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2018年12月13日 1BRUKER WEBINAR
【XRDウェブセミナーシリーズ】
X線反射率測定(XRR)の原理・データの見方から解析のノウハウ
2018年12月13日(木)ブルカージャパン株式会社 X線事業部
アプリケーション部 XRDアプリケーション森 岡 仁
www.bruker.com/JP/XRD
2018年12月13日 2BRUKER WEBINAR
ようこそ!Bruker XRD Webinarへ
森 岡 仁ブルカージャパン株式会社 X線事業部アプリケーション部XRDアプリケーション 兼アプリケーション統括マネージャー
発表内容
• X線反射率測定の原理
• 測定時の注意点
• 代表的な光学系設定
• サンプルサイズ
• 測定結果の見方
• 膜厚による効果
• 密度による効果
• ラフネスによる効果
• 解析のノウハウ
• まとめ
2018年12月13日 3BRUKER WEBINAR
X線反射率測定とは?X-ray Reflectivity, X-ray Reflectometry, XRR
• 光学的な全反射現象を利用した、極表面に敏感なX線散乱技術
• 非破壊分析法
• 深さ方向構造を、nmオーダー(10-9m)で定量
• 結晶質・非晶質に関わらず解析可能
• XRRで得られる情報は?
• 層膜厚(単相膜・多層膜): 0.1 ~ 1000 nm
• 密度差の検出: < 1~2%
• 表面および”埋もれた”界面のラフネス: < 3~5 nm
2018年12月13日 4BRUKER WEBINAR
X線反射率測定
入射X線 反射線
スキャン方向
基板薄膜
θ θ
• 測定モードは粉末 XRDと同じ ”θ-2θ”スキャン
• 測定範囲は通常2θ < 10o
• すれすれ入射
2018年12月13日 5BRUKER WEBINAR
X線反射率測定X線が表面すれすれに入射されると?
n0=1@大気
n1=1-δ-iβ
θi θf=θi
すれすれ入射の場合 入射角が大きい場合
n0=1@大気
n1=1-δ-iβ
θi θf=θiθt
Snellの法則 (=屈折の法則)
𝜃t=0 となる全反射条件の時、
入射角θi=θcと定義すると
X線に対する物質の屈折率nは、1からほんのわずかに小さい
* 屈折に寄与しない虚数項を無視
2C
CC
C
C n
22
22
1
sincos12
21)1(cos
1cos
** 全反射臨界角度近傍では、
sinθ≈θ
θt=0o
ti nn coscos 10
δ≈10-5 β≈10-6
2018年12月13日 6BRUKER WEBINAR
X線反射率測定δ と β
• X線に対する物質の(複素)屈折率nは以下の式で与えられます
• ここで、k=2π/λ,ρ0は電子密度,r0は古典電子半径 (=2.82×10-6
nm),NAはアボガドロ数,Aは原子量,Zは原子番号,ρは密度です。f’とf’’は原子散乱因子の異常分散項を示します
• 一般的に、δを屈折率の分散項、βを吸収項と呼びます
i
fA
NrifZ
A
Nr
iffZA
Nr
k
rn
AA
A
1
''2
'2
1
'''2
1
21
0
2
0
2
0
2
2
00
密度
ρ (g/cm3)
δ
(×10-6)
β
(×10-7)
全反射臨界角度
θc (deg)
シリコン Si 2.33 7.57 1.75 0.223
ゲルマニウム Ge 5.33 14.5 4.17 0.309
ガリウムヒ素 GaAs 5.32 14.5 4.2 0.309
ダイヤモンド C 3.52 11.3 16.9 0.272
酸化ケイ素(熱酸化) SiO2 2.00 6.47 0.841 0.206
金 Au 19.4 46.6 45.9 0.553
銅 Cu 8.94 24.3 5.31 0.400
アルミニウム Al 2.70 8.47 1.58 0.236
ポリプロピレン (C3H6)n 0.946 3.46 0.0398 0.151
高密度ポリエチレン (C2H4)n 0.950 3.48 0.0399 0.151
低密度ポリエチレン (C2H4)n 0.910 3.33 0.0382 0.148
ペンタセン C22H14 1.30 4.38 0.0597 0.170
ポリスチレン (C8H8)n 1.05 3.63 0.047 0.154
PET (C10H8O4)n 1.38 4.44 0.105 0.171
ポリ塩化ビニル (CH2CHCl)n 1.39 4.40 1.08 0.170
原子散乱因子の異常分散項の例
http://www.sasakiken.net/scatfac/scatfac.html
Cu Kα線に対する値
全反射臨界角度θcは<1o
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X線反射率測定X線侵入深さ
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1100
101
102
103
104
105
入射角 (deg)
侵入深さ
(nm
)
侵入深さ曲線 (1/e減衰)
PET
Si
Au
• 全反射角度近傍における物質中へのX線進入深さDは、以下の式で与えられます
入射角度で1oより高い場合は、吸収によるX線進入深さの計算式D=sinθ/μと一致します(左図点線)
全反射臨界角度近傍のみの特異な挙動
2/122222 4222
4
B
BD
θc=0.171o
θc=0.223o
θc=0.553o
* μは線吸収係数(cm-1)
2018年12月13日 8BRUKER WEBINAR
X線反射率測定
屈折
反射
反射
• 表面で反射したX線と、基板界面で反射したX線が干渉 Kiessigフリンジ
• 干渉縞周期は膜厚に反比例
2018年12月13日 9BRUKER WEBINAR
代表的なXRR測定光学系設定
X線源
入射側光学系多層膜ミラー / モノクロメーター
減衰板
入射スリット 散乱防止スリット
受光スリット
• X線源: 通常はラインビームを使用。微小部分析の場合はポイントビームも利用可
• 入射側光学系: X線の平行度が高いほど、大きい膜厚まで測定可能
• 入射スリット: 0.1mm幅以下、推奨は0.05mm幅
• 散乱防止スリット: 0.05~0.2mm幅
• 受光スリット: 0.05~0.1mm幅
• 検出器: 0次元モード。多次元検出器の1~3素子を受光スリットとして利用することも
検出器
サンプル
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測定に適したサンプルサンプルサイズ
入射X線 反射線
スキャン方向
基板薄膜
θ θ
• X線の照射幅は、低角入射ほど大きくなります
• 照射幅Wは、入射角θ、スリット幅Xを用いて
• 0.05mmの入射スリットでも、入射角θ=0.1o
の時、約30mmに拡がります 約20mm×20mmのサンプルサイズ
• 奥行方向は、入射X線サイズがそのまま照射
• 反りやうねりがないことが重要です
0 1 2 30
10
20
30
40
50
照射幅
(m
m)
入射角 (deg)
0.2mm0.1mm0.05mm
スリット幅:
sin
XW
2018年12月13日 11BRUKER WEBINAR
測定に適したサンプル表面状態
平滑な表面 荒れた表面ラフネスの効果
ラフネス増大• 表面や界面のラフネスが大きくなると、
反射強度が顕著に減衰します
• 目視で鏡面であることが第一前提です
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2θ=0.5~1.0o
測定・解析の流れ
PLAN – MEASURE – ANALYZE
プランニング 測定
• 解析ソフトウェアを用いて、理想的な構造におけるXRRプロファイルをシミュレーション
• 表面/界面のラフネスは、0.3~1nmを仮定
• ステップ幅や測定範囲などを評価
• サンプル表面位置、入射角を定義して、θ-2θスキャン
2018年12月13日 13BRUKER WEBINAR
測定・解析の流れ
PLAN – MEASURE – ANALYZE
解析
Pt
Si
• サンプルモデルの作成・シミュレーション • 実測データとの比較
–測定データ–計算データ
• パラメーターのシミュレーションフィッティングとサンプル構造モデルの見直し
–測定データ–計算データ
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X線反射率測定結果の見方
全反射臨界角度 θc:密度ρ
膜厚の逆数
勾配:ラフネス
2018年12月13日 15BRUKER WEBINAR
X線反射率測定結果の見方膜厚による効果
膜厚の効果単相膜の場合
t
基板
膜
膜密度 𝜌1基板密度 𝜌0
フリンジ周期
1/t
refle
ctivity
[a.u
.]
• 膜厚 t が大きくなればなるほど、フリンジ周期は緻密になります
• 大きな膜厚のサンプルを測定するには、高い分解能が必要になります
2018年12月13日 16BRUKER WEBINAR
X線反射率測定結果の見方密度による効果
基板Siとの密度差単相膜の場合
t
基板
膜
膜密度 𝜌1基板密度 𝜌0
• 基板と膜の密度差が大きくなればなるほど、フリンジ振幅は大きくなります
• 小さな密度差を有するサンプルの測定は相対的に困難になります
2018年12月13日 17BRUKER WEBINAR
X線反射率測定結果の見方ラフネスによる効果
ラフネスの効果ラフネス 密度勾配
• XRRはサンプル膜厚方向の平均的な密度を検出します
• XRRは上図に示すような、ラフネスの状態と密度勾配の状態は区別できません AFMやSEMなどの直接観察的な手法と組み合わせ
2018年12月13日 18BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ
2018年12月13日 19BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ①FFTを用いたモデルフリー膜厚評価
• Bruker製解析ソフトウェア LEPTOS (DIFFRACplus LEPTOS,DIFFRAC.LEPTOS)をはじめ、多くの解析ソフトウェアには、高速フーリエ変換(FFT)を用いた周期分離機能を備えています
• 膜厚干渉フリンジが明瞭に観察されていれば、[FFT]機能によりデータを読み込むと同時に平均的な膜厚を見積もることができます
2018年12月13日 20BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ①FFTを用いたモデルフリー膜厚評価
• FFTに波形が表示されない場合は...
• [Experimental]タブをクリックして、測定条件をEdit機能で編集します
• Bragg reflection欄に、XRR測定であることを示す、0 0 0を指定することでFFT機能が有効になります
2018年12月13日 21BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ②最表層膜密度の導出
t=100nm
Si基板
高分子膜
膜密度 𝜌1基板密度 𝜌0
ρ1 < ρ0
Si基板の全反射臨界角度 θc
密度ρ0
薄膜の全反射臨界角度 θc
密度ρ1
• 有機膜や高分子膜の場合、基板材料よりも密度が小さくなることが一般的です
• この場合、XRRプロファイルには、最表層の膜密度に対応する全反射臨界角度とSi基板の密度に対応する全反射臨界角度の2つが観察されます
• また、両者の間には、薄膜由来の干渉フリンジも観察されます
2018年12月13日 22BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ②最表層膜密度の導出
t
ガラス基板
ZnO膜
膜密度 𝜌1基板密度 𝜌0
• 密度2.0g/cm3を有する ガ ラ ス 基 板 上 のZnO(密度5.66g/cm3)薄膜のXRRプロファイル
• 膜厚が小さくなると、膜の全反射臨界角度ではなく、基板の全反射臨界角度が顕著に
• 全反射臨界角度から膜密度を求める場合は、十分な膜厚が必要
• 逆に膜厚が小さい場合は、基板密度に対する相対密度
2018年12月13日 23BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ③解析領域の指定
Shift+左クリック(1回目)
+
+
Shift+左クリック(2回目)
• 測定範囲全体をフィッティングしていて、フィッティング結果が向上しない場合、解析範囲を制限する方法が有効です
• Shiftキーと左クリックを行うと、1回目で青線、2回目で赤線が表示され、この2本の線の間がフィッティング領域に定義されます
• 3回目にクリックすると線が消えますので、低角度側から広げていくとフィッティングが改善します 合わない場合は、面内分布の影響?
2018年12月13日 24BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ④eXtended Genetic Algorithm: XGA
Ref. A. Ulyanenkov and S. Sobolewski, J. Phys. D: Appl. Phys. 38, A235 (2005).
• 大域的アプローチの一種で、数ある局所解のうち、最適解を探索できる手法: 遺伝学的アルゴリズム
• 従来のGAと比較して、高速化と精度の向上を実現
2018年12月13日 25BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ④eXtended Genetic Algorithm: XGA
確認したいパラメーターをクリック
右クリックし、GOFを選択
• サンプルモデルのパラメーターが、どの程度フィッティングの収束に寄与しているかを視覚化できます
• 最適解のほか、複数の局所解が存在し、XGAにより最適化されていることがわかります
最適解
局所解
2018年12月13日 26BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ④eXtended Genetic Algorithm: XGA
[Show Additional Parameters]をクリック
• ソフトウェアの初期設定は、パラメーターのレンジを初期値に対して±20%となっています
• 解析の初期段階などで、パラメーターが大きく異なる場合、Fit Optionsでフィッティング範囲を広げることができます
• 数字を入力後、[Localize]ボタンをクリックして、すべてのフィッティングパラメーターのレンジを再定義できます
2018年12月13日 27BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ④eXtended Genetic Algorithm: XGA
• 解析の初期段階などで、パラメーターが大きく異なる場合、パラメーターをラフに大きく変化させ、最適値を探しやすくすると有効です
• GAの拡張パラメーター欄において、2つの”蓋然性”を50%前後に設定することで、より早く・大きくパラメーターを変化させることができます
• 収束してきたら、20~25%へ戻し、正確性を向上させることを推奨します
50
50
2018年12月13日 28BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ⑤密度プロファイルの分割
• 単相膜のフィッティングが合わない場合、層を複数に分割することが突破口になる場合があります
• フィッティングの結果、ラフネスが大きくなる領域に、薄い低密度層などを仮定することで、より複雑な密度勾配が仮定でき、実測値に近づくことがあります
界面ラフネス:
~0.47nm
表面ラフネス:
~0.21nm
2018年12月13日 29BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ⑤密度プロファイルの分割 – ラフネスの考え方
• XRR解析の結果、密度プロファイル(青線)を微分することで確率密度関数(赤線)が得られます
• LEPTOSで採用しているNevot-Croceのラフネスモデルでは、界面z0において密度の連続的に異なる単層膜が連続的に存在しているとし、ガウス関数で仮定しています
Depth (arb. unit)
Den
sity
(ar
b. unit
)
z0
分布関数
確率密度関数
2
2
0
2 2
)(exp
2
1)(
zzzw
z:深さz0:界面(または表面)σ:標準偏差(=ガウス関数を仮定した場合のrmsラフネス)
2018年12月13日 30BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ⑤密度プロファイルの分割
• 界面や表面の低密度層などでフィッティングの改善がない場合、主な膜の領域を複数(2~5層)に分ける方法もあります
• これにより、膜中の密度分布をモデル化し、実サンプルへ近づけることができます
2018年12月13日 31BRUKER WEBINAR
解析のノウハウ⑥密度プロファイルの抽出
[Depth profile]画面をダブルクリック
• 解析の結果、密度プロファイルが複雑になった場合や、サンプル間の密度プロファイルを比較したい場合、テキストデータとして抽出することができます
• 得られたデータをExcelなどでグラフ化し、比較できます
2018年12月13日 32BRUKER WEBINAR
まとめ
• X線反射率測定(XRR)の原理、特に全反射についてその現象を示しました
• X線反射率測定における測定光学系や測定に適したサンプルの情報をまとめました。併せて、測定準備から解析にいたる肝要点を示しました
• 測定結果の見方、ならびに得られるパラメーターの結果に対する影響について、事例とともに示しました
• 単層膜を中心に、解析時のノウハウや解析ソフトウェアの便利な機能をまとめました
• XRRは非破壊でサンプルの深さ方向密度プロファイルを視覚化できる分析手法です。解析後に他の分析手法へサンプルを引き継ぐことができ、異なる分析手法の組み合わせに活用できます
2018年12月13日 33BRUKER WEBINAR
ご質問がある場合
• 発表内容についてご質問のある方は、Q&Aパネルに記入いただき、送信ボタンをクリックください
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• セミナーから退室されるとアンケートが表示されます
• ぜひ回答にご協力をお願いいたします
2018年12月13日 34BRUKER WEBINAR
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2018年12月13日 35BRUKER WEBINAR© Copyright Bruker Corporation. All rights reserved.
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