tor通信・ダークウェブの犯罪利用に関する法的考...

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2016年度 ISS Squareシンポジウム (2017/2/24) No. Although the Internet has certain anonymity as its characteristic. Technology for further improving its anonymity has been developed. In recent years, the use of "Tor" has spread worldwide as one of advanced anonymization technologies. Tor has already been used for cybercrime in Japan and measures are necessary. In this research, consider the legal problems and measures concerning Tor's crime use in Japan. Tor通信・ダークウェブの犯罪利用に関する法的考察 Legal consideration on crimes using Tor communication and dark web 中島尚樹・法制倫理分科会・情報セキュリティ大学院大学 Tor については、既に我が国においても犯罪に悪用されており、対策の必要性が認められる。 本研究は、日本におけるTor犯罪利用に関する法的問題の考察と提案を目的とする。 インターネット上の高度匿名化技術とは、 ライバシーの保護等を目的 として研究されて きた技術である。 Tor通信は、送信先側のコンピュータに残る 通信記録から直接経路をたどって 発信元を特 定することを困難にしている 秘匿サービスの技術を利用したダークウェブ は、該当 WEBサーバのIPアドレスを特定す ることが技術的に不可能 となる。 ②高度匿名化通信とTor・ダークウェブ Tor通信を利用したインターネット上での 罪予告等が増加 している。 ダークウェブが違法薬物や児童ポルノ流通な どの各種違法行為の温床 となっている。 Tor通信・ダークウェブを利用した犯罪行為 に対し、被害に係るコンピュータ端末や通信 事業者から得られる通信記録を基にした、捜 査機関による事後追跡が極めて困難 である。 ③Tor・ダークウェブの犯罪利用 ④関係者の違法性の考察 ①研究の背景と目的 ⑥警察対応の考察 (1)大規模イベント開催時における民間によ る通信遮断 「サイト管理者によるTorの受信を遮断」 「ネットワーク管理者によるTorの送信を遮断」 2方法の遮断を民間企業・団体等の自主対応とし て、大規模イベント時に時限的に実施する提案。 (2) Tor Projectによる通信遮断 犯罪利用のダークウェブをブロッキング対象の URLとしてDB化を行い、名前解決の段階、その 他の方法で、通信遮断する。その技術仕様をTor Projectに対し法的・社会的に要請をする提案。 ⑤通信遮断の考察 ⑦まとめ 近年、高度匿名化技術の一つとして「Tor」の 利用が世界的に広がりを見せている。 ①②価値中立 ソフト・技術提 供であり、違法 行為に対する 助罪は成立しな ①②でも、違法行為に使用させるように勧めた 場合や、自ら犯罪行為を行う場合には違法性を 有すると考えられる。 ③Tor利用ユーザーが、Torブラウザを使って匿 名でインターネットを適法に利用すること自体 に違法性はない。犯罪利用した場合に違法。 ⑤DW運営者は、適法コンテンツ提供であれば 法的責任は負わない。犯罪利用の場合に違法。 Tor 通信・ダークウェブ監視システム」の運 用を提案。 Torブラウザにて、ダークウェブにアクセスし 警告 等に関する書き込みを行う提案。 Tor犯罪利用のみを、通信遮断を行う、容疑 者を特定するといったことは、技術的に困難 である。 短期的 :本研究提案の遮断・捜査対応を実施 中長期的 :匿名化技術に対して、適切な法支配 が可能となるよう、利便性・必要性と、弊害と を比較考量し、技術・法制の両面から検討を行 い、一定の結論を導き出す必要がある。

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2016年度 ISS Squareシンポジウム (2017/2/24) No.

Although the Internet has certain anonymity as its characteristic. Technology for further improving its anonymity has been developed. In recent

years, the use of "Tor" has spread worldwide as one of advanced anonymization technologies. Tor has already been used for cybercrime in Japan

and measures are necessary. In this research, consider the legal problems and measures concerning Tor's crime use in Japan.

Tor通信・ダークウェブの犯罪利用に関する法的考察Legal consideration on crimes using Tor communication and dark web

中島尚樹・法制倫理分科会・情報セキュリティ大学院大学

Tor については、既に我が国においても犯罪に悪用されており、対策の必要性が認められる。 本研究は、日本におけるTor犯罪利用に関する法的問題の考察と提案を目的とする。

インターネット上の高度匿名化技術とは、プライバシーの保護等を目的として研究されてきた技術である。

Tor通信は、送信先側のコンピュータに残る通信記録から直接経路をたどって発信元を特定することを困難にしている。

秘匿サービスの技術を利用したダークウェブは、該当WEBサーバのIPアドレスを特定することが技術的に不可能となる。

②高度匿名化通信とTor・ダークウェブ

Tor通信を利用したインターネット上での犯罪予告等が増加している。

ダークウェブが違法薬物や児童ポルノ流通などの各種違法行為の温床となっている。

Tor通信・ダークウェブを利用した犯罪行為に対し、被害に係るコンピュータ端末や通信事業者から得られる通信記録を基にした、捜査機関による事後追跡が極めて困難である。

③Tor・ダークウェブの犯罪利用

④関係者の違法性の考察

①研究の背景と目的

⑥警察対応の考察

(1)大規模イベント開催時における民間による通信遮断「サイト管理者によるTorの受信を遮断」「ネットワーク管理者によるTorの送信を遮断」2方法の遮断を民間企業・団体等の自主対応として、大規模イベント時に時限的に実施する提案。(2)Tor Projectによる通信遮断犯罪利用のダークウェブをブロッキング対象のURLとしてDB化を行い、名前解決の段階、その他の方法で、通信遮断する。その技術仕様をTor Projectに対し法的・社会的に要請をする提案。

⑤通信遮断の考察

⑦まとめ

近年、高度匿名化技術の一つとして「Tor」の利用が世界的に広がりを見せている。

①②価値中立のソフト・技術提供であり、違法行為に対する幇助罪は成立しない。

①②でも、違法行為に使用させるように勧めた場合や、自ら犯罪行為を行う場合には違法性を有すると考えられる。

③Tor利用ユーザーが、Torブラウザを使って匿名でインターネットを適法に利用すること自体に違法性はない。犯罪利用した場合に違法。

⑤DW運営者は、適法コンテンツ提供であれば法的責任は負わない。犯罪利用の場合に違法。

「Tor通信・ダークウェブ監視システム」の運用を提案。

Torブラウザにて、ダークウェブにアクセスし、警告等に関する書き込みを行う提案。

Tor犯罪利用のみを、通信遮断を行う、容疑者を特定するといったことは、技術的に困難である。

短期的:本研究提案の遮断・捜査対応を実施中長期的:匿名化技術に対して、適切な法支配が可能となるよう、利便性・必要性と、弊害とを比較考量し、技術・法制の両面から検討を行い、一定の結論を導き出す必要がある。

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