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経済産業省サービス産業人材育成事業 医療経営人材育成テキスト[Ver.1.0] 医療経営人材育成事業ワーキンググループ作成 1 医療経営に携わる人材育成の あり方について 医療経営概論 2 はじめに

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Page 1: はじめに 1 あり方について 2 医療経営概論 · り巻く環境の変化と、その将来的な方向性について概観した。 1. 医療サービスを取り巻く環境の変化と今後の医療経営

経済産業省サービス産業人材育成事業

医療経営人材育成テキスト[Ver.1.0]

医療経営人材育成事業ワーキンググループ作成

1 医療経営に携わる人材育成のあり方について

医療経営概論2

はじめに

Page 2: はじめに 1 あり方について 2 医療経営概論 · り巻く環境の変化と、その将来的な方向性について概観した。 1. 医療サービスを取り巻く環境の変化と今後の医療経営
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はじめに

1 医療経営に携わる人材育成の    あり方について

① 医療サービスの課題と将来像の観点から

② 医療機関の経営層に求められる   スキル要件について

2 医療経営概論

医療経営を学ぶに当たって

経営戦略の構築

4 マーケティング

3 経営戦略

5 技術戦略

6 制度・政策

経営戦略の実行

8 組織管理 9 人材管理

13 リスク管理

7 戦略実行の考え方

11 会計管理 12 資金管理

おわりに

10 オペレーション管理

日本の医療の現状と本事業の狙いを、大所高所の視点から総 括する

医療機関経営の実情に照らした現実的課題と、短期・中期的 将来の考え方の例を示す

医療サービスおよび医療機関経営に見られる特性を考慮した 経営者に求められる知識・技能・姿勢などを示す

後段の講義内容を理解するために必要な基本的知識・思考方 法などを示す

経営戦略策定にかかわる基本的理論と実践的知識、ならびに 実際の経営環境への応用を促す事例を示す

日本の医療サービスを取り巻く法制度環境の、過去の経緯を 踏まえた現状を示し、将来環境の観察眼を養う

経営戦略を実行するための経営管理機能について、基本的理 論と経営的立場における実践的知識、ならびに実際の経営環 境への応用を促す事例を示す

経営戦略の実行における不確実性への対処について、基本的 理論と経営的立場における実践的知識、ならびに実際の経営 環境への応用を促す事例を示す

テキスト全体構成

構築した戦略を実行するための方法、および実行後の評価についての理解を促すとともに、以下の6機能の紹介へとつなげる

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医療経営に携わる人材育成のあり方について――医療サービスの課題と将来像の観点から―― ……………………………………………… 016

1. 医療サービスを取り巻く環境の変化と今後の医療経営 …………………………………… 0162. 医療機関の経営における新たな方向性について …………………………………………… 017[補論] 医療機関経営の円滑化に向けた政策への期待 ……………………………………… 020

医療経営に携わる人材育成のあり方について――医療機関の経営層に求められるスキル要件について―― ………………………………… 021

1. 基本的考え方 …………………………………………………………………………………… 0212. 医療機関経営の課題 …………………………………………………………………………… 0211) 医療機関経営全般について ………………………………………………………………… 0222) ビジョンの策定について …………………………………………………………………… 0223) 環境の分析について ………………………………………………………………………… 0224) 戦略の立案について ………………………………………………………………………… 0235) 行動計画の策定について …………………………………………………………………… 0236) 戦略および計画の実践について …………………………………………………………… 024

3. 医療機関経営の担い手に必要な能力・特性 ………………………………………………… 0241) 医療機関の経営層に求められる基本的要件 ……………………………………………… 0252) 戦略的マネジメントにおいて求められる要件 …………………………………………… 027

4. 医療機関の経営層にかかわるスキル要件の整理における今後の課題……………………… 032

4

医療経営に携わる人材育成のあり方について 目次1

はじめに ………………………………………………………………………………………………… 009編集体制 ………………………………………………………………………………………………… 011テキスト作成の流れ………………………………………………………………………………………… 013

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第1章 経営管理の基礎

第1項 医療機関経営の基本的理解 ……………………………………………………… 036

1. 経営の理解 ……………………………………………………………………… 0361)なぜ経営を学ぶのか ……………………………………………………… 0362)マネジメントの理解 ……………………………………………………… 037● マネジメントの機能と役割 …………………………………………… 037● 戦略的マネジメントのプロセス ……………………………………… 038● リーダーシップとマネジメント ……………………………………… 039● リーダーの資質と能力 ………………………………………………… 039● 経営者になるために …………………………………………………… 040

2. 医療機関経営者に必要とされる知識とスキル ……………………………… 0401)医療サービスを理解し、提供するために必要な知見と特性 ………… 041● 医療サービスに対する理解 …………………………………………… 041● 医療サービスの提供にかかわる責務 ………………………………… 041

2)組織の経営管理に必要な基本的技能と特性 …………………………… 041● 課題解決力 ……………………………………………………………… 042● 対人力 …………………………………………………………………… 042● 志と心 …………………………………………………………………… 042

エンパワーメントと動機づけ……………………………… 0433)戦略的マネジメントにおいて求められる技能と特性 ………………… 043● ミッションの明確化とビジョンの策定 ……………………………… 043● 経営環境の分析と把握 ………………………………………………… 044● 戦略の立案と意思決定 ………………………………………………… 044● 行動計画の策定 ………………………………………………………… 045● 実践と評価 ……………………………………………………………… 047

3. 医療機関経営の特性 …………………………………………………………… 0481)医療サービスの特性 ……………………………………………………… 048●『不確実性』と『情報の非対称性』 …………………………………… 048● 専門職を活用した対人サービス ……………………………………… 049● 中小規模の組織や非営利組織が事業を展開 ………………………… 049

4. 医療サービス提供における倫理 ……………………………………………… 0511)医の倫理・生命倫理 ……………………………………………………… 051● 医の倫理(Medical Ethics)・生命倫理(Bio Ethics)………… 051● インフォームド・コンセント ………………………………………… 052

2)医療機関の社会的責任 …………………………………………………… 0523)患者本位の医療提供 ……………………………………………………… 053

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医療経営概論 目次2

コラム

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第2項 経営管理に必要な知識と技術 …………………………………………………… 054

1.マネジメントの実行に有用な経営手法 ……………………………………… 0541)課題解決力 ………………………………………………………………… 054● ゼロベース思考 ………………………………………………………… 055● 仮説思考 ………………………………………………………………… 055

2) 論理的思考力 ……………………………………………………………… 055● MECE(ミッシー) …………………………………………………… 056● ロジックツリー ………………………………………………………… 056

3)情報収集力 ………………………………………………………………… 0574)意思決定力 ………………………………………………………………… 057● 決定理論 ……………………………………………………………… 057● ゲーム理論 ……………………………………………………………… 058● デシジョンツリー ……………………………………………………… 058

2. 情報分析の手法と注意点 ……………………………………………………… 0581)定量分析 …………………………………………………………………… 0592)定性分析 …………………………………………………………………… 0603)ベンチマーク ……………………………………………………………… 060

第2章 我が国の医療と医療機関経営

第1項 社会保障制度のなかの医療 ……………………………………………………… 064

1. 社会保障制度のなかでの医療の成り立ち …………………………………… 0641)社会保障制度の原点 ……………………………………………………… 0642)我が国の社会保障制度 …………………………………………………… 065

2. 我が国の医療保障制度の特徴 ………………………………………………… 0691)「保険制度」…………………………………………………………………… 069● 国民皆保険の仕組み …………………………………………………… 069

2)「医療サービスの供給体制」………………………………………………… 070● フリーアクセスのとらえ方 …………………………………………… 070● 現物給付方式と医療費 ………………………………………………… 071

3)保健医療の供給体制に関する事項 ……………………………………… 072● 医療機関 ………………………………………………………………… 072● 医療従事者 ……………………………………………………………… 072

4)診療報酬制度 ……………………………………………………………… 072

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第2項 医療機関経営に影響を及ぼす人・組織 ………………………………………… 074

1. 医療機関経営上のステークホルダー …………… ……………………… 074

第3項 マネジメント上の課題解決に必要となる『個別経営技術』………………………076

1. 経営戦略 ……………………………………………………………………… 0762. マーケティング ………………………………………………………………… 0763. 技術戦略 ………………………………………………………………………… 0774. 戦略実行の考え方 ……………………………………………………………… 0775. 組織管理 ………………………………………………………………………… 0776. 人材管理 ………………………………………………………………………… 0777. オペレーション管理 …………………………………………………………… 0788. 会計管理 ………………………………………………………………………… 0789. 資金管理 ………………………………………………………………………… 07810. リスク管理……………………………………………………………………… 078

参考文献 …………………………………………………………………………………………………… 079

索  引 …………………………………………………………………………………………………… 083

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医療経営に携わる人材育成のあり方について

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1:患者ニーズについてはより詳細を把握すべく、本医療経営人材育成事業のなかで調査事業を実施する。

2:国民の意識としては、費用負担者・納税者としての意識も顕在化し始めている。

医療経営に携わる人材育成のあり方について―― 医療サービスの課題と将来像の観点から ――

2005年9月

今後の医療経営に携わる人材に求められる技能や行動特性等を検討するため、現在の医療サービスを取り巻く環境の変化と、その将来的な方向性について概観した。

1. 医療サービスを取り巻く環境の変化と今後の医療経営

●医療サービスに対する患者のニーズ 1は、疾病構造が急性疾患から生活習慣病にシフトするなかで、大きく変化している。

●日頃からの健康管理への意欲の高まりや生活の質(QOL)の重視など、患者の意識が変化している兆しが見えるだけではなく、疾病予防・再生医療やテーラーメイド型医療の到来等に象徴される医療技術の進歩を反映して、より包括的で質の高いヘルスケアサービスを求める動きが高まっている。今後の医療機関は、従来の医療保険制度における医療サービスのほか、疾病予防や在宅ケア等のヘルスケアサービスの提供が求められている。

● 一方で、多くの医療サービスは、事業主と従業員の保険料や税金等によって賄われている医療保険制度を通じて提供されていることから、持続可能な医療保険制度の構築に向け、たえず、医療サービスの効率化・高度化が求められている。また、保険診療と保険外診療との併用を通じた患者による積極的な治療方法等の選択を可能とする制度改革の進展も踏まえた対応が求められる。その他、DPCの導入拡大などを通じて、医療機関自らの意志によって、医療機関の経営改善に向けた創意工夫・切磋琢磨を行うことが必要となってきている。

●このような医療経営を取り巻く環境の変化によって、今後の医療機関は、いままで以上に、医療サービスにかかわる患者のニーズと問題意識 2をたえず的確にとらえ、それに対して最も有効かつ効率的に医療サービスを提供する体制を構築することが求められている。

●特に、個々の医療機関においては、これまでも患者一人一人のニーズに応じた適切な対応が求められていたが、今後は、地域において限られた医療資源をいかに活用していくかという視点に立って、医療機関の規模にかかわらず、それぞれが医療連携を通じて、患者により質の高い医療サービスを提供

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3:現状の急性期医療における入院診療と外来診療との分離は、紹介率向上にはつながっているが、真に地域連携機能を促進するものとは必ずしもなり得ていない場合もある、との指摘があった。

4:慢性期医療においても、サービスメニューの整備や適切な設備管理など、地域ニーズを踏まえた医療機関経営の必要性が指摘されている。

5:患者本位という観点は、サービスの一般的特性として、顧客との共同生産性を有することにかんがみれば、事業モデルを構築するうえで、重要な視点となってくる。サービス業では顧客満足を志向することは広く採られる戦略である。

していくことの重要性が高まっている。● なかでも、大都市圏の急性期医療においては、診療科の絞込みも含め資源の集中投入を図り、連携先や患者からの信頼を強固なものにするなど、いっそうの創意工夫による医療連携体制の構築が必要となっている 3。競争環境の厳しさにかんがみれば、患者・国民の適切な選択を支援する措置の整備とあわせて、得意分野ごとに大胆に機能分担する「水平的連携」も視野に入れる必要がある。

●こうしたなかで、患者のニーズと地域の医療機関が提供できる医療機能(サービスの内容と価格)の状況を含めたマーケティング手法の展開や、新しい医療技術の導入も含めた今後の事業戦略の設定など、医療機関の経営の重要性が拡大している 4。

●医療機関の経営を考える際には、医療サービスの特殊性や提供主体の構造にも注目する必要があると考えられる。特に、①医療サービスは、その本質から広く国民に提供されなければならない公共性を有すること、医療サービスの提供主体には公的主体も含まれていること、②単に利益を創出することではなく、医療機関としての理念やミッションを果たし、事業を継続していくことが重要であること、

③個々の医療機関は、他の産業分野での事業主体に比して相対的に規模も小さく、医療サービス全体としては多様化・分散化した提供構造にあること、

に留意することが必要である。

2.医療機関の経営における新たな方向性について

上記のような医療サービスを取り巻く環境の変化を踏まえて、医療機関の経営において具現化し始めている新たな方向性として、以下のとおり、整理を行った。

●医療機関の新たな方向性の1つとしては、事業内容等について、独自の戦略に基づき、創意工夫を行い、地域の求めるヘルスケアサービスを提供する存在となることが考えられる。

●患者本位という観点から、そのニーズの多様化を踏まえれば 5、医療サービスに限らず、関連したサービスも含めたヘルスケアサービスとして、広くサービス提供のあり方を考える必要がある。そのなかで、医療機関が提供するヘルスケアサービスの戦略を設定し、それを実行する組織を確立するマネジメントの視点が重要となってくる。

●なお、今後、医療機関がヘルスケアサービスを事業として展開するに当たっての事業領域としては、たとえば、①住民・患者に対して、自らの医療サービスに関する情報開示やセカンドオピニオンの提供を行うの

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6:こうした「学習する組織(Learning Organization)」を構築できる経営者をどのように育成するかが、本人材育成事業上は重要な論点である。

7:サービスの「無形性」という特性からは、医療サービスについても、患者は一定の可視化・相対化が行われることによって、患者からの信頼性がいっそう向上すると考えられる。

みならず、生活者の健康づくりに関して学ぶ環境を整備し、提供することをはじめ、広義のヘルスケアサービスを提供すること、

②世界的に健康分野への関心の高まりや高齢化の進展が見られるなかで、疾病予防をはじめ他産業と連携した包括的地域ケアの中核となることや、「医工連携」を通じた医療機器・医薬品産業の技術革新のエンジンとなること、なども考えられる。

[取組み事例]

-医療機関の機能分化が社会的要請ともなっているなかで、医療機関としての理念やミッションを含め事業モデルを明確化し、医療機関の組織内部や地域にわかりやすく積極的に明示する。公共的な存在である病院においては、社会的責任をより明確に経営に位置づけることの重要性は高い。-地域における他の医療機関の医療機能の状況を踏まえ、財務指標、臨床指標等で定量的なベンチマーキング等を行い、他の医療機関との機能の違いを明確化する。-より有効な事業戦略の策定および実行を行っていくため、これに適した能力・特性を持った人材を積極的に登用、配置する。また、経営層がそうした人材の必要性を意識し、人材育成に関する指針の策定など組織運営の一環として積極的に人材開発・育成に取り組むことで、たえざる価値創造が実現される 6。-事業戦略の策定に当たっては、他産業の優れた経営手法を積極的に活用するとともに、医療関連産業との協働を積極的に進める。

[取組み事例]

―医療機関における医療サービスの質・効率・安全の維持・向上に向け、臨床指標の管理やクリニカルパスの活用等を推進することは、有効な方策である。特に、クリニカルパスは、患者に対し提供する医療

具体的視点1

医療機関としての戦略の設定とそのための組織体制をいかに確立するか。

具体的視点2

医療サービスの質は、技術のみならず、アクセス・快適性・経済性などから総合的に患者から評価されると考えられるなかで、質の向上に向けた積極的な組織管理をいかに行うか。

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8:顧客満足に直結する顧客サービスの質の向上のため、離職率の低下をはじめ従業員満足を志向する、業務戦略とサービス提供システムである「サービス・プロフィット・チェーン」の考え方であり、しばしば現場職員へのエンパワーメント(権限移譲)も志向する。

9:たとえば、最近では、医師と患者との間等で十分な説明がなされていないなどのコミュニケーションギャップが存在し、患者の満足度を下げる一因として指摘される。

サービス内容の情報開示であり、患者志向での医療機関の経営を実現するうえでも有効な方策である 7。-クリニカルパスに加えて、患者満足につながる医療サービスの質を持続的に維持・管理する仕組みとして、医療機関内部で、組織管理目標と評価手法の設定、専門職の経営への参画、患者や従業員の満足度を高める取組み等を行う。特に、生活習慣病への対応がよりいっそう求められるなかで、医師と、看護師、その他の医療従事者との役割分担を積極的に見直すことも質の向上に向けた方策の1つである 8。-医療サービスの質は、患者との接点である職員の技能や行動特性が与える影響が大きく、医師も含めた医療従事者等の人材のマネジメントが最も重要である 9。特に、大学医局を中心とする人材供給機能の低下等のなかで、たとえば、院内の人材教育体制の強化や組織への貢献度に応じて差がつく評価制度の導入をはじめ、医療機関が質の高い医療従事者の働く場として選ばれることを促進することも方策の1つである。-医療機関における積極的なマーケティングの展開は、患者との持続的な信頼関係を構築するためにも、有効な手法となり始めている。たとえば、患者との接点である医療従事者を積極的に認知し、その離職率低下を目指すなど、従業員の満足と組織へのコミットを促すことを通じて、患者に対するマーケティングを図ることも方策の1つである。-医療機関の原価構成にかんがみても、過剰な入院設備の整理や専門特化、介護・予防への進出による包括的地域ケアの展開、共同購入等の間接部門の削減・効率化等が財務状況を改善し、サービスの質を向上する方策の1つである。-医療機関において作成する長期的な事業計画に基づき、資金管理の徹底や事業収入を通じた将来の成長資金の確保とともに、外部からの資金調達などの創意工夫をどのように行っていくかは、重要な経営課題である。

[取組み事例]

-医療連携モデルにおいては、高度医療とプライマリ・ケアという機能分化のみならず、高度医療の担い手のあいだで相互に専門化し医療連携することや、急性期医療とリハビリテーション医療、在宅医療と急性増悪の際の入院医療との連携など、地域で多様な医療連携が行われる 10。

具体的視点3

住民・患者のニーズを踏まえた質の高い効率的な地域の医療サービスの提供の実現に資する観点からは、個々の医療機関の経営改善と事業革新の展開に当たって、医療機関相互での連携モデルを重視することが有望な方向性として考えられるのではないか。

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10:諸外国の医療連携においては、たとえば患者の満足を満たしきれないためにプライマリ・ケアが十分に機能していない事例なども指摘されている。我が国の医療連携においては、地域医療資源の実態に即した形で連携が展開されることが大事であり、その方向性にあわせて人材育成を含め制度や環境が整備されることが重要である。

その際、特に疾病ごとを含めた事業ごとでの医療連携体制の構築と都道府県への医療計画への明示を通じ、住民・患者にわかりやすい医療連携体制を地域でいかに実現させていくかという視点が重視される。-急性期医療の平均在院日数がより短縮化するなかで、質の高い医療サービスを提供するために、医療機関内部での適切な管理に加え、地域連携クリニカルパスの活用など地域の医療機関との有機的な医療連携体制を構築する。その際、関連産業との効果的な協働により、医療機関を中核とするネットワークを通じて、効率的なサービス提供体制の確立など、事業革新を生み出すことも検討する。

[補論] 医療機関経営の円滑化に向けた政策への期待

・医療機関の実態を踏まえ、かつ、その創意工夫により患者のニーズが満たされるような適切な制度設計がなされるべきである。・医療機関が患者ニーズに対応する観点からは、現行の診療報酬制度について、次のような視点を持って見直すことが考えられる。①適切な機能分化と医療連携を促すかたちで、科学的な根拠に基づく診療報酬制度等を構築すること②多様なヘルスケアサービスの展開に資するかたちで、診療報酬制度等を構築すること。たとえば医療情報を提供することについても診療報酬で評価すること(セカンドオピニオン、医療コーディネーター、電子カルテ等)

・医療法人の形態の選択や都道府県が作成する医療計画における医療機関自らの位置づけなど、広範な経営技術の活用に対する理解を広める方策を検討する必要がある。・現場の実態と現行法規制とのあいだでギャップがある。たとえば、24時間365日救急医療を提供している病院に勤務する医師の宿当直に対する労働基準法の宿当直勤務の問題などがある。また、突発した手術への対応やへき地での医療を担う人材を円滑に供給するための医療専門職の派遣制度については、さまざまな制限がある。円滑な人材マネジメントと地域医療の確保という観点からも、規制の見直しが検討されるべきである。

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11:「非営利組織」とは、利益や剰余金について、外部に配分を行わない組織である。医療法第54条では、「医療法人は、剰余金の配11:当をしてはならない」と規定されている。

12:本スキル要件については、教育プログラム策定に当たって参照するのみならず、カリキュラムの実施効果の判断(受講生の理解レベルの測定など)や医療機関における昇進などの人事評価基準としての活用など、多様な展開可能性があることが指摘された。

医療経営に携わる人材育成のあり方について―医療機関の経営層に求められるスキル要件について―

2005年9月

1. 基本的考え方

医療機関の直面する具体的経営課題を踏まえながら、医療機関の経営層に求められる行動特性や技能を「スキル要件」として整理した。スキル要件の策定に当たっては、一般に企業の経営層に求められる要件に対して、医療機関経営における特性に留意して検討を行った。医療機関経営における具体的な特性としては、一般的な企業経営、サービス事業経営としての特性に加え、医療サービスについて、①医療の「不確実性」、「情報の非対称性」等に起因した公的制度下にあるサービスであること(具体的には、経営管理における倫理観の重視、組織の使命や理念、戦略策定における地域医療との関係、公定価格にともなう価格戦略の困難、成果目標や評価のあり方などに反映される)

②高度な専門職を活用した対人サービスであること(具体的には、組織・人事管理の重要性、患者満足に止まらない質の評価・改善のあり方などに反映される)

③非営利組織 11であり、かつ、中小規模の組織が事業を展開していること(具体的には、ガバナンス・連携をはじめとする組織運営や外部からの資金調達のあり方などに反映される)

をはじめ複合的な要素を持っていることを、特性として重視した。今後、本スキル要件を参照して、医療機関の経営層において、いっそうのマネジメントの向上が図られることが期待される。また、「医療経営人材育成事業」においては、本スキル要件の達成に必要な技術や知識について、体系化を行う 12。

2. 医療機関経営の課題

スキル要件の作成に当たって、経営課題を踏まえた実際的なものとするため、医療サービスを取り巻く環境の変化によって、医療機関として取り組むことがいっそう重要となっている経営上の課題について、事例を整理した。

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13:経済産業省「平成16年度バイオ人材育成事業」はじめとする他の高度専門人材育成事業でも、業務フローから業務内容またはスキルを分類しており、同様のアプローチが確認できた。

事例の整理に当たっては、医療機関経営の実践との関係を重視し、組織の経営管理のプロセスごとに類型化した 13。

1)医療機関経営全般について

企業の経営管理一般と同様に、医療機関においても、事業設計と実行体制の構築、さらには具体的な実践における創意工夫と合理性の追求がいっそう重要となってきている。

[医療機関における課題の例]

・患者本意の医療サービスを提供するため、患者満足に直結するサービスの質の向上をたえず促進する事業戦略と提供体制を構築すること。・個々の医療機関が独自の戦略に基づき、創意工夫を行い、地域の求める広義のヘルスケアサービスを提供すること。・地域において限られた医療資源をいかに活用するかという視点に立って、個々の医療機関が強みを活かし、医療連携を進めること。

2)ビジョンの策定について

組織におけるビジョンの策定とは、一般に、①まず、その存在価値や意義を明確化し、組織の理念や使命として、普遍的な言葉で表し、組織の内外に知らしめ、従業員に判断や行動の指針を与えること

②そのうえで事業を通じて実現したい将来像を可能な限り具体化することにある。そのため、ビジョンに基づき、一定時点までに目指すべき到達目標を設定することも重要である。

[医療機関における課題の例]

・患者や住民、そしてその接点となる職員に対して、医療機関としての理念や事業の仕組みを明確化し、積極的に説明すること。

3)環境の分析について

一般に持続する組織としては、変遷する社会環境に適応し続けていくため、組織の置かれた環境をたえず分析することが重要である。

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外部的な分析としては、組織外の大きな動きや変化の兆しを明確化し、市場ニーズや競争状況を把握し、事業機会を明確化することである。また、内部的な分析として、経営資源や組織の構造上の強み・弱みを可能な限り定量的に把握することが必要となる。そのうえで、環境における組織の位置づけ、事業の位置づけを客観的な形で共有することも重要となる(ポジショニング)。

[医療機関における課題の例]

・地域における他の医療機関の状況を把握し、機能の違いを明確化するため、財務・臨床面の指標を用いて定量的なベンチマークを行うこと。

4)戦略の立案について

一般に戦略の立案とは、策定されたビジョンと環境の分析に基づき、組織の事業活動の領域を設定するとともに、組織としての具体的取組みや判断基準につながる広汎かつ中長期的な計画を立てることである。また、上記の計画に基づき、事業の展開、資源の調達・配分、交渉などの多様な局面で、重要な意思決定を行うことが必要となる。

[医療機関における課題の例]

・地域・患者のニーズを踏まえ、専門特化や包括的地域ケアへの参画など、事業範囲の見直しを進めること。・事業戦略の立案とその担い手となる人材の配置・育成に一体的に取り組み、たえざる価値創造の実現を可能とすること。・他産業の優れた経営手法の導入や医療関連産業との協働を積極的に進めること。

5)行動計画の策定について

行動計画の策定とは、一般に、組織としての戦略を実践するために、短期間を対象としての戦術を確定したうえで、より詳細に目標と具体的活動を規定した行動計画をつくることとなる。その際、不確実性が高まっているなかで、計画で想定した状況と異なる状態になった場合の代替案をつくることも重要である。

[医療機関における課題の例]

・臨床指標の管理やクリニカルパスの活用等の推進により医療サービスの質・効率・安全を維

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14:医療機関の経営層としては、理事長・院長から、事務長・看護部長、各部門長などのミドルマネジメントまで多様な階層が想定される。本来それぞれに応じたスキル要件が必要との議論もあるが、各医療機関ごとにそれぞれの階層の機能が異なる実態もある。また、個々の人材、職能によらず、チーム、機能としてのマネジメントが確保されていることが重要であるとの指摘もある。そこで、今回は一体としての検討を行った。

15:リーダーシップとは、P・F・ドラッカーによれば「自分でビジョンを設計し、設計したビジョンについて、人・組織を動かして実現する能力」とされている。

持・向上すること。・人材教育体制の強化や組織への貢献度に応じた評価制度の導入などにより、人材管理機能を向上させること。・患者と医療機関の持続的な信頼関係を構築する方策として、高度なマーケティング機能を持つこと。

・徹底した資金管理を前提とし、新たな資金調達手法も視野に入れて長期的事業計画を策定すること。・連携医療機関内で共通した診療プロセスを持つなど、有機的な医療連携のあり方を探ること。

6)戦略および計画の実践について

戦略および行動計画の実践に当たっては、一般に、①組織共通の目標を達成するために働くことの意義を職員と共有すること②目標を確実に達成するために、実行中の活動を評価・調整することが重要である。計画や行動の結果に応じて、誤りが生じないよう、仕組みを考えておくことや決断時に不確実性への対応を考えることも重要である(リスクマネジメント)。また、具体的な実践を通じて、組織の計画や戦略、ひいてはビジョンの設定が見直されることが重要となる。言い換えれば、日々の実践を通じて、たえず戦略と仕組みを変革することで、組織の理念や使命に従い、成果を出せる経営管理を実践することが大事である。

[医療機関における課題の例]

・質の向上による患者満足を実現するため、組織としての管理目標と評価手法を設定したうえで、職員の組織への忠誠を高めること。その一環として、現場職員への権限委譲(エンパワーメント)を進めること。

3. 医療機関経営の担い手に必要な能力・特性

医療サービスが直面している経営課題の事例を念頭に、医療機関の経営層14に求められる行動特性や技能を「スキル要件」として整理した。スキル要件についても、医療機関経営の実践との関係を重視し、経営管理全般にかかわるものおよび各経営プロセスにかかわるものに区別して、整理した。これにより、医療機関経営の担い手がリーダーシップ 15を発揮するに当たって必要な行動特性や技能について、より具体的に検証できるものとした。

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16:理事長の法定要件等が存在しない米国においても、Healthcare Administratorとしては、医療サービスの実務への精通が重要とされている。

1)医療機関の経営層に求められる基本的要件

医療機関の経営において、組織の内外に対して、的確なリーダーシップを発揮するためには、医療実務への精通に加え、経営にかかわる行動特性や技能も有するという複合的能力が必要である16

と考えられる。そこで、「医療実務への精通」という観点からの「医療サービスを理解し、提供するために必要な知見と特性」と「経営管理の基本」という観点からの「組織の経営管理に必要な技能と特性」といった2つの切り口から、医療機関の経営に求められる基本的要件としての、技能と行動特性を整理した。

①医療サービスを理解し、提供するために必要な知見と特性

医療理念を認識し、組織にかかわる内外の状況を把握して、組織としての成果を出せる力である。

<医療サービスに対する理解>

-自院が提供している医療サービスの内容と職員が実施している診療業務について、把握している。-医療技術の基本や最近の動向について理解している。-医療制度や医療経済、特に医事管理や診療報酬制度の基本と最近の動向について理解している。-医療サービスおよび医療関連産業の動向について理解している。

<医療サービスの提供にかかわる責務>

-医療提供者と患者には診療に関する理解度に差異があることを認識したうえで、適切な情報提供ができる。-生命や人格に関する価値観には、さまざまな考えがあることを理解している。-非営利組織であることを理解し、その理念に基づく行動を職員に奨励できる。-診療に当たっては科学的根拠に基づいて評価・判断を行う。-常に患者の立場で考え、説明と同意を基軸に信頼関係を構築するとともに、患者の利益を代理する第三者の介入を奨励することができる。-地域社会が得る価値に基づいて、自院が提供するサービスを評価することができる。

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②組織を経営管理するために必要な技能と特性

組織としての戦略的な意思決定に必要な技能や行動特性を有し、組織としての成果を出せる力である。

<課題解決力>

情報収集力、分析力、論理的思考力、創造力および判断力に基づく技能と特性として、以下が想定される。-不確実性の高い状況にも積極的に対応し、情報収集を行える。-因果関係等を明らかにし、論理構造を考えて、仮説を立てることができる。-既成概念にとらわれずに大胆な構想を示すことができる。-複雑な問題に対しても、前向きに整理を行い、判断ができる。

<対人力>

育成・指導力、交渉力、統率力、コミュニケーション力に基づく技能と特性として、以下が想定される。-有能な人材を育成するために実践の場を提供することができる。-調整や交渉の場面で、利害の対立を双方の利益にすることができる。-相手を尊重し、認めるとともに、やる気を出させ、チームとして活動させることができる。-公衆に対して、あるいはメディアを通じて自分の考えを堂々と語ることができる。

<志と心>

経営管理の担い手として、自己と立ち向かいながら組織を変革する意欲や志向、さらには倫理観として、以下が想定される。-自院の活動が、社会に対しどのように貢献できるか考えることができる。-職員が自らの倫理観および組織としての価値観に従って行動することを奨励できる。-独自性と進取性を求めて挑戦する意欲を持っている。-新しい環境に適応するために、職員に具体的な方策を示しつつ、組織のよりよい変化をつくり出すことができる。-組織活動に主体的に関与し、率先垂範して行動することができる。

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2)戦略的マネジメントにおいて求められる要件

医療機関の経営層には、一般企業の経営同様に、戦略の策定、計画の実践など、戦略に基づく経営プロセスにおいて特に発揮されるべき技能や特性があると考えられる。組織の経営管理一般に求められるものに加え、医療経営において特に留意すべき特性を考慮したうえで整理した。

①ビジョンの策定

まず、医療提供者および診療情報管理者としての視点に立ち、地域で必要な医療機能の把握を行ったうえでの、組織としての使命や理念の確認を行う必要がある。それに基づき、医療制度の将来動向についての見通しともあわせて、組織としてのあるべき将来像を明確化し、組織内で共有される価値基準を設定することが必要となる。

②環境の分析

周囲の環境と自院の関係を分析するためには、一般に、機会を把握する外部的分析として、医療にかかわる制度・政策、経済社会の状況をはじめとする外部環境分析、患者や地域社会をはじめとする顧客分析、他の医療機関との関係をはじめとする競合分析が必要である。加えて、自らの強み・弱みをはじめとする内部分析が行われ、戦略の立案および実践に当たっての基本情報として、組織内で共有する必要がある。

ビジョン策定のための技能と特性として、以下が考えられる。

-社会に受け入れられ、職員と共有できる経営哲学、思考・行動様式や行動規範を有している。-患者本位の医療サービスの提供者として、地域貢献への強い意識や倫理観を有している。-自院の存在意義と将来目指す方向性を、職員や地域住民にわかる言葉で示すことができる。

-職員が規範とすべき行動が理解できるよう、わかりやすく明確化し、リーダーとして態度で示すことができる。

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③戦略の立案および選択

ビジョンおよび環境分析に基づき、組織としての到達目標の実現に向けた、事業設計や事業実施体制の構築など、より具体的な戦略を立案することが必要である。あわせて、組織運営に当たってのアイデンティティの確立や組織としてたえず管理すべき戦略目標など、事業にとって重要なさまざまな意思決定が行われることが必要である。

環境分析のための技能と特性として、以下が考えられる。

<外部環境分析>

特に、医療計画や、地域行政や関連団体の機能に留意しながら、医療をはじめとしたヘルスケアサービスの需給状況を把握し、将来の機会やリスクなどを認識・予測する技能が必要である。-医療制度について、目先の診療報酬制度の動向ではなく、中長期的な観点で将来の方向性を見通すことができる。

<顧客、競合状況および取引関係の分析>

患者や地域の顧客ニーズ、他機関等との競合状況、利用可能な外部資源について、現状および将来の動向を把握・予測する技能が必要である。-患者や地域社会をはじめとする顧客動向、他の医療機関をはじめとする競合状況、そして、調達・連携可能な外部資源について、現状および将来の動向を積極的に把握し、事実に基づき客観的に分析することができる。

<内部分析>

人材、資金、建物・設備等の内部資源の把握および課題の発見、ならびに、学習と成長の視点から見た組織体制の現状把握と課題発見を行う技能が必要である。特に、人材や技術、医療情報・先端知識など経営資源としての無形資産の重要性が増していることに注意する必要がある。-自院内の人材、設備、資金等の経営資源や組織風土について、事実に基づき客観的に把握を行い、組織として目指すべき将来像との関係での課題について明確化することができる。

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その際、医療機関の経営においては、制度・政策の影響下に置かれていることをはじめ、患者による価値評価の困難さ(「無形性」)、専門職と患者との協働(「同時性」)、需給管理の困難(「消滅性」)といったサービス特性を有していること、設備・施設産業として、設備更新・建て替え等の資本負担があること、サービス産業・流通産業として、資源の調達・管理が重要であること等への留意が必要である。

戦略立案および選択のための技能と特性として、以下が考えられる。

<戦略の立案>

地域の医療計画との関係等を踏まえながら、自院の地域医療における位置づけの把握、機能や診療科目などの検討を行い、自院としての目標に到達するための戦略の具体案を複数用意し、患者本位での医療サービス提供の可能性を探る。-外部環境と自院の経営資源の分析結果に基づいた、自院の事業機会と事業リスクについて理解できる。-地域のニーズをはじめ地域医療の状況を、制度的制約を理解し、医療連携を視野に入れて自院の事業内容を定めることができる。-事業の将来性の分析結果に基づき、他医療機関に対して何らかの独自性を持った形で事業の方向性を定めることができる。-単なる患者満足の実現ではなく、真の患者本位の医療を実現するための手法を設定するなど、ビジョンと具体的な戦略の立案に一貫性を持たせることができる。

<戦略の選択>

戦略案ごとに予想される結果と必要となる資源、実行の難易度などを検討し、実行すべき戦略を絞り込む。あわせて、資源配分の決定、資源の適切な調達など、実行体制についてのマネジメントを行う。-事業の安定継続と患者利益・地域利益という価値観のバランスを考慮して意思決定を行える。-事業の必要性と優先度合いを見極めて、地域の限られた医療資源を配分・調達することができる。-患者や医療機関・教育機関と密な協力関係を構築するとともに、優秀な専門職をはじめ組織を持続成長させるためのさまざまな資源を獲得することができる。

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17:James L. Heskettらが提唱する「サービス・プロフィット・チェーン」の考え方を参照した。従業員満足を通じた職員の離職率の低下と労働生産性の向上が価値を生み出す。そのため、職員の選抜・育成とインセンティブ、職務設計と職場環境整備など社内サービスの質も重要である。

④行動計画の策定

戦略を実践するためには、組織を運営管理するための行動計画の策定が必要となる。その際、医療サービスの対人サービスという特徴に着目することが重要である。患者との接点となる専門職等の職員満足を高めることで、熟練と動機づけがなされ、効率を高められるとともに、サービスの品質の向上につながる、自立的に成長する組織が構築される。こうした「患者満足」と「職員満足」の好循環を実現する組織マネジメントを実現することが重要である17。行動計画としては、こうした自立的に成長する組織マネジメントをはじめ、医療サービスの質・効率・安全の向上に資する業務プロセスを構築し、患者への価値創造を実現することが重要である。その際、研究開発型の産業として、新規技術の影響が大きいこと、サービス産業・流通産業として、柔軟な供給プロセスの構築と、在庫管理やコスト管理が重要であることに留意する必要がある。

-地域社会をはじめ組織の内外に適切かつ積極的に情報を伝え、戦略遂行につながるマーケティング機能を展開できる。-中長期事業計画に基づき、収支管理の徹底と適切な資金調達の活用ができる。

行動計画の策定に係る技能と特性として、以下が考えられる。

<自立的に成長する組織マネジメント>

優れた業務戦略と提供システムの構築に向け、専門職等の職務満足と組織への参画意識を高め、定着率を上げるなど、生産性を向上させ、効率的な医療サービスの提供を実現することが重要である。-戦略に則った組織目標を具体的に定め、職員の能力を引き出すようにボトムアップで計画を立案できる。-職員のモチベーションを高めるため、職務設計等の組織体制や職員の報酬等の人事体系を構築することができる。-医療情報・先端医療等の無形資産の持つ価値とリスクを理解し、ナレッジマネジメントの浸透を図ることができる。

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⑤戦略および計画の実践

この段階では、職員とのあいだで組織目標の共有化、および目標に基づく業績の評価と管理が行われる。計画の実行に当たっては責任者を明確にし、-P(計画):診療面と財務面の両面について期日や達成水準など具体的な目標を設定する、-D(実行):複数の専門職種による実行組織の構造・構成員・役割を決めるとともに、構成員

の具体的な行動を指揮・命令する-C(測定):実行途中で定期的に成果を測定・評価する-A(対策):計画の達成状況や、計画に影響を及ぼす制度動向や競合環境等の変化に応じて、

計画や戦略に修正を加える、というPDCAサイクルを実行する必要がある。

<患者本位の業務プロセスの構築>

患者本位での医療サービスの質・効率・安全の維持・向上に向け、業務改善や技術革新を行う。-職員の業務改善活動を奨励し、組織に改善マインドを醸成することができる。-常時進歩する診療技術や情報技術等の有用性とリスクを理解し、導入の可否等を適切に評価、判断できる。-ホスピタリティの価値とサービスの質への影響を理解し、適切に管理できる。-職員による業務と外部資源の活用を最適なバランスで組み合わせた、高度なサービス提供プロセスを構築・管理できる。-患者を中心とした業務フロー、および、院内外で扱う物品のフローを理解し、コストも含めた管理ができる。-医療の有用性と危険性について職員に十分理解させるなど、事故が起こる仕組みを理解し、事故を抑止するためのシステムを構築できる。

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4. 医療機関の経営層にかかわるスキル要件の整理における今後の課題

広く医療機関の経営の担い手にかかわる技能や特性として素案の整理を行ったが、今後、医療機関の経営層に必要な経営技術等について体系化する過程で、随時前提となる本要件についても見直すことが必要である。また、本スキル要件の検討に際して議論のあった、・経営層の機能に応じた体系の整理の必要性

・本スキル要件の多様な活用法

などについては、別途、より精緻化に向けた検討を深める必要がある。

戦略および計画の実践については、以下の技能や特性が重要となる。

-複数の高度な専門職種で構成されている組織において、組織横断的に共有できる明確かつ具体的な目標を設定できる。-一般に専門職が強く意識していない財務面や診療面の明確な目標を設定したうえで、進捗や成果の評価基準を明確にすることができる。-決定したことをやりぬく意志を持ち、問題が発見された場合は即座に対策を講じることができる。-災害や事故などさまざまな不測の事態に対応できるよう、職員に徹底することができる。-成果を出すため、必要に応じて、たえず戦略と行動計画を見直すことができる。

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1 医療経営に携わる人材育成のあり方について

今村英仁「病院経営・管理者プログラムを受講して-病院経営とMPH」『病院』2005年8月号、医学書院梶原優総監修(2006)『改訂第2版 病院職員読本』日本病院会出版立川幸治「病院としての取り組み-大学医学部附属病院」『病院』2005年8月号、医学書院明治安田生活福祉研究所「医療機関の経営評価手法に関する調査研究」(平成16年3月)UFJ総合研究所「中小病院経営改善ハンドブック作成および普及事業報告書」(平成15年3月)UFJ総合研究所「医療機関の経営安定化に資する経営管理手法に関する調査研究」(平成16年3月)「Essentials of Medical Management」American College of Physician Exectuive,2003「Opportunities in Hospital Administration Careers」I. Donald Shook, Jr.,1997「Managing the Non-Profit Organization: Principles and Practices」P.F. Drucker,1992「Putting the Service-Profit Chain to Work」Heskett, J. L. et al, Harvard Business Review, March-April 1994

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参考文献

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2 医療経営概論

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T.L.ビーチャム、J. F.チルドレス/永安幸正・立木教夫監訳(1997)『生命医学倫理』成文堂TKC全国会、医業・会計システム研究会編(2004)『病医院の経営・会計・税務』TKC出版西田在賢(2001)『医療・福祉の経営学』薬事日報社バート・ヴァン・ローイ、ポール・ゲンメル、ローランド・ヴァン・ディードンク編/白井義男監修、平林祥訳(2004)『サービス・マネジメント 統合的アプローチ(上)』ピアソンエデュケーションHarvard Business Review編/DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳(2000)『不確実性の経営戦略』ダイヤモンド社長谷川敏彦編集(2002)『病院経営戦略』医学書院P.F.ドラッカー/上田惇生編訳(2000)『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか』ダイヤモンド社P.F.ドラッカー/上田惇生編訳(2001)『マネジメント[エッセンシャル版] 基本と原則 』ダイヤモンド社福祉士養成講座編集委員会編(2003)『新版第4版 社会福祉士養成講座⑤ 社会保障論』中央法規UFJ総合研究所(2003)『医療施設経営ハンドブック』日経BP社吉田博文、中尾宏、中村雅一、坂上信一郎編著(2000)『戦略医業経営の17章』医学通信社吉原健二、和田勝(1999)『日本医療保険制度史』東洋経済新報社ロバート・メイ、アラン・エイカーソン/徳岡晃一郎訳(2005)『リーダーシップ・コミュニケーション』ダイヤモンド社相田俊夫(2005)「事業家の社会貢献から世界水準の地域医療へ」『病院』64巻6号 医学書院阿部博人(2005)「病院の社会的責任―CSRからの視点」『病院』64巻6号 医学書院厚生労働省(2002)「『社会保障負担等の在り方に関する研究会』報告書について」厚生労働省(2004)「医療施設調査」『医療施設(動態)調査・病院報告の概況』厚生労働省委託、UFJ総合研究所(2004)「生活と健康リスクに関する意識調査」社会保障構造の在り方について考える有識者会議(2000) 『21世紀に向けての社会保障』日本医師会総合政策研究機構「第1回医療に関する国民意識調査(2002年度)」日本経済団体連合会(2004)「求められる3つの力」『21世紀を生き抜く次世代育成のための提言』

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2 医療経営概論

日本病院会厚生労働省社会保険診療報酬支払基金

参考ホームページ

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●英数字●

PDCAサイクル ………………………………… 31

●ア行●

医療サービスの特殊性 ………………………… 17

●カ行●

外部環境分析 …………………………………… 28

課題解決力 ……………………………………… 26

顧客、競合状況および取引関係の分析 ……… 28

志と心 …………………………………………… 26

●サ行●

サービス・プロフィット・チェーン …… 19、30

スキル要件 ……………………………13、21、24

戦略の選択 ……………………………………… 29

戦略の立案 ………………………………… 23、29

●タ行●

対人力 …………………………………………… 26

●ナ行●

内部分析 ………………………………………… 28

●ハ行●

非営利組織 ……………………………………… 21

●ラ行●

リーダーシップ ………………………………… 24

索 引

1 医療経営に携わる人材育成のあり方について

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●英数字●

CSR、企業社会責任、社会的責任…………52~53

HSR、病院の社会的責任………………………… 52

KJ法 ………………………………………………54

MECE、ミッシー………………………………… 56

PDCAサイクル ………………………………… 47

●ア行●

アンケート調査 ………………………………… 60

意思決定 ……………………41、43、44、57、59

医の倫理、倫理、生命倫理 …………48、51~53

医療機関経営の特性 ……………………… 48~50

医療サービス

……………40、45、48、49、51、70、74、77

医療サービスの供給体制、供給体制 …… 70~71

医療施設、病院、診療所 ……………………… 72

医療専門職、有資格者 ………………………… 72

医療保険(制度)………………………69、70、72

医療保障制度 …………………………………… 69

インフォームド・コンセント、説明と同意

…………………………………………… 41、52

エンパワーメント、権限委譲 ………………… 43

●カ行●

仮説思考 ………………………………………… 55

課題解決(力) …………………41、42、54~55

患者本位 …………………………………… 46、53

企業社会責任、CSR、社会的責任 ………52~53

供給(者)………………………………………… 74

供給体制、医療サービスの供給体制 …… 70~71

組合管掌健康保険 ……………………………… 69

グループインタビュー、集団面接法 ………… 60

経営 ………………………………36、44、48、57

経営指標 ………………………………………… 60

権限委譲、エンパワーメント ………………… 43

決定理論 ………………………………………… 57

ゲーム理論 ……………………………………… 58

現物給付方式 …………………………………… 71

公定価格 ………………………………………… 74

高度先端医療 …………………………………… 71

顧客志向、顧客満足 ………37、43、46、76、78

国民皆保険 ……………………………………… 69

国民健康保険団体連合会 ……………………… 72

混合診療禁止の原則 …………………………… 71

コンプライアンス、法的倫理的責任、法令遵守

…………………………………………… 52~53

●サ行●

差額ベッド(代)………………………………… 71

自己決定 ………………………………………… 51

市町村国民健康保険 …………………………… 70

支払基金、社会保険診療報酬支払基金 ……… 72

自費診療 ………………………………………… 71

自律尊重原理 …………………………………… 51

社会的責任、企業社会責任、CSR…………52~53

社会福祉サービス ……………………………… 65

社会保険診療報酬支払基金、支払基金 ……… 72

社会保険方式 ……………………………… 65、69

社会保障制度 ……………………………… 64、65

囚人のジレンマ ………………………………… 58

2 医療経営概論

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集団面接法、グループインタビュー ………… 60

従業員志向、従業員満足 ……………………… 37

準委任契約 ……………………………………… 49

準市場 …………………………………………… 74

情報の非対称性 …………………………… 49、74

職域保険 ………………………………………… 69

所得保障 ………………………………………… 65

仁恵原理 ………………………………………… 51

審査支払機関 …………………………………… 72

診療所、病院、医療施設 ……………………… 72

診療報酬制度 …………………………………… 72

ステークホルダー、利害関係者 

…………………………………52~53、74~75

正義原理 ………………………………………… 51

請求書、レセプト ……………………………… 72

政府管掌健康保険 ……………………………… 69

税方式 …………………………………………… 69

生命倫理、倫理、医の倫理 …………48、51~53

説明と同意、インフォームド・コンセント

…………………………………………… 41、52

ゼロサムゲーム、零和ゲーム ………………… 58

ゼロベース思考 ………………………………… 55

専門職 ……………………………………… 49、72

戦略的代替案 …………………………………… 57

●タ行●

地域保険 ………………………………………… 69

チーム医療 ……………………………………… 52

中小規模の組織 ………………………………… 49

定性分析 ………………………………………… 60

定量分析 ………………………………………… 59

デシジョンツリー ……………………………… 58

動機づけ、モチベーション …………43、46、50

特性要因図、フィッシュボーン ……………… 54

ドクターショッピング ………………………… 71

特定療養費 ……………………………… 71、74

トップマネジメント …………………………… 37

●ハ行●

パターナリズム ………………………49、51、52

非営利、非営利組織 ………36、41、48~49、76

ビジョン ………………………………………… 43

ヒポクラテスの誓い …………………………… 51

被用者保険 ……………………………………… 69

病院、診療所、医療施設 ……………………… 72

病院の社会的責任、HSR ……………………… 52

フィッシュボーン、特性要因図 ……………… 54

不確実性 ………………………………………… 48

ブレーン・ストーミング ……………………… 54

ベンチマーク …………………………………… 60

法令遵守、コンプライアンス、法的倫理的責任   

…………………………………………… 52~53

保険医 ……………………………………… 71、72

保険医療機関 ……………………………… 71、72

保険医療保障 …………………………………… 65

保険者 …………………………………69、73、74

保険制度、医療保険制度 ……………69、70、72

ポジショニング …………………………… 44、45

●マ行●

マクシマックス原理 …………………………… 57

マネジメント …………………………37、38、39

マネジメント・プロセス ……………………… 38

ミッシー、MECE ……………………………… 56

ミッション ……………………………………… 43

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86

ミドルマネジメント …………………………… 37

ミニマックス原理 ……………………………… 57

無危害原理 ……………………………………… 51

モチベーション、動機づけ …………43、46、50

●ヤ行●

有資格者、医療専門職 ………………………… 72

輸血拒否 ………………………………………… 52

●ラ行●

利害関係者、ステークホルダー

…………………………………52~53、74~75

リーダー、リーダーシップ ……………… 39~40

リーダーの役割、リーダーが持つべき属性

…………………………………………… 39~40

倫理、医の倫理、生命倫理 …………48、51~53

レセプト、請求書 ……………………………… 72

ロジカル・シンキング、論理的思考力 … 55~56

ロジックツリー …………………………… 56、57

論理的思考力、ロジカル・シンキング … 55~56

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経済産業省サービス産業人材育成事業医療経営人材育成テキスト[Ver. 1.0]

はじめに医療経営に携わる人材育成のあり方について医療経営概論

発行日 2006年3月31日発行者 平成18年度医療経営人材育成事業 ワーキンググループ事務局 KPMGヘルスケアジャパン株式会社 

東京都千代田区丸の内1丁目8番1号 丸の内トラストタワーN館

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