èyyÍ i - book stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造...

10
i

Upload: others

Post on 14-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

i目  次

Page 2: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

2 1.生 体 膜

 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部

には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

察される(図 1-1).細胞の生体膜全体の中で,それら

の細胞小器官が占める膜の割合を動物の細胞で比較する

と,ミトコンドリアと小胞体がその多くを占めているこ

とがわかる(図 1-2).それらの膜構造についてみると,

細胞膜,小胞体,ゴルジ体などは 1 枚の膜構造から構成

されているが,ミトコンドリア,核膜,植物細胞の葉緑

体などは 2 枚の膜構造から構成されている.ミトコンド

リアと葉緑体は,細胞内に取り込まれた原核細胞に由来

すると考えられているので,原核細胞自身の細胞膜と,

それが真核細胞に取り込まれた際に原核細胞を包みこん

だ宿主の細胞膜の 2 枚からなっている.一方,核膜は小

胞体が融合してクロマチンを球形に包み込むようにして形

成された膜であるために,2 枚の生体膜からなっている.

 生体膜で区画化された細胞小器官の中で,とりわけ動

的に変化しているのが小胞体である.小胞体はその形態

や分布を頻繁に変化させながら,小胞体どうしの融合,

小胞体からの小胞の遊離,そして,小胞体と小胞の融合

などを活発に行っている.このような性質は,後述する

細胞内輸送系をはじめとして,さまざまな細胞の機能に

おいて重要な役割を果たしている.また,ミトコンドリ

アも,細胞内の機能に応じて,その形態を変化させたり,

互いに融合したり,二分裂による増殖などをしたりして,

細胞の機能に合わせて活発に変化している.

 b.脂質二重層の構造 細胞膜や細胞小器官を構成する生体膜は基本的に同じ

脂質二重層からなるが,それぞれの膜には機能に応じた

さまざまな違い,たとえば,構成タンパク質や脂質成分

の違いなどが見られる.生体膜を構成する基本構造の脂

質二重層は厚さが 3 ~ 5 nm であるが,実際の細胞の生

体膜は,膜に組み込まれたタンパク質などが加わり,そ

れよりも少し厚く 6 ~ 8 nm 程度に見える(図 1-3).

 生体膜の主要な構成成分は脂質とタンパク質である

が,それらの割合は細胞の種類や細胞小器官の種類に

より大きく異なる.たとえば,2 枚あるミトコンドリア

の生体膜の内側の膜では脂質とタンパク質の量比が 1:

粗面小胞体 ミトコンドリア 小胞 ゴルジ体

真核細胞

図 1-1 細胞内の膜区画を示す電子顕微鏡写真真核細胞の細胞内は,小胞体,ゴルジ体,核,ミトコンドリアなど,生体膜で区画化された細胞小器官により満たされている.

ミトコンドリア内膜

(%)

30

20

10

0粗面小胞体

滑面小胞体

細胞膜

ミトコンドリア外膜

ゴルジ体

リソソーム

ピノサイトーシス小胞

図 1-2 細胞を構成する生体膜の分布(核膜を除く)細胞を構成する膜成分のほとんどが,ミトコンドリアと小胞体に分布している.これらの割合は細胞の種類により異なる.

Page 3: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

31・1 生体膜の基本構造

4,一般の細胞の細胞膜では 1:1,神経線維のミエリン

鞘を構成する細胞膜では 4:1 である.これらの違いは,

それぞれの膜が果たしている機能の違いを反映したもの

である.

  生 体 膜 を 構 成 す る 脂 質 の 主 要 成 分 は リ ン 脂

質(phospholipid) で, そ の 他 に, コ レ ス テ ロ ー ル

(cholesterol)が含まれている.リン脂質には,グリセロー

ルを構成要素とするグリセロリン脂質と,スフィンゴシ

ン(sphingosine)を構成要素とするスフィンゴリン脂

質や糖脂質などがある.リン脂質は極性をもった親水性

の頭部構造と,極性のない疎水性の炭化水素鎖の尾部構

造からなっている.このような親水性と疎水性の 2 つの

性質を備えた分子の性質は両親媒性と呼ばれている.水

中に存在する両親媒性の分子は,親水性の部分を水の側

に向け,疎水性の部分で互いに向き合って凝集する性質

がある.そのために,水中に存在するリン脂質は,脂質

二重層やミセル構造を自動的に形成して安定した状態に

なる.

 生体膜を構成する主要なグリセロリン脂質は 4 種類あ

る(図 1-4).それらの頭部の構造は異なるが,尾部は

共通した構造からなっている.頭部を構成しているのは,

細胞外

細胞質

コレステロール

リン脂質

A.

B.

脂質二重層

図 1-3 生体膜A:四酸化オスミウムで固定された細胞膜.リン脂質のリン酸の部分がウランにより染色されて黒く見えるので,細胞膜を構成する脂質二重層が 2本の黒い平行線として確認できる.B:生体膜の分子モデル.リン脂質とコレステロールにより構成された生体膜の基本構造を示す.

コリン頭部(極性・親水性)

リン酸

グリセロール

炭化水素鎖

ホスファチジルコリン

尾部(無極性・疎水性)

コレステロール

エタノールアミン イノシトールセリン

図 1-4 グリセロリン脂質とコレステロール生体膜を構成するグリセロリン脂質はグリセロールを介して結合した頭部(プラスとマイナスは極性を示す)と尾部構造からなる.その頭部構造には異なる 4種類のものがある.そして,尾部構造には 2本の炭化水素鎖が結合している.ホスファチジルコリン以外については,頭部構造の異なる部分だけが示してある.

Page 4: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

24 2.細胞の構造

 2・1 原核細胞  原 核 細 胞 は 真 正 細 菌(eubacteria) と 古 細 菌

(archaebacteria)の 2 種類に大きく分類されている.真

正細菌には,大腸菌などの腸内細菌や光合成細菌のシア

ノバクテリアをはじめとして,数多くの種類が存在する.

そして,その生息域も地球上の広範囲な環境に及んでい

る.一方,古細菌は,好熱古細菌,高度好塩菌,メタン

生成古細菌など,特殊な環境に生息するものが多い.た

とえば,温度が 122 ℃にも及ぶ環境で生息可能な超好熱

古細菌,塩濃度が 5 モルにも及ぶ環境に生息している高

度好塩菌,さらには,高温,高塩濃度の嫌気的環境下で

生息しているメタン生成細菌なども知られている.

 真核細胞,真正細菌,古細菌の 3 種類の細胞の関係

については,細胞の進化の面から説明されている.太

古の地球上の高温の嫌気的環境下で誕生した原始的な細

胞が,最初に,古細菌と真正細菌の祖先にあたる 2 系

統の細胞に分かれて進化したものと考えられている(図

2-1).そして,それらのうちの原始古細菌の系統の中か

ら,核膜を形成するものが現れ,それが現在の真核細胞

に進化したと考えられている.それは,現存の真核細胞

と原核細胞で働いているさまざまな分子の特徴を比較す

ると,真核細胞と真正細菌の間よりも,真核細胞と古細

菌の間のほうにより類似点が多く見られるからである

(表 2-1).

 a.細 胞 膜 原核細胞の細胞膜の基本構造は真核細胞のものと同じ

で,リン脂質を主成分とした脂質二重層からなる.しか

しながら,原核細胞の細胞膜を構成する脂質成分には真

核細胞とは異なる点がいくつもある.たとえば,脂質二

重層を構成するリン脂質について見ると,原核細胞の大

腸菌では,ホスファチジルエタノールアミンが主要な構

成成分となっているが,真核細胞では,ホスファチジル

コリンとホスファチジルエタノールアミンの両方が主要

な構成成分となっている.

 さらに,真正細菌と古細菌の細胞膜を構成する脂質に

もいくつかの違いが見られる.真正細菌ではグリセロー

ルと炭化水素の結合がエステル結合で結合されているの

に対して,古細菌や一部の真正細菌では,それらがエー

テル結合で結合されている(図 2-2).このエーテル結

合はエステル結合よりも耐熱性に優れているので,高熱

環境下に生息している多くの古細菌や一部の真正細菌に

とっては,そのほうが好都合と考えられる.

 その他に,真核細胞の細胞膜に見られるコレステロー

ルが原核細胞では見られない.そのかわりに,原核細胞

にはステロールとよく似たホパノイド(hopanoid)と呼

ばれる分子が存在し,細胞膜の構造を安定化している.

また,特殊な構造として,好熱古細菌の細胞膜にはジグ

リセリンテトラエーテル(diglycerol tetraether)と呼ば

れる脂質が存在する.この特殊な脂質は 2 つのジエーテ

真正細菌 真核細胞 古細菌

共通の祖先となる原始の細胞

細胞膜 細胞壁

真正細菌(黄色ブドウ球菌)

核様体

図 2-1 細胞の進化真核細胞は,その祖先となる原始の細胞から真正細菌と古細菌が分化した後,古細菌の系統から発達してきたものと考えられている.写真は真正細菌の電子顕微鏡写真を示す.

Page 5: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

252・1 原核細胞

ル型の脂質が向かい合って結合したような構造をしてい

る.このジグリセリンテトラエーテルが形成する細胞膜

は,一般の脂質二重層構造とは異なる脂質一重層構造を

形成し,高熱環境下で生息する細胞の細胞膜を安定化し

ている(図 2-3).この他にも,原核細胞の細胞膜には

カルジオリピン(cardiolipin)と呼ばれる特殊な脂質の

存在が知られている.

 b.核 様 体 原核細胞は環状の DNAをもち,その環状 DNAのサ

イズは 60万~ 1000万塩基対(大腸菌を例にあげると,

464万塩基対で 4405個の遺伝子を含む)と広範囲であ

る.通常の細胞内では,その環状 DNAは折りたたまれ

て凝縮し,核様体(nucleoid)と呼ばれる構造で存在す

る.環状 DNAの折りたたみの最初のステップは,DNA

の特定の領域にタンパク質が結合してループ構造が形

表 2-1 現存の真核細胞と原核細胞の特徴の比較

真核細胞原核細胞

古細菌 真正細菌

DNA直線状DNA.ヒストンタンパク質が結合している.

環状DNA.ヒストン様のタンパク質が結合している.

環状DNA.ヒストンやヒストン様のタンパク質は存在しない.

RNAポリメラーゼ12サブユニットからなる(RNAポリメラーゼⅡの場合).リファンピシン耐性

8~14 サブユニットからなる.リファンピシン耐性

4サブユニットからなる.リファンピシン感受性

転写開始部位のDNAの塩基配列

TATAボックス TATAボックスに似た配列 さまざまなタイプがある.

タンパク質合成開始のアミノ酸

メチオニン メチオニン フォルミルメチオニン

エステル結合

ステアリン酸(stealic acid)

エーテル結合 フィタノ-ル(phytanol)

グリセロール

真核細胞と大部分の真正細菌

古細菌と一部の真正細菌

図 2-2 リン脂質のエステル結合とエーテル結合真核細胞と原核細胞では細胞膜を構成するリン脂質に違いがある.その大きな違いは,グリセロールと炭化水素鎖の結合のしかたにある.

Page 6: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

46 3.アミノ酸とタンパク質

 3・1 アミノ酸の基本構造 タンパク質を構成している基本的なアミノ酸は 20 種

類(表 3-1)であるが,それらの他にも,タンパク質中

にはセレノシステイン(selenocysteine)やピロリシン

(pyrrolysine)と呼ばれる特殊なアミノ酸が微量に含ま

れている.それらを含めると,生物を構成するアミノ酸

は全部で 22 種類存在することになる.さらに,タンパ

ク質の構成要素には含まれないアミノ酸(非タンパク質

構成アミノ酸)や,広義な分類では,アミノ酸として分

類されているものも数多く知られている.

 生命の起源がアミノ酸から始まったと考えられるよう

に,その簡単な構造にもかかわらず,アミノ酸はさまざ

まな可能性を秘めた基本構造をしている.たとえば,ト

リプトファンを例にあげると,その中央に存在する炭素

原子(α 炭素)に,解離性原子団のアミノ基とカルボキ

シ基(あるいは,イミノ基),そして,側鎖(R 基)の

3 つが共有結合で結合している(図 3-1).中性の水溶液

中では,アミノ酸のアミノ基とカルボキシ基はそれぞれ,

プロトン化(-NH3+)と脱プロトン化(-COO-)し

ている.このような塩基性と酸性の両方の基をもつアミ

表 3-1A 20種類のアミノ酸とその略号アミノ酸 略号 アミノ酸 略号アスパラギン Asn (N) チロシン Tyr (Y)アスパラギン酸 Asp (D)  トリプトファン Trp (W)アラニン Ala (A)  トレオニン Thr (T)アルギニン Arg (R) バリン Val (V)イソロイシン Ile( I ) ヒスチジン His (H)グリシン Gly (G) フェニルアラニン Phe (F)グルタミン Gln (Q) プロリン Pro (P)グルタミン酸 Glu (E) メチオニン Met (M)システイン Cys (C) リシン Lys (K)セリン Ser (S) ロイシン Leu (L) タンパク質を構成する主要なアミノ酸. 略号は 3文字表記と 1文字表記(カッコ内)の両方を示す.

表 3-1B 主要な 20種類のアミノ酸以外で生物に存在するアミノ酸タンパク質の構成要素として微量に存在するアミノ酸

セレノシステイン,ピロリシン

タンパク質の構成要素として用いられないアミノ酸

β - アラニン,サルコシン,オルニチン,γ - アミノ酪酸,オパイン

天然に存在する広義のアミノ酸 テアニン,イノシン酸,グアニル酸,トリコロミン酸,カイニン酸,ドウモイ酸,イボテン酸,アクロメリン酸

アミノ基

α炭素 カルボキシ基

側鎖(R基) トリプトファン

図 3-1 アミノ酸の基本構造アミノ酸の基本構造は,中央に存在する α炭素に,アミノ基,側鎖,カルボキシ基が共有結合している.それぞれのアミノ酸の性質は側鎖の構造に依存している.

Page 7: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

47

ノ酸は両性電解質(ampholyte),あるいは両性イオンと

呼ばれ,水分子となじんで水溶性(親水性)を示す.し

かし,側鎖にインドール環をもつトリプトファンやフェ

ニル基をもつフェニルアラニンなどは,水分子となじま

ず水に難溶性(疎水性)を示す.

 アミノ酸の側鎖の部分に炭素原子が結合していない

グリシン以外は,カルボキシ基とアミノ基が α 炭素

に逆に結合した異性体が存在する.それらの異性体は

L(levo)- アミノ酸と D(dextro)- アミノ酸と呼ばれ,

図 3-2 に示すように,鏡に映った像と同じ面対称である.

それらは,光学異性体(鏡像異性体)と呼ばれ,アミノ

酸を試験管内で合成した場合には,両者は 1:1 で合成

される.しかしながら,生物を構成しているアミノ酸の

ほとんどは L- アミノ酸である.生命の起源が確立され

る際に,なぜ L- アミノ酸が選ばれたのかは謎とされて

いる.また,最近の分析技術の進歩により,D- アミノ

酸も生物に微量ながら存在することが明らかになり,そ

れらが細胞の機能に重要な役割を果たしていることや,

病気にも関係していることがわかった.

 3・2 アミノ酸からタンパク質へ 20 種類のアミノ酸は,それぞれがもつ独特な構造に

より,さまざまな性質(たとえば,極性,荷電性,疎水

性など)の違いを示す(図 3-3,3-4,3-5).それらの

違いを決定しているのは,アミノ酸の側鎖を中心に存在

する官能基と呼ばれる構造である(表 3-2).このように,

さまざまな性質のアミノ酸が多様な組み合わせで連結さ

れることにより,特殊な構造や機能をもった多くの種類

のタンパク質が形成される.その際に,タンパク質の機

能を最終的に決めているのが,タンパク質のとる立体構

造である.それゆえ,タンパク質が正常に機能するため

には,遺伝情報にもとづいた正確なアミノ酸配列のもと

に,的確な立体構造をとることが必要となる.それらに

失敗すると,そのタンパク質は役に立たないどころか,

かえって細胞機能を乱すことにもなりかねない.

L- アラニンD- アラニン

光学異性体

グリシン

図 3-2 アミノ酸の光学異性体アラニンの光学異性体と,光学異性体を形成できないグリシンを示す.

3・2 アミノ酸からタンパク質へ

Page 8: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

48 3.アミノ酸とタンパク質

アラニン(Ala) グリシン(Gly)

イソロイシン(Ile)

プロリン(Pro)

トリプトファン(Trp)

バリン(Val)

ロイシン(Leu) メチオニン(Met) フェニルアラニン(Phe)

図 3-3 非極性アミノ酸(疎水性)

表 3-2 アミノ酸に存在する官能基グループ名 構造 特徴ヒドロキシ基 -OH 極性カルボキシ基 -COOH 負に荷電,酸性アミノ基 -NH2 正に荷電,塩基性リン酸基 -PO42ー 負に荷電,極性メチル基 -CH3 非極性スルフヒドリル基 -SH 共有結合(ジエステル結合)

を形成,極性カルボニル基 -C=O 極性

Page 9: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

493・2 アミノ酸からタンパク質へ

セリン(Ser) トレオニン(Thr)

チロシン(Tyr)

アスパラギン(Asn)システイン(Cys) グルタミン(Gln)

図 3-4 極性,非荷電性アミノ酸(親水性) 中性アミノ酸である.

アルギニン(Arg) リシン(Lys) ヒスチジン(His)

アスパラギン酸(Asp) グルタミン酸(Glu)酸性

塩基性

図 3-5 極性,荷電性アミノ酸(親水性)酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸がある.

Page 10: èyyÍ i - Book Stack2 1生 体 膜 1・1 生体膜の基本構造 a.細胞内の膜構造 真核細胞を電子顕微鏡で観察すると,その細胞の内部 には生体膜からなるさまざまな構造(細胞小器官)が観

50 3.アミノ酸とタンパク質

 3・3 タンパク質の立体構造と非共有結合 アミノ酸は,カルボキシ基とアミノ基の部分で,互い

に共有結合される(図 3-6).この結合はペプチド結合

と呼ばれ,それにより,アミノ酸は一列に連なったペプ

チド鎖となる(図 3-7).連なったアミノ酸の数により,

2 ~ 10 個のものはオリゴペプチド鎖,それ以上のもの

はポリペプチド鎖と呼ばれている.そして,50 個以上

のアミノ酸が連なったものは,一般にタンパク質と呼ば

れている.平均的なサイズのタンパク質は 300 ~ 400 個

のアミノ酸から構成されているが,自然界には,アミノ

酸の数が 1500 個に及ぶものまで幅広いサイズのタンパ

ク質が存在する.それらのタンパク質は,複雑に折りた

たまれた立体構造を形成することにより,さまざまな機

能を発揮している.

 タンパク質が果たすさまざまな機能はその立体構造に

大きく依存しており,その立体構造を決めているのが,

アミノ酸どうしの間に生じる分子間結合である.ポリペ

プチド鎖から機能をもった立体的なタンパク質が形成さ

れるまでには,いくつかのステップがある.まず,アミ

ノ酸どうしのペプチド結合により,ペプチド鎖(一次構

造と呼ばれる)が形成される.次に,ポリペプチド鎖の

軸構造を形成する N - α 炭素,α 炭素- C 結合の部分

のねじれ(図 3-8)と,アミノ酸どうしの分子間結合に

より,ペプチド鎖の折れ曲がり(二次構造と呼ばれる)

が形成される.そして,二次構造のさらなる折りたたみ

により,立体構造(三次構造)が形成される.さらに,

三次構造のタンパク質が複数個集合することにより,機

能的な集合体(四次構造と呼ばれている)が形成される.

 ポリペプチド鎖からタンパク質の立体構造が形成され

る際に重要な役割を果たしているのが分子間結合であ

る.その分子間結合は,アミノ酸どうしや,アミノ酸と

水分子との間に形成されるものが中心となる.アミノ酸

どうしの間で形成される分子間結合には,共有結合のジ

スルフィド結合(S-S 結合)と,何種類かの非共有結合

がある.ジスルフィド結合では,近接したシステイン残

基の SH 基が酸化されて,両者の硫黄原子の間に共有結

合が形成される(図 3-9).非共有結合には,水素結合

トリプトファンチロシン

H2Oペプチド結合

図 3-6 アミノ酸のペプチド結合チロシンのカルボキシ基と,トリプトファンのアミノ基が縮合反応によりペプチド結合される場合を示す.ペプチド結合の際には水分子が 1つ放出される.

側鎖

主鎖

図 3-7 ペプチド結合したアミノ酸アミノ酸が 16 個連なったポリペプチドを示す.