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平成 22 年度 カーボン・ニュートラル等に 関するコスタリカ基礎情報収集 日本貿易振興機構(ジェトロ) メキシコ・センター

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Page 1: 平成 22 年度 カーボン・ニュートラル等に 関するコ …12 され、ラウラ・チンチージャ大統領も出席した。

平成 22年度

カーボン・ニュートラル等に

関するコスタリカ基礎情報収集

日本貿易振興機構(ジェトロ)

メキシコ・センター

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<はじめに>

オスカル・アリアス政権の方針を引継ぎ2010年5月に発足したラウラ・チンチージャ政権

は8月16日に2010年から2014年までの政策目標に関する声明において、カーボン・ニュート

ラルの実現がコスタリカの目指す道であることを再確認した。同国は電源の95%を2014年ま

でに再生可能エネルギーとする目標も掲げ、環境先進国、環境配慮社会の実現が国家の重

要な目標のひとつとしている。同国はかねてより世界に先駆けたカーボン・ニュートラル

の国となることを宣言している。

本調査では、コスタリカが世界初のカーボン・ニュートラル国実現に向けて、政府がど

のような方針にもとづきそれを実施していくのかを中心に整理した。ちなみに同国に対す

る世界の注目は高く、同国の同方針実現に関わる企業はショーウインドー効果が期待でき

る。すなわち、コスタリカ以外の国へのビジネス展開が広がる可能性を秘めている。この

ため同情報が日本の中小企業を始めとする企業のビジネス戦略構築の参考となれば幸いで

ある。

日本貿易振興機構(ジェトロ)

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目次

1.カーボン・ニュートラル ...................................................................................1

2.コスタリカの産業構造及び二酸化炭素排出量 ....................................................2

3.ラウラ・チンチージャ政権の環境政策 ...............................................................3

(1)国家開発戦略 2010-2014 ................................................................................... 3

(2)電力市場改革 .................................................................................................... 4

ア.電力市場の現状 .............................................................................................. 4

イ.民間発電事業の状況 ....................................................................................... 5

ウ.電力市場への民間参入の拡大と中米電力現市場 ............................................. 6

(3)その他のこれまでに実現した主な環境施策 ...................................................... 7

ア-1.廃棄物総合的処理法の施行 ......................................................................... 7

ア-2.廃棄物処理に関する懸念事項 .................................................................... 10

イ.露天掘り鉱山開発の禁止 .................................................................................. 10

ウ.電気自動車の輸入及び使用に係る優遇措置 ........................................................ 11

4.まとめ ............................................................................................................ 12

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1.カーボン・ニュートラル

環境立国を目標とすることを明確に国家の目標として示したのはオスカル・アリアス・

サンチェス前大統領である。今日のコスタリカにおける気候変動に関する諸政策や 2021年

までにカーボン・ニュートラルを実現するとの目標は、アリアス大統領が 2007年 7月 6日

に提唱した「平和と自然の共生イニシアティブ(Paz con la Naturaleza)」に基づくと言

って差し支えない。平和と自然の共生イニシアティブの中で、2021 年までにカーボン・ニ

ュートラルを実現することを「自主的な目標」として掲げている。

カーボン・ニュートラルとは人為的に排出される二酸化炭素をその吸収量よりも低い

水準に抑制することで、均衡を保つということで、図のとおり定義される。

図.カーボン・ニュートラルの定義

均衡 = 人為的に排出されたCO2e ‐ 吸収されたCO2、排出を抑制されたCO22021年の均衡 = 0

出所:「Estrategia Nacional de Cambio Climatico」環境エネルギー・通信省

カーボン・ニュートラルは国際約束ではなく目標にすぎないが、2007 年に発表された「気

候変動対策の国家戦略」はその実現を目指すことを明確に謳っている。当時のロベルト・

ロブレス環境大臣は、2007 年 8 月 1 日の閣議において同戦略を発表するとともに、全ての

公的機関、地方政府、公的企業に対し、気候変動対策の国家戦略が定める(1)温室効果ガ

スの発生抑制、(2)環境配慮型システムへの適合、(3)環境への影響の把握、(4)クリー

ンテクノロジーの技術移転と環境配慮のための能力開発、(5)国民への環境教育の 5 つの

軸に沿った明確な目標を伴う短期、中期、長期のアクションプラン策定を要請することを

閣議決定した。同時に気候変動対策の国家戦略の実行機関として、環境エネルギー・通信

省(MINAET)に気候変動対策局(Direccion Nacional de Cambio Climatico)が設置され

た。

カーボン・ニュートラルは先述のとおりオスカル・アリアス前大統領によりはじめられ

た取り組みだが、これを実現するための具体的なロード・マップは策定されておらず、気

候変動や環境配慮社会構築のための施策はアリアス政権に続く各政権が定める施政方針に

より策定されることとなっている。各政権の施政方針は、気候変動政策のみならず憲法に

よりその作成が各政権に義務付けられている国家開発戦略である。

コスタリカは生物的多様性に富みエコツーリズムで世界中から認知されているが、ごみ

最終処分場の不足問題を抱える他、廃棄物の再資源化、再利用の取り組みが実際には遅れ

ている。2010 年 5 月に発足したラウラ・チンチージャ政権はオスカル・アリアス前政権の

方針を引継ぎ、カーボン・ニュートラルをはじめ環境政策を推進する姿勢を明確にしてい

ることから環境保全、資源の有効利用に向けた法整備、規制強化が今後も行われると考え

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表1.国内自動車保有台数の推移台数 1台当たり人口

2009年 1,217,113 3.62008年 1,177,727 3.72007年 1,102,728 3.92005年 980,860 4.32000年 677,757 5.81997年 507,202 7.21984年 205,444 12.51973年 59,760 31.31963年 11,863 112.0

出所:国家エネルギー戦略

られる。2010 年 8月 16日にチンチージャ大統領が発表した 2010 年から 2014年までの政策

目標に関する声明において、カーボン・ニュートラルの実現はコスタリカが目指す道であ

るとしている。また、国家開発戦略の項で述べるように、電源の 95%を 2014 年までに再生

可能エネルギーとする目標も掲げており、環境先進国、環境配慮社会の実現は国家の目標

となっている。

2.コスタリカの産業構造及び二酸化炭素排出量

コスタリカ社会保険庁(Caja Costarricense de Seguro Social、CCSS)及び経済産業商

業省(Ministerio de Economia,Industria y Comercio、MEIC)によると、2008年時点でコ

スタリカにおける製造業は 4,122 社。うち 54%が零細、33%が小規模、8%が中規模、残る 5%

が大規模となっている。この中で最も企業数が多いのは食品製造業で、これは国内産業の

起源が伝統的農産品(コーヒー、パイナップル、メロン、甘蔗)生産にあることに起因す

る。産業界におけるエネルギー消費の多くは製造業によりもたらされるが、コスタリカの

場合は観光産業を基幹産業の 1 つとしており、空調を始め、宿泊施設のエネルギー消費の

削減も重要な課題として認識されている。

国家開発戦略によると、2009 年のコスタリカのエ

ネルギー消費量の 64%は化石燃料によるもの。22%は

電力、12%はバイオマス、2%はその他のエネルギー源

である。エネルギー消費量の 51.2%が運輸部門、25.9%

が製造部門、10.5%が家庭部門、残りがその他による

ものだ。この中の化石燃料について、たとえば国内の

自動車保有台数の推移をみても、排ガス量が増える要

因が高まっていることがわかる。1997 年には 7 人に 1 人が自動車を保有していた割合が、

10 年後の 2007 年には 4 人に 1人が保有するに至っているのだ(表 1)。

コスタリカの経済成長のエンジンは外国企業による直接投資だが、外国直接投資額の増

加、経済の拡大に伴い、環境汚染や二酸化炭素排出量が激増している(表 2)。2009 年は世

界経済危機の影響で経済成長はマイナスとなったが、2010年は 4%台、2011年以降は 4~5%

の経済成長を見込んでおり、経済の拡大とあいまって二酸化炭素排出量は今後も拡大する

者と見込まれる。

表2.コスタリカにおける産業界の二酸化炭素排出量と経済成長2005年 2006年 2007年 2008年

2次エネルギー(トン) 373,360 414,639 562,078 785,3371次エネルギー(トン) 353,628 510,180 646,536 722,172合計(トン) 726,988 924,819 1,208,614 1,507,509名目GDP(ドル) 19,961 22,529 26,323 29,848実質GDP成長率(%) 4,680 5,174 5,925 6,583外国直接投資額(100万ドル) 904 1,371 1,634 2,072

出所:「Estrategia Industarial ante el Cambio Climatico」コスタリカ産業会議所、中央銀行

二酸化炭素排出量

経済成長

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3.ラウラ・チンチージャ政権の環境政策

2010 年 12月にチンチージャ政権の国家開発戦略が公表された。同政権はこの国家開発戦

略に定める目標と戦略に沿って施策を実行するが、同戦略が公表される以前から同政権下

で環境に係る様々な取り組みがなされている。同政権ではこれまでに、(1)廃棄物の分別、

リサイクルを定めた廃棄物総合的処理法の施行、(2)露天掘りの鉱山開発を禁止した改正

鉱業法の施行、(3)国家エネルギー戦略の策定・公表、(4)電力一般法法案の国会提出、

(5)カーボン・ニュートラル実現に向けた規則等を検討する国家委員会の設置といった環

境政策を実施してきた。環境政策ではないが、経済成長のエンジンである外国直接投資誘

致に関して戦略分野を定め、環境・再生可能エネルギー等の分野への投資を優遇する方針

を打ち出している。

(1)国家開発戦略 2010-2014

チンチージャ政権の国家開発戦略は、5 つの目標(Meta)と 4つの戦略の柱(Eje)を定

めている。5つの目標は、(1)競争力ある国家・グローバル・ダイナミズムと直結した国

家、(2)平等かつ国民が連帯した国家、(3)より安全な国家、(4)環境と調和した経済

成長、(5)政治対話、社会対話と国家の近代化を通じた民主的統治で、(4)環境と調和

した経済成長において指標を掲げて数値目標を設定している。具体的には表 3のとおりで、

電源の 95%を再生可能エネルギーとすること、イエール大学の環境パフォーマンス指数

(Environmental Performance Index、EPI)ランキングの現状維持を目標に掲げる。

表3.国家開発戦略における5つの目標項目 指標 2009年参考値

実質経済5-6%成長 △1.1%国際競争力指数(WEF)の順位3ランク上昇 56位消費者物価指数上昇率を抑制し、主要通商相手国のそれと同水準とする。

1.68%

完全失業率を6.0%に抑制 7.8%重度貧困世帯20,000人への支援 -重犯罪発生件数、軽犯罪発生件数の減尐(人口10万人当たり犯罪被害件数抑制)

重:138件/10万人軽:1,529件/10万人

国民の安心実感度の向上と、重点地域における公安警察の活動強化、イメージ改善電源の95%を再生可能エネルギーに。 93%イエール大学の環境パフォーマンス指数ランキングの現状維持

163カ国中3位

行政サービスの改善と国民の政治参加促進によるIDBの開発指数「Indice de Gestion paraResultados de Desarrollo」の向上

2.6

電子政府への取り組み強化による国連電子政府準備度ランキングの上昇

183カ国中71位

出所:国家開発戦略2010-2014

競争力ある国家、グローバル・ダイナミズムと直結した国家

政治対話、社会対話と国家の近代化を通じた民主的統治

環境と調和した経済成長

より安全な国家

平等かつ国民が連帯した国家

コスタリカは 2010 年環境パフォーマンス指数(EPI)ランキングにおいて第 3 位となって

いるおり、2009 年からその順位は変動していない(表 4)。2010 年調査は 163 カ国を対象

に実施され、25 の項目について分析、スコア化してランク付けしている。

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表4.環境パフォーマンス指数(EPI)ランキング(2010年)順位 国名 スコア 順位 国名 スコア1 アイスランド 93.5 13 スロバキア 74.52 スイス 89.1 14 英国 74.23 コスタリカ 86.4 15 ニュージーランド 73.44 スウェーデン 86.0 16 チリ 73.35 ノルウェー 81.1 17 ドイツ 73.26 モーリシャス 80.6 18 イタリア 73.17 フランス 78.2 19 ポルトガル 73.08 オーストリア 78.1 20 日本 72.59 キューバ 78.2 21 ラトビア 72.510 コロンビア 76.8 22 チェコ 71.611 マルタ 76.3 23 アルバニア 71.412 フィンランド 74.7 24 パナマ 71.4

出所:イエール大学ウェブサイト

電源の 95%を再生可能エネルギーとするという目標は、現在の硬直的な電力行政を見直す

ことにより実現するものとみられる。そして環境パフォーマンス指数については、25 の多

岐にわたる項目によりスコア化されることから、環境に関連する様々な施策を通じて実現

するものとみられる。

また、4つの戦略の柱としては、(1)社会福祉と家族、(2)国民の安全と社会平和、(3)

環境と国土整備、(4)競争力とイノベーションの 4 つの柱を掲げている。このうち(3)

環境と国土開発において環境に関する取り組みを取り扱っている。同項では、国土開発、

水資源及び廃棄物処理、生物多様性、気候変動対策及びカーボン・ニュートラル、再生可

能エネルギーの 5 つの分野について施策の方向性を示している。さらに国家開発戦略はセ

クター別の政策方針を詳細に定めている。

(2)電力市場改革

環境への取り組みでは電力分野への対応が重要な課題のひとつである。以下に、コスタ

リカにおける電力の状況についてみてみることとする。

ア.電力市場の現状

コスタリカではコスタリカ電力・通信公社(Instituto Costarricense de Electricidad、

ICE)が電力市場を独占している。しかし、経済成長に伴い電力需要が高まっており、それ

に応えるための莫大な投資を ICE だけで賄うことが困難なことから、電力一般法により、

民間部門による電力市場への参入をさらに許容しようとしている。2011 年 3 月現在、既に

電力一般法法案は国会に提出されているものの審議は進んでいない。

今般の国家開発戦略において 2009 年参考値として再生可能エネルギーの達成を 93%とし

ている。MINAET によるとコスタリカの発電容量は約 2,500MW(メガワット)で、うち約 7

割が再生可能エネルギーによるもの、うち約 3割が火力によるものだ。発電量は 95%が再生

可能エネルギー、5%が火力によるものだ(表 5)。

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表5.電源別発電容量、発電量の電源別構成比年 電源 発電容量(KW) 構成比(%) 発電量(kWh) 構成比(%)

水力 1,557,937 64.5 7,276,109,170 78.8風力 69,920 2.9 274,533,440 3.0火力 622,137 25.8 499,426,808 5.4地熱 165,710 6.9 1,185,839,943 12.8合計 2,415,704 100.0 9,235,909,361 100.0水力 1,524,237 62.3 7,383,549,771 78.4風力 69,920 2.9 198,164,538 2.1火力 686,729 28.1 700,324,448 7.4地熱 165,711 6.8 1,130,863,674 12.0合計 2,446,597 100.0 9,412,902,431 100.0水力 1,500,396 68.8 6,770,629,751 75.3風力 69,920 3.2 241,058,056 2.7火力 443,569 20.4 739,316,217 8.2地熱 165,710 7.6 1,238,528,359 13.8合計 2,179,595 100.0 8,989,532,383 100.0

出所:コスタリカ環境エネルギー・通信省エネルギー統計

2009年

2008年

2007年

コスタリカ・エネルギー生産者協会(ACOPE)によると、2009年時点で ICEが全発電量の

80%を占め、15%を民間事業者が、残りの 5%を地方の協同組合等が占めている。民間事業者

が発電した電力は ICE に売電されることから、現状は ICEが発電量の 95%を握っていること

になる。送電は ICE が 100%を握っている。需要者の 40%が ICE、40%が ICE 傘下の国立配電

公社(CNFL)、残る 20%がエレディア公共サービス公社(ESPH)、カルタゴ電気サービス委員

会(JASEC)と 4つの協同組合から配電されている。この配電についても ICE及びその関連

会社で 80%を握っている。

経済成長に伴い電力需要は年々拡大しているが、発電容量の拡大に際しては先述のとお

り国家の定める目標に従って行われなければならないことになっている。すなわち、再生

可能エネルギーによる拡大が大前提となる。この他に、ICEがスマート・グリッド導入のパ

イロット事業を進めるなどの動きもある。

イ.民間発電事業の状況

民間企業の発電事業については法律 7200 号(Ley que Autoriza la Generación Eléctrica

Autónoma o Paralela、通称コージェネレーション法)が定める1。民間による発電事業の代

表として製糖産業が挙げられる。コスタリカ甘蔗糖協会(LAICA)によると、法により売電

容量、売電価格に制限があることが設備投資にとって難点であるという。製糖工場はバガ

ス(甘蔗の残滓)をエネルギー源として使用している。これをボイラーで燃焼させ、発生

する水蒸気を利用して発電する。生産設備、技術へのニーズは低コスト、高効率の設備に

尽きる。

コージェネレーション法は、BOO(Build、Operate、Own)、BOT(Build、Operate、Transfer)

1 1995年法律 7508号により改正。

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形式について規定しており、売電先は ICE である。売電価格についても法が規制している。

発電方式については再生可能エネルギー(水力、風力、地熱)に限定され、認可あたりの

発電量は 50MW を超えないこととされている。事業体の資本構成にも制限がある。

BOO はフィージビリティスタディ、環境への影響度調査等に膨大な時間を要する。この方

式では、公共サービスの価格を統制する行政機関、公共サービス調整院(ARESEP)により

売電価格が決定される。BOT の場合は ICEがプロジェクトを策定し、民間事業者が競争入札

で電力事業に参入する。この場合、売電価格は ARESEP ではなくプロジェクトにより決定さ

れる。なお現行法規制により、BOT 形式のプロジェクトが認可される余地はないとされる。

ウ.電力市場への民間参入の拡大と中米電力市場

現在、コスタリカ行政府では、電力分野について 3つの取り組みを進めている。1つ目は

中米電力市場枠組み条約、2つ目は電力一般法の制定、3つ目は発電分野における競争原理

の導入、つまり民間参入の拡大である。中米電力市場枠組み条約は、あらゆる事業者が中

米全域で電力事業を行うための枠組みである。

電力一般法は、国内に複数ある発電に関する法令を 1 つにまとめ、発電事業の規制に一

貫性と効率性を持たせようというものだ。政府は発電市場を自由化し、ICE以外の事業者が

電力の売買に従事できるようにすることを提案している。またそのために次の 3 つの機関

を設立するとしている。

公共サービス調整院(Autoridad de Reguradora de los Servicios Públicos:ARESEP)

の関係機関としてエネルギーセクターを管理する機関「エネルギー監督機構」

(Superintendencia de Energia:SUEN)を設置する。

電力市場を管理する市場管理機構(Autoridad Administrativa del Mercado:AAM)を

設置する。

電圧など電力に関する技術基準を管理する国家管理センター(Centro de Control

Nacional:CECON)を設置する。

また、「他者間」、「二者間」の契約の枠組みを設ける。他者間契約(Contratos

Multilaterales)は、AAM が電力市場における需要量に応じて需要者と供給者をグループ化

する。グループは発電手段(水力、風力、地熱など)の需要毎に形成することも可能。グ

ループの形成は他にも様々な基準を設ける。これにより小規模発電事業者でも電力市場に

参加できる。売電価格は競売により決定する。このほかスポット市場も設ける予定だ。

二者間契約(Contratos Bilaterales)は大口需要家と供給者の間で、AAM が管理する枠

組みに縛られることなく価格、条件を定めて契約を結ぶもの。これにより電力の輸出入も

可能になる。この契約形態は CECON の管理のもとに行われる見通し。

新しい枠組みにより、発電者と需要家を仲介する電力流通業者の出現も期待されている。

また、電力事業者から徴収する割当金により基金を設立する構想も盛り込まれている。こ

の基金は低所得者世帯の電気料金の補助を目的としている。さらに、電力事業者の増加に

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より、全国を網羅的に電力供給が可能にすることが期待されている。2011 年 3 月現在、国

会へ法案が提出されているが、審議は進んでいない状況である。

(3)その他のこれまでに実現した主な環境施策

ア-1.廃棄物総合的処理法の施行

廃棄物総合的処理法(法律 8839 号、Ley para Gestion Integral de Residuos)は 2010

年 7 月 13日に官報公示され即日発効した。

同法は(1)市民が健康的かつ汚染のない環境で生活する権利を保護すること、(2)資

源の再利用、リサイクル品市場の促進、環境に配慮した製品利用の推進、民間企業におけ

る環境保護意識の醸成、付加価値向上のための適切な資源利用、(3)廃棄物の回収や選別、

処理のための民間、公的施設の設置推進を目的としている。

現政権の国家開発戦略によると、1日当たりの家庭ごみの排出量は3,780トンで、このう

ち64%は処理されることなくごみ処分場にそのまま廃棄されている。これは、土壌汚染や水

質汚染の原因とされており、コスタリカ政府もその問題の重要さを認識している。

電子機器については政令35933-S号「電子機器廃棄物の総合的処分に関する規則」が同法

に先行して発効しており、家庭ごみを含む固形普通ごみについては政令36093-S号「固形普

通ごみの処理に関する規則」が官報公示され、これも2011年2月17日に発効済である。

廃棄物処理の監督官庁は厚生省(Ministerio de Salud)である。同省は廃棄物処理に関

する監督、検査、評価を行うとともに違反者に罰則を課すことになっている。環境・エネ

ルギー・通信省と連携し、廃棄物の輸入禁止、制限、その他廃棄物の適正な処理を推進す

るための規則、政令を設けることも業務のひとつだ。廃棄物の総合的処理推進のために設

置する基金の管理も行う。市町村は各自の廃棄物処理計画を策定するとともに法律や国家

が定める計画実施のための検査、評価を行うことになっている。

ごみ処理業者について

廃棄物処理業者は厚生省に廃棄物処理業者の登録をする必要がある。登録の詳細は同法

施行規則に定められる。家内ビジネスとして廃棄物処理を行う者、インフォーマルの回

収業者、地域コミュニティ団体は同法発効から1年間、登録の猶予期間が与えられる。な

お同法施行以前は登録ではなく厚生省の許可を取得していた。

ごみの種類について

同法は廃棄物を次のとおり3つのカテゴリに分類している。

(1) 普通ごみ:家庭ごみ、または家庭以外から排出される家庭ごみに準ずるごみ

(2) 特別ごみ:ごみの構成、輸送の必要性、保管条件、使用条件、資源的価値などの要

件により環境または健康に危険を及ぼすごみ

(3) 危険ごみ:化学反応や廃棄物が有する毒性、爆発性、腐食性、放射性、生物性、可

燃性が環境または健康に損害を与えるごみ

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ごみの輸入についての取り扱い

同法は廃棄物の国境を超える移動についても制限している。危険ごみの輸入は禁止。普

通ごみについても最終処分を目的とした廃棄物の輸入は禁止。再資源化目的や資源価値

が認められる廃棄物については厚生省の許可を取得すれば輸入可能である。

ごみを発生させる側への規則

同法及び施行規則の発効の影響を受けるのは廃棄物処理業者だけでなく廃棄物を発生さ

せる事業者も同様である。同法38条から42条は廃棄物を発生させるあらゆる自然人、法

人が負うべき義務を定めている。

(1) 廃棄物発生機会の最小化。廃棄物の発生が不可避の場合は廃棄量とその毒性の最小

化。

(2) 廃棄物の分別。登録廃棄物処理業者または市町村に分別の上廃棄物を引き渡す。

(3) 最終処分が適切に行われるよう廃棄物を引き渡し、それを監視する。

(4) 廃棄物を適切に処理し、健康被害、悪臭、騒音などの環境汚染を発生させない。

(5) 廃棄物処理に際しては登録業者を利用する。

(6) 廃棄物の発生、処理方法について記録する。

(7) 同法、同法施行規則に基づき廃棄物の処理について監督官庁への報告義務を負う。

(8) 環境に配慮した生産、廃棄物の総合的な処理への取り組みを強化する。

同法は上述のとおり定めているが、一般家庭や事業者が負う義務の詳細は今後公布され

る同法施行規則や廃棄物毎に公布される規則を確認する必要がある。

廃棄物の再資源化など特別な取り扱いが必要な特別ごみについて、厚生省が6カ月以内に

政令を公布して対象品目を定めるとしている。これらについてはその生産者や輸入者が次

の義務を負うこととなる。

(1) 回収、再利用、リサイクル、エネルギー再利用、価値向上のためのプログラムを設

ける。

(2) 廃棄物の総合的処理のために製品毎、または業界毎に定めるプログラムに参加する。

(3) デポジット制度を導入する。

(4) 健康被害や環境被害を排除し、廃棄物の発生を最小化するよう配慮した製品、容器

包装、梱包を用いた製品を生産する。

(5) 製品の回収、廃棄物の総合的処理のために自治体と戦略的連携を取る。

法令違反者の扱いについて

法令違反についても定めている。同法は違反を軽微な違反、重大な違反、著しく重大な

違反の3カテゴリに分類している。軽微な違反は普通ごみの放置など、重大な違反は、許

可済の適正地以外での普通ごみの処理など、著しく重大な違反は無許可の危険ごみの輸

送、再資源化価値のある廃棄物の盗難及び転売、許可済の適正地以外での危険ごみの処

分などである。罰金、禁固が罰則として定められている。

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なお同法の発効に先駆けて5月29日には政令35933-S号「電子機器廃棄物の総合的処分に

関する規則」が発効している。同規則は表6の電気製品の処分について生産者または輸入

者に適切に処分する義務を負わせるものだ。本規則に基づき義務を負う者は表7のとおり

解釈できる。

表6.電子機器廃棄物の総合的処理に関する規則対象機器

モニター デジタルカメラ

デスクトップパソコン、ノートブックパソコン(含むアクセサリ)

PDA

バッテリー(ノートブックパソコン、携帯電話、UPS用)

複合機

充電器 建機

スキャナー OHP

携帯電話 プロジェクター

プリンター ルーター

複写機 マルチメディア再生機

出所:2010年5月5日付官報

表7.電子機器廃棄物の総合的処理に関する規則の義務を負う者形態 義務者

コスタリカで生産:A社 コスタリカで販売B社 A社外国で生産:A社 コスタリカへ輸入:B社 コスタリカで販売:C社 B社外国で生産:A社 コスタリカへ輸入・販売:B社 B社出所:2010年5月5日付官報

本規則の義務を負う者は厚生省に登録しなければならず、同規則発効から3カ月以内に登

録することとされている。1社単独でも他社と連携して1団体としても登録することができ

る。登録者は以下の義務を負う。登録は別途定めるガイドラインに沿って行う。ガイドラ

インは厚生省より入手することができる。厚生省によると、コンサルタント会社を使って

登録作業を進めたケースが多いようだ。

(1) 厚生省への登録

(2) 電子機器廃棄物の適切な処理のための計画を作成する。

(3) 電子機器廃棄物の総合的な処理の適切な処理を担保する。

(4) 処理計画の実施状況に関する年次報告書を作成する。

(5) 本規則に定める事項を遵守するために必要な事項を推進する。

(6) 回収目標の達成に向けた取り組みを保証する。

(7) 電子機器の IDの記録。

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(8) 回収、回収手続きの持続性を担保する仕組みを設計、実施する。

(9) バリューチェーンの中にある活動主体全てが参加する、電子機器廃棄物収集センタ

ーのような仕組みを構築する。

ア-2.廃棄物処理に関する懸念事項

先述の政令 36093-S号「固形普通ごみの処理に関する規則」は、2011 年 2月 17 日より発

効している。同規則は主として家庭から排出されるごみや商業、製造業、サービス業から

排出されるごみについて一般家庭や事業者が負う義務について定めている。同規則第 7 条

は自治体の義務としてごみの回収を、第 10条はごみ回収サービス利用者の義務としてごみ

の分別、適切な保管などを定めている。同規則はごみ袋についても定めており、生分解性

プラスチックのものが好ましいとしている。コスタリカでは一般家庭や事業者がごみの分

別を行っているわけではなく、自治体が規則発効後もこれを適用するための体制を整える

ことができるかどうかが課題である。2011 年 8 月に国会関係者へ実施したインタビューで

は、予算不足の問題を抱える自治体が多いため体制を整備できるのは全自治体の 30%程度で

はないかとの見方を示した。

イ.露天掘り鉱山開発の禁止

11 月 9 日、コスタリカ国会は露天掘りによる重金属の鉱山開発を禁止するための鉱業法

改正法案(法案番号 15948 号)の第 2回審議を賛成多数で可決した。その後 2010年 12月 1

日に発効した。2

改正法は現行の鉱業法(法律 6797 号)を改定し、露天掘りの鉱山開発の禁止を定める「第

8 条の 2」を新たに設ける。また同法 102 条は環境に悪影響を与える行為を禁じており、そ

の行為は 103 条に規定されている。改正法は 103 条 k 項を改定し、シアン化合物、水銀を

用いた抽出技術の使用を禁じる。この改正法は官報公示後に発効し、発効後は、認可済の

事業については採掘期限の更新は認められない。認可手続き中の事業については手続きが

継続される。

同法案は 2005 年に市民行動党(PAC)のヘラルド・バルガス・レイバ議員(当時)によ

り提出されたが、第 2次オスカル・アリアス政権下(2006 年から 2010 年まで)で審議が進

むことはなかった。ラウラ・チンチージャ新政権が 5 月に発足し、直後の 2010年 5月 8日

にチンチージャ大統領は露天掘りによる金の探鉱、開発、シアン化合物及び水銀による金

の抽出の無期限停止を定める政令(政令 35982-MINAET)を公布するなど、環境問題を抱え

る鉱山開発に厳しい姿勢を示していた。

国立大学審議会(CONARE)傘下のエスタード・デ・ラ・ナシオン・プログラムにより公

表されるコスタリカの社会経済白書「エスタード・デ・ラ・ナシオン」2010 年版によると、

2010 年 4月現在、同国には 40 の鉱山開発事業が存在するという。うち 23事業は認可済で、

2 2010年 12月 1日発効の法律 8904号により改正。

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表10.首都圏通行規制曜日 ナンバープレート末尾番号月 1、2火 3、4水 5、6木 7、8金 9、0

出所:2008年7月10日付け官報

うち 17 事業は認可手続き中である。うち 3事業は先住民保護区域で実施されている。なお

コスタリカでは先住民族法(法律 6172号)により先住民族居留地が保護されている他、1992

年に国際労働機関(ILO)の先住民及び種族民条約(169 号条約)を批准したことから、先住

民保護区域における鉱山の採掘、試掘には事前確認が必要である。またコスタリカでは先

住民保護区域以外に国立公園、自然保護区など鉱業を含む開発が制限されている地区が広

大で、鉱区はこれら保護区域と重複しているため環境への影響が常に問題となる。

ウ.電気自動車の輸入及び使用に係る優遇措置

2011 年 3月 17 日、政府は、電気自動車購入に際して優遇税制を適用するための法律「電

気自動車及びゼロ・エミッション自動車の使用・輸入に係る優遇措置法」を今特別国会会

期中に審議することを定めた政令 36446-MP を官報公示した。特別国会の会期は 2010 年 12

月 1 日から 2011 年 4月 30日まで。

現状、自動車輸入時に課税される租税は高率である(表 8)。関税は低いものの内国税で

ある奢侈税(ISC)、営業利益税が高率に設定されている。さらに販売税 13%が課税される。

法改正により電気自動車については表 9のとおり税負担が軽減されることになる。さらに、

ナンバープレートの末尾の数字(0 から 9)を 5 組に分け、1 組ごとに週に 1 度、6~19 時

の 13時間、サンホセ市街地への進入を禁止している現行の通行規制の対象外になる(表 10)。

表8.電気、ハイブリッド自動車に係る諸税電気、燃料電池車(HS8703.90.00.20・2011年3月22日現在)

関税 輸入税 販売税 奢侈税 営業利益税無税 1% 13% 0% 25%

ハイブリッド車(HS8703.90.00.20・2011年3月22日現在)関税 輸入税 販売税 奢侈税 営業利益税無税 1% 13% 15% 25%

注:輸入税は中米域外原産品に一律1%課税される。出所:World Tariff

表9.電気自動車の輸入・使用に関する優遇措置改正内容  現状

奢侈税を0%とする 0%販売税を0%とする 13%輸入税を0%とする 1%通行制限の免除 全車両に通行制限あり

出所:法案17,692号

ハイブリッド車についても同様に優遇税制の導入が予定されている。現在国会で審議中

の改正交通法により導入される見通しだ。エル・フィナンシエロ紙(ウェブ版・3 月 22 日

付)によると 250 台のトヨタ・プリウスがコスタリカ国内で登録されている。

コスタリカでは現在、電気自動車ブームは生じている。発端は米州初の市場投入となっ

た三菱自動車の電気自動車「iMIEV」である。2月 25日に市場投入を記念するイベントが催

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され、ラウラ・チンチージャ大統領も出席した。

これを背景に現在、ガソリンスタンドなどへの充電器設置を可能にする法整備を政府が

検討していると報じられている。政令によりこれを可能にするか、あるいは国会に提出さ

れた電力一般法にこれを盛り込むか、いずれかの方法になる見通しだ。加えて配電公社

(CNFL)による充電スタンドの設置も検討されている。

政府が電気自動車に高い関心を示す一方、学識者からは鉄道、道路など統合的な交通イ

ンフラ政策の実施を求める声も聞かれる。電気自動車の環境親和性の高さは評価するが、

公共交通機関の整備による交通量の低減、道路インフラ整備による渋滞緩和などを通じて

エネルギー消費を抑制するべきという考え方に基づくものだ。

また、電気自動車のバッテリー回収やリサイクルについても法整備が必要との意見もあ

る。廃棄物処理については統合的廃棄物処理法により、廃棄物の回収、リサイクル責任が

明示されているが実効性は不透明だ。電気自動車の普及を促進する制度やインフラ整備は

財源不足の問題もあり容易ではない。

4.まとめ

環境問題に限らずコスタリカでは、法の定め通りに規則が運用されない問題がある。外

資系企業を悩ませる代表的な問題として一時滞在許可の問題が挙げられる。法が定める期

日通りに一時滞在許可に係る手続きが処理されず、内務省関係者はこれを「人員と予算に

制約があるため」とその理由を説明している。先述の国会関係者に 2011年 3月にインタビ

ューしたところ、環境関連の政策についても同様に実効性が問われる事態が生じている。

電子機器廃棄物の回収については、一部の民間企業による取り組みが進んでいるケース

もあるが、空き箱の回収程度に留まっている等、不十分であるという。固形普通ごみの回

収については先述のとおり市町村の管轄となるが、やはり予算、人員の制約により取り組

みが進んでいないのが実情である。さらには処分場の不足も予てから提起されている問題

である。

本基礎情報収集ではコスタリカにおける企業セクターの取り組みに焦点を当てなかった

が、2011年3月16日には第1回環境とサステナビリティに関する企業フォーラムがサンホセ

にて開催され、コスタリカの地場企業及び多国籍企業の環境配慮への様々な取り組みが紹

介された。民間セクター、特に大企業において環境配慮の取り組みは一般化しているが、

コスタリカには企業の環境投資を促進するためのインセンティブが極めて限定的なため、

中小製造業者が環境配慮型の生産に向けた設備投資を行うのは容易ではない。財政難から

インセンティブの充実を望むのは困難だが、電気自動車に関する一連の動きは、コスタリ

カが環境立国を目指しながらも環境親和性に優れた製品や技術導入を優遇する制度が不足

している状況を打破する契機と捉えることもできるだろう。

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カーボン・ニュートラル等に関するコスタリカ基礎情報収集

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2011 年 3月作成

作成者 ジェトロ(日本貿易振興機構)メキシコ・センター

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