vision for future welch allyn spottm vision screener 信頼 ...welch allyn spottm vision screener...

4
Vision for Future www.welchallyn.jp フロントライン医療の、 信頼されるパートナーであるために -Vision for All - vol.17 / 2019 小児の弱視を早期発見するために、 関わるすべての医療従事者の皆様へ Welch Allyn SPOT TM Vision Screener はじめに ウェルチ ・ アレンは、 1915 年に Francis Welch 医師と技術者 William Noah Allyn が 「患者さんの眼を、 もっと簡単に、 しかも的確に検査 できる方法はないだろうか?」 と考え、世界初の携帯型直像検眼鏡の開発、および製造に成功したところから始まりました。 創始者の思いは、ウェ ルチ ・ アレンのすべての機器に受け継がれ、 今は世界各国にそのネットワークを広げています。 特に 「眼」 については 「Vision for All」 とのスロー ガンを掲げ、 乳幼児からご高齢の方々に至るまで、 眼に関わる様々な診断機器、 スクリーニング機器をご提供しております。 特に 2015 年に 販売を開始した 「ウェルチ・アレン スポット ビジョンスクリーナー」(以下略:SVS)は、両眼同時測定が可能で、非常に使いやすい、” 携帯型ビジョ ンスクリーナー” として、 全世界で注目を浴びています。 本紙 「Vision for Future」 では、 SVS をご使用いただいている皆様への情報提供、 また、 情報共有を目的としています。 そして更にユーザー インタビューを通して、 実際にお使い頂いている方々のお声をシリーズ化することで、 弱視の早期発見の重要性についても、 様々な観点から考え ていきたいと思います。 第 17 号となります Vol.17 では、2019 年浜松市にて合同開催で行われた第 75 回日本弱視斜視学会、第 44 回日本小児眼科学会の ランチョ ンセミナー、 日本弱視斜視学会理事長であり浜松医科大学の眼科 佐藤美保先生、 国立成育医療研究センター眼科 仁科幸子先生のご 講演をまとめました。 「Vision for All」-それが私たちウェルチ ・ アレンのビジョンです。 『眼科健診の現状と今後』 ~眼科と小児科の連携~ はじめに 仁科 幸子 先生(国立成育医療研究センター 眼科) 演者 演者 1 小児専門病院の現場では、子どもの弱視を3歳代で見つけることも重要 だが、0歳代で起こる重要眼疾患の診断と治療も課題であり、また難治性 疾患に対するロービジョンケア、他の身体の病気や発達障害を見つけてあ げること、そのようなことも踏まえて就学前までにより良い視力と両眼視を獲 得させてあげるというのがわれわれのひとつの目標である。 そのためには早期発見、治療が何よりも大事であり、また乳幼児健診、 小児科の先生方との連携がもっとも大事なことだと考えている。 乳幼児健診の現状と今後 ~眼科と小児科の連携~ 回日本弱視斜視学会総会  第 回日本小児眼科学会総会 合同学会 75 44 ランチョンセミナー1 2019年625アクトシティ浜松 共催 第75回日本弱視斜視学会総会 第45回日本小児眼科学会総会 合同学会・アールイーメディカル株式会社

Upload: others

Post on 19-Feb-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • Vision for Futurewww.welchallyn.jp

    フロントライン医療の、信頼されるパートナーであるために

     -Vision for All -

    vol.17 / 2019小児の弱視を早期発見するために、 関わるすべての医療従事者の皆様へ

    Welch Allyn SPOTTM Vision Screener

    はじめにウェルチ ・ アレンは、 1915 年に Francis Welch 医師と技術者 William Noah Allyn が 「患者さんの眼を、 もっと簡単に、 しかも的確に検査できる方法はないだろうか?」 と考え、世界初の携帯型直像検眼鏡の開発、および製造に成功したところから始まりました。 創始者の思いは、ウェルチ・アレンのすべての機器に受け継がれ、 今は世界各国にそのネットワークを広げています。 特に 「眼」 については 「Vision for All」 とのスローガンを掲げ、 乳幼児からご高齢の方々に至るまで、 眼に関わる様々な診断機器、 スクリーニング機器をご提供しております。 特に 2015 年に販売を開始した 「ウェルチ・アレン スポット ビジョンスクリーナー」(以下略:SVS)は、両眼同時測定が可能で、非常に使いやすい、” 携帯型ビジョンスクリーナー” として、 全世界で注目を浴びています。本紙 「Vision for Future」 では、 SVS をご使用いただいている皆様への情報提供、 また、 情報共有を目的としています。 そして更にユーザーインタビューを通して、 実際にお使い頂いている方々のお声をシリーズ化することで、 弱視の早期発見の重要性についても、 様々な観点から考えていきたいと思います。第17号となります Vol.17では、2019年浜松市にて合同開催で行われた第75回日本弱視斜視学会、第44回日本小児眼科学会の ランチョンセミナー、 日本弱視斜視学会理事長であり浜松医科大学の眼科 佐藤美保先生、 国立成育医療研究センター眼科 仁科幸子先生のご講演をまとめました。 「Vision for All」-それが私たちウェルチ ・ アレンのビジョンです。

    『眼科健診の現状と今後』~眼科と小児科の連携~

    はじめに

    仁科 幸子 先生(国立成育医療研究センター 眼科)演 者

    演 者 1

     小児専門病院の現場では、子どもの弱視を3歳代で見つけることも重要だが、0歳代で起こる重要眼疾患の診断と治療も課題であり、また難治性疾患に対するロービジョンケア、他の身体の病気や発達障害を見つけてあげること、そのようなことも踏まえて就学前までにより良い視力と両眼視を獲得させてあげるというのがわれわれのひとつの目標である。 そのためには早期発見、治療が何よりも大事であり、また乳幼児健診、小児科の先生方との連携がもっとも大事なことだと考えている。

    乳幼児健診の現状と今後 ~眼科と小児科の連携~

    第 回日本弱視斜視学会総会  第 回日本小児眼科学会総会 合同学会75 44 ランチョンセミナー1

    2019年6月25日 アクトシティ浜松共 催 第75回日本弱視斜視学会総会 第45回日本小児眼科学会総会 合同学会・アールイーメディカル株式会社

  • ●母子保健法に基づき市区町村が実施する健康診査 現在、我が国の乳幼児健診は1歳6か月、3歳児健診は必須、多くの自治体で3~4か月や9~10か月健診が実施されており、また、医療機関で1か月健診が行われているのが通常である。目的は健康状態の把握であり、総合的な健康診断であって、特定の疾患があるかどうかを精度を持って検出するというシステムにはなっていないのが現状である。 図1は2014年に私が1384の自治体に対して行った乳幼児健診での視覚スクリーニング実施状況の調査結果であるが、3歳児では健診実施率は高いが、3歳以下だと3~4か月と1歳6か月健診が多く、その中でも視覚のスクリーニングが行われているのは6~7割にとどまっているという現状であった。                          

    ●乳幼児健診マニュアル:視覚異常の診方 マニュアルには新生児期から眼の項目が掲載されている。問診に関しても項目がリスト化されており、特に網膜芽細胞種、白内障、緑内障、網膜剥離を若い頃に罹患した家族歴がある場合、生後1か月以内の眼科受診を勧めている。診察項目としては、外から診て分かる角膜混濁や白色瞳孔といった異常兆候や、片眼ずつ遮閉しての固視・追視検査、斜視検出のための眼位検査、そして眼疾患の検出のためRed reflex法の実施を推奨している。

    ●機器による視覚スクリーニング 我が国で2015年夏より販売開始されたSVSは小児科の先生方にも既に1000台以上普及しており、この機器を活用していく方法を小児科と眼科で連携して検討していかなければならない。SVSは生後6か月から両眼同時に屈折、眼位、瞳孔径、瞳孔間距離が測定可能で、測定距離は1m、健常児であれば測定時間約1秒であるため、比較的成功率が高いという利点がある。また、調節の介入が入りにくいため近視化することが少なくスクリーニングに適した機器である。

    ●斜視の検出や眼器質疾患の際にも有用 図2は国立成育医療研究センターで行った調査結果である。SVSによる斜視判定と、眼科医による近見眼位検査を比較したデータであるが、被験者が乳幼児であってもSVSの斜視検出に関する鋭敏度は94.7%、特異度は92.9%と高く、小児科の先生方が斜視を検出するのに有用な機器とご案内しても良いと思われる。また眼器質疾患のある3歳以下の児、132例を対象にSVSでどうの診断されていたか検証したところ、132例中、両眼同時測定ができなかったのが66例のうち、外眼部疾患で測定できなかった以外は全例が重篤な視覚障害をきたす疾患であった。複数回、小児科で両眼同時測定が不能な場合は、是非眼科に送って頂き、眼科医に器質疾患を見つけて欲しいと思う。

    ●SVSを活用するにあたり 日本弱視斜視学会と日本小児眼科学会では小児科の先生方に向けてSVSをどう運用すべきかの運用マニュアルを準備した。両学会のホームページにも掲載しているので、知らない先生方がいたら是非ご紹介いただきたい(「小児科医向けSpot Vision Screener運用マニュアル vol.1 2018年7月発行」)。 SVSでは視力は測れない(弱視の危険因子となる斜視や屈折異常のスクリーニング機器)こと、運用マニュアルを活用し、必ず眼の診察、問診、視力検査と併用することに留意をしていただきたい。

    ●世界の最先端を走る日本の健診事情 3歳児健康診査は日本では1961年にスタートしたが、この当時、視覚健診は問診のみであった。1962年には大阪の竹内先生、湖崎先生を中心として大阪府全小中学生弱視健診成績というものが発表されている。その後、約30年を経て1990年「乳幼児の眼科健診の体系化に関する研究」として厚生労働省の研究班が作られ、三歳児健康診査に視覚健診が加えられた。また、同時期の1992年、世界に先駆けて健診の論文が日本からAmerican Journal of Ophthalmologyに発表され、東京での家庭での視力スクリーニングの結果が報告されている。 1997年から3歳児健診は母子保健法に基づき市町村事業に委譲されているが、その中で満1歳6か月を越え、満2歳に達しない幼児、満3歳を越え、満4歳に達しない幼児、ならびに必要に応じ、妊産婦もしくは乳幼児、もしくは幼児に対して市町村が健康診査を行わなければならないとされている。さらに最近では2017年に厚労省より、3歳児健診における視力検査の重要性を伝えること、家庭で視力検査が出来なかった場合、健診会場で行うこと、0.5の視標が正しく見えなかった場合に精密検査をすすめることなどの通達が出ている。

    ●現在の日本の三歳児健診 日本眼科医会の調査によると、2018年では約半数の自治体が3歳6か月で健診を行っている。この頃になると眼に異常の無い児の平均視力は0.8に達し、またそれ以前だと視力による評価が難しいということもある。※1

     図1にあるとおり、3歳6か月は遅すぎるかというと、アメリカのデータにはなるが、重度の弱視では5~7歳に治療した場合に比べ、3~5歳に治療した場合の反応が良好とあり、まだまだ視覚の感受性時期にあり、さらに視力の検査可能率が高いので、視力検査をするには非常に適した時期だと思われる。

    ●海外の健診事情 2008年までのデータになるが、4歳における視力検査、乳児に対する健診はスウェーデン、オランダ、イギリスなどで、3~5歳の健診がソウルで行われていたが、海外では子どもの視覚健診はあまり一般的ではない。さらに、4~5歳までのスクリーニングは医療経済効果の面でメリットがないのでやめるべき、といった論文まで発表されている。アメリカでは3~5歳児に対する視力検査による弱視発見の成果があがらないので、機器を用いたスクリーニングを導入するとどうなるか、という研究もされており、視力検査とSVSの比較でSVSでは検査完了率が高いという発表も出ている。視力検査より実施時間が短くて済み、「視力検査が出来ない」という理由で眼科への紹介を減らすことができるので、特に3歳児ではSVSが有用という理論である。

    ●現状と課題 山形県寒河江市の健診研究結果から考察すると、従来の健診(問診・視力検査)では弱視8例、屈折異常症例5例を検出しており、スクリーニング機能を果たしているが、他覚的検査(屈折検査・眼位検査)を取り入れることで検査完了率も高まり、従来の方法では見逃されていた不同視弱視や屈折異常も検出でき、健診精度が高くなると言える。

    ●SVSで見逃される可能性のある症例 SVSでは23個のLED赤外線カメラから発せられた光に対する反射光の分布から屈折状態を測定しているため、混濁が軽度、限局的であると見逃されてしまう可能性がある。間欠性外斜視、初期の調節性内斜視、視神経、網膜、中間透光体の異常はそういった見逃される症例である。

     また、視覚スクリーニングの担当者は保健師さん、小児科の先生であり、スクリーニング方法は問診や視診が中心で、固視・追視・眼位検査、ならびに欧米では一般的なRed Reflex法での検査まで実施している自治体は非常に少なく、スクリーニング方法に対しても、改変が必要であると考えられる。

    ●現状の課題 3歳までの眼科健診は、主に重症眼疾患や斜視の早期発見が目的ではあるが、小児科の先生と保健師さんの診察と問診のみに頼っており、有効なスクリーニング法が導入されていない。また、感受性の高い新生児期や乳児期の眼科健診がないことも問題であり、小児科の先生が効率よく眼のチェックを出来るような診察のマニュアル化が必要であると考えられる。それに加え、要精査児の事後処理、連携をよくする働きかけをすることが課題として浮き彫りになった。

    ●乳幼児健康診査の標準化 平成30年3月に自治体による健診方法の差をなくすために、標準的な乳幼児健診に関する調査検討委員会により、「乳幼児健康診査 身体観察マニュアル」が作成された。その際に、日本小児眼科学会、日本弱視斜視学会から要望を出して視覚異常の診方を収載した。自治体の乳幼児健診に関わっている先生方がいたら、このマニュアルについても是非ご案内していただきたい。

    我が国の乳幼児健診

    図1

    図2

    よりよい視覚スクリーニングの実施に向けて

  • ●母子保健法に基づき市区町村が実施する健康診査 現在、我が国の乳幼児健診は1歳6か月、3歳児健診は必須、多くの自治体で3~4か月や9~10か月健診が実施されており、また、医療機関で1か月健診が行われているのが通常である。目的は健康状態の把握であり、総合的な健康診断であって、特定の疾患があるかどうかを精度を持って検出するというシステムにはなっていないのが現状である。 図1は2014年に私が1384の自治体に対して行った乳幼児健診での視覚スクリーニング実施状況の調査結果であるが、3歳児では健診実施率は高いが、3歳以下だと3~4か月と1歳6か月健診が多く、その中でも視覚のスクリーニングが行われているのは6~7割にとどまっているという現状であった。                          

    ●乳幼児健診マニュアル:視覚異常の診方 マニュアルには新生児期から眼の項目が掲載されている。問診に関しても項目がリスト化されており、特に網膜芽細胞種、白内障、緑内障、網膜剥離を若い頃に罹患した家族歴がある場合、生後1か月以内の眼科受診を勧めている。診察項目としては、外から診て分かる角膜混濁や白色瞳孔といった異常兆候や、片眼ずつ遮閉しての固視・追視検査、斜視検出のための眼位検査、そして眼疾患の検出のためRed reflex法の実施を推奨している。

    ●機器による視覚スクリーニング 我が国で2015年夏より販売開始されたSVSは小児科の先生方にも既に1000台以上普及しており、この機器を活用していく方法を小児科と眼科で連携して検討していかなければならない。SVSは生後6か月から両眼同時に屈折、眼位、瞳孔径、瞳孔間距離が測定可能で、測定距離は1m、健常児であれば測定時間約1秒であるため、比較的成功率が高いという利点がある。また、調節の介入が入りにくいため近視化することが少なくスクリーニングに適した機器である。

    ●斜視の検出や眼器質疾患の際にも有用 図2は国立成育医療研究センターで行った調査結果である。SVSによる斜視判定と、眼科医による近見眼位検査を比較したデータであるが、被験者が乳幼児であってもSVSの斜視検出に関する鋭敏度は94.7%、特異度は92.9%と高く、小児科の先生方が斜視を検出するのに有用な機器とご案内しても良いと思われる。また眼器質疾患のある3歳以下の児、132例を対象にSVSでどうの診断されていたか検証したところ、132例中、両眼同時測定ができなかったのが66例のうち、外眼部疾患で測定できなかった以外は全例が重篤な視覚障害をきたす疾患であった。複数回、小児科で両眼同時測定が不能な場合は、是非眼科に送って頂き、眼科医に器質疾患を見つけて欲しいと思う。

    ●SVSを活用するにあたり 日本弱視斜視学会と日本小児眼科学会では小児科の先生方に向けてSVSをどう運用すべきかの運用マニュアルを準備した。両学会のホームページにも掲載しているので、知らない先生方がいたら是非ご紹介いただきたい(「小児科医向けSpot Vision Screener運用マニュアル vol.1 2018年7月発行」)。 SVSでは視力は測れない(弱視の危険因子となる斜視や屈折異常のスクリーニング機器)こと、運用マニュアルを活用し、必ず眼の診察、問診、視力検査と併用することに留意をしていただきたい。

    ●世界の最先端を走る日本の健診事情 3歳児健康診査は日本では1961年にスタートしたが、この当時、視覚健診は問診のみであった。1962年には大阪の竹内先生、湖崎先生を中心として大阪府全小中学生弱視健診成績というものが発表されている。その後、約30年を経て1990年「乳幼児の眼科健診の体系化に関する研究」として厚生労働省の研究班が作られ、三歳児健康診査に視覚健診が加えられた。また、同時期の1992年、世界に先駆けて健診の論文が日本からAmerican Journal of Ophthalmologyに発表され、東京での家庭での視力スクリーニングの結果が報告されている。 1997年から3歳児健診は母子保健法に基づき市町村事業に委譲されているが、その中で満1歳6か月を越え、満2歳に達しない幼児、満3歳を越え、満4歳に達しない幼児、ならびに必要に応じ、妊産婦もしくは乳幼児、もしくは幼児に対して市町村が健康診査を行わなければならないとされている。さらに最近では2017年に厚労省より、3歳児健診における視力検査の重要性を伝えること、家庭で視力検査が出来なかった場合、健診会場で行うこと、0.5の視標が正しく見えなかった場合に精密検査をすすめることなどの通達が出ている。

    ●現在の日本の三歳児健診 日本眼科医会の調査によると、2018年では約半数の自治体が3歳6か月で健診を行っている。この頃になると眼に異常の無い児の平均視力は0.8に達し、またそれ以前だと視力による評価が難しいということもある。※1

     図1にあるとおり、3歳6か月は遅すぎるかというと、アメリカのデータにはなるが、重度の弱視では5~7歳に治療した場合に比べ、3~5歳に治療した場合の反応が良好とあり、まだまだ視覚の感受性時期にあり、さらに視力の検査可能率が高いので、視力検査をするには非常に適した時期だと思われる。

    ●海外の健診事情 2008年までのデータになるが、4歳における視力検査、乳児に対する健診はスウェーデン、オランダ、イギリスなどで、3~5歳の健診がソウルで行われていたが、海外では子どもの視覚健診はあまり一般的ではない。さらに、4~5歳までのスクリーニングは医療経済効果の面でメリットがないのでやめるべき、といった論文まで発表されている。アメリカでは3~5歳児に対する視力検査による弱視発見の成果があがらないので、機器を用いたスクリーニングを導入するとどうなるか、という研究もされており、視力検査とSVSの比較でSVSでは検査完了率が高いという発表も出ている。視力検査より実施時間が短くて済み、「視力検査が出来ない」という理由で眼科への紹介を減らすことができるので、特に3歳児ではSVSが有用という理論である。

    ●現状と課題 山形県寒河江市の健診研究結果から考察すると、従来の健診(問診・視力検査)では弱視8例、屈折異常症例5例を検出しており、スクリーニング機能を果たしているが、他覚的検査(屈折検査・眼位検査)を取り入れることで検査完了率も高まり、従来の方法では見逃されていた不同視弱視や屈折異常も検出でき、健診精度が高くなると言える。

    ●SVSで見逃される可能性のある症例 SVSでは23個のLED赤外線カメラから発せられた光に対する反射光の分布から屈折状態を測定しているため、混濁が軽度、限局的であると見逃されてしまう可能性がある。間欠性外斜視、初期の調節性内斜視、視神経、網膜、中間透光体の異常はそういった見逃される症例である。

     また、視覚スクリーニングの担当者は保健師さん、小児科の先生であり、スクリーニング方法は問診や視診が中心で、固視・追視・眼位検査、ならびに欧米では一般的なRed Reflex法での検査まで実施している自治体は非常に少なく、スクリーニング方法に対しても、改変が必要であると考えられる。

    ●現状の課題 3歳までの眼科健診は、主に重症眼疾患や斜視の早期発見が目的ではあるが、小児科の先生と保健師さんの診察と問診のみに頼っており、有効なスクリーニング法が導入されていない。また、感受性の高い新生児期や乳児期の眼科健診がないことも問題であり、小児科の先生が効率よく眼のチェックを出来るような診察のマニュアル化が必要であると考えられる。それに加え、要精査児の事後処理、連携をよくする働きかけをすることが課題として浮き彫りになった。

    ●乳幼児健康診査の標準化 平成30年3月に自治体による健診方法の差をなくすために、標準的な乳幼児健診に関する調査検討委員会により、「乳幼児健康診査 身体観察マニュアル」が作成された。その際に、日本小児眼科学会、日本弱視斜視学会から要望を出して視覚異常の診方を収載した。自治体の乳幼児健診に関わっている先生方がいたら、このマニュアルについても是非ご案内していただきたい。

    “Vision for Future” vol.17

    小児視覚健診の歴史と現状

    佐藤 美保 先生(浜松医科大学病院 眼科教授)演 者

    演 者 2三歳児健診の現状と今後 

    図1

  • HRJ_FLC_VFF201908vol17

    ウェルチ ・ アレン ・ ジャパン株式会社

    Welch Allyn SpotTM User Interview “Vision for Future” , vol.17, 2019

    ※1 参考文献三歳児眼科健康診査調査報告(VI) -平成28年度-日本の眼科 2018

    ●進歩し続ける日本の健診 1960年代に始まった3歳児の健康診査、1990年代に入って三歳児の視覚健診が行われ、2010年には保育園、こども園での視力検査が行われ、最近除々にこういった屈折検査が導入されるようになっており、日本の健診の精度は進歩し続けている。これからの小児眼科健診をよりよいものにしていくために、スクリーニングの充実をどうやって進めていくか、また、精密検査受診率をどうやってあげていくか、また、日本の健診精度をどれだけ上げても、コストパフォーマンスの良い健診ということを常に念頭においてやっていかないといけない。今後の展望としては、健診への屈折検査の導入、視能訓練士による視力検査、幼稚園、こども園、保育園での視力検査の徹底が望まれる。また、精密検査受診率をあげるために保護者の方々への弱視に関する情報提供が大切であり、小児科の先生方との連携が大変重要になってくる。 日本弱視斜視学会のホームページでは「一般の皆様へ」として3歳児健診のご案内を掲載しており、特に家庭での視力検査の方法も掲載しているので、是非ご覧いただきたい。https://www.jasa-web.jp/general/3sai-guide私達も少しでも早く、子ども達の視力障害を見つけ、早く治療を開始できたらと願う。

    これからの小児眼科健診

    SpotTM Vision Screener ( スポット ビジョンスクリーナー ) についてSVS は 6 か月乳児から成人まで、より容易な屈折度測定を可能にしたビジョンスクリーナーです。 瞳孔検知後、瞬時に両眼測定完了するスピーディで正確な測定技術、 験者にとっても照準の容易さ、 測定結果の速やかなリポート機能、 ワイヤレスでのリポート印刷機能等、 優れた特徴を多く兼ね備えた新しい携帯型ビジョンスクリーナーです。2016年1月、米国小児科学会、米国眼科学会、米国小児眼科斜視学会、米国認定視能訓練士学会の共著で、乳幼児、小児の眼のスクリーニングには機器を用いた他覚的検査を推奨するガイドラインが発行されています。

    その他、 SVS に関する論文は日本でも数多く出ております。

    製品に関するご質問、 お問い合わせ、 より詳しい資料などにつきましては当社までお問い合わせください。

    Visual System Assessment in Infants, Children, and Young Adults by PediatriciansCommittee on practice and ambulatory medicine, section on Ophthalmology,American Association of Certified Orthoptists, American Association for Pediatric Ophthalmology and Strabismus,American Academy of Ophthalmology, POLICY STATEMENT, American Academy of PediatricsPediatrics Volume 137, number 1, January 2016

    SpotTM Vision Screener を導入した小児科と眼科の連携西田 朋夏、 高木 満里子、 上野 重文、 野村 代志子、 藤井 京子、 山口 素、 三池 祐美、 山口 房子、 山口 省之「日本視能訓練士協会誌」(第 46 巻、 2017)p. 137-146

    VFF_vol17_aVFF_vol17_bVFF_vol17_cVFF_vol17_d