みずほ欧州経済情報 みずほ欧州経済情報(2018年3月号) 近づくsapiの達成...

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みずほ欧州経済情報 2018年3月号 ◆ トピック 緩和からの脱却に歩みを進めるECB 2018年入り後もECBは緩和からの脱却を慎重に進めて いる。ECBは2018年央にも資産購入の停止を決め、政策 金利に関するフォワード・ガイダンスを修正するだろう。 ◆ 景気判断 景気拡大が持続。ユーロ高の影響は徐々に顕在化 1~3月期のGDP成長率は、前期並みの水準となったとみ られる模様だ。ただし単月では、ユーロ高や寒波の影響な どから、3月にかけて景気拡大ペースは鈍化した模様だ。

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Page 1: みずほ欧州経済情報 みずほ欧州経済情報(2018年3月号) 近づくSAPIの達成 年央には資産購入停止 とガイダンス修正を発 表する公算大

みずほ欧州経済情報

2018年3月号

◆ トピック

緩和からの脱却に歩みを進めるECB

2018年入り後もECBは緩和からの脱却を慎重に進めて

いる。ECBは2018年央にも資産購入の停止を決め、政策

金利に関するフォワード・ガイダンスを修正するだろう。

◆ 景気判断

景気拡大が持続。ユーロ高の影響は徐々に顕在化

1~3月期のGDP成長率は、前期並みの水準となったとみ

られる模様だ。ただし単月では、ユーロ高や寒波の影響な

どから、3月にかけて景気拡大ペースは鈍化した模様だ。

Page 2: みずほ欧州経済情報 みずほ欧州経済情報(2018年3月号) 近づくSAPIの達成 年央には資産購入停止 とガイダンス修正を発 表する公算大

1 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

1.トピック:緩和からの脱却に歩みを進めるECB

2018 年も緩和からの脱却

を進めるECB

ECBの緩和パッケージ

の構造

強化されるフォワード・ガ

イダンス

資産購入停止の三つの

条件

2017年以降、欧州中央銀行(ECB)は緩和策からの脱却を慎重に進めて

いる。2018年入り後もこの動きは続いており、ECBは同年1月から国債な

ど資産購入をこれまでの毎月 600 億ユーロから 300 億ユーロに半減させた。

また、3 月の政策理事会では、資産購入の規模や期間を経済情勢次第で拡大

または延長するという、いわゆる「緩和バイアス」を声明文から削除した。

ECBの今後の金融政策を展望するに際しては、現在の緩和パッケージの

構造を捉えておくことが有用であろう。2014年央から始まった現在のECB

の緩和パッケージは、①マイナス預金金利を含む伝統的な金利政策、②国債

購入を含む非伝統的な資産購入プログラム、③両者の先行きに関する政策指

針であるフォワード・ガイダンス(以下ガイダンス)により構成される。金

利政策と資産購入はガイダンスにより結び付けられており、三者が一体とな

り緩和的な金融環境が生み出されている。

2013年 7月に導入されたECBのガイダンスは年々内容が強化された。現

時点では、政策金利、毎月の資産購入、購入した資産の再投資の3点に関す

るガイダンスが表明されている(図表1)。

政策金利に関するガイダンスでは、「政策金利は資産購入の実施期間を十

分に超えて(well past)低位にとどめられる」と述べられており、「利上げ

は資産購入が終了した後」という緩和脱却の順序が示されている。これによ

り「資産購入終了後も当面利上げは行われない」という市場参加者の期待が

醸成され、短期金利が低位に抑制されている。

このため、資産購入の実施期間に関する期待が変われば、自動的に利上げ

時期についても期待が変わるような仕組みとなっている。その資産購入に関

するガイダンスでは、最小限の実施期間(現在は2018年 9月まで)と共に、

「インフレ率の持続的な調整(sustained adjustment in the path of

inflation, SAPI)が確認されるまで実施する」という条件が示されている。

後者の条件は重要で、資産購入プログラムをECBの物価目標(中期的なイ

ンフレ率が「2%未満だが2%近傍」)に結びつけるものだ。

ECBは、SAPI の達成を判断するに際して、「収斂(Convergence)、自信

(Confidence)、頑健性(Resilience)」という 3 つの検討項目を挙げている。

これは、インフレ率が中期的に物価目標に向け上昇するという見通しが共有

され(収斂)、かつその見通しが緩和策を縮小させても揺るがず(頑健性)、

見通しが外れてしまうリスクも減じていると感じられること(自信)を、SAPI

達成の条件とECBが考えていることを示している。

以上が現在のECBの緩和パッケージの大まかな構造である。SAPIが達成

されたと判断されれば資産購入は停止され、十分な期間が経った後に利上げ

が行われることになる。

SAPIの達成について、ECBのチーフエコノミストであるプラート理事は、

2 月初には「まだ幾分の距離がある」と述べていたが、現在その距離は縮ま

りつつあるとみるべきだろう。

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2 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

近づくSAPIの達成

年央には資産購入停止

とガイダンス修正を発

表する公算大

利上げの時期とペース

に関するガイダンスが

加わるかに注目

冒頭に述べたとおり、ECBは1月より資産購入の縮小を開始した。それ

でも 3 月に発表されたECBスタッフによる経済見通しでは、2020 年のコ

ア・インフレ率見通し(+1.8%)が前回見通しから据え置かれた。緩和策

を縮小させても物価目標達成に向けたECBのインフレ見通しは揺らいで

おらず、SAPIの達成に向けた「収斂」と「頑健性」の条件は、ECB内で既

に満たされたと見做されている可能性があろう。

他方で、SAPI達成の最後の条件とされる「自信」に関しては、深まってい

るが、まだ意見は割れているようだ。3 月の政策理事会後にドラギ総裁は、

自信の度合いについては理事会の中でまだ温度差がある旨を述べている。こ

の温度差を埋められるかが、資産購入の終了を最終的に決するだろう。プラ

ート理事は「自信」を強めるための判断材料として、コア・インフレ率など

の基調物価と同時に、設備稼働率など経済資源の利用度合い、すなわち経済

の需給のゆるみの縮小を挙げている。

コア・インフレ率の大幅な上昇は当面見込みにくい。しかし、設備稼働率

の上昇や、ドイツにおける賃上げの動き、現状の就業に満足しているパート

タイマーの増加といった状況が続けば、ECBの自信が更に深まるであろう。

金融市場の混乱など外部環境の急変が無ければ、2018 年央の政策理事会で

SAPI達成が確認され、資産購入の停止とガイダンスの修正が決定される可能

性が高い。

その際のガイダンス修正は、政策金利に関するガイダンスの見直しが中心

になる。現状の政策金利に関するガイダンスは「資産購入の期間を十分に超

えて低金利を維持する」と述べるのみであり、利上げ開始の時期やペースな

ど、政策金利の見通しに関する情報が少ないためだ。また、政策金利見通し

と物価目標の関係についても、現在の金利ガイダンスには言及がない。どの

ような金利ガイダンスの修正が行われるかが注目されるが、非常に緩やかな

利上げを予想させる内容となるだろう。

【 図表1:ECBのフォワード・ガイダンス 】

(資料)ECBより、みずほ総合研究所作成

現在 資産購入停止後のポイント

政策金利ECBは、主要政策金利が現状水準に当分の間、かつ純資産購入の期間を十分に超える(well past)までとどまることを期待している。

・利上げの時期やペースに関する内容の明確化・物価目標との関連付け

資産購入

ECBの毎月300億ユーロの純資産購入は、2018年9月、必要があればそれ以降も行われることが意図されている。いずれの場合でも、政策理事会がインフレ目標と整合的なインフレ率の持続的調整(a sustained adjustmentin the path of inflation)を確認するまで続けられる。

・削除。物価目標と政策手段の関連付けが無くなることに

再投資

ECBは、資産購入プログラムで償還期限を迎えた債券の再投資について、純資産購入を終えて以降も当分の間実施し、必要な限り長期に渡り行う。

・大きな変更なし

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3 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

2.ユーロ圏経済の概況:景気拡大が持続。ユーロ高の影響は徐々に顕在化

10~12 月期のユーロ圏

は輸出・投資を中心とし

たプラス成長

2017 年 10~12 月期のユーロ圏実質GDP成長率(3 次推計値)は、前期比+

0.6%となった(図表 2)。需要項目別の内訳をみると、輸出(7~9 月期同+1.6%

→10~12 月期同+1.9%)の増勢が強まったほか、固定投資(同▲0.2%→同+

0.9%)が機械投資を中心に持ち直した。機械投資に関しては、輸出の増加を背

景に関連業種が投資を増やしたとみられる。他方、個人消費(同+0.3%→同+

0.2%)は、実質所得の改善ペースの減速を受け、鈍化した(詳細は 5頁)。

1~3 月期もユーロ圏で

は堅調な景気拡大が持

続。ただし単月では拡大

ペースが鈍化している

模様

1~3月期も、ユーロ圏では堅調な景気拡大が続いた模様である。GDP成長率

との連動性が高いユーロ圏合成PMIをみると、1~3 月平均(57.1)は 10~12 月

平均(57.2)並みの高水準を維持した。1~3 月期のGDP成長率が 10~12 月期

程度であることが示唆される。ただし単月では、3 月のPMIは 55.3 と 2 カ月連続

で大幅に低下しており、景気拡大ペースには鈍化の兆候がうかがわれる(図表 3)。

発表元の Markit 社によると、寒波による物流の遅れ、一部における資本設備の

不足、輸出受注の改善ペースの鈍化がPMI低下に影響したという。輸出受注に

関しては、ユーロ高の影響が徐々に顕在化してきたとみられる。

景気の下振れリスクと

して懸念された米国の

関税賦課。一先ず、賦課

対象からEUは除外さ

れたが、今後のEU・米

国の交渉の行方が注目

される

今月、ユーロ圏景気の下振れリスクとして新たに懸念されたのが、米国の通商

政策であった。(1)米国は、安全保障を理由に、鉄鋼・アルミ製品の一部に関税を

賦課すると発表した(図表 4)。(2)これに対してEUは、米国の措置をセーフガー

ドと断定した上で、セーフガード協定に基づく対抗措置を講じる方針を示した。

(1)、(2)とも、対象となる金額は、EU・ユーロ圏の経済規模と比べて小さい。

(1)に関しては、総額およそ 68 億ユーロ(賦課対象となるEUの鉄鋼・アルミ製品

の対米輸出金額(2017年、HSコード 6桁ベース))で、EUのGDP比 0.04%にと

どまる(図表5)。したがって、関税賦課により輸出価格が上昇し、EUの対米鉄鋼・

アルミ製品輸出が落ち込むとしても、EU経済全体に及ぼす影響は大きくない。

(2)についても、総額およそ 60億ユーロ(対抗措置の対象製品のEUの対米輸入

金額(2017年、CNコード8桁ベース))で、EUのGDP比0.04%となる。関税引き

上げで輸入価格が上昇することの影響も、EU経済全体でみれば限定的だ。

こうした静学的な分析は、事態の深刻さを十分に捉えられていない。参考にな

るのは、欧州中央銀行ドラギ総裁の発言だ。同総裁は、米国の措置の静学的な

影響は大きくない述べた上で、 終的な影響を測るには、対抗措置があるか、為

替レートへの影響がどうか、経済主体のマインドに影響するか、という動学的な視

点が重要と指摘した。対抗措置の応酬となれば、世界的に貿易活動は収縮する

であろうし、企業マインドが冷え込めば、生産・投資活動も停滞すると考えられる。

米国が、(1)の対象からEUを除外する方針を示したことから、(少なくともEUへ

の影響という観点では)事態は収束に向かっているようにみえる。しかしながら、

除外は 4 月末までという期限が設けられている。その期限までに、EUと米国が通

商交渉を行い、米国が満足する形で合意に至らなければ、EUの対米鉄鋼・アル

ミ製品には関税が課されるとみられる。米国が関税賦課に踏み切れば、EUは対

抗措置を発動すると考えられる。火種はまだ残っていると認識するべきであろう。

Page 5: みずほ欧州経済情報 みずほ欧州経済情報(2018年3月号) 近づくSAPIの達成 年央には資産購入停止 とガイダンス修正を発 表する公算大

4 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

図表 2 ユーロ圏GDP成長率

(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成

図表 3 ユーロ圏PMI

(資料)Markit よりみずほ総合研究所作成

図表 4 米国の関税賦課を巡るEUの対応等

図表 5 米国・EUの措置のマクロ的影響

(資料) 各種報道、欧州委員会よりみずほ総合研究所作成

(注) 2017 年の値。(1)は、賦課対象となるEUの鉄鋼・アルミ

製品の対米輸出金額(HSコード 6 桁)、(2)は、EU の対抗

措置の対象となる製品の対米輸入金額(CNコード 8 桁)。

リストAとBの違いは図表 4 を参照。

(資料) Eurostat、欧州委員会よりみずほ総合研究所作成

図表 6 ユーロ圏景気の全体感を示す主要統計

(資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECB、Markit、Datastream よりみずほ総合研究所作成

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

2014 15 16 17

在庫投資 外需 固定投資

政府支出 個人消費 実質GDP

(前期比、%)

(年/四半期) 49

50

51

52

53

54

55

56

57

58

59

60

61

2016/3 17/3 18/3

合成PMI 製造業 サービス業

(Pt)

拡張←

景気

→縮小

(年/月)

3月 出来事

米国が、鉄鋼・アルミ製品の輸入に関税を賦課する計画を発表

「米国の対応は、安全保障の観点では正当化されない。WTOルールに沿った対抗措置を提案する予定だ」(ユンケル欧州委員長)

8日トランプ米大統領が、鉄鋼・アルミ製品の輸入に関税を賦課すると大統領令に署名

14日「米国の措置は、セーフガードの偽装。EUは、WTOのセーフガード協定に基づくリバランスの権利を有する」(マルムストローム欧州委員(通商担当))

16日EUが、関税の引き上げを主軸とした対抗措置を公表。即時実施を念頭に置いた「リストA」、セーフガード協定上の3年間のモラトリアム期間後の実施を念頭に置いた「リストB」に分かれる

23日 米国が、一時的にEUを関税賦課の対象外にすると発表

1日

0.00

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

(1)米国の関税賦課対象

となる鉄鋼・アルミ製品

の対米輸出金額

(2)EUの対抗措置の

対象となる製品

の対米輸入金額

(EUのGDP比、%)

リストA

リストB

Q2 2017 Q3 2017 Q4 2017 Q1 2018 2017/10 2017/11 2017/12 2018/01 2018/02 2018/03

ユーロ圏(19カ国) 前期比、% 0.7 0.7 0.6 n.a. - - - - - -

 ドイツ 前期比、% 0.6 0.7 0.6 n.a. - - - - - -

 フランス 前期比、% 0.6 0.5 0.6 n.a. - - - - - -

 イタリア 前期比、% 0.4 0.4 0.3 n.a. - - - - - -

 スペイン 前期比、% 0.9 0.7 0.7 n.a. - - - - - -

景況感 ユーロ圏合成PMI Pt 56.6 56.0 57.2 57.1 56.0 57.5 58.1 58.8 57.1 55.3

ユーロ圏製造業PMI Pt 57.0 57.4 59.7 58.3 58.5 60.1 60.6 59.6 58.6 56.6

ユーロ圏サービス業PMI Pt 56.0 55.3 55.9 56.4 55.0 56.2 56.6 58.0 56.2 55.0

ユーロ圏ESI 長期平均=100 109.5 111.5 114.3 114.5 113.5 114.0 115.3 114.9 114.1 n.a.

見通し 専門家調査(当年のユーロ圏GDP成長率、%) 1.7 1.9 2.2 n.a. - - - - - -

金融 ECB主要政策金利 末値、% 0.00 0.00 0.00 n.a. 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

ドイツ10年国債利回り 末値、% 0.47 0.46 0.42 n.a. 0.36 0.37 0.42 0.64 0.61 n.a.

ユーロ/ドル 末値、€/$ 1.14 1.18 1.20 n.a. 1.16 1.19 1.20 1.25 1.22 n.a.

実質GDP

成長率

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5 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

3.ユーロ圏内外需動向:輸出・生産は増加傾向。目先は寒波の影響に留意

ユーロ圏輸出は増加傾

向。今後はユーロ高によ

り増加ペースが鈍化す

る公算

ユーロ圏の輸出は増加傾向にある。1月のユーロ圏域外向け輸出金額(国際

収支統計の財・サービス輸出金額)は、前月比▲0.2%の微減にとどまった。

仕向地別の動向をみると(貿易統計の財輸出金額)、総じて減少したが、過去

数カ月の大幅増の反動と考えられる(図表7)。

今後も、輸出は増加傾向を維持すると予想される。ただし、増加ペースは、

ユーロ高の影響により、やや鈍化すると考えられる(図表8)。

ユーロ圏生産は増加傾

向。2・3月に関しては寒

波の影響に留意が必要

ユーロ圏の生産は増加傾向にある。1 月のユーロ圏鉱工業生産は前月比▲

1.0%と落ち込んだが、暖冬を背景としたエネルギー生産の減少(同▲6.6%、

鉱工業生産を 0.9%pt 押し下げ)が主因である(図表 9)。製造業生産は同±

0.0%と底堅く、生産活動の基調が弱くなっているわけではない。

2・3 月に関しては、寒波の影響に留意が必要である。両月の生産活動は、

寒波による物流網の混乱などに影響されたと考えられ、鉱工業生産は弱含む

可能性が高い。

ユーロ圏家計所得は年

末にかけて改善ペース

が鈍化。年明け後は緩や

かに改善

ユーロ圏の家計所得は改善ペースが鈍化した。10~12月期のユーロ圏実質

雇用者報酬は前期比+0.5%(7~9月期同+0.8%)となった(図表10)。雇用・

賃金は 7~9 月期並みのペースで増加したが、物価上昇が実質雇用者報酬を

押し下げた。主要国の動向をみると、ドイツ(7~9 月期同+0.8%→10~12

月期同+0.7%)、フランス(同+0.6%→同+0.2%)、イタリア(同+0.8%→

同+0.1%)、スペイン(同+1.3%→同▲0.1%)で実質雇用者報酬の伸び率が

低下した。10~12月期のユーロ圏・主要国で個人消費が減速したのは、所得

改善ペースの鈍化が背景にあったと考えられる。

年明け後に関して、ユーロ圏の実質雇用者報酬の伸び率は 10~12 月期と

同程度であると思われる。ユーロ圏PMIの雇用指数やドイツの賃金統計な

どを踏まえると、ユーロ圏の雇用・賃金は 10~12 月期並みのペースで増加

を続けているとみられる。一方、物価上昇も続き、実質雇用者報酬を押し下

げていると思われる。

ユーロ圏個人消費は一

時的に弱含み。2・3月も

寒波の影響で弱い可能

性がある

ユーロ圏の個人消費は、年明け後、一時的に弱含んでいる。1 月のユーロ

圏小売数量は前月比▲0.1%、2 月のユーロ圏新車登録台数は同▲0.9%と減

少した。小売数量の減少に関しては、平年より暖かかったことによる燃料需

要の弱さなどが響いたと推察される。

2・3月については、寒波の影響に留意が必要である。燃料需要は強まると

予想されるが、春物衣料の販売不振などが見込まれ、消費関連指標は引き続

き弱い可能性がある。

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6 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

図表 7 ユーロ圏仕向地別輸出金額 図表 8 ユーロ高の輸出への影響

(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成

(注)ユーロ圏景気、物価、金融指標を用いてマクロモデルを

作成。2017 年 Q1 以降のユーロ相場変動がユーロ圏輸出に

及ぼす影響を試算。18 年 Q1 以降のユーロ相場の変動は

みずほ総研の予測値に基づく。

(資料)Eurostat、ECBよりみずほ総合研究所作成

図表 9 ユーロ圏鉱工業生産・製造業生産

図表 10 ユーロ圏実質雇用者報酬

(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成

(資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成

図表 11 ユーロ圏内外需関連統計

(資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECBよりみずほ総合研究所作成

90

95

100

105

110

115

120

125

130

135

2016/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1

財輸出全体 NIEs・ASEAN向け南米・アフリカ向け 中国向け米国向け

(2015/1=100)

(年/月)

▲ 0.40

▲ 0.30

▲ 0.20

▲ 0.10

0.00

0.10

0.20

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

2017 18 19

(前期比、%)

(年/四半期)

100

101

102

103

104

105

106

107

108

2016/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1

鉱工業生産

製造業生産

(2015=100)

(年/月)

▲ 0.8▲ 0.6▲ 0.4▲ 0.2

0.00.20.40.60.81.01.2

Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4

2014 2015 16 17

雇用者 賃金物価 実質雇用者報酬

(前期比、%)

(年/四半期)

Q2 2017 Q3 2017 Q4 2017 Q1 2018 2017/10 2017/11 2017/12 2018/01 2018/02 2018/03

企業 鉱工業生産

ユーロ圏(19カ国) 前期比、% 1.2 1.3 1.5 ▲ 0.4 0.5 1.1 0.4 ▲ 1.0 n.a. n.a.

ドイツ 前期比、% 1.6 1.4 1.1 1.1 ▲ 1.1 3.2 ▲ 0.4 0.3 n.a. n.a.

フランス 前期比、% 0.9 1.1 1.6 ▲ 1.9 1.3 ▲ 0.1 0.2 ▲ 2.0 n.a. n.a.

イタリア 前期比、% 1.1 1.9 0.9 ▲ 0.3 0.5 0.9 2.1 ▲ 1.9 n.a. n.a.

スペイン 前期比、% 0.4 0.7 2.3 ▲ 1.6 0.9 1.0 1.1 ▲ 2.6 n.a. n.a.

ユーロ圏設備稼働率 % 82.6 83.2 83.8 84.4 - - - - - -

前期比、% 1.0 3.7 2.9 n.a. 1.0 2.5 0.4 n.a. n.a. n.a.

外需 ユーロ圏経常収支 億ユーロ 27.0 41.4 31.9 n.a. 30.9 33.7 31.0 37.6 n.a. n.a.

ユーロ圏財・サービス輸出 前期比、% 0.4 2.4 0.8 n.a. ▲ 3.7 3.3 1.8 ▲ 0.2 n.a. n.a.

ユーロ圏財・サービス輸入 前期比、% ▲ 0.0 ▲ 0.9 3.5 n.a. 1.4 2.6 0.9 0.5 n.a. n.a.

雇用 ユーロ圏実質雇用者報酬 前期比、% 0.7 0.8 0.5 n.a. - - - - - -

ユーロ圏失業率 % 9.1 9.0 8.7 n.a. 8.8 8.7 8.6 8.6 n.a. n.a.

家計 ユーロ圏小売数量 前期比、% 0.8 0.5 0.4 n.a. ▲ 1.1 2.0 ▲ 1.0 ▲ 0.1 n.a. n.a.

ユーロ圏新車登録台数 前期比、% 1.3 0.3 2.2 2.0 ▲ 3.0 4.8 0.2 0.7 ▲ 0.9 n.a.

ユーロ圏製造業受注(大型輸送機器除く)

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7 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

4.ユーロ圏物価動向:コア・インフレ率は底打ち。目先は振れが大きい

コア・インフレ率は底打

ちしたとみられる。目先

はイースター要因によ

る変動に注意

2月のユーロ圏インフレ率は前年比+1.1%と、食品物価上昇率の低下を背

景に1月(同+1.3%)から低下した(図表12)。一方、コア・インフレ率(エネ

ルギー・食品等を除く総合)は同+1.0%と、1 月と同水準を維持した。変動

の大きい品目を除けば、2月のコア・インフレ率(刈込平均)は同+1.2%とな

り、公表値より水準が高いほか、1月(刈込平均では同+1.1%)から上昇した

(図表13)。以上を総合すると、コア・インフレ率は底打ちしたと判断される。

目先については、季節要因でインフレ率、コア・インフレ率とも振れが大

きくなる可能性がある。今年のイースター休暇の時期が 3 月(イースター自

体は4/1)となり、昨年の休暇時期(4月)とずれることから、パック旅行や航

空運賃などの前年比上昇率は3月に高まり、4月に低下するだろう。

ECBは物価目標の達

成に自信を強め、「緩和

バイアス」の削除を決定

欧州中央銀行(ECB)の政策理事会(3月8日)では、声明文より、「必要な

らば資産購入の規模・期間を拡大する準備がある」という、所謂「緩和バイ

アス」を削除することが決定された。景気拡大の持続を背景に、インフレ率

が物価目標に達することに対し、ECBが自信を強めたためである。ドラギ

総裁は、インフレ率の予測値の分散が小さくなったことに触れ、「だから我々

は自信を強めた」と述べた(12 月スタッフ見通しにおけるインフレ率の予測

値のレンジは、9月見通しにおけるレンジより小さくなっている、図表14)。

同時に、ドラギ総裁は、「今回の決定は、理事会の政策期待や反応関数に対

して、何らかの示唆を持つものではない」、「今後数カ月における別の政策変

更についての議論はあまり無かった」と述べた。総裁のこうした発言は、緩

和バイアスの削除が、意図せざる金融引き締めに繋がることを避ける狙いが

あったと思われる。

ECBは不良債権処理

に関する新たな指針を

公表。新規の不良債権に

対する引当率は100%へ

欧州委員会(3 月 14 日)とECBの銀行監督理事会(同 15 日)は、不良債権

処理に関する新たな指針を公表した。細部は異なるものの、欧州委・ECB

とも、新規の不良債権に対する貸倒引当率を段階的に100%(欧州委案は一部

債権に関して80%)まで引き上げる点が共通している(図表15)。両者の相違

点は強制力だ。欧州委は、全ての銀行が今回提示された引当率に従うようE

U規則を定める方針である。一方、ECBは、全ての銀行に対する強制を前

提としていない。ECBは、銀行監督上、基本的には欧州委の引当率を用い

るが、必要に応じて、欧州委よりも前倒しで引当率を引き上げるECBの方

針に則って個別行ベースで対応する方針である。

十分に貸倒引当金が積まれず、その結果として銀行が不良債権の売却・償

却に消極的となっている現状を踏まえると、強制的に引当率を高めることは、

そうした消極性を減じるという観点で有益かもしれない。ただし注意点が 2

つある。第1に、今回の指針はこれから発生する不良債権を対象とするもの

であり、既に発生した不良債権の処理には影響しない。第2に、不良債権に

従来よりも多額の引当金を積まなければならないことで、銀行の貸出意欲が

削がれる可能性がある。

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8 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

図表12 ユーロ圏のインフレ率

図表13 ユーロ圏コア・インフレ率

(資料)Eurostatよりみずほ総合研究所作成

(注)刈込平均は、構成品目毎の上昇率を昇順に並べて上位・下位10%

(ウェイトベース)を除き、残った品目の上昇率を加重平均した。

(資料)Eurostatよりみずほ総合研究所作成

図表14 ECBスタッフ経済見通し

図表15 欧州委・ECBが提示する引当率

(注)GDP成長率、インフレ率の上段は予測の中央値。括弧

内は、予測値のレンジ。

(資料)ECBよりみずほ総合研究所作成

(注) 欧州委のA案は、元利金支払が90日を超えて延滞して不良債権と

認識されたもの。B案は、A案以外の理由で不良債権と認識された

もの。→は、特定の数値が言及されていないが、段階的な引き上げ

が想定されている。

(資料)欧州委員会、ECBより、みずほ総合研究所作成

図表16 ユーロ圏物価関連統計

(資料) Eurostat、Datastreamよりみずほ総合研究所作成

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2017/2 17/5 17/8 17/11 18/2

ユーロ圏インフレ率コア・インフレ率エネルギー・食品・アルコール・煙草(右目盛)

(前年比、%) (前年比、%)

(年/月) 0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

2014/2 15/2 16/2 17/2 18/2

公表値 刈り込み平均(前年比、%)

(年/月)

(単位:%)

2018 2019 2020

3月2.4

〔2.1~2.7〕1.9

〔0.9~2.9〕1.7

〔0.7~2.7〕

12月2.3

〔1.7~2.9〕1.9

〔0.9~2.9〕1.7

〔0.6~2.8〕

3月1.4

〔1.1~1.7〕1.4

〔0.6~2.2〕1.7

〔0.8~2.6〕

12月1.4

〔0.9~1.9〕1.5

〔0.7~2.3〕1.7

〔0.8~2.6〕

3月 1.1 1.5 1.8

12月 1.1 1.5 1.8

GDP成長率

インフレ率

コア・インフレ率

(年目、%)

担保の有無 1 2 3 4 5 6 7 8

有担保A案

5 10 18 28 40 55 75 100

有担保B案

4 8 14 22 32 44 60 80

無担保A案

35 100

無担保B案

28 80

有担保 40 55 70 85 100

無担保 100

ECB

欧州委

-

-

-

Q2 2017 Q3 2017 Q4 2017 Q1 2018 2017/10 2017/11 2017/12 2018/01 2018/02 2018/03

物価 ユーロ圏インフレ率 1.5 1.4 1.4 n.a. 1.4 1.5 1.4 1.3 1.1 n.a.

コア(エネルギー・食品等除く)

前年比、% 1.1 1.1 0.9 n.a. 0.9 0.9 0.9 1.0 1.0 n.a.

エネルギー 前年比、% 4.6 3.4 3.5 n.a. 3.0 4.7 2.9 2.2 2.1 n.a.

食品・アルコール・タバコ 前年比、% 1.5 1.6 2.2 n.a. 2.3 2.2 2.1 1.9 1.0 n.a.

非エネルギー工業品 前年比、% 0.3 0.5 0.4 n.a. 0.4 0.4 0.5 0.6 0.6 n.a.

サービス 前年比、% 1.6 1.5 1.2 n.a. 1.2 1.2 1.2 1.2 1.3 n.a.

ドイツ・インフレ率 前年比、% 1.6 1.7 1.6 n.a. 1.5 1.8 1.6 1.4 1.2 n.a.

フランス・インフレ率 前年比、% 1.0 0.9 1.2 n.a. 1.1 1.2 1.3 1.5 1.3 n.a.

イタリア・インフレ率 前年比、% 1.6 1.2 1.1 n.a. 1.1 1.1 1.0 1.2 0.6 n.a.

スペイン・インフレ率 前年比、% 2.1 1.8 1.6 n.a. 1.7 1.8 1.2 0.7 1.2 n.a.

生産者物価(消費財) 前年比、% 2.4 2.2 1.6 n.a. 1.8 1.6 1.5 n.a. n.a. n.a.

輸出物価 前年比、% 3.9 2.3 1.6 n.a. 2.0 1.8 1.2 n.a. n.a. n.a.

輸入物価 前年比、% 7.6 4.4 3.5 n.a. 3.0 4.8 2.9 n.a. n.a. n.a.

商品 ブレント原油(ユーロ建て) 前年比、% 12.7 3.2 9.4 n.a. 0.7 16.4 11.2 3.6 7.1 n.a.

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9 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

5.英国経済の概況:景気は底堅い。MPCでは 2 委員が利上げ票

年明け後も英景気には

底堅さ

英国景気は底堅さを維持している。英国立経済社会研究所(NIESR)の月次

GDPは2月に前月比▲0.1%と小幅な減少にとどまり、1・2月平均の対10

~12月平均比は+0.5%となった(図表17)。

足元の消費関連指標の

強さは一時的。3・4月は

天候・政策要因の影響に

注意

足元の消費関連指標は強いが、一時的と評価される。2 月の小売数量は前

月比+0.8%、同月の新車登録台数は同+6.4%と増加した(図表18)。しかし、

小売統計に関しては、調査期間が2/24までであり、2月末の寒波の影響が十

分に織り込まれていない可能性が高い。2 月末の販売動向が 3 月の統計に反

映されること、寒波が 3 月も続いたことを踏まえると、3 月の小売数量は落

ち込む公算が大きい。また、新車登録台数については、一部自動車に対する

自動車税の引き上げ(4 月)を前にした駆け込み需要が背景と推察される。登

録台数は、3月も大幅に増えようが、4月以降に反動で冷え込むとみられる。

所得環境は底堅く、一時

的な振れを除けば、消費

は緩やかな回復傾向に

もっとも、所得環境が底堅いため、上述の天候・政策要因による振れを除

けば、個人消費は緩やかな回復基調にあると評価される。家計実質所得(≒

就業者×賃金÷消費者物価)は、1 月に前月比+0.2%と増加に転じた(図表

19)。物価上昇が所得を押し下げた一方、就業者数(同+0.3%)や賃金(同+

0.2%)の持ち直しが押し上げ要因となった。

Help to Buy による利払

い負担がマクロ全体に

及ぼす影響は限定的

所得への影響という点では、住宅購入支援策(Help to Buy)の利用者の利

払い負担が生じることを懸念する見方がある。2013年4月から始まったHelp

to Buy では、住宅価格の 20%を政府が融資し、当初 5 年間、当該融資の利

子はゼロとされた。今年 4 月で開始から 5 年が経過するため、Help to Buy

の利用者は順次、利子を支払う。大まかに試算すると、利用者一人当たりの

利払い負担は所得の約 2%に相当し(図表 20)、無視出来ない大きさである。

ただし、利子を支払う利用者の数は、2018年4月からの1年では2万人程度、

19年以降も2~4万人/年にとどまる。英国の世帯数(2,700万)を踏まえると、

Help to Buy に絡んだ利払い負担の増加がマクロ全体の可処分所得に及ぼす

影響は限定的と評価される。

BOEは金融政策の現

状維持を決定。ただし 2

人のMPC委員は利上

げを主張

イングランド銀行(BOE)は、3月21日の金融政策委員会(MPC)におい

て、金融政策の現状維持を決定した。決定は全会一致ではなく、マッカファ

ーティー委員とサンダース委員の2人が利上げ票を投じた。

利上げ派と据え置き派で認識が異なるのは、GDPギャップと賃金上昇圧

力の大きさである。利上げ派の2委員は、足元で賃金上昇率が高まっている

ことを踏まえ、負のGDPギャップはほぼ解消していると判断した。これら

2委員は、インフレ見通しに係る上振れリスクを警戒し、利上げを主張した。

一方、残る7委員は、足元の景気は2月のインフレ報告書で想定されたパス

に沿っており、特にサプライズは無いと評価した。その上で、GDPギャッ

プや賃金上昇圧力の大きさを、次回MPC(5 月 9 日)で精査する必要がある

と述べた。利上げ票が増えるかは、4 月中旬に発表される賃金指標の結果な

どに依るだろう。

以上

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10 みずほ欧州経済情報(2018 年 3 月号)

図表17 英月次GDP

図表18 英消費関連指標

(資料)NIESR、英統計局よりみずほ総合研究所作成

(資料)英統計局、ECBよりみずほ総合研究所作成

図表19 英家計実質所得

図表20 Help to Buy利用者の利払い負担

(資料) 欧州委員会、英統計局よりみずほ総合研究所作成

(注)2018年4月から利払い義務が生じる利用者に関する試算(住宅価格

や所得は2013年4月にHelp to Buyを利用した人の平均)。利率は

1年目は1.75%であり、2年目以降は物価動向に依存する。本試算

では英国の小売物価が年4%で上昇すること、利用者が政府融資の

元金を返済していないことを仮定している。

(資料)英住宅・コミュニティ・地方字自治省よりみずほ総合研究所作成

図表21 英景気の全体感を示す主要統計

(資料)英統計局、Nationwide、Markit、Datastreamよりみずほ総合研究所作成

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

2012 13 14 15 16 17 18

月次GDP

GDP公表値

(年/四半期)

(前期比、%)

170

180

190

200

210

220

230

240

98

100

102

104

106

108

110

2016/2 16/8 17/2 17/8 18/2

新車登録台数(右目盛) 小売数量

(2010=100) (千台)

(年/月)

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

2016/1 16/7 17/1 17/7 18/1

物価 名目賃金 就業者数 実質所得 (年/月)

(前月比、%) 利子負担(=d/c、%)

Help to Buy利用者が購入した住宅の平均価格(a)

186,083£ -

政府による融資(b=a×20%) 37,217£ -

Help to Buy利用者の平均年間所得(c)

41,260£ -

平均利子負担(d) -

 1年目(=b×1.75%) 651£ 1.6

 2年目(=b×1.84%) 685£ 1.7

金額

Q2 2017 Q3 2017 Q4 2017 Q1 2018 2017/10 2017/11 2017/12 2018/01 2018/02 2018/03

成長率 実質GDP 前期比、% 0.3 0.5 0.4 n.a. - - - - - -

景況感 合成PMI Pt 54.8 54.1 55.2 54.0 55.8 54.8 54.9 53.4 54.5 n.a.

製造業PMI Pt 56.0 56.1 56.9 55.3 56.3 58.4 56.1 55.3 55.2 n.a.

サービス業PMI Pt 54.3 53.5 54.5 53.8 55.6 53.8 54.2 53.0 54.5 n.a.

企業 鉱工業生産 前期比、% 0.0 1.4 0.5 n.a. 0.1 0.3 ▲ 1.2 1.3 n.a. n.a.

外需 財輸出 前期比、% 3.0 1.9 ▲ 2.0 3.3 ▲ 4.4 ▲ 1.2 0.9 3.1 n.a. n.a.

財輸入 前期比、% 0.5 1.7 0.9 3.3 0.3 1.3 ▲ 1.0 3.5 n.a. n.a.

雇用 失業率 % 4.4 4.3 4.4 n.a. 4.3 4.3 4.4 4.3 n.a. n.a.

前期比、% 1.0 0.6 0.8 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 n.a. n.a.

家計 小売数量 前期比、% 1.0 0.6 0.5 ▲ 0.4 0.7 0.8 ▲ 1.4 ▲ 0.2 0.8 n.a.

Nationwide住宅価格指数 前年比、% 2.6 2.4 2.5 2.6 2.5 2.5 2.5 3.1 2.2 n.a.

物価 消費者物価指数 前年比、% 2.7 2.8 3.0 2.6 3.0 3.1 3.0 3.0 2.7 n.a.

金融 主要政策金利 末値、% 0.25 0.25 0.50 n.a. 0.25 0.50 0.50 0.50 0.50 0.50

英10年国債利回り 末値、% 1.61 1.67 1.51 n.a. 1.67 1.63 1.51 1.75 1.76 n.a.

ポンドドル 末値、£/$ 1.30 1.34 1.35 n.a. 1.33 1.35 1.35 1.42 1.38 n.a.

民間賃金(賞与除く、3カ月平均)

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2018年 3月30日 発行

欧米調査部上席主任エコノミスト 吉田健一郎

03-3591-1265 [email protected]

欧米調査部主任エコノミスト 松本 惇

03-3591-1199 [email protected]

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