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Copyright © Masaya Ando 長期的ユーザビリティとサスティナビリティ ユーザを導くデザインへ 安藤 昌也 [email protected]

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Page 1: World Usability Day 2009 Japan

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長期的ユーザビリティとサスティナビリティ~ ユーザを導くデザインへ

安藤 昌也[email protected]

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自己紹介

安藤 昌也 産業技術大学院大学 創造技術専攻 助教

– 1997年 早稲田大学政治経済学部 卒

– 1997年 NTTデータ通信

– 1998年 アライド・ブレインズ株式会社 取締役

– 2007年~ 国立情報学研究所 特任研究員

– 2008年~ 現職

– 2009年 総合研究大学院大学メディア社会文化専攻修了 博士(学術)

2001~2004年 JIS X8341-3(Webアクセシビリティ)委員

2006年~ ISO/TC159国内対策委員会委員・WG5(アクセシビリティ)

・WG6(人間中心設計)

2009年~ 人間中心設計推進機構 理事

2009年~ JIS X8341-6 原案作成委員会 幹事

●ユーザビリティ・アクセシビリティ等に関する公的活動

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サスティナビリティ?

サスティナビリティ

本音は・・・ムズカシイ

「サスティナビリティ」ってHCDとどう関係するのか?

長く使ってもらうことが、サスティナビリティになるのか?

長く使ってもらうとしたら、どのようにすればいいのか?

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「サスティナビリティ」ってHCDとどう関係するのか?

疑問

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ISO13407改定でのサスティナビリティの重視

HCDの規格13407は、来年改定される。そこに、HCDとサスティナビリティについての記述がある。

7. サスティナビリティと人間中心設計規格という点でのサスティナビリティは、経済、社会、環境の統合とバランスを考慮することを伴っている

[ISO9241-210, 注:安藤仮訳]

“HCDはサスティナビリティを支持している”というのだが、具体的にどうすればいいのか?

経済側面の例

ユーザニーズにこたえることで、ユーザに拒否される可能性を減らす

社会側面の例HCDを導入することで、障害者を含めたユーザの健康と福祉の増進になる

環境側面の例HCDは、設計全体のライフサイクルアプローチを促進する

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HCDがサスティナビリティに貢献できることは?

インタラクション研究分野では、サスティナビリティを考える研究や主張が注目されている。

Sustainable Interaction Design (Blevis, 2007)

• Blevisは、情報技術を用いたサスティナブルなプロダクトを実現するための原則として、以下の5つを提案した。

1. 発明と廃棄のリンク

2. 更新と再利用の促進

3. 品質と同等の促進

4. 所有とアイデンティティの分離

5. 自然なモデルの使用と反映

iPodのような長く使える仕組みを提供するだけでいいのか?

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長寿命のデザイン

プロダクトデザイナーのD. ラムスは「長く使い続けられ

る製品を生み出す」ことが、デザインが環境に貢献できることだと主張している。

出所: 2009/08/24 日経デザイン

デザインは環境問題にどのように関わるべきか?

数十年に渡って、市場に出回っているプロダクトがあり

ます。そういう長寿命のデザインが、最も環境にやさし

い。ワンシーズン使ってすぐ廃棄されるとか、生活にな

じまず、ただ人の目を引くために施されたデザインは長

く愛用されず、環境にやさしいとは言えません。

特にインタラクションやインタフェースに関して長く使ってもらえる製品を作るにはどうしたらいいのか?

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課題

長く使ってもらうためにはどうすればいいのか?

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長期的ユーザビリティ

“製品を長く使う”とはどういうことか?

インタラクティブ製品を、長期にわたって実利用環境で使用する間に、ユーザが形成する製品の使用に対する評価

長く使っている製品は、製品に対するユーザの関心が高い。

多少問題があっても、何とか使おうと努力する。

製品評価は、“満足感”として感じられる。

長期利用の結果として“愛着”を感じるようになる。

陳腐化を感じても、“まだ使える”という判断が長く使わせる。

Long Term Usability (Ando & Kurosu, 2005)

使う意欲

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長く使うユーザの研究からの仮説

“知覚された製品の陳腐化”と、“機能の陳腐化”のギャップを埋める支援策を提供する2

ユーザの「使う意欲」を高め・維持することで、より良く・愛着を持って使ってもらう

1

ユーザ体験の高い製品→長く使ってもらえる

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“使う意欲”の構成要因

インタラクティブ製品の利用意欲は、2つの要因で構成される(安藤, 2008)。

製品ジャンルへの

興味・知識操作することへの

積極性・自信

利用対象製品に対する

製品関与インタラクティブ操作に対する

利用自己効力感

※自己効力感 「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく

成し遂げるための能力についての個々の信念」(Bandura,1977)

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ユーザの使う意欲を高めるとは?

ユーザをうまく導けば、UIを使う意欲が高まる。

– 例: デジタルテレビのデータ放送

すごいニコニコ使ってる感いっぱい

“日立いいわ”

“使えるじゃん!”という経験により、使う意欲を高め製品をより良く・愛着をもって使ってもらえる

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ユーザの使う意欲を高めるとは?

iPhoneのAPPを自慢する人は、製品を使う意欲が高まっている状態だと言える。

思いがけないAPPを発見する楽しさ=製品関与の向上

自分に適したニーズのAPPを入れてカスタムする喜び=自己効力感の向上

これらを手軽に体験できる経済性とUIデザイン

意欲が低いユーザにも、敷居を低くしユーザを導くデザインがポイント

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長く使うユーザの研究からの仮説

“知覚された製品の陳腐化”と、“機能の陳腐化”のギャップを埋める支援策を提供する2

ユーザの「使う意欲」を高め・維持することで、より良く・愛着を持って使ってもらう

1

ユーザ体験の高い製品→長く使ってもらえる

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長期利用と知覚陳腐化

本当に長く製品を使い続けている人は、製品の陳腐化と機能の陳腐化を区別し、使う意欲を維持している。

一般的な満足度の変化

ユーザが知覚する陳腐化は、主に流行との比較によるもの機能としての寿命をどう活かすかのサポートが重要

満足度

利用期間

新製品を意識

長く使っている製品の満足度の変化

満足度 満足度

問題 問

題問題

問題

問題

買い替え検討

我慢

諦め

使い方を変える

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陳腐化の知覚ギャップを乗り越えるヒントとして

Willcom WP004

2007

ハードウェア

ソフトウェア

カスタム

リフレッシュ

Willcom

WP003 2007

増設

ソフトウェアの追加

修理・リペア

カスタマイズ

着せ替え

モジュール変更

アップデート

アップグレード

メンテナンスサービス

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長く使うユーザの研究からの仮説

“知覚された製品の陳腐化”と、“機能の陳腐化”のギャップを埋める支援策を提供する2

ユーザの「使う意欲」を高め・維持することで、より良く・愛着を持って使ってもらう

1

ユーザを“導くデザイン”が重要

ユーザ体験の高い製品→長く使ってもらえる

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積極的にエコに “導くデザイン”

インタラクションは、ユーザのエコ意識に応え、積極的に行動変容を導くこともできるはずだ。

http://toyota.jp/sai/eco_passport/index.html

エコドライブの楽しさを広げる トヨタ ESPO

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まとめ

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本日のまとめ

ユーザを導き、製品を長く使ってもらうデザインはHCDが貢献できるサスティナビリティである

1. HCDプロセスにおいて、サスティナビリティを考慮することは、新たな常識。

2. 使う意欲が高いほど、良く・愛着を持って使う。ユーザの意欲を高め、維持するデザインやサービスを検討することが、長く使ってもらうためには重要。

3. ユーザのエコ意識に応えるためにも、ユーザを導くインタフェースを持った製品づくりへの挑戦が、今後の課題。

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連絡先

公立大学法人 首都大学東京

産業技術大学院大学

電話: 03-3472-7831 (代表)

FAX: 03-3472-2790

安藤個人宛 連絡先

Mail: [email protected]

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使う意欲と製品評価の傾向

冷静・合理的

ユーザ

ミニマム利用

ユーザ

高低

自己効力感(SE)

製品関与(PI)

マニア

ユーザ

期待空回り

ユーザ

よく使い、使いこなす満足度:高、愛着:高陳腐化:感じやすい

うまく使いこなせない満足度:中、愛着:高陳腐化:感じやすい

たまに使う程度満足度:中、愛着:低陳腐化:感じにくい

あまり使わない満足度:低、愛着:低陳腐化:感じにくい

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使う意欲をいかに高めるか?

自己効力感をヒントにすると、ユーザの意欲を高められる可能性が見えてくる。

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使う意欲をいかに高めるか?

自己効力感をヒントにすると、ユーザの意欲を高められる可能性が見えてくる。

思いがけないAPPを発見する楽しさ

カスタマイズの満足感