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14 NO. 2013 Spring UC (潰瘍性大腸炎)治療にあたる医療従事者のための情報誌 これからの潰瘍性大腸炎治療と LCAPが果たす役割 有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠 先生 血球成分除去療法を実施した 炎症性腸疾患患者に対するアンケート調査 兵庫医科大学内科学 下部消化管科 長瀬和子 先生、福永健 先生、横山陽子 先生 上小鶴孝二 先生、中村志郎 先生 Current News Wisdom

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14NO.2013 Spring

UC(潰瘍性大腸炎)治療にあたる医療従事者のための情報誌

これからの潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠 先生

血球成分除去療法を実施した炎症性腸疾患患者に対するアンケート調査兵庫医科大学内科学 下部消化管科長瀬和子 先生、福永健 先生、横山陽子 先生上小鶴孝二 先生、中村志郎 先生

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潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割

これからの

=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=

Wisdom

21

慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠 先生

 近年、潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、病態解明の進展とともに治療法の研究も進みました。特に難治性UCに対して、2009年にタクロリムスが、2010年にはインフリキシマブが使用できるようになり、治療選択肢の幅が大きく広がっています。 2001年にUCに対して保険適用が認められた白血球除去療法

(LCAP)も、この10年間で多くの基礎・臨床研究からエビデンスが集積されつつあります。2012年には806例のUC患者を対象とした使用成績調査の結果も公表され、その有効性と安全性について様々な知見が得られました。そして、2010年には診療報酬改定により“週1回施行”の制限が解除され、短期間に集中的な施行

(intensive療法)も可能となっています。 免疫調節薬や生物学的製剤の登場により、炎症をより確実にコントロールできるようになった一方で、これらの薬剤やLCAPをどのように使い分けていけばよいのかが課題となっています。 今回は、「これからの潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=」と題し、“有効性”と“安全性”のバランスという視点からみたUCの治療戦略について、慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠先生にお話をうかがいます。

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潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割

これからの

=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=

Wisdom

21

慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠 先生

 近年、潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、病態解明の進展とともに治療法の研究も進みました。特に難治性UCに対して、2009年にタクロリムスが、2010年にはインフリキシマブが使用できるようになり、治療選択肢の幅が大きく広がっています。 2001年にUCに対して保険適用が認められた白血球除去療法

(LCAP)も、この10年間で多くの基礎・臨床研究からエビデンスが集積されつつあります。2012年には806例のUC患者を対象とした使用成績調査の結果も公表され、その有効性と安全性について様々な知見が得られました。そして、2010年には診療報酬改定により“週1回施行”の制限が解除され、短期間に集中的な施行

(intensive療法)も可能となっています。 免疫調節薬や生物学的製剤の登場により、炎症をより確実にコントロールできるようになった一方で、これらの薬剤やLCAPをどのように使い分けていけばよいのかが課題となっています。 今回は、「これからの潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=」と題し、“有効性”と“安全性”のバランスという視点からみたUCの治療戦略について、慶應義塾大学病院 内視鏡センター 長沼 誠先生にお話をうかがいます。

─ 『潰瘍性大腸炎治療指針(平成23年度潰瘍性大腸炎治療指針:内科)』では、ステロイド抵抗例とステロイド依存例を難治性UCとして定義しており、ステロイド抵抗例に対してはLCAPなどの血球成分除去療法(CAP)、タクロリムス(経口)、インフリキシマブ(点滴静注)を、ステロイド依存例に対してはアザチオプリンや6-MPで改善しない場合にこれら3つの治療法のいずれかを選択することが推奨されています。これら3つの治療法は、実臨床においてどのように使い分けられているのでしょうか?

 UC治療の基本薬は、5-アミノサリチル酸(5-aminosalicylic acid:5-ASA)製剤ですが、十分量の5-ASA製剤でも炎症を抑制できない場合、副腎皮質ホルモン製剤(ステロイド)を使用します。ステロイド治療を行う上で重要なポイントは、必ず十分量のステロイドを使用することです。ステロイドは短期間に十分量を使用することで、効果の最大化と副作用の低減を期待することができます。また、ステロイド治療の効果判定の目安は劇症は3日、重症は1週間、中等症は2週間程度と考えています。治療指針では、中等症は少なくとも30~40mg/日、重症は1.0~1.5mg/kg/日を1~2週間使用しても明らかな改善が得られないケースをステロイド抵抗例と定義し、LCAPをはじめとするCAP、タクロリムス(経口)、インフリキシマブ

(点滴静注)のいずれかを選択することを推奨しています。 私は、この3つの治療法の中で、まずは安全性の高いCAPの使用を考えます。CAPの適用症例としては、比較的治療効果の期待できる①罹病期間が短い症例、②ステロイド使用期間が

短い症例、③内視鏡的に深掘潰瘍がない症例、④副作用に神経質な症例、などがあると考えます(図1)1)。さらに、施設内にCAPの治療体制が整っていることもCAP適用のポイントになります。 これらの条件に該当しない場合、例えば、深掘潰瘍がある症例や、短期間で炎症を抑制する必要がある症例などは、患者の臨床背景や各施設の医療体制に応じてタクロリムスやインフリキシマブの選択を考慮します。タクロリムスは経口薬ですが、血中濃度測定のために入院を必要とすることが多く、一方、インフリキシマブは点滴静注ですが外来治療が可能です。このような特性から、重症患者にはタクロリムスが、中等症で外来治療が可能な患者にはインフリキシマブが選択される傾向があります。しかし、重症だから、あるいは入院患者だからインフリキシマブは適用ではないということではありません。また、タクロリムスも外来で使用できるようになってきているので、最近、インフリキシマブとタクロリムスの位置付けはオーバーラップする部分が出てきています。 いずれにせよ、CAPが最も使い慣れており、安全に施行できるという観点から、CAPで寛解導入が可能な症例と判断した場合は、CAPを第一選択とする治療戦略があると思います。 ステロイド依存例に対しては、治療指針ではアザチオプリン、6-MP(保険適用外)のいずれかを選択できることが記載されています。ステロイド依存例の多くは、ステロイドを10~15mg/日まで減量した時点で再燃する場合が多いため、過去にステロイド減量中に再燃の既往のある症例では、早めにアザチオプリンを加えることにより、ステロイド減量時に効果を発揮することが期待できます。

難治性UCの治療戦略LCAPは難治性UCに対する治療法として豊富な臨床実績を有している治療法

図1 潰瘍性大腸炎難治例における各種治療法の選択

長沼 誠ほか:日本臨牀 70(増1):286-293, 2012より改変

中等症外来

Tacの治療に精通していない

重症入院CAP

TacIFX

● 罹病期間短い症例● ステロイド使用期間が短い症例● 内視鏡的に深掘潰瘍ない症例

● 副作用に神経質な症例● 院内での血球成分除去療法の体制が整っている

NOYES

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─ 安全性をより重視しなくてはならない症例、例えば、高齢者、女性や妊婦などに対する治療戦略を検討する際、どのような点を考慮する必要がありますか?

 高齢のUC患者では、耐糖能異常や糖尿病、腎機能低下や腎障害を合併する方が少なくありません。また、一般的に高齢者では薬剤の副作用が現れやすい傾向があります。このようなことを考慮して高齢者に対する治療戦略を立てる必要があります。ステロイドはUC治療の基本薬の1つですが、高齢者に使用した場合、耐糖能異常を引き起こすことがあります。また、高齢者は免疫機能が低下していることが多いため、ステロイド使用による感染症の発症リスクの上昇に注意する必要があります。タクロリムスは腎障害の発症リスクがあるため、高齢者に使用する場合は慎重に投与する必要があります。 高齢者を対象にしたUC治療のエビデンスは多くはありません。一般の症例に比べ特徴的な違いがあるわけではありませんが、高齢者は炎症が持続することによって全身状態が悪化する可能性があることを頭に入れておく必要があります。したがって、高齢者ではより早く治療効果を得ることが大切です。有効性と安全性のバランスを十分考えて、時には高齢であっても免疫調節薬や生物学的製剤などの即効性が期待できる薬剤を投与することもありますが、安全性の観点からはLCAPも重要な治療法の1つです。 女性の場合は、常に薬剤に対する拒否感をもっている患者がいることを念頭に置く必要があります。女性患者の多くは、UC治療による妊娠への影響を心配しており、妊娠していない患者であっても免疫調節薬というだけで拒絶反応を示します。しかし、妊娠していない患者で炎症の抑制が優先される患者に対しては「今は、病気をコントロールする方が大事」であることを伝え、よく話し合いながら必要な薬剤を選択するようにしています。一方、LCAPについては、安全性という点では挙児希望の女性患者にとっては受け入れやすい治療法だと考えます。

─ 難治性UCの内科的治療を行う際、どのような点に注意する必要がありますか?

 UCの内科的治療で使用するステロイドや免疫調節薬、生物学的製剤は、どれも切れ味の良い優れた薬剤ですが、使用に際しては安全性に注意をする必要があります。免疫を抑制することによる副作用、特に日和見感染症の発現に注意が必要です。私たちは、これらの使用薬剤による日和見感染の発生率について、ケースコントロールスタディを行いました。その結果、生物学的製剤の単独使用症例では日和見感染症リスクの上昇は認められませんでしたが、免疫調節薬を2剤使用している症例では日和見感染のリスクが3.72倍、ステロイドと免疫調節薬と

UCの内科的治療で注意を必要とするポイントとは?高齢者は合併症や免疫機能低下による感染症への注意、女性は妊娠に関する情報への配慮を

の併用症例は7.05倍と上昇することが明らかになりました2)。したがって、免疫抑制作用のある薬剤を複数併用する場合には、特に感染症に注意が必要であることが分かります。一方、CAPについては日和見感染のリスクを増加させることはありませんので、感染症の観点からも安全性の高い治療法といえます。 海外では、UCなど炎症性腸疾患(IBD)の患者に接種すべきワクチンとして、水痘・帯状疱疹ワクチン、子宮頸がんワクチン、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンがあげられています(図2)。免疫抑制による影響としてワクチンの免疫原性の低下に留意する必要があるからです。日本でも、2007年に大学生を中心とした麻疹、また昨年から今年(2012~2013年)にかけて風疹が流行し、これらのウイルスに対するワクチン接種の必要性が強調されています。しかし、免疫調節薬を使用している患者では、ワクチンの抗体価が上昇しないことがあります。また、免疫が抑制されている期間は、生ワクチンの接種は原則禁忌であり、生物学的製剤のような抗体製剤を使用している期間は、生ワクチンの接種が難しく、接種する場合は休薬する必要があります。 IBD患者のワクチン抗体価を調べた私たちの調査では、IBD患者は免疫調節薬や生物学的製剤の使用例が多いにもかかわらず抗体価陰性率が高く、風疹の陰性率は29.5%、麻疹は33.8%、ムンプスは36.7%でした(表1)3)。また、過去にこれらのワクチン接種をしたかどうか分からないという方も4~5割くらいいます。実際、2007年に日本で麻疹が流行した際、ワクチン接種について悩んだ患者を多く経験しました。UC患者は治療を開始する前に各ワクチンの抗体価を調べ、可能であればワクチンを接種しておくことが重要と考えています。

図2 IBD患者で接種しておくべきワクチン(海外)

Rahier JF et al. JCC 2009, Viget N Gut 2008

表1 IBD患者における生ワクチン関連抗体価陰性率

Naganuma M. et al.:Inflamm Bowel Dis 19(2):418-422, 2013

● 水痘・帯状疱疹ワクチン● 子宮頸がんワクチン● インフルエンザワクチン

● 肺炎球菌ワクチン● B型肝炎ワクチン

1 免疫抑制下ではワクチンの効果が劣る可能性がある2 免疫調節薬使用中は生ワクチン原則禁忌

可能であれば診断時にワクチン接種することも必要

IBD患者では免疫調節薬・抗体製剤使用例が多いにもかかわらず生ワクチン関連抗体陰性例が存在

水痘・帯状疱疹風疹麻疹ムンプス

7414751

抗体価陰性率5.0%29.5%33.8%36.7%

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─ 2001年11月~ 2008年8月に実施されたLCAPの使用成績調査の結果をもとにLCAPの有効性と安全性について、先生の評価をお聞かせください。

 2012年、UC患者806例を対象にした使用成績調査(表2)の結果が報告されました。この大規模な使用成績調査により、LCAPの有効性と安全性に関するさまざまなデータが確認されています。調査対象の主な患者背景は、性別:男性55.4%/女性44.6%、平均年齢:38.6歳、重症度分類:軽症2.2%/中等症65.7%/重症29.5%/劇症2.4%、病変の広がり:全大腸炎型62.8%/左側大腸炎型36.0%/直腸炎型1.2%、難治性分類では80.1%が難治例でした。 まず有効性についてですが、LCAPによる改善率(医師が治療開始時と比較した臨床所見、炎症マーカー等を総合的に勘案し、「改善」、「不変」、「悪化」の3段階で評価)は、2回治療後60.5%(454/751例)、5回治療後80.4%(604/751例)でした(図3)。また、LCAPの治療終了時における寛解率(「内視鏡的に活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状況」に至ったと医師が判定した割合)は、5回目までの治療では22.5%

(169/751例)でしたが、6回目以降の治療を行った症例(そのうち約80%は計10回治療)では44.9%(146/325例)でした

(図4)。つまり、LCAPは治療を繰り返し継続することで、最終的に半数弱の患者を寛解導入できたということです。実際、私も日常診療では1回目のLCAP治療後に十分な効果がみられない患者でも、2回目、3回目と治療を継続するうちに徐々に効果が現れるケースを経験しています。いずれにせよ、このような大規模な調査でLCAPの有効性が確認できたことは、LCAPのエビデンス蓄積の観点からも大きな進歩だと思います。 私たちの施設では、LCAP治療の治療回数や治療間隔は、患者の重症度や社会的背景により決めていますが、患者の多くは計10回まで治療を行います。また、現在ではintensive療法も可能となっていますので、中等症や重症の患者の多くは、LCAPを週2回、合計10回行っています。ただ、外来でLCAPを行っている患者では、時間的余裕がない方が多いため、患者のニーズに合わせて治療回数を設定します。中等症でも外来治療が可能な患者で、仕事を続けながらという方では、週1回で合計10回行う場合もあります。

─ LCAPが効きやすい患者背景などの情報は得られましたでしょうか?

 この使用成績調査では、LCAPの有効性に及ぼす患者背景

LCAPの有効性と安全性大規模な使用成績調査によりLCAPの有効性と安全性を再確認

=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=

潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割

これからの

Dr. Naganuma

図3 LCAP使用成績調査における有効性評価

使用成績調査より

表2 LCAP使用成績調査の概要

使用成績調査より

薬事法第14条の4第1項に基づく再審査のため、本品の使用実態下での安全性・有効性に関する情報、およびその他の適正使用情報を把握する。

活動期の潰瘍性大腸炎患者 ただし、ステロイド治療抵抗性の重症または中等症の全大腸炎型および左側大腸炎型の患者を対象とする。

血球細胞除去用浄化器「セルソーバE(型式EX)」(以下、本品)を用いた白血球除去療法を週1回の頻度で計5回行う。なお、診療報酬算定では、本品を用いた治療は計10回(劇症では11回)を限度としていることから、5回を超える治療についても、安全性および有効性評価の対象とした。

患者背景、併用薬および併用療法、治療状況、臨床所見、臨床検査値

2001年11月~ 2008年8月

806例

有害事象(副作用)および医療機器不具合の発現状況重点調査項目 (5項目)

本品による2回治療後、5回治療後の有効性を「改善」「不変」「悪化」の3段階で判定する。なお、一連の治療における寛解(内視鏡検査が行われ、内視鏡的に活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態)の有無についても調査を行う。

目的

対象

治療方法

調査項目

安全性評価

有効性評価

実施期間

調査症例数

担当医師が治療開始時と比較した臨床所見、炎症マーカー等を総合的に勘案し、「改善」、「不変」、「悪化」の3段階で評価

2回治療後 5回治療後

改善80.4%

改善60.5%

不変34.6%

悪化 2.7% 不明・未記載2.3%

不変16.5%

悪化 3.1% 不明・未記載0.0%

(n=751)

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について検討していますが、その中で、臨床経過分類として「慢性持続型」よりも「初回発作型」「再燃寛解型」の方が有効率が高いことが分かりました。LCAPは比較的罹病期間の短い症例で効果を発揮しやすいものと考えられます。 また、ステロイド併用群と非併用群におけるLCAPの有効性を検討したところ、併用群の改善率は80.1%(431/538例)、非併用群の改善率は81.2%(173/213例)であり(図5)、ステロイド併用の有無はLCAPの効果発現に影響を及ぼさないという結果が出ています。ただ私の経験では、ステロイド治療を行っている間にLCAPを追加すると相乗効果が現れることが多いため、基本的にステロイド治療を行った後にLCAPを追加します。しかし、過去にステロイドを何回も使用しており、再燃を繰り返しているような患者には、ステロイドは使用せずLCAPを先行して施行することもあります。 またこの調査では、LCAPによりステロイドの減量が可能であることが報告されています。治療開始時とLCAP 5回治療後の比較では、治療開始時のステロイド投与量は29.6mg/日、5回目治療後には22.6mg/日へと有意に減少、また、治療開始時から一連の治療終了時(6回目以降)の比較では、治療開始時のステロイド投与量は28.6mg/日、一連の治療終了時には14.5mg/日へと有意に減少しています(図6)。 難治性UCの多くは、ステロイドの使用に問題を抱えるステロイド抵抗例やステロイド依存例であるため、このような患者のステロイド使用量を減量できることは重要なポイントです。ただし、この調査ではステロイド抵抗例と依存例を区別していません。ステロイド抵抗例でLCAPを行った症例では、おそらく順調にステロイドを減量できたと考えますが、ステロイド依存例では簡単に減量できない症例は少なくないと思います。

─ 使用成績調査におけるLCAPの安全性はいかがでしょうか?

 LCAPとの因果関係が否定できない副作用の発現率は18.3%(142/776例 )(表3)、その主 なもの は 頭 痛3.9%

(30/776例)、悪心3.6%(28/776例)、返血時の返血部位症状3.0%(23/776例)、貧血2.6%(20/776例)、発熱2.1%

(16/776例)、潮紅1.3%(10/776例)と報告されています。このようにLCAPの副作用の多くは、体外循環療法に伴う頭痛、悪心、貧血などです。一方、抗凝固剤であるナファモスタットメシル酸塩に起因する重篤な有害事象としてショック、アナフィラキシーショックがそれぞれ1例報告されています。抗凝固剤によるアレルギー様症状の副作用には注意を払う

図4 LCAP使用成績調査における寛解率

使用成績調査より

図5 ステロイド併用の有無によるLCAPの有効性

使用成績調査より

図6 LCAPによるステロイド投与量の推移

使用成績調査より

治療終了時までの寛解率

5回目までの治療では寛解が得られない症例に対して、6回目以降の治療を実施することで寛解を得られる可能性があることが示唆されました。

全体(n=751)

41.9%50

40

30

20

10

05回目までの治療(n=751)

6回目以降の治療(n=325)

22.5%

44.9%

治療開始時 5回治療後 治療開始時 一連の治療終了時

ステロイド投与量

60

50

40

30

20

10

0

ステロイド併用群 ステロイド非併用群

5回治療後治療開始時のステロイド投与と非投与で層別した有効性評価

寛解:内視鏡的に活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状況

改善80.1%

改善81.2%

不変16.0%

不変16.7%

悪化 3.2% 悪化 2.8% (n=213)(n=538)

(mg/日)

(%)

P<0.0001

29.622.6

28.6

14.5

P<0.0001

(n=164)(n=468)

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必要があります。 また、LCAPを計10回施行した242例を対象に、副作用の発現時期を検討したところ、1~ 5回目のLCAP施行時の副作用発現症例率は16.1%(39/242例)だったのに対し、6~10回目の副作用発現症例率は4.1%(10/242例)でした(表4)。LCAPの副作用は、治療の初期に比較的多く発現する傾向があり、その後、治療回数が増えても副作用発現率が増えることはありませんでした。さらに、副作用の種類や重篤度の観点からも、治療回数が増えた場合の安全性に関して臨床上問題はないと考えられました。 またこの調査では、白血球除去による易感染症の可能性についても検討しています。感染症に関する有害事象発生率は2.1%(16/776例)で、そのうちLCAPとの因果関係を否定できないものは2例だけでした。また、ウイルス性肝炎合併例(7例)においても感染症を含め副作用や感染症の有害事象も認められていません。 サイトメガロウイルス(CMV)感染症合併例については、改善率81.0%(17/21例)であり、非合併例の80.4%(587/730例)と同等の有効性が報告されています(表5)。また、LCAPによるCMV感染症の増悪(再活性化)を含めた副作用は認められていません。ただし、CMVは炎症があるところに再活性化してくるので、まず炎症を確実に抑制することを優先します。CAPは確かに安全な治療法ですが、炎症を速やかに抑え切れない場合、CMVが再活性化してくる場合があることを念頭に置いておく必要があります。

─ 2010年より、LCAPによる治療を週に複数回行うintensive療法の保険適用が認められましたが、どのような患者さんが対象となっていますか? また、患者さんのintensive療法に対する評価はいかがですか?

=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=

潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割

これからの

表3 LCAP使用成績調査における副作用発現状況

使用成績調査より

表4 治療時期別の副作用発現率 (LCAPを計10回施行した症例)

使用成績調査より

表5 CMV感染症合併例に対するLCAPの有効性と安全性

使用成績調査より

安全性評価対象症例副作用発現症例数副作用発現件数

776例142例(18.3%)

334件

頭痛悪心返血時の返血部位症状貧血発熱潮紅

副作用発現件数30(3.9%)28(3.6%)23(3.0%)20(2.6%)16(2.1%)10(1.3%)

・安全性評価対象776例中、サイトメガロウイルス(CMV)感染症の合併例が2.7%(21例)含まれていました。・CMV感染症合併21例における改善率は81.0%(17例)であり、非合併例の80.4%と同等の有効性を示しました。

・また、CMV感染症合併21例において、CMV感染症の増悪を含めた副作用は1例も認められませんでした。

CMV感染症

なし

あり

症例数改善 不変 悪化

587(80.4%)

17(81.0%)

有効性評価(5回治療後)

730

21

120(16.4%)

4(19.0%)

23(3.2%)

0(0.0%)

CMV感染症

なし

あり

症例数発現件数 発現例数 発現症例率

334

0

副作用

755

21

142

0

18.8%

0%

副作用の種類

対象症例数

副作用発現症例数

副作用発現件数

副作用発現症例率

副作用発現回数率

242

39

115

16.1%

9.5%

LCAP1~5回目

242

10

33

4.1%

2.7%

LCAP6~10回目

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1)長沼 誠ほか:「炎症性腸疾患の内科的治療戦略 重症・難治性炎症性腸疾患の治療戦略」 日本臨牀 70(増1):286-293, 2012

2)Naganuma M. et al.:“A prospective analysis of the incidence of and risk factors for opportunistic infections in patients with inflammatory bowel disease.” J Gastroenterol 2012 Oct 5.[Epub ahead of print]

3)Naganuma M. et al.:“Poor Recall of Prior Exposure to Varicella Zoster, Rubella, Measles, or Mumps in Patients with IBD.” Inflamm Bowel Dis 19(2):418-422, 2013

 私たちの施 設では、10年以 上前から難 治 例に対してintensive CAP療法を試みてきました。LCAPは効果発現にやや時間がかかるため、重症例の場合だと治療の効果判定を待つ時間的余裕がありません。「LCAPを集中的に行うことができれば早い効果判定が可能になるのではないか」と考え、intensive療法を行うようになりました。保険適用となった今では、多くの患者が早期改善を期待してintensive療法を受け入れています。しかし、外来患者でそれほど重症感のない患者の中には、週に2~ 3回の来院を負担に感じている方もいます。このような場合、患者のニーズに合わせて治療の間隔を決めています。

─ 今後、難治性UCの治療においてLCAPはどのような役割、あるいは可能性があるのでしょうか?

 治療薬の選択肢が広がる中、安全性の高いLCAPにはさまざまな役割があると思います。例えば、生物学的製剤を使用

している患者の中に、生物学的製剤に対する抗体(中和抗体)ができ、二次無効に至る症例が報告されています。クローン病患者では20~ 30%の患者で、UC患者では約40%で生物学的製剤の二次無効がみられます。このような場合、LCAPやステロイドによる治療を行う場合があります。最近では、生物学的製剤の二次無効例にLCAPを行い、寛解に導入できたことを報告している論文もあります。今後、このような形でLCAPが使われていく可能性は十分にあると思います。 また、CAPは寛解維持療法として保険適用となっていません。ある治療法で寛解導入に成功したら、その後も同じ治療法で寛解を維 持することはとても大事なことです。実際、医師や患者の間でもCAPによる維持療法のニーズが高く、このような現状を踏まえ、私たちは、CAPによる維持療法について全国多施設で共同研究を行うCAPTAIN study

(Cytapheresis for remission maintenance therapy of ulcerative colitis: multicenter randomized controlled study)を開始したところです。

─ LCAPを含むUC治療全体の将来展望についてお聞かせください。

 UC治療はこの10年間で治療選択肢が大きく広がりました。しかし、海外の臨床試験の状況をみても、今後数年間は画期的な新薬の登場は期待できないと考えています。それよりも、今、私たちが目を向けなければならないのは「現在の治療法をいかに大事に、より効果的に治療戦略に組み入れるか」ということです。どの患者にどの治療法が合うのか、患者の背景因子と各治療法の有効性や安全性との関連性を調べ、個々の患者に合う治療法の選択が可能になれば、現在の治療法をより効果的に使えるようになります。 また、寛解導入についてはエビデンスのある治療法が数多くありますが、維持療法については質の高いエビデンスはありません。再燃を防ぐためにも、維持療法の研究・開発が必要です。そのためにも、CAPTAIN studyでエビデンスを

集積していきたいと思っています。CAPをより効率よく使用するためにも、CAPで寛解維持効果が得られる患者、またその反対に効果が得られない患者の背景因子をCAPTAIN studyでも検討したいと考えています。 LCAPは効果発現にはやや時間を要するものの、治療回数を重ねるごとに高い有効性を発揮し、また感染症のリスクも低く安全性の高い治療法です。有効性と安全性のバランスの良い治療法であり、今後も、UC治療の選択肢の1つとして重要な役割を果たすことに変わりはありません。

UC治療の将来展望既存の治療法のより効果的な使用と、寛解維持療法の充実が求められる

=有効性と安全性のバランスからみたLCAPへの期待と展望=

潰瘍性大腸炎治療とLCAPが果たす役割

これからの

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87 8

Q1 CAPを受けた患者さんの年齢と社会的状況には、どのような特徴がみられますか?

血球成分除去療法を実施した炎症性腸疾患患者に対するアンケート調査

CurrentNews

第33回日本アフェレシス学会学術大会 一般演題 O‒95 より

兵庫医科大学内科学 下部消化管科長瀬和子 先生、福永健 先生、横山陽子 先生、上小鶴孝二 先生、中村志郎 先生

血球成分除去療法(CAP)は有効性と安全性に優れた炎症性腸疾患(IBD)患者さんの治療法として、認知されています。しかし、CAPの実施には、通院時間の確保、穿刺による痛み、体外循環療法に対する不安など、ある程度、患者さんの負担が生じることが予想されます。そこで、当院でCAPを実施した患者さんを対象として、CAPにおけるQOL(quality of life)、安全性、有効性に関する患者さん自身の評価をアンケート方式で調査しました。

<対象と方法>兵庫医科大学病院 IBDセンターでCAPを実施した240名のうち、2012年10月末現在、内科的治療を継続している155名を対象にアンケートを実施し(調査期間:2012年7~10月)、112名(72.3%)から回答を得た。疾患の内訳は、潰瘍性大腸炎(UC)86名、クローン病(CD)26名、性別は男性59名、女性53名であった。

15 20

20

10

025 30 35 40 45 50 55 60 65 7570

今回のアンケート調査の対象患者さんの年齢分布は、総務省統計局の労働力人口調査で労働力人口比率が8割を超える「25歳以上55歳未満」が77人おり全体の69%を占めました。さらにフルタイムで仕事をしている患者さんは52人で全体の46%を占めました。働き盛りの患者さんが調査対象に多く含まれていることがわかりました。

患者さんはCAPのための通院の負担について、どのように感じているのでしょうか?

CAPのための通院の負担については、「特に負担なし」と答えた患者さんが43%、「やや負担あり」と答えた患者さんが52%でした。負担を感じた理由としては「休暇の調整が難しい」、「体調の悪い時に通院する負担」が多くあげられました。通院の負担として腹痛や下痢などIBDの症状が影響していること、しかし、休暇を取ることが難しいことから、症状悪化時でも通常の社会生活を送りたいという希望があることがわかりました。

「特に負担なし」、「やや負担あり」と答えた患者さんが大半でした

働き盛りの年代の患者さんが多く含まれました年齢 社会的状況

無回答

特に負担なし

やや負担あり

かなり負担あり

非常に負担あり

0 10 20 30 40 50 60

43

52

体調悪い時に通院負担

仕事:休暇調整難しい

学校:授業調整難しい育児:

通院負担大

通院に時間がかかるその他

0 10 20 30 40 50 60

CAPのための通院の負担について 通院の負担を感じた理由

仕事:フルタイム平均=39.6歳

n=112仕事:パート、アルバイト現在仕事していない

学生

主に家事

育児中

介護中

その他

0 10 20 30 40 50

46

兵庫医科大学病院 IBDセンター

Q2

21

19

9

15

6

43

52

介護:通院負担大

通院の経済的負担

7

7

7

5

21

(%) (%)

(%)(歳)

(%)

n=112

n=105 n=105

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IBDの治療法が多様化し、IBD患者さんが治療を選択できる時代になってきました。CAPはIBD治療において数少ない非薬物治療です。今回のアンケートでも、多くの患者さんがCAPの安全性を高く評価したように、非薬物治療ならではのメリットがあります。その反面、患者さんにとっては苦痛となり得る面がいくつかあり、その中には腹痛や頻回の下痢などIBD再燃時の症状が大きな要因となっているものが含まれています。CAPを実施する医療側は、これまで積み重ねられたエビデンスに基づいて寛解導入を目指すことはもちろんですが、患者さんの苦痛となり得る面を十分に把握、考慮したうえで実施することで、CAPは患者さんから「より選択される」治療になり得ると考えます。

アンケート調査の結果、CAPに必要な通院の負担感はややあるものの、CAPにかかる時間を短縮することで、患者さんの負担を軽減できる可能性が示唆されました。また、患者さんのCAPの安全性・有効性に対する満足度が高いことがわかり、特にCAPの効果に対する満足度が高い患者さんはCAPの再治療を希望していることがわかりました。

まとめ

IBD患者さんは、CAPの穿刺に伴う痛みについてどのように感じていますか?

CAPの穿刺に伴う痛みに関して、「特に気にならなかった」と答えた患者さんが46人、「やや痛みがあった」と答えた患者さんが50人でした。これら2つの回答で全体の86%を占め、CAPの穿刺に伴う痛みは比較的軽度であると感じていることがわかりました。しかしながら、医療側はCAP導入前に穿刺について患者さんに十分に説明し、同時に患者さんのアフェレシスに対する適合性(治療期間中の穿刺に耐え得るか、IVHルートを使用する場合はリスクがどの程度あるかなど)を十分に検討してから導入することが重要だと考えられます。

「特に気にならなかった」、「やや痛みがあった」と答えた患者さんが約8割を占めました

無回答

特に気にならなかった

やや痛みがあったが

CAP継続可強い痛みがあったが

CAP継続可

強い痛みあり問題あり

0 10 20 30 40 50(%)

Q3

41

45

11

IBD患者さんがCAPを負担に感じない時間はどれくらいですか?

負担だと感じないCAPにかかる時間は、「1時間以内」と答えた患者さんが57人おり、全体の51%を占めました。一般的なCAPは約1時間で終了する治療法ですが、治療時間を短縮することで、患者さんの負担を軽減できることが示唆されました。また、CAPの負担を軽減する方法としては、「音楽を聴く」、「眠る」、「DVDやTVを見る」などが多くあがりました。

「1時間以内」であればCAPを負担に感じないと答えた患者さんが約5割を占めました

無回答

1時間以内

30分以内

15分以内

その他

0 10 20 30 40 50 60(%)

Q4

51

5

6

33

IBD患者さんはCAPの有効性についてどのくらい満足していますか?

患者さんのCAPの有効性に対する満足度は、「非常に満足」が35人、「比較的満足」が41人でした。これら2つの回答が全体の68%を占め、患者さんのCAPの有効性に対する満足度が高いことがわかりました。また、UCとCD別では、UC患者さんの方が効果に対する満足度が高い傾向にありました。

「非常に満足」、「比較的満足」と感じた患者さんが約6割を占めました

0 10 20 30 40(%)

Q6

CAP再治療を希望するIBD患者さんはどのくらいいますか?

CAP再治療を「実施したい」と答えた患者さんが81人で、全体の72%を占めました。CAPの効果を実感した多くの患者さんが、CAP再治療を希望していることがわかりました。

CAP再治療を希望する患者さんが7割強を占めました

Q7

0 10 20 30 40 50(%)

IBD患者さんはCAPの安全性についてどのくらい満足していますか?

患者さんのCAPの安全性に対する満足度は、「非常に満足」が50人、「比較的満足」が49人でした。これら2つの回答が全体の89%を占め、患者さんのCAPへの安全性に対する満足度が高いことがわかりました。CAPは血液の一部を体外へ連続的に取り出し、白血球を選択的に除去、その後血液を体内に戻す治療法です。血液を体外で循環させるため、不安に思う患者さんもみられますが、今回の調査では、CAPの安全性に対する患者さんの満足度が高いことが示されました。

「非常に満足」、「比較的満足」と感じた患者さんが約8割を占めました

無回答

非常に満足

比較的満足

どちらともいえない

比較的不満足

0

Q5

45

44

10

31

37

27

非常に満足

比較的満足

比較的不満足

非常に不満足

どちらともいえない

n=112

0 20 40 60 80(%)

無回答

実施したい

その他

実施したくない

n=112

n=112

n=112

72

14

12

最後に

n=112

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IBDの治療法が多様化し、IBD患者さんが治療を選択できる時代になってきました。CAPはIBD治療において数少ない非薬物治療です。今回のアンケートでも、多くの患者さんがCAPの安全性を高く評価したように、非薬物治療ならではのメリットがあります。その反面、患者さんにとっては苦痛となり得る面がいくつかあり、その中には腹痛や頻回の下痢などIBD再燃時の症状が大きな要因となっているものが含まれています。CAPを実施する医療側は、これまで積み重ねられたエビデンスに基づいて寛解導入を目指すことはもちろんですが、患者さんの苦痛となり得る面を十分に把握、考慮したうえで実施することで、CAPは患者さんから「より選択される」治療になり得ると考えます。

アンケート調査の結果、CAPに必要な通院の負担感はややあるものの、CAPにかかる時間を短縮することで、患者さんの負担を軽減できる可能性が示唆されました。また、患者さんのCAPの安全性・有効性に対する満足度が高いことがわかり、特にCAPの効果に対する満足度が高い患者さんはCAPの再治療を希望していることがわかりました。

まとめ

IBD患者さんは、CAPの穿刺に伴う痛みについてどのように感じていますか?

CAPの穿刺に伴う痛みに関して、「特に気にならなかった」と答えた患者さんが46人、「やや痛みがあった」と答えた患者さんが50人でした。これら2つの回答で全体の86%を占め、CAPの穿刺に伴う痛みは比較的軽度であると感じていることがわかりました。しかしながら、医療側はCAP導入前に穿刺について患者さんに十分に説明し、同時に患者さんのアフェレシスに対する適合性(治療期間中の穿刺に耐え得るか、IVHルートを使用する場合はリスクがどの程度あるかなど)を十分に検討してから導入することが重要だと考えられます。

「特に気にならなかった」、「やや痛みがあった」と答えた患者さんが約8割を占めました

無回答

特に気にならなかった

やや痛みがあったが

CAP継続可強い痛みがあったが

CAP継続可

強い痛みあり問題あり

0 10 20 30 40 50(%)

Q3

41

45

11

IBD患者さんがCAPを負担に感じない時間はどれくらいですか?

負担だと感じないCAPにかかる時間は、「1時間以内」と答えた患者さんが57人おり、全体の51%を占めました。一般的なCAPは約1時間で終了する治療法ですが、治療時間を短縮することで、患者さんの負担を軽減できることが示唆されました。また、CAPの負担を軽減する方法としては、「音楽を聴く」、「眠る」、「DVDやTVを見る」などが多くあがりました。

「1時間以内」であればCAPを負担に感じないと答えた患者さんが約5割を占めました

無回答

1時間以内

30分以内

15分以内

その他

0 10 20 30 40 50 60(%)

Q4

51

5

6

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IBD患者さんはCAPの有効性についてどのくらい満足していますか?

患者さんのCAPの有効性に対する満足度は、「非常に満足」が35人、「比較的満足」が41人でした。これら2つの回答が全体の68%を占め、患者さんのCAPの有効性に対する満足度が高いことがわかりました。また、UCとCD別では、UC患者さんの方が効果に対する満足度が高い傾向にありました。

「非常に満足」、「比較的満足」と感じた患者さんが約6割を占めました

0 10 20 30 40(%)

Q6

CAP再治療を希望するIBD患者さんはどのくらいいますか?

CAP再治療を「実施したい」と答えた患者さんが81人で、全体の72%を占めました。CAPの効果を実感した多くの患者さんが、CAP再治療を希望していることがわかりました。

CAP再治療を希望する患者さんが7割強を占めました

Q7

0 10 20 30 40 50(%)

IBD患者さんはCAPの安全性についてどのくらい満足していますか?

患者さんのCAPの安全性に対する満足度は、「非常に満足」が50人、「比較的満足」が49人でした。これら2つの回答が全体の89%を占め、患者さんのCAPへの安全性に対する満足度が高いことがわかりました。CAPは血液の一部を体外へ連続的に取り出し、白血球を選択的に除去、その後血液を体内に戻す治療法です。血液を体外で循環させるため、不安に思う患者さんもみられますが、今回の調査では、CAPの安全性に対する患者さんの満足度が高いことが示されました。

「非常に満足」、「比較的満足」と感じた患者さんが約8割を占めました

無回答

非常に満足

比較的満足

どちらともいえない

比較的不満足

0

Q5

45

44

10

31

37

27

非常に満足

比較的満足

比較的不満足

非常に不満足

どちらともいえない

n=112

0 20 40 60 80(%)

無回答

実施したい

その他

実施したくない

n=112

n=112

n=112

72

14

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最後に

n=112

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セルソーバ

セルソーバ小児・低体重者用

2010年10月 保険適用

血球細胞除去用浄化器

効能・効果潰瘍性大腸炎患者の活動期における寛解導入を目的として白血球除去療法に使用(但し、ステロイド治療抵抗性の重症又は中等症の全大腸炎型及び左側大腸炎型の患者を対象とする)

ステロイド治療抵抗性の患者の定義: 厚生労働省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班の潰瘍性大腸炎治療指針に基づいたステロイド治療で効果が得られない患者

承認番号 21300BZZ00440000(血球細胞除去用浄化器セルソーバE)

M20135 2013.5-7797

第14号2013年5月発行 無断転載・複製を禁ず

®メディカス 2013

本誌に関するお問い合わせは下記までどうぞ。

■発行/資料請求先

東京都千代田区神田神保町1-105神保町三井ビルディング 〒101-8101URL:http://www.asahi-kasei.co.jp/medical/

■企画/制作

東京都新宿区信濃町35信濃町煉瓦館4F 〒160-0016URL:http://www.publicislifebrandsmedicus.jp

メディカスNo.14 2013 Spring

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