メカニズムについて考究する.

また,斜張橋の力学特性を論じるとともに,実橋への適用性についても論じるものとする

(図 2・2-16実線矢印).

流線形状 BluffBody

基本断面 実橋断面

くι 一一一一一←O 一〉く二〉噌中『

→ J円 面 >→ lJnふ叩ん|問心l心山〕山一1目品|品h

、口l ¥

i\~メ寸

前 M

翼断面

ず/ /

/ 矩形断面

平板nHHHHHu d-

¥

¥

¥

H型断面

π型断面

2ISUI主 1

n 一一一一__ n n幸

図2-2-16 本研究対象断面である π型断面の BluffBodyにおける位置付け

25

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2. 3 風洞試験概要

2. 3. 1 模型および風洞試験の概要

【模型】

本研究で対象とする模型は,縮尺率 11100とし,床版端部に主桁を 2本配置する端 2主

桁断面である.模型は2次元剛体模型である.床版として用いた断面は高さ(厚さ)d=5mm,

幅(幅員)B=300mm,断面辺長比 B/d=60となる矩形断面を用いた.その床版の端部に様々

な形状を有する主桁を設置した.本実験で主とする主桁形式は,図 2・3・1に示すような I桁

で,これを本論文では基本断面(以下, 1桁断面と呼ぶ)とする.床版厚・上下フランジ厚

を含む高さを桁高 D,主桁位置を床版端から主桁中心までの距離 Cで定義する.主桁位置 C

は clB=0.013""'0.300(4mm""'90mm)まで段階的に変化させた[48][49]. その他の主桁形

状や耐風安定化断面[50]"'"[52],高欄形状および実橋想定断面などはAppendixに掲載する.

4主B

B

~ 47A

ぞt~訂(a) 1桁断面 (clB=0.013) (b) 1桁断面 (clB=0.167)

(c) 1桁断面 (clB=0.013) (d) 1桁断面 (clB=0.167)

図2・3・1 本研究で使用した I桁断面 (BID=10)

【風洞】

実験に使用した風洞は京都大学大学院社会基盤工学専攻に設置された室内回流式エッフ

ェル型風洞(測定部高さ 1800mm,幅員 1000mm,測定部全長 6550mm)である.風洞の

写真および概要図を図 2・3-2に示す.また,側面境界層および模型支持アームによる気流の

26

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-ーーーー-

撹乱による影響を防止するため,測定部側面 35mmの位置に導流壁を設けてある,模型設

置位置付近でほぼ一様な風速分布となることと,主流平均乱れ強さが平均風速 10m/s付近

で 0.3%以下となることが確認されている.自由振動応答測定実験では,一様流の他に,乱

流格子にて発生させた乱流中においても行った.乱流格子は模型中心より 1200mm上流側

に設置した.模型設置位置付近で主流方向の乱れの強さ Iuは 6.8%である.実橋想定断面

を用いた実験には住友重機械工業(掬所有の風洞を用いた (Appendix参照).いずれの風洞

も「本州四国連絡橋風洞試験要領(2001)J [55]に示された,風速分布の偏差::!::1%以内, 乱

れ強さ 1%以内の基準値を有効測定断面内で満足させる性能を有している.また,いずれの

模型も風速閉塞率は 5%以下であり,その他模型寸法条件は同じく 「本州四国連絡橋風洞試

験要領(2001)J [55]に示される基準値内に設定して実施した.なお,本研究において,一部

の検討を除いて,基本的に風洞試験の気流条件は一様流とする.

1草 画世町田Qme

/

(a溶ideView

ppo此 sys胎mi>r2DII凶 el

(b河opView Well.sL.rgeCrossSecti岨

(unit;;m凶

図2・3・2 風洞(京都大学大学院社会基盤工学専攻)

27

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【静的空気力測定実験の概要】

静的空気力の測定は模型端部に取り付けた 2基のロードセルにより検出し,動歪計,ロ

ーパスフィルターを通した後,サーマルアレイコーダーに記録した.測定は模型に-100 ___

+10。の風の傾斜角 α(以下,迎角 αと呼ぶ)をつけて 10

ピッチで行い,揚力・抗力・ピ

ッチングモーメントの三分力を構造軸上で測定した.測定風速はレイノルズ数の影響を確

認するために異なる 2風速を設定した.測定された三分力は,以下の式により揚力係数 α,

抗力係数 CJヮ,ピッチングモーメント係数 CMの各静的空気力係数として整理した.

Cr = _Lft = L ...

iPV2(おC... = Drag -

D ...

jpV2Dl

C., = Moment -M ... iPV2(幼)21

ただし,Lift:揚力(上向き正)(N), Drag:抗力(下流方向正)(N),

Moment:ピッチングモーメント(頭上げ正)(Nom),

ρ:空気密度(同'1m3),V:風速(m/s), b:半弦長 (m),

D:桁高 (m),1 :模型スパン長 (m)

【自由振動応答測定実験の概要】

(2.5)

たわみ,ねじれ各 1自由度自由振動応答測定実験では,模型の両端部の端板に支持アー

ムを取り付け,左右それぞれ4本ずつ,合計8本のコイルスプリングで風洞内に模型を水

平支持した.所要運動以外の模型の動きは,ピアノ線を張って拘束した.

模型の変位は,模型支持アームに取り付けたコイルスプリング基部に設置したコの字型

ピックアップに添え付けた抵抗線歪みゲージにより電気的に検出した.構造減衰を変化さ

せる実験装置として,電磁夕、ンパーを用いた.

なお,鉛直たわみ振動とねじれ振動のスクルートン数は,次のように定義される.

2mδ-Sc__ =一ーで'/

qpDL

21δA Sc.. =一ーでこ

'1' pD斗

ただし m'単位長さあたりの質量 (kg/m),1 :質量慣性モーメント (kgom),

(2.6)

δη:鉛直たわみに関する対数構造減衰率,の:ねじれに関する対数構造減衰率,

p:空気密度 (kg/m3),D :桁高 (m)

28

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露五、

[~I:定常圧力測定実験の概要】

非定常圧力測定実験では特に,振動変位と断面側面の圧力との間に生じる位相差の精度

良い測定が求められるため,各測定系が持つ位相特性を予め調べた.

たわみ変位は下向きを正としている.したがって,たわみ1自由度振動時において相対

迎角が頭上げ最大となる瞬間は,たわみ速度が下向き最大となる瞬間であり,たわみ変位

が最大となる時よりも 90。位相が進んでいることになる.また,ねじれ変位は頭上げを正

としている.ねじれ1自由度振動時の相対迎角はねじれ変位そのものであるので,相対迎

角とねじれ変位に位相差はない.空気力については,揚力は下向きを,モーメントは頭上

げを正とした.非定常圧力浪'J定実験から得られるデータは,模型表面の圧力孔位置におけ

る時間平均圧力は接近流の動圧を用いて無次元化した平均圧力係数Cp,変動圧力は模型振

動数成分の圧力変動の倍振幅を読みとり,動圧により無次元化した変動圧力係数Cpとして

整理した.また,変位と変動圧力との位相差別ま,たわみ1由度実験ではたわみ変位が下

向き最大となる瞬間から模型上面の負圧が最大となるまでの位相遅れを正とし,ねじれ1

自由度振動ではねじれ変位が頭上げ最大となる瞬間から上面の負圧が最大となるまでの位

相遅れを正とした.

これらの値から,模型側面の各測定点に作用する圧力が,振動1周期の聞にする無次元

仕事防・を次式で求めた.

たわみ 1自由度振動

ねじれ1自由度振動

ρ

一""血

"蹄争=す:す:

肋 =izゐ 748SUT

ただし,X:圧力孔の位置〈断面中心より下流向き正)

η0:たわみの片振幅,妙。:ねじれの片振幅

1JrH:たわみ振動における位相差 1JrT:ねじれ振動における位相差

ここで定義した無次元仕事は正値が励振力,負{直が減衰力の働きを表す.

【非定常空気力測定実験の概要】

非定常空気力測定実験の概要はAppendixに示す.

29

(2.7)

(2.8)

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2. 3. 2 フラッター解析法の概要

本研究では風洞試験の他に,風洞試験より得られたデータを用いて,各種解析を行って

いるので,本節にてその概要を述べる.

【固有値解析による実橋構造諸元】

本研究では主に中央支関長 600m級の斜張橋を対象としており,フラッタ一発現風速を

照査する際の諸条件をあらかじめ求めておく必要がある.そこで,端2主桁断面を有する

中央支関長 600Iil級(主塔高さ 200m.(主桁位置からの高さは 150m))の3径関連続鋼斜

張橋について,概略設計を行い,断面諸元を算出した.それらの値を用いて固有値解析[56]

を実施し,次式に示す実橋の各モードの等価質量.m(kg/m)および、等価質量慣性モーメシト I

(kg・m)を算出した.

mマq=1mf92+45+djds+ffIxdx+ιゅん+lzO;z}ds

jy S oOjyds 包.ω

Teq Sm{o! +り+Ofz)ds+S {IxO;x+んofry+ IzO;z)ds (2.1ω

つrx S oo;xds

ただし, mg :j次モード鉛直たわみ匂)に関する主桁の等価質量 (kg/m),

IZ:j次モード橋軸仕軸)まわりの主桁の等価質量慣性モーメント仕g'ω,

m:単位長さあたりの質量 (kg/m),

ι., /y,Iz: x, y, z周りの質量慣性モーメント,

ゆjx'ojy' ojz : j次モード関数の X,y, z軸方向成分,

ゆjrx'oρy' ゆjrz:j次モード関数のお y, z軸まわりの回転成分,

S{ )ds 橋梁全体に関する積分,

S o{ )ds 主桁に関する積分

そこで,動的応答を支配する鉛直たわみ対称基本モード,ねじれ対称基本モードに基づ

き,次式に示す相似則より 2次元部分模型に要求される所要振動諸元を決定した.

30

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~eq~ ~eq~

イ~jyプ人 =(-JY'yjmpd:& l' pd:&

I勾δ .I匂 δ一f Jrx?人=イ Jrx?んpd4

l' pd袋一

V ¥ /V f一人=どーんfd-P -fd雌

(2.11)

(2.12)

(2.13)

ただし, mF鉛直たわみの等価質量 {kg/m},

I23:ねじれの等価質量慣性モーメント {kgom},

ふ δ6-:鉛直たわみ,ねじれに関する対数構造減衰率,

p:空気密度 {kg/m3},d:桁高 (m),V:風速(m/s)

f: 鉛直たわみ,およびねじれの固有振動数 (Hz)~

( )p:実橋諸元, ( )m:模型諸元

【非定常空気力係数】

フラッター現象を考える際には,物体に作用する空気力を把握することが必要である.

平板や薄翼には流れの剥離が見られないことからポテンシャル理論の適用が可能とな

り,航空工学の分野において作用する空気力について解析的な研究が行われてきた.ポ

テンシャル理論の適用により Theodorsen [24]によって求められた非定常空気力につい

てはAppendixに記載する.一方,流線形状をとらない一般の橋梁断面においては,流

れの剥離を伴うため,翼のようにポテンシャル理論を用いてその非定常空気力を解析的

に求めることはできない.そこで,橋梁桁断面が風から受ける非定常空気力について,

Scanlanにより次のような定式化が提案されている[27].すなわち,たわみとねじれの

連成振動をする桁断面に作用する非定常揚力 L,非定常ピッチングモーメント M を8

個の非定常空気力係数EヘAt. (i-= i "-4) を用いて次式のように表した.

、East-J

η一b

H

司λML直

帥+

AW---td

H

司'ub

a帥+

.M一v

H

乱EH+

・η一V

rzEJEES-、

V

幼Ja--1

P

1一2

L

(2~14)

、ZE忌22J

η一b

A

ι且向+

AmT

A-LH帥'+

.M,一

vM

+

・η一VF

M

FEl--v

幼Ja屯、o'

1一2

M

31

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ただし,L:単位スパン当たりの揚力〈下向き正) (N/m),

M:単位スパン当たりのピッチングモーメント

〈頭上げ正,弦長中央点まわり) (N-mlm)

η:たわみ変位(下向き正,弦長中央点における変位) (m),

ゆ:ねじれ変位(頭上げ正) (deg.) ,

( : ) :時間微分,V:風速(m/s),p:空気密度 (kg/m3),

b:半弦長 (m), k:換算振動数 (=bωルう, ω:円振動数 (Hz),

このうち,IiI*, 1五七A2七Aa合は力の作用方向の変位〈速度)に比例する空気力を表す項

であり,非連成項と呼ばれる.一方, 1五*.昂七 Al*,A4*は力の作用する方向以外の変位(速

度)に比例する空気力を表す項であり,連成項と呼ばれる.

【たわみ,ねじれ2自由度系のフラッター解析〈複素国有値解析)法の概要】

非定常空気力係数を用いて自励空気力が評価されると,運動方程式を考えることで系の

応答を評価できる.多自由度系の線形運動方程式の応答を評価する方法に複素固有値解析

がある.たわみ,ねじれ2自由度系におけるこの解析法の概要を述べる.

たわみ,ねじれ2自由度系の運動方程式は式(2.14)を用いて次式のように表せる.

mij +C,ll +初=与(2b)v21kH1*ム阻2些 + 印 加k2H4*~~ 2'" "V ~V ~bl

1 _J'''L.i'¥TT21 ・1jo'-...bゆ iIれられk;O= ~p(2b2)V2'~ kAl 一+kA2 ー+k 2Aみは2A4" ~ ~

2" I "V ~V ~bl

ただし,C,,(ζ;J:単位スパン長あたりのたわみ(ねじれ)粘性係数

k,,(k) :単位スパン長あたりのたわみ〈ねじれ)ばね定数

m(I) :単位スパン長あたりの質量(慣性モーメント)

式(2.15)を行列で表現すると次式になる.

[M]{i}+ [C]{i}+[KXZ}=μ]{i}+[B!Z}

32

(2.15)

(2.16)

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ただし,

何]=[: ~l lcl=れ][Kl=[~ ~]

レ]=jphHfpb3ω~2:1 [B]= fp~~ω2Hfpb??fi I pb3ruA

1* pb4ruA2*1 1.-.1 I pb3(J)2A4. pb4(J)2A3.1

式(~.16)に次式の自由振動解を代入するモ

ヤ}=な)件。}eb

ただし,{ZO}=ら'o,Oorであり, η仏 ftoは複素数定数.

λ~[M Hz}+{ [C]-[A])λ{Z}+([K]-[B] Xzトヤ}より,

..., -'7事L-L-¥..,

一([C]-レか{z}一{[K]-[B]XZ}=A2[MXZ}

λ[MXZ} +附~}三 λ[MXZ}

が成立する.式(2.19)と式(2.20)を[C*]=[C]ーレ], [K*] = [K]-[B]としてまとめると,

iU 訓{{~}}-Å倒的陥!

すなわち,次式の固有値問題を得る.

[A]{Y} =λレHy}ただし,

{A]=出ij訓,レ]=間的判=闘

ここで,判中}より,次式の振動数方程式を得る.

I[A]-λ[,i ]1= 0

33

(2.17)

(2.18)

(2.19)

(2.2ω

(2.21)

(2.22)

(2.23)

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この振動数方程式を解くことで,次式の 2組の共役な複素固有値が得られる.

λj ヤj:!: i)ωj (j = 1, 2) (2.24)

ただし,(;j:モードjの粘性減衰比 (δj:対数減衰率〈δj=-2.1Z'~))

ω!;:モードjの円振動数

系の安定,不安定の判定は,

あるモードjについてん孟o({;jミ;0):発散振動あるいは非減衰振動

全てのモードについてδj>0 ({;jく 0):減表振動

となる.式(2.24)を式(2.23)に代入すると次式の複素固有ベクトルを得る.

、E22〉Z22J

f

J

f

J

Mt一一

ーもZ』s

J

AU

fF

(2.25)

各モードの振幅比Riとたわみ変位最大からねじれ変位最大までの位相遅れ'Pjは,

C符 +iC1j=手L'YOj

(2.26)

とすると,

R,=也lj -Iooj I

ー C.,'P, = tan-'<ーーと

C D' Ri (2.27)

となる.ただし,ここでのlJIj=tan-1 (b.ゐノにおいては次式とする.

b

一回一-my-

-m cos収=ーと一

.Ja2 +b2 (2.28)

以上のたわみ・ねじれ2自由度系複素固有値解析の簡単な流れを以下に述べる.

解析を行う風速域を設定し 1ステップでの風速の増分を決めて低風速から願に計算を

行う.ある風速を設定したら,次に振動数を仮定して換算振動数〈無次元風速)を求める.

仮定する振動数は最初のステップの風速において国有振動数を与え,それ以降のステップ

の風速においては前ステップにおいて得られた振動数を与える.この換算振動数を用いて

非定常空気力係数を求め,固有値問題を解いて固有値を求める.これによって得られた振

34

♂ υμI

Aも."、ーι十守 -

V 号、一 lさやてり ιι ‘ザデ、 之づふ?

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L一一一一

動数と先に空気力を与える際に仮定した振動数とを比較して,両者が十分に近い値となっ

ていなければ,固有値問題を解いて得られた振動数で新たに空気力を求めてもう一度固有

値問題を解く.この操作を繰り返して,振動数がある一定の値に収束したら,そのときの

固有値の実部から減哀を求めることにより,その風速における振動数と減衰を得ることが

できる.以上の収束計算を各分岐のモードごとに行う.そして風速を 1ステップ増加させ

て,次の風速における振動数と減衰を同様の方法で求める.このように風速を増加させな

がら振動数と減衰を求め,ある分岐のモードの減衰が負になったところでフラッタ]が発

生したものとみなす.ただし本研究ではフラッター解析を行うにあたり,対象とする振動

系の構造減衰を 0.02と想定じている.

【Step-by-step解析法 (Torsionalbranch)の概要】

連成フラッターが発生しているたわみ・ねじれ2自由度振動系において,一方の自由度

を拘束して 1自由度にすると振動は減衰することから,連成フラッターの発生には自由度

間の連成作用が深くかかわっている.松本らは連成フラッターの発生機構に関する一連の

考察から,その発生機構に基づいた Step-by-step解析法を提案している[22][57]--[60].次

章以降で述べるが,端2主桁断面における連成フラッター解析では,主としてねじれ分校

{Torsional branch}が発散振動解になり,たわみ分校 {Heavingbranch}は減衰振動解

となることから,本研究ではねじれ分校における非定常空気力係数の連成項を介したねじ

れ振動とたわみ振動の相関から,主にねじれ-分枝における連成フラッターの発生機構の解

明を試みる.ただし,たわみ分枝における Step-by-step解析手法はAppendixに記載する.

構造減衰のない有風時のねじれ振動の運動方程式は,たわみ振動がない場合,式(2.14)よ

り下式のように表される.

pb4,-__ " ・ pb

4

tt+旬。ゆ=(一子)ωFA29+(7ー)ωF'"A3tt

(2.29)

ただし, ωrTO:ねじれ固有円振動数

式(2.29)式の右辺を左辺に移項して,

pb4

-- "・ 2 pb4

4+(-7一ωFA2-)tt+向。 iωF'"A3 )tt == 0 (2.3ω

35

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ここに,ゅ:ねじれ変位〈頭上げ正),伊:ねじれ速度,it :ねじれ加速度,

ωifIJ:ねじれ固有円振動数, ωF.フラッター振動数, p:空気密度,

h:半弦長, 1:単位スパンあたりの慣性モーメント

また 1自由度ねじれ振動する物体の運動方程式は強制外力のない場合は一般に下式の

ように表される.

ゆ+2{;φωφゆ+ωJφ=0 (2.31)

ただし, 'o:ねじれ振動の減衰定数, ω。:減衰無し ({;o=O) とした場合のねじれ振動数

式(2.30)と式(2.31)の比較より,次式が成立する.

~I=一作)ωFA,' ., m; = ~{い(Pbh)ω斗(1--(;/) (2~32)

ただし, ω}:減衰有りとした場合のねじれ振動数

ねじれ1自由度振動の場合,このらが負となる時,すなわち Aよ>0の時フラッターが発

現する.一方 2自由度連成系においてはこのねじれ振動による連成項の空気力が作用し

て,たわみ振動の運動方程式は次のようになる.

pb2拳 . p b 22*pb3*・ pb3

η+ω,,0η=(一一)ωpHl η+(一一)ω'F~H4 η+(一一)ω'FH2-tþ+(

一一)ω'FkH3 ゆ

m m m m

ただし, ωηo:たわみ固有円振動数

式(2.33)の右辺を左辺に移項して,

(Jb2 ~~ *, . 2 沖22* ρIb3 いがJb3

ギ+(ー竺二ω'FHl)場+(ω。一一一ω'FkH4 )η=(一一)ω,FH2-tt + (r~~ )ω'F~H3 tt

m m m m

ここに, η:たわみ変位(下向き正), iJ :たわみ速度,考:たわみ加速度,

ωηo :たわみ固有円振動数 m:単位スパンあたりの質量

36

(2.33)

(2.34)

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"----ー←

また 1自由度たわみ振動する物体の運動方程式は,連成項の空気力が外力として作用

すると考えると下式のように表される.

.2 rpb3

・ ~ • rpb3

ij +2~n ω'n-ij + ω~ -11 = (一一)ω'FH2-ft+(一一)ω'/"H3ftm m (2.35)

ただし, Cq*:たわみ振動の減衰定数, ωJ:減衰無し〈ら合=0)とした場合のたわみ振動数

式(2.34)と式(2.35)の比較より,次式が成立する.

~.,. ~-件以)竹Ht• ω;' = ~{叫何件以}fP/H;}~_~:2) (2.36)

ただし, ωγ:減衰有りとした場合のたわみ振動数

ここで,ねじれ変位をゆ=ttsinω〆とおくと,ねじれ速度は次式のようになる.

ゆ =ω~Øcosω~t = ω~Ø sin(ω~t+90-) (2~37)

式(2.35)の外力による定常応答の振幅は式(2.37)より,次式で表される.

(pb3 )ω''FH2*O+(亙)ω'F2Hみ=互ω'F(ω'FH3*sinliJ;t+ω。HムOSliJ;t)(tm m m

=寄付叫)2+附治判OJ;I-A)

(2~38)

ここで, 11はねじれ変位頭上げ最大から,ねじれ振動による揚力最大までの位相遅れで

あり, 11は次のように表される.

Jω,~H内 IA=t組ー呈1,--"-ニーl

lωpH3 J

.ω'FH ω'.H2 COSs=-; ・=====.SIDs=ー.'

一 (ω (2.39)

式(2.38)の右辺の外力による定常応答を速度同相成分η1と変位向相成分η2に分けて考え

る.

37

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( 1 )速度同相成分

.2 . fpb3 ・-41+2Cqω''1 1'1t +ω~ '1t = (一一)ω'pH2ω';(tsin(句t+90-)m (2.40)

これを解くと,次式が成立する.

(pb3

)Wpωi;H2*i m= I 2m

骨内 2 .2 勾

sin(ω';1+90-8)

(叫ーω,;~Y+4~~ωqω';~(2 . .41)

ここで, 8はねじれ振動による揚力最大からたわみ変位最大までの位相遅れであり,。は

次のように表される.

、SEF

札P

一2札F

ωq二q-d

xd一円

41

組AU

cos8 ω"2-ω',/ . 2~..ω"ωa

J q ¥ 2・2-- 泊。-a2qqF

(ωJ2-ω,/)2 +4~~ 叫叫 (ωq 一 %γ+4~'1.イ2ωJ(2.42)

そこで, L 4)m p w; IH 2 i6 とおくと,次式が成立する.. '~(,ωf 一 W/)2 +符J2ωJ2ω42

(2.43)

H2そ>0のとき, η 奇IS泊(ω〆+900 _8)=抗sin(ω〆-(1) 81 =.0 _900

H2宅くのときη 可IS泊料〆+900 -8 -180) =1h s泊(ω〆

-(1) {}l = 8 +90u (2.44)

ここで,仇は速度同相成分の,揚力最大からたわみ変位最大までの位相遅れである.

(II)変位同相成分

.2 rpb3 '¥.. 2 ・-ii2 +2ら叫 η2+叫 η2=(一一)ωP~H3Øsinωt

m (2.45)

これを解くと,次式が成立する.

(些亙-)拘ωF2

叱H民寧η仇2='m

舟舟

s祖(ωω晶I.t一0の)

~(ωJ-ω,/)2 +4~'1.~ωJωJ (2.46)

38

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そこでJ- 4)WF判長とおくと (2.47)

~(ωJ2-ω/)2ペJ2ωJ2ω92

fるう0のとき, η2=弘s泊(ω〆-8)=弘S倒的t-(2) 82 =8

H3*<0 のとき, η2=忌 sin~ω〆 -8-180・)=込 sin~ω〆-(2 ) 82 = 8 +1800

(2.48)

ここで,ぬは変位同相成分の,揚力最大からたわみ変位最大までの位相遅れである.

以上より,たわみ振動の定常応答ηは 11"'111切 2昌弘s恒例1-(1)+弘sin(的1-(2)となり,ねじ

れ変位最大からたわみ変位最大までの位相遅れvは, '1'=11+0と表される.

次に, このたわみ振動が再びねじれ振動の方に連成項として働く場合を考える.

pb 4 '¥ _ _ ,,*;.. r pb 4 '¥ _. 2 傘 pb

3'L. A. C.. ....! '¥ • rpb

3

ø+ ω'#O~Ø =(一一)ωFA2"O+ (一一)ωP~A3."Ø+(一一)ωpA1 "(:守1+η2)+(--MF2A41m+η2)I (2.49)

式(2.49)の右辺第3項以降を展開し,

ように表される.

sinω'....1 =乏v 世

cosω1,( = _o ,. oω世

を代入すると,次の

pb4

・ ~ • rpb4

砂+旬。ゆ =(7ー)ωpA2Ø+(プ7)ωp~~ø

件 2 ・{1h'ゆ 石A 弘ゆ 弘o_!_ n ,

+(一一)ωFA4|-rco叫-21T sm8t +士一cos82-;'T S・。 1. ~

l o 畠ゆω~•

o ゆω世 }

品'¥_. ". _.. (扇併 す手 伝ゆ 写o_!_ n ) +(一二)ω'FA.句1.:;1"1ーcos8t+士一sin8t+ ;ZT cos82 + .,~ァ in82 1. .

'''¥ oωo • o 俳句 }

式(2.5ωに式(2.43),式(2.47)を代入すると,式(2.50)は次式になる

・MJ=(7MA4+(7)ω~~~-ø

(件沖万治X沖y)一

d .d 2 z {糾叫 ωldlA,.バ刈IH2伊H民21いω中

(ω守一ω'l"y+4~'1 ωqωー

(2.50)

+ 何 x片足).附 '1

2A,.・IH2・l血いMhisMz+ωFhdlH2いq叫 4・IH3'lcos仰包.ω

39

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そこで,右辺を左辺に移項したとき,ゅの係数が連成項を含めたねじれ振動の減衰係数で

あり,この係数が負となるとき連成フラッターが発現する.この時, ωp=ωeとなり,式(2.51)

は以下のように整理される.

"",. ωIF(沖;イ)(件以)♂人)2

ぷ +1ベア)mF~" - r; 、z /叫噌 {イIH2い叫 +~ïH3い82-A4IH2IsiniJ1 -A.IH;ISin82}]O トゥ4J小4~11"2(うら・)2

バ ω1/(η)(引所・)2

+同λー)叫2~・-,, 、z /叫 {イIH2I血角+イIH3Iω け 4・IH2い叫+A."恥い82}]O= 0

ー 十一rolm.,")2Jイ仇・)2

(2.52)

2自由度連成系のねじれ振動の運動方程式は下式のように表され,

ゆ+2らωoo+ωφ2o=0 (2.53)

また,九 =211:t;; (ゐ:ねじれ振動の対数減衰率)の関係より,

ー・(pb2)("ゥI")2

δff(7)4.4(7)lr mj., {A1・IH2"1ω(Jl+イIH3.1ωs8トA4iH2is担 (Jl-A. iH /ISinゆ

iト1ト一(切う%%片均4令令ωμJjプ.)ゲ)2小z(ω2.54)

となる.そこで,式(2.54)にある係数を次式で表す

①:Z4) ②(会問 )2

{t-引斗4zf(%)2

(2.55)

かー①4・峨{イIH2い中イIH3~lcosい4"IH2"lsin81-A4IH3"!sin82}(2.56)

とδゆが表され,doくOの時,Torsional branchにおいて連成フラッターが発現する.

なお,本研究で出てくる Step-by.step解析結果の図表記には下記のように簡略化した.

40

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L一一一一

.:δ0 ・:~<1辺DAl*I H2* I cos(}J

. : -(ffZ)Al*IHa*lcos(12

0:一①lA2*

ロ:<1児島1A4*I H2* I sin(}J

0: ax;②1A4*j島オIsin82

(2.57)

このように非定常空気力係数問の相関は,ねじれ振動〈φmotion)によってたわみ振動

系〈ηsyste;m)にたわみ振動〈ηresponse)が励起され,そのたわみ振動によって同様に

ねじれ振動が励起されるという FeedBack系を形成している.多自由度フラヅターの場合

も同様に, Step"by-step解析により,各分枝問の相関を見ることにより各非定常空気力係

数簡のフラッタ一発生への役割を知ることができる.以下にその手法の概要を示す.

最初はねじれ固有円振動数ω'ofJをフラッター振動数ωFとして仮定する.

①仮定〈算出)したフラッター振動数ωFより無次元風速を求め,非定常空気力係数を回

定する.この係数を用いて式(2.32)よりねじれ円振動数仰を求める.

②次にこのねじれ振動数仰をフラッター振動数ωFとして.~;, ωη, '9' 8を求め,式(2.54)

で表される減衰係数を計算する.

以上①,②を 1サイクルとして①でωIF=仰となるまで繰り返す.この収束値をフラッタ

ー振動数とし,式(2.54)で表される減衰係数の正負でフラッターの発現を判断する.

複素固有値解析法はフラッター解析法として広く一般的に用いられており,自由振動方

程式についての複素固有値問題を解くという手法であるので,方程式に対する厳密解を与

える解析法である.しかし,固有値問題において各非定常空気力係数と固有値の関係が明

確に捉えにくいため,非定常空気力と系の応答の関連が評価しにくい.これに対し,

Step-by.step解析法は近似解法であるが,系の応答における非定常空気力係数の役割がわ

かるという点で優れていると言える.

なお,本論文でのOは原則, Step.by.step解析上のOを示し,後述する下フランジの傾

斜角()[52]が表現される節においては Step-by.step解析上のoは0でし,区別しているこ

とに注意されたい.

41

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44

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[46]大東義志,松本勝,荒木健二:長大斜張橋端2主桁断面の空力振動発生メカニズム,

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ード聞の空力振動干渉および動的耐風性向上に関する研究,第四回風玉学シンポジウ

ム論文集, pp.387・392,2002.

[51]大東義志,武内隆文:長大斜張橋端2主桁断面の動的耐風性向上に向けた実験的検討,

土木学会第58回年次学術講演会概要集, pp.227・228,平成 15年9JJ

[52]大東義志,松本勝,武内隆文:斜張橋端2主桁断面の動的耐風性に及ぼす主桁形状

変化に関する実験的研究,第 18回風工学シンポジウム論文集, pp.43 1-436, 2004.

[53]武内隆文:橋梁塔状構造物の空力応答挙動とその耐風性評価に関する研究,京都大学

博士学位論文,平成5年3月

[54]丸山忠明,小川一志i下土居秀樹:舞洲~夢洲連絡橋〈仮称)の風荷重に関する検討,

土木学会第 58回年次学術講演会概要集,平成7年9月

[55]本州四国連絡橋公団:本州四国連絡橋風洞試験要領 (2001)・同解説, 2001.

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[57]松本勝,小林祐輔,浜崎博:非定常空気力係数に着目したフラッタ一安定化策に

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45

Page 52: Title Edge Girderを有する斜張橋の耐風性評価とそ … Girderを有する斜張橋の耐風性評価と その空力振動特性に関する研究 平成18 年8月 大東義志

曲幽

第3章端2主桁断面 (EdgeGirder)の基本的空力振動特性

3. J 概説

床版端部に 2本の主桁を持つ主桁形式(=端2主桁断面)は,その剛性の小ささやπ型

断面としての幾何学形状から耐風安定性に対じて不安定となる傾向が大きいと考えられる.

前章でも述べたように,海外では比較的多くの長大斜張橋において採用されているが,国

内ではこれまで長大橋に採用された実例はない.このためこのような形式の詳細な空力特

性に関する研究や見解が少ないのが現状である.そこで本章ではまず,第 1章で述べた理

由から断面辺長比 BID=10を中心とした端2主桁断面の,上下非対称断面としての空力振

動特牲について考察する.さらにπ型断面の主桁形状変化による基本的な空力特性の違い

について,各種風洞試験から得られた結果より知見をまとめる.

3.. 2節では上下非対称のπ型断面である端2主桁断面が,どのような空力振動特性を

有7するのか, H型断面および矩形断面の振動応答特性と比較して,基本的な空力振動特性

について考察する.

3. 3節ではその端2主桁断面の主桁形状変化として, 1桁,箱桁,円柱桁と変化させ,

特に静的空気力特性,自由振動応答特性および非定常空気力特性の観点から,それぞれ主

桁形状の違いによる空力特性を比較し, π型断面である端2主桁断面の主桁形状変化によ

る基本的な空力特牲について述べる.

3.4節では本研究対象断面と同じ主桁形式をもっAlexFraser橋の主桁断面を対象とし

た耐風応答評価[1]において,主桁位置の違いにより応答特性に違いが見られることから,

特にI桁に着目した主桁位置の違いによる基本的な空力特性の把握を試みる.

3. 5節では風の傾斜角(以下,迎角 αとする)および乱流中における基本的な空力振

動特性について自由振動応答測定実験より考察する.

3. 6節では断面辺長比 BIDの違いによる空力的な影響について考察する.第2章でも

述べたように矩形断面においても断面辺長比 BIDの違いにより様々な面で空力特牲に影響

を及ぼすことから,端2主桁断面の断面辺長比 BIDの違いによる空力的影響について,非

定常空気力特性の観点から考察を行う.

本章ではπ型断面で、ある端2主桁断面の基本的な空力特性を述ペることにとどめて,そ

の振動発生メカニズムは第4章で考察する.なお,本節を通じて図面中にあるち[m/s]およ

びT}p{mm]は中央支間長 600m級の3径間連続鋼斜張橋を想定した場合の実橋換算風速[2]

および実橋換算たわみ振幅である.本章における複素固有値解析では全ての断面において

日 600m級の斜張橋を想定した諸元値[3]を用いた.

46

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π型断面としての空力振動応答特性2 3.

どのような空力振動特性を有するのか,ねじはじめにπ型断面である端2主桁断面が,

ここでれおよびたわみ各 1自由度による自由振動応答特性(図 3・2・1)を把握する.なお,

は端2主桁断面が持つ自由振動応答特性を可能な限り把握するため, Sc数は実験制約上許

される最も低い値で、実験を行った.図 3・2・1に示すようにねじれ 1自由度では無次元風速

V/fB=0.5およびV/fB=l.l付近からねじれ渦励振と無次元風速V/fB=2.7付近からねじれフ

ラッターが発現する.一方,たわみ 1自由度では無次元風速V/fB=0.75およびV/fB=1.7付

近からたわみ渦励振が発現する.次にそれぞれ同じ辺長比 (BID=10)を持つ H型断面およ

び矩形断面の自由振動応答特性[4][5]を図 3・2・2に示し,端2主桁断面との自由振動応答特

性と重ねる.はじめに渦励振の応答特性を比較する.本研究における実験値と参考文献μ][5]

との Sc数の違いがあるため,渦励振の応答振幅における比較はできないが,これらの図か

ら,渦励振の発現風速の比較を行うと,端2主桁断面では, H型断面よりも矩形断面の方

たわみ渦励振およびねじれ渦励振とも比較的発現風速が一致する.このことは断面側で,

面を流れる渦の流下速度が H型断面よりも矩形断面の流下速度に近く,剥離せん断層から

'V[m/s) 15

十V/fB

Vp[m/s)

bAAbb b b b

j設;V

510

23 4 5 6

50 75 100 125 150

生成される渦の構造が比較的矩形断面のそれと近いものと考えられる.

1

1

1昂

2中[deg.)5

3

2

4

m=2.377 kg/m SC(2η=5mm)=59.2 j 80可瑚m)=0.0129

f=3.724Hz

~ <( n O

泊三ι...l..L.O--oV[m/s]

i 主占 A 占V/fB

Vp[m/s]

2可p[m)2'可[mm)1r 10

0.6ト 6

0.2ト 2

OOLOLO

L

nu

0.4ト 4

0.8ト 8

B

'fah{

l訂寸

B U

汗は

ねじれ1自由度、‘,,,LU

J

・1たわみ 1自由度(a)

α=00

, c!B=0.013) π型断面(端2主桁断面)の自由振動応答特性 (BID=10,

47

図 3・2・1

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n川川叫』

Q

日刊

M4

品吐

B B

一一一一 EdgeGirder CB/D=10)の

ねじれ振動扇平 H形断面柱と扇平矩形断面柱(a)

…Edge Girder CBID=10)の

たわみ振動

回れ動/

/

/

'

J

じ振

il--)』4

2O (0)

』u

z

n

,白

畑骨一時↑?叩}Jζ心内情

2A/B

6

4

2

A

U

A

U

A

υ

n

U

A

軍出向車母《い判川K

3.0 0 0

一一一一 EdgeGirder CBID=lO)のねじれ振動

Edge Girder CBID=10)の

たわみ振動

換算風速 Ur=σ(fB)

(b)

2O (0)

2 2A/B

0.003 !翠蝋車 0.0024 4ミ~ O.ω1

。。。換算風速以=U/(fB)

扇平矩形断面柱 (B/D= 10) とその空力弾性応答(c)

H型断面および矩形断面との空力振動特性の比較[4][5]

clB=0.013) α=00

(BID=10,

図 3-2・2

一方,ねじれフラッターの発現風速について図 3-2・2より, H型断面や矩形断面よりも低

ただし,構造減衰の影響も考風速側で端 2主桁断面のねじれフラッターが発現している.

えられるので,次に Scanlan[6]により提唱された8つの非定常空気力係数のうち,ねじれ

振動の空力減衰に関係する非定常空気力係数 A2*に着目して,各断面で比較する.A2*;が正

の値を示すときはねじれ振動に対して不安定化を示し,負の値を示すときは安定化を示す.

48

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それら非定常空気力係数Ai'1の風速分布を図 3・2・3に示す.端2主桁断面も含め,H型断面

[7]と矩形断面[8]はいずれも高風速側で k'が正の値を示すことから高風速側でねじれフラ

ッターが発現することが考えられる.このことは図3・2・2で示しめした自由振動応答特性と

対応するが,安定化する風速域から不安定化する風速域に変わる風速 (x軸切片)が矩形断

面で,自由振動応答特性(図 3・2・2)のそれと若干ずれるものの,端2主桁断面が最も低風

速側からねじれフラッターが発現しており,また,ねじれ振動が不安定化する風速域のk*

の値が最も大きいことからも,矩形断面や H型断面のよりもねじれ振動に対しては最も不

安定な特性を示していることがわかる.なお,断面まわりの非定常圧力特性に関する比較

および考察は第4章で述べることにする.以上より,上下非対称であるπ型断面の端2主

桁断面において,渦励振特性は矩形断面とその特性が類似している一方,ねじれフラッタ

ー特性はその発現風速の観点から,他の 2断面よりも不安定化する特性を有することが考

えられる.

A2

25r一← TwoEdgeGirders(BID=10)

-ー--Rectangular Cylinder(BID=10) 20トー・.---H-shaped section(BID=9.4}

15

10

5

15 v/m20

図 3・2・3 端2主桁断面, H型断面および、矩形断面の非定常空気力係数A2"iの比較[7][8]

(BID=10,α=00

, clB=0.013)

49

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3. 3 主桁形状変化が及ぼす基本的空力特性の把握

次に端2主桁断面の主桁形状変化における空力的な影響を考察するため,主桁形状を変

化させた断面の空力振動特性について述べる.対象とする主桁形状は一般的に橋梁主桁形

式として用いられる I桁,箱桁,円柱桁とし〈以下, 1桁断面,箱桁断面,円柱桁断面と呼

ぶ),特に静的空気力特性,自由振動応答特性および非定常空気力特性の観点から,それぞ

れ主桁形状の違いによる空力特性を比較し,端2主桁断面の主桁形状変化にともなう基本

的な空力特性について考察するー

【静的空気力特性】・

断面を風中に静止させた状態で,断面に作用する空気力を把握することは風荷重を評価

するだけでなく,準定常理論[9]からギャロッピングのような発散振動の発生の可能性を知

ることができる.そこで,ねじれ振動に対してもある程度の不安定性の予測が可能であり,

空気力学上基本的な特性把握の一つであるモーメント係数 CM分布曲線に着目して,その負

勾配となる分布特性について考察を行う.

Cお CM

J;iqFW{(抑制}

CM

;;[ら=M/側0.16

0.12t <;rM/{問pV愉}

O.i伺

0.12

0.08

0.12

0.08

一泊 -16-1

-0.1佃[・V=6[m/s]

4吋 6V=12[m/s] -0.16

-0.2

-0.田i・V=6Im/s]

-o.12t b. V=12[m/s] -0.16

-0.2

州制

4

4

vv

.A凸

EELS-LS

ωロ

, -0.16

-0.2

Z 柱 ロ kc でう

(a) 1桁断面(BID=10) (b) 箱桁断面(BID=12) (c) 円柱桁断函(BID=9ρ

図3・3・1 主桁形状変化の違いによるの静的モーメント係数 CM分布

図 3・3・1にI桁断面,箱桁断面,円柱桁断面のそれぞれのモーメント係数 CAi分布曲線を

示す.1桁,箱桁,円柱桁と異なる主桁形状を有する断面を同じ桁位置〈最も断面端部)で

50

も勺ι

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比較すると,断面辺長比BIDがI桁断面で 10,箱桁断面で 12,円柱桁断面で9.4と異なる

にも関わらず,モーメント係数 α,曲線の分布が類似し,いずれーも+30__+4

0

付近から正

迎角に向かつて負勾配になる.これはいずれの断面もねじれ振動に対する不安定性が懸念

される断面といえ,桁形状の変化が静的空力特性に及ぼす影響は比較的小さいことがうか

がえる.この理由として,主桁からの剥離せん断層による負圧領域の重心位置と回転中心

とのアーム長さの変化が空力特性において支配的であり,主桁形状変化による剥離バブル

の大きさの変化による影響は小さいものと考えられる.

また d,αudaが正迎角側で負になる理由として,上面側で剥離せん断層よる負圧のピー

クがねじれ中心に近づく効果と下面下流側の主桁側面に正圧がかかることとの相乗効果で

モーメントの値が小さくなるためと考えられる.

さらに補足検討として,床版にグレーチングを設けた断面で検討を行った(2]~ 床版上下

面間での圧力差をなくすことでフラッター特性の改善を期待し,路肩及び車線開にグレー

チングを設けた.基本断面からより実橋に近い断面で考察するため,グレーチング断面の

床販にセンターバリア〈高さ 10mm)を予め設置し,またポスト高欄についても床板端部

に予め設置した.また床版関ロによる断面剛性の低下を考慮して, 1桁断面は前述した基本

断面と桁高が異なる断面辺長比BID=8.6. (D=35mm)とした.

~

Zら=則。n帥九}

O.争0.16ト Cy=M/{(lf2)pV的}

引『

Ila-4

・・--mMU

Hu

s.ao [ゐ:g.]

-20 -16 -12 ~ -4・ 4 8 12 16 20 ~.似|

~.08t ・ V=6[m/s]~.12~ 6 V=12[m/s]

~.161

~.2'

.V=6[m/s] ~.12t 6 V=12[m/s]

~.161

~.2'

4立一占一一ず オ吉一占ーすc

(a) 1桁断面(BID=8.6) (b) 箱桁断面(BID=12)

図3・3・2 グレーチング設置断面による桁形状変化の効果〈補足検討)

それら断面におけるモーメント係数 CAi分布曲線を図 3・3・2に示す.グレーチングを設置

し,剥離せん断層により生じる上下面の圧力差を緩和することにより,抜本的に正迎角で

51

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の耐風性向上を目指したが,今回行ったグレーチングの配置や充実率では,グレーチング

の関口によりむしろ,耐風安定性が損なわれることが示唆される.第6章でもグレーチン

グを有する端2主桁断面の振動応答特性について考察しているが, このような断面でのグ

レーチングの関口による耐風安定性向上の効果はあまり期待できないものと考えられる.、

これはグレーチングを関口した場合,グレーチングを通過する流れも存在するが,逆に上

下面を通過しない流れによって圧力差の緩和が妨げられためと考えられる.ただし,グレ

ーチングの配置の仕方によっては正勾配の勾配が小さいものの, aα〆dαの負勾配が解消さ

れたケース[2]もあったため,グレーチングの配置,充実率等を工夫することにより,耐風

性が向上する可能性も考えられる.

【自由振動応答特性】

本研究で対象とする端2主桁断面は,その幾何学形状より多彩な空力振動応答現象が予

測される.次に主桁形状変化による自由振動応答特性について述べる.なお, Sc数は端2

主桁断面が持つ自由振動応答特性を可能な限り把握するため,実験制約土許される最も小

さい値で、実験を行った.

m=2.637批g/mSC(2t!=5mm)=49.26 O(街l=5mm)=O.0110f=3.497他

2t!p[m) 2'l[mm) 1r 10

0.8ト 8

0.6ト 6

m=2.495 kg/m SC(2t!=5mm)=60.02 O(2t!=5mm)=0.0124 f=3.623他

3

2t!p[m) 2司[mm)1r 10

0.8ト a

0.4ト 4

0.6ト 6

m=2.377 kg/m Sc(句=5mm)=59.2jf8納向瑚吋一=0.ωo例1f=3.724伽1匡

5

2t!p[m) 2t![mm) 1r 10

0.8ト 8

0.6ト 6

0.4ト 4

V[m/s) 5

主V畑

Vp[m!sj

t2 3 4

t2 3 4

OLOLO

o.

V[m!sj t234 5

i 2 3 4 占V畑

~主 ~戸・ a ・ Vp[m/sj

huaLAMgLnv

u

LωV[m/s) t2 3 4 5

j 占・ 4 A -占V/fB

占 41.0.1包均・ ~Vp[mJ司

21

。ototo

L

nu

0.:

ぞう』同c

ロ』c

Z

円柱桁断面(BID=9ρ(c) 箱桁断面(BID=10)、‘.f

υJa--桁断面(B/D=lω(a)

たわみ渦励振に及ぼす主桁形状変化の効果 (α=00

)

はじめに,たわみ1自由度における自由振動応答特牲を図3・3・3に示す.どの断面も低風

速域で渦励振が発現し,その発現風速は前縁剥離型〈自己励起型)渦励振の発現風速とさ

れる1.67BID[10]に一致している.発現風速に関する考察は第4章で詳しく述べることにす

52

図3・3・3

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る.最大応答振幅はSc数の若干の違いはあるもののI桁断面,箱桁断面,円柱桁断面の順

に渦励振が安定化する傾向にあり, 1桁断面と円柱桁断面とでは2倍近くの差が認められる.

これは疲労や床版の耐久性の観点からもその影響は大きく,桁形状の変化による応答の差

は大きいと判断できる.空力的な考察において,図 3・3・4の模式図に示すように,特に下面

からの渦生成において,桁形状の違いにより, 1桁断面ではその巻き込み領域が箱桁断面や

円柱桁断面に比べて大きい.つまり,下面の剥離せん断層内における構造物体が占有する

領域が小さく, 1桁断面で最も強い渦が生成され,箱桁断面や円柱桁断面では下両の構造物

体が占有する領域が大きく, 1桁断面ほど渦の生成が強くなされていないものと考えられる.

したがって,たわみ渦励振特性においては桁形状の変化による影響が大きいと判断できる.

なお,図 3令 4の模式図は渦の大きさを模式的に示したもので,実際の剥離せん断層の大き

さとは異なることに注意されたい.

-ゆ Lo Wiiid 正

V 渦の大きさ

ーゆ

足三コWind U

-吟Vll 渦の大きさ

Wind 丈三〉。

図3・3・4 渦生成の違いによる模式図

次に主桁形状の違いによるねじれ1自由度の自由振動応答特性について図 3・3・5に示す.

ねじれ渦励振特性においても桁形状の変化による影響は大きく,主桁形状を変化させると,

最大振幅はI桁断面,円柱桁断面,箱桁断面の瀬に渦励振が安定化する傾向にある.これは

たわみ渦励振特性と同様に I桁断面で,他の断面に比べより強い渦の生成がなされたためと

考えられる.さらにそれらの発現風速を見ると,いずれの断面も無次元風速V/fB=1.0付近

でねじれ渦励振が発現している.これは矩形断面のねじれ渦励振開始無次元風速

V=(2/(2N・1))・(1/0.6).BID[101のN=2のときに対応することがわかる.この発現風速に関す

る考察も第4章で詳しく述べることにする.

53

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211121l

Lo∞河

3

句?』 4111jllSC(2t=1・)=586.0

3 d(2t=1. )=0.0075

f=7.163Hz

4

3

!!!!! b!! 2柑句.Js

4

3

2 2 2

B

.

.

um

7

4

6

4間

l-E岨

L5424

0-ut

tt市

ム3

d市

5ム2

4却

~

i

'

i缶

OLOLO

'_V{m/s) o 5 10 15

6・ j 主 .3 4 5.占十V/fB

ι-五単一弱-五 100125 -1占0・....Vp{m/s]

-a

一ed'

♂w'M

s 10

23 4. 5 6

50 75 100 125 150

11、iお

OLOLO

ぞう長一白

円柱桁断面(BID=9.4)(c) (b) 箱桁断面(BID=lωI桁断面(BID=lω(a)

ねじれ応答特性に及ぼす主桁形状変化の効果〈α=00

) 図3・3・5

次にねじれフラッターに関して,箱桁断面で若干ねじれフラッタ一発現風速が高風速側

になる以外は, 1桁断面または円柱桁断面もほぼ同じ風速域でねじれフラッターが発現して

いる.いずれの断面もねじれフラッターが飛躍的に安定化することはなく,ほぼ同じ風速

このことから,ねじれフラッター特性に及ぼす

主桁形状変化による影響はあまり大きくないものと考えられる.

域からねじれフラッターが発現している.

A2

20r ----<r-

【非定常空気力特性】

Z E B/D=10

ロRU

Bρ=10 口

ちーー-.---

一一.一一

15

10

-15

一一一-baced on Theodorsen Fn. -2常

10y/nl2

主桁形状変化における非定常空気力係数A2*lの比較〈αご00

)

8 6

54

4 2

図 3・3・6

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I桁断面 (BID=10),箱桁断面 (BID=10)および円柱桁断面 (BID=9.4)について非定常

空気力測定実験により得られた非定常空気力係数やそれを用いた複素固有値解析によるフ

ラッタ一発現風速の観点から,主桁形状変化による空力的な影響について考察を行う.こ

こでも Scanlan[6]により提唱された8つの非定常空気力係数のうちねじれ振動の空力減衰

に関係する非定常空気力係数A2*について各主桁断面で比較する.図 3・3・6を見ると,どの

断面も無次元風速 V/fB~3.5 付近から A2鳴t負値から正値に変わる.これはこの風速域でね

じれ振動の発生を意味し,どの断面もほぼ同じ風速域からねじれフラッターが発生してい

ることとなり,前述したねじれ1自由度における自由振動応答特性と合致する.したがっ

て,非定常空気力係数の観点からも主桁形状変化によるねじれフラッターへの影響はあま

り大きくないがわかる.

Ir]OO.2219Hz,与o=0.748HZ J

B=27.25m, M=2.186X 10-rkg/m

Vn(m!s) 1=2.377 X 10V

kg • m, 1=610ni c 120.

P、号 1000 Q.)

芯 80fI)

回。

E BID=10 k

UBρ=10 u

O B/D=9.4O

5吋シタ//,・・4

臼日

40

-3 ~2 -1 0 1 2 3 4 Angle of Attack (α。)

図3・3-7 主桁形状の違いによるフラッタ一発現風速bn!s](α=00

)

次にフラッタ一発現風速[m/s]との比較図を図 3・3.;7に示す.どの断面も負迎角でそのフ

ラッタ一発現風速が低風速側に移り,耐フラッタ一安定性は他の迎角に比べ悪化する傾向

にある.また,これら 3断面のうち,箱桁断面 (BID=lO)が若干ではあるものの,フラッ

タ一安定性が最もよく,円柱桁断面 (BID=9.4)が最も悪いことがわかる.また,ねじれ1

自由度自由振動応答特性と比較して,その発現風速があまり変わらないことから,これら

の断面はねじれフラッター主導型のフラツター特性を示すことが考えられる.したがって,

55

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同じ断面辺長比 BIDを持つ断面では,主桁形状を変化させてもフラッタ一発現風速が著し

く変化するわけでなく,その影響は小さいことがわかる.以上より,これら同じ位置に主

桁を有する端2主桁断面の基本的な断面における主桁形状変化が及ぼす空力特性の影響に

ついてまとめると,図3・3・8に示すように渦励振応答特性への影響は大きく,フラッター特

性への影響は小さいことが明らかになった.

主桁形状の違い

匡 正 l~ | キ 影 響 ①渦励振特性

い U

O 仁今 フラツター特性|今影響o。

図3・3・8 端2主桁断面の主桁形状変化に及ぼす空力特性のまとめ (α=00

)

56

2巴し恥r

h令

'

ι

~~E …f 4

μ

h

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3.1 4 1桁断面の主桁位置変化にともなう空力応答現象

本節ではI桁断面,箱桁断面,円柱桁断面のなかで, π型断面として基本の断面となる I

桁に着目し,その主桁位置の違いによる基本的空力特性について考察する.

【静的空気力特性】

図 3・4・1に示すように I桁断面における主桁位置の違いによるモーメント係数 CAi分布曲

線について比較する.モーメント係数 CM曲線の勾配が正勾配から負勾配に転じるピークを

示す迎角が,clB=0.013の断面では風速V=6m1sで迎角α=+2-, V=12m1sで迎角α=0。と

ばらつきが見られるものの,cIB=0.167で迎角 α=+30

--+4。であり,主桁位置が内側にな

るにつれて,そのピークがやや高迎角側に移行する傾向が見られる.また,ピークでの CM{直も大きくなる傾向にあり,それにともなって迎角 α=0。付近における CM曲線の勾配

dαddaの値が桁位置を内側にするほど次第に大きくなり,迎角 α=0O.付近でのねじれフラ

ッターに対する安定性が増すと予想される.このように迎角α=0。付近における CM曲線の

勾配 dCMJ伝αの値が大きくなる理由は,下面からの剥離せん断層と上流側主桁との干渉によ

、るものと推測され,床板端下面からの剥離せん断層が主桁側面に再付着することにより圧

力回復が起こり,頭上げにモーメントが作用したためと考えられる〈図 3・4・2).なお,こ

のことは第4章で述べる非定常圧力特性から,張り出した床版端下面が正圧になっている

ことからも裏付けられると考えられる.

~ 0.2r

0.16ト

0.12t ~=M/{(1/2)pず前}0.1

l

ee ,U Ju

••

/

40

・且‘,a -z eo

a守-20 -16 -1:t"' -8 -4 -0.1

4倒・V=6[~s]4吋b.V=12[叫5]-0.161

-0.2'

」日c

E ヰョ E

(a) clB=0.013 (b) clB=0.080 (c) clB=0.167

図3・4・1 1桁断面の静的モーメント係数 C}j分布 (BID=10)

57

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頭上げのモーメントの作用.. Wind

3-づ〈TA

図3・4・2 主桁位置を内側に配したI桁断面の静的モーメント作用図

【自由振動応答特性】

次に主桁位置の変化による自由振動応答特性について述べる.はじめに,たわみ1自由

度における自由振動応答特性を図 3・4・3に示す.1桁断面では,断面辺長比BID=lOの主桁

位置を clB=0~OI3, 0.167に配した場合の2種類について測定した.主桁を最外の clB=0.OI3

に設置した場合,無次元風速V/fB=0.8付近で倍振幅約 2.0mmの渦励振,さらに無次元風

速V/fB=1. 7付近から発現して,無次元風速V/fB=2.4付近で最大倍振幅が約8.0mmとなる

渦励振が発現している.一方,主桁を内側に配置した断面 c!B=0.167では無次元風速

V/m=0~6 付近で,かなり応答振幅の小さい渦励振,さらに無次元風速 V/fB=I.1 付近では最

大倍振幅約 5.5mmの渦励振が発現し,主桁を外側に配置した断面よりも安定化している.

このように最大応答振幅の観点から,主桁を内側に配置することでたわみ渦励振は安定化

することがわかる.本章ではこれら渦励振の基本的な応答特性を述べることとし,これら

の渦励振の種類および、発現風速の考察は第4章で述べることにする.

0.6ト 6

m=2.377 kg{m

SC(街211=5伽mm叫1)=59.2

j f 8柄 向 叩 刷f=3.724Hz

2'lp[m) 2'η[mm) 1r 10

2'lp[m) 211[mm) 1r 10

0.8ト 8 0.8ト 8

m=2.275 kg{m

SC(:句=5mm)=58.80 δ(2'l=5mm)=0.0133

f=3.766他0.6ト 6

0.2ト 2

0.4十 40.4ト 4

0.2ト 2

4

・・00LO

L

AU 234 5

V[m/s] OOLO

L

向U

2 3 V伊拘1

4 5

2 :3 .4 i; V,畑 1 ・ 1 ・ 1 ・ ~V/f8

~・・・二ピ,、二~・ 二~・L. Vp[m/s] ~・・とー~ヒ~・ Vp[m/s]

z z c

(a) 1桁断面(c!B=0.013) (b) 1桁断面(c!B=0.167)

図3・4・3 たわみ渦励振に及ぼす主桁位置変化の効果 (1桁断面, BID=10,α=00

)

58

盗品

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また,箱桁断面および、円柱桁断面〈図 3・4・4)についても最大応答振幅の観点から主桁位

置を内側に配置することによって安定化する.

0.6ト e

m=2.637 kglm

Sc(2q=5mm) =49.26 d(2q=5mm)=0.0110

f=3.497Hz

2qD[m) 2q[mm) r 1 r lOr ' m=2.684 mJkg

SC(向=5mm}=46.96

d(:句=5mm}=0.0103

f=3.490Hz

0.8ト 8

2qplmr 2rj[mm) 1r 10

0.8ト 8

0.6ト e

0.4ト 4 0.4ト 4

0.2¥:- 2 0.2ト 2

23 4 酬

J5

5

2 3 4 5, 川mlS)

j 主 SA 占V/fB

1....1....1....1..........1 。5 10 15 却 ~Vp(m/S)よ~・・・ゾムー.....じ~・・ Vp(1T拘1

ぞう てブc c

(a) 円柱桁断面化IB=0.03) (b) 円柱桁断面(dB=Od67)

図 3・4・4 たわみ渦励振に及ぼす主桁位置変化の効果〈円柱桁断面;BlD=9.4. α=00

}

/ "

次に主桁位置の違いによるねじれ1自由度の自由振動応答特性についてー述べる.図 3:'4・5

に示すように主桁位置を内側に設置することで渦励振の発現風速域も最大応答振幅も変化

し,主桁位置のねじれ渦励振特性に及ぼす影響が大きいことがわかる.さらに,ねじれフ

b2!b! b b b

r占121'B4附=e7t26←2E4O3tXH同z叩}Z-5岡a8旬3市S ・m3ト

2ト 9

o E ass ta o g a g atss V伊I/S)

bjA44 占占十V畑

らおおお 16o145 1白 Vp[m/S)

24tdSer g.1

4ト1=3.707X10~ kg' m 1=3.674X10-

2 kg' m

SC(2+=l' )=564.0 SC(:均4・)=593.0

d(2+=l・)=0.0072 d(2+=1' )=0.0075

f=7.143Hz f=7.143Hz

2

Vp(m/SJ

IV(町向3o 5 10 15

ら-j 主 3.. 5 (;十 V/fB

よ...二」・・二~二・ 1よλ~ コムλLU Vp(m/S)

o 5 10

0 2 3 4 5 6 十V畑

Z E ヰョ z c

(a) clB=O.O 13 (b) c厄=0.080 (c) c.厄=0.167

図3・4・5 ねじれ振動に及ぼす主桁位置変化の効果 (BlD=10,α=00

,)

59

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ラッター特性について,主桁位置を少し内側に設置するだけで飛躍的にねじれアラッター

の発現風速が上昇し,安定化することが確認できる.このことは, Alex' Fraser橋 (1986,

465m)の主桁断面を対象とした lrwinの耐風応答評価[1]や久保ら[11][12]の研究において

も確認されている.また,ねじれフラッターが安定化する原因と主桁をさらに内側に入れ

たフラッター特性についての考察は第4章で詳しく行う.

【非定常空気力特性】

次に非定常空気力特性の観点から主桁位置を変えることによる空力的な効果について述

べる.ここでも前節で述べたように Scanlan[6]により提唱された8つの非定常空気力係数

のうちねじれ振動の空力減衰に関係する非定常空気力係数 A2*について各主桁断面で比較

する.図 3・4・6を見ると,主桁位置を内側に配置するにつれて連続的にA〆の分布が正値か

ら負値へ変化する.このことはねじれ振動が主桁位置を内側に配置することで安定化する

ことを意味し,前述したねじれ1自由度自由振動応答特性と合致する.つまり,このよう

な端2主桁断面の耐風特性を考える上で主桁位置は非常に重要な要素となる4 ただし,図

3・4・6で示した主桁位置(cIB=O.1t37)から,さらに内側に配置した断面の空力特性については

第4章で考察することにする.また,正迎角〈α=+20

)においても同様に連続的にその分

布は変化するものの,迎角 α=00で安定化傾向を示していた主桁位置 clB=O.133および

0.167の断面で高風速域においてA2笥ま負から正へと変化し,ねじれ振動に対して不安定化

Ai.

50r一-0-一 c/B=O.013i一+一 c周=0.08伺0

4俳0,一---十トト- c,柑周=0.1

30ト一+一c/B=0.1“6720

10

A2

1ωr -0-cIB=O.013 I ---e-一 c/B=0.080

80ト-・一 c/B=0.133一-+---c.周=0.167

60

40

~10

ー却

-30

-401--based on Theodorsen Fn.

500--5均台均V/fBお

20

TA

-20

-40,十て bas叫 onTI叩dorse~Fn.

o 5 10 15 20 V/fB25

(a)α=00 (b)α=+2。

c

図3・4・6 主桁位置を変化させたときの非定常空気力係数A24の比較 (BID=10)

60

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傾向を示す.このように迎角 αによる変化に対しても空力的に非常に敏感な特性を有する

ことが言える.

さらに,これらの断面での非定常空気力測定実験により得られた非定常空気力係数から

複素固有値解析を行い,ねじれ・たわみ2自由度におけるフラッタ一発現風速を求めた.

主桁位置の変化によるヲラッタ一発現風速について断面辺長比BID=10のI桁断面の主桁位

置 cとフラッタ一発現風速[mls]との関係を図 3・4-7に示す.負迎角側でばらつきはあるも

のの主桁を内側に配置することで迎角α=0。を含む負迎角でフラッタ一発現風速が大きく

なり,主'桁位置を内側に配置することで安定化することがわかる.一方,正迎角では明確

な安定化傾向はなく,迎角α=00よりも不安定化傾向を示し,迎角 α=+6。では,あまり主

桁位置よってフラッタ一発現風速に変化はないことがわかる.このことからもj 迎角 αの

変化に対しても敏感な特性を示すためj実際の斜張橋へ適用する場合は迎角の影響も考慮

することが重要である.なお,迎角の違いによるこれら空力特性の違いは,第4章で非定

常圧力特性の観点から考察することにする.以上より, π型断面である端2主桁断面では,

主桁位置変化が及ぼす空力特性への影響は大きく,特に主桁を内側に配置させることが渦

励振およびねじれフラツターを飛躍的に安定化させていることがわかる.

向。=0.2219Hz,f.中0=0.748宇B=27.25m, M=2.186 X 10"Tkglm

Vp(m/s,) 1=2.377X1σkg • m, 1=610m

280

T 240 o

告200〉

否160回

3ロ= 吉 80

40

.α=20

0.05 0.1 0.15 0.2 c/tl

Location of I-Girders

図3・4・7 フラッタ一発現風速(mls]と主桁位置cの関係 (BID=10)

61

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-3. 5 風の傾斜角の影響および乱流中における空力振動応答の挙動

橋梁に作用する風は必ずしも真横〈迎角 α=O~. )からや乱れのない一様流だけではない.

特に日本のように急峻な山が入り組んだ地形では特有の局地風があり,桁に対する吹き上

げの風〈α>00

)や吹き下ろしの風 (α<00

),さらに乱れを持った風が作用することが

多い.本節ではI桁断面に着目し,迎角による空力特性の効果や乱流効果について定性的な

特性に関する検討を加えた.

はじめに,風の傾斜角(迎角α)が変化したときの, π型断面である端2主桁断面におけ

る自由振動応答特性について述べる.それら自由振動応答特性を図3・5・1に示す.ねじれフ

ラッターについて,負迎角 α=-3。でのねじれフラッタ一発現風速は,他の迎角のフラッタ

,一発現風速に比べ,無次元風速V/fB二2.5付近まで低下し,前節で述べた複素固有値解析結

果と一致する.また,高風速域で振動が安定化する風速限定型のねじれフラッターとなる

ことが明らかになった.以上より,このようなπ型断面では迎角に対して異なるフラッタ

ー特牲を持つことが考えられる.特に負迎角で,このように高風速側にでねじれ振動が安

定化する理由については第4章で考察する.

2中尉eg.15

4

3

2

j ;;山H

V[m/s1 o 5 10 15

i j 4 4 4 占・ 6・十 V/fS

l' , , ̂'~ I , ~I..! ' , !,.'..! I '1 !!...・'7よン~・ Vp[m/sj

WIND

(a)α=-30

2令制句.)5

4

3

2

U!!!!! ! 9

£

l_V[m/s] o 5 10 15

i -j・4・4・4・4・6・十 V畑

1・・~・己'_' '11.:...' ・~・・・ Vp[m/sj

明芳年一

(b)α=+30

図3・5・11桁断面のねじれ振動特性に及ぼす迎角特性 (BID=10)

次に低強度の乱流<Iu=6.8%)を格子乱流にて発生させ,その乱流中における渦励振応答

特性の変化を図 3・5・2に示す.たわみおよびねじれ 1自由度とも迎角はα=00

とする.

62

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Fu=6鰍の比較的強度の低い乱流中では,主桁位置によらず,定常な振幅で発現する渦励振

は消滅し,安定化する.しかし,一様流中では見られなかったパフェッティング振動が発

現する.ねじれフラッターの発現風速は一様流中で無次元風速 V/m=2~7 付近であるのに対

し,その乱流中では無次元風速 V/m=3~5 付近と高風速側に移動し,やや安定化する.このよ

うにπ型断面である端2主桁断面の乱流中においては空力的に安定化する傾向が示唆され

るが,本研究ではある特殊な乱流中のみの定性的な評価にとどめておくこととする.

21Jp同堂書1抑喝

1r 10

0.8トs

V{m/sJ

5 V/fB

必一古 ro.J.s Vplm綱

安定化

仁二〉

2ηp[m12η[mm] 1r 10

0.8~ 8

0~6ト 6

0~4ト 4

1]1=2.328 kg/m SC(2'η=5mm)=58.4 o(2η=5mm)=0.0129 f=3.752Hz

可)nIs]

~VIfB

l ・・・・.J,..L....・・ y ・~ゾrl i ' ~5 ' , , Vp(m/s]

Z

(a) たわみ1自由度における自由振動応答特性<Iu三6.8%,c厄=0.013,α=00

)

2中制5ergJ

b!b!!!! 1, j同…mS8{C2{や2=+1=.1.}=}0=5.080373

?8!&1時::3半2SH却2・x同柚}4-朗a褐地自e ・m 安定化f=7.143Hz

10 E列in/sJ15

亡会is -ι」7日町明田田

z

(b) ねじれ1自由度における自由振動応答特性<Iu=6.8%,clB=0~013, α=0 0 )

図 3・5・2 1桁断面の乱流中<Iu=6.8%)における自由振動応答特性 (BID:;:::10,α=00

)

63

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!

端2主桁断面の空力特性に及ぼす断薗辺長比(主桁高〉の影響6 3.

矩形断面や H型断面においても断面辺長比BIDの違いにより,様々な面でその空力特性

に影響を及ぼすため,本節ではπ型断面〈端2主桁断面)の断面辺長比の違いによる空力

的影響について,非定常空気力特性の観点から考察する.

【I桁断面の断面辺長比BIDの変化にともなう非定常空気力特性】

はじめに;1桁断面の断面辺長比 BID=3,5; 6.7, 8.6, 10, 12.5の計6種類について非

定常空気力を測定した.模型の詳細はAppendixに記載する.前節から述べているように端

2主桁断面はねじれフラッターが発現することから,ねじれ振動の空力減衰を示す非定常

空気力係数A2*iに着目し,考察することにする.たわみ・ねじれ2自由度振動系での複素固

有値解析の結果についても合わせて考察を加える.

各断面のねじれ振動の空力減衰を示す非定常空気力係数A2*1の風速分布を図 3・6・1に示す.

全ての迎角において断面辺長比 BIDが増加するに従い,Ag'が正{直となる風速域,すなわち

ねじれ振動が不安定化する風速域が上昇する傾向が見られる.迎角α=_6, 0 の場合,断面辺

長比BID=3以外の断面において,A2婦が低風速域で一度,正値をとるが高風速域で再び負値

/

これは高風速域でねじれ振動が安定化する,いわゆるねじれ振動の風速限定型の

特性を示すことを表している.このことは前節で述べた負迎角における自由振動応答特性

とも一致する.また,再び負値をとる風速域は断面によりあまり変化せず,無次元風速

を示す.

V/ffi=8.0付近から負値を示す.迎角α=-60

の断面辺長比 BID=12.5の断面ではA2'が正値

となる風速も高く,正値を示す風速の範囲もわずかであり,最も安定化する傾向を示す.

A2 Sr -+--:-B/D=3

4~ --ー--B/D=S 1 ----B/D=6.7

3十--0---BJD--8.6

2~ --0-~'E=~~ .~ ---<)0-- B/Dヱ二戸、

加」

83一例佃向。ー:

4

-3[---0-B/D=10

-4~ ---<)0-- B/D=12.5¥田

十一一-basedoilThωdo問 E時 k 町山

も 2 4 6 ~

α=-6。(c) α=0。、‘,,,hu

''E1

α=+60

(a)

断面辺長比BIDの異なる I桁断面の非定常空気力係数A2*図3・6・1

64

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断面辺長比B/D=8.6,10の断面では,A2'が正値にかわる風速域が正迎角と負迎角によっ

て異なり,負迎角の時に,より低風速域で負値を示す.このことから,正迎角時に比べ,

負迎角時に低風速側でねじれ振動が発現し,空力的に不安定化することが言える.

以上より,迎角 α=0 を含めた正迎角において,断面辺長比の増加にともない,ねじれ振

動がほぼ一様に安定化することがわかる.一方,負迎角において,そのような傾向は見ら

れないものの,正迎角に比べねじれ振動の発現風速の観点から不安定化する傾向がある.

したがって,空力的には桁高は小さくする方が耐風安定性を確保しやすいことが明らかと

なった.

. A2

10r I-Beams B/D=8.6 -ー-a=叩句・/'..LI ---.-- a=2[deg.] • ../ ~ Perforated I-B回 msB/D=8&雇/

5ト-<>-a=Oμeg.] 戸口

一丑一位2[deg・I周盾口U

-5

¥v/m 一一-baced on Theodorsen Fn. '-¥ 、一101 ・ 0 ・・¥

02 4 6 8 10 n

/長ク〆V~~フ1つ

a 紛争多一一-0-ヲンV O.-Mテ〆zゴクVO~11 OAヲy

φ=10mm 12.5mm

10酬

図3・6・2 孔あき I桁断面の模式図と非定常空気力係数A2*(B/D=8.6,α=00

, +20

)

次に I桁の外側と内側の圧力差を緩和する目的で主桁ウェブに孔を開けた主桁形状を考

案した.断面辺長比B/D=8.6のI桁断面の主桁ウェブに模型寸法上φ=10mm(実橋ではφ

=l,OOOmm)の円形の孔を千鳥に開口した I桁(以下,孔あき I桁)を用意し,非定常空気

力を測定した.充実率は89%(欠損率は 21%)である.断面辺長比B/D=8.6のI桁と孔あ

きI桁の非定常空気力係数A2*1の比較を図 3・6・2に示す.1桁と孔あき I桁を比べ,高風速域

で孔あき I桁の A2*1の値が小さくなり,ねじれ振動に対する安定化傾向が見られるが,A2*

が正値を示し始める風速域に大きな変化はなく,フラッタ一発現風速における安定化効果

は小さいことがわかる.このことは,ねじれ振動が発現する風速域では主桁周りに空気の

流れが形成されているため,つまり,ベルヌーイの定理より主桁周りに流速を有するため,

主桁の内側と外側での圧力が保たれ,主桁内側で、圧力回復が行われなかった可能性を示唆

しているものと考えられる.

次にフラッタ一発現風速[mls]と断面辺長比 B/D及び迎角 αの関係を図 3・6・3に示す.こ

65

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れらの図より迎角α=0。を含めた正迎角において,断面辺長比 BIDの増加にともない発現

一方,負迎角では,断面辺長比 BID=6.7以上のフラッターが安定化する.風速が上昇し,

正迎角の発現風速よりもかなり小さい風速域で不安定化する辺長比を持つ断面において,

また,断面辺長比正迎角に見られるような断面辺長比との明確な傾向は見られない.が,

BID=8.6以上の辺長比を持つ各断面では,迎角 α=+20

で発現風速が最も大きく,そこでピ

ークを持つことが言え,断面辺長比 BID=3の断面では,逆に迎角 α=+20

で発現風速が最も

小さく,迎角 α=_60

,迎角 α=+6。にかけて上昇することがわかる.

実橋断面への適用という観点から,図 3・6・3(b)に東神戸大橋の耐風設計基準限界風速ライ

高迎角側 (α>30

) では全での

断面において限界風速以上にあり,基準を上回っているが,迎角α=0。では断面辺長比 BID

これを見ると正負問わず,ン[13]も合わせて図中に示す.

三三6.7の断面で,さらに迎角α=-3。では全ての断面で基準を下回り,これらの断面および迎

角については,何らかの耐風対策が必要であると考えられる.

h

判明。。

-g言明区

30弓ω凶

4.5 90

kzoo-ok〆HomロOHOZZ同

.5 b o O

53 ・。回

診2.5]

u ロ"'tj (¥)

1.5

3

2

~00.2219Hz,ら0=0.748肱B=27.25m,M=2186×104kgjm

VD(m!s)I=2377×106kg-m,l=610m Vl c 100,

kC芯o-o〉芯gOHOお同日

201・1 ,V, I ・1 ・1 ・1 ・1 ・1 ・U ・1 ・.J1:'::10-8-6--4-2 0 2 4 6 8 1012

AIゆ ofAttackαc)

1 14 16 B!D

6 8 10 12

Side Ratio

迎角とフラッタ一発現風速との関係、、./Lυ

/・1桁高とフラッタ一発現風速との関係(a)

4

30

2匂

I桁断面のフラッタ一発現風速[mls]と断面辺長比 (BID)および、迎角 αの関係図3・6・3

π型断面である端2主桁断面では負迎角を除き,主桁高は小さいほど空力的以上より,

に安定化する傾向があることが明らかとなった.実橋を想定した場合,例えば 72m1sのフ

ラッター照査風速をクリアさせるためには,断面辺長比 BID=8.6以上に桁高を抑えること

66

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が一つの目安となることがわかる.ただし,このようなπ型断面を実橋に適用する際には

断面によっては負迎角に対する空力的な制振対策が必要となることが示唆される.なお,

今回の複素固有値解析では純粋に形状による空力特性の比較を調べるために,全ての断面

において同じ諸元値を用いた.

【箱桁断面の断面辺長比B/Dの変化にともなう非定常空気力特性】

A2

5r -ー-BID=5 十---0---BID=8.6

4卜--0--~ BID= 10 3~ 一-0--- BID=12.5

2

4

4

-56 明」

8

(a)α=0。

A2

5r -・-BID=5 トー-0-ー BID=8.6

4卜--0---BID=10

3~ ー-0--- BID=12.5

1Q, 例

/

ググ

-2

-3

ウー同onTheodor品、市-0 2 4 6 8

(c) α=+60

A2

5r ---BID=5 十一-0---BID=8.6

4卜ーζト BID=lO

3~ --0---B,周=12.5

2

J

4

一一」

8一昔

(b)α=+40

A2

4

3

-2

-3

でf--bacedoゆ四~orse~F~ V/,戸-0 2 4 6 8

(d)α=_60

図3・6・4 断面辺長比B/Dの異なる箱桁断面の非定常空気力係数A2*

67

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箱桁断面については断面辺長比 BID=5,8.6, 10, 12.5の4種類について非定常空気力を

また, 1桁同様,ねじれ振動の空力減衰を測定した.模型の詳細はAppendixに記載する.

示す非定常空気力係数 A2*に着目し,考察を行う.たわみ・ねじれ2自由度振動系でのフラ

ッタ一発現風速についても合わせて考察を加える.

各断面における非定常空気力係数A2*1の風速分布についてまとめたものを図 3・6・4に示す.

箱桁断面では,A2*'の分布曲線から 迎角 α=+40

,+6。の正迎角において断面辺長比 BID

一方,迎角 α=0。や迎角 α

=-6。では断面辺長比BIDによらずほぼ同じ風速域からねじれ振動の不安定化を示す.迎

角 α=-6。では, 1桁断面と同様に高風速側で安定化する風速限定型振動の特性を示すこと

が大きくなるにつれて,ねじれ振動が安定化する傾向を示す二

~00.2219Hz,ら0=0.748Hz,

Vp(おl)E257iF1;J272JvJfctOB

が考えられる.

~00.2219Hz,ら0=0.748~B=27.25m, ~=2.186X 10~kglm

VD(ny~)1=2.377 X 100

kg・m,1=610m VjfdJ()B c 1001 r 1 T -

B ‘ dα=4-

90トD+O UA議襲警α=20

α=0-α=6

K2020〉吉明注目U083凶

3

2.5

2

90

70

40

60

50

80 kmH32ω〉芯

20包おロ日

4.5 〉、

。。3.5 :>

α=_30 i ~ -~3 ~

~α=_60

-12.5] υ ロ'てコω 凶

1.5

4

2

80

70

60

50

40

kC320〉芯ωロO包=旦同

1.5

201, I , V, I ・1 ,I , I ・1 ,I ,¥1 , I ,.,11 ー10--8-6-4-20 2 4 6 8 1012

Angle of Attackαc )

30

1 14 16 BID

8 10 12

Side Ratio

6 4

30

20

迎角とフラッタ一発現風速との関係、‘.,,,LU

/・1桁高とフラッタ一発現風速との関係(a)

箱桁断面のフラッタ一発現風速[m/s]と断面辺長比 (BID)および迎角 αの関係図 3-6・5

フラッタ一発現風速[mls]と断面辺長比 BID及び迎角 αの関係を図 3-6・5に示す. 1桁同

様,迎角 α=0。を含めた正迎角において,断面辺長比 BIDの増加にともない発現風速が上

昇し,安定化することがわかる. 正迎角より一方,負迎角では,そのような傾向はなく,

も低い風速域でフラッター振動が発現し,不安定化していることがわかる.断面辺長比

また,断面辺長比 BID=8.6では迎角 α=+2。に

68

BID=10以上の各断面では迎角 α=+40

に,

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発現風速が最も大きくなるピークを持ち,迎角α=0。よりもやや正迎角で発現風速が上昇す

ることがわかる.例えば,東神戸大橋の耐風設計基準限界風速ライン[13]と比べると, 1桁

同様,迎角 α=_30

において断面辺長比 BID=8.6'の断面を除き基準を下回ることがわかる.

最後にフラッタ一発現風速[mls]の一覧表を表3・6・1に示す.

一以上より,箱桁断面においても I桁断面と同様に断面辺長比が大きくなるにつれて,耐フ

ラッター性能が向上する傾向にあることが明らかとなった.また, 1桁断面と同様に負迎角

を除き,例えば 72mJsのフラッター照査風速をクリアさせるためには断面辺長比 BID=8.6

以上に桁高を抑える必要があると言え,このことからも同じ断面辺長比を有する断面にお

いて主桁形状変化に対する空力特性,特にフラッター特性へ及ぼす影響が小さいことがわ

かる.

69

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-一一一ーー可

表 3・6・1 複素固有値解析による発現風速の一覧表

[凶8]

I桁断面 迎角

断面 BID D句m>c(mm.) ~60 -30 00 +20 +40 +60

3 100 16 52 40 38 38 45 48

まe5 60 9 41 60 62 58 52 48

ま 6.7 45 ‘ 7 38 42 57 58 59 61

事c 8.6 35 5 47 44 73 81 74 68

trC 10 30 4 37 53 74 77 73 73

守主c 百 12.5 24 3 70 70 80 ‘92 91 83

4ic 。oOdδ'000δoOoi 8.6 35 5 53 67 73 78 74 72 /

[凶'8]

箱桁断面 迎角

断面 BID D<mm> c(mm) -60 -30 00 +20 +40 +60

D11

川1k-1

c

リ 5 60 30 51 78 73 73 66 43

田c 口 8.6 35 18 51 52 74 73 73 71

車c 口 10 30 15 53 59 80 75 83 71

科Lc U 12.5 24 12 49 64 86 90 92 79 ーーー」ー

※全ての断面において中央支関長が600m級の長大斜張橋の諸元値を用いて算出.

※B=27.25m, ~o=O.2219Hz, 4o=O.748Hz, m=2.186X 104kg/m, I=2.277X 106kg.m

70

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<参考文献>

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[5] Kubo, y, Hirata, K and Mikawa, .K:.Mechanismof aerodynamicvibrations.of

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[11]古賀 貴,久保喜延,岡本有造,貞島健介,山口栄輝:斜張橋用 2主桁断面の空力特

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[12]久保喜延,木村吉郎,山口栄輝,加藤九州男,貞島健介,岡本有造:2主桁橋の空力

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71

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端 2主桁断面 (EdgeGirder)の渦励振およびフラッターの発現機構第4章

説概1

π型断面である端2主桁断面の幾何学形状変化による基本的な空力振動特性について第

3章で考察した.その端2主桁断面の基本的な空力特性から下面の幾何学形状変化〈特に

主桁位置の変化)によって,下面からの剥離流れが変化し,全体の安定性・不安定性を決

定づけていることが推察できる.本章では,これらの基本的な空力振動特性を踏まえて,

4.

特に渦励振とフラッターの空力特性に着目し,各種風洞試験を行い,それら空力不安定現

象における振動発生メカニズムについて考究する.

はじめに,第3章で述べたように主桁位置が変わることで渦励振の発現風速が変化し,

また,最大応答振幅も主桁を内側に配置することで安定化傾向を示すため, 4.

π型断面としての端2主桁断面における渦励振の応答特性に着目し,その発現風速から渦

2節では

励振の発生機構について考察する.

どのようなメカニズムでねじ3節ではフラッター特性に着目し,そのπ型断面が,4.

れフラッターが発生するのか,断面側面の非定常圧力をもとにした非定常圧力特性や非定

常空気力特性から振動発生メカニズムの解明を試みる.さらに過去の研究における矩形断

面や H型断面の非定常圧力特性との比較や剥離せん断層の挙動から?主桁位置を内側に配

置することでねじれフラッターが安定化する原因について考察する.

4. 4節では第3章で示した主桁位置の範囲 (clB壬0.167)よりもさらに主桁位置を内側

に配置することで,端2主桁断面のフラッター特性にどのような影響を及ぼすのか,主桁

-E34句可毛

jU23fAaf14ヨ11切抵当

33泊dg司調

4団理副首司

位置をパラメータに非定常空気力特性の観点から考察を加えた.

なお,本節を通して行った風洞試験における気流条件は一様流とする.

72

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4. 2 π型断面における渦励振応答特性

4. 2. 1 自由振動応答特性から推定する St数

はじめにπ型断面の渦励振発生機構を論じるにあたり,端2主桁断面のカルマン渦の渦

放出周波数から求まる St数(ストローハル数)を求める.St数を調べる方法として断面後

流域に熱線風速計プローブ、を置き,その流速変動や変動空気力,または変動圧力を測定し,

スペクトル解析を行うことでその卓越周波数より求めることが一般的である.しかし,本

研究で対象とする端2主桁断面ではいずれの方法においてもそのスペクトル解析による卓

越周波数のピークが明確ではなく,カルマン渦の渦放出周波数を捕らえることが困難であ

ったため,たわみ 1自由度における自由振動応答特性から St数を推定する.

I桁断面のα=0。におけるたわみ 1自由度の自由振動応答図を図4・2圃 1(a)に示す.ただし,

ここでは St数を算出するにあたり,断面幅の Bで無次元化する.図 4・2-1(a)よりたわみ渦

励振が3つ存在し,それぞれ,無次元風速V/fB=0.750,V/fB=0.80および、V/fB=1.67付近

より発現している(図中①,②,③).次節でも詳細に述べるが,無次元風速V/fB=1.67で

発現している渦励振は自己励起型渦励振の発現風速[1]とされる1.67B/Dとその発現風速が

一致しているため,前縁剥離渦に起因する自己励起型渦励振と考えられる.また,無次元

風速 V/fB=0.80付近で発現している渦励振は自己励起型渦励振の 112成分 (V/fB=0.835)

と考えられる.しかし,無次元風速V/fB=0.750で発現している渦励振はこれら自己励起型

渦励振の発現風速域とわずかにずれており,さらに同じ辺長比を持つ矩形断面 (B/D=10)

のSt数 (St=1.85,V/fB=0.541) [2]やH型断面 (B/D=10)のSt数 (St=1.80,V/fB=0.556)

[3]とも一致していない.したがって,この無次元風速V/fB=0.750で発現している渦励振が

カルマン渦型渦励振と推察できる.その場合, St数は1.33(代表長をDで無次元化した場

合, St=0.133) と推測される.一方,箱桁断面 (α=00

)におけるたわみ 1自由度の自由

振動応答図を図 4-2・1(b)に示す.たわみ 1自由度の自由振動応答図より I桁断面と同様にた

わみ渦励振が3つ存在し,それぞれ,無次元風速V/fB=1.67,V/fB=O. 748, V/fB=0.418よ

り発現している(図中①,②,③).無次元風速V/fB=1.67で発現している渦励振はその発

現風速より,自己励起型渦励振と考えられる.また,無次元風速V/fB=0.418より発現して

いる渦励振はその自己励起型渦励振の 114成分と一致している.しかし,無次元風速

V/fB=0.748で発現している渦励振は I桁断面と同様に自己励起型渦励振の 112成分

(V/fB=0.835) とわずかにずれており,さらに同じ辺長比を持つ矩形断面 (B/D=10)の

St数 (St=1.85,V/fB=0.541) 凶とも一致していない.したがって,この無次元風速

V/fB=0.748で発現している渦励振がカルマン渦型渦励振と考えられる.その場合, St数は

1.34 (代表長をDで無次元化した場合, St=0.134) と推測され, 1型断面と一致する.

73

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(Bで無次元化)

矩形断面(BID=10)の St=1.852ηp[mj 2η[mmj

1 r 10 (I/St=0.541)

駄や

叩l 何mm) ③ rn=~ ~77 1.0,,/,

8

6

0.8

0.6

矩形断面(BID=10)の1ISt

(V/fB二0.541)

E

一円。一

qo一;

一唱EA

一一一一一4L

一QU

Vl白=1.67BID

(V/fB=1.67)

kl

カルマン渦型渦励振(V/fB=0.75)

114

112

Vl白=1.67B/Dx

(V/fB=0.418)

V/fD=1.67BID ×

(V/fB=0.835)

I桁断面の St数の推定(a)

~

OL 凶ヱ位以主口語与」夜泣芸品性宇佐もる-oV[m/s)01234567

'VIfnB o

Vp[1町's)10 15 20 25

B

カルマン渦型渦励振 |St=1.34 I

2~p[~)~~何m) m=2.621 kg/m

ーーI ~、 5c(2η=5mm)=35 .26

(3) o(2η=5mm)=O∞7目

、-f=4.733Hz

1f 10ト L判。自由

m=2.621 kg/m Sc(2η=5mm)=35.26 o(2η=5mm)=O.0070 f=4.733Hz

2ηp[mj2η[mmj

1 r 10

V/fD=1.67BID

(V/fB=1.67)

」白斗c

|十上1

Q 駄但8

8 ②

(V/fB=O. 748)

8

2

6

4

0.8

0.6

0.4

0.2

矩形断面(BID=10)の1ISt

114

112

×

(V/fB=0.418)

V/fD=1.67BID x

(V/fB=0.835)

(V /fB=O .541)

V/fD=1.67BID

箱桁断面の St数の推定、‘,/弘U

/目、、

α=00

) 端 2主桁断面の自由振動応答特性からの St数の推定 (BID=10,

74

図 4・2・1

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以上より,断面辺長比BID=10の端2主桁断面(I桁断面および箱桁断面)は同じ辺長比

を持つ矩形断面よりもやや小さいおよそSt=1.33{Bで無次元化)と考えられる(表4・2・1).

表4・2・1 断面辺長比BID=10を有する各断面の St数〈α=00

)

B/D St数(代表長:B) St数(代表長:D)

矩形断面 1.85 0.185

端 2主桁断面〈π型断面) 10 1.33 0~133

H型断面 1.80 0.180 L 一一一

4. 2. 2 端2主桁断面における自己励起型渦励振の特性

本節では3. 4節で述べた端2主断面の主桁位置の違いによる自由振動応答特性のうち,

特に自己励起型渦励振特性について考察する.

たわみ 1自由度の自由振動応答図(図 4・2・2)を見ると,主桁を外側に配置した (c!B=

、 0.013)場合,無次元風速 V/fB=0.8付近で倍振幅約 2.0mmの渦励振,さらに無次元風速

V/ffi=I.7 付近で発現して,無次元風速 V/fB=2~4 付近で最大倍振幅が約 8.0mm となる渦励

振が発現している.一方,主桁を内側に配置した断面 (c!B=0.167)では無次元風速V/fB=0.6

付近で振動応答の小さい渦励振,さらに無次元風速V/fB=1. 1付近から発現した渦励振は最

大倍振幅が約 5.5mmとなり,主桁を外側に配置した断面 (c!B=0.013)よりも安定化して

いる.

一方,ねじれ1自由度の自由振動応答図(図4・2・3)を見ると,主桁を外側に配置した(c!B=

0~013) 場合,無次元風速 V/fB=0.6 付近で倍振幅約 0.50

の渦励振,さらに無次元風速

V/ffi=1.0付近で発現した渦励振が最大倍振幅約 2.50

の応答を示す.一方,主桁を内側に配

置した断面 c!B=O.167では無次元風速V/fB=O.8付近で最大倍振幅約 0.5。の渦励振,さら

に無次元風速 V/fB=1.5付近では最大倍振幅約 2.00

の渦励振が発現し,ねじれ渦励振特性

においても,主桁を内側に配置することで安定化することがわかる.

過去の研究[1]によれば,断面側面で生成される前縁剥離渦の断面を流下する速度が,接

近流速の約 60%になることが解明されており,鉛直たわみならびにねじれ自己励起型渦励

振の開始無次元風速はそれぞれ以下の式で示されるとしている.

鉛直たわみ渦励振開始無次元風速:

Von =(1/ N)・(1/0.6)・(B/D) (4. 1)

75

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ねじれ渦励振開始無次元風速:

九 =(2/(2N -1))・(1/0.6)・(B/D) (4.2)

ただし, N=l, 2, 3・・., B:幅員, D:桁高

向@oO4As2miトトl

[mm]

emf。=a=。3 ,a23ι77ーk‘帥一目n 。

G畠OUFFS可73蜘=2a4nm,m}t=zJ8-.dV0vVaI1RpR.VE2ι B 町s9噛1/8]

V/fB = 1.7 (Bで無次元化)

V/fl)= 17. (Dで無次元化〉

21'1

0@O0pA2t・6。mトトι ト1¥]

‘・ IlII IIIIJ R t

E 唱2。

c

2 S8町S』向』c-p2=司加247側m5m}kp前5羽8

-司旨3 . 73 8,6o 4 HZ

-・4n,4e E A

司 .V5

1.38占30 vVVt町4畑制:m/8)

V/fB =.1.1 (Bで無次元化)

V/ID=11.0 (Dで無次元化)

たわみ渦励振の発現風速 V/ID=I.67BID

B : B

I 一一-1ド B' : B' t,

B'ID =9.73 B'/D = 6.67

1.67B'/D=V/fD = 16~2 1.67B' /D=V/fD = 11.1

図4・2・2 たわみ渦励振の発現風速の考察(I桁断面, B/D=10,α=00

)

: .:

端2主桁断面の主桁を外に配置した断面 (clB=O.O13)ではたわみ渦励振の場合,無次元

風速V/fB=1.7付近で発現している渦励振が自己励起型渦励振の発現風速とされる式(4.1)の

1.67BIDの発現風速とほぼ一致しており,前縁菊j離渦に起因する渦励振であると考えられる.

76

', 'rl, ι、$

Jん一…川、ぺ、台、守、

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同様に,主桁を内側に配置した断面 (c!B=0.167)では無次元風速 V/fB=1.1付近からたわ

み渦励振が発現しており,主桁間隔B'を式(4.1)のBにとった場合,断面辺長比はBID=6.7

となり,式(4.1)のたわみ渦励振開始風速の発現風速とほぼ一致する.

2eI5侮rg.1 !!U!! b! 4ト

7 80|s18f4={c27(+均g.=1m41=a1X.t}1=}00=458m0k7gs 3 -m 3~

2~ .~

J 15 V{mjs1

十V/fB

V/fB = 1.0 (Bで無次元化)

V/ID= 10 (Dで無次元化)

2

1=3.674X104.k0 g ・mSspcpede=-f}=593

)=0.0075

f=7.t43Hz

Vp[m/s]

V/fB = 1.5 '(Bで無次元化)

V/ID= 15.0 (Dで無次元化)

ねじれ渦励振の発現風速 V/ID=1.11BID

B

ドB'

B'ID =9.73

1.11B'ID=V/ID = 10.8

: B

一一-1B'

B'ID=6.67

1.11B'IDX2 =V/ID = 14.8

z . . '

図4・2・3 ねじれ渦励振の発現風速の考察(I桁断面, BID=10,α=00

)

.-1 •

一方,ねじれ渦励振の場合も同様に主桁を外に配置した断面 (c!B=0.013)では,無次元

風速V/fB=1.0付近で発現している渦励振が,自己励起型渦励振の発現風速とされる式(4.2)

77

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の 1.11BID (N=2)の発現風速とほぼ一致しており,前縁恭i離渦による渦励振であると考えら

れる.同様に,主桁を内側に配置した断面 (c!B=0.167)でも無次元風速 V/ffi=1.5付近か

らねじれ渦励振が発現しており,主桁間隔 B'を式(4.2)の Bとした場合,断面辺長比は

BID=6.7となり,式(4.1)のねじれ渦励振開始風速の発現風速とほぼ一致する.

このようにπ型断面である端2主桁断面の渦励振特性として,その発現風速は下面の主

桁間隔 B'を幅員方向にとった場合,自己励起型渦励振の発現風速1.67BID風速とほぼ一致

する.このことから,上面からの渦生成よりも下面の剥離せん断層の巻き込みにより強い

渦が生成され,下面から剥離した前縁剥離渦が支配的な渦励振となっているものと考えら

れる.したがって,端2主桁断面の渦励振応答特性は主桁間隔 B'によって発現風速が決定

づけられ,断面全体の渦励振特性を決定づけるものと考えられる.

また,前章でも述べたように,主桁形状に関わらず桁を内側に配置すると最大振幅が小

さくなり,主桁位置の違いによる影響も大きい.これは主桁を内側に配置したF断面 (c!B=

0.167)では前縁側主桁よりも床販が張り出しているため,主桁を外側に配置した断面 (clB=

0.013)よりも上面で形成される剥離せん断層が小さくなり,それに伴う上面からの前縁剥

離渦の生成が弱められ,最大応答振幅が小さくなったものと考えられる〈図4・2-4).

ー,WIND

図4・2・4 剥離せん断層の推定図(I桁断面, α=00

)

78

, ロー一、人、勺γγ

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4.3 π型断面におけるフラッタ一発現機構

3. 4節で述べたように断面辺長比 BID=10の端2主桁断面において,主桁を外側に配

置した場合 (clB=O.O13) と内側に配置した場合(c/B=O.167) とでは,主桁を内側に配置

した方 (c!B=O.167)が耐ねじれフラッタ一安定牲が向上することが明らかになっている.

本節ではこれらの基本的な空力振動特性をもとに, π型断面のねじれフラッタ一発現機構

を明らかにし,さらに,主桁を内側に配置することによる動的特性の安定化傾向,特にね

じれフラッターが安定化する機構を明らかにするため,断面側面の非定常圧力を測定し,

その流れ場から考察を行った.

第 3章で基本的な空力特性の把握により,端2主桁断面はねじれ振動の卓越するフラツ

ター特性を示すことが明らかになっているため,以下については,ねじれ1自由度強制加

振による非定常圧力測定結果に着目して考察することにする.

はじめに,主桁位置を外側に配置した断面(c/B=<l.013)側面の非定常圧力を測定する.

その測定結果より,断面まわりの流れ場を考察し,断面のどこに励振力が作用しているの

かを把握し,振動発生メカニズムの解明を試みる.次に主桁を内側に配置した断面を用い

て,主桁を外側に配置した断面と同様に断面側面の非定常圧力を測定し,断面まわりの流

れ場の観点から主桁を外側に配置した断面の非定常圧力特性と比較することで,耐ねじれ

フラッター特性が向上する原因を明らかにする.

なお,無次元仕事筋・の定義は,下式(第2章参照)のように正値が励振力,負{直が減衰

力の働きを表すように定義している.

ねじれ1自由度振動 T

VA n

gu

AV

X一DNωa z

--2

F W

(4.3)

本章では主に非定常圧力特性により考察を行うが,自励振動であるねじれフラッターは

発散振動であることから非定常空気力が構造物になす仕事の概念からも説明できる[2].

たわみ振動の場合,物体の変位を式(4ρにおくと,変位速度は式(4.5)になる.

y(t) = Yo・m (4.4)

y(t) =ωYoCOSωt (4.5)

外力 f(t) (非定常空気力)は変位との位相差V を用いると式(4.6)として表される.

79

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I(t) =んsin(,ωt-fJ') (4.6)

そこで,非定常空気力がなす 1周期の仕事 Wは式(4.7)で表される.

w=.tlClfJJ!(t)yV減 (4.7)

=flush(ω t ~fJ')ω Yocosω tdt

=ω 10以∞ISfJ'.tlC1ωS担ωtωω tdt一→si並nψ.t

lC1仰ω、∞ω幼

=一itf 0 Yo sin fJ'

一方,ねじれ振動の場合も同様に,物体の変位を式(4~8)におくと,変位速度は式(4.9)に

なる.ただし,Xはねじれ中心から下流側の距離とする.

y(X,t) =Xoo sinωt (4.8)

タ(X,t}=Aω妙。cosωt (4~9)

同様に,非定常空気力がなす1周期の仕事 Wは式(4.1ωで表される〈下向き正).

w = -tlC1ωI(t)タ(X,t) (4.10)

=dzfU州 ωt-fJ')Aω 仰 sω 紛

=-Aω 10Oo(∞sfJ' .tlC1ω

siωcosω tdt -sin fJ' .t九向刷

=XJr 10 Oos泊fJ'

非定常空気力のなす仕事 Wが正の時,空気力は構造系に振動エネルギーを供給し,発散

振動を持続させることになる.空気力の作用により,発散振動状態となることを空気力的

に不安定であると言い,ねじれ振動の場合,Wが正,すなわち, X sinfJ'が正となるときで,

位相差を見ると下流側で00

<fJ' <1800 となっているときである.これは空気力が物体の

振動変位より下流側では遅れた位相で作用しているときであり,式(4.3)と一致する.この

ようにねじれ振動における非定常圧力の場合,各点(圧力孔)の仕事を表現するには,ね

80

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じれ中心からの距離によって変位の大きさが異なり,また,ねじれ中心の前後で変位の方

向が異なることに注意が必要となる.

4. 3.. 1 端2主桁断面のフラッタ一発現機構

主桁を外側に配置した I桁断面化1B=0.013)のねじれ1自由度強制加振における非定常

圧力測定結果のうち,上面の非定常圧力特性を図 4・3・1,下面の非定常圧力特性を図 4・3・3

に示す.また,同じ断面辺長比BID=10をもっ矩形断面と端2主桁断面を比較することで,

π型断面としての下面形状変化の影響も考察する.断面辺長比 BID=10の矩形断面非定常

圧力特性[4]を図4・3・2に示す.さらに図企3・4に上下面の無次元仕事を足し合わせたトータ

ルの無次元仕事"を分布を示す.

Cp -1r -O.:V/fB=3;5

.:V/I侶=5.0・:V/fB=7.0O:V/fB=9.。口:V/fB=12.0

e'o 1ピ恥=2.0Hz

2中。=4。

.6:V/fB=3.5

.:V/fB=5~0 ・:V/fB=7.0O:V/fB=9.。口:VjfB=12.0

fto=2.~Hz 2CTo=4・

o ふ主主

o 主宰 M.P. M.P.

(a) 平均圧力係数Cp (b) 変動圧力係数Cp

90

恥=2.0Hz

2中。=40

Wr O.02r

~ .6:V/fB=3.5・:V/fB=7.0.:v.月B=5.0O:V/fB=9.0

0.01~合口:V/fB=12.0 Excitation

-92

180

-0.01

日一

E

f柿=2.0Hz

-o.02l2+0=40

主皐

S抱ble270

360

主主主 M.P. M.P.

(c) 位相差V (d) 無次元仕事"を

図4・3・1 1桁断面〈上面, clB=0.013)の非定常圧力特性

(ねじれ 1自由度強制加振, BID=10,α=00

)

81

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主一亜(図4令1)

平均圧力係数Cpの分布からどの風速域 (V/fB=3.5--12.0)においても,その絶対値が断

面の上流側で大きく,下流側に向かって小さくなる.このことから,前縁からの剥離せん

断層が断面中央付近で再付着していることがわかる. これは図 4・3・2に示す断面辺長比

BID=lOの矩形断面と同じような傾向を示す.しかし,前縁部における負圧の値は矩形断面

の方が大きい. これは下面の形状変化による影響が上面前縁部に現れたものと考えられる.

変動圧力係数Cpの分布から,ピーク値を示す位置が風速の増加にともない,下流側へと

移行する傾向が見られる.このように風速の増加にともない,ピークが下流側へと移行す

る特性は断面辺長比BID=10の矩形断面にも見られる.

、変位と変動圧力の位相差1Jf(位相特性)の分布から,無次元風速V/fB=3.5では前縁から

後縁にかけて位相が約 2700

遅れ,無次元風速V/fB=5.0,7.0では位相が約 3600遅れる.

さらに無次元風速V/fB=9.0,12.0では前縁から後縁にかけて位棺がなだらかに遅れる.

-c P .V/fB=7.56 1.0

0.5

0.0

... V/fB=11.33 ¥l VlfB=15.13 b. V/fB=18.93 o V/fB=22.67

!日.• • • • • 'M.P: 古|

( B/0=10, Torsional1 OOF)

(a) 平均圧力係数Cp

ψ(deg.)

90

180

.V,斤B=7.35T¥/,斤B=11.22マV/fB=14.98

270ト6V/fB=18.72 ioV,斤B=22.67

lLE:-Mp:TE-i (B/0=10"TorsionaI100F)

(c) 位相差V

C P

1.0

0~5

0.0

• V/fS=7.35 .. V/fB=11.22 マV/fB=14.986 V/fB=18.72 o V/fB=22.46

lLE. . ... . . . . M.P: . . . . . . . T:e.1

{日"0=10,Torsional100F) ,

(b) 変動圧力係数Cp

Wr

0.02 • V/fB=7.35 ... V/fB=11.22 ¥l V/fB=14.98 b. V/fB=18.72 o V/fB=22.46 片品全託金値

0.01

o

-0.01

~C)'02

!日 'M.P・ T:E.I( Bl0=10, Torsional1 OOF )

(d) 無次元仕事防・

、,L-

図4・3・2 矩形断面 (BID=10)の非定常圧力特性[4](ねじれ1自由度強制加振, α=00

)

82

/

J

i九 、吋吋可

4 可事 ~、いルρ←一 、清-而諺,ぺι 巴 -一 i イ e 乞一 1

4γf二芯 九む2抗れ/←!官£之 λι山φ

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れらの特性より,この断面では前縁剥離渦の存在が考えられる.つまり,このようなπ型

断面のフラッタータイプは,フラッタ一発生機構の3つの分類協のうち“渦の流下"に起

因するねじれフラッタータイプであることが考えられる.このように風速域によって位相

特性が変化することは,矩形断面でも同じような傾向を示している〈図 4-3・2・(c))•

無次元仕事"をの分布(図4・3-1(d))を見ると,断面中心より前縁側において,どの風速

域でも断面中心に向かつて,励振力から減衰力へと変化している.これも同様に断面辺長

比BID=10の矩形断面の特性にも見られる(図4令 2-(d)).一方,断面中心より後縁側では

風速域により,その特性が異なる.つまり,位相特性で見られたような前縁部から後縁部

にかけて 1800

以上,位相がずれる風速域 (V/fB孟7.0)では後縁部に減衰力がかかり,逆

に位相が 180。以上遅れない風速域 (V/fBと9.0)では励振力が働いていることがわかる.

したがって,ねじれフラッターが発生している風速域においては,風速の上昇に伴い,上

I.Lε.

D j 'c

0.5r b.:V/fB=3.5 0:V/fB=9.0 ・:V/fB=5.0 口:VlfB=12.0・:VlfB=7.0

M.P. E百

HA

T 帯

M.P.

Z

o

0.5

-0.5 1 革命.....

f+o=2.~ Hz 24勺=4

-1L

cp (a) 平均圧力係数Cp

f鍋 =2.0Hz ・:Vl侶=7.0必¥=40 b.:V/fB=3.50:V/fB=9.0

1L ~・:vt侶=5.0口:V/fB=1 2..0

CP(b) 変動圧力係数Cp

1lc M.P. T.E.

2it: M.P. T.E.

z z -90, f+o=2.~Hz 0.02,匂=2.0Hz Exci泊,tion

2中。=4・0.01

で 守也b.:VlfB=3.5

¥一180ト.O圃.VVVHHHB8B4=470a 0 -0.01

e:V/fB=5.0・:V/fB=7.0口:V/fB=12.0O:V/fB=9~O 口:V/fB=12.0270L

ψ (c) 位相差V (d) 無次元仕事野全

図4・3・3 1桁断面〈下面, c1B=0.013)の非定常圧力特性

(ねじれ1自由度強制加振, BID=10,α=00

)

83

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面の後流側で励振カが強調され,このことがねじれフラッタ一発生要因の一つであると考

えられる.

以上より,主桁を床版の最端部に設置したI桁断面 (clB=O.O13)の上面の非定常圧力特

性は,同じ辺長比を持つ矩形断面と同様の傾向を示し,特に位相特性,つまり渦の流下と

大きな相関を持ち,ねじれフラッターが発生する高風速域の断面後流側で励振力が強調さ

れることが,ねじれフラッターの振動要因のーっと考えられる

王一亜〈図 4・3・3)

平均圧力係数Cpの分布から,無次元風速V/fB=5.0--12.0の場合,断面後縁側にかけて,

値が小さくなり,また,無次元風速V/fB=3.5の場合,後縁側ほど絶対値が小さくなり,後

縁付近では正値になっていることから,後縁付近で剥離せん断層が再付着したものと考え

られる.変動圧力係数Cpの分布から下面では,全体的にその値が風速の増加するにつれて,

減少している.また,風速が小さくなるにつれて,断面中央でなだらかなピークを示すよ

うになり,無次元風速V/fB=3.5では断面後流側で大きな値を示す.位相特性から,誤'J定風

速の全ての風速において,前縁側から後縁側に向かい一様に位相が遅れていく傾向が見ら

れ,上面同様に,前縁からの剥離渦の存在(流下)が考えられる.

Wr 0.04

s:V/fB=3.5 e:V/fB=5.0

Excitation .:V/fB=7.0 O:V/fB=9.0 口:V/fB=12.0

0.02

-O~02

f.O=2.~ Hz 2中0=4"

-O.04L Stable

-t砂励振力WIND

図4-3・4 トータル無次元仕事防全分布とねじれフラッターに起因する励振力の模式図

(ねじれ1自由度強制加振, BID=10,. clB=O.0I13,α=00

)

84

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無次元仕事f&の分布から,前縁側ではどの風速域においても断面中心に向かい,励振力

が一様に小さく変化している.一方,後縁部では,加振振幅 (2φfF40

) 域ではねじれフ

ラッターが発生していないと考えられる無次元風速V/fB=3.5において,断面後流側に減衰

力が働き,その他のねじれフラッターが発現している風速域 (V/fBミ5.0)では励振力が作

用している.また,図 4・3"4の上下面におけるトータル仕事分布からも,断面後縁側におい

て風速域によって励振力および減衰力の作用が異なり,特にねじれフラッターが発生して

いる風速域では上下面後流側に大きな励振力が作用していることが明らかになった.

また, H型断面〈図 4・3・5中“口"印)の非定常圧力特性[6][7]と比較すると,断面前縁

側で変動圧力係数Cpおよび位相特性において, H型断面と端2主桁断函が比較的一致して

いるが,後縁にかけて, H型断面で端2主桁断面よりも位相が遅れる傾向にある.ただし,

どちらの断面も剥離渦の存在が考えられ,比較的類似した非定常圧力特性を示すことが考

えられる.このことから, π型断面では上面側が矩形断面と類似した特性を示し,下面倒

ではH型断面の特性を示す傾向にある.したがって,矩形断面と H型断面の両方の特性が

混在することでπ型断面の振動応答が決定付けられるものと考えられる.

LL M.P. T.E.

1rLc M.P. T.E.

1fLC M.P. T.E.

z z D 11 c O, ー伺「 Exci凶∞

.-A弘司ト-A-.・

.:V/f8=&.O(Edge Girders) ・:v.畑=7.0(E,匂eGi嶋崎口:V,畑=6.8(H-Sha問。

0.5

~匂

180←・:V/f8=5訓E匂eGi鴎隠}・:V/f8=7.0(E,匂eGirders)E 口:V/f8=6.8(H-Shap凶}

270L

1JI

-0.01 ・:V/f8=5.0(日 'ge.GI臨時国:V/f8=7刷E匂eGi蜘 rs)

-0.02ト口:V/f8=6.8(H-Sh却制}

(a) 変動圧力係数Cp (b) 位相差V (c) 無次元仕事"を

図4・3・5 H桁断面 (BID=9.4)[61と端2主桁断面 (BID=10,下面, clB=O.013)の

非定常圧力特性の比較(ねじれ1自由度強制加振, BID=10,α=00

)

以上より, π型断面としての端2主桁断面(I桁, BID=10,α=0 0 , clB=O.O 13)のフラ

ッタータイプとして,前縁の剥離渦の流下に起因するねじれフラッタータイプ[5]であると

ことが考えられる.さらに,フラッターが発現していない風速域では,後縁側上下面に大

きな減衰力が作用し,ねじれフラッターが発生している風速域では,上下函後縁側に励振

力が作用する〈図 4・3・4). このことから上下面後流側の励振力が強調されることで,ねじ

85

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れフラッターが発生していることが明らかとなった.また,端2主桁断面のようなπ型断

面では上面側および下面側が,それぞれ矩形断面および、 H型断面と類似した非定常圧力特

牲を示す傾向にあることから,その両方の特性が混在することでπ型断面の振動応答が決

定付けられるものと考えられる.

4. 3. 2 フラッタ一安定化メカニズムに関する考察

主桁を内側に配置したI桁断面 (c!B=0.167)のねじれ1自由度強制加振における非定常

圧力測定結果のうち,上面および下面の非定常圧力特性を図4・3・6に示す.また,比較検討

として,断面辺長比 BID=15をもっ矩形断面の非定常圧力特性[4]を図 4・3・7に示す.さら

に図 4・3・8に上下面の無次元仕事を足し合わせたトータル無次元仕事協・分布を示す.

よ一重(図4・3・6(a)---(d))

平均圧力係数Cpの分布から,測定風速のどの風速域においても断面中心よりやや上流側

付近で正圧となり,剥離せん断層が再付着していることがわかる.主桁を外側に配置した

断面化!B~0.013) よりもさらに前縁側で再付着していることがわかる.

変動圧力係数Cpの分布から,前縁付近でその値のピークを示し,断面中心よりやや上流

側よりほぼ一定値を示す.主桁を外側に配置した断面 (c!B=O.O13)と比較して,さらに前

縁側でそのピークを迎えることがわかる二これは矩形断面で言う,断面辺長比が大きい扇

平な矩形断面の変動圧力係数Cpの分布を示し,特に断面辺長比 BID主主15の矩形断面の変

動圧力係数ゐ分布(図 4・3・7) と類似していると言える.このことからこの断面のフラツ

タータイプは前縁からの局所的な剥離バブルに起因する連成フラッタータイプ[5]であるこ

とが考えられる.

位相特性では前縁から後縁にかけて,位相が遅れた後,急激に位相が進むと言う特性が

全風速域について見られ,無次元風速V/ffi=7.0,12.0では後縁にかけて徐々に進んでいく

が,無次元風速V/ffi=3.5では徐々に遅れていく.また,風速が高くなるほど位相進みに変

わる位置が下流側へと移行する.これらの位相特性も断面辺長比 BID主主15の矩形断面の位

相特性と類似している.

無次元仕事"をの分布から,前縁部において測定風速のどの風速域においても励振力が断

面中心に向かい減衰力へと変化している.また後縁部にかけては,減衰力が働いている.

以上より,主桁を内側に配置すると上面での非定常圧力特性が断面辺長比 BID主主15以上

の矩形断面の非定常圧力特性と類似した特性を示し,達成フラッタータイプ(5)の特性を示

すことがわかる.

86

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.6:V/f8=3.5 ・:v,斤8=7.0口:VJfB=12.0

告dh

M.P. u

「~p

-.r

o

.6:V/f8=3.5 ・:v.畑=7.0口:V/fB=12.0

0.5

4ι些!:=g z -1 Cp

(a) 平均圧力係数Cp (上面) (e) 平均圧力係数Cp(下面)

L二王

M 高高5戸地Z

引匂-4r

!:i:v.畑=3.5・:V/f8=7.0口:V,畑=12.0

f凶,=2.0Hz2+0=4・

0.51

ぽと甲 M.P. z f",,=2.0Hz

ep

ω 変動圧力係数ゐ〈下面)

D 官 z-1伺「恥,=;2.0Hz

勾。=4

.6:V/f8=3.5 ・:V/f8=7.0ロ:V/f8=12.0

(b) 変動圧力係数Cp(上面)

48gho=2MZ

田ト d.:V/fB三3.5

圃:VI侶=7.0関

180L 口:V/fB=12.0 1かr企ω口.v畑vvm掴周李争==7t世』a2B As 白~、

LJ M.P. T.E.

E ψ

(c) 位相差1[1"(上面) (g) 位相差1[1"(下面)

0.02W「r

に王T.E.

E D

0.02W「 rf2+。==24.0• Hz

-Mt1V判諸国l '量.

~.02ト V

A

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•• 20

5

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,Lト

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vvmmnaM』-7-2SS 8

S組ble

Pι王M.P. T.E.

E __. c

(d) 無次元仕事防全(上面) (h) 無次元仕事 W全(下面)

図4・3・6 1桁断面〈上面・下面, clB=0.167)の非定常圧力特性

(ねじれ1自由度強制加振, BID=10,α=00

)

87

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王一一遁(図 4・3・6(e)~(h))

平均圧力係数Cpの分布から,上流側主桁の前縁側において,測定風速のどの風速域もそ

の値は正値を示す.主桁間ではいずれも負の値を示し,無次元風速V/fB=3.5では下流側に

向かうにつれて,その絶対値は小さくなる.つまり,下面では上流側の床版端からではな

く,上流側の主桁から剥離が行われていることが考えられる.

~G1 .V/ffi=7.53

OV/ffi=11.02 .V/ffi=14.72 ロV/ffi=18.43・V/ffi=22.1l

ψrldeg.]

-180r • V/ffi=7.35 口V/ffi=18.43-135ト oV/ffi=11.02・V/ffi=22.11一切ト ・V/ffi=14.72

o

LE.. M.P. T.E.

(8/D=15, Torsional1DO丹

90

135

180

LE. M.P. T.E.

(8/D=15, 1DOF Torsional)

(a)ノ変動圧力係数Cp (b) 位相差V

図4・3・7 矩形断面 (BID=15)の非定常圧力特性[4]

〈ねじれ 1 自由度強制加振, α=00

• )

-0.01

ら0=2.0Hz 2中0=4~

Excitation 0.01

-0.02

6:V/fB=3.5 Stable ・:V/fB=7.0口:V/fB=12.0

図4・3':8 上下面トータル無次元仕事阪・分布

〈ねじれ1自由度強制加振, c/B=0.167;α=00

. )

88

-ヘρ てτ

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変動圧力係数Cp分布から,その値は断面側面にわたり一定な値を示すが,特に主桁間で

は風速が大きくなるにつれてその値が小さくなる.また,位相特性から,桁間では位相が

やや進んだ状態で,風速が大きくなるにつれて,その進み度合いは大きくなっている.

無次元仕事野全分布では主桁間部の上流側で励振力,下流側で減衰力が働き,床版張り出

Cp 変動圧力係数のピークが前縁側に移動 V 位相差が断面中央付近から異なる

王→:n: JI←E E→:n: ][←E

類似-td h=2.OHZ

2+0=4・ー明

鈎.6.:vnB=3.5

.:VlfB=7.0

1801.. 日:vnB=12.0

M.P. T.E

LJ z

(0'削減

ねじれフラッタータイプから

連成フラッタータイプへ変化 J一色"'r

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180十.6.:Vi1B:::3.5

.:Vi1B=5.0 270ト・:V/fB=7.0湖 LO:叩 B=9.0 口:Vi1B=12.0a. l.E. M.P. T.E.

~..l 1 、e

匂)M)=3

図4・3・9 各種矩形断面[4]と端2主桁断面 (BID=10)の非定常圧力特性の比較

〈ねじれ1自由度強制加振, α=00

)

89

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し部下面ではあまり大きな励振力は働いていないことがわかる.また,図4・3・8より主桁を

外側に設置した断面 (c!B=O.O13)で励振力が働いていた後流側においては,主桁を内側に

配置することで減衰力が作用し,ねじれフラッターが安定化する原因と考えられる.

以上より,主桁を外側に配置した断面(e/B=O~O13)では,特に上面側で同じ辺長比を持

つ矩形断面とその非定常圧力特性が類似しており,主桁を内側に入れた断面 (c!B=0.167)

では断面辺長比BID孟15以上の矩形断面〈図4・3-9)凶と類似した非定常圧力特性を示す.

このことから,主桁を内側に配置することによる流れ場の影響は上下面に表れ,主桁を内

側に配置することで,ねじれフラッタータイプから連成フラッタータイプの流れ場へと変

化し,そのことによりねじれフラッターが安定化することが明らかになった.

また,なぜ主桁を内側に配置することでねじれフラッタータイプから連成フラッタータ

イプへと流れ場が変化するのか,静的および動的な剥離せん断層の迎角よる挙動から考察

する.そこで,剥離せん断層の平均的な動きを調べるために強制加振下における平均圧力

係数ゐを図 4-3・10に示す.さらに静止断面における平均圧力係数Cpの分布を迎角ごと

に測定した.その結果を図4・3・11'"図4・3・12に示す.

上面での剥離せん断層の挙動について,ねじれ1自由度強制加振下および静止断面の双

方とも特に負迎角において,主桁を内側に設置した断面 (c!B=0.167)では再付着点が上流

側の主桁直上あたりに存在し,主桁を外側に配置した断面(c/B=0.013)よりも前縁側に移

動する.これは前述したように変動圧力係数Cpのピークが前縁側に移動することからも局

所的な剥離バブルが存在することを意味し,辺長比の大きい(扇平な)矩形断面の特性,

つまり,連成フラッターの特性と同じ特性であると言える.また,主桁を内側に配置する

ことで床版が張り出し,その張り出した辺長比の大きい(扇平な)床版の形状によって,

上面前縁からの剥離せん断層の曲率が変化し,再付着が前縁側に促されたものと考えられ

る.したがって,動的特性においてはその剥離せん断層の動きによって連成フラッタータ

イプの流れ場になったものと考えられる.

一方,下面において主桁を外側に配置した断面では,正迎角で剥離せん断層の再付着が

見られるが,主桁を内側に設置した断面では,ねじれ1自由度強制加振下および、静止断面

の平均圧力係数ゐの値が迎角によらず,断面側面にかけてほぼ一定値を示す.つまり,上

流側の主桁からの剥離せん断層が下流側で再付着しようとしたときには,既にそこに後流

側の主桁があるため,主桁を外側に配置した断面で見られた下面後流側の渦の流下に起因

する励振力が形成されないものと考えられる.そのため,ねじれフラッターが不安定化す

る方向に空気力が作用しなかったものと考えられる.

90

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一P

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V芹g2a11zho

:[ギ32cp cp cp Cp

(e)α=-3。 。α=00

(g)α=+3 。}α=+6

図4・3・10 1桁断面の平均圧力係数Cp

(ねじれ1自由度強制加振, BID=10, V/ffi=12.0, clB=O.013, 0.167)

91

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。l 。i 01 o

-W争ind Wind Wind Wind Wind 一惨 ー惨 ー・ー ー砂

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E 正 正 T

∞ t。 0.5r e:v=6.0[ml8] 0.5

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, (a)α2・3 (b)α=0 (c)α斗 2 (の α叫 3。 (e)α叫 6

-畑山「「

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-ω.1 e:V=6.0[州事1O:V=8.0[耐'8]

-句1

e:V=6.0炉内1O:V=8.0[mIs]

図4・3・11 1桁断面の相対迎角の変化による平均圧力係数 (Cp)の分布特性 (B/D=10,c/B=Q.013,一様流中,静止断面)

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-0.5ト 令令念。~片心+。令制 -0.5 ~特初#日〈〉。は -0.5 持幹的肘品句d自 0.5

_1L 由 1

Cp Cp Cp Cp Cp

(a)α2・3 (b)α=0 (c)α=+3 (の α時 4 (め α叫 6

図4・3・12 I桁断面の相対迎角の変化による平均圧力係数 (Cp)の分布特性 (B/D=10,c/B=O.167,一様流中,静止断面)

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さらに非定常空気力特性の観点からも考察を加える.図 4・3・13に Step.by.step解析

{Torsional Branch}の結果を示す.第2章でも述べたが, Step.by.step解析とは桁に作用

する空気力を8つの空気力係数に分解したとき,それぞれの空気力係数が振動系全体の空

力減衰への寄与率を求める解析である[8]~[10]. 以下に TorsionalBranchでの概要を示す.

なお, Torsional Branchおよび、HeavingBranchのフラッターは,そのフラッターが本質

的に揚力で支配されるか,ピッチングモーメントにより支配されるかによって区別される.

i Stepl1 ねじれの調和振動を仮定,ttOu ω戸

ゆ=t/JOi sin(,ω,~t) (4.11)

↓連成項の作用

lStep21 たわみ応答(強制振動}, (ηd似b 軒

4わ+吋(一盆互:斗ω{J)j;H1* }iJい+~ωωωhイ0J02 一盈互:斗斗ω叫FA2m m m m

(4.12)

↓たわみ振動による相対迎角じより,非定常ピッチングモーメントの作用

iStep3| ねじれ応答(自由振動)

九 2tt= (苧)叫 (4.13)

↓ δ~+1, ω'#+1が決定

ー(並iMωち/.iδμ=--n(半ばィ竿),, mJω======{イIH21C叫 +AtIH3ICOS82-A.:¥Hi・|血θ1-A4IH3Iω2lO

十-仇・i}イ仇.i ω.ω

ここで, ω戸1=ω〆で、あればStep4へ.そうでなければSteplへ.

i Step41 フラッター特性の決定,、ω'F,ð~ηdμv

94

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式(4.14)にある係数を次式で表す.

F-切~.)2} イ(%J}2

ャー①)A2.......ω{イIH2.1ω叫 +~.IH3.ICOS82-A4IH2.tS泊町イIH31sin82}(4~16)

とゐが表され, δi;<Oの時~ Torsional branchにおいて連成フラッターが発現する.

なお~ Step.by.step解析結果の図表記には下記のように簡略化する.

(4~17)

0:一①IA2希

口:uXIDA4*/島ワ sm81

く>:axIDA4* I H3* / sin82

.:δ0

・:-(î辺~A1*/ H2* / COS81

・:'-<lXi)AJ* /Ha*/cos82

仏6r'"d.

一~ 0 --Q)A2

言。A・----CiXIDA1*I H2

2021口 qω4・1陀.

3 342

-O.4~・----CìXIDA1• I H3 }ο ⑪2>A.; IH3

竹 2恥AJwJvふ 12v池

-, ねじれ卓越モードの対数減衰率〈・;振動系全体の空力減衰δφ)が5つの項 (0,

口, +,く))の足し合わせで表せることになる.

:0.7487Hz XI0

6kg. m

一①h.~ 0.4~ ・-Q)@も i ち iω861含 十ロ似i)A.;11も 18画。1

~ 0・・-似î)A1•

I H3. I co862

g

3 44-;bi

dM4 v主主

E B

45 13r

B

特--H吾

B

ま-(c) 、‘,

fhu

JS1

c厄=0.167clB=0.080 clB=0.013 (a)

主桁位置を内側に変化させたI桁断面の非定常空気力係数の役割

①:n'(千)

α=00

)

図4・3・13

(Step .by.step解析TorsionalBranch結果, BID=10,

95

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そこで,図 4・3・13からわかるように,対数減衰率δφに寄与する項が桁を内側に配置す

るにつれて,A2* (ねじれ振動の空力減衰に関する項)の項から Al*1島公Icosん〈連成項)

へと移り, clB=0.167に至ってはA2"iの項が安定化の方へ寄与していることがわかる.この

ことからも主桁を内側に設置することで,そのフラッタータイプがねじれフラッタータイ

プから連成フラッタータイプに変化し,安定化することが考えられる.したがって,非定

常空気力特性の観点からもねじれフラッターの安定化理由が裏付けられたことになる.

4. 3. 3 、主桁を内側に設置した断面のフラッター特性

主桁位置をclB=0.167からさらに主桁を内側に配置した場合のフラッター特牲について,

非定常空気力特性の観点から考察する.図 4・3・14に非定常空気力係数 A〆の分布を示す.

A2*1の分布特性から前節でも述べたように迎角α=00

では主桁位置clB=0.080までは低風速

側から正値をとり,ねじれ振動に対して不安定化傾向を示す.さらに主桁位置 clB=0.233

40

w 10

-10

一泊

(a) clB=O.O 13--0.233

' A2

150rー...--c/B--o.167

1∞ト-.c/B--o.2伺 • ../T

一.....--c/s::O.233 ・J/TγJ../"?.'

50ト a リ“弘一〆,/ --'"、-4..~.:l[-""'"

一一-based on Theodorsen Fn. 一叫 10 20 30 40 v/m50

(b) clB=0.167--0.300

図4・3・14 主桁位置を変化させたときの非定常空気力係数A〆の比較 (BID=10,α=00

)

までは連続的にA2"iの分布が負値を示し,その絶対値も大きくなることから, clB=0~233 ま

では,主桁位置を内側に配置することに比例しでねじれ振動が安定化する傾向を示す.し

かし, clB=0.267以上に主桁を内側に配置することで主桁位置 clB=O.267では無次元風速

V/ffi=26付近から,主桁位置 c厄=0.300の断面では無次元風速V/fB=12付近から A2が正

値を示す.このことからこのような断面では主桁を clB=0.233まで内側に配置すれば,連

続的にねじれ振動に起因する非定常空気力が小さくなり,ねじれ振動に対する耐風性が向

上するものの, clB=0.267以上,主桁を内側に配置することでねじれ振動に対して不安定に

96

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なることがわかる.したがって このような断面辺長比 BID=10を有する端2主桁断面で

は幅員の約 1/4点を境にそれよりも内側に配置することで,逆にねじれ振動に対して不安定

化する傾向にあることが明らかとなった.一方,これらの断面で S句~p~by叫ep 解析〈図

企庁15) を行うと, clB=O.300の断面では A2"iの項(0)が高風速域で負になるものの,対数

減衰率δが負になる風速域が,A2分の項(0)が負になる風速域より小さく,A1*llる*1cos {} 2

(連成項:・)の影響を受けていることが分かる.したがって,主桁位置が比較的桁端部

にある断面化:/B=0~013, 0.080) では k"iの項(0)が支配的となり,ねじれフラッタータイ

プのフラッター特性を示すが,同じA2"iの項が負になるc/B=0.300の断面であっても主桁を

内側に配置することで,Ai*1 品川os{} 2 (連成項:+)の影響を受ける連成フラッタータイ

プの流れ場になることが分かる.

BM==2472.2353m×ん104kg2jm1万,1=師32"7=90×.側10一Ekgem 喜昌aBMa4aM0訂2tmb十2→・0・叫-×44s1師3渇同A、gA22・畑11ヲ,ぜ民H、 l有m岬rsXza1m0o%EK ・m iBMZ4ata百thf2割L}Z4O叫d凪h×J割a勾前h1E0AA4主JJ僻2l1lE布hぜ1.4hl曲lfmW吋、4×a1剛0U一5司hEgaZ , -盟

E Ea制a623叫 hん-・1Hz"1吋 Z

ロ似2)̂,01H;I sio.61 ロ迂ゆIA,tIIぜIsm61

~.4 .--<i)@A10 I H; I co拘 α=0。 -0.4 .--<i)@AtOI H3" 1ω必zα=0。 -0.4 d-ベ渇以2AD4J1.1lEIJ iωs62

<><I渇1~01 H3

01 sm62 c/B--o.お3 。q渇~Ol H3

0 Ism62 c1B=0.267 H; 1 sm62 -0.60L

2Red411田 d6WEnd 8Ve1lo0dty 12Vj1f4 B -0.6o t

2Red4u田 d6Win8d Ve1lo0city 12VI1B 4

-0.6 02Red4zI回 d6Wind 8ve1侃0ity12VK14 B

B B B

!l<--一言-一i一白 」JE z j

一一一一-1 z c

(a) c/B=0.233 (b) 'c/B=0.267 (c) c.厄=0.300

図4・3・15 主桁位置を内側に変化させたI桁断面の非定常空気力係数の役割

(Step-by-step、解析TorsionalBranch結果, BID=10,α=00

)

次に同じく Scanlan[11]により提唱された 8つの非定常空気力係数のうち,たわみ振動の

空力減衰を示すあたついて着目し,考察を述べる.図4・3・16に非定常空気力係数H1"iの分

布を示す.H1*1の分布特性から迎角 α=0。では主桁位置c1B=O.013の断面で,その絶対値が

最も大きく,たわみ振動に対しては安定化傾向を示す.また,主桁位置 c/B壬0.233の断面

までは測定した無次元風速の範囲で負値を示し,たわみ振動に対して安定化傾向を示す.

97

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一.--c.周=0.167

-ー-_.c周=0.2∞

H1

40

20

-H1

-40

-40

一ω イ抱トー:+--clB=O.233 一千--clB=0.267 -ートー cJB=O.3ω

一一-based onTheodorsen Fn.

, 10 20 30 40 V/fs50

一朗

-1叫

、‘,JLU

,,‘、、

α=00. )

c/B=0.167---0.300

主桁位置を変化させたときの非定常空気力係数 H1*iの比較 (BID=10,

しかし,主桁位置 clB=0.267および主桁位置 clB=0.300の断面では無次元風速 V/fB=18

いわゆる風速限定型のたわみ振

m

α=00

c/B=0.3∞

-ベ以2>A1'1 H; 1 cosO1

ロ似2>A1'1 H; 1 sin61

・4拘 IA.'IH; 1ω喝

。qゆ1A4'1 H; 1 sin62

ーも j 白 戸 ~O _.~三Redu田 dWindVelocity V/ill

B

-ベ諒2>1主1'1H2'1∞861

d溜A1-I H3-Isin6t

・ベD<IDA.‘IH;I叫 zo<D@A4' 1 H3' 1 sin62

ーも 手did-Jiifedyv鋒B

E

c/B=0.300 (c) c厄=0.267、‘,F

しυ

,,‘、c/B=0.233 (a)

主桁位置を内側に変化させた I桁断面の非定常空気力係数の役割

-80

clB=O.O 13---0.233 (a)

図4・3・16

付近から正値を示し.

動が発生する可能性が示唆される.Step.by.step解析の seavingBranchでの解析結果(図

さらにその高風速側で負値となる,

b/) 弱

含0.5

a o

g ...~

a .3 -O.5

m

m

EhdM

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× …rm

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i I 1 .a lω~1・ l 同・ 1 州12m;3 -Ø.5~ロ舗瓜1'1 H;・l曲、 一一

・ベぬ~'IH;1ω862。ω:IDA.-1 H3

-1 sin62

4 ふJwlhJLeIJSv詠B

α=00

)

図4・3・17

(Step.by.step解析HeavingBranch結果, BID=10,

98

E 一宮

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5.0 [Lopr溢血icDcc:a圃@圃

4.0

7 r f[同 0: S飽p-by-s鵠p解析 (HeavingBranch)

口:複素国有値解析但.ea吋ngBranch}

・:S旬p-by-s飴p解析〈τbrsionalBranch)

圃:複素固有値解析(おrsionalBranch}

6

2.0 ~:t~時~;:二2

B

3.0

1.0

0.0

-1.0 伊山¥

~2.0

o 5 10 15 20 25 0・ 5 10 15 20 25

。 副司1

(a) V-δ曲線およびV-f曲線(c/B=0.OI3)

4.0 rLopr劫圃kDeacmcllt

5

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8

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4トロ沼田島ミヱヌご一日品目-

3 t 可礼

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4.0

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Dec皿E・6圃3.0

2.0

• 1.0

0.0

-1.0

-2.0

(b) V-δ曲線およびV""f曲線 (c!B=0.167)

7 r f[lf<)

6

5

: [両立一」 45B

E

o 5 10 15 20 25

2

。 m/s

。 10 15 20 25

(c) V-δ曲線およびV-f曲線(c/B=0.300)

図4"3・18 端 2主桁断面のスイッチング特性

(BID=10,ん/ん=1.1, .m=2必 kg/m,I=0.OI81kgom, s=0.3m,α=00

)

4-3・17)より,主桁位置c/B=O.267およびc/B=0.300の断面ではHeavingBranchによっ

て対数減衰率δが負になり, Heaving Branchにおいてフラッターが発現しているものと考

99

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えられる.また,高風速側で減衰が正,つまり振動が安定化する風速限定型の振動である

ことも分かる.これら HeavingBranchにおける対数減衰率δに及ぼす非定常空気力係数

はH/'1の項(O)の影響が最も大きく,その他の連成項についてはほとんど寄与していないこ

とがわかる.したがっ¥.c, c/Bと0.267の断面では振動数比によってはHeavingBranchの

方がTorsionalBranchよりもより低風速側で減衰が負になることも考えられるため,これ

らの断面におけるフラッター現象は HeavingBranchで発現するフラッターである可能性

が考えられる.

ここで,端2主桁断面における連成フラッターの分校のスイッチング現象について考察

する.矩形断面の断面辺長比BID=20や BID=10では連成フラッターの分校のスイッチング

現象が確認されている[12][13].一方,端2主断面では実橋緒元のような振動数比ん/んが

2.76において,明確なスイッチング特性は見られないものの,図4・3・18に示すように振動

数比ん/んを1.10にすることによって,連成ヲラッターの分枝のスイッチング現象を確認

することができる.このことより,端2主断面のようなπ型断面においても与える振動数

比によってはスイッチング現象が生じ,特にフラッターが発現した後の高風速側で分校が

Torsional Branchから HeavingBranchにスイッチングするため,その振動数比での連成

フラッターはHeavingBranchで発現していることが確認できる.

次にこれら非定常空気力係数を用いて,たわみ・ねじれ2自由度振動系での複素固有値

解析を行った.解析に用いた構造諸元は中央支関長 600m級の斜張橋を想定した骨組み解

析(固有値解析)より求めた諸元を用いた.それら諸元は表4・3・1に示す.

表4・3・1 中央支間長600m級の鋼斜張橋の諸元値

緒元 記号 単位 実橋値」

中央支関長 Li m 610

等価質量 lIlti kg/m 4.233 x104

等価質量慣性モーメント lLi kg.m!m 3.279 x106

鉛直たわみ1次振動数 f'lLi Hz 0.217

ねじれ1次振動数 'Hz 0.600

鉛直たわみ対数減衰率 る司 0.02

ねじれ1次対数減衰率 d. 0.02

これら解析結果より主桁位置とフラッタ一発現風速の関係を図 4-3・19にまとめた.これ

らの関係から主桁位置を内側に配置するにつれてTorsionalBranchでのフラッタ一発現風

100

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速が大きくなり,主桁位置 c!B=O.233の断面において測定風速以下ではフラッターが発現

せず,最も良好な耐風特性を示すことが分かる.しかし,さらに主桁位置を内側に配置す

ることにより, Heaving Branchにてフラッターが発現し,急激にフラッタ一安定性が悪化

することがわかる.このことから,このような断面辺長比 BID=10を有する端2主桁断面

では幅員の約 114点 (c!B=O.233)を境にそれよりも内側に配置することで,逆にフラッタ

一発現風速が低下し,空力的に不安定化傾向を示すことが明らかとなった.つまり,主桁

が幅員の 114点付近に存在する位置に空力的な安定もしくは不安定を決定付ける境界が存

在することが明らかとなった.

B=27.25m, 九f,.o凶=0.2幻1加 Z丸, 九恥o=0~6ω00佃Hz幼,冷,Ôs久午IS=Oω.β0M=4忽 3X1ω0

4乍'kgダ1m肌, 1=3.27汚9X106、kg• m, L=610m

t t t t 't [m/s]

200 α=0

0

111K

b o 0

> 150 4主的回。5100 口広 ~・-Torsional Branch

--D--Heaving Branch 50

o 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

Location of I-Girders clB

B

TA

図4・3・19 フラッタ一発現風速[凶'8]と主桁位置cの関係 (BID=10,α=00

)

4. 3. 4 風の傾斜角の変化によるフラッター特性の考察

3. 5節で述べたようにπ型断面である端2主桁断面は迎角によって非常に敏感な特性

を示すことが明らかとなっている.特に負迎角では図4・3・20に示すように高風速域におい

て,ねじれ振動が安定化する風速限定型のねじれ振動が発現する.本節ではこのように高

風速域でねじれ振動が安定化する原因について非定常圧力特性の観点から考察する.

101

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2争制5erg.1 gu! iSl=俳3.6210・kFa-5m 712

4ト F Q8{2中=f}1=伽0.0072

3ト8f=7・

2ト

1ト 9

05 . 10

i -j-a ・4・4・4・6・十 V/fB

1・・・ゾ....1... .1.. ・~二~・L7!こ・・・ Vplm/s]

m44士一図4合 20 1桁断面のねじれ振動特性に及ぼす迎角特性 (clB=0.013,BID=10,α=-3

0

)

風速限定型のねじれ振動が発現している無次元風速V/fB=R5~二安定化している無次元風

速 V/fB=12.0について考察する.風速一定で迎角を変化させた場合の非定常圧力特性を無

次元風速V/fB=3.5について図 4"3・21,無次元風速VI侶 =12.0について図 4・3・22に示す.

なお,迎角 α=-3。は他の迎角 αの白抜きプロット点と区別して,図中では・印で示してい

る.

無次元風速V/fB=3.5の場合〈図 4す 21),上面の変動圧力係数ゐは,迎角が大きくなる

(正迎角)につれて,そのピークを示す位置が後流側に移動する.これは迎角 αが大きな

るにつれて,再付着点が後流側に移動したものと考えられる.位相差Vについては,迎角

α=0 0 , +3 0 , +6 0 の迎角において,前縁から後縁にかけて位相が遅れる同様な傾向が見ら

れ,迎角 α=0。から迎角が増すごとにその遅れ方は小さくなる.迎角 α=-3。では B/4付近

まで位相が遅れた後,一転して位相が進みほぽ一定を保ち後縁付近でまた遅れる.また,

無次元仕事野全の分布形状についてはー迎角 α=+60

の断面後流側で励振力が作用し,迎角

α=-3。では後縁近傍で励振力が働いている.その他の迎角α=0。および'+30

では減衰力が

作用している.一方,下面における迎角α=_30

については,位相が前縁から後縁にかけて

180。以内で緩やかに遅れ,それにより後縁側に励振力が作用することであると考えられる.

したがって,迎角α=-30

では下面の励振力によってねじれ振動が不安定化したものと考え

られる.

102

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51e M.P. T.E.

正 2EC M.P. T.E.

z ~

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(a) 変動圧力係数Cp(土面) (b) 位相差 lJr• (上面) (c) 無次元仕事防・(上面)

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M.P. T.E.

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0

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'V/fB=3に5 . .....一】百¥

も,,=2.0Hz品、d ロ:a=OO. .6.:a=.ぽ

'1L .•

0:a=+3~・:a---3・cp

M.P.

(d) 変動圧力係数Cp(下面) (e) 位相差 lJr(下面) (f) 無次元仕事 UT(下面)

図4・3・21 1桁断面(上面・下面, c!B=0.167)の迎角変化における非定常圧力特性

(ねじれ1自由度強制加振, BID=10, V/fB=3.5)

迎角α=-3'0でねじれ振動が安定化している無次元風速 V/fB=12.0の場合(図 4・3・22),

上面での変動圧力係数ゐは迎角α=-3。から迎角を増すにつれ,値のピークを示す位置が下

流側へと移動する.これは主桁を内側に設置した断面 (c!B=0.167)や断面辺長比の比較的

大きい矩形断面[4]と同じ特性を示す.迎角 α=+6.。では後縁にかけて値は増加するがピーク

は見られない.位相差?について,負迎角 α=-3。の場合,上面では位相が断面中央付近か

ら位相進みとなり,主桁を内側に設置した断面 (c!B=0.167)や断面辺長比BID主主15以上の

扇平な矩形断面[4]と類似した位相特性が見られる.無次元仕事 W全は負迎角 α=_30 の場合

のみ後流側で減衰力が作用していることがわかる.下面における負迎角α=-3。の位相特性

は断面側面を通して位相が進み,後縁側に減衰力が働く.それによりねじれ振動が安定化

することがわかる.迎角 α=0。を含む正迎角では後流側にかけて位相遅れを示し,特に後

流側に励振力が作用していることがわかる.

103

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M.P. τ.E. M.P. T.E. M.P. T.E.

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匂 ψ

(d) 変動圧力係数Cp(下面) (e) 位相差1Jr(下面) (f) 無次元仕事腕・(下面}

図4・3・22 1桁断面(上面, clB=O.OI3)の迎角変化における非定常圧力特性

〈ねじれ 1自由度強制加振, BID=10, V/m=12.0)

以上より,無次元風速V/m=12.0の場合,迎角a=0 0 , +3 0 , +6。の上下面においては,

位相が後縁にかけ緩やかに遅れ,後縁側で上下面とも励振力が作用し,その励振力がねじ

れ振動の不安定化の原因となっていることがわかる.一方,負迎角 α=-3。の場合,上下面

ともに他の迎角と位相特性が異なり,上面では断面中央付近から位相進みとなり,断面辺

長比 BID詮15以上の扇平な矩形断面と類似した位相特性になる.下函では断面側面を通し

て位相進みとなり,いずれも後縁側に減衰力が働き,高風速域でねじれ振動が安定化する

ことがわかる.したがって,迎角を負迎角にすることで,特に高風速側で再付着点が前縁

側に移動し,断面周りの流れ場が局所的な剥離バブルに起因する連成フラッタータイプへ

と変わることで,ねじれフラッターが安定化したものと考えられる.

104

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4・、‘

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105

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第5章耐風設計から見た斜張橋の力学特性

(〆

5. 1 概説

構造物はその安全性を確保するため,風や地震,交通振動などの動的荷重に対し共振す

ることをさけなければならない.外力の卓越振動数と構造物の固有振動数が→致すると外

、力の大きさによっては構造物の破壊に至ることもある.そのため,橋梁構造物のもつ固有

振動数を把握することは耐風・耐震設計を行う上で非常に重要である.特に耐風設計にお

いて,これまで述べたように端2主桁断面はねじれフラッターの発生が予想されるため,

適用する斜張橋の振動数などの動的諮元値によっては設計限界風速[1]をクリヂできない可

能性もある.したがって, π型断面である端2主桁断面のような矩形断面や H型断面より

耐風性に劣る断面を斜張橋の主桁形式に適用させるには,斜張橋の全体剛性を高め,ねじ

れ振動数を大きくすることで耐風安定性を確保することが重要である.また,斜張橋は主

桁・主塔・ケーブルでそれぞれ多様な形式を有することから,その組み合わせで考えると

無数の形式のなかから選定することができる,きわめて形式選定における自由度の高い橋

梁形式と言える.そのため,それらが斜張橋全体剛性に及ぼす影響について把握すること

も重要な課題の一つであると考えられる;さらに,耐風設計の観点から,どの程度の斜張

橋にまで端2主桁断面が主桁形式として適用することが可能か,支関長別に固有振動数を

把握し,その適用可能性を明確にすることは,計画する断面のフラッター限界風速が予測

でき,断面白身のもつ耐風性をあらかじめ考慮した設計,すなわち性能設計への一助にな

るものと考えられる.

本章ではこれらの背景をもとに, 5. 2節では,はじめに既存の斜張橋における固有振

動数を形式ごとに分析することで,本研究で対象とする斜張橋形式の位置付けを明確にす

る.その上で,斜張橋のマルチケーブルが,どの程度斜張橋全体制性に寄与しているか,

固有値解析を中心とした斜張橋の力学特性について考察する.

5. 3節では端2主桁断面がどの程度の支関長まで適用可能か,合成桁断面である端2

主桁断面の構造的な可能性を認識した上で,第4章までに得られた端2主桁断面の空力特

性の観点から適用可能支間長について考察する.

106

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5.2 マルチケーブル斜張橋の力学特性

5. 2. 1 既存の斜張橋における固有振動数を用いた全体剛性の分析

斜張橋のみならず,橋梁のもつ固有振動数の低下はそれだけ空力振動の発現風速の低下

につながり,桁のもつ耐風性能を下げることになり,耐風安全性確保に支障をきたすこと

になる.そこで,できるだけ桁に側性を持たせ,振動数を増加させれば,フラッタ一発現

風速は大きくなり,耐風安全性が確保できる.しかし,現在の社会情勢からも補剛桁を大

型のトラス形式や耐風型多室箱桁形式にすることで剛性を確保することは,鋼重の増加に

つながり,比較的敬遠される傾向にある.そのため,結果的に桁剛性は小さくする方が経

済性に有利となる場合が多い.そこでまずは国内における既存の斜張橋[2]--[13]において

主桁形式,主塔形式,ケーブルの吊り形式をそれぞれの形式ごとに簡易的に分類し,各橋

梁のねじれ振動およびたわみ振動の固有振動数に着目して,斜張橋形式による全体調。性へ

の影響についてデータ分析を行う.それにより本研究で対象とする斜張橋形式の位置付け

を明確にする.

表5・2・1 既存の鋼斜張橋の 1次固有振動数〈たわみ・ねじれ振動)

竣工年 最大{支11)関長 幅員{(回全)幅) 主桁形状 主務形状 吊形式 1次固た有わ振み振動動数(Hz) 1次ね固有じ振れ振動動数(Hz)振動数比

f〆fη① 尾道大橋 1968 215 10..4 鋼床版21桁 門型 2面 放射型 0..58 1.66 2.86

② 豊里大橋 1970. 216 20..3 鋼床版1籍 A型 1面 ファン型 0..52 L伺 2.75

③ 荒川大橋 1970. 160 17.9 鋼床版1箱 1本柱 1面 ハープ型 0..75 1.45 1.93

④ 末広大橋 1975 250 18.5 鋼床版1箱 A型 2面 ハープ型 0..47 1.45 3.0.9

⑤ 六甲大橋 1976 22.0. 21.5 鋼床版トヲX 門型 2面 ファン型 0..94 2.0.5 2.18

⑥ 水郷大橋 1977 179 25.5 鋼床版1籍 1本柱 1面 ハープ型 0..45 1.64 3.64

⑦ 合掌大橋 1978 144 10..5 鋼床版2箱 門型 2面 ファン型 0..636 1.697 2.67

⑥ 大和111橋梁 1982 355 30..0. 鋪床版1箱 -1本柱 1面 ハープ型 0..34 0..87 Z田

⑨ 名港西大橋 1985 405 16.0. 鋼床版1箱 A型 2面 ファン型 0..33 1.31 3.97

⑩ 植石島橋 1988 420. 27.5 鋼床版トヲス 門型 Z面 ファン型 0..429 1.029 2.40

⑪ 岩黒島橋 1988 420 27.5 鏑床販トヲス 門型 2面 ファン型 0..43 0..96 2.23

⑫ 天保山大橋 1989 350 27.25 鋼床版1箱 A型 2面 ファン型 0..35 1.0.8 3.0.9

⑮ 横浜,,01t9,γ 1989 460 相'.2 鋼床版トヲス 門型 2面 ファン型 0..339 0..773 2.28

⑭ 生日橋 1990 4伺 24.1 鋼床版l箱 A型 2面 ファン型 0..33 0..773 2.34

⑮ 東神戸大橋 1992 485 17.0. 鋼床版トラス 門型 2面 ハープ型 0..276 。0..712 2.58

⑮ 鶴見つばさ橋 1993 510. 38.0. 鏑床版1箱 A型 1面 ファン型 0..21 0..50.1 2.39

⑪ 名港中央大橋 1997 5叩 37.5 鋼床版1箱 A型 2面 ファン型 0..173 0..563 3.25

⑩ 名港東大橋 1997 410. 37.5 鋼床版1箱 A型 2面 ファン型 0..336 1.865 5.55

⑮ ι多々羅大橋 1999 8叩 30.・6 鋼床版1箱 A型 2面 ファン型 0..223 0..498 2.23

⑮~新尾道大橋 1999 215 25.0. 鍋床版1箱 1本柱 1面 ハープ型 0..479 1.127 2.35

※逆Y型主塔はA型主塔に分類する。※多室箱桁や耐嵐形状多室箱桁などは1箱桁に分類する。

107

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斜張橋は主桁・主塔・ケーブルでそれぞれ多様な形式を選択できることから,無数の形

式を考案することができる.そこで,本節では各構造部材〈主桁・主塔・ケーブル)の形

式別の闘有振動数を分析するにあたり,主桁形式怯鋼床版1籍桁と鋼床版トラス桁に分類

し,また,主塔形式は門型主塔〈ケーブル面は直吊り)とA型主塔〈ケーブルは面斜吊り)

に,さらに,ケーブルの吊り形式としてハープ形式とファン形式,さらに 1面吊りと 2面

吊りに分類することにする.ただし,逆Y型主塔はA型に分類し,多室箱桁は1箱桁に分

類する.また,各橋梁の中央支関長とねじれ振動およびたわみ振動に分けたそれぞれの 1

次回有振動数を調査した.なお,これらの振動数は実橋による振動実験から得られたもの

と解析から得られたものとがあるが,原則,解析{直から得られた振動数を列挙した.表5・2・1

にこれらの分類結果をまとめる.

次に表 5・2・1より得られた中央支間長とねじれ振動およびたわみ振動の固有振動数の関

係を図 5・2・1に示す.

振動数(Hz)

2

1.5

0.5

0

100

1次固有振動数

600

固たわみ援勤1次回有振動数(Hz)

・ねじれ振動1次固有振動数(Hz)

たわみ振動数{村z)ー支間長(m)

一一ーー 対数近似式

f(Hz) == -0.2784 In(l(m)) + 2.0596

ねじれ振動数(Hz)ー支閉長(m)

一一一一一対数近似式

f(Hz) = -0.7680 In(l(m}) + 5.6172

支間長(m)

1000

図5・2・1 斜張橋中央支間長と 1次固有振動数の関係(既存橋梁)

また,図5・2・1より既存の斜張橋における支関長とたわみおよびねじれ1次振動固有振動

数の関係式を式(5.1)および式(5.2)に示す.

108

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ん(政)=-0. 27841n(L(m )) + 20596 (5.1)

ん(政)=ー0.76801n( L( m ))+ 5.6172 (5.2)

これらの式から,たとえば支関長L=600mの斜張橋では,主桁形式や主塔形式iといった

各部材形式を無視すれば,たわみ,ねじれ 1次振動数はそれぞれ;O.279Hz, O.704Hzと推

定できる.

次に,表5・2・1に示すように主桁形式,主塔形式,吊り形式別に簡易的に分類したものを

形式別に固有振動数の比較を行い,それらの形式が及ぼす剛性効果を分析する.ただし,

本分析には母集団(サンプル数)が限られていることや斜張橋形式の高い自由度のため,

ある形式の効果のみを比較(他の形式は同じ)することは困難である.したがって,本節

ではグループ分けする同じ形式のみに着目して,その傾向を調べることにとどめておく.

主桁形式に分類した支関長と 1次固有振動数の関係を図 5・2・2(a)に示す.この図より主桁

形式が鋼床版トラス桁の場合,桁の持つ剛性が高いため,支関長が短い場合,中央支関長

450m付近を境に,たわみ 1次・ねじれ1次とも振動数は鋼床版1箱桁よりも高くなる.し

かし,支間長が 450mを超えるあたりから, トラスによる鋼重増加からたわみ 1次・ねじ

れ 1次とも鋼床版箱桁の場合に比べ,振動数は変わらなくなることがうかがえる.

次に,主塔形式別に分類した支関長と国有振動数の関係を図 5・2・2(b)に示す.主桁形式は

A型主塔で全てのケースが,鋼床版1箱桁を有する.また,門型主塔の場合は鋼床版トラス

の他に鋼床版2籍桁,鋼床版21桁を含む.さらに 1本柱 1面吊りの斜張橋は対象外と

した.図 5・2・2(b)から,主塔形式が A型主塔の場合,ねじれの振動数で若干大きくなり,

たわみの振動数では若干小さくなる傾向にある.このことから,主塔形式を A型にするこ

とでねじれに対する全体剛牲の寄与は,その他の主桁形式や主塔形式の影響も考慮する必

要があるものの,ある程度,期待できることが示唆される.

次に,ケーブルの吊り形式に分類した支間長と 1次固有振動数の関係を図5・2・2(C)に示す.

図5・2・2(C)から,吊り形式がハープ型よりもファン型の方がたわみ1次で振動数は全体的に

若干高くなる傾向にある.これまで,ファン型はハープ型に比べてたわみ剛性が大きいこ

と,塔の曲げモーメントが小さくなることなどの利点を有する[13}ことなどが言われており,

これらの裏付けになっているものと考えられる.つまり,ケーブルによって負担する桁重

量をより鉛直方向に負担させた方が,全体剛性は高くなることが既存橋梁でも確認できる.

図5・2・2(d)にケーブルの 1面昂り, 2面吊りに分類した支関長と 1次回有振動数の関係を示

す.ケーブル面を 2面吊りにした方がねじれ振動数およびたわみ振動数は全体的に高くな

109

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る.したがって, 2面吊りの方が全体剛性の寄与が大きいことが既存橋梁でも確認できる.

これら既存橋梁の固有振動数のデータを分析することにより,既存橋梁においても主塔

形式が門型よりも A型主塔の方が,また吊り形式がハーフ型よりファン型の方が,さらに

1面吊りより 2面吊りの方がねじれ1次振動に対して,全体剛性の効果が期待できる傾向

にあることが確認できる.したがって,本研究で対象とする斜張橋は,ねじれ剛性の小さ

い開断面を主桁形式としているため,ある程度,全体剛性が高い形式となる逆 Y型主塔の

2面吊り,さらにファン形式の斜張橋を前提としている.

振動数:(Hz)

2.5

1.5

0.5

0 1ω

振動数:(Hz)2.5

1.5

0.5

8 1ω

t次固有振動数

(a) 主桁形式による分類

t次固有振動数

1制)()

(c) 吊り形式による分類

振動数(Hz)

2.5

2

1.5

0.5

振動数(Hz)2.5

1.5

0.5

0 1ω

t次固有振動数

(b) 主塔形式による分類

2次固有振動数

6ω 1刷)()

(d) 1面および2面吊りによる分類

図5・2・2 各斜張橋要素の形式別の支関長と 1次固有振動数の関係

110

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5. 2. 2 マルチケーブル形式が斜張橋全体剛性に及ぼす影響

斜張橋は主桁・主塔・ケーブルで構成される極めて自由度の高い橋梁形式であることは

先に述べた.そこで,斜張橋の全体剛性に寄与すると考えられるケーブル配置(図 5・2・3),

特にケーブルの段数による形式選択が,耐風安全性確保にも重要な役割を果たすことが考

えられる.また,第3章で述べたように端2主桁断面は桁高が低いほど耐ねじれフラッタ

ーに対して有効であることから,主桁高をできるだけ抑えることも耐風設計上,重要であ

る.そこで,マルチケーブル形式に着目して,そのケーブルシステムが及ぼす斜張橋全体

剛性の効果について考察する.

ぷグト¥ メグト¥(a} 放射形式 メ然、三万余、;

バグドぷ済 、 (a) 段数の少ないケープル形式

(b) ファン形式 4~.~、

バオ込大~会ミ\ (b) マルチケ日プJレ形式

(c) ハープ形式

図5・2・3 斜張橋におけるケーブル配置[13]

はじめに斜張橋におけるケーブルの力学的な役割について,その概要[14]を述べる.斜張

橋は中間の橋脚上に立ち上げたタワーより斜めに張ったケーブルで,主桁をはじめとする

死荷重や活荷重を吊り下げる橋梁構造物である.

』L-21

q↓↓↓↓↓↓↓↓J↓↓↓↓↓↓↓

! よ?

図5・2・4 斜張橋における弾性モデル[14]

111

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したがって,斜張橋に作用する荷重がケーブルの引張力で受け持たれるので,主桁はケ

ーブル定着点で図 5・2・4に示すような弾性支持されたものとして挙動する.

図5・2・5 ケーブルのバネ作用[14]

、斜張橋に任意の荷重が作用するとき,主桁は下向きに変位し,たとえば,ケーブル取付

け点iは鉛直下方にδtだけたわむものとする.このとき,ケーブルには引張力需が作用し

ているため,ケーブルはその長さ方向に1';lc,i/ EcAc,iだけ伸びる.変位δiが微小なるもので

あり,変位後のケーブルの傾斜角がα'e:α1であると仮定すれと,図 5・2・5に示すような幾

何学的な関係により,下式の関係式が成り立つ.

ð~ sinα 1'; t: (5.3) s ‘ ECAc,i w

一方,ケーブルの取付け点iに作用する鉛直力 Xiとケーブル張力 1';との関係は

Xi =1';sinaiとおけることから,ケーブルを弾性支承とみなしたときのばね定数k1

は下式

のように容易に求まることになる.

k.EcAcr ・2a:竺=一一一一二一smα2 (5.4)

このように斜張橋は,その全体剛性を考える上で主桁剛性の他にケーブルの伸び剛性が

深く関わってくる構造物であることがわかる.図 5・2・4に示すような等分布荷重 qが満載す

る最も簡単な斜張橋のモデルに作用する曲げモーメントは図 5・2・6のようにプロットする

ことができる.k =0のときすなわちケーブルが存在しないときは単純桁とした場合の曲

112

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げモーメント分布となり,kを大きくし,すなわち,ケーブル合成を高め,最終的にk=∞

まで高められたとしたら,連続桁の曲げモーメント分布になる.このことから,斜張橋の

曲げモーメント分布は単純桁と連続桁の中間の分布を示し,さらにケーブルを多く張るこ

とによって曲げモーメント分布を平滑化でき,主桁剛性を小さくできるため,斜張橋の主

桁を経済的に設計することが可能である.

¥ミ

連続桁

k=∞

、¥、、、一

118qL2

単純桁 k=-O-e-ー一一一=一一1/8qL2

図5・2・6 斜張橋における曲げモーメシト分布[14]

次にケーブルの伸び剛度EcAcと主桁の曲げ剛度E1Gとの関係について調べる.

O'Connor[15]は放射型のスパン割O.4L+ L + O.4Lとなる3径間斜張橋(タワー高さO.16L)

について,その代表的な断面で曲げモーメント(M)およびケーブル引張力(T)の影響線を求

めている.これらの図を図 5・2・7に示す.これら図では全スパン長LTの2乗を乗じた無次

元パラメータEcAcLT2f(E1G)が導入されており,無次元パラメータEcAcLT2 /(E1G)が大き

い,すなわちケーブルの占める割合を大きくすればするほど曲げモーメントは小さくなり,

ケーブル定着点が剛支持された連続桁としての特性に近づくとしている[14].また,ケーブ

ル弓I張力はパラメータEcAcLT2 /(E1G)が大きくなるのに伴って増大することから,ケーブ

ルの伸び測度をどの程度に設定すべきかは,別途検討する必要がある.逆に無次元パラメ

ータEcAcLT2f(E1G)を小さくしてケーブルの占める割合を小さくすれば,それだけ主桁に

作用する曲げモーメントは大きくなり,主桁剛性が必要となることがわかる.

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3b/介、\M_~グ雪、\J予定汁 D ちょ G jiftit

(a) 構造語元

0

0

4

噌令

09Lw'ahvan

e白

zonY09004

aaaak払

aaa

月実

EcAcL-r2 ご一平均縦距

I!J.G

16,000 -{}.0031 4,0伺 -0.00401,0帥 -0.仰54250 -0.0070

H 一一一一 I

。生.-0.01 ':"0.02

定三線h ・0.06-0.07

g:~ 0:05

萱 8:83-.. 8:81

ぅ:

8=a3 gi:器

ま.31tgf

(b) 戯Ifモーメントの影響縫

I

1

'qa区dAMV

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hUA3『

Zb

内,W唱

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OAU

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品目

aonuv司,u

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H

1

-4yj87:30A

LL-hllaaa.aaoaoo

拍,

h

耳、OO;igbT J

(c) クープ'Jl"強力の影響議

EeA"LrZ --子一乎均誕琵

正l<lG

図 5・2-7 斜張橋断面力の影響線の一例[15]

ここで,実際の中央支関長 600m級の斜張橋においてそのケーブル配置をマルチケーブ

ルにすることで,どの程度の主桁曲げ剛性を必要とするのか,道路橋示方書・同解説(平

成 14年 3月) (以下,道示)[16]による制約の範囲で行った構造解析をもとに検討を行う.

本研究で対象とする 19段のケーブル配置に対して 50%,25%にケーブル本数を減らしたも

のと,逆に 200%に増やしたもので主桁曲げ剛性を比較する.ただし,実際の斜張橋の設計

においては安全性を確保するために強度,変形などを考慮する必要があり,道示による活

荷重たわみを許容値(斜張橋の場合U400,L:支間長)に抑える必要がある.これらを考

慮しである架空の断面を想定し,構造解析を行った.それらの結果を図 5・2・8に示す.また

中央支問中央付近の負曲げのモーメントが作用する付近と中央支間側の中央支関長 U4点

付近の剛性を図 5・2-9に示す.

114

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IY3[m41

2.5

2

1.5

0.5

主塔位置

。。 200 400 600

一小一基本ケープ1"(19段)

--8ーーケープ1"段数50%

一→ーーケープ1"段数25%主塔位置 J --ι・ケープ1"段数200%

800 1QOO [ni]

図5.;2・8 中央支関長600m級の斜張橋における主桁曲げ剛性分布

これらの図から,実際の中央支関長600m級の斜張橋においてもケーブル段数を減らし,

ケーブルの占める割合を減らすと,それだけ主桁曲げ剛性が必要となり,前述したことと

符合する.一方,ケーブル段数を多くしてマルチケーブルの効果を増やすと,理論上は主

桁に作用する断面力に抵抗するだけの主桁曲げ剛性だけを確保するまで,その剛性を減ら

すことができるが,全体変形,つまり活荷重たわみの影響を考慮すれば,主桁曲げ剛性は、

ケーブルを占める割合ほど減らすことができないことが考えられる.さらに局部的な変形

の制約,いわゆる局所的な輪荷重による部材のたわみや横倒れ座屈などを防止することを

考えれば,さらに主桁曲げ剛性を高くする必要がある.したがって,ケーブル剛性を高く

してケーブル重量を増やす効果と,主桁曲げ剛性を増やして主桁鋼重を増やす効果には経

済性,さらには耐風安定性確保のための全体剛性を絡めた最適値が存在するものと考えら

れる.以上より,実際の中央支関長 600m級斜張橋の構造解析から,ケーブル段数を減ら

し,ケーブルの占める割合を減らすと,それだけ主桁剛性が必要となるが,全体の変形や

局所的な変形を考慮すれば,主桁曲げ剛性はケーブJt:を占める割合と比例せず,一定の剛

性以上が必要となることが考えられる.

115

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o

ly [m4] 2

1.8

1.6

1.4

1.2

0.8

0.6

0.4

0.2

o 10 100段

図5・2・9 中央支間部における主桁曲げ剛性分布

次に,マルチケーブル斜張橋たおいて,斜張橋全体剛性に及ぼすケーブル剛性の寄与率

を考察するため,端2主桁断面(I桁)のねじり剛性のみを変化させて,そのねじれ振動数

を固有値解析により求めた.その結果を図 5・2・10に示す.ただし,試設計における端2主

桁断面(I桁)のねじり剛性は0.178m4である.

ねじれ振動数rHz}

,0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

。。 0.1

主桁のねじれ剛性の寄与

0.2 0.3

ケープルによる寄与=0.575 Hz

0.4

ー+ーケ-J.JJ,段数(19段)

。ケーブルをなくした場合

0.5主桁ねじり剛性[m4]

図 5・2・10 ケーブルシステムが及ぼす斜張橋全体制性の寄与率

116

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図 5・2・10より中央支関長600m斜張橋の全体剛性に及ぼすケーブルシステムの寄与率は

94.4% <0.575Hz/0.609Hz)となり マルチケーブル形式の斜張橋ではケーブルシステ

ムが圧倒的に剛性を与えていると言える.また,端2主桁断面では間断面のため,主桁の

ねじり剛性が小さく,通常の 1箱桁断面と大きく異なる.そこで,図5・2・11に示すように

ある 1箱桁断面を想定し,その主桁ねじり剛性を 4.5m4程度であることを考慮すると,そ

のケーブルシステムの寄与率は小さくなるものの,その寄与率は 70.5%<O.575Hz/

0.816Hz)となり,ケーブルシステムがかなりの割合で斜張橋の全体側性に貢献しているこ

とがわかる.

ねじれ振動数fHz}

0.9

8

1

S

5

4・

3

2

1

0ununununu

白U

u

n

u

o o 3 5主桁ねじり耐性[m4]2 4

図5・2・11ケーブルシステムが及ぼす斜張橋全体剛性の寄与率

さらに,斜張橋全体側性におけるケーブル段数の効果について考察する.ここでは,ケ

ーブル段数のみの効果を調べるために,ケーブルのトータル質量および、トータル断面積は

どのモデルも同じとする.図 5・2・12にケーブル段数に及ぼす斜張橋全体剛性の効果につい

て示す.これらの図より,ケーブル段数を増やすとねじれ振動数が大きくなり,斜張橋全

体剛性の増加が見込まれる.しかし,段数を増加させることによる全体剛性の増加の効果

は比例的に大きくなることはなく,その増加率は次第に小さくなることがわかる.したが

って,斜張橋のケーブル段数の決定には主桁の耐風特性に関する安全性,ケーブルコスト

にかかる斜張橋全体の経済性など総合的な判断による選定が必要であると考えられる.

117

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グイ、、d 係、振動数rHz}

0.8 r一一一一

ー・ーたわみ振動数

0.4

0.3

-ーー園田・-ーーーー四国..回目ーーーーーーーーー圃ーーーー~・

0.2

0.1

o L.: o 5 10 15 20 25 30 35

40ケーブル段数[関

図5・2・12 ケーブル段数に及ぼす斜張橋全体剛性の効果

先に述べたように,主桁のねじり剛性よりもケーブルシステムよる剛性効果の方が斜張

橋全体剛性に占める割合が高い,言い換えると,主桁形式はそのねじり剛性に関係なく,

空気力学的な側面のみで決定すればよいことにもなり,ケーブル定着付近の補剛を無視す

れば,主桁形式が平板でも可能と言うことになる.そこで,仮に主桁形式が平板であると

すると,式(5.5)に示すSelbergの提案する経験公式[17]から,耐風安定性は十分に確保でき

ることが見込まれる(図5・2・13).

νA νA一

ールJ

一、E

F

川十一

μ

vd一

ω一

Ja

‘、一

fお

F一

raEEEBEE--EEEL

B

ω

』且T

a且T

AU

吟 (5.5)

ここで, ωy' uJttはそれぞれ曲げとねじれの固有振動数であり, μ=npB2/2m,

v = 8r21 B2, rは断面の回転半径である.

118

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フラッタ一発現風速[m/s]

2定5F一一

200

175

150

125

100

75 t _-A.._____ー四四ーーー・企ー--四・・色ー一--ーー企ーーー

50

o 0.1 0.2 0.3

-+-Selberg式[m/s]

{鋪2主締断面の4構造緒元)

ー企ー端2主桁断面[m/s]

0.4主桁ねじり剛性[m4]

図5・2・13 Selberg式におけるフラッタ一発現風速の推定

しかし,主桁断面が平板であるとした場合,その剛性不足ゆえに橋軸方向ケーブル定着

荷の主桁変形(鉛直方向のたわみ変形)や主桁に橋軸方向の軸力が作用するための座屈の

問題が挙げられる.そこで,主桁形式を平板とした場合について~断面辺長比 BIDをパラメ

ータとした座屈荷重について考察する.斜張橋の主桁に作用する圧縮軸力は図 5・2・14を参

照して,式(5.6)で表現できる[18].

Nイ12吋ル(5.6)

図5・2・14 斜張橋モデルと外荷重q

主塔基部に着目し,x =Lc 12, .~たO であるとすると,最大軸力品'axは主塔基部で発生

し,式(5.7)となる.

119

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T 2 u qLc 一一一max 8h

r (5.7)

また,活荷重を考慮すると,一般的には外荷重 qを死荷重および活荷重の和として式(5.8)

で表現できる.また,一般的には活荷重と死荷重の大きさの比ωは0.2とすることができる

[18].

q=陀 +p=陀 (1+ω) (5.8)

ただし,本研究における活荷重は,断面辺長比 BIDをパラメータにとるため,死荷重が

変化すると活荷重も変化することになる.そのため,道示の活荷重の考えに則った活荷重

を設定することにする.さらに主桁に作用する曲げモーメントを弾性床上の梁モデルに置

換した場合,最大軸力が作用する塔基部近辺の発生曲げモーメントについて,塔基部上は

支点上となり k=∞とした連続桁の曲げモーメント分布として作用するものと仮定する.こ

れらから算出された断面力から矩形断面の断面辺長比 BIDをパラメータ (Dを変化)とし

て応力を算出し,図 5・2-15に示す座屈荷重と比較する.矩形断面は鋼鉄で全て満たされて

いる板形状と中空角パイプ形状の 2種類の平板を考慮した.座屈荷重としては式(5.9)で示

すオイラーの座屈式[19]と式(5.10)で示す横倒れ座屈式[19]の他に,材料の非弾性域(非線

形性)を考慮し, F.Engesser[20]が提唱した接線剛性理論による塑性座屈荷重〈式(5.11))

で評価する.さらに設計値として,例えば,ランキン・ゴードン式〈式(5.12))[20]による

耐荷力曲線を参考としてプロットする.ただし,図中における材料的な非線形を考慮した

プロットは許容応力と比例限界が同じと仮定し,実際の引張試験結果での非弾性領域の挙

動に合わせた.また,鋼材の降伏点は標準降伏点とした.

σ=ftr /EI ー田ーーー-= ーーーーーーーーーー-

cr A Ae

ただし,Z :有効座屈長,EI :曲げ剛度

Jr2 ET.GK 1&4 E2 T1ω

σ〓=‘----+ー,hU FF312FF314

(5.9)

(5.10)

ただし, ~ .弾性断面係数,Ely 弱軸まわりの曲げ剛度, GK:断面のねじり剛度,

120

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EIω:断面のそりねじり剛度

~r Jt2Et1 " ーーー-・ = ーーーーーーーーーーー--cr A A12

ただし,Et .接線剛性係数

U-a__ 1-y(lly )2

(5.11)

(5.12)

ただし,11 Y :細長比 y=、/11A :断面2次半径

図 5・2-15からもわかるように,中空タイプの矩形断面で平板 (BID=∞}から断面辺長比

を小さくすると横倒れ座屈が先に起こる.さらに断面辺長比が小さい断面では,オイラ一

座屈による座屈が発生する.そのため,たとえ主桁形式のねじり剛性に関係なく,斜張橋

の全体側性が確保でき,空気力学的な判断のみで平板を主桁に適用しでも,主桁に作用す

る軸圧縮力により座屈が発生するため,たとえば箱桁のような座屈に耐えうる程度の剛性

が必要であることが考えられる.また,ランキン・ゴードン式のような許容応力度を考慮

した設計値で考えた場合,中空タイプの矩形断面でBfD=15程度の矩形断面までBluffな断

面にする必要があると考えられる.また,道示による活荷重たわみなどの制約などを考慮

すれば,最終的に現在ある斜張橋のような断面辺長比が必要になるものと考えられる.

a [N!皿 2] 一一一(軸圧縮十曲m応力度

σ[N/IIlII幻 | 一…....オイ{軸ラー圧の縮式+酬応力度350 一-・..オイヲーの式

3502 一企一様傍れ座屈応カ度300

-....-横倒れ座組応力度 、.

A 。非弾性域考慮

300l 「4F唱~O 非弾性域考慮 250

失 -ー一分わ・プードシ式(設計ヌコ250 ー+ーヲシキン・ J

O

•ドン式(設計均

200

200

150 150

100 100

50 50

。10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 .s/D

。25 50 75 100 125 150 175 200 B/D . 目 a . . . . . . .

I/r 100 400 I/r 。 50 100 150 200 250 300 。50 150 200 250 300 350

(a) 板状の矩形断面 (b) 中空タイプの矩形断面

図5・2・15 矩形断面の発生応力度と座屈荷重の評価

121

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5. 3 端2主桁断函の斜張橋適用可能支関長の検討

5.3. 1 構造的観点、からの適用可能支問長の概要

斜張橋に端2主桁断面のような合成桁を採用する場合,前節で述べたような主桁に作用

する軸力に対して,その圧縮力は床販の主材料であるコンクリートが受け持つことになる.

したがって,斜張橋が長支開化すると主桁に作用する軸力が大きくなり,それを受け持つ

コンクリートの圧縮強度が耐風安定性確保の他に長支間化への障壁のーっとなることが考

えられる.そこで,本節では,はじめに文献[18][21]を参考に床版から見た合成斜張橋の

適用可能性について,その概要を述べることとする.

軸力に抵抗するコンクリートと鋼の断面積をそれぞれAc,Asとすれば,死荷重 Wnおよ

び主桁に作用する最大軸力はそれぞれ,式(5.13),式(5.14)で表される.

WD = 1:.3y cAc +βYsAs

ここで, 1.3:舗装や高欄を考慮する係数

β:床組や横補剛材など軸カに抵抗しない鋼重量を考慮するための係数

7c:コンクリートの単位体積重量 (24.5kN/ms)

7s:鋼の単位体積重量 (77.0kN/ms)

主桁の最大軸力は式(5.8)で与えられる.

0.3YcAc +βYsAs)Lc 2

Nmax

\.~''''I c~~c ' rl s~~s"~c (1+ω)

ここで,Lc:中央支関長

ω:活荷重の死荷重に対する比率

h':主塔の主桁上から塔内のケーブル定着区間の中間までの高さ

(5.13)

(5.14)

よって,コンクリートの圧縮応力度は,鋼とコンクリートのヤング係数比を nとして,式

(5.15)で与えられる.

1.3YcAc +βYsAs L 2 = 47(1+ω)/n

Ac /n+As 8h

122

(5.15)

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ここで,nsc = As / Ac' nh, = Lc / h'(スパンに関係なく一定〈相似形))を式(5.15)に代入

すると

1.3yc + Yssnsc nh,(l+ω)1 ,. = vmaX1+nFZsc8-c (5.16)

となり,コンクリートの圧縮応力度と支関長との比例式なる.この圧縮応力度に床組みと

しての輪荷重による板曲げ応力度を足し合わせ,想定する斜張橋の諸元を代入するとコン

クリートの最大圧縮強度が求まる.このことより,コンクリート強度50---60N/mm2の高強

度コンクリートを使用すれば;中央支関長が 500m程度の斜張橋建設までは十分に可能で

あることがわかる.さらにケーブルをラジアルタイプ(放射形式)にすると,.nhが小さく

なり,一層の長支開化が可能であると考えられる.

したがって,合成桁〈端2主桁断面)は耐風安定性を確保できれば,構造的には中央支

関長300---600mの範囲で競争力が発揮で、きる形式と考えられている.

5.3'.2 空力特性から見た適用可能支閤長の実験的検討

次に端2主桁断面が斜張橋主桁形式としてどの程度の支関長まで耐風安定牲が確保でき,

適用可能なのか,さらに,斜張橋に適用する端2主桁断面がどの程度の支関長で,どれだ

けの耐風性能を有するのか,これまでに得られた端2主桁断面の空力特性を用いて,空力

特性から見た端2主桁断面の適用可能性について考察を行う.具体的には異なる支関長を

有するマルチケーブル斜張橋の固有値解析を行い,それらの結果と第4章で行った複素固

有値解析によるフラッター解析の結果を融合し, 3次元によるグラフ化を行い,適用可能

支間長を検討する.

はじめに,異なる支関長を有するマルチケーブル鋼斜張橋の概略設計を行い,各支関長

の断面性能を求めた.対象とする斜張橋の中央支関長は200m,400m, 600m; 800mの4

種類で有効幅員は 27.25m(6車線),桁高(床版厚含む)3.0mのI桁とし, PC床版を想

定(床版厚 455mm(平均))した全幅有効の合成桁とした.主塔形式および、ケーブル形式は

前節で述べたように,主桁に寄与する見かけの剛性効果が期待できる形式,いわゆる主塔

形式は鋼製の逆 Y型主塔,ケーブル形式はマルチケーブル形式でかつファン形式の2面吊

りを想定した.詳細な構造条件は表5・3・1に示す.

123

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表5・3・1 固有値解析に用いた鋼斜張橋の構造形式

緒元 記号 単位 実橋値

形式 3径関連続合成桁斜張橋

吊り形式 2面吊りマルチケーブル形式

主桁形式 2主I桁

車線数 6車線(片仮IJ3車線)

有効幅員2

27.25

中央支関長 ゐ h m 200 400 600 800

桁高 D m 3.0

ケーブル段数 段 7 12 19 24

それらの諸元値を用いた固有値解析結果を表 5-3・2に示す.また,モード図を図 5・3・1に

示す.固有振動数について図 5-3・2にグラフ化を行い,既存の斜張橋の固有値と比較検討す

る.図 5・3・2よりたわみ振動の固有振動数は既存の斜張橋から推定した固有振動数とほぼ一

致する.一方,ねじれ振動の固有振動数は支関長が小さくなるほど既存橋梁の近似式とず

れる.ζれは解析を行った斜張橋の幅員が6車線と比較的大きく,ねじれによる慣性モー

メントが比較した既存の斜張橋よりも大きくなるためであると考えられる.

表5す 2 端2主桁断面を有する鋼斜張橋の 1次固有振動数(鉛直曲げおよびねじれ振動)

緒元 記号 単位 実橋値

中央支関長 Li m 200 400 600 800

等価質量 mLi kg!m 2.760 x104 3.088 x104 3.402.x104 3.948 x104

等価質量慣性モーメント ILi kg.m/m 1.385 x106 1.695 x106 2.929 x106 3.043 x106

鉛直たわみ1次振動数 fηLi Hz 0.614 0.334 0.240 0.149

ねじれ1次振動数 ftLi Hz 1.066 0.789、 0.609 0.494

124

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(心たわみ 1 自由度 (~L6I炉O.240Hz)

ねじれ 1自由度 (f;L似 FO.609Hz)

図5・3・1 固有値解析によるモード図 (L=600m)

125

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振動数(Hz) 1次固有振動数

2

1.5

0.5

0

100

既存橋梁の近似曲線(ねじれ1次}

600

ーー圃鉛直曲げ1次(Hz)(既存橋梁〉

…“ねじれ1次仰心〈既存編集〉

&鉛直幽Iず1次(Hz)(端2主I街〉

・ねじれ1次(HZ)<靖2主I桁〉

鉛直曲げ振動数(H。一支問長(m)一一一一対数近似式

f(Hz) = -0.4145 In(L(m)) + 3.2649

-ねじれ撮動数制z)ー支間長(m)

一一一一対数近似式

f(hz) = = -0.3325 In(L(m)) + 2.3603

支間長(m)

1000

図5・3・2 支関長と 1次固有振動数の関係<固有値解析結果>

図 5・3・2の近似曲線から端2主桁断面の斜張橋における支間長とたわみ振動1次固有振

動数の関係式を下記に示す.

ん(Hz)=ー0.41451n(L( m)) + 3.2649 (5.17)

さらに,ねじれ振動 I次固有振動数の関係式は下式になる.

ん(政)=ー0.33251n(L( m)) + 23603 (5.18)

これらの式を用いることで端2主桁断面の支関長による固有振動数が推定できる.ただ

い幅員Bが30m(車線数が6車線)に場合のみ適用でき, ,他の幅員構成で固有振動数を

検討する場合には別途検討が必要である.

次に表5・3・2に示す断面緒元{直と第3章で求めたI桁断面および次章で詳しく述べる下フ

ランジを傾斜させた断面(下フランジ傾斜角8=300

)の非定常空気力係数を用いて,各支

関長および各主桁位置におけるたわみ・ねじれ2自由度系複素固有値解析を行った.ただ

い主桁位置の違いによる断面のねじり剛性の違いの影響は,対象断面が開断面であるこ

126

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とと,床版断面を全幅有効として考慮していること,さらに前節で述べたように主桁のね

じり剛性が及ぼす斜張橋全体剛性の影響が小さいことを考慮して,各支間長によって同じ

イ直を用いることにする.

2自由度系複素固有値解析の結果よりフラッタ一発現風速hn/s]と主桁位置 c/Bおよび支

間長[m]の関係を図 5-3-3および図 5・3-4に示す.

図5・3-3に示すI桁断面 (e=00

)において,主桁を端部 (c/B=O.O13)に設置した場合,

フラッター限界風速を 80m/sまで確保するには中央支間長が 350m程度の斜張橋が限界と

なるが,図 5・3・4に示すように下フランジを傾斜角 (e=300

)を付けることで,500m級

の斜張橋まで適用が可能となる.逆に 700m級の斜張橋を想定した場合,主桁位置のみで

耐風安全性確保を図る場合は I桁断面 (e=00

)では実橋換算で 2m程度,下フランジに

B

r 図5-3・3 端2主桁断面 CI桁断面,BID=10,α=0

0

)の中央支間長[m],

主桁位置 c/Bおよびフラッタ一発現風速[m/s]との関係

127

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また,これらのデータは今後,‘合理化桁斜張橋を計画する際の耐風技術の基礎データを

示すものと考えられる.ただし,これらの斜張橋はマルチケーブル形式を想定しており,

斜張橋のケ「ブルシステムによりある程度の斜張橋全体剛性を確保できている斜張橋であ

るが,斜張橋の全体剛性は主桁自身のもつ剛性に加え,採用する全体形式を考慮すれば,

さらに大きな剛性効果が期待できる.したがって,ケーブル段数や主塔形式の違いによっ

ては必ずしも同等の耐風性能を有するわけではなく,斜張橋全体の耐性をさらに確保する

ことができれば,より高い耐風性を有することになり,合理的な端2主桁断面を長大斜張

橋に適用することが可能であると考えられる.

129

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<参考文献>

[1]社団法人日本道路協会:道路橋耐風設計便覧,平成 3年 7月

凶九州大学出版会:斜張橋の設計と施工

[3]複合構造に関する研究の発展の歴史と動向:土木学会論文集, • No.344, .1 -1, 1984.4

[4] (.的建設コンサルタンツ協会近畿支部:斜張橋の実績調査報告〈長大鋼橋研究委員会)

[5]橋梁と基礎一本州四国連絡橋特集-1984.8

[6]日本の斜張橋:コスモ技研株式会社編

[7] (却建設コンサルタンツ協会近畿支部:鋼橋の合理化設計および雨風・耐震設計に関す

る調査研究

[8]首都高速道路公団神奈川建設局:横浜ベイブリッジ工事誌

[9]社団法人日本道路協会:道路年報

[10]伊藤準, ]11田忠樹:超長大橋時代の幕開け一技術者達の新たな挑戦一

[11]九州構造・橋梁工学研究会:長大橋の設計に関する検討一臥BSE研究分科会報告-

[12] (社)土木学会西部支部:中径間橋梁の耐震性向上に関する研究委員会報告書

[13]土木学会:鋼斜張橋一技術とその変遷一

[14]中井博,北田俊行:鋼橋設計の基礎, 1992.

[15] C. 0' Connor: Design ofBridge Superstructure, Wiley-Interscience, 1955.

[16]社団法人臼本道路協会:道路橋示方書・同解説〈平成 14年 3月)n.鋼橋編

[17] Selberg.A : Oscillation and Aerodynamic Stability of Suspension. Bridges, ACTA

Polytechnica Scandinavia, Ci13, 1961.

[18]長井正嗣,井沢衛,中村宏:斜張橋の基本計画設計法, 1997.

[19]小西一郎:鋼橋,基礎編 1,1977.

[20]熱田稔雄,当麻庄司:座屈のはなし一事故を防ぐために一, 1985.

[21]土木学会:ケーブル・スペース構造の基礎と応用, 1999.

130

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第6章 端2主桁断面 (EdgeGirder)の長大斜張橋への適用性

6. 1 概説

π型断面である端2主桁断面に発生する空力振動現象について,その振動発生メカニズ

ムの観点から前章までに考察した.これら端2主桁断面を実際の斜張橋に適用するには,

その空力不安定現象に対する安全性を確保しなければならない.耐風安全性を確保するに

は,空力不安定現象の応答の発現予測と同等に,その応答に対する制振対策を適切に考慮

することが重要である.橋梁の主桁に発生する空力不安定現象の制振対策には構造力学的

対策と空気力学的対策とに大別できる[1].第5章で述べた斜張橋にマルチケーブル形式を

採用することで斜張橋の全体側性を高めることは構造力学的対策の一つであると言える.

その他, TMD (Tuned Mass Damper)やTLD. (Tuned Liquid Damper)に代表されるパ

ッシブ制御と ATMD(Active JUned Mass Damper)に代表されるアクティブ制御などが

あり,いずれも構造物の構造減衰を大きくして制振させる構造力学的対策の一つである.

一方,構造物に作用する外力そのものを制御する空気力学的対策にもフェアリングの設置

や隅切りなど主桁断面を形状変化させて,発生する空気力を小さくさせるパッシブ制御と

アクティブフラップなどを主桁端部に設け,剥離せん断層や剥離流を積極的にコントロー

ルするアクティブ制御がある.ここでは,端2主桁断面の長大斜張橋への適用性を考察す

る中で,主に空気力学的対策におけるパッシブ制御についても検討することにする.

第3章~第5章では基本的な断面を対象にその空力特性についての考察を述べてきたが,

これら断面を実構造物に適用するには高欄や中央分離帯,横断勾配といった通常の橋梁に

は設置されている橋梁付属物を設置する必要がある.そこで,本章ではこれまでに述べた

端2主桁断面における空力振動発生メカニズムを踏まえて,一様流中における風洞試験を

中心に,耐風安定性の観点からこれら断面の長大斜張橋への適用性について考究する.

はじめに 6. 2節では,第4章で述べた空力振動メカニズムに基づいた合理的な各種制

振対策を考案するとともに,その効果や安定化メカニズムについても言及する.

次に 6. 3節では高欄や中央分離帯といった橋梁付属物による空力的な影響を調べるた

めに,特に渦励振応答特性に着目して,最大応答振幅と Sc数の観点から端2主桁断面の橋

梁付属物が及ぼす空力特性について検討する.

6. 4節ではある想定した高橋や中央分離帯などの橋梁付属物を設置し,実橋を想定し

た端2主桁断面を用いて,その耐風特'性について自由振動応答特性の観点から考察し,適

用可能性について述べる.最後に 6.5節では斜張橋の概略設計から上部工工費を算出し,

端2主桁断面の優れた経済性について,一考察を加えることにする.

131

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6. 2 振動発生メカこズムの基づく合理的な制振対策の考案

端2主桁断面の空力振動特性として,桁高をできるだけ低くかっ主桁を比較的内側に入れ

ることが耐風安全性確保の点で重要であると言える.しかし,主桁を内側に設置すればそ

れだけ,主桁に作用する荷重を効率よくケーブルに伝達するための力学的効率を上げなけ

ればならない.そのためケーブルの定着部から主桁をつなぐブラケットや定着梁などの設

置を要することになる(図 6-2-I(a)). したがって,そのようなブラケットを設置するだけ

でも溶接延長の増加や鋼重増加などが伴い,製作・設計上の合理化は図れず,不経済にな

ると考えられる.さらに斜張橋においてケーブル面が傾いている場合,斜張ケーブルの復

元力によって主桁と床版に軸力が生じ,橋軸直角方向の荷重が作用する.これらの荷重を

円滑にかつ合理的に主桁に伝達するにはケーブル定着部を主桁ウェブ近傍に設置すること

が合理化設計につながるものと考えられる.また,桁高を低くすれば,主桁の剛性や横桁

の設計に制約が生じ,断面中央に縦桁が必要となるなど,不経済になる可能性もある.こ

のような理由から本節では,主桁は外側に配置した断面を前提にして,合理的な制振対策

を考案し,その耐風性評価を行う.第4章で明らかにしたように端 2主桁断面の振動発生

(a) 主桁配置の違いによる斜張橋主桁構造図(左:主桁が外側,右:主桁が内側)

ー砂

WIND

(b) 端2主桁断面のねじれ振動における励振力の存在(イメージ図)

図6-2・1 合理的な制振対策の考案に向けた基本コンセプト

132

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メカニズムとして,ねじれ振動の励振力は断面後流側の上下面に存在する(図 6・2-l(b))た

め,後流側の流れ場を変化させる目的で,いくつかの耐風対策を考案・設置し,その耐風

特性について検討を行う.

6. 2. 1 各種制振対策部材の設置による耐風安定化効果

【鉛直プレートの設置による耐風安定化効果】

はじめに上流側からの剥離流れを断面中央で制御し,後流側の流れ場を変化させ, 後流

側の励振力を低減させる目的で床版中央に鉛直プレートを設けた(図 6・2-2). このような

鉛直のプレートは“鉛直スタビライザー"として明石海峡大橋の主桁断面にも設置検討さ

れ(写真 6-2-1),実際に制振効果が確認された上で,採用されている[2].本研究では端2

-ー+WIND

一今

WIND

nHr=

l主三

B J ・・--・-一「¥

『fh~諸島I

hlDの変化 励振力の減少

見守匂zslDの変化 励振力の減少

図6・2・2 鉛直プレート設置目的

写真 6・2・1 明石海峡大橋の補剛桁に設置された鉛直スタビライザー[2]

133

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主桁断面に高さをパラメトリックに変化させた鉛直プレートを床版の上下面に個別に設置

し,その断面の動的耐風安定化について,非定常空気力特性の観点から検討を加えた.こ

こでは断面中央の下面に設置した鉛直プレートの高さを S,上面に設置した鉛直プレートの

高さを hで定義し,便宜上,本節では断面中央下面側に設けた鉛直プレートをパッフルプ

レート,上面側に設けた鉛直フレートをセンターバリアと呼ぶことにする (Appendix参照).

AY''p ,,,,,,

v

d

,F1

i

,λy ,,,

4

3

2

1

。-1

-2

-3

ゴ。[十P田edon同 d吋判c l

4

2 4 6 v/m 8 ーも 8 v/m 10

(a)α=00

(s!D=0--1.333) (b)α=+30

(s!D=0--1.333)

図6・2-3 パッフルフレート付き断面の非定常空気力係数A2*

(I桁断面,B!D=10, clB=0.013)

Az 5r I-~ird~r~e~tion, BID=10

~ -.-hlD=O 4卜一-0---hlD=0.333 3[-q-h/D=0.6671

1 一-<T--hlD=1.333 J三。司O

~,σ-- 、0'

旬。~

4

3

2

1

。-1

-2

-3

2 4 6 v/m 8

2

1

-1

-2

-3

-4

-5 o 2

(a)α=00

(h!D=0--1.333) (b)α=+30 .(νD=0--1.333)

図6・2・4 センターバリア付き断面の非定常空気力係数A2*

(I桁断面,B!D=10, clB=0.013)

134

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ここでも強制加振実験より得られた非定常空気力係数[3]のうち,ねじれ振動の空力減衰を

示す非定常空気力係数 k*に着目する.測定迎角 (α=00

,土30

)のうち,迎角 α=00

+30

のA2*を図 6・2・3および図 6・2・4に示す.測定迎角 (α=00

,〆土30

)いずれもパッフ

ルプレート高さが大きくなるにつれて, k*はより高風速側で負値から正値となり,ねじれ

1自由度系については耐風安定性向上が示される.また,センターバリア付き断面につい

ても同様に,センターバリア高さが大きくなるにつれてAl'lはより高風速側で正値となるが,

迎角 α=0。のhID=1.333の断面では何も設置していない基本断面よりも低風速側で k*は

正値となり,高風速側で負値となる風速限定型のねじれ振動となることが考えられる.次

にそれら強制加振実験より得られた非定常空気力係数と第4章の表 4・3・1に示す中央支関

長 600m級の斜張橋を想定した諸元値を用いて,たわみ・ねじれ2自由度系複素固有値解

析を行った.フラッタ一発現風速とセンターバリア,パッフルプレート高さ及び迎角 αの

関係を図 6-2・5に示す.

B=2幻7.おm凪.f1)o:司静0=0.21幻7Hz,也Iz,f+CJ紛0=0“.必6ω肱,ds=Oω.0

M=4. お233X1ぱ.04kglm,1=3.279 X 106主匂k均g.m,L=61'伽

荘一

一+ーα=0[deg.] ー+ーα=+3[deg.] --0ー α=-3[de剖

0.5 1 Vertical Plate S/D

B

~t5

1.5

;

(a) パッフルフレート付き断面

B=27.25叫 f1)o=0217Hz,f,匂約.=0.61ωE也弘8弘,.=0ω.ρ0

M=4.233 X 104乍kg/m,1=3.279 X 10

6量g.m,L=610m

O

。 0.5 1 」-LJ1.5

Verti,伺1PlatehID

. B

性Jlli

. :

(b) センターバリア付き断面

図 6・2・5 フラッタ一発現風速(mls]と鉛直プレート高さの関係 (BID=10,clB=0.013)

ノYッフルプレート付き断面(図 6・2・5-(a))について,測定迎角〈α=00

,士30

)いずれ

もパッフルプレート高さが大きくなるにつれて,フラッタ一発現風速は上昇し,耐風性向

上が認、められる.一方,センターバリア付き断面(図 6・2・5・(b))についても迎角α=00

+30

では,センターバリア高さが大きくなるにつれてフラッタ一発現風速は向上する.し

135

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かし,負迎角については,その特性にばらつきがあり,必ずしもパッフルプレートで見ら

れた明確な傾向は見られず,迎角α=_30

設置していない基本断面と同程度の発現風速を示し,その耐風性について向上したとは言

のhID=L333のセンターバリア付き断面では何も

主=27.25m.ャω17Hz,fto=O.ω0肱

=4.233×104kgfm,』3279×106kg-m

0.6r--- ð• -O....(l)A晶

0.4ト・ベD@At'IH;1ωs9t}ロ(J;f$)A;1 ~'I 雷in61

0.21

0

-0.2

-O.4l仰向 l正明。(J;f$)A

4"1 H

3" 1 sin62

-O.6~L---'---'--~ 2 46 8 10J2 Reduced Wind Velocity V/ffi

えない.

旦青山

ω

B

l¥-S

s/D=1.333

パッフルプレート付き断面における Step-by-step解析結果

(B/D=10, c.厄=0.013,α=00

)

、‘,,,Lu

r

,‘、s/D=0~333

図6・2・6

(a)

.:5m1s d.:9m1s

Cn 5

.:5凶 sd.:9m1s

5C.n

o

α=ぴQ 。

4

α=(f

。。@

4

2

3

h/D

2 1.5 ~0.5

・1

Drag Coe血cient

1 0.5

s/D

2 1.5 -0.5

・1

DragCoe伍.cientCD

1 0.5

CD

センターバリア付き断面、‘,JLυ i

・1

。=00

)

パッフルプレート付き断面

鉛直プレート設置による抗力係数の分布 (BID=lO,clB=O.O13,

136

(心

図 6・2-7

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そこで,特にパッフルプレート付き断面について耐風安定性が向上する原因を非定常空

気力特性の観点から考察するため,非定常空気力係数の個々の役割を示す Step.by.step解

析[4]を行った.これらの結果(図6・2・6)からパッフルプレートを高くするにつれて,対数

減衰率δに寄与する項がk*(ねじれ振動の空力減衰に関する項)の項から Al*IH3*1cos81

(連成項)へ:と移り,slD=L333に至つては,フラッターが発現する風速域においてAi'jの

項が安定化へ寄与している.このことから床版下面に取り付けた鉛直プレートにより,断

面まわりの流れ場が改善されたことが考えられる.

実橋断面への適用の観点から,このような鉛直プレートに作用する静的な風荷重,つま

り抗力係数のが大きくなることが考えられる.しかし,図 6・2・7に示す抗力係数 αの分

布から,センターバリアの設置により抗力係数のはその高さに比例して大きくなるが,バ

ッフルプレート付き断面では高さによらずほぼ一定な値を示す.これはパッフルプレート

が下面からの剥離せん断層内にあるため,パッフルプレート高さをある程度大きくしても

抗力は増えないものと考えられる.したがって,このような端2主桁断面において,パッ

フルプレートは抗力を増やすことなく,断面周りの流れ場を変えることのできる一つの有

効な耐風対策であると考えられる.さらに,このような端2主桁断面では,断面まわりの

流れ場を少し変化させることで大きく耐風安定化が期待できることが考えられる.

【水平プレートの設置による耐風安定化効果】

これまで端2主桁断面の動的な空力特性のーっとして,主桁を内側に設置したことで飛躍

的にねじれフラッタ一安定性が向上することを述べてきた.そこで,耐風安定性が確認さ

れた主桁を内側に設置した断面と同様の効果を期待し,上流側での剥離位置を変化させる

!?器i初p

1,

2 6 V/fB8

(a)α=0。

(b)α=+30

(c) α=00

(d)α=+30

(elD=0--0.833) (elD=0--0.833) (e'ID=O--0.833) (e'ID=0--0.833)

図6・2・8 水平プレート付き I桁断面 (BID=10,clB=O.013)の非定常空気力係数A〆

137

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目的で水平方向に突起物(以下,水平プレート)を設け,それらの断面の動的耐風安定牲

について非定常空気力特性の観点から検討を加えた.

床版端部に設置した水平プレートの張り出し長を e,また,主桁下フランジ外側に設置し

た張り出し長をe'で定義する(Appendix参照).便宜上,本節では前者を上部水平プレー

ト付き断面,後者を下部水平プレート付き断面と以下呼ぶことにする.強制加振実験より

得られた非定常空気力係数のうち鉛直プレート付き断面の耐風性評価と同様に非定常空気

力係数k*'に着目する.測定迎角 (α=0.0

,土30

}のうち,迎角 α=00

, +30

のA2*,を図

6・2・8に示すJ

B=2幻7.25おm叫, え九~o抑0=0.217ηE正kζ f匂+約0=0.ω0但E査kζ8弘,.=0ω.ρo

M=4.233 X 10.均kg/l畑m凪.1:同=3.279X 106k均:g• m. L=610m

120 [m/s] t ← α=0 [deg.]

|ー+ーα,=+3[deg.]

Z1ω「ー….=-3剛

Q

と 80Q ー回11--ιp

~ ,J.~ミ--~--唱一一一気む ω小 i¥¥/ぐ/ーロ、、//-長 r か一一一一一方〆

B=27.25m. ~o=O.217Hz, 弘,=0.ω0Hz,d.=O.02

M=4.233 X 10.kg/m. 1=3.279 X 106kg • m. L=610m

120 [m/s]

~ 100 .5 :> DI¥I __--sοト1j --1 ~-,-一一-....~ ----8 t.γ---き ω「一_--o-------~記1-0-----

---ーα=0[deg.] -----α=+3 [deg.) ー+ーα.=-3[deg.]

40 40

o 0.5 1 Horimntal Plate eρ

o 0.5 1 Horimntal Plate e'/D

ないやユζ L z

(a) 上部水平プレート長さ e (b) 下部水平プレート長さ e'

図6・2・9 フラッタ一発現風速(mls]と水平プレート長さの関係 (BID=10,clB=O.013)

下部水平プレート付き断面は測定迎角 (α=00

,士30

)いずれも下部水平プレート長さ

が大きくなるにつれて;A2*'はより高風速側で正値となり,ねじれ振動は安定化する傾向が

ある.一方,上部水平プレート付き断面のねじれ1@由度では,何も設置していない基本

断面よりも低風速側でA2*は正値となり,ねじれ振動が必ずしも安定化したとは言えない.

これらの非定常空気力係数を用いて,たわみ・ねじれ2自由度系複素固有値解析を行っ

た.フラッタ一発現風速と下部および下部水平プレート長さ及び迎角 αの関係を図 6-2・9に

示す.下部水平プレートを設置すること(図 6・2・9-(b)}で,どの迎角 (α='_30

__+30

)に

おいてもその長さが大きくなるにつれて,フラッタ一発現風速は大きくなり,下部水平プ

レート設置により耐フラッター性能が向上することがわかる.一方,上部水平プレートを

138

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付けること(図6・2・9・(a))で,負迎角 (α=_30

)において,その長さが長いほどフラッタ

一発現風速が向上し,耐フラッター性能が改善した.しかし,正迎角〈α=+30

)や迎角α

=00

では,今回検討した長さの範囲において,その長さとフラッタ一発現風速に明確な関

係は見られず,必ずしも耐フラッター性能が改善したとは言えない.

以上より,鉛直プレートおよび水平フレート付き断面では,いずれも断面下面側に設置

した場合に効果的に耐風性向上が図られることが明らかとなった.つまり,このような端

2主桁断面では上面側よりもむしろ下面側からの剥離制御が重要で,下面後流側に存在す

る励振力を抑えることが効果的に耐風安定化につながるものと考えられる.

6. 2. 2 合理的な制振対策断面の空力振動特性

これまで,断面中央や断面の前縁側で流れ場を変化させる目的で鉛直プレートや水平プ

レートを設置し,耐風安定性の向上を確認した.特に下面に鉛直プレート(パッフルプレ

ート)および下フランジ端部に水平プレートを設置することで,どの測定迎角〈α=_30

+30

) においても,その長さが大きくなるにつれてフラッタ一発現風速は大きくなり,効

果的に耐フラッター性能を向上させることができる.つまり,このような端2主桁断面の

耐風性向上には,下面からの剥離制御が全体の耐風性向上に重要な役割を果たすことが示、

唆される.そこで,このことから主桁断面の構造部材である主桁の下フランジを傾斜させ

ることで下面からの剥離制御を行う,つまり,耐風安定化部材と断面の構造部材を兼ねそ

なえたより合理的な断面を考案した.模型の詳細はAppendixに記載する.下フランジの傾

斜角をOと定義する.1桁断面の下フランジを傾斜させた断面においてOは30。と 450

設定した.はじめに,これらの主桁を設置した断面を用いて,強制加振実験による非定常

空気力を測定し,それらの非定常空気力特性について考察する.複素固有値解析より得ら

れたフラッタ一発現風速bn/sl と下フランジの傾斜角 O 及び迎角 αの関係を図6・2~10 に示す.

下フランジを傾斜させることで,どの迎角 (α=-30~+30 )においてもフラッタ一発現風

速は大きくなり,;耐フラッター性能が向上することがわかる.特に, θ=300の断面では迎

角α=00

の基本断面のフラッタ一発現風速よりも約 1.1倍程度フラッタ一発現風速が高風

速側に改善され,迎角α=+30では約 1.2倍,さらに基本断面で最も悪い耐フラッター性を

示していた負迎角のα=-30では約 1.4倍も基本断面より耐フラッター性能が向上する.一

方, 8=450の断面では8=30

0の断面よりフラッタ一発現風速は小さくなり,8=0

0から

450 までの間に最適な傾斜角が存在することがわかる.また,主桁を内側に配置させた場

合,図 6・2・10(b)のように外側に主桁を配置させたときほど下フランジの傾きによる耐フ

ラッター性能向上への効果は大きいことがわかる.したがって,下フランジを傾斜させる

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ことで端2主桁断面の耐風安定化を図るときは,その傾斜角が重要な要素となる.ただし,

このような下フランジを傾斜させた断面を実橋に適用する場合には,主桁ウェブと下フラ

ンジとの隙簡に雨水やゴミなどが溜まりやすくなり,メンテナンス性に課題が残ることも

考えられる.

B=27.25m,九。,::0.21万Iz,~初,::0.ω0Hz,弘,::0.02

M=4.233 X104kg/m, 1::3.279 X 10¥:g • m, L=610m

B=27.25m, f"o=0.217Hz, ft(l=0.600Hz,os=0.02

M=4.233 X 10'icg/m, 1=3.279 x 106kg • m, L=610m 120r

(m/s]-I c,周=0.0132ω 。

[m/s) ~α胡 7

l' -6=0-/ー-o~-e=300

J /

/

/

1,1 /

g且

kmH

目。。-o〉芯呂OHOH当記

空恒国

ib g 10m0H I/ 人司 7判

E 13 360 50

CIB

40ト o()

o 15 30 45 60 Angle of Inclined Lower Fl組gs0

B

特可=3。=--~主二

(a) 下フランジ傾斜角 Oとの関係 (b) 主桁位置との関係 (8=300

,α=00

)

図6・2・10 1桁断面 (BID=10)のフラッタ一発現風速hnlslと下ヲランジ傾斜角。

および主桁位置の関係(図中 Cp:実橋換算した主桁位置)

一般に橋梁主桁形式を比較する場合, 1桁とならび箱桁も比較されることが多い.さらに

架設時の張り出し状態における主桁剛性(横曲げ剛性やねじり剛性)確保の観点からも,

主桁形式は箱桁が有利になる場合がある(図6・2・11). そこで,次に I桁と同様に箱桁の下

フランジにも傾斜角を設け,ねじれおよびたわみ 1自由度による自由振動応答測定実験を

行った.その結果(迎角α=00 ,士30 )を図 6・2・12(a)",,(dに示す.なお,図中のBは迎.

角変化を考慮した見つけ幅とする.

迎角=00

(図 6・2・12(a))では()=150

""400 でねじれ渦励振およびねじれフラッターと

も起こらず,8=00 の基本断面に比べ,飛躍的に安定化し,その制振効果が確認できる.

迎角 α=-30 (図 6・2・12(c))でも Oが大きくなるにつれて,ねじれフラッターの発現風速が

大きくなり,安定化する傾向がある.一方,迎角 α=+30 (図 6・2~12(b))- では必ずしも耐

140

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張り出し架設時の主桁剛性の確保図6・2・11

α=-3。

α~-3Tdeg] Heaving lDOF

η[mm) 2O'y ~ ~ -: : _ --:---¥、 J ¥ 1

叶 LA-~ ----i1.6空le'1、、、、 、、:¥j

20ヘく:->::~6[d句J107ず勺 2V/信

α=0。 α=-3。(。α=+30

(e) (d)

の自由振動応答特性

たわみ 1自由度図中 一一 ;1.67B/D

(c) α=+30

clB=0.083)

141

、、.,,,Lυ /・1

α=0。

箱桁断面 (BID=10,

1.11B/D,

(a)

図6・2-12

(ねじれ 1自由度図中 一一 ;

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風性が向上するとは言えない.これは迎角α=0。でうまく保たれていた上面と下面の流れ

場のバランスが,吹き上げによる下面からの渦生成の変化により,全体の流れ場が変化し

た可能性が考えられる.たわみ 1自由度について迎角 α=00

(図 6・2・12(d))では8=150

""400

の断面で,たわみ渦励振がθ=0。の基本断面よりも安定化し,その制振効果が確認

できる.迎角 α=+30

(図 6・2・12(e))では8=300

,迎角 α=-30

(図 6-2-12(D)では8=150

が最も安定化し,たわみ 1自由度に着目すれば,8 =150

から 300

までの聞に最適な傾斜

角が存在することがわかる.したがって,このような I桁および箱桁断面の空力振動特性か

らも端2主桁断面で耐風安定化断面を考案するときは,下フランジを傾斜させることが有

効であると考えられる.さらに,その傾斜角 Oの設定が耐風性向上を効率的に図る上で重

要となる.なお,本節では基本的な空力特性の把握を目的としているため高欄等は設置し

ていないが,高欄や地覆などの設置によっても耐風性に大きく影響することも考えられる.

これについては次節以降で高欄設置した実橋想定断面の耐風性評価として詳しく述べる.

6.'2. 3 制振対策断面の安定化メカニズムに関する考案

前節までに述べてきたように,下フランジを傾斜させることでねじれフラッターに対す

る安定性が向上する.そこで,はじめに I桁断面について耐風安定性が向上する原因を非定

常空気力の観点から考察するため,非定常空気力係数を用いて Step-by-step解析を行った.

B=27.25m,~o=0.217H広島。=0.600Hz

M=4.233 X 1O'1:g/m,I=3.279 X 106kg・m

0.6r噂>-o",

O--OSA~' 8=0

皆 0.4~・4児島IA1' I H2' I co尚孝 α=0 g. _._~ロ①②1A4' I H

2' I由 8

1' C厄=0.013

8 0斗・....(J)@A1• I H3' I cos82'

o

E 言342

B=27.25m,九。=0.217H広島。=0.600Hz

M=4.233 X 1O'1:g/m,I=3.279 X 106kg・m

0.6, .... ←% トo--<DA2

智 0.4~・d②A1' I H2' I∞向*

宮}ロ①②九*Iぜ Isin81'

d 0斗.--<D②A1"I叫|∞s820

E 詔5-02

-0.4 -0.4 。<D<2)A4

'I H3' I sin82'

-O.6~ ~ 4 よ 8 10 12 Reduced Wind Velocity v/m

。江光?)A4*I H3

* I sin82*

-0.61

o 4.. 4. ..f! . ..8. 10 .Jl Reduced Wind Ve10city v/m

B B

ーはー「ヨHH凸

nu 今、uho

一一一マ¥

lrVJ4

C

一D一

j

(a) 8 =0。

(b) 8 =300

図6・2・13 下フランジに傾斜角を有する断面の非定常空気力係数の役割

(Step-by-step解析結果, Torsional Branch, BID=10, clB=0.013,α=00

)

142

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a=O。における 8=00 , 8=300

のI桁断面の結果を図 6・2-13(a), (b)に示す.なお,本節

でのOは原則,下フランジの傾斜角 Oを示し,本節ではStep-by.step解析上の0はFとし,

区別していることに注意されたい.

これらの図から,下フランジを傾斜させることによる違いは顕著には見られず,下7ラ

ンジを傾斜させても対数減衰率δに寄与する項はA2"iの影響が最も大きく,ねじれ卓越型の

フラッターである.したがって, 1桁断面において,下フランジを傾斜させることでの耐風

安定性向上の理由は,フラッター特性が変わるほどの大きな流れ場の変化によるものでは

なく,非常に微妙な流れ場の変化により耐風安定性が向上したものと考えられる.

次に下フラシジを傾斜させた箱桁断面のねじれフラッターの安定化効果〈図 6・2・14)に

ついて非定常圧力特性の観点から述べる.

ねじれフラッターの安定化

0 40

B

吋口

図6・2・14 下フランジに傾斜角を有する箱桁断面の自由振動応答特性

(ねじれ 1自由度, BID=10, clB=0.083,α=00

)

図6・2・15に下フランジの傾斜角の変化による非定常圧力特性を示す.特に8=0。の断面

のねじれ 1自由度で,ねじれフラッターが発現している無次元風速V/fB=5.0を対象に比較

する.変動圧力係数ゐの上面側のピークが,下フランジを傾斜させることでやや上流側に

143

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移動する(図 6・2・16). これは I桁断面で主桁を内側に配置した断面 (c!B=0.167)の非定

常圧力特性と同様な特性を示す.しかし,位相特性はどの断面も後縁にかけて位相遅れに

変化し,上面側では無次元仕事分布野全に応答特性ほどの違いが見られない.一方,下面側

では8=0。の断面の後流側で位相が他の断面よりも若干遅れ,さらに変動圧力係数Cpが全

体的に大きい値を示す〈図6・2・16LこのことはI桁断面で主桁を内側に配置した断面化!B=

0.167)でも同様に変動圧力係数ゐは小さくなることと類似する.これら下面の位相差V

と変動圧力係数CPの分布により 8=00 の断面の下面後流側で励振力が作用し,ねじれフラ

ッターの発現に寄与しているものと考えられる.つまり,主桁を傾斜させることで下面か

らの剥離位置が断面内側に移動し.1桁断面での主桁を内側に配置した場合と同じ効果を有

することが考えられる.

Cp lr

f+o=2.~'Hz 2+0=4" 也=0'

V/fB=5.0 901

d f+o=2.~Hz 2+0=4・

<<--00

V/f8--5.0

.:8=00 .治=150

0:8=300

ロコ0=400

.:8=00

.:8=150

0:8=30・口:8=40

0

0.5

S匂副e44M3

4S4』

4S4S

・・0口「

m~.01

L

告c

fきM.P.

ロM.P.

ロ者 程一口

ω 変動圧力係数ゐ(土面) ら) 位相差1f/(上面) (c) 無次元仕事"を(上面)

4事叶 M.P. T.E

件4

M.P. T.E.

υ υ

問告主ヂ 。

Z2SS殉蛤+トI ・D・口s8靖e』=4A0450s・・・-f2日r+=。0=2.4.q・Hz .:8=0

0

f2a+中z0。4o=-4.0・Hz

.:自=150

0:8=300

1L V1fB=5.0 ロ:8=400 V/fB=5.0

Cp ψ

1 LE.

F亭O.舵rWr f+o=2.~ Hz

2中。=4

0.01ト a=OO

V1fB=5.0

M.P.

ロExcitation

。~.01

MU拓

。"。aOAenu

--o口

川町nU 4

S包ble

ω 変動圧力係数ゐ(下面) ら) 位相差1f/(下面) (D 無次元仕事野全(下面)

図6・2・15 下フランジに傾斜角を有する断面の非定常圧力特性

〈ねじれ1自由度, BID=10, c.厄=0.083,α=00

, V/fB=5.0) .

144

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Cp ①変動圧力係数のピークが前縁側に移動

一一一ーロ口

T~E:

3 物工コ③下面後流側の励振力が小さくなる

Cp

図6・2・16 下フランジを傾斜させた場合の非定常圧力特性に及ぼす影響

1C「P

.t・h:::VVV畑畑畑=z=357•. 5 0 0 告ibF .i・h:::VVVRN畑B&=d35.•• 0 0 5 t ヂ.&::vvmng=a3s.-0 5 、2a%0=20=2.4今・村Z .:V!fB=7.0

0.5

4~#2H札I剛眠品h白 T.E. 司空山。 M

T.E

L」 LJ

(心 clB=0.12 (b) clB=0.15 (c) clB=0.17

42L ~拘、=置24.0・Hz ψ ψ

a=O.

E-寸E1 ・t、寸れ

90~ ~ f幼af=0=022.4.0 ・tセ 4~ fa2+中=0。20=2.4.9・地

E じよfI=O{d略 M.P.

τ~I三

正雪山… M.P

T.E. r-山"M.P

T.E.

しJ LJ L」

(d) clB=0.12 (e) c.厄=0.15 (f) clB=0.17

図6・2-.17 箱桁断面上面の主桁位置cの違いによる非定常圧力特性 (BID=10)

(上段:変動圧力係数ゐ・下段:位相差玖ねじれ1自由度, α=00

, () =00

)

145

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次に下フランジの傾斜角Oを00 にしたまま,主桁位置を変化させた非定常圧力特性〈上

面)の結果を図 6・2・17に示す.これらの図から箱桁の設置位置(主桁位置)を連続的に内

側に入れると上面で変動圧力係数Cpのピークが上流側に移動するとともに,位相特性は後

縁にかけて位相遅れから位相進みに変化する.これは主桁を内側に配置したI桁断面のとき

でも同じような特性を示す.特に外側のウェブ位置が主桁を桁端に配置したときの内側の

ウェブ位置に一致した (c!B=0.15)とき,その位相特性が風速によって後流側で位相遅れ

を示したり,位相進みを示したりする〈図6・2・17(e)).

したがって,今回検討した下フランジを傾斜させた断面の箱幅(ウエブ間隔〉が,結果

的に上流の流れ場を変化させた箱幅であると考えられる〈図6・2・18).つまり,これよりも

小さい箱幅を持つ断面では図 6・2・14で示したのと同じようなねじれフラッターの安定化が

得られるとは限らないものと考えられる.

同じ剥離点

図6・2・18 下フランジを傾斜させた断面の剥離点

一方,下面では図 6・2・19に示すように,変動圧力係数Cpは主桁を内側に配置すること

で全体的に値が小さくなる傾向にある.これはI桁断面も主桁を内側に配置することで,変

動圧力係数Cpの値が全体的に小さくなることと符合する.また,位相差Vは無次元風速

V/fB=5.0の風速域では00 近傍で断面にわたり一様な値をとる.これら変動圧力係数Cpお

よび位相特性も下フランジを傾斜させた断面の下面における非定常圧力特性と同様の特性

を示し,下面での非定常圧力特性の観点からも主桁を内側に入れた効果と下フランジを傾

斜させた効果は同等であることが考えられる.

以上より,このような下フランジを傾斜させた断面では下面からの剥離点を変化させる

意味で傾斜させたことが重要であり,さらに箱幅〈ウエブ間隔)をどの程度の幅に設定す

るかがjねじれフラッターの安定化に寄与できる重要な要素であると考えられる.さらに

146

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この箱幅よりも大きければ〈より内側で剥離が起これば)ーより空力的に安定な効果を得ら

れる可能性があるものと考えられる.ただし,第4章でも述べたように主桁位置を内側に

入れすぎると,つまり箱幅が大きすぎると,逆に空力的に不安定な特性を示す可能性があ

ることを考慮する必要がある.

時事d

, LE. M.P.

DI ・ーヰミ半ω[d略1

o

口正己

時宍〆sr0.5 0.5 0.5

fto=2.~ Hz ~=4・α,=0'

.6.:V/fB=3.5 e:V/fB=5.o ・:V/fB=7.0

.6.:V/fB=3.5 ・:V/fB=5.0・:VJfB=7.0fto=2.~Hz 2+0=4・α,=0'

ti:V/ffJ=3.5 e:V/fB=5.0 ・:V/fB=7.0

fto=2.C?Hz 2伽,=4・

α,=0'

~句

4

・ ~九

we-- ~匂

(a) clB=0.05 (b) clB=0.15 (c) clB=O.17

ご十月 M不 一i

士士』ー-6=0[deg.] ~ ~ . ._L-.J 必7・1 高::JEH4

α=0

ヰ♀山IJ-P一剖

日一口T.E.

... .... G

90 90 鈎

.6.:V/fB=3.5 e:VIfB=5.0

180ト・:V/fB=7.0 J 180ト.6.:VJ畑 =3.5.ω=2.0Hz ・:V/fB=5.0 均。=4'・:V/fB=;7.0α=0'

180卜.6.:V/fB=3.5. f4l/}=2.0 Hz e:VI畑 =5.0 均。=4・.:V/fB=7.0α=0・

雷 S

A也 ι由

270' ψ

270 ψ

270 ψ

(d) clB=0.05 (e) clB=O.15 (~ clB=0.17

図6・2・19 籍桁断面下面における主桁位置cの違いによる非定常圧力特性 (BID=10)

(上段:変動圧力係数Cp,下段:位相差1Jf,ねじれ1自由度, α=00

, () =00

)

147

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渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の影響3 6.

一般の橋梁断面においても,その渦励振応答特性は高欄やセンターバリアなどの橋梁付

属物の影響を受けやすいことが知られている.通常,剥離点に近い所に設置される高欄は

その充実率によっても渦励振応答特性に大きく影響することが,端2主桁断面においても

予想される.

そこで,本節では特に渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の影響について述べる.さらに

渦励振は減衰による影響も受けやすいので,無次元減衰であるスクルートン数をパラメー

タに検討を行った.これにより実橋で必要とされる Sc数が明らかになるものと考えられる.

なお,本研究で対象とする高欄やセンターバリア形状の詳細はAppendixに記載する.充実

率 100%のセンターバリアと高欄の充実率を 67.5%に設定したポスト高欄もしくは 100%に

O:wi昔、outC凹 lterBarrier 衛官:tHa叫rail

口:w抽 CenterBarrier a叫Ha叫rail

<>:叫thCenter Barrier and Solid Par叩d

prototype ・:備制:erB町 ier

.:w揃1Handrail マ:w肋 801対Pa叩et

目日

mぴno

2ηplm) 2η[mm)

2r 20

Sc 400

o o

0.5

ポスト高欄付き断面

Sc数

壁高欄付き断面

たわみ渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の効果

主1.5ト15

1ト10

300 200 100

たわみ渦励振最大応答振幅

α=0" , c/B=O.013)

148

基本断面

(I桁断面, B/D=10,

図6・3・1

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充実させた壁高欄を設置した断面〈以下,ポスト高欄付き断面,壁高欄付き断面と呼ぶ)

の他に,それぞれの高欄のみ設置した断面やセンターバリアのみ設置した断面についても

自由振動応答測定実験を行いi渦励振応答特性に及ぼすそれぞれの橋梁付属物の影響を考

察する.端2主桁断面ではこれまで複数の渦励振の存在が確認されているが?なかでも最

も振幅の大きい,たわみ渦励振では無次元風速V/fB=1.6付近から,ねじれ渦励振では無次

元風速V/fB=1.0付近から発現する自己励起型渦励振に着目する.また,図中の"Pro土otype"

は実橋で予想される対数減衰率δ=0.02のときの Sc数である.なお, r耐風設計便覧〈平成

3年 7月)J [5]では一般に 100gruの加速度以内なら疲労破壊等を考慮しても十分許容でき

ると記されているため, 100galに相当する振幅も図中に表示する.実橋換算でたわみ倍振

幅 O.5m,ねじれ倍振幅0.5 がこれにあたる振幅である.

たわみ渦励振最大応答振幅をプロットした図を図6・3・1に示す.壁高欄付き断面(く))は何

も設置していない基本断面(0)よりもその最大応答振幅は小さく,安定化傾向を示し,ポス

ト高欄っき断面では基本断面よりも不安定化する.したがって,端2主桁断面のたわみ渦

励振応答特性にとって高欄の充実率が大きな影響を与えることがわかる.さらに,センタ

ーバリアのみを設置した断面(・)では何も設置していない基本断面(0)に比べ,たわみ渦励

振最大応答振幅が小さくなり,安定化する.また,ポスト高欄のみを設置した断面(・)では

何も設置していない断面(0)に比べ,たわみ渦励振最大応答振幅が大きくなり,不安定化す

る.つまり,このようなI桁を持つ端2主桁断面では,センターバリアおよび壁高檎はたわ

み渦励振を安定化させ,ポスト高欄がたわみ渦励振を不安定化させる効果をもつことが考

えられる.一方,壁高欄のみを設置した断面(マ)ではセンターバリアのみ設置した断面(+)

とほぼ同じ応答振幅を示し,たわみ渦励振を安定化させる効果を持つことが考えられる.

したがって,このような端2主桁断面では高欄の形状が,さらに高欄の充実率がたわみ渦

励振応答特性に及ぼす影響に大きく寄与することが示された.

一方,ねじれ渦励振応答特性(図 6・3・2)においてもたわみ渦励振応答特性と同様に,橋

梁付属物の設置による渦励振応答特性へ及ぼす影響は大きい.しかし,付属物それぞれの

役割がたわみ渦励振応答特性とは若干異なり,ポスト高欄付き断面(く))および壁高欄付き断

面〈口)で何もつけていない基本断面(0)よりも最大応答振幅が大きくなり,不安定化傾向を

示す.さらにセンターバリアのみを設置した断面(・)では何もつけてない断面(0)に比べ,

ねじれ渦励振最大応答振幅は大きくなり不安定化する.また,ポスト高欄のみをつけた断

面(・)についても同様に,その振幅は大きくなる.つまり,センターバリア単体ではねじれ

渦励振を不安定化させる効果を持つが,高欄と両方を設置する(口,く))と,その相互作用に

より高欄のみ設置した断面よりも安定化する.

このようにたわみ渦励振とねじれ渦励振に及ぼす橋梁付属物の効果は異なり,特に高欄

149

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の充実率が及ぼす渦励振応答特性にとっては,ねじれ渦励振よりもたわみ渦励振の方が比

較的敏感な特性を示すことがわかる.また, r耐風設計便覧〈平成3年 7月)J [5]の基準 100gal

の値と同じ実橋相当の Sc数で比較すると,たわみ渦励振よりもねじれ渦励振の方がその応

答振幅が大きいことから,実橋を想定し,同じ基準内に応答振幅を抑えようとした場合,

たわみ渦励振よりもねじれ渦励振の方が制振することが困難であることが考えられる.

2ct制eg.)

5

4

E 3ト,'t口 A

2~ も一H 口

0:叫thoutCenter Barrier 創事dHar叫rail

ロ:叫thCenter Barrier andHar時 ail

<> : with偽 nterB,釘ner衛官:lSolidPara阿 t

+:柑めCeilterBarrier

.:叫thHar叫『剖l

仰 t叩 9Eb n

o

01 手ム」ー---lSco 1000 2000 3000 .4000 5000

ポスト高欄付き断面壁高欄付き断面

/ ,

基本断面

ねじれ渦励振最大応答振幅

Sc数

図6・3-2 ねじれ渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の効果

(I桁断面, BID=10,α=00

, clB~O.O 13)

次に,第3章で明らかにしたように端2主桁断面において,同じ主桁位置での主桁形状

変化が及ぼす渦励振応答特性への影響は大きいため, .主桁形状変化によるたわみ渦励振応

答特性の違いを,同じ断面辺長比 (BID=10) を持つ箱桁断面と比較することで検討した.

その結果を図 6・3・3に示す.迎角 α=00

について箱桁断面ではI桁断面と同様,ポスト高欄・

150

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センターバリア設置断面でたわみ渦励振最大応答振幅が不安定な傾向を示す.また, 1桁断

面に比べ,箱断面の方が全体的に安定化する傾向を示す.これは第3章でも述べたように

下面からの渦の巻き込み領域がI桁断面に比べ,箱断面の方が狭く,渦の生成過程において

I桁断面で強い渦が生成されたものと考えられる.このことはねじれ渦励振にも同様の特性

を示すことからも考えられる.また,ねじれ渦励振応答特性についても I桁断面と同様な特性

を示し,壁高欄およびポスト高欄設置断面で,何も設置していない断面よりも不安定化すること

がわかる.したがって,このような端2主桁断面において主桁形状が変化しても,渦励振応

答特性へ及ぼす橋梁付属物の役割は基本的には同じであると考えられる.

2Ttp[m] 2Tj[mm] 2r 20r

1.5ト15ト

1ト10ト

O 日

0.5,~

OL Oo L

(a)

たわみ渦励振最大応答振幅

O :awM 舗mHuatMCeranii ter Barief 2中怖g.]

口:w肋 Cer詑erB釘 rier5

窃司dHar油 'ail

<>:叫出cer吐erBarrier 4 and Solid Parapet

prototype 3

2

日100gal

~ U

3080 」40S0C 。i

100 200 o

たわみ渦励振応答特性 (b)

/ノ〆

ノノi〆ど υグ

o : witt10ut Center Barrier 創冒:iHar叫rail

口:衛叫官的:iH偽arnM1terzfdl Badg

。z叫衛官U22SGOetidItepragg司泥detf

~ a s -DLJSc 1000 2000 3000 4000 5000

ねじれ渦励振応答特性

ねじれ漏励振最大応答振幅

Sc数

図 6・3-3 渦励振応答特性に及ぼす橋梁付属物の効果〈箱桁断面, BID=10,α=00

)

以上より,端2主桁断面 (BID=10)のねじれおよびたわみ渦励振応答特性について,ポ

スト高欄とセンターバリアを設置することで渦励振最大応答振幅が大きくなり,不安定化

151

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する傾向にある.これはセンターバリアの効果よりもむしろポスト高欄の効果が大きいも

のと考えられる.また,端2主桁断面では高欄の形状,つまり高欄の充実率がねじれ・た

わみ渦励振応答特性に及ぼす影響が大きいことがわかる.さらに, 1桁断面よりも箱桁断面

の方が渦励振の最大応答振幅の観点から安定化傾向にある.また,本研究により端2主桁

断面(1/箱桁断面, .BID=lO)のSc数と渦励振最大応答振幅の関係を示すことができ,実

橋を想定した場合,たわみ渦励振よりもねじれ渦励振の方が制振することが困難であると

考えられるとともに,実橋で渦励振を制振させるのに必要なSc数の目安も示すことができ

た.

一方,このような端2主桁断面における渦励振の制振には,これまで述べた構造減衰 (Sc

数)を大きくする以外に,図6・3・4に示すようにフェアリングなどの設置によって制振でき

るという報告[6]もあり,比較的大きな応答特性を示す端2主桁断面の渦励振の制振にはフ

ェアリングの設置も有効な手段のーっと考えられ,これからの斜張橋建設計画において,

より合理的に渦励振を制御できる主桁形式の開発が望まれる.

;tfF} 2n/P2n(lIIft)

LJ 41』LJ 5

3

0.112

3

。G

5-

え0.2 4

3

0.1 2

jQ UJfo4o 0

。10 に20 。 20 30

(a) 基本断面 (b) フェアリング付き断面

図6・3・4 端2主桁断面の渦励振応答特性に及ぼすフェアリングの効果[6]

(BID=lO,α=+50

)

152

U~

uff4。0。

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6. 4 実橋を想定した端2主桁断面の空力特性に関する考察

本節ではこれまで対象としてきた基本断面の空力特性をもとに実橋への適用性を考察す

る.特に 6~ 2節で述べたように下フランジを傾斜させることでねじれフラッターに対す

る安定性が向上することが確認されたため,これらの断面をもとにした実橋断面を想定し

た.そして,これらの断面に対し,自由振動応答特性を中心とした風洞試験により耐風性

評価を行う.

想定する斜張橋は図6・4・1に示すように橋長 1,150m,中央径関長610mの3径関連続銅

斜張橋とする.実橋想定断面は図6・4・2に示すように床版はPC床版とし,主桁形状は箱桁

とする.さらに箱桁の下フランジには勾配を設け,箱桁の外側ウェブにはケーブルとの定

着を考慮して,ケーブル面方向に傾斜させた.橋梁諸元{直には,第4章で述べた高欄など

の橋梁付属物の設置していない基本断面での空力特性と断面形状変化による影響を比較す

るために,表6・4・1に示す基本断面での検討時と同じ値を用いることとする.

図6・4・1 実橋想定斜張橋側面図 (mm)

合成桁主桁断面

ro旦旦旦

図6・4・2 実橋想定斜張橋主桁断面 (mm)

153

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表6-4・1 中央径関長600m級の鋼斜張橋の諸元値

緒元 記号 単位 実橋値

中央支関長 Lj m 610

桁高 D m 3.4

断面辺長比 B/D 一 9.1

等価質量 地i 均1m 4.233 x104

等価質量慣性モーメント kg'm 3.219 x106

鉛直たわみ 1次振動数 f司Li Hz 0.217

ねじれ1次振動数 f.Li Hz 0.600

鉛直たわみ対数減衰率 8 可 一 0.02

ねじれ1次対数減衰率 o. ー0.02

u

本研究で使用する模型は図 6・4・3で示す.模型の縮尺は 1170とし,下フランジの傾斜角

を 3 種類に変化させた.便宜上~() =00

.(水平)の箱桁をAタイプ, () -10~ の箱桁を B

タイプ~ () =200

の箱桁を Cタイプと呼ぶことにする.高欄形状は同じ斜張橋の東神戸大

橋に設置されているポスト高欄[7]を参考にその充実率を 38%とした.また,測定迎角は

α=+30

, 00

,十6。とした.なお,気流は一様流とした.実験条件は表6・4・2に示す.

1"4弘之察

箱鵜Bタイプt・'iolO勺

( 、ー

:M~. 遇、

7.司書

籍者昔、A費量イ'7/(.:籍精e:CDイプ(,f'"20"")

図6・4・3 本研究で使用した実橋想定断面の模型断面(inm,1/70)

154

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表6・4・2 風洞試験に用いた実験条件

緒元 記号 単位 実橋値模型

実験値

中央支関長 Li m 600 一

縮尺 1/70

等価質量 mLi 均1m 4.233 x104 8.532

等価質量慣性モーメント ILi kg'm 3.279 x106 1.421 x10・2

鉛直たわみ 1次振動数 fηLi Hz 0.217 1.057

ねじれ1次振動数 f+Li Hz 0.600 2~509

鉛重たわみ対数減衰率 d'l 一 0.02 0.0202

ねじれ1次対数減衰率 d. 0.02 0.0203

ここで,実橋想定断面の耐風評価を行うにあたり,フラッター照査風速を設定する.こ

こでは f道路橋耐風設計便覧(平成3年7月)J[5]より簡易的にフラッター照査風速を求め

ることとする.想定する架橋地点の基本風速を Vio=40mlsとし,海上部に架橋することを

仮定し,表6・4-3に示す条件で算出した結果,フラッター照査風速は 79.2m1sとなり,本節

ではこの風速を基準として実橋想定断面の耐風性評価を行うことにする.参考に同じ斜張

橋である東神戸大橋 (485m~ 1993年)のフラッター照査風速[7]は72mJsである.

設計基準風速:

フラッター照査風速:

九=~o xE1' = 40 x 1.5 = 60m/ s

ち =1.2xEr1xVd

= 1.2x1.1x 60 = 79.2m/ s

(参考値:東神戸大橋:72inls)

表6-4・3 想定する架橋地点での諸条件

《便覧に基づく条件》

O 地表面粗度区分:1

O 桁高度Z :60<z孟70

O 高度及び粗度区分に関する補正係数:E1 '1.50

O 自然風の変動に基づく補正値:Er1=1.10

155

(6~ I)

(6.2)

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図6・4・4に実橋想定断面と基本断面のねじれ1自由度における自由振動応答特性を示す.

ここでの基本断面とは6. 2節で述べた高欄などの付属物を設置していない下フランジを

傾斜させた断面を指す.以下,基本断面と呼ぶこととする.実橋想定断面において迎角 α

=00

では箱桁断面 Aタイプ (8=00 )を除き,どの断面もねじれフラッターが高風速域

まで発現せず,良好な耐風特性を示す,箱桁断面Aタイプ (8=00

)で基本断面よりもフ

ラッタ一発現風速は大きい.これは箱幅の違いによるものと考えられ,ねじれフラッター

に起因する下面からの渦生成の違いによるものと考えられる.そのため,実橋想定断面に

おいても基本断面と同様に下フランジを傾斜させることでねじれフラッターが安定化する

ことすることが考えられる.したがってE 迎角α=00

において,ねじれフラッターの発現

には高欄や横断勾配およびセンターバリアなどの橋梁付属物の影響は比較的小さいものと

考えられる.

ct[deg.]

5.0 r 0:τ蹄 抽 A企:菅'ypeB

•. 0 ~ ロ:τ'ypeC

3.0 J α=O(d姥3

2.0

1.0

0.0 t 。

o 000 0 0

8

8 o 40

@

O

i

v

vo

B

4主(a) 実橋想定断面 (α=0

0

) (b) 基本断面 (α=00

)

図6・4・4 実橋想定断面と基本断面の自由振動応答特性の比較(ねじれ 1自由度, α=00

)

次に,図6・4・5で示すように迎角 α=-30の籍桁断面Bタイプ (8=10

0

)と基本断面0

=150 を比較する.これら両断面を比較すると,両断面とも不安定なリミットサイクルが発

現している.さらに,図6・4・6に示す迎角α=+30

での箱桁断面Aタイプ (8=00

)と基

本断面がほぼ同じ風速域からフラッターが発現しすることを考えても,橋梁付属物の空力

156

吋」口

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しかし,迎角α=+30

では箱桁特性に及ぼす影響はあまり大きくないものと考えられる.

断面 Cタイプ (0=200

)で高風速域までねじれフラッターが発現しないが,基本断面で

これらのことを考慮すると迎角と下フランジの

の組み合わせによっては基本断面と同じ傾斜角および高欄設置状況〈充実率や設置位置)

2+胆eg.)5

4

4J

河町ぬlo ... 2 4 6 8 10 .12

b iA4 」 占 占V/f.B

41'。勾勾ゐ勾db元山由 W州通l

B

ヰ主

V[m/s] 10.0 s vffB

事.0

8

α=-30

)

α=-30

)

2.0

o 40

dIm/S1

s v/偲

血相也

ナ』向。

8.0 L

7

A

基本断面〈α=+30

) 、.,,hu

,s・、

実橋想定断面 (α=+30

) (a)

実橋想定断面と基本断面の自由振動応答特性の比較〈ねじれ1自由度, α=+30

)

は安定化効果は見られない.したがって,

o d00. 0 Q証

G

e

s

j

s'

&

基本断面 (0=150

実橋想定断面と基本断面の自由振動応答特性の比較〈ねじれ1自由度,

O:TypeA I:l. :TypeB ロ:Type C

α=+3 [deg.]

A O

品一一ー

1.0

0.0

0

157

図6・4・6

,a

Q:T:列到eAd.: T'刻碍 Bロ:Type C

α=-3怯 c.]

+胎g]

5.0

4.0

3.0

4..0 4

4 4qU

7m 却

42

量合金品目白岡

aih--

2.0

1.0

0.0

0

(b)

t:.

A

実橋想定断面 (α=-30

)

O 00 0

O

(a)

図6・4・5

3.0

ct[deg.]

5.0

4.0

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特牲を示さない場合もあると考えられるが,概ね基本断面と実橋を想定した断面とでは同

じ特性を示していると判断でき,端2主桁断面のねじれフラッターに及ぼす橋梁付属物の

影響は比較的小さいものと考えられる.図 6・4-7に示す迎角α=+6。では,全ての断面で

ねじれフラッターが発現し,想定したフラッター照査風速〈無次元風速防..=:::4.3,実橋換算

風速 Vrr-79.2m1s) をクリアしないことがわかる.

ct;(deg.] E 5.0. r

o :TypeA s: Type B

4.0..t 口:Type C 01口

3.0..t α=~6 [deg.]

2.0 t O A 口フラッター照査風速

& 口

ωt . 1ft 自 aロ

oH圃呼aRr4odEaωjE目 S 的 to I.沼紛 J[m/s]

o 1: 2 3 4 5 6 1 8 9 V/fB

図6・4・7 実橋想定断面のねじれ1自由度における自由振動応答特性〈α=+60

)

表6-4・4 基本断面と実橋想定断面の Sc数の比較表〈たわみ1自由度)

基本断面 実橋想定断面

α 。Sc数 Sc数(平均) Sc数。35.26

。15 36.87 30 38.78 40 34.57 。37.96 、

十3 15 37.87 37.29 119.6

30 36.67 40 35.21 。39.78

-3 15 37.31 30 39.53 40 37.66

158

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一方,図 6・4・8に示すたわみ1自由度の自由振動応答特性について,箱桁断面 Aタイプ

(8 =00

)を除き,迎角α=-30 ""+30

の範囲で他の実橋想定断面では渦励振の発生が確

認、できず,良好な耐風特性を示す.基本断面の Sc数〈約37.3)と実橋想定断面の Sc数(約

119.6)に差はある〈表 6-4・4)ものの,これは迎角α=0。での下フランジを傾斜させるこ

とでたわみ渦励振が安定化するという基本断面の特性と同じ特性を示しているものと考え

られる.しかし,迎角α=-30,• +30

での基本断面では実橋想定断面ほど明確な安定化傾

向は見られない.これはSc数の影響を受けたものと考えられるが,実橋想定断面において

も下フランジを傾斜させることで,たわみ渦励振を安定化させる効果をもつことが考えら

れる.また,迎角α=+6。ではどの断面も渦励振が発現しているため,高迎角時〈α=+60

)

ではたわみ渦励振の空力対策が必要であると考えられる.したがって,このような実橋想

定断面のたわみ渦励振応答特牲においても迎角に対して敏感な断面で、あると言える.

O.!伺

Q:TypeA a :Type8 ロ=τyPeC

α=-"3 [deg..]

AlB 0.1伺

。.制

Oj伺

。'.020.01

。~O-- 1,8 Z O

o 2 4

O:TypeA a:Type8 口:TvoeC

α=0 (deg;]

AlB 0.05

0.04

0.02

ω1 t 8 0.0 ・出竺竺竺竺 竺 ~ 2. X ; . & .8 .s >! [m!s]

In ~ ~ u ~ M U U U ~

o 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 VI偲

(a)α=-30 (b)α=00

O.!伺

O:TypeA a:Type8 ロ:Type C

α卦 3[d略.]

AlB 0"街

O~倒

0:1閃

0.02

0-.011 (]J) 事。

O:TypeA a : Ty.,.8 ロ:TypeC

α=崎 [deg;]

A〆B0.05

0.04

0.02

0;011 o

帥 0」も2 0.0 a

M

4』

OB

O--a士o

au--Z44

o

s fl ~ ~合 2;..Y [m/s] 5.0 8.0 7.0 8.0 9.0 10.0

10 12. 14 16 18 20 VI倍

却 制 ω 却制 7.0 8.0 U. 10.1yEmノ4' 4 6 8 .10 12 14 16 18 20 VI侶,

o

(c)α=+30 (d)α=+60

図6・4・8 実橋を想定した端2主桁断面の自由振動応答特性(たわみ1自由度)

159

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次に実橋想定断面の迎角α=+60

におけるフラッター限界風速をクリアさせる目的で3

つの対策を考案し,自由振動応答測定実験による耐嵐性の評価を行った.主桁断面は下フ

ランジの傾斜角が小さいほど製作性・施工性に優れるため,迎角α=+30

においても耐風性

の改善が見られた箱桁断面タイプB(8=100

) の断面に着目する.耐風対策として図6・4・9

に示すような箱桁内側から鉛直プレートを設けた下面スタビライザー(対策①,),中央分離

帯には中央高欄セシターバリア(対策②)および床版中央には充実率 45%のグレーチング

〈対策③)を考案した.対策①については下フランジ下面からの剥離を促す目的で考案し,

対策②については既に 6.2節で述べたようにI桁の端2主桁断面でその耐風性向土が確認

されたため設置を考えた.対策③については各研究機関[8]~[10]にて 2 箱桁並列断面の有

効性を指摘していることから,断面中央にグレーチングを設けた.なお,図6・4・9に示す空

力制振対策はそれぞれの役割について調査するため,個別に断面上に施して検討を行った.

図6・4・9 各種空力制振対策の設置状況〈箱桁断面Bタイプ (8=100

))

図6・4・7に示すように迎角 α=+60 おいて箱桁形状の変化だけでは目標と-するフラッター

照査風速がクリアできないため,迎角α=+60

に着目して,これらの空力制振対策 (3種類)

は個々に設置し,それぞれの断面にて自由振動応答特性を比較した.図 6・4・10にねじれ1

自由度における自由振動応答特性を示す.これらの図より,グレーチング(対策③)を設

置した場合は,何も対策をしない実橋想定断面よりもねじれフラッターの発現風速が小さ

くなり,端2主桁断面では断面中央部の関口は逆に耐風性を悪化させる効果をもつことが

考えられる.これは並列 2 箱桁断面[8]~[10]のように箱桁形状の主桁断面の断面中央に関

口を設けることと端2主桁断面にて断面中央部に関口を設けることが全く逆の空力的な効

果を有することになる.このことは,耐風性改善に効果があったとされる並列2箱桁断面

160

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は,連成フラッタータイプのフラッターであると推察され,断面上下面の圧力差の緩和が

作用したものと考えられる.つまり,ねじれフラッタータイプの本断面とはフラッター特

性が異なるもの色考えられる.ただし,今回の検討は,ある特殊なグレーチング形状や配

置によるものであり,グレーチジグの配置,充実率等を変化させることによっては空力特

性も変わる可能性も考えられる.

また,下面スタビライザー〈対策①)を設置すると,何も対策をしない実橋想定断面よ

りも若干ねじれフラッタ}の発現風速が高風速側に移り,耐風性の改善が見られる.しか

し,目標とするフラッター照査風速には及ばないことがわかる;一方,中央高欄にセジタ

ーバリアを設置した断面〈箱桁断面Bタイプ (8=100

))が5 これら 3つの対策断面のな

フラッター照査風速をクリアさせているかで最もフラッ、夕一発現風速が高風速側に移り,

2節で述べた橋梁付属物を設置していないセンターバリア

付き断面でも正迎角で耐風安定性が向上したことと対応する.

フラッター照査風速

~. 中央高欄センターバリア

ブド~シー\

/ 1

:. I

ロロ-

B

・s・-.g・・・

aa--f

{zziz--出・22・2副nM

Vr=4.3 (Vcr=79.2m/s)

0: TypeB基本断面

ム:Type B 鉛直ス9ピライザ一口:TypeBゲレーチンゲV: Type B センターバリア

α=+6 [deg.]

4.0

3.0

下面スタビライザー

ことがわかる.このことは6.

φ[deg.]

-5.0

2.0

基本設計(8=100

)

W.OV [m/s]

9 V/fB

耐風対策を施した端2主桁断面の自由振動応答特性(ねじれ 1自由度, α=+60

. )

161

9.0

8

8.0

7

7~O

6

6.0

5 4 3 2

o

図6司4・10

1.0

0.0

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以上より,本節で実橋を想定した端2主桁断面の耐風性評価の結果,実橋想定断面にお

いても下フランジを傾斜させることは,その耐ねじれフラッタ一性能を向上させる上で有

効であり,さらに,ねじれフラッターに及ぼす橋梁付属物の影響は比較的小さいものと考

えられる.また,端2主桁断面の中央部にグレーチングを関口させることで断面上下面の

流れ場を改善させても,その耐風性改善の期待は薄いことが考えられる.さらに,端2主

桁断面の断面中央にセンターバリアを設けることで,実橋想定断面においても正迎角での

耐風牲を向上させるt空力制振対策として有効な方法のーっと考えられる.ただし, 6. 2

節でも述べたようにセンターバリア設置による抗力係数白の増加に注意が必要である.

162

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6. 5 端2主桁断面の経済性に関する一考察

橋梁の形式を選定するにあたっては機械的に選定するのではなく,より多くの設計要素

を考慮した上で,最終的に選定しなければならない.主な設計要素としては道路線形や橋

長,スパン割や橋脚の位置,安全性,美観および、経済性などが挙げられる.さらに近年で

は耐久性やライフサイクルコストなども重要視される傾向にある.戸般的にある計画され

た橋梁の径間長に対しては,これまでの経験に基づいて,標準適用支関長に対する橋梁形

式の中からある程度の形式候補[11]を選ぶことはできる.しかしながら,先に挙げた選定要

素の全てを考慮して総合的に判断をすることが重要であると考えられる,

本節ではこれまでに述べてきた端2主桁断面を有する長大斜張橋の経済性について,こ

れまで一般的に長大斜張橋に適用されてきた鋼床版ー箱桁との建設費{上部工工事費)を

比較することで,その経済的な有効牲について一考察を行う.対象とする端2主桁断面は

前節で耐風性評価を行った箱桁形式の実橋想定断面とする.

斜張橋の適用が可能な経済範囲について,過去には図 6・5・1に示すような中央径聞が

1,200ft--2,000ft (365m--609m)の範囲でー斜張橋が他の吊橋や鋼ゲルバ一橋よりも経済

性に優れているとの報告もあり[12],また,国内では歩道橋を除き, 200m--600mの範囲

で実績が多いように見受けられる.したがって,研究対象としてきた 600m級長大斜張橋

は他の橋梁形式と比べ,十分に経済的な競争力を有する支間長であることが示唆される.

1伺

t弱

t咽

70 1笈淘 1400 1600 18∞ 2200

主径間長 (ft)

図6・5・1 New Orleansバイパス 1-410建設費 (1971年当時〉の橋梁形式別比較[I2]-

163

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また,第1章でも述べたように主桁への合成構造を採用した代表的な合成桁斜張橋とし

て,カナダのAlexFraser橋 (1986年, .4o5m)や中国の楊浦大橋 (1993年, 601m)など

があり,これらの橋は従来の斜張橋建設の建設費に比べ,低コストで建設されたと言われ

ている.実際, Alex Fraser橋は1986年当時,総工費 5,300万ドル(当時 1$200円とする

と約 106億円〉で建設されたと言われ,斜張橋としては異例の安価で建設されている.

そこで,代表的な園内の鏑斜張橋の上部工工事費を道路橋年報[13]から抜粋し,表 6・5・1

にまとめ,合成斜張擦であるAlexFraser橋の工費と比較する.いずれの橋もAlexFra.ser

橋の 2倍以上の建設費を示し,海外橋梁であることや時代背景γ 為替レート,架設工法な

どを考慮しても合成斜張橋が十分に経済的利点を有していることが示唆される.

表6・5・1.Alex Frase:r橋と国内の鋼斜張橋建設費(概算)の比較

橋梁名 主桁形式 im2あた〈比り率の)

エ事費

五lexFraser橋 合成桁{端2主断酉) 1.00

A橋 鋼床版ー箱桁 2.28

B橋 トラス形式 4.66

C橋 トラス形式 4.61

D橋 鋼床版ー箱桁 2.22

E橋 トラス形式 4.04

F橋鋼鋼床床版版ーー箱箱桁桁

3.34

G橋 3.74

H橋 鏑床版ー籍桁 3.89

I橋 鏑床版ー箱桁 3.98

そこで,国内では斜張橋の主桁形式を端2主桁断面にすることで,実際にどの程度の工

費縮小になるのか,国内の積算基準に基づいて上部工工事費の積算を行った.まず,国内

の長大斜張橋の中央径間部などでよく用いられている扇平六角形断面の鋼床版ー箱桁を主

桁形式に想定した斜張橋と,同支間長 (600m)を有する合成2主箱桁〈端2主桁断面)を

有する斜張橋の2橋について概略設計[14]を行い,概算工費を試算した.また管理費等の算

出には f国土交通省土木工事積算基準(平成 17年)J [15]をもとに算出した.ここで概算工

費を算出するにあたり,いくつかの仮定を下記に列挙する.

仮定

1.鋼床版箱桁は一箱桁断面とし,架空の断面の採用〈最大桁高・有効幅員は同長)

2:主塔形式として両橋とも逆Y型銅製主塔.

3.端2主桁断面の床版はプレキャスト PC床版とする.

164

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4.塗装面積は鋼板の平均板厚よりその塗装面積を算出する.

5.部材輸送方法は両橋とも海上輸送とする.

6.架設工法は雨橋とも片押し架設工法を想定し,両橋とも名港中央大橋で実績のある工

費[13]を参考にする.

これらの仮定をもとに算出した上部工工費比較表を表6-5・2に示す.これらの結果から中』

央支関長 600m級鏑斜張橋の主桁形式を端2主桁断面にすることで,全体工費で鋼床版ー

籍断面と端2主桁断面との比が Q.75,つまり,およそ 25%の合理化が見込まれることが明

らかとなった.海外の橋梁設計でWeirton-Steubenville橋 (1990,アメリカ,中央支関長

249.9m, 1桁断面)について公示された工費[16]によると,同じような比較検討の結果,そ

の比は0.61,横山らの試算[17](中央支関長410m,1桁断面)では0.69と今回の試算とで

は若干の開きがある.これは支間長や幅員,比較対象とする主桁形式や想定する架設工法

などの違いによるものと考えられるが,今回の試算においても端2主桁断面の長大斜張橋

への適用における優れた経済性を確認することができた.

一方,架設工費は実際の架設現地の状況によっては単部材で輸送・架設する方法や大型

フローテイングクレーンによる大ブロックで架設する工法など,主桁形式により架設工費

は実際のものと異なることも予想される.さらに,鋼重ミニマムとした最適桁高などの検

討を行うことによっては,さらなる合理化がはかられるのもと考えられる.また,主塔に

コンクリートを用いた混合構造にしたり,主塔の発生断面力を小さくする目的で側径聞に

中間支点を設けたりするなど,さらなる合理化構造の提案によっては,さらに経済牲を向

上させることも可能であると考えられる.したがって,上部工のみならず,下部工,基礎

工などを含めたトータルの設計・製作および、架設に至る各段階において合理化を追求し,

建設コスト最小となる建設計画を立案することが重要である.

165

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表6サ 2 合理化桁と従来の鋼床版箱桁の鋼重と概略工費(上部工)比率

線一車一3

一)-O

盟団側一

ω

I‘一411・

nL

線一車一

PC床版(厚30 0 1ns1) 鋼床版

逆Y型銅製主塔 逆Y型銅製主塔

SM400/SM490Y SM400

SM490Y、SM570 SM490Y、SM570

HiAm&DINAアンカ}ケ}プル HiAm&DTNAアンカ}ケーブル

バランシング架設工法 バランシング梨設工法

4.963 ( 0.294) 16.868 ( 1.000 )

4,526 1. 174 ) 3.956 (J.OOO) 2.667 (1. 022 ) 2.609 ( 1.000 )

12.155 ( 0.521 ) 23,332 ( 1.∞o ) 34,904 一0.832 1.000 0.630 1.000 O. 750 ノ 1.000

車線数

橋長 (m)

中央支関長 (m)

有効幅員 (mm)

断面形式

断面図

,。。ド品 床版

主塔

主桁

主要使用部材 主塔

ケ}プノレ

架設工法

主桁

鋼重(t ) 主塔

ケーブル一合計

PC床版(m2)

工場製作概算費比率

概算架設工費比率

概算総上部工工費比率

合成2主箱桁(端2主桁断面)

L3JlOO

?~制u戸二λ口;λJJCaJU口.J.Uれ穴箇凶ペ竺醤てでr刈r

「平) -1 陪惇i盟ー己』且Qi.

iQ旦凶

鋼床服箱桁-

川J ρ川口m叩口∞峨0以r._~円…叉一j…一一色噛叫吋……鍾幽町恥………醤町山……t付一一一+叫叩一白m山n川阿一 Irl 1

一 、一

|伶〈令4令ゐふモ斗J] ~I -Ij I 口、,1t 口 |川j以d州

弓 17mn| ム 1.. 7nnn r.~~~ 1

※概算総工費の中に下部エエ費は含まない.※( )内は鋼床版箱桁を 1とした場合の割合.

※PC床版はプレキャスド床版を使用し,製作,架設および輸送は架設工費に含まれる.

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<参考文献>

[1]社団法人日本銅構造協会:構造物の耐風工学

凶土木学会:橋梁の耐風設計一基準と最近の進歩-, 2003.

[3] Scanlan, R.H.," Belveau, J.G. andHudlong,K.8.: IndicialAerodynamic Functions for

Bridge Decks, Journal of the ~ngineering Mechanics Division量Proceedingsof A8CE.,

Vol.I00,EM4,August, pp.657・672, 1974~ ぺ

[4]松本 t 勝,小林裕輔,浜崎博:構造基本断面における連成フラッターの発生機構に関

する研究,第 13回風工学シンポジウム論文集, "pp.359・364;1994.

[5]社団法人日本道路協会:道路橋耐風設計便覧,平成3年 7月

[6]松本勝,伊藤裕一,八木知己,徳元真ーし自,丙基,白土博通,白石成人:音響刺激

による橋梁断面の剥離せん断層不安定性増幅に関する研究,京都大学防災研究所年報,

第 34号, H-l,平成3年 4月

(7]阪神高速道路公団:東神戸大橋工事誌 '(5号湾岸線), 1994.

[8]後藤和夫,松本勝,吉住文太,薮谷忠大,阿部和浩:並列矩形断面のフラッター特性,

日本風工学会誌, No.71,pp.l73・174,"1997.

[9]例えば,麓興一郎,秦健作,楠原栄樹,平野茂,大廻聡:こ箱桁断面の耐風安

定牲に関する検討,土木学会第57回年次学術講演会概要集, pp.975・976,平成 14年9

小川一志,下土居秀樹,野上千秋:2500Iil級超長大吊橋への適用を想定した2箱桁断

面の空力特性,第 15回風工学シンポジウム論文集, pp.431・436,1998.など.

[10]橋梁と基礎ー斜張橋特集-1978.8

[11]社団法人日本橋梁建設協会:"01デザインデータブック, 2001.

[12]九州大学出版会;斜張橋の設計と施工

[13]社団法人日本道路協会:道路年報

[14]例えば,日本電子計算株式会社:鋼斜張橋概略自動設計ω8P5ω など.

[15]国土交通省土木工事積算基準(平成 17年)

[16] Cable-stayed bridge job bid 36% under estiniate, Engineering NewsRecord, 8ept.15,

1983, 8.16

[17]横山功一,日下部毅明,若狭忠雄,大場誠道:二主桁合成床版を有する斜張橋に関す

る総合的検討,構造工学論文集, Vo1.38A, pp.1153・1160,1992.

167

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第7章結論

これまで長大斜張橋に適用する端2主桁断面 (Edge"Girder)の空力特性を中J心に研究・

調査・検討を行ってきた.そこで得られた結論を以下にまとめる.

【端2主桁断面 (Edge"Girder)の基本的空力特性】

1. H型および矩形断面と比較した上下非対称断面 (EdgeGirder)の振動応答特性

同じ断面辺長比 BIDを持つ端2主桁断面では,ねじれおよびたわみ渦励振の発現風速

が矩形断面と一致する.このことは渦の流下速度が矩形断面と同じで,剥離せん断層から

生成される渦の構造が比較的矩形断面のそれに近いことが示唆される.

2.端2主桁断面の基本的な空力振動特性

同じ断面辺長比 B/Dを持ち,下面からの剥離位置があまり変化しない端2主桁断面に

おいて,主桁形状の変化がねじれフラッターに及ぼす影響はあまり大きくないことが考え

られる.一方,主桁位置を少し内側に設置するだけで飛躍的にねじれフラッターの発現風

速が上昇し,空力的に安定化する.

【端2主桁断面 (EdgeGirder)の渦励振およびフラッターの発現機構】

3.π型断面における渦励振特性に関する考察

自己励起型渦励振の発現風速から, π型断面では主桁間隔を幅員 Bとしたときに渦励

振の発現風速が決定付けられる.これは下面からの剥離渦が支配的に影響を及ぼしている

ためであると考えられる.

4.上下非対称断面 (EdgeGirder)におけるフラッター特性に関する考察

非定常圧力特性からπ型断面において,断面上下面後流側に存在する励振力がねじれフ

ラヅターの発生要因と考えられる.また, π型断面は上面が矩形断面と,下面では H 型

断面と類似した特性を示す傾向にある.したがって,両方の特性が混在することで、π型断

面としての振動応答が決定付けられるものと考えられる.

5.端2主桁断面におけるフラッター特性に関する考察

主桁を内側に配置することで,フラッタータイプが変化していることがわかる.これは

168

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張り出した床版形状により,前縁からの剥離せん断層の再付着点が前縁側に移動し,局所

的な剥離バブルが形成されたためと考えられる.

また,さらに主桁を内側に配置したときには逆にフラッタ一発現風速が低下し,空力的

に不安定化する.

【耐風設計から見た斜張橋の力学特性】

6.マルチケーブルの斜張橋全体剛性への寄与率に関する考察

斜張橋の場合,それを構成するケーブルシステムが圧倒的に全体の剛性に寄与している.

このことにより,耐風設計の観点からは主桁を平板橋造として適用することも考えられる

が,実構造においては主桁に作用する軸力による横倒れ座屈など、の座屈が問題となる.

7.適用可能支関長

中央支関長,主桁位置およびフラッタ一発現風速の関係を明らかにすることで, Edge

Girderの各支関長におけるフラッター性能を明確にし,今後の合理化桁斜張橋を計画す

る際の有効な耐風基礎データを示した.

【端2主桁断面 (EdgeGirder)の長大斜張橋への適用性】

8.空力特性に基づく合理的な市j振対策

水平/鉛直プレートの設置や下フランジを傾斜させることが耐フラッター性向上の観

点から有効である.特に下フランジを傾斜させた断面では,主桁を内側に配した断面と同

じ空力的な効果を有するため,ねじれフラッターが安定化したものと考えられる.また,

実橋を想定した断面においても下フランジを傾斜させることは耐ねじれフラッター性を

向上させる上で有効である.

9.端2主桁断面の経済的な効果

端2主桁断面の経済的優位性について,従来からある鍋床版1箱桁断面と経済比較して

評価した結果,中央支関長 600m級鋼斜張橋では,上部工全体工費の約 25%程度の合理

化が見込まれる.

169

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謝辞

本論文を完成するにあたり,多くの方々から御指導と御助言を賜りましたことに感謝の

意を表します.

筆者は小さいころより橋という構造物に憧れを抱き,平成六年の大学四回生から本格的

iこ橋梁の耐風工学・風工学という大変興味深い学問について勉強することができました.

‘以永,京都大学大学院工学研究科松本勝教授には学生時代だけでな<,住友重機械工

業株式会社入社の御世話をT買いた後も,本論文を主テーマとした研究に終始御指導を賜り,

風工学の基礎から最先端にわたる薫陶を賜るとともに研究への姿勢や社会人としての心得

に至るまで,格別の御指導と御教縫を賜りました.さらに本論文の肴手から研究計画,実

験結釆に対する考察,とりまとめに至るまで,終始熱心な御指導と,御教示を賜りました.

浅学な著者が本論文の完成に至ることができましたのもひとえに松本勝教授の格別な御

指導と暖かい激励によるものであります.ここに記して深甚なる感謝と御礼を申し上げま

す.

また,本論文に対し,京都大学防災研究所 河井宏九教授,京都大学大学院工学研究科

田村 武教授,同 二三生教授,宮川重章教授より貴重な御意見,御指導を賜りました.

ここに記して深〈御礼申し上げます.

京都大学大学院工学研究科白土博通助教授には本論文の実験方法や解析手法に関する御

指導のみならず,機会あるごとに有益な御意見,御助言を頂きました.i家〈感謝を申し上

げます.

京都大学大学院エ学研究科八木知乙助手には風洞実験の遂行にあたり,著者の素朴な疑

問や質問にいつでも快〈応じて頂き,的確な御助言を頂きました.厚〈御礼申し上げます.

また,京都大学大学院とL学研究科社会基盤工学専攻橋梁工学分野での実験にあたり,こ

れまで数多〈の関係各位および諸先輩方,学生諸氏には多大なるご助力と御協力を頂きま

した.こころより感謝と敬意を表します.

最後に本研究に添い御理解と御支援を頂きました,鉄構機器事業部 清家康彦事業部長,

企画室 山本孝雄理事,技術本部 武内隆文部長をはじめ,鉄構機器事業部堀重雄主席

技師,河野安龍邦長ほか,イ主友重機械工業株式会社の関係各位に心より感謝申し上げます.

170

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Appendix

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Appendix

【耐風対策模型および実橋想定模型】

本研究で対象とした模型は,第2章でも述べたように縮尺率1/100とし,床版端部に主

桁を 2本配置する端2主桁断面である.床版として用いた断面は高さ(厚さ)d=5mm,幅

(幅員)B=300mm,断面辺長比B/d=60となる矩形断面を用いた.その床版の端部に以下

で説明する主桁を設置した.

本実験で対象とした基本断面は,図A-l(a)(本文:図2・3・1)に示すようなI桁の他に図

A-l(b), (c)に示す箱桁,円柱桁である.主桁位置を床版端から主桁中心までの距離cで定義

する.床版厚・上下フランジ厚を含む高さを桁高Dと定義する.1桁断面は断面辺長比BID=3,

5, 6.7, 8.6, 10, 12.5の6種類を用意し、箱桁断面は断面辺長比 BID=5,8.6, 10, 12.5

の4種類を用意した.フランジ幅はそれぞれ 60mm,36mm, 30mm, 24mmである.主

桁位置cはc/B=0.013~0.300 (4mm~90mm) まで段階的に変化させた.

B

(a) 1桁断面

む:-〔 -h .....-

f住-c

(d) 1 桁断面(BID=3~12.5)

B

dE民B

c

(b) 箱桁断面 (c) 円柱桁断面

(e) 箱桁断面(BID=5~12.5)

図A-l 本研究で使用した模型断面(基本断面)

耐風対策として図 A-2に示す鉛直プレートを用意した.その形状は,高さ(模型長さ)

は 10mm,20mm, 40mmの3種類である.いずれも木製の板を使い,充実率は 100%であ

る.また,便宜上,本論文において床版中央部上面に設置した鉛直プレートをセンターパ

一付.1一

O

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肝川口

』ド百川H凸

リア,下面に設置した鉛直プレートをパッフルプレート(写真A-l)と呼ぶことにする.セ

ンターバリアの高さを h,パッフルフレートの高さを Sで定義する.

ー-~-bB

日h

叫B

B

,,↓dτHロ

ーl主B

(a) 1桁断面白!D=O""1.333) (b) 1桁断面(s!D=O""1.333)

図A-2 本研究で使用した模型断面(センターバリア,パッフルプレー ト)

写真A-l 本研究で使用した模型(パッフルプレート)

また,同じように耐風対策として図 A-3で示す水平フ。レートを用意し,幅(張り出し部

分)は 15mmあるいは 25mm,厚さは1.0mm,長さは模型長(橋軸方向)に合わせた 298mm

で長方形鋼製薄板の 2種類である.それぞ、れの水平プレートは模型断面の床版端部もしく

は下フランジ外側にそれぞれ設け,便宜上,本論文では模型断面の床版端部に設置した水

平プレートを上部水平フ。レート(写真 A-2),下フランジ外側に設置した水平フ。レートを下

部水平プレートと呼ぶことにしている.上部水平プレートの長さを e,下部水平プレートの

長さを e'で定義する.

一付.2-

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B

性B

L D ー噌+汁i羽l一←c一一 D 『R斗e尚ιl一J

(a) 1桁断面白!D=0---1.333) (b) 1桁断面(s!D=0---1.333)

図A-3 本研究で使用した模型断面(上部水平ブ9レート,下部水平プレート)

写真A-2 本研究で使用した模型(上部水平プレート)

さらに、図 A-4(写真A-3)に示すような下フランジを傾斜させた I桁および箱桁も用意

し,その角度は0と定義する.1桁断面は 30。と 450

の2種類を,箱桁断面は 150

, 30。

および 40。用意した.以下,下フランジ角度付き断面と呼ぶ.その桁高は断面辺長比 B!D

=10となるように決定した.つまり,風からの見つけ幅が一定となるように上下フランジ

厚を含む主桁高さを 25mmとした.

B

ヰ主B

叫」口ヰ主人。

(a) 1桁断面(e=0---450

) (b) 箱桁断面(e=0---400

)

図A-4 本研究で使用した模型断面(下フランジ角度付き断面)

一付.3-

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(a) 1桁断面(8=450

) (b) 箱桁断面(8=150

)

写真A-3 本研究で使用した模型(下フランジ角度付き断面)

高欄や中央分離帯といった橋梁付属物の影響を調べるために,床版上面中央に充実率

100%のセンターバリアを幅員方向の中央に設置した.高欄形状は2種類を用意し,一つは

充実率 100%の高欄を,もう一つは充実率 67.5%の高欄を床版上面端部に設置した.それぞ

れ壁高欄・ポスト高欄(図A-5) と呼ぶことにする.

CコC'I

。.HH

0.トHト×。H

務務~務勿~後務後後修復後 一塁

多=* ~物後務勿ク物多勿物勿後~ ~

CコC'I

~I 床版 問 19.0 .1

(a) ポスト高欄 (mm)

床版

(b) 壁高欄 (mm) (c) センターバリア (mm)

図A-5 本研究で使用した橋梁付属物 (mm)

一付.4一

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模型本体は,表面が木製であり,軽量を保ちつつ剛性を確保するため内部はカーボンフ

ァイバー製である.模型の両端には,気流の 2次元性を確保するために端板を設けてある.

端板は木製であり内部はジェラルミンにより補強されている.

風洞内に設置された模型を写真A-4に示す.

写真A-4 風洞内に設置した模型

本研究では上記で述べた基本断面の他に実橋を想定した断面で風洞実験を行っている.

ただし,図A-6および、写真A-5に示すような実橋想定断面模型は,その縮尺率を 1170とし

た2次元剛体模型である(本文:図 6・4・3).

織尺・ 1/70

48.6

142..9 142.9 主」箱桁 Aタイプ <e,o.)

箱桁Bタイプ{ド10・}箱桁cタイプ<e,20・)

図A-6 実橋を想定した主桁形式の模型断面

一付.5一

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主桁形状には下フランジの傾斜角度を変えた 3種類の箱桁断面を用意し,その下フラン

ジの傾斜角度を基本断面と同様に 0で定義する.下面設置角度。 =00

(水平)を箱桁Aタ

イプ,e =100

をBタイプ,e =20。を Cタイプとそれぞれ呼ぶことにする.また耐風対

策部材として箱桁内側から鉛直プレートを設けた下面スタビライザー,中央分離帯には中

央高欄センターバリア,床版中央には充実率 45%のグレーチングを考案した(写真 A-6).

具体的な耐風対策部材の設置状況は第6章で示す.

写真A-5 風洞内に設置した模型(箱桁Bタイプ)

(a) 下面スタビライザー (b) 中央高欄センターバリア (c) グレーチング

写真A-6 各種空力制振対策の設置概要

一付.6一

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【風洞】

本研究では京都大学大学院社会基盤工学専攻に設置された室内回流式エッフェル型風洞

(測定部高さ 1800mm,幅員 1000mm,測定部全長 6550mm)以外にも,実橋想定断面を

用いた実験において、写真 A-7に示す住友重機械工業(掬所有の風洞を用いた.本風洞はゲ

ッチンゲン型回流式風洞(測定部高さ 3000mm,幅員 2000mm,測定部全長 15000mm)

であり,風速は O.3m/s""'50m/sの範囲で連続的制御が可能である.いずれの風洞も 「本州

四国連絡橋風洞試験要領(2001)Jに示された,風速分布の偏差i:1%以内,乱れ強さ 1%以

内の基準値を有効測定断面内で満足させる性能を有している.また、いずれの模型も風速

閉塞率は 5%以下であり,その他模型寸法条件は同じく 「本州四国連絡橋風洞試験要領

(2001)Jに示される基準値内に設定して実施した.

写真A-7 風洞(住友重機械工業株式会社)

一付.7一

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【非定常空気力測定実験の概要】

非定常空気力測定には模型両端に取り付けたロードセルとともにたわみ・ねじれ各 1自

由度強制加振を行い,揚力・モーメントを直接測定した.実験装置の概要と実験装置状況

を図 A-7に示す.たわみおよびねじれ加振とも, 1.3Hzとし,たわみ変位は 2η0=20mm,

ねじれ変位は 2ゆ0=4.0。で実験を行った.風の傾斜角(迎角α)は0。および::1::3。とした.

空気力による揚力・ピッチングモーメントは,有風時の揚力・ピッチングモーメン トか

ら無風時の揚力・ピッチングモーメントを差し引くことで評価できる.この差し引きは,

AID変換器(前出)により数値化された信号を用い,電算機により有風時・無風時におけ

る変位の信号のタイミングを合わせることで処理した.また,無風時に測定される力は慣

性力に対応するので,この慣性力信号と変位信号とのずれを位相差補正値として用いた.

WmdTunnel

Wind

図A-7 強制加振実験用模型加振実験装置の概略図と実験装置状況

-付.8-

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【ポテンシャル理論による非定常空気力係数】

非定常空気力を解析的に求める際に,平板や薄翼では流れの剥離がみられないことから

ポテンシャル理論の適用が可能となり,航空工学の分野において作用する空気力について

解析的な研究が行われてきた.航空工学における解析的研究の代表例として,図 A-8に示

すな微小一定振幅のたわみ・ねじれ2自由度調和振動を行う 2次元平板翼の非定常空気力

が挙げられる.これは,ポテンシャル理論の適用により解析的に求められる数少ない例で

あり, T. Theodorsenによって求められた.概略すると,平板翼周りの流れを翼上下面のわ

き出し・吸い込みによる無循環流れと Kuttaの条件を満足する循環流れの重ね合わせで表

現し,それぞれの流れによる空気力を足し合わせることで非定常空気力を求めるというも

ので,次式のように与えられた.ただし,ねじれ変位の中心は弦長中央点としており,た

わみ変位も弦長中央点における変位としている.

bゆL == -xpb

2(Vれの-2:n:p bV C(k)(Vれが15)

bゆ b2 92 .b φM = -xpb

2(V一+一一)+xpbJ!.VC(k)(Vtt+η+一)28' 2

(A.l)

ここで C(ωは, Theodorsen関数と呼ばれる複素関数であり,複素平面上で図A-9に示さ

れる軌跡を描く.なお,厳密な値はHankel関数によって与えられる.

H1仰(k)C(k)=m m =F(k)-iG(k)

H1

W (k)+iHoW (k)

(A.2)

ただし, Hヤ(~ (釧ま第二種Hankel関数を表す.

式(A.I)からたわみ・ねじれの2自由度振動をする平板翼に作用する非定常空気力は,各

振動変位・速度・加速度の関数として表され,しかも微小振動を仮定しているため線形関

数となっていることがわかる.また,非定常空気力が連成項を持っていることもわかる.

この達成項の存在が平板のフラッターにおいて重要な役割を果たしている.C(k)は準定常空

気力と非定常空気力の比を表している.ここで, Theodorsen関数が複素関数であることか

ら,非定常空気力は準定常空気力より位相が遅れることになり,この位相の遅れが平板の

連成フラッターに大きく影響している.

式(2.14)(本文中)と式(A.l)より,慣性力を無視した場合には2次元平板の非定常空気力

係数Eて Aiベ'i=I~4)が次式で表される.

一付~9一

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2$ (1 . F(k) G(k)) u * _ 2$( F(k) -L G(k)' u * ..,. _ 2n. r:flr、H1 ヲーF(k),H2 =~-~-l;+-;-'--k'J , H3 =-Tlk+2) , 11 4 τlT~K)

イうF(k),A2'=; (-~ +乎75F),←;(乎+苧),A;ヤ(k)

(A.3)

ここで Fな), G(kね Theodorsen関数の実部,虚部を表す関数である (αk)==F砲)-

iG,ω).式(A.-3)を見ると2次元平板の場合には, 8個の非定常空気力係数が全くの独立で

はなく, Theodorsen関数の実部 FなJと虚部 G(k初 2つの実関数で相互に結びつけられて

いることがわかる.

X

Theair品ilmovl田 inverti,回1franslation 1/ (1) and

ro旬tesabout組 a:xisatX=.wthroゆ anangleφω.

All quantiti.es positive as shown. If 1/ and φare

restrictedωsimple harmo国C佃 cillations

( 1/,φ)=( 1/ (JI' φ。)exp(iωt),

the lift forceW and血.emomentaboutan axa at

x=ョbωa伺 nbe writ包nas剣lows.

L= 一中刷材ν2

M 叩 b2f,μa劫lJijか←い-vグv吋7(ι1柳 -J(1ぱ}叫lれ匂b2VC(.仰:k)除(いa+1)14+V944)b4)

'2 '8' . l' Z' I L.

Where, p: the air density k: reduced企equency(k=bω/ηω:circu1紅金equencyCイ'k):Theodorsen's function

図A-8 振動平板に作用する空気力~

一付.10一

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0.2 0.4

F(k)=Re[C(k)]

1¥¥

k一歩+α3。

-0.1

-0.2 k=0.2

C(k)= F(k)+iG(k)

i : Imaginary Unit

-0.3 G(k)=Im[C(k)]

図A-9 Theodorsen関数C(ω=F(ω-iG(ωの複素平面表示

協陸崎臨骨院院陵際防防臨除「民登

一付.11一

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【Step-by-step解析法 (Heavingbranch)】

本文〈第2章)ではStep.by.step解析法のうち、ねじれ分枝における Step.by-step解析

法について述べた。ここではねじれ分校と同様にたわみ分校における Step.by.step解析法

について、以下にその手法を示す.

構造減衰のない有風時のたわみ振動の運動方程式は,ねじれ振動がない場合,本文にお

ける式(2.14)(本文中}より下式のように表される.

mij+久世=pb2ωFH1*rj+ pb2ωF2HJη

ただし,向。:たわみ固有円振動数

式(A必の右辺を左辺に移項する.

れ(一坐ごω'FH1*)iJ+(ω02一坐ごωp2H4)q=0 m m

とこに η:たわみ変位〈下向き正入場:たわみ速度、考:たわみ加速度,

ωη0:たわみ固有円振動数, ω:フラッター振動数, ρ:空気密度,

b:半弦長 m:単位スパンあたりの質量

(Aρ

(A.5)

また 1自由度たわみ振動する物体の運動方程式は,強制外力のない場合は一般に下式

のように表される.

ギ+2{;'ηωηり+ωη2η=0 (A.6)

ただし, c;7j:たわみ振動の減衰定数、 ωη:減衰無し(ら,=0) とした場合のたわみ振動数

式(A.5)と式(A.ωの比較より,

ら一一件以)ω正一 ω~ =~{い(匂山:}~-{;.')

ただし、 ω二:減衰有りとした場合のたわみ振動数

(A.7)

たわみ1自由度振動の場合,このらが負となる時,すなわち EるうOの時フラッターが発

一付.12一

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現する.一方 2自由度連成系においてはこのたわみ振動による達成項の空気力が作用し

て,ねじれ振動の運動方程式は次のようになる.

pb3 "-_ A OO.!ρb3z , pb4..ρb

4

ゆ +ω~o~ø = ("; )ωFAtη+(一子)ωF'"A4η+(一子)ωFA29+(-r)ωF'"A3O (A~8)

ただし, ω'{IJ:ねじれ固有円振動数

式(A.8)の右辺を左辺に移項して,

pb4-2pb48pb3.. 並12ゆ+(-7-ωFA2-)O+(ω;0 1 ωF 2A3oO)Oベヲー)ωFA1q+(IMFAη (A.9)

ここに,ゅ:ねじれ変位(下向き正),争:ねじれ速度,ゅ:ねじれ加速度

ω'{IJ :ねじれ固有円振動数,1:単位スパンあたりの慣性モーメント

また 1自由度ねじれ振動する物体の運動方程式は,連成項の空気力が外力として作用

すると考えると下式のように表される.

.2.L rpb3 "-_ A....:.. fpb

3

φ+2{;j6ω'i tþ+ 叫ゆ=(一一)ω'F~-1j +(一一)ω'F"'A4η" ". ". "1"-" "1 (A.lω

ただし, ~/:ねじれ振動の減衰定数、 ωJ: 減衰無し (~/=O) とした場合のねじれ振動数

式(A.9)と式(A.I0)の比較より,

C正必o.(件沖;χイ作ヤ~FバA= 2ω4

lOo

ただし、 ω}':減衰有りとした場合のねじれ振動数

ここで,たわみ変位をη=写sinωηtのようにおくと,たわみ速度は次式のようになる

場=ωJ∞sωηt=ωη写sin(ωηt+900

)

一付.13一

(A.l1)

(A.12)

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式(A.7)の外力による定常応答の振幅は式(A.12)より

pb3 "-_ A *_! • f pb

3 "-_ 2 ・ pb

3

(7ー)ωFA14+(7-MFAJ=7-ωF(ωFA4 sinω',l+叫A1∞sω'It)if

=千叫Jω(A.13)

ここでL1はたわみ変位下向き最大から,たわみ振動によるモーメント最大までの位相

遅れであり;. Llは次のようにあらわされる。

A=刷 -1l-2生)lω'FA4 J

ωsa=ωpA4 .. sina=ー 叫4-

~~ω'FA~*j+(1ω~~*>2 ~い'FA4*j +({J)'I~γ (A.14)

式(A..13)の右辺の外力による定常応答を速度同相成分ttlと変位同相成分併に分けて考え

る.

( 1 )速度同相成分

pb3

fJl +2らω'#Øt +ω';~~Øt = (r:>mFA,.円可s並(ω''lt+90~)

I

これを解くと,次式が成立する。

(竿)ω'Ft>>fJA;写t/J,.=, 今今 =8面(ω~t+90~ -0)

(ω'# -叫γ+4{;/ωJ叫z

(A..15)

(A.16)

ここで, 8はたわみ振動によるモーメント最大からねじれ変位最大までの位相遅れでありも

oは次のように表される。

2(;,:ω.ω 0= t組吋二#;)

ω; ーωq

ω6・2-at,22Ca.ω'.ω"C080=

~~.,

. 8mO =--;~ ~ '1

(ωJ2一句γ+4EJ2ωJ

そこで, 7 4)wFt>>., ~Îiï とおくと、次式が成立する。. ~

J~ωf-ωJ)24J2afωJ

ーイ寸.14一

(A.17)

(1¥.18)

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Alう0のとき,Ol =o1 sin(ωηt+90--8) = o1 s恒(ωηt-81) 81 =8_900

Al*<Oのとき,仇 =O1Sin(ωηt+900

-8-1800

)=its泊料ηt-81) 81 =8+900

(A.19)

ここで, 81は速度同相成分の,モーメント最大からねじれ変位最大までの位相遅れである.

(H)変位向相成分

。 pb3;2 + 2らω;;2+ω;"-;2 = e~; )ωF""A.写SlnOJ"t

これを解くと,次式が成立する。

(t)φ'/A:ii 仇==,‘1.勾 sin(ω~t-8)

(ωj-叫γ+4~;.'"旬、2

そこで色7' (4苧)州4必民'O_ = .", ~(,ω.2ω,,/ )2 +4{;・九%2

A4う0のとき ;2=ιsin(ωJーの=ιs担(ω"t-82)

A4宅<0のとき';2=ιs恒(ωi-8 -180)=ιsin~ωηt-82 )

(A.20)

(A.21)

(A.22)

。2=882 =8 +180 (A.23)

ここで, 82は変位同相成分の,モーメント最大からねじれ変位最大までの位相遅れである.

以上より,ねじれ振動の定常応答例まゆ=仇+;2=長sin(,叫t-8計 ιs同町t-82)となり,たわみ

変位最大からねじれ変位最大までの位相遅れ桝ま,lJ'=.1+8と表される.

次に,このねじれ振動が再びたわみ振動の方に連成項として働く場合を考える.

pb2

"¥,,_ 0' . ...:. . rpb2 "¥-__ 20' ._ . rpb

3 "¥__ 0' ・・ pb

3 L_ 2 η+ω布。 η=(一一)ω'FHl~iJ +(一一)ω'F

2H4η+(一一)ω'FH 2-(仇+仇)+(一一)ω'F"'H3(,仇+{J2), (A.24)

m m m m

式(A.24)の右辺第3項以降を展開じ、血ω_t=!L ωω_t=-.Lを代入すると、次のように表-η ・7Jω,

される。

一付.15一

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pb2 "-.rr ._! . /pb

2

η+ω。 η =(一一)ω'pHl 功+(一一)ωIF~H4 ηm m

ρ'b3 L_. u. __. (長,ri___ FI. ;lTJ φ2ri ___ n .;2η}

(一一)ω'FH2 ω~I ~., cω81+T!:.:S恒θz+=-cosoz+て了S泊θ'21

m ・1ηω " η η ω q η }

pb3 L. 2 ・i初 ftri_!_ n . ~η ~rï n:~ a ) +(一一)ω'F'"H31.!ご cos81-=一泊81+て~cos82 -'!:..2"I sin 82 .,

m ηηωqηηω'"

式(A.25)に,式(A.18)、式(A.22)を代入すると,式(A.25)は次式になる。

pb2 L. rr ._! • /pb

2

ii+ωnh=(一一)ω'pHl-iJ+(一一)ωF2H4.ηm m

(沖χx沖グ)

+J-z z d・2 2{叫 ω~H2l(lcos81叫3H~ 怖い叫叫3H;I~.1州一τH;IA4Isi叫尚(ωJ -0.も

)2+4~ø 句 m'1

(尚治匂)J ・ ・ .2

ω伶Fω叫守九1判~イ~Iイ4:tl si叫+叩ω九H2いK判Is討血ωÎI(似ω世 -0.叫も )2+4ら ω叫#0.叫弘

(A.25)

そこで,右辺を左辺に移項したとき,場の係数が連成項を含めたたわみ振動の減衰係数で

あり,この係数が負となるとき連成フラッターが発現する.この時, ωIF=ωηとなり,式(A.26)

は以下のように整理される.

件 ωp(りx件以へ・)2

-jrJ/ 可 {H2ÎAtÎC叫 +H2.~4ÎCOSθ'2 -H31A:lsin81 -H3IA4IS担82}]rj

十引グイ(%)

rJ.2 ωp2(尚治件以)~i ・)2巾司02

ー(ー)ω九二

Ir 、J2

/叫-η';{伊H民H;'市.

一 十ー{うら・)2}イ{%・)(A.27)

2自由度連成系のたわみ振動の運動方程式は下式のように表され,

ij+2~ηω''1 1Î +ωη2η=0 (A.28)

一付.16一

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また,久 =23ZCq 〈δη:たわみ振動の対数減衰率)の関係より,

(~4)ro~..)2 δ戸吋-wJ4(ー)/ 、〆 {H2ï~!∞s lJ1 +H2IA.'1ω叫 -H3IAl!判一H3iA:1血 θz}

山 一十一(;':;)z}ィへJ)Z

となる。そこで、式(A.29)にある係数を次式で表す。

①:Jl'(些こ)m

②: (千叫・)2

{t引ぷ)

(A.29)

(A.3ω

ヤー①IH1• -①②{H2IA11∞s81 +H2IA4*lcos82 -H3lAllsin81 -H3iA:lsin82} 仏.31)

よって,式(A.29)のようにゐが表され,dη,<0の時, IIeaving branchにおいて連成フラツ

ターが発現する.

このように非定常空気力係数間の相関は,たわみ振動(ηmotion)によってねじれ振動系(o

system)にねじれ振動匂 response)が励起され,そのねじれ振動によって同様にたわみ振動

が励起されるというフィードバック系を形成している.解析手願はTorsionalbranchに着

目したStep-by-step解析と同様である.

一付.17一