ws 実験解説書 訂1 ws3&4 - 東京大学クリップモーター工作とコイルの実験...

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クリップモーター工作とコイルの実験 電線に電気が流れると、電線の回りに磁気(磁力線)が生じます。「コイル」は電線を何回も巻いて、発 生する磁力線を強くしています。この電気の流れているコイルに永久磁石を近づけるとコイルの磁力線と永 久磁石の磁力線がぶつかって回転方向の力が発生します。電気エネルギー利用の基本となるコイルを応用し た電動モーターは、家庭電化製品をはじめ、多くの製品に使用されています。クリップモーターは簡単に工 作ができ、また、モーターの回る仕組みが理解しやすい教材です。自分で工作し、何故、また、どのように 回り続けるかを学習しましょう。 クリップモーターの名前は、電極にクリップを使用することでそのように言われており、中学校などでは コイルモータとも呼ばれています。小学校 5 年生の「電磁石」の単元、又、中学校の 2 年生の「電流と磁界」 の単元に紹介されています。 1. 準備するクリップモーターの部品と工具; 部品:乾電池と電池ボックス、クリップ、フェライト磁石、エナメル線(0.4mm 径) 工具:紙ヤスリ、コイル巻き用丸棒、エナメル線切断用ニッパーなど 2. 工作順序と注意事項 1) エナメル線約 1m を丸棒に巻き付け(両側の耳(コイル完成後の支え)となる約 7cm の直線部を残す)、 丸棒から抜いてコイルを作る。 2) エナメル線の耳となる直線部をコイルの両側の対象の位置で 2 回ほど強く巻き付け、コイルがほぐれな いようにする(「対象の位置」が重要)。 3) コイルに耳を巻き付けた後、耳の長さを 5cm 程度に切断する。 4) 紙ヤスリで耳の部分のエナメルをはがす(下記に注意! 片方の耳はエナメル線の周全体を磨く もう片方の耳はエナメル線の「片面半分」だけを磨く (「片面」といっても、コイルの太さの半周は十分磨くこと) 「片面半分」だけの磨きは、コイルを平面において、その 状態で、エナメル線の上の面の片面を磨く(回転させるとき に磁石を左右から接近させるため) 耳の根元までしっかり磨くこと(磨きが悪いと電気が流れず、回らない)。 5) コイルをすこし扁平にする(扁平のほうが磁力線の作用が強い) 「片側半分」だけを磨く理由 耳を両方とも全周磨くと、いつも電流が流れるので、コイルが半回転すると電磁力が逆の回転力とな り回転が継続しない。半周が磨いていないと、半回転は電流が流れず、コイルは慣性(勢い)で回り、 1回転後に同じ方向の電流が流れ、同じ回転方向の電磁力を受けて回転が継続する。 (磁石の前のコイルに常時同じ方向の電流が流れるように整流作用を行っている) 3. 回転実験 1) 完成したコイルをクリップに乗せる。 2) 磁石を左右どちらかの方向からか近づけ、そのままの状 態でコイルを軽く手で回す。 3) 回転し始めたら、磁石の NS 方向を反対にして回転方向 が逆になることを実験する。(何故?) 4) 2 個の磁石を 1 個ずつ両側から近づける。 NS の極では さむと回るが、N 極,S 極同士では回らない。(何故?) 5) 磁石はそのままでコイルを反対にのせると反対に回る。 4. その他の注意事項 (何故? コイルはクリップにのせたままにしないこと(電流が流 れ、乾電池が消耗する)。 コイル 磁石を横から 近づける (方向:左 右) 組み立て完了(回転中のコイル)

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Post on 15-Jul-2020

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クリップモーター工作とコイルの実験

電線に電気が流れると、電線の回りに磁気(磁力線)が生じます。「コイル」は電線を何回も巻いて、発

生する磁力線を強くしています。この電気の流れているコイルに永久磁石を近づけるとコイルの磁力線と永

久磁石の磁力線がぶつかって回転方向の力が発生します。電気エネルギー利用の基本となるコイルを応用し

た電動モーターは、家庭電化製品をはじめ、多くの製品に使用されています。クリップモーターは簡単に工

作ができ、また、モーターの回る仕組みが理解しやすい教材です。自分で工作し、何故、また、どのように

回り続けるかを学習しましょう。 クリップモーターの名前は、電極にクリップを使用することでそのように言われており、中学校などでは

コイルモータとも呼ばれています。小学校 5年生の「電磁石」の単元、又、中学校の 2年生の「電流と磁界」の単元に紹介されています。 1. 準備するクリップモーターの部品と工具;

部品:乾電池と電池ボックス、クリップ、フェライト磁石、エナメル線(0.4mm径) 工具:紙ヤスリ、コイル巻き用丸棒、エナメル線切断用ニッパーなど

2. 工作順序と注意事項 1) エナメル線約 1mを丸棒に巻き付け(両側の耳(コイル完成後の支え)となる約 7cmの直線部を残す)、

丸棒から抜いてコイルを作る。 2) エナメル線の耳となる直線部をコイルの両側の対象の位置で 2回ほど強く巻き付け、コイルがほぐれな

いようにする(「対象の位置」が重要)。 3) コイルに耳を巻き付けた後、耳の長さを 5cm程度に切断する。 4) 紙ヤスリで耳の部分のエナメルをはがす(下記に注意!)

片方の耳はエナメル線の周全体を磨く もう片方の耳はエナメル線の「片面半分」だけを磨く (「片面」といっても、コイルの太さの半周は十分磨くこと) 「片面半分」だけの磨きは、コイルを平面において、その

状態で、エナメル線の上の面の片面を磨く(回転させるとき

に磁石を左右から接近させるため) 耳の根元までしっかり磨くこと(磨きが悪いと電気が流れず、回らない)。

5) コイルをすこし扁平にする(扁平のほうが磁力線の作用が強い) 「片側半分」だけを磨く理由 耳を両方とも全周磨くと、いつも電流が流れるので、コイルが半回転すると電磁力が逆の回転力とな

り回転が継続しない。半周が磨いていないと、半回転は電流が流れず、コイルは慣性(勢い)で回り、

1回転後に同じ方向の電流が流れ、同じ回転方向の電磁力を受けて回転が継続する。 (磁石の前のコイルに常時同じ方向の電流が流れるように整流作用を行っている)

3. 回転実験 1) 完成したコイルをクリップに乗せる。 2) 磁石を左右どちらかの方向からか近づけ、そのままの状態でコイルを軽く手で回す。

3) 回転し始めたら、磁石の NS 方向を反対にして回転方向が逆になることを実験する。(何故?)

4) 2個の磁石を 1個ずつ両側から近づける。N、Sの極ではさむと回るが、N極,S極同士では回らない。(何故?)

5) 磁石はそのままでコイルを反対にのせると反対に回る。 4. その他の注意事項 (何故?) コイルはクリップにのせたままにしないこと(電流が流れ、乾電池が消耗する)。

コイル

磁石を横から

近づける (方向:左 右)

組み立て完了(回転中のコイル)