形式言語とオートマトン

形式言語とオートマトン

第 3 回鳥取大学工学研究科

情報エレクトロニクス専攻田中美栄子


本日の予定

• 有限状態オートマトンの復習• 空動作を許すオートマトン• DFAと NFAの同等性 (前篇 )


有限状態オートマトンの復習


“ 有限状態オートマトン”は

最終評価の６割を占めます。

もし、今までの授業で分かっていない人がいたら

今日の授業で追いつきましょう！

M= < Ｑ， Σ ， δ ， q0 ，Ｆ >


5 字組み表現

有限オートマトンの５字組み表現

　Ｑ⇒状態の有限集合　 Σ ⇒ 入力記号の有限集合　 δ ⇒ 動作関数 (δ: Ｑ ×Σ→ Ｑ ) q0⇒ 初期状態 (q0)　 F ⇒ 受理状態の集合


すべての状態ですべての入力に対して、遷移先が唯一

a

決定性有限オートマトン

M= < Ｑ， Σ ， δ ， q0 ，Ｆ >　Ｑ = {q1 , q2} 　　 Σ = {a , b}　 δ ：Ｑ ×Σ→ Ｑ　　 δ (q1 , a) = q1

　　 δ (q1 , b) = q2

　　 δ (q2 , a) = q1

　　 δ (q2 , b) = q2

　 q0 = q1 　Ｆ = {q2}


q１

q2bba

状態遷移図と5字組みが等価

5 字組み表現

有限オートマトンの５字組み表現

a


abba を与えたときの一連の動作を下記のように簡潔に表す

(s,ε)(r,abba) (s,bba) (r,ba) (r,a)M M M M

様相


一つの入力に対し、遷移先が唯一でない

a

a

非決定性有限オートマトン


入力に対して、遷移先が無い

a


？



a

aatsr

b}{tF

rq 0

),(,),(

,),(},{),(

},{),(},,{),(

btat

bstas

rbrsrar

QQ 2:

},,{ tsrQ},{ ba 違いは状態遷移だけ

　遷移先がない


非決定性有限オートマトンbaaを入力すると、三種類の遷移がある。

受理状態である t で遷移が終わっているので、 baa は受理される

aasr t

),(),(),(),(

),(),(),(),(

),(),(),(),(

tasaarbaar

saraarbaar

raraarbaar

MMM

MMM

MMM

𝑎 ,𝑏

××○


aasr t

𝑎 ,𝑏

baaを入力すると、三種類の遷移がある。

○複数の遷移に対し，一つ

が出れば，受理される


NEW　非決定性

空動作を許すオートマトン


空動作とは？空動作（ ε-move ）とは入力記号を読まずに状態遷移できる行き先は状態の集合（空集合 Φ を含む）

Pε

ε

ε

S SQ

R

}P{),S( }R,Q{),S(


空動作を許す、とは？0

p

1

ε

ε

入力無しでも二つの状態 q,r のどちらかに行ける

q

r


空動作の五字組み

動作関数 QQ 2}){(:

FqQM ,,,, 0

Q 状態の有限集合

入力記号の有限集合

0q 初期状態 Qq 0F 受理状態の有限集合 QF

注意

),()0,(},{)1,(

,),()1,(},{)0,(

,)1,()0,(},,{),(

rrrr

qqqq

pprqp

QQ 2}){(:


FqQM ,,,, 0},,{ rqpQ

}1,0{

pq 0},{ rqF

0

qp

1

r

空動作の五字組み


空動作の動作例

$0 0 0

r

q

p

1

・入力 00 に対するＭの動作

ε

ε



0

r

q

p

1


入力記号を読まずに状態遷移

２通り存在する

εε

場合１

場合２

$0 0



0

r

q

p

1


εε

場合１$0 0

受理できる



0

r

q

p

1


εε

$0 0

これ以上遷移できない→受理できない

場合２


空動作のまとめ


空動作とは，入力記号を読まなくてもできる状態遷移

ε

εS

Q

R

}R,Q{),S(

状態遷移は様々な場合が存在する


NEW

DFAと NFAの同等性

DFA（決定性 FSA） NFA（非決定性 FSA）


これまで

NFA（非決定性 FSA）DFA（決定性 FSA）を学んだ

ε-NFA（空操作のある非決定性 FSA）


ある言語を受理するNFA（ (空操作のある )非決定性

FSA）

DFA（決定性FSA）

が存在するならば

DFA と NFA の同等性とは

同じ言語を受理する

が存在する𝑑𝑓𝑎𝑀𝑑

(𝜀)𝑛𝑓𝑎𝑀𝑛-


NFA（非決定性 FSA）a

aasr

b

t

DFA（決定性 FSA）

𝑑𝑓𝑎𝑀𝑑からを構成する方法を学ぶ !!

a

{r,s}a ab

b

{r,s,t}{r}

b

(𝜀)𝑛𝑓𝑎𝑀𝑛-


アルゴリズム　 2.1


教科書 P.47文字多いけど，簡単よ，諦めないで！！！


aasr

b

t

DFA（決定性 FSA）a

{r,s}a ab

b

{r,s,t}{r}

b


アルゴリズム　 2.1


a

aasr

b

t

𝑄𝑛={𝑟 ,𝑠 ,𝑡 }Σ𝑛={𝑎 ,𝑏}𝛿𝑛:𝑄𝑛×Σ𝑛→2

𝑄𝑛

𝛿𝑛 (𝑟 ,𝑎 )={𝑟 ,𝑠 } ,𝛿𝑛 (𝑟 ,𝑏)={𝑟 } ,𝛿𝑛 (𝑠 ,𝑎 )= {𝑡 } ,𝛿𝑛 (𝑡 ,𝑎)=,

𝛿𝑛 (𝑠 ,𝑏 )=,𝛿𝑛 (𝑡 ,𝑏 )=¿

𝑞0𝑛=𝑟𝐹 𝑛={𝑡 }

説明しやすいため，遷移図を 5 字組化


1. の状態の集合の部分集合に全体で、の状態 () をつくる

の状態の集合

{{𝑟 ,𝑠 ,𝑡 } , {𝑟 ,𝑠 }, {𝑠 , 𝑡 }, {𝑡 ,𝑟 }, {𝑟 } , {𝑠 } , {𝑡 } , }

アルゴリズム　 2.1 の　 1

𝑄𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } , {𝑟 ,𝑠 } , {𝑠 ,𝑡 } , {𝑡 ,𝑟 } , {𝑟 } , {𝑠} , {𝑡 }, }


アルゴリズム　 2.1 の　 1𝑄𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } , {𝑟 ,𝑠 } , {𝑠 ,𝑡 } , {𝑡 ,𝑟 } , {𝑟 } , {𝑠} , {𝑡 }, }

{r,s,t}

{r,s}

{s,t}

{t,r}

{r}

{s}

{t}


𝑞0𝑑={𝑟 }


2. において入力を読まずに遷移できる状態の集合を　初期状態 () とする𝑞0𝑛=𝑟


アルゴリズム　 2.1 の　 2𝑞0𝑑={𝑟 }

{r,s,t}

{r,s}

{s,t}

{t,r}

{r}

{s}

{t}


3. の受理状態を 1 つでも含む部分集合に対する状態をの受理状態とする

𝐹 𝑛={𝑡 }


の受理状態 t を含む状態の部分集合

𝑄𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } , {𝑟 ,𝑠 } , {𝑠 ,𝑡 } , {𝑡 ,𝑟 } , {𝑟 } , {𝑠} , {𝑡 }, }

𝐹 𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 }, {𝑠 , 𝑡 }, {𝑡 ,𝑟 }, {𝑡 }}

既知



{r,s,t}

{r,s}

{s,t}

{t,r}

{r}

{s}

{t}

𝐹 𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 }, {𝑠 , 𝑡 }, {𝑡 ,𝑟 }, {𝑡 }}


アルゴリズム　 2.1 の 44. の動作関数 () を決める

Σ𝑛={𝑎 ,𝑏} まず，入力記号をΣ𝑑=Σ𝑛={𝑎 ,𝑏}

𝛿𝑑 :𝑄𝑑× Σ𝑑→2𝑄𝑑から

𝑄𝑑={{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } , {𝑟 ,𝑠 } , {𝑠 ,𝑡 } , {𝑡 ,𝑟 } , {𝑟 } , {𝑠} , {𝑡 }, }

𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑎)=¿ 𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑏)=¿𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠},𝑎)=¿ 𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠},𝑏)=¿𝛿𝑑 ({𝑠 ,𝑡 },𝑎 )=¿ 𝛿𝑑 ({𝑠 ,𝑡 },𝑏)=¿⋮ ⋮

𝛿𝑑 (𝜑 ,𝑎)=¿ 𝛿𝑑 (𝜑 ,𝑏)=¿

アルゴリズム　 2.1 の　 44. の動作関数 () を決める

例

𝛿𝑛:𝑄𝑛×Σ𝑛→2𝑄𝑛

𝛿𝑛 (𝑟 ,𝑎 )={𝑟 ,𝑠 } ,𝛿𝑛 (𝑟 ,𝑏)={𝑟 } ,𝛿𝑛 (𝑠 ,𝑎 )= {𝑡 } ,𝛿𝑛 (𝑡 ,𝑎)=,

𝛿𝑛 (𝑠 ,𝑏 )=,𝛿𝑛 (𝑡 ,𝑏 )=¿

𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑎)=¿ 𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑏)=¿{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } {𝑟 }



{r,s,t}

{r,s}

{s,t}

{t,r}

{r}

{s}

{t}a

b

𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑎)=¿ 𝛿𝑑 ({𝑟 ,𝑠 , 𝑡 },𝑏)=¿{𝑟 ,𝑠 , 𝑡 } {𝑟 }


アルゴリズム　 2.1 の　 4全ての動作関数を求める


アルゴリズム　 2.1 の 4

{r,s,t}

{r,s}

{s,t}

{t,r}

{r}

{s}

{t}a

b

a

ba

ba,b

b

a

a,baba

b

下図になる


アルゴリズム　 2.1 の　 55. の初期状態から到達できない状態 ( 遷移 ) をすべて削除

{r,s,t}

{r,s} {r}

a

b

a

ba

b

a

{s,t}

{t,r}

{s}

{t}

∅

a a

𝑏𝑏

𝑏

𝑎 ,𝑏

𝑎 ,𝑏



{r,s,t}

{r,s} {r}

a

b

a

ba

b

a

{r,s}a ab

b

{r,s,t}{r}

b

整理




aasr

b

t

DFA（決定性 FSA）

する理由は？

a

{r,s}a ab

b

{r,s,t}{r}

b

NFA DFA


NFA DFA遷移先がなかったり複数あったり遷移先が唯一

a b

{r} {r,s} {r}{r,s} {r,s,t} {r}

{r,s,t} {r,s,t} {r}

a br r, s rs t --t -- --

a

aasr

b

t

a

{r,s}a ab

b

{r,s,t}{r}

b


小テスト

以上ですお疲れ様でした

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