Title 高齢者における足底感覚と足圧分布および足底接地状態が立位バランス能力に与える影響

Author(s) 建内, 宏重; 市橋, 則明

Citation 健康科学 : 京都大学医学部保健学科紀要 (2008), 4: 25-30

Issue Date 2008-03-31

URL https://doi.org/10.14989/53890

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

京都大学医学部保健学科紀要健康科学 第4巻2007

原 著

高齢者における足底感覚 と足圧分布お よび足底接地状態が

立位バ ランス能力に与える影響

建内 宏重,市 橋 則明

In[lucnccofPlantarSensation,PlantarPressure,andGroundContactCondition

oftheSoleonStandingBalanceintheElderly

HiroshigcTATEUCHIandNonakiICHIHASH]

Abstract:Thepurposeofthisstudywas[oexamine[herelationshipsamongplantarsensa[ion,plantar

pressureandstandingbalanceintheinstitutionalizedelderly.Twdvesubjectsaged83.6ｱ6.4years(5

malts,7females)participatedinthisexamination.Plantarsensorythresholdswereassessedusing

Semmes-Weinsteinmonofilamentsattwelvelocations;theheel,midfoot(medial,middleandla[eral),

fbrc飯}t(mcdial,middlcandlatcraDandnvcし 〔}cs.Thcgroundcてmlactarcac}flhcs〔 ♪lcandlhc

locationofthemaximumplantarpressureandnoncontactregionwereevaluatedCromtherecordingof

dieplantarpressuredis[ribu[ionswhilestanding.Asbalancemeasuremen[s,pathlengthofthecen[ec

ofpressure(LNG)andro帆meansquareareaduringstandingandfhnctionalreachtest、vereeva且uated.

Thelocationsofthemaximumplantarpressurewereheel(7subjects),middleforefoot(3subjec[s),

medialL〕reL〕ot(lsubject)andhallux(lsubjcct).Thenoncontactregionsexcludingthemedial

midfootweretoes(--subjects),middlemidfoot(5subjects),andLateralmidfoot(3subjects).Itwas

showedatendency[hatthelocationoRhemaximumplantarpressurebadhighsensorythreshold,and

[henoncontac[regionhadlowsensorythreshold,respectively.Plantarsensory[hresholdwere

significantcorrelatedwithLNG(r=0.63)andfunctionalreach(r=一 〇.S3).Groundcontactareaof

[hesolewasalsosignificantcorrelatedwithLNG(r=…0.68)andfunctionalreach(r=0.59).This

studydemonstratesthatplantersensationandthegroundcontactareaoCthesolearcimportantCactors

associatedwithstandingbalanceintheelderly.

Keywords:高 齢 者,足 底 感覚,足 圧 分 布,バ ラ ンス

は じ め に

ヒ トが 立 位 で 姿 勢 の 調 節 や 動 作 を行 う上 で,視 覚

系,前 庭 迷 路 系,体 性 感 覚 系 か らの 情 報 入 力 は 重 要 な

役 割 を果 た して い るP。 特 に,立 位 で 唯 一 床 面 と接 し

て い る足 底 部 の感 覚 は,足 関 節 に よ る力3i#fiの 程 度 や

両 下 肢 間 で の荷 重 配 分,床 面 の 材 質 な どの 情 報 を上 位

中 枢 に フ ィー ドバ ッ ク す る 役 割 が あ る と さ れ て お

り2;,立 位 で の バ ラ ンス 能 力 と関 連 が 深 い こ とが 数 多

く報 告 され て い るs'R;。

し か し,体 性 感 覚 は 加 齢 に よ り対 数 的 に 低 下

し9,iO:,そ の 原 因 は 感 覚 受 容 器 の 形 態 変 化 や 数 の 減

少,皮 膚 の弾 性 の低.ド,神 経 伝 導 速 度 の 低.ドな ど に よ

京 都 大 学 大 学 院 医学 研 究 科 人間 健 康 科 学 系 専 攻

〒606-8507京 都.市左 京 区聖 護 院 川 原 町53

HumanHcal[hScienceGraduateSchoolofMedicineKvoto,,,

University

受 稿H2007年 且 月4H

受 理Hzoos年1月23H

る と さ れ て い る1D。 そ れ ら体 制 感 覚 の 低 下 に と も

な って,立 位 バ ラ ンス にお け る制 御 戦 略 も加 齢 とと も

に体 性 感 覚 優 位 か ら視 覚 優 位 へ と推 移 して い く とす る

報 告 が あ り12.13),足 部 に着 目 し転 倒 の リ ス ク フ ァ ク

ター を調 査 した前 向 き研 究 にお い て も,足 関 節 の 柔 軟

性 や外 反母 趾 変 形,足 趾 の 屈 曲筋 力 と と もに,足 底 感

覚 は 転 倒 者 で 優 位 に 低 下 し て い た と報 告 さ れ て い

る1h)。 し た が っ て,高 齢 者 に お け る足 底 感 覚 とバ ラ

ンス 能力 との 関連 性 を調 査 す る こ とは重 要 で あ り,高

齢 者 のバ ラ ンス能 力 改 善 を 目的 と した介 入 に際 して 重

要 な情 報 を得 る こ とが で きる と考 え る。

・方,足 底 感 覚 を提 供 す る足 底 而 に 目を向 け る と,

高齢 者 で は足 趾 な ど足 底 面 の.部 が 接 地 して い ない こ

とが 多 く観 察 され るb'1η 。 この こ とは 即 ち 支 持 基 底

面 が狭 小 化 して い る こ とを示 唆 して お り,足 底 面 の接

地状 態 も立 位 で のバ ラ ンス に大 き く関 係 して い る こ と

が予 測 され る。 また,足 底 と床 面 との 接 触 面 積 が 変 化

す る とい う こ とは,足 底 が 床 面 か ら受 け る圧 力 の 分 布

一25一

健康科学 第4巻2007年

中足部外側

中 足 郵 中央

踊部1 ........・・.一昌".'

.中 足部 内 側

_～ゐ前足部中央

前足部内側

○○

C

第1趾から鯖5趾の底側

図1足 底 感覚閾値の評価 部位

である足圧分布 も必然的に変化すると考えられる。そ

の上,足 圧分布は足底感覚 とも密接な関係にあること

が報告 されている。足底部の感覚を麻酔あるいは冷却

などの方法によって人為的に変化させると,足 圧分布

がそれに対応 して変化することが立位または歩行にお

いて実験的に確認 されている18…21;。

このように,足 底感覚の変化 と足底接地状態および

足圧分布の変化は相互に強 く関連 していることが推察

され24;,そ れらの相互作用が立位バ ランスに影響 を

与えていると考えられるが,そ のような観点から総合

的に解析 された報告はほとんどない。

本研究の目的は,足 底感覚 と足底接地状態および足

圧分布の関連性を調べること,お よびそれらが高齢者

の静的および動的バランスに与える影響を明らかにす

ることである。

方 法

1.対 象

対 象 は,ケ アハ ウ ス に入 所 して お り本研 究 に同 意 を

得 た高 齢 者12名(平 均 年 齢:ss.6±6.4歳,男 性5名,

女 性7名)と した。 なお,明 らか な神 経 学 的 疾 患 や 高

度 の認 知 障 害 を有 す る者,お よび支 持 な しで は 立 位 保

持 が 困難 な者 は対 象 か ら除 外 した。

2.測 定

の 足 底 感 覚 の測 定

足 底 感 覚 の測 定 に は,感 覚 検 査 に用 い られ 簡 便 に定

量 的 評 価 が 可 能 なSemmes-Weins[einMonoftlamen[s

の5本 セ ッ ト(0.0677-47フg)を 用 い た 。対 象 者 は 閉

眼 し,足 底 面 に垂 直 に押 し当 て られ た フ ィラ メ ン トの

刺 激 を知 覚 で きた ら合 図 をす る よ うに指 示 した 。 明 ら

か に知 覚 で きる強 さの フ ィラ メ ン トか ら開 始 して 圧 の

低 い フ.イラメ ン トへ と移 行 し,5段 階 で 感 覚 閾 値 を測

定 した 。測 定 部 位 は 第1-5趾 の底 側,前 足 部 の 内

側 ・中央 ・外 側,中 足 部 の 内 側 ・中 央 ・外 側,踵 部 の

計12部 位 と した(図1)。

2)足 圧 分 布 お よび足 底 接 地 状 態 の 測 定

足 圧 分 布 測 定 装 置(Mcdicaptcurs社 製Win-Pod)を

用 い て 開眼 静 止 立 位 を2〔}秒保 持 した 際 の 平 均 足 圧 分 布

を測 定 した。 足 幅 や 足 角 は任 意 と しで きるだ け 自然 な

立 位 を保 持 す る よ うに指 示 した。 最 大 圧 部 位,接 地 し

て い な い部 位 お よび足 底 接 地 面 積 を求 め た 。 最 大 圧 部

位 お よび接 地 して い な い部 位 につ い て は,足 底 感 覚 測

定 と同 じ12部 位 を基 準 と した。 なお,足 底 接 地 面 積 は

各対 象者 の足 部 縦 幅(踵 中央 と第2趾 先 端 との 距 離)

と横 幅(第1中 足 骨 頭 と5中 足 骨 頭 との 距 離)と の 積

を用 い て標 準 化 した。

3)バ ラ ンス能 力 の測 定

静 的 バ ラ ン ス の 測 定 に は重 心 動 揺 計(Anima社 製

GravicordecG-5500)を 使 用 し,開 眼 閉 脚 立 位 を20秒

間保 持 した際 の実 効 値 面 積 と総 軌 跡 長 を求 め た 。 動 的

バ ラ ンス測 定 と して フ ァ ンク シ ョナ ル リー チ を測 定 し

た 。 フ ァ ン ク シ ョナ ル リーチ の 測 定 は,両 足 を 自然 に

開 い た直 立 位 か ら利 き手 側 上 肢 を肩 関 節 の 高 さまで 前

方 に挙 上 させ,で きる だ け手 を前 方 に伸 ば した 時 点 で

の水 平 移 動 距 離 を測 定 した。 なお,フ ァ ンク シ ョナ ル

リー チ は 身長 を用 い て標 準 化 した。

3.解 析

デ ー タの解 析 は以 下 の 各 項 目につ い て 行 った 。

1)足 底 各 部 に お け る 感 覚 閾 値 の 違 い(Kruskal-

Walks'test),2)足 圧 分 布 お よ び足 底 接 地 状 態 の評 価

(最人 圧 部 位,接 地 して い な い 部 位),3)最 大 圧 部 位

お よび接 地 して い な い部 位(接 地 して い ない 部 位 が 複

数 の 場 合 は そ の 巾 央 値)の 感 覚 閾 値(Wilcoxods

signedranktest),4)足 底 感 覚 閾値(全 測 定 部 位 の 中

央 値),足 底 接 地 面 積,バ ラ ンス 能 力 お よ び年 齢 の 各

鋤1言1

0

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2.師29.糀6n19:

図2足 底 各部位 にお ける感覚閾値

一26一

建内,他=高 齢者 における足 圧分布 と立位バラ ンス能力

表1全 例における足圧 分布 と足 底接地状態

対 象者No,年 齢 性別 最大荷 重部位 接 地 していない部位*

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M

M

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F

F

F

前足部内側

踵部

第1趾

前足部中央

踵部

前足部巾央.前足部中央

踵部

踵音1≦

踵部

踵部

踵部

第5趾

第4,5趾

第5趾

第5趾

第i趾,中 足 部 中央

第s～5趾,中 足 部 中央,中 足 部 外 側

中足 部 中央

第2-5趾

第4.,5趾,中 足 部 中央,中 足 部 外 側

第4,5趾,中 足 部 中央,中 足 部 外 側

第3～5趾

第4,5趾

*:全 例,中 足 部 内 側 は 接 地 して い な か った

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軍;主 剛、中足部内醐は度地していなかコ正

図3足 底接 地状 態 と足圧 分布 の例

変 数 間 の相 関 関係(Spcarmanの 順 位 相 関係 数)

結 果

1.足 底 各 部 にお け る 感 覚 閾 値 を図2に 示 す 。統 計

学 的有 意 差 は認 め られ なか っ たが,踵 部 で は 閾 値 が 高

く,中 足 部 内側 お よび外 側 の 足 趾 で 閾 値 は 低 い 傾 向 に

あ った。

z.最 大 圧 部 位 は踵 部7名,前 足 部 中 央3名,前 足

部 内側1名,第1趾1名 で あ っ た。 全 例 にお い て 足 底

の接 地 不 良 が 認 め られ,接 地 して い ない 部 位 は 巾 足 部

内側 が12名,そ の他 の 部 位 は足 趾 がn名,中 足 部 中 央

が5名,中 足 部 外 側 が3名 で あ っ た(表1,図3)。

3.最 大 圧 部 位 の 感 覚 閾値 は,全 測 定 部 位 の 中央 値

よ りも高 値(7名)も し くは等 値(5名)を 示 した 。

接 地 して い な い部 位 は,全 測 定 部 位 の 中 央 値 よ りも低

値(9名)も し くは等 値(2名)を 示 し,高 値 を示 す

者 も1名 認 め られ た、 最 大 圧 部 位 と接 地 して い な い 部

位 の感 覚 閾値 を比 較 す る と,最 大 圧 部 位 の ほ うが 有 意

に感 覚 閾値 は高 か っ た。

斗.年 齢 は総 軌 跡 長 との み 有 意 な相 関 を 認 め た(r=

0.59)。 足 底 感 覚 閾 値 と総 軌 跡 長(r≡0,63,図4-A),

足 底 接 地 面積 と総 軌 跡 長(r三 一 〇.68,図4-B)に 有 意

な 相 関 を認 め た 。 ま た,足 底 感 覚 閾 値(r=一 〇.83,

図4-C)お よ び 足 底 接 地 面 積(r=〔}.59,図4-D)は

フ ァ ン ク シ ョナ ル リーチ と も有 意 な相 関 を認 め た 。

考 察

立 位 で の 足 底 接 地 状 態 を調 査 した 先 行 研 究 に よる

と,い ず れ か の足 趾 が 接 地 してい ない 割 合 は,5～78

歳 の健 常 成 人 で約2/3is;,16…49歳 の健 常 成 人 の う ち

男 性 で66.0%,女 性 で76.2%16)と す る 報 告 が あ る 一

方 で,65歳 以 上 の健 常 高 齢 者 で も18.3%で あ った とす

る調 査 結 果 もあ る17)。 これ ら調 査 結 果 の ば らつ きは,

足 趾 接 地 状 態 の判 定 方 法 の 違 い や 測 定 機 器 の 相 違 に よ

り生 じて い る と考 え られ る。 本 研 究 で は,足 圧 分 布 を

詳細 に解 析 す る こ とが で きる装 置 を用 い て,平 均 年 齢

が84歳 と さ らに高 齢 の対 象 者 を調 査 した 結 果,い ず れ

か の足 趾 が 接 地 して い な い者 が12名 中ll名(91.7%)

存 在 し,過 去 の報 告 よ り も さ らに高 い 割 合 で 接 地 状 態

が悪 化 して い る こ とが 示 され た。

最 大 圧 部 位 は踵 部 が 最 も多 か っ たが,前 足 部 あ るい

は 第1趾 が 最 大 荷 重 部 で あ る対 象 者 も数 名確 認 され

た 。足 底 圧 は足 部 ・足 趾 の ア ラ イ メ ン トや 可 動 性 との

関 連性 が あ り,第1趾 底 側 の 圧 に は第1趾MTP関 節

の可 動 域 や外 反 母 趾 変 形 の 程 度 が 関 連 して い る こ とが

報 告 され て い る23,29)。 した が っ て,本 研 究 の 対 象 者

にお い て も足 趾 や 足 部 の 変 形 あ るい は可 動 域 制 限 を有

す る者 が特 有 の足 圧 分 布 を示 した可 能 性 が あ る と思 わ

れ,今 後検 討 す べ き課 題 で あ る。

足 底 感 覚 と足 圧 分 布 と の 関 連 に つ い て,Nurse20'

一27一

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健康科学 第4巻2007年

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足 底 接 地 面1R(ｰia)

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足底接地面積w,)

図4足 底感覚閾値 お よび足底接 地面積 とバラ ンス能力 との関連性

so

らは健 常 者 の足 底 部 を部 分 的 に冷 却 し歩 行 時 の足 底圧

を測 定 した結 果,感 覚 閾 値 の 高 い 部 位 で は 足 底 圧 が 減

少 す る こ とを報 告 して い る。 ま た,H翫malainen25}ら

は 実 際 に足 底 の 一 部 に感 覚 障 害 を有 し た患 者 に お い

て,立 位 時 の足 底 圧 が 感 覚 閾 値 の 低 い 部 位 へ と移 動 す

る こ と を示 して い る。 これ らの 報 告 は,足 底 感 覚 閾 値

が 高 い部 位 か ら低 い部 位 へ と足 底 圧 が 変 化 す る現 象 が

み られ る点 で一 致 して い る。 しか し本研 究 で は,踵 部

な ど感覚 閾値 の高 い部 位 で は圧 が 高 く,足 趾 な ど閾 値

が低 い部 位 で は圧 が 低 い も し くは接 地 して い ない 傾 向

が み られ た。 この結 果 は,足 底 圧 の 偏 りが 足 底 感 覚 閾

値 の変 化 に よっ て引 き起 こ され て い ない こ とを示 唆 し

て い る。 つ ま り,加 齢 に よる姿 勢 ア ラ イ メ ン トの 変 化

な ど に よ り足 底 圧 が 変 位 し,そ の 結 果 と して 常 に刺 激

を受 け て い る部 位 の感 覚 閾 値 が 高 くな って い る と推 察

す る こ とが で きる。

足 底 へ の荷 重 刺 激 の 継 続 は腓 股 の 形 成 な ど足 の 問 題

を 引 き 起 こ す 。62歳 以 上 の 高 齢 者 を 対 象 と し た

Menz25〕 らの報 告 で は,対 象 者 の52%に お い て1箇 所

以上 の勝 砥 が 確 認 され てお り,母 趾 や 第2～4中 足 骨

頭 部 に腓 砥 が あ る とその 部 位 で の 歩 行 時 足 底 圧 が 高 い

傾 向 に あ る こ とが 示 さ れ て い る。 ま た 姫 野 ら29;は,

75歳 以 上 の後 期 高 齢 者 を対 象 と した調 査 で,3割 に腓

眠 が 確 認 され転 倒 経 験 が あ る もの で は腓 砥 を有 す る 割

合 が高 か った と報 告 してい る。 しか し興 味 深 い こ と に

は,腓 抵 を除去 す る とその 部 位 の 足 底 圧 が 減 少 す る と

い う報 告 が あ る2R,29,。 こ の こ とは 即 ち,刺 激 の 強 い

部 位 に腓 砥 が 形 成 され る一 方 で,一 旦 腓 砥 が 形 成 され

るとその付属物 を介 して情報を得ようとするためにさ

らに足底圧 を増加 させるとい う循環が形成されている

ことを窺わせる。 したがって,本 研究で対象 とした高

齢者 においても,足 底圧が特定の領域に集中 している

場合 には,当 該部位の感覚閾値の上昇や腓砥の形成と

ともにさらなる足底圧の増加を引 き起こす危険性があ

り,フ ットケアの観点からも足圧分布の評価は重要で

あると考える。

このように,足 底感覚 と足圧分布 との関連性が示唆

されたことにより,機 器を用いなければ測定が困難で

ある足圧分布特性 を足底感覚の検査によって概ね予測

し得る可能性が示唆 され,臨 床での評価 として利用で

きる可能性があると考える。

各変数の相関分析を行った結果,年 齢 とは相関を認

めなかった足底感覚および足底接地面積がバランス能

力と関連することが明 らかになった。足底感覚 とバラ

ンスとの関連性について,横 山ら19)は,足 底部を冷

却 して足底からの情報入力を減少 させた際に,重 心動

揺が増大することを報告 した。Meyerら6)は 足底面の

麻酔 により足底感覚閾値を上昇 させると足圧中心の移

動速度が増加することを示 し,特 に片脚立位や閉眼の

条件では足底感覚がバランスの保持に重要であるとし

ている。また森岡らの報告8〕では,2-92歳 までの健

常者 を対象 として,足 底の二点識別覚は加齢にともな

い有意 に低下すること,二 点識別距離 と片脚立位保持

時間との問には負の相関があることが示されている。

本研究では,そ れらの研究 と同様に静的立位保持での

重心動揺 と足底感覚閾値が有意に関連 していたことに

一2s一

建内,他=高 齢者 における足 圧分布 と立位バラ ンス能力

加えて,新 たにファンクショナル リーチ と足底感覚閾

値 との関連性 も確認 され,動 的な場面においても足底

部の体性感覚が姿勢制御に重要な役割を有 しているこ

とが示唆 された。従来,足 底の接地状況 とバランス能

力 との関連性については,健 常若年者においては足趾

を免荷することによって静止立位時の重心動揺には変

化がないが901,フ ァンクショナル リーチ時の足圧中

心前方移動量は減少する31;ことが報告 されている。

しかし,若 年者 よりもバランス能力が低い状態にある

高齢者においては,支 持基底而の減少がバランス能力

に与える負の影響は若年者 よりもさらに大 きくなって

いることが推察 され,本 研究では静的 ・動的バランス

ともに足底接地面積 と有意に相関する結果になったと

考えられる。本研究の対象者は12名 と少数であ り,本

研究結果 を一般化するためにはさらなる調査が必要で

はあるが,足 底板などを工夫 して足底接地面積を増や

すことは,高 齢者のバランス能力を改善させる目的に

おいては一考に値すると考える。

ま と め

高齢者 を対象に,足 底感覚,足 圧分布,お よび足底

接地状態 と立位バランス能力 との関連性を調査 した。

i2名中ll名 で足趾の接地不良が確認 された。立位で足

底圧が高い部位は感覚閾値が高 く,接 地 していない部

位は感覚閾値が低い傾向にあった。足底感覚閾値と足

底接地面積は,総 軌跡長お よびファンクショナル リー

チと関連性のあることが明 らか となった。高齢者にお

いてバ ランス能力の改善を図る場合には,足 底感覚と

ともに足底接地面積にも注意を払 う必要性が示唆され

た。

文 献

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