余韻空間研究 ―劇場における終演後の余韻について―
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2011,卒業論文,松尾彩花TRANSCRIPT
1
余韻空間研究 ―劇場における終演後の余韻について―
第3章 基礎調査
2余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・なんか・・・・すごい舞台だったね。」
「・・・うん。」
「よくわからないけど・・・・・・とってもよかった・・・」
私が友人と演劇を観に行く際、終演直後、このような状況になることがある。 素晴らしい舞台に出会うと、終演直後は言葉を発することができなくなってしまう。
私は、舞台鑑賞や音楽鑑賞が好きで、劇場やコンサートホールに足を運ぶことが多い。
生の演奏を聴いたりお芝居を観て楽しむことも好きだが、
あの劇場やホールにしかない雰囲気を味わうことがとても好きである。
その時、その場所、その人にしか味わうことのできない余韻を
もっと大切に、もっとたくさん浸ってほしいという思いをもって、
研究をはじめてみようと思う。
3
目次
第3章 基礎調査
4余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
はじめに
目次
第1部 本編
第1章 序論 1 語句の定義 2 研究目的 3 研究概要 4 既往研究 4-1 劇場のロビー・ホワイエに関する研究 4-2 劇場に関するその他の研究 4-3 劇場以外のアプローチ空間に関する研究 4-4 期待感に関する研究 5 研究の位置づけ 6 研究の流れ
第2章 背景 1 余韻とは 1-1 余韻の意味 1-1-1 音の余韻 1-1-2 風情の余韻 1-1-3 詩文の余韻 1-2 afterglow
2 風情の余韻をつくる 2-1 余韻のある人 2-2 余韻をもたらすおもてなし 2-3 空間の余韻 2-3-1 テーマパーク 2-3-2 美術館
3 興行後の余韻に関して 3-1 興行施設の現状 3-2 興行前の期待感の演出 3-3 興行後の余韻の演出 3-3-1 BLUE MAN 3-3-2 blast
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第1部 本編第1部 本編 0707
第3章 基礎調査
5余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
第3章 基礎調査 1 調査概要 2 調査方法 3 調査結果 4 分析 5 考察
第4章 本調査 1 概要 2 方法 3 結果
第 5章 本調査 分析 1 各場所ごとの余韻度の差に着目した分析 1-1 劇場別に見た各場所ごとの余韻度の差 1-2 空間印象評価 1-3 行為
2 終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した分析 2-1 劇場別に見た終演直後と劇場退出時の余韻度の差 2-2 満足度 2-3 同伴者 2-4 所要時間 2-5 来場回数
3 考察 3-1 各場所ごとの余韻度の差に着目した分析 3-2 終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した分析
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第3章 基礎調査
6余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
第 6章 ニーズ調査 1 調査概要 2 調査方法 3 調査結果・分析 3-1 余韻に対するニーズ調査 3-2 余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対してのニーズ調査 4 まとめ
第7章 終章 1 おわりに・展望
謝辞参考文献
第 2部 資料編
82838485
8789
9091
9394
第 2部 資料編第 2部 資料編
7
第 1 部 * 論文編
8
第1章
序章
1.語句の定義
2.研究目的
3.研究概要
4.既往研究 4-1.劇場のロビー・ホワイエに関する研究 4-2.劇場に関するその他の研究 4-3.劇場以外のアプローチ空間に関する研究 4-4.期待感に関する研究
5.研究の位置付け
6.研究の流れ
第1章 序章
9余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
興行 :観客を集め、料金を取っ
て演劇・音曲・映画・相撲・見
世物などを催すこと。また、そ
の催し物。( 小学館:デジタル
大辞泉 [2010])
1 語句の定義
本研究における「余韻」「余韻度」を以下のように定義する。
■ 余韻 興行終了後に、その内容もしくはそれに付随することについて思い、考える こと。
■ 余韻度 興行終了後、頭の中で考えている全てのことを 100%としたとき、興行の内容 もしくはそれに付随することについて思い、考えている割合をパーセント表記し、 その数値を余韻度とする。
例:観劇終了後の頭の中 「あー、楽しかったな…」 …60% 「また次回も観に来たいな…」 …25% 「明日仕事だから早く帰らないと…」…15%
この時、公演(及び付随すること)に関して考えている割合が 60%+ 25%= 85%より、余韻度は「85」となる。
60%25%
15%
第1章 序章
10余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 研究目的
興行公演終了後、観客の余韻の浸りやすさに影響を与える空間、及び他要素を調査することによって、良質な余韻を生み出す空間を作るための知見とする。
第1章 序章
11余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3 研究概要
本研究では、興行の中の演劇に対象を絞って調査を行う。演劇施設である劇場において、余韻に関するアンケート調査を行い、余韻に影響を与える要素を抽出する。そして、最終的に余韻に浸りやすい空間の提案を行う。
■ 仮説
図1.3.1 仮説の概念図
空間には、余韻に浸りにくい場所が存在する。公演終了後、座席から劇場出口に移動する過程で、観客が余韻に浸りにくくなる原因は、空間特性及び早々と観客を退場させようとする劇場側の都合である。そこで、一定の時間をかけて出口に誘導することができる空間では、余韻に浸りやすくさせることができるのではないかと考える。
公演終了時間
余韻
劇場出口
第1章 序章
12余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
4 既往研究
ここでは、この後の要因の抽出調査にあたり、過去の研究の成果を以下に挙げる。
4-1 劇場のロビー・ホワイエに関する研究
1) 空間構成による類型化―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その1)―*1
アプローチ動線の形状やロビーの位置等から、ホールの空間構成を 16タイプに類型化した。
2) アプローチ・ホワイエ空間の類型化と心理量分析―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その2)―*2
多くのホールを対象に外部内部アプローチ空間に関する心理量分析を行い、傾向を見出した。また、心理量同士の分析も行い、ホール全体の「満足度」は<客席空間の魅力>の因子が最も影響を与える。
3) エントランスから客席までの心理分析―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その4)―*3
アプローチ空間に重要な因子 7軸 ( まとまりがあるーない 他6軸 ) を明らかにし、各劇場のアプローチ・ホワイエ空間の特徴及び心理評価の変化も示した。
4) ホワイエから客席までの空間の指摘量・相関分析―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その5)―*4
アプローチ・ホワイエ空間を表す7つの代表評定尺度(あとまりがある、等)に対応する物理的要素を明らかにした。
5) 劇場・ホールのエントランスから客席までの空間構成に関する研究―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その6)―*5
エントランスと客席の間に、5m以下の床レベル変化、50㎡以上の間口面積、また、容積や天井高変化をつけて空間をつなげることが重要である。
6) 劇場・ホールのロビー・ホワイエにおける付帯的サービスに関する調査研究 *6
ロビー・ホワイエにおけるサービスやレストラン、バーカウンターの現状把握、問題点を把握した。
*1 実川俊之 船越徹 積田洋
浦部智義 :
空間構成による類型化―劇場・
ホールのアプローチ・ホワイエ
空間に関する研究(その1):
―日本建築学会大会学術講演梗
概集 ( 東北 ) p393-394 [2000]
*2 実川俊之 船越徹 積田洋
浦部智義 伊藤伸一 加藤智
久 :
アプローチ・ホワイエ空間の
類型化と心理量分析―劇場・
ホールのアプローチ・ホワイエ
空間に関する研究(その2)―
: 日本建築学会大会学術講演梗
概集 ( 東北 ) p435-436 [2001]
*3 浦部智義 船越徹 積田洋
加藤智久 佐々木里紗 :
エントランスから客席までの心
理分析 ―劇場・ホールのアプ
ローチ・ホワイエ空間に関する
研究(その4)―: 日本建築学
会大会学術講演梗概集 ( 東北 )
p257-258 [2002]
*4 浦部智義 船越徹 積田洋
加藤 智久 佐々木里紗 :
ホワイエから客席までの空間
の指摘量・相関分析―劇場・ホー
ルのアプローチ・ホワイエ空間
に関する研究(その5)―: 日
本建築学会大会学術講演梗概集
( 東北 ) p259-260 [2002]
*5 浦部智義 船越徹 積田洋
加藤 智久 佐々木里紗
劇場・ホールのエントランスか
ら客席までの空間構成に関する
研究―劇場・ホールのアプロー
チ・ホワイエ空間に関する研究
(その6)―: 日本建築学会大会
学術講演梗概集 ( 東北 )p353-
354[2003]
*6 勝又英明 小川利和 :
劇場・ホールのロビー・ホワイ
エにおける付帯的サービスに
関する調査研究 : 日本建築学会
大会関東支部研究報告書 p401-
404 [1997]
第1章 序章
13余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
4-2 劇場に関するその他の研究
7) 劇場におけるコモンスペースに関する研究 鑑賞者の滞在行動に着目して *7
建築的要素が誘発する人の姿勢と行為を分析し、コモンスペースの計画への提案を4つあげる。
8) 人の分布・行動からみた劇場のアプローチ空間 *8
劇場のアプローチ空間を平面型・領域・距離等で分類し、人の滞留の実態と滞留場所の空間的性格が明らかにした。
9) 劇場の周辺環境と鑑賞前後の行動との関係 *9
鑑賞前後の行動に対する物理的及び個人的制約と誘発の両要因を考慮した鑑賞環境デザインが必要であることを明らかにした。
4-3 劇場以外のアプローチ空間に関する研究
10) 学校建築におけるアプローチ空間の心理評価の予備実験と考察 *10
学校を空間構成を3つにグループ分けし、それぞれの心理評価に影響を与える因子の違いを提示した。
11) 美術館のアプローチ空間の構成とその評価に関する研究―1990 年以降の美術館建築の事例分析を通して―*11
美術館におけるアプローチ空間は、立地特性、開放性、アプローチ空間と建築の関係性、アプローチ空間特性の4つが絡み合って構成されている。
12) 参道空間における空間構成要素の誘導効果に関する研究 ( その1)*12
山門は、往路復路ともに参道空間への誘導効果が高く、また、誘引評価価値は本堂に近づくにつれ徐々に高まっていく。
*7 小塚智世 加藤彰一
劇場におけるコモンスペースに
関する研究 鑑賞者の滞在行動
に着目して
日本建築学会大会学術講演梗概
集 ( 東北 ) 125-126 [2009]
*8 大沢久美 安田幸一 村田
涼 内藤誠人
人の分布・行動からみた劇場の
アプローチ空間
日本建築学会大会学術講演梗概
集 ( 東北 ) p689-690 [2009]
*9 遠山直子 添田昌志 大野
隆造
劇場の周辺環境と鑑賞前後の行
動との関係
日本建築学会大会学術講演梗概
集 ( 東海 ) p1127-1128 [2003]
*10 宮城智子 鈴木弘樹 積田
洋 吉村彰
学校建築におけるアプローチ空
間の心理評価の予備実験と考察
学校建築尾アプローチ空間に
関する研究 p553-554( その1)
[2010]
*11 野村恒司 三輪康一 末包
伸吾 栗山尚子
美術館のアプローチ空間の構
成とその評価に関する研究―
1990 年以降の美術館建築の事
例分析を通して―
日本建築学会近畿支部研究報告
書 p101-104 [2009]
*12 伊藤嘉記 山口満
参道空間における空間構成要
素の誘導効果に関する研究 ( そ
の1) 日本建築学会大会学術
講演梗概集 ( 東海 ) p985-986
[2009]
第1章 序章
14余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
4-4 期待感に関する研究
13) 観覧施設までのアプローチ空間における人のいる状態による期待感の演出 *13
広場の滞留者の位置と期待感の関係を示し、また、通路における期待感変化のモデルを明らかにした。
14) 期待感を与える空間構成とその要因―街路の期待感に関する研究―*14
期待感は直線形態よりも曲線形態の方が強くなる等、期待感を与える空間構成を5つ明らかにした。
15) 折れ曲がり街路空間における期待感―期待感最大位置とその強さについて―*15
折れ曲がり街路空間において期待感が最も強まる一は、時間距離に関係しており、席の空間がすべて見える 4.4 秒前あたりである。
16) ゲートにより分節された街路空間における期待感最大位置とその強さ その2―連続する要素がある場合―*16
ゲートによる分節空間において、期待感が強くなる位置は、ゲートの開口の高さと上部厚さと街灯によって決定する。
4-5 余韻に関する研究
17) 心に響く音 *17
俳句や和歌、観世音菩薩を通して、音の大切さを説き、そこから胸をうつ余韻がつくられることを示している。
18) 水琴窟音のもつ余韻効果の解明 *18
水琴窟音の間隔時間による余韻効果を、水道水の滴水と比較して解明する。
*13 江藤 元治
観覧施設までのアプローチ空間
における人のいる状態による期
待感の演出 : 渡辺仁史研卒業論
文 [2009]
*!4 小柳英治 松本直司
期待感を与える空間構成とその
要因―街路の期待感に関する
研究―: 日本建築学会大会学術
講演梗概集 ( 近畿 ) p689-690
[1996]
*15 日比淳 松本直司
折れ曲がり街路空間における
期待感―期待感最大位置とそ
の強さについて―: 日本建築学
会大会学術講演梗概集 ( 北陸 )
p979-980 [2009]
*16 小島恵子 松本直司 栢木
亜衣
ゲートにより分節された街路空
間における期待感最大位置と
その強さ その2 ―連続する
要素がある場合― : 日本建築学
会大会学術講演梗概集 ( 北陸 )
p757-760 [2008]
*17 久野和宏 心に響く音
: 社団法人電子情報通信学会
p25-29 [1993]
*18 西田日和 岸塚正昭
水琴窟音のもつ余韻効果の解明
:造園技術報告集3[2005]
第1章 序章
15余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
ENTER EXIT
5 研究の位置付け
「劇場」に関する研究は、
・「空間」に着目した研究…ロビー・ホワイエ・アプローチ空間・「設備」に着目した研究…音響・照明・「人の行動」に着目した研究…分布・滞留・着座・「人の心理」に着目した研究…空間印象・期待感以上のように、あらゆる視点から研究がされている。しかし、終演後の劇場に着目した研究は、遠山らによる「劇場の周辺環境と鑑賞前後の行動との関係 *9」の研究において、周辺施設や環境への評価について述べているが、劇場内における終演後の研究はほとんどされていない。
また、「終演後の空間」と対象関係にある「アプローチ空間」に関する研究は、劇場の他にも、学校・美術館・博物館・参道空間等、様々な場所で行われている。そして、劇場のアプローチ空間で求められる「期待感」に関しては、空間構成や人の滞留状態から着目し、研究なされているが、余韻に関してはない。
更に、劇場内における終演後の「余韻」に着目するにあたり、余韻に関する他の研究を見ると、音響学の余韻や、俳句の余韻に関する研究はあるものの、心で味わう余韻に着目したものはない。
そこで、本研究においては、「劇場における公演終了後の余韻に関する研究」を行うこととする。
*9 遠山直子 添田昌志 大野
隆造
劇場の周辺環境と鑑賞前後の行
動との関係
日本建築学会大会学術講演梗概
集 ( 東海 ) p1127-1128 [2003]
アプローチ空間及び期待感に関する研究
劇場内の空間・施設に関する研究
劇場の周辺環境と鑑賞前後の行動との関係
本研究劇場における公演終了後の余韻に関する研究
図1.5.1 研究の位置付け図
第1章 序章
16余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
6 研究の流れ
本研究の流れを以下に示す。
基礎調査
本調査
ニーズ調査
まとめ
余韻体験に基づくパラメータ抽出調査―余韻に浸った時の体験談を調査―結果をもとに、余韻に影響を与えるパラメータとして抽出
劇場における終演後の余韻に関する調査―演劇を見に来た観客に街頭アンケートを行う―余韻度と、余韻に影響を与えると思われる要素を調査―結果をもとに、パラメータが与える余韻への影響を分析する
劇場における終演後に関する希望調査―劇場にいらしたお客様に街頭アンケートを行う―公演終了後に座席から出口まで向かう所要時間のニーズ調査―公演終了後に望む企画・施設のニーズ調査
以上の調査をふまえ、余韻に浸りやすい空間を提示する。
17
第2章
背景1.余韻とは 1-1.余韻の意味 1-1-1.音の余韻 1-1-2.風情の余韻 1-1-3.詩文の余韻 1-2.Aftergllow(英語での余韻)
2.風情の余韻をつくる 2-1.余韻のある人 2-2.余韻をもたらすおもてなし 2-3.空間の余韻 2-3-1.テーマパーク 2-3-2.美術館
3.興行後に関する余韻 3-1.興行施設の現状 3-2.興行前の期待感の演出 3-3.興行後の余韻の演出 3-3-1.BLUE MAN 3-3-2.blast
第 2章 背景
18余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1 余韻とは
余韻に関する調査を行うにあたり、第1項では余韻の概要をまとめる。
1-1 余韻の意味
「余韻」の意味は以下の3つである。*
1.音の鳴り終わったのちに、かすかに残る響き。また、音が消えたのちも、 なお耳に残る響き。余音。「鐘の音の―が耳もとを去らない」 2.事が終わったあとも残る風情や味わい。「感動の―にひたる」 3.詩文などで言葉に表されていない趣。余情。「―のある作品」
また、余韻という言葉は四字熟語にも使用されている。
余韻嫋々(よいんじょうじょう)*
意味:快い音が長く残るようす。また、詩文を読んだ後の気持ちのよい余情が、 心に残るようす。 解 説: 「嫋嫋」は細く長くつづくようす。 例:村祭りのはやし、遠くに聞こえる汽笛、そして余韻嫋々たる鐘の音が私のふ るさとを思う 3点セットである。 参考:「余韻嫋々やれ仕上げは嫋々」
この四字熟語では、「嫋々」という言葉と「余韻」を組み合わせることによって、余韻は細く長く続いていくところに味わいがあることを示していると考えられる。
本研究では「風情の余韻」に着目し、研究をすすめることとする。 次頁からは、音・風情・詩文の3つの余韻の概要をまとめる。
* デジタル大辞泉
http://kotobank.jp/dictionary/
daijisen/
* 四字熟語辞典
学習研究社 [1994]
第 2章 背景
19余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-1-1 音の余韻
はじめに、「音の余韻」に関して取り上げる。 コンサートホールで行われる演奏会等において、曲の最後の一音を演奏し終わった後に、その音がホール内を反響しながら音がだんだんと減衰していくことがある。このように、音が残って響きわたることが「音の余韻」である。この余韻を別の言葉で言いかえると「残響」である。
残響:音源が発音を停止した後も音が響いて聞こえる現象。*
残響時間:音源が発音を止めてから、残響音が 60dB( 元のエネルギーレベルの 100 万分の 1) まで減衰するまでの時間であり、その近似値は式 T=0.049V/A で求められる。家庭などの小さな部屋では 0.5 秒程度、 音楽用ホールでは 1.5 ~ 2秒程度である。*19
(T:残響時間 V:空間の容積 A:等価吸音面積 )
図 1.1.1 残響時間と音圧レベルの関係
つまり、残響は空間の容積に比例し、等価吸音面積に反比例する。等価吸音面積は、吸音率に材料の面積を掛け合わせた数値のこと。空間の場合は、室を構成する壁、天井、床のすべての内装材料について、各材料の吸音率とその面積を掛けた数値の合計が、その室の等価吸音面積である。 例えば、浴室内で話したり歌ったりすると良く響いて聞こえるが、同面積の部屋で同様なことを行うと浴室よりは響かない。そして、家庭の小さな浴室と温泉の大浴場では後者の方がよく響く。*20 *21
ホールや劇場を設計する際には、残響時間には留意する必要がある。必ずしも長ければいいというわけではなく、歌詞などがある音楽に関しては残響時間が長いと聴き取りづらくなる、等の問題も発生する。
* Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/
*19 日本ナショナルインスツル
メンツ株式会社HP
http://japan.ni.com/
*20 木村建一:建築士技術
全書2 環境工学 彰国社
p106-107 [1976]
*21 小野測器ホームページ
http://www.onosokki.co.jp/
default.htm
第 2章 背景
20余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
そのため、目的に合わせた残響時間を考慮しながら慎重に設計しなければならない。容積や内装材量を考慮する他、動員客数によっても等価吸音面積は変化するため、幅広い事項に注意を傾ける必要性がある。 一方、この問題を解決するために、残響可変装置を設置しているホールも増加してきた。公演毎に適した残響時間を作り上げることが可能であるため、経済的に専用ホールを建設することが厳しい地方でも、本装置を設置した多目的ホールを1つ作ることによって、多様な需要に対応することが可能となる。*22
例:徳島文理大学 むらさきホール *23
-開閉式残響可変装置- パネルを閉じることにより音を反射させ、開けることで後部に設置されている吸音室で吸音させて残響時間を変化させる装置。
図 2.1.1 パネル開
図 2.1.2 パネル閉
以上より、空間に広がる「音の余韻」は自然に衰退してゆくものであるが、完全に消えてなくなるまでの残響時間を人の手によって適した時間にすることができ、演奏会ではその適した音の余韻を味わうこととなる。
*22 朴 相俊 関口明克 : ホール
建築における残響可変装置の使
用実態に関する研究:日本建築
学会関東支部研究報告書 P589-
592 [2001]
*23 株式会社サンケン・エン
ジニアリングHP
http://www.sanken-eng.co.jp/
index.htm
第 2章 背景
21余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-1-2 風情の余韻
続いて、「風情の余韻」に関して取り上げる。 「感動の余韻に浸る」という言葉にもあるように、「風情の余韻」は何か自分が携わったことが終了した後に残る味わいであり、あらゆる時・様々な場所で浸ることのできる余韻である。1人で浸る場合もあれば、大勢で話し合いながら余韻に浸ることもあるだろう。
本研究のテーマである「風情の余韻」に関しては、2章の第2項にて、 1.余韻のある人 2.余韻をもたらすおもてなし 3.余韻をもたらす空間 以上3つの項目に焦点をあてて、詳しく取り上げることとする。
第 2章 背景
22余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-1-3 詩文の余韻
最後に、「詩文の余韻」に関して取り上げる。
■俳句
俳句は5・7・5という計 17字で構成するという約束がある。この数少ない字数では、表現したいことの極一部しか詠うことはできず、必ず省略しなければいけない部分が出てくる。その「省略」が「余韻」を生み出すと言われているため、俳句において省略はとても重要な存在である。
例えば、
古池や 蛙飛び込む 水の音 松尾芭蕉
最も有名な俳句の1つであるこの俳句は、今まで冬のとざされた情景の中にあった古池に、蛙のとび込む水音によって、春の息吹を感じ、 春になった喜びが拡がっていく心持ちを表現している。*1
「古池や」の「や」を「切字」といい、切字はただの区切れを表すだけでなく、「強調」と「省略」の力を持っている。強調の機能としては、作者の感動の中心であることを表し、省略の機能としては、17文字の中で伝えきれない情景・感情を表す。この句では、芭蕉が古池の静けさを見たときの感動を強調して表してあり、更に要略してある古池の詳細な情景を表現していると考えられる。静かで寂しさも感じられる古池を想像しながら、蛙が飛び込んでいく様子を各自で想像するのである。その想像を経て、余韻が生まれるのである。
つまり、言葉に表されているものの中から、見えないものを感じとるのが「詩文の余韻」である。
■現代の詩文の余韻
このように、古くから日本の文書には、字には表されていない部分を頭の中で想像することによって、余韻を味わうことがわかった。 この傾向は現代にも受け継がれており、私たちが使用するメールや手紙、ブログなどにも「詩文の余韻」は取り入れられている。その例として、リーダー (…)と行間について考えてみる。
*24 俳 句 入 門 講 座 http://
www.haiku.jp/haiku/nyumon.
htm
第 2章 背景
23余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
□リーダー リーダーは約物のひとつである。点々や点線などと呼ばれることもある。活字や写植・フォント等では二点リーダー(‥)と三点リーダー(…)などがある。
リーダーの意味として以下の4つがあげられる。1.時間の経過、静寂 例)「なるほど。……そうなのか。」2.余韻、感情 例)そして、山へ向かった……3.省略 例)書籍には「彼女が……考えた」とある。4.記号 例)バナナ………2本/リンゴ………5個/ブドウ………1房
記号「…」を見て、記号の中に隠されている見えない意味を頭の中で想像させることで、余韻をつくりだしている。
□行間 「行間を読む」、という言葉があるが、この意味は「文章には直接表現されていない筆者の真意をくみとること」である。古くからの詩文や現代の小説等、様々な書物の行間を読むことで、見えない部分を想像し、余韻に浸ることを楽しんできた。 また、数年前から流行しているブログでも、行間の余韻を意図的に作り出している人を見かける。通常、文章を書く上では 1行で足りる改行を、3~4行、中には 10行以上の空白の行を作った後に、続きの文章を書きはじめることがある。改行なしの文章では、画面が字で埋め尽くされて読みづらいために改行をする、という理由もあるが、過度の改行の理由として、読者が画面をスクロールしている間に、頭の中で様々な光景を想像させたり、続きの文章に対する期待感を高めたりする効果もあると考えられる。
このように、現代でも使用される「…」や行間も、言葉に表されているものの中から見えないものを感じとるという点で俳句と共通しているため、「詩文の余韻」であると言える。
以上より、「詩文の余韻」とは、見えないものを想像し、感じ取ることによって、文字から得る情報以上の感情や情景を味わうことである。
* Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/
第 2章 背景
24余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-2 afterglow( 英語での余韻 )
前頁までは日本語による「余韻」の意味の概要を見てきた。本頁では、英語による「余韻」の意味について取り上げる。**
afterglow…1. 残光 2. 快い思い出reverberation…1. 反響・反射 2. 影響・波紋 resonance…1. 反響・心に響くこと 2.(芸術作品などの)印象を喚起する力 3. 共鳴lingering sound (memory) …lingering:長引く、名残惜しそうなbask in the afterglow of ~:~の余韻に浸る(bask:1.日向ぼっこをする 2.浸る、浴する )
日本語と同様に、同じ余韻という言葉でも数種類の英単語が出てきた。音の余韻と風情の余韻は英単語でも存在するが、詩文の余韻に関する単語がないため、詩文の余韻は日本独特のものであることがわかる。 また、日本語では「残響」と「風情」が同じ「余韻」という言葉で語られるものの、英語では「残光」や「日向ぼっこ」と「快い思い出」が同じ「afterglow」という言葉で語られている。音の響きに風情を感じるか、或るいは光に風情を感じるか、という国別の特徴が出ていると考えられる。
以上が余韻の概要である。 余韻という1つの言葉の中に3つの意味が含まれているが、全体を通してみた際に、余韻とは「心に響くもの」であること、そして「見えないもの・存在しないものを想像し味わうこと」という点で共通していると考えられる。
*ジーニアス英和&和英辞典
大修館書店 [2006]
*OXFORD 現代英英辞典
旺文社 [2005]
第 2章 背景
25余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 風情の余韻
本研究では、複数ある余韻の意味の中でも、「風情の余韻」を扱う。したがって、本研究を行う前に「風情の余韻」に関する事例を、人・行為・空間の3項目から取り上げる。
2-1 余韻のある人 初めに、人がもたらす余韻について取り上げる。
図2.2.1 工藤美代子著「余韻のある生き方」
現在、情報化社会ではあるものの、最終的には人と人の繋がりが社会を生き抜いていくためには重要であるため、多くの人脈を作りだすことができる「余韻のある人」が、現代社会を生き抜いていく人である、と著者はいう。
余韻のある人の例として、初めに、言葉遣いや礼儀作法が正しいことが綺麗であることが条件となる。言い換えれば、言葉遣いが悪く、礼儀作法が身についていない人は「余韻のない人」という印象を相手に与え、一度きりの縁になってしまう可能性が高い。 そして、相手に余韻をもたらすためには、「詩文の余韻」と同じように、相手の発言や行動からはわからない部分(詩文の余韻では、俳句の省略部分)を想像し、相手が喜ぶと思われることを見つけ出す。そして、見つけ出したことを実行する力が必要となってくる。それは、必ずしも行為でなくても良い。別れ際に、定型的な別れの挨拶をするのではなく、「今日はお会いできて嬉しかったです。」のような些細な一言をつけるだけでも、相手に余韻をもたらす効果はある。
このように、自分自身の言動と、相手の見えない部分に注意を向けることのできる人、つまり相手に余韻をもたらすことのできる人が「余韻のある人」と言える。
*25 工藤美代子:余韻のある生
き方 PHP新書 [2009]
その人のことを思い出すと、なんとなく笑みがこぼれる。そして、できることなら、またいつか会いたいと願う。ほんの数時間のお付き合いでも、こころのそこにほのかで温かいイメージが残って、優しい気持ちになれる。 そういう人は余韻のある人と言えるでしょう。
第 2章 背景
26余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2-2 おもてなしの余韻
次に、行為がもたらす余韻をとりあげる。
これは、一般の人がグルメサイト内で書いたレストランの口コミ記事である。風情の余韻は様々なシチュエーションで浸ることができ、その中の1つとして、「おもてなし」を受けたときに浸る余韻がある。
おもてなしの語源は2つあると言われている。 1つ目は「御持て成し」と表記し、動詞「持て成す」の名詞形「持て成し」に接頭語の御をつけたものである。持て成しには、客に対する扱い・客に出す御馳走という意味があり、こちらのおもてなしでは「モノ」をもってお客様に対応することをいう。 2つ目は「表なし」と表記し、表には見えない「コト」という意味である。つまり、瞬時に消えてしまう「言葉」や「心」をもってお客様に対応することをいう。 このように、おもてなしとは、目に見える「モノ」と、目には見えない「コト」の二方向から相手と向き合うことを意味する。*27
次に、おもてなしの例として、茶道と懐石料理をあげる。 茶道では、お客様をおもてなしする際に、季節感のある生花、お迎えするお客様に合わせた掛け軸、絵、茶器、御香など、具体的に身体に感じ、目に見える「モノ」でお客様と向き合う。そして、「コト」のおもてなしとして、「結構なお手前で」などの茶道独自の言葉や仕草があり、モノとコトを網羅することで、日本独特の茶の湯の風情が生まれるのである。
懐石料理では、おもてなしの「モノ」として、特に器が重要であり、お客様に合った器、或いは料理にふさわしい器をじっくり吟味することで、相手をもてなす気持ちを表している。そして、接客時には、お客様の状態を素早く察知して事細かな手配り、身配りをすることで、懐石料理を味わっててもらうための「コト」のおもてなしをしている。*28
このように、相手のことをモノ・コトから十分に思いやることで、相手に快い気持ちをもたらし、自然と余韻が生まれる。つまり、目に見えるものと見えないものをもって相手と向き合う行為が「余韻をもたらす行為」だといえる。
*:26 食べログ「casa M 」口コミ・
評価
http://r.tabelog.com/osaka/
A2702/A270201/27041692/
dtlrvwlst/3167733/
*27 接客マナーは心の掟
http://projectishizue.blog60.
fc2.com/blog-entry-154.html
*28 京都吉兆 おもてなしと
文化
http://www.kitcho.com/kyoto/
service/index.html
title「心に余韻を残すおもてなし、心地よい空間を演出するビストロ」こちらのスタッフの方は本当にプロ意識の高い方ですね。キビキビと動きながらも、決してこちらに居心地の悪さを感じさせません。驕らず、手厚過ぎず、そしてココが重要、あくまで「さりげなく」。こちらの心地よい加減を心得ていらっしゃるおもてなし。お店を出た後も心に余韻が残りました。 *26
第 2章 背景
27余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2-3 余韻をつくる空間
最後に、空間がもたらす余韻を取り上げる。
2-3-1 テーマパーク
テーマパークとは、特定のテーマに基づいて施設・イベント・景観などが総合的に構成され、演出されたレジャーランドである。ここでは、ディズニーランドを例として挙げる。
事例として、パーク出口から JR 舞浜駅までのペデストリアンデッキでの BGMによる演出がある。 駅からパークに向かう際、最初は「くまのプーさん」などゆったりとしたテンポの曲を流す。しばらくして徐々にゲートに近づくと「ミッキーマウス・マーチ」などのテンポの良い曲に変化する。一方、帰宅者が増える夕方以降になると「星に願いを」「ベナロッテ」などのテンポの遅い、しっとりとしたロマンチックな旋律に変化する。ストーリーに引き込むための BGMを効果的に使い分けることで、ゆったりと余韻に浸ることのできる空間を演出している。
また、山口有次の著書 *では、それぞれのアトラクションの距離感もアトラクションが終わったあとの余韻を楽しむために重要であると語っている。
以上のように余韻を作り出す空間が、テーマパークにおいても見られる。
* 「テーマパーク」
三省堂:大辞林 [2006]
*29 山口有次:ディズニーラ
ンドの空間科学 学分社 [2009]
ディズニーランドの大きな魅力のひとつがアトラクションにあることは間違いない。それぞれのアトラクションの出来栄えは高水準と言える。しかし、そのアトラクションどうしの距離感を間違えると、せっかくのアトラクションが十分に活かされない。特に大規模なアトラクションどうしは、その距離間を適正に保つことを強く意識しなければならない。 アトラクションどうしの距離感が近すぎると、ひとつのアトラクションを楽しんだ余韻に浸ることができない。次のアトラクションに向かって期待感を高めるゆとりもない。遠すぎると間延びする。アトラクションどうしが適度な距離感を保つことで、余韻を楽しみ、適度なゆとりが期待感を高める効果を発揮する。アトラクションどうしの距離が近すぎる場合にはあえて回り道させることも必要となる。
第 2章 背景
28余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2-3-2 美術館
続いて、余韻をつくる空間の例として美術館をとりあげる。 ここでは、谷口吉生設計の「法隆寺宝物館」を例として挙げる。
この美術館では、アプローチ空間を囲むように池を配置しており [ 図 2.3.1]、鑑賞後にはゆったりとした大きなソファのみが置かれた空間が用意されている [ 図2.3.2]
アプローチでも、鑑賞が終わった後も、同じ風景を見せることで、ストーリーを振り返る時間を設け、終わった後に残る風情を感じさせようとしていると考えられる。また、大きなソファのある空間では、鑑賞が終わった後にゆっくりと余韻に浸ることができる。
図 2.3.1 アプローチ空間 ( 法隆寺宝物館 )
図 2.3.3 美術館内のソファ ( 法隆寺宝物館 )
以上のように、余韻を作り出す空間は、様々な施設において見られる。 次項から、本研究で扱う興行施設に着目してゆく。
第 2章 背景
29余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3 興行における余韻に関して
本研究では、「風情の余韻」の中でも、演劇やコンサートなどの興行後に味わう余韻に着目する。
3-1 興行施設の現状
3-1-1 ストレス社会
現代社会において、日常生活や周囲の人間関係に対してストレスを感じている人は 82%に上るという調査結果がでていることからもわかるように、多くの日本人がストレスを感じながら生活をしているといえる。*30
図 3.1.1 日頃のストレスに関する調査
興行 :観客を集め、料金を取っ
て演劇・音曲・映画・相撲・見
世物などを催すこと。また、そ
の催し物。( 小学館:デジタル
大辞泉 [2010])
*30 ストレスに関するアンケー
ト : NTT ナビスペース株式会社
[2009]
http://www.research.nttnavi.
co.jp/304z/905stress.html
第 2章 背景
30余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-1-2 余暇時間の増加
ストレスを感じている人が多い現状であるが、ストレスを意識的に解消しようと行動をしている人も多く存在する。その方法の1つとして、余暇時間の有効活用があげられる。図1.5.1.2をみると、日本人の余暇時間が平成18年から増加している。余暇時間が増加することで、各自に適した時間の使い方の選択肢が増え、ストレスを減少させるためにも効果があると考えられる。*31
図 3.1.2 余暇時間の変遷
*31 レジャー白書 2010 P7
公益財団法人日本生産性本部
第 2章 背景
31余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-1-3 余暇活動を趣味にあてている人
レジャー白書によると、増加している余暇時間のうち、趣味に時間を充てたいと思う人が約 3分の1であった。*32 表 3.1.1 は、余暇活動の趣味・創作部門の実態を表すものである。黄線で囲った興行項目は、他項目と比べて比較的高い数値であることがわかる。また、興行以外の項目は自宅でも可能な趣味が多いが、興行に関しては項目ごとに特化した興行施設が必要である。*33
表 3.1.1 余暇活動への参加・消費の実態(平成 21年)
*32 レジャー白書 2010
P137 公益財団法人日本生産性
本部
*33 レジャー白書 2010
P15 公益財団法人日本生産性
本部
第 2章 背景
32余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-1-4 リバイバル需要・潜在需要
高齢化社会となり、レジャーの主役も高齢者層にシフトする。その際、高齢者自身が過去に行っていた趣味を、今もう一度行わせようとする「リバイバル需要」が各業界から注目されている。これらの人々は、既にその趣味の楽しさを知っているため、新規層を獲得するよりも容易に需要を掘り起こすことができる、という点で関心が高まっている。*34
この需要の度合いを見るのにふさわしいデータが、表 3.1.2 の潜在需要の表である。潜在需要とは、今現在は参加できないが、今後参加したいニーズを表しており、潜在需要が高いものはこれからの伸びが十分期待できる項目である。*35
データを見ると、興行の潜在需要が高いことが読み取れる。中でも、今回研究でとりあげる観劇に着目すると、男性は 40代から上位 10位内に入り、女性は 30代から年代が上がるごとに需要が高まっていくことがわかる。このことから、超高齢社会になる日本において、高齢層の潜在需要が高い観劇施設である劇場の需要が高まると考えられえる。
表 3.1.2 余暇活動潜在需要上位 10種目
*34 レジャー白書 2010
P40 公益財団法人日本生産性
本部
*35 レジャー白書 2010
P13 公益財団法人日本生産性
本部
第 2章 背景
33余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-1-5 劇場の現状
本年 2011 年から 2012 年にかけて、新しく開業する劇場や、老朽化対策・設備の更新に伴い、長期改装工事を行っている大劇場が多く見受けられる。
以下、新築・改築・改修工事を行う劇場を一覧で示す。
表3.1.3 新築・改築・改修工事を行う劇場
本項をまとめると、・興行を趣味としている人が多い・現在は興行を趣味にしていなくても、今後趣味にしたいと思う人が多い・演劇に関するリバイバル需要が期待できる・ 新規劇場開業や、既存の劇場のリニューアル工事が盛んにおこなわれている
以上のことより、今後も劇場に対する需要が高いと考えられ、本研究では、興行の中の劇場を取り上げる。
第 2章 背景
34余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-2 興行前の期待感の演出
興行施設では、観客により公演を楽しんでもらうために、アプローチ空間において期待感を高めるような演出をしているところがある。また、既往研究にも記載した通り、アプローチ空間の研究、及び期待感の研究は数多くなされている。本項では既往研究を踏まえながら、興行前の期待感を演出する工夫について取り上げる。
■ 宝塚大劇場 アプローチ空間の演出に力を入れている例として、宝塚大劇場があげられる。宝塚歌劇団は、豪華絢爛な劇団として有名であり、本劇場では、劇場外及び劇場内のアプローチ空間でも華やかさを出すことによって、期待感を生み出す工夫をしている。
図 3.2.1 花のみち
図 3.2.2 アプローチ空間から見える劇場
図 3.2.3 オスカルとアンドレ ブロンズ像
図 3.2.4 宝塚大劇場ゲート
アプローチ:建築用語。道路や
広場から個々の建物へいたる取
り付け道路をいうが、造園の場
合、敷地内の主要な建物や点景
物に近づき、入るための寄り付
き道、入り口、あるいはそれら
が秩序をもって並ぶ構成軸をた
どっていう方法をさす。日本庭
園においては空間の移り変わり
を直接見せることなく、展開構
成の約束事を示す装置やテクス
チュアの違いなどにより、間接
的なアプローチの演出をはか
る。(ブリタニカ百科事典)
期待感:期待できるような感覚
や予感のこと、あるいは良い結
果などになりそうだという期待
のこと。(実用日本語表現辞典)
*36 宝 塚 観光ガイド http://
www.kanko-takarazuka. jp/
spot/amusement.html
*37 古谷隆祥 紙野桂人:公共
建築のアプローチ空間における
遷移的特質に関する基礎的研究
~ザ・シンフォニーホ-ルを事
例にして~ : 日本建築学会大会
学術講演梗概集 ( 近畿 )[1996]
初めに、劇場へ向かう途中に、「花のみち」という宝塚のイメージを象徴するような街路がある[ 図 3.2.1]。この道の両側に車道があり、一段高くなった中央部の歩道は、まさに宝塚の舞台に通じる花道と呼ぶにふさわしい道である。*2沿道には喫茶店や土産物店が並んでいるため、観劇前に立ち寄る観客も多い。
アプローチ空間の途中で、劇場の上部が見えてくる[図3.2.2]。古谷の研究 *3によると、アプローチ空間の中でも 3段階で捉えることができ、その中の1つである「目的の建築が見える空間」がアプローチ空間として最も重要であると述べている。
その重要なアプローチ空間の途中に設置してあるものが、ミュージカル「ベルサイユの薔薇」をモチーフにしたブロンズ像である [ 図 3.2.3]。宝塚歌劇団の代表作である作品の像であり、宝塚ファンの高揚感を高める。
そして、劇場直前にはゲート [ 図 3.2.4] があり、いよいよ劇場に足を踏み入れることとなる。劇場外部のアプローチ空間では、以上の工夫をすることにより、期待感を高めようとしている。
第 2章 背景
35余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
図3.2.5 ホール
図 3.2.6 大劇場ロビー
図 3.2.7 ロビーにあるグランドピアノ
既往研究を見ると、興行前に関する調査・研究は多くなされており、また、実際の施設においても、期待感を高めるための工夫はなされている。しかし、興行後の余韻に関する調査・研究は行われていない。 次項では、余韻を意識的に作りだしている数少ない例の中から2公演を取り上げることとする。
また、建物内に入ってから客席に向かうまでのアプローチ空間にも、工夫がみられる。 長く続くホール [ 図 3.2.5] には、演目にちなんだメニューを出すレストラン、宝塚歌劇団にちなんだお菓子やグッズ販売などの施設が立ち並ぶ。 ロビー [ 図 3.2.6] では、豪華な活け花、演目のポスター、グランドピアノ [ 図 3.2.7] 等で更なる気分の高揚を促し、観客は赤絨毯の大階段を通って客席へ足を運ぶ。
以上のように、宝塚劇場では、外部空間から内部空間まで、期待感を最大限に演出できるような工夫がなされている。
第 2章 背景
36余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-3 興行後の余韻の演出
日本の興行には、相撲や歌舞伎のような伝統的なものから、サッカー観戦、ミュージカル、コンサート等の海外で盛んなものまで、幅広い種類がある。これら興行は、「風情の余韻」に浸ることが可能な対象であり、例えばワールドカップ観戦後のように、熱気や興奮が街にまで伝わることもしばしばある。
興行終了後に関して、日本と海外を比較すると、日本では、公演終了後、演じる側は直接楽屋へ、観客は足早に出口へ向かう傾向が強い。しかし、海外では、公演終了後にも観客を楽しませる工夫をしている公演が多く見受けられる。
ここでは、公演後の工夫がなされている例として、日本で公演されたことのあるBLUE MANと blast をとりあげる。
第 2章 背景
37余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-3-1 BLUE MAN
図3.3.1 BLUEMAN広告
言葉を交わさずとも絶妙なコミュニケーションをとり、好奇心たっぷりに振る舞う、青い 3人組「ブルーマングループ」。 1980 年代後半に、ニューヨークの路上で生まれた彼らのパフォーマンス・ショーは、世界 7都市で公演中であり、東京公演では、世界初の専用劇場を創設。 オーディエンスとともに作り出すステージ。互換に驚きと揺さぶりとインスピレーションを与え続ける 100 分。(BLUE MANホームページより *38)
BLUE MAN の最大の特徴は、観客一体型の公演であることだ。3人の BLUE MAN と数百人の観客が一体となって、普段味わうことのできない世界を思う存分に楽しむことができる。公演終了後、気分が高揚した状態でロビーに出ることになるが、本公演では、さらなる高揚感を作りだす工夫をしており、観客が劇場を出るときの余韻を高める効果を狙っている。
・ブルーマンショップとブルーマンカフェ 観客は終演後にグッズを買うことで公演内容を振返ったり、一緒に来た人と ビールを飲みながら感想を言い合ったりする機会が設けられている。このように、 空間によって余韻を作り出している。
・BLUE MANとのミート&グリーティング 今までステージ上にいた3人がロビー現れ、更に至近距離にいることによって 高揚感がより高まる。写真も一緒に撮ることができ、記録として持ち帰ること で、いつでもこの日の様子を思い出すことができる。これはブルーマンという人 によるおもてなしによって余韻を作り出している。
図33.2 ショップ 図 3.3.3 カフェ 図 3.3.4 ブルーマンと写真を撮る観客
*38 BLUE MAN HP
http://blueman.jp/index.html
第 2章 背景
38余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-3-2 blast
図 3.3.5 blast 広告
マーチングバンドやドラムのエンターテインメント性を高めた、視覚と聴覚を刺激する迫力のステージ! 『ブラスト !』ではパフォーマーたちが金管楽器とパーカッションを駆使し、常識では考えられない超一流の動きを繰り広げる。彼らの奏でる様々なジャンルの音楽は巨大なセットと鮮やかな照明演出があわさり、最高のエンターテインメントを生み出す!本編に加え、『ブラスト !』名物となった、休憩時間のパフォーマンス、終演後のキャストとのミート&グリート!常に新しい感動がここにあるノンストップの120分!(blast ホームページより *39)
blast では、休憩時間及び終演後に観客を楽しませる仕掛けがある。 初めて blast を観に来た観客は、休憩時・終演後に、公演内容の余韻に浸りながら、或いは公演とは関係のないことを考えながら、ロビーに出てくる。すると突然騒ぎ声が耳に入り、辺りを見回すと、さっきまでステージにいた出演者がロビーにやってきたことに気が付く。そして、彼らは簡易な椅子とバチを使って、公演内容にも劣らないパフォーマンスを突如始めるのである。 このロビーパフォーマンスは、観客に対して、驚き・意外性という点から衝撃を与え、公演時よりも至近距離で生の音楽を表現することで、視覚と聴覚から頭の中に強い記憶を残し、更に公演以外の +αのパフォーマンスを見れたという特別感を与えることで、余韻を引き立てている効果がある。
図33.6 ロビーでの公演風景 図 3.3.7 ロビーでの公演風景
以上 2つの事例より、2 章第 2項で取り上げた人・行為・空間の他に驚きや特別感を与えることで、興行後に強い余韻をもたらすことが可能であることがわかる。そして、日本でもこのような余韻を高める工夫を積極的に行って欲しいという思いを持ち、本研究を進めることとする。
*39 blast HP
http://www.blast-tour.jp/
39
第3章
基礎調査
1.調査概要
2.調査方法
3.調査結果
4.分析
5.考察
第3章 基礎調査
40余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
余韻体験に基づくパラメータ抽出調査
1 調査概要
■ 調査目的
「余韻に浸った」という体験談を元に、「余韻の体験」に影響を与ていると思われる要素(演目のようなコンテンツそのものだけでなく、余韻に浸る状況や、余韻に浸りやすい空間など)を明らかにするために、アンケートから、それらの要素をパラメータとして抽出することを目的とする。
■ 調査概要
劇場における終演後の余韻に関するアンケート調査を行うための基礎調査として、普段余韻に浸る際の状況を把握し、余韻に影響を与えるパラメータを見つけ出すための調査を行う。
第3章 基礎調査
41余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 調査方法
■ 調査日 2011 年 7月 3日~ 8日
■ 調査人数 32名
■ 調査方法 インターネット上におけるアンケート調査
■ 調査内容 余韻に浸ったときの体験に関する4つの質問項目に、自由記述で回答。
□ 質問内容
①どのような行動のあとに余韻に浸りましたか。 ( 例:コンサート、舞台、映画、読書、ディズニーランド、デート、飲み会、TV ドラマ、旅行、等 )
②その時、誰と一緒にいましたか。
③その余韻は、いつからいつまで続きましたか。 ( 例:コンサート終了後から駅につくまで、帰宅後に公演パンフレットや友達と 撮った写真などを見ているときまで、等 )
④どのように余韻に浸りましたか。 (例:楽しかった思い出を振り返る、作品の世界に入り込んでぼーっとしてしま う、等)
第3章 基礎調査
42余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3 結果
自由記述回答の内容をそれぞれまとめた結果が以下のとおりである。
①どのような行動のあとに余韻に浸りましたか。 表 3.3.1 余韻に浸る時の行動
②その時、誰と一緒にいましたか。 表 3.3.2 余韻に浸る時の同伴者
③その余韻は、いつからいつまで続きましたか。 表 3.3.3 余韻に浸る時の時間
4332222221111111111
1 4 1 07 4
1 1 211
6443333111111
第3章 基礎調査
43余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
④どのように余韻に浸りましたか。 表 3.3.4 余韻に浸る時の浸り方
6332222222211111111111111
321111
第3章 基礎調査
44余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
4 分析
結果を項目ごとに分析し、パラメータを抽出する。
①余韻に浸る時の行動 回答結果を大きく分類すると以下の通りになる。また、( )は余韻に影響を与えていると思われる要素である。
1.興行やコンテンツを観た後(内容) 2.発表・企画等、何かを成し遂げた後(達成感) 3.どこかに行った後(場所) 4.大切な人と一緒にいた後(同伴者) 5.満足した後(満足度)
以上より、余韻に影響を与える要素として「内容」「場所」「同伴者」「主観的要素(達成感・満足度)」が挙げられる。
②余韻に浸る時の同伴者 人数を比較してみると、1人で浸る時と誰かと共有して浸る時はどちらもほぼ同程度の割合であるが、2人以上で比較した際は、大勢の人と一緒にいる時の方が余韻に浸りやすい。 また、2人以上で余韻に浸った際の属性を見ると、仲間で一緒にいるときが一番余韻に浸りやすい。一方で、同じ場に一緒にいる人ではなく、twitter で見知らぬ人と共に余韻に浸っている人もいる。
以上より、余韻に影響を与える要素として「人数や属性」が考えられる。
③余韻に浸る時の時間 回答結果を大きく分類すると以下の通りになる。
1.事を終えてから、すぐ浸る余韻 2.事を終えてから、家につくまでに浸る余韻 3.事を終えてから、就寝するとき、或いは翌朝まで続く余韻 4. 事を終えてから、数日経った後に浸る余韻
以上より、余韻に影響を与える要素として「終了時刻からの経過時間」が考えられる。
第3章 基礎調査
45余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
④余韻の浸り方 回答結果を大きく分類すると以下の通りになる。
1.物(写真や音楽等)を使って浸る余韻(動作) 2.会話をすることで浸る余韻(会話) 3.思考しながら浸る余韻(思考) 以上より、余韻に影響を与える要素として「動作」「会話」「思考」の「行為」があると考えられる。
第3章 基礎調査
46余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
5 考察
前項の分析を通し、余韻体験を元にして、以下の6つを余韻に影響を与えるパラメータとして抽出する。
1.内容(観劇・旅行等)
2.主観的要素(満足度・達成感等)
3.場所(旅行先・娯楽施設等)
4.同伴者(人数・属性等)
5.終了後からの経過時間(終了直後・数日後等)
6.余韻に浸る行為(動作・会話等)
本調査では、パラメータ1の行動内容を「観劇」に焦点を当て、調査を行う。そして、他パラメータを参考にし、アンケートを作成し調査することとする。
47
第 4章
本調査
1.調査概要
2.調査方法
3.調査結果
第4章 本調査
48余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
劇場における終演後の余韻に関するアンケート調査
1 調査概要
■調査目的
前章では、余韻に浸る体験を元に、余韻に影響を与えるパラメータを抽出した。本章では、実際に劇場で観劇された方を対象に、公演終了直後の余韻度の推移、空間印象評価、行為を調査し、パラメータが余韻に与える影響を明らかにすることを目的とする。
■調査概要 劇場の規模・築年数・ロビーの形状より調査場所の候補地を決定し、街頭調査をアンケートにて行う。アンケートでは、観劇終了直後から劇場出口を出るまでの指定した 4か所にて、余韻度・行為・空間印象を、観劇者に評価してもらう。集計後、余韻度と他要素を比較する。
余韻度の定義:頭の中で考えて
いる全てのことを 100%とした
とき、本公演に関して考えてい
る割合をパーセント表記し、そ
の数値を余韻度とする。
( 第1章1)
第4章 本調査
49余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 調査方法
■ 実施日2011 年 10 月 1日 ( 土 ) ~ 17 日(月)
■ 調査地 1.青山劇場……公演 舞台「髑髏城の七人」 2.青山円形劇場……公演名 舞台「少年探偵団」 3.天王洲銀河劇場……公演名 舞台「スマートモテリーマン講座」 (本頁以降、青山円形劇場を「円形劇場」、天王洲銀河劇場を「銀河劇場」と記す。)
以下の3点を考慮して調査場所の選定を行った。
① 開館年 時代と共に建築様式の変遷があるように、劇場空間の様式も時代によって変わると考えられる。また、老朽化等も空間印象に影響を与えると考え、1980 年代の劇場(1・2)、2000 年代の劇場 ( 3) を対象とした。
② 座席数 劇場の規模により、公演終了後から劇場を退出するまでの所要時間や混み具合等に影響を与えると考え、大劇場 ( 1)、中劇場(3)、小劇場(2)を対象とした。(日本演劇協会監修発行の「演劇年鑑」には小劇場(499席以下)、中劇場(500~899席)、大劇場(900席以上)とあるが、明確な定義はないと言われている。*40)
③ ロビーの形状 実川らによる研究「空間構成による類型化―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究―」*41では、アプローチ空間の構成が 16 タイプに類型化された。今回は、実川らの研究で述べられている構成要素のうち、「エントランスロビーとホワイエが同じ階にあるのか」の要素が余韻の調査を行う上で結果に影響を与えると考え、エントランスロビーとホワイエが同じ階である劇場(1)と異なる階にある劇場(2・3)を対象とした。
以上をまとめると以下の表となる。表 4.2.1 調査地一覧
*40 日本演劇協会監修 演劇
年鑑 [2010]
*41 実川俊之:空間構成によ
る類型化―劇場・ホールのアプ
ローチ・ホワイエ空間に関する
研究―[2000]
09 6 0 07 2 0 0
第4章 本調査
50余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 劇場平面図
◇ 青山劇場
◇ 青山円形劇場
◇ 天王洲銀河劇場
A客席
B通路
B通路
C階段C
階段D
ロビー
A客席
1階席2階席
出口
C階段
C階段
0 10(m)
1 階 3階こどもの樹(オブジェ)
青山劇場入口
10(m)
B通路
B通路
Dアトリウム
Cロビー
A客席
出口A
BC D
E
FGH
010(m)0
1 階席 2階席
3階席
2階席へ
1階席へ
A客席
A客席
A客席
Cロビー
D大階段
B階段
B階段
出口
出口へ
10(m)0
第4章 本調査
51余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■調査地の写真
図 4.1.1 青山劇場 客席 図 4.1.2 青山劇場 通路
図 4.1.3 青山劇場 階段 図 4.1.4 青山劇場 ロビー
図 4.1.5 青山円形劇場 客席 図 4.1.6 青山円形劇場 ロビー
図 4.1.7 青山円形劇場 アトリウム 図 4.1.8 青山円形劇場 出口
図 4.1.9 天王洲銀河劇場 客席 図 4.1.10 天王洲銀河劇場 階段
図 4.1.11 天王洲銀河劇場 ロビー 図 4.1.12 天王洲銀銀河劇場 大階段
第4章 本調査
52余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ アンケート
□ 配布・回収方法 アンケート用紙は、劇場入り口付近にて調査内容の説明を行い、開演前に配布する。公演終了後、A~ D各場所において、余韻度・行為・空間印象調査に回答してもらい、回答終了後は出口で回収を行う。
□ 質問項目 ◇ 性別 ◇ 年代 ◇ 本公演の満足度 ◇ 本劇場に来たことのある回数
◇ 本日座った座席位置と出口まで歩いた経路 各劇場の図面を載せ、おおよその座席場所を○で囲んでもらい、劇場出口まで の歩いた経路を線で書いてもらう。また、図面内には劇場ごとに A~ Dの4箇 所を指定し、記載しておく。
◇ A ~ D各場所における余韻度 各場所において、余韻度を尋ねる。ただし、余韻度という言葉は使わず「各場 所において、頭の中で考えている事の全体を 100%とした場合、本公演に関し て考えている割合は何%になりますか。」と尋ねることとする。また、可能であ れば、本公演以外に考えていた内容について記載してもらう。
◇ A ~ D各場所における行為 各場所における行為を選択式(複数回答可能)で回答してもらう。選択肢は、 小塚による「劇場における顧問スペースに関する研究 鑑賞者の滞在行動に着目 して」内に記載されているコモンスペースにおける滞在行為の種類を参考に、余 韻度に影響を与えると思われる行為を抽出し、以下の 9項目とした。
1.話す 2.ベンチに座る 3.グッズを買う 4.混雑して前に進めない 5.公演に関する電話・メール 6.公演以外に関する電話・メール 7.感想等をネットに書き込む 8.公演以外の事柄で携帯を使用する 9.その他
*42 小塚智世 加藤彰一
劇場におけるコモンスペースに
関する研究 鑑賞者の滞在行動
に着目して
日本建築学会大会学術講演梗概
集 ( 東北 ) 125-126 [2009]
第4章 本調査
53余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
◇ A ~ D各場所における空間印象評価 各場所における空間印象評価を SD法*を用いて回答してもらう。選択肢は、 篠木らによる「施設利用者の劇場・ホールに対する印象評価に関する研究―一般 開放性を重視した劇場・ホールの利用者空間に関する研究」*4内において、建 物に対する印象を尋ねているときの形容詞の中から、回答数上位の形容詞を参考 に、以下の 8項目とした。
明るい―暗い 開放的な―圧迫感のある 広い―狭い 親しみやすい―よそよそしい 綺麗な―汚い 現代的な―古風な にぎやかな―落ち着いた 上品な―下品な
◇ 終演時刻、及び劇場の出口から外に出た時刻 分析時、劇場出口から出た時刻から終演時刻を引くことによって、公演終了後 から劇場を出るまでの所要時間を算出する。
次頁にて、配布したアンケートのうち、青山円形劇場版を搭載する。
* SD 法:意味差判別法、セマ
ンティック・ディファレンシャ
ル法。早い-遅い、明るい-暗
い、重い-軽いなどの対立する
形容詞の対を用いて、商品、銘
柄などの与える感情的なイメー
ジを、5段階あるいは 7段階の
尺度を用い、判定する方法。
*43 篠木正義 浦部智義:施設
利用者の劇場・ホールに対する
印象評価に関する研究―一般開
放性を重視した劇場・ホールの
利用者空間に関する研究日本
建築学会大会学術講演梗概集
P181-182[2008]
第4章 本調査
54余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
A3 ではさむ
第4章 本調査
55余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3 調査結果
■ アンケート回収率
□ 青山劇場 10月1日(土)昼公演 7日(金)夜公演 8日(土)昼公演 10日(祝)昼公演 配布アンケート部数 38部 / 回収アンケート部数 31部
□ 青山円形劇場 10月 7日(金)夜公演 8 日(土)昼公演 配布アンケート部数 31部 / 回収アンケート部数 23部
□ 天王洲銀河劇場 10月 14日(金)夜公演 16 日(日)昼公演 17 日(月)夜公演 配布アンケート部数 31部 / 回収アンケート部数 26部
□ 総計配布アンケート総数 100 部 / 回収アンケート総数 80部 回収率 80%
第4章 本調査
56余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 性別 以下に、回答者の性別毎の人数の比率を示す。 本調査においては、演劇という内容のため、女性の比率が高かった。
男性
5%
女性
95%
性別(3劇場合計)
男性 女性
男性
10%
女性
90%
性別(青山劇場)
男性 女性
男性
0%
女性
100%
性別(円形劇場)
男性 女性
男性
4%
女性
96%
性別(銀河劇場)
男性 女性
図4.3.1性別毎の回答者人数比(全体)
3 0 1 42 8 2 3 2 5 7 63 1 2 3 2 6 8 0
表 4.3.1 性別毎の人数データ
図4.3.2 性別毎の回答者人数比(青山劇場)
図4.3.3性別毎の回答者人数比(円形劇場)
図4.3.4性別毎の回答者人数比(銀河劇場)
第4章 本調査
57余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 年代 以下に、回答者の年代毎の人数の比率を示す。 20代、30代が多く見られ、公演内容によって年代にばらつきがみられた。
20歳以
下
3%
20代
23%
30代
52%
40代
19%
50代
3%
20歳以下
20代30代40代50代
20歳
以下
18%
20代
52%
30代
18%
40代
4%
50代
4%
60代
4%
20歳以下
20代30代40代50代60代
20歳以
下
4%
20代
61%
30代
27%
40代
8%
20歳以下
20代30代40代
20歳以
下 7%
20代
44%
30代
34%
40代
11%
50代
3%
60代
1%
20歳以下
20代
30代
40代
50代
60代
70代以上
図4.3.5 年代毎の回答者人数比(全体)
図4.3.6年代毎の回答者人数比(青山劇場)
図4.3.7年代毎の回答者人数比(円形劇場)
図4.3.8年代毎の回答者人数比(銀河劇場)
表 4.3.2 年代毎の人数データ
1 4 1 67 1 2 1 6 3 5
1 6 4 7 2 76 1 2 91 1 0 20 1 0 10 0 0 0
3 1 2 3 2 6 8 0
第4章 本調査
58余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 満足度 以下に、回答された満足度の点数の比率を示す。 満足度は、100点、90点が多くみられ、公演内容によってばらつきがみられた。円形劇場では、100点、90点の合計数が約半数を占めるのに対し、他の2つの劇場では、75%と高い満足度が得られていることがわかる。
80点
15%
90点
25%100点
60%
60点80点90点100点
70点
31%
80点
19%
90点
25%
100点
25%60点70点80点90点100点
80点
16%
90点
21%100点
63%
60点80点90点100点
70点
9%
80点
16%
90点
24%
100点
51%
60点70点80点90点100点
図4.3.9 満足度の点数比(全体)
図4.3.10満足度の点数比(青山劇場)
図4.3.11満足度の点数比(円形劇場)
図4.3.12満足度の点数比(銀河劇場)
表 4.3.3 満足度の点数データ
0 0 0 00 5 0 53 3 3 95 4 4 1 3
1 2 4 1 2 2 82 0 1 6 1 9 5 51 1 7 7 2 5
第4章 本調査
59余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 同伴者数 以下に、回答者毎の同伴者数の比率を示す。 どの劇場においても、同伴者数が1人の場合が8割近くを占めていた。
図4.3.13同伴者数の人数比(全体)
0人
13%
1人
77%
2人
3%
3人
7%
0人1人2人3人
0人
17%
1人
83%
0人1人
0人
12%
1人
72%
3人
16%
0人1人3人
図4.3.14同伴者数の人数比(青山劇場)
図4.3.15同伴者数の人数比(円形劇場)
0人
14%
1人
77%
2人
1% 3人
8%
0人1人2人3人
図4.3.16同伴者数の人数比(銀河劇場)
表 4.3.4 同伴者数の人数データ
4 4 3 1 12 3 1 9 1 8 6 01 0 0 12 0 4 6
3 0 2 3 2 5 7 81 0 1 2
第4章 本調査
60余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■所要時間 以下に、回答者毎の所要時間(終演直後から劇場を退出するまでにかかった時間)の比率を示す。 劇場ごとにばらつきがみられ、青山劇場では所要時間が短く、銀河劇場では長くかかることが読み取れる。
0~5分
29%
6~10
分
46%
10~
15分
18%
16~20
分
7%0~5分6~10分10~15分16~20分21分~
0~5分
28%
6~
10分
28%
10~
15分
28%
16~
20分
11%
21分~
5%
0~5分6~10分10~15分16~20分21分~
0~5分
16%
6~10
分
21%10~15
分
32%
16~
20分
21%
21分~
10%
0~5分6~10分10~15分16~20分21分~
0~5分
23%
6~10
分
34%
10~
15分
25%
16~
20分
13%
21分~
5%
0~5分6~10分10~15分16~20分21分~
図4.3.17 終演直後から出口までの所要時間比(全体)
図4.3.18終演直後から出口までの所要時間比(青山劇場)
図4.3.19終演直後から出口までの所要時間比(円形劇場)
図4.3.20終演直後から出口までの所要時間比(銀河劇場)
表 4.3.5 終演直後から出口までの所要時間データ
8 5 3 1 61 3 5 4 2 25 5 6 1 62 2 4 80 1 2 3
2 8 1 8 1 9 6 53 5 7 1 5
第4章 本調査
61余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■来場回数 以下に、回答者毎の来場回数の比率を示す。 青山劇場と円形劇場の来場回数が多く、銀河劇場の来場回数が少ない。これは、劇場の開館年に影響があると考えられる。(青山劇場・円形劇場:1985 年)( 銀河劇場:2006 年 )
初めて
29%
2回目
17%
3回目
12%
4回目
以上
42%
初めて
2回目
3回目
4回目以上
初めて
45%
2回目
9%
3回目
5%
4回目
以上
41%
初めて
2回目
3回目
4回目以上初めて
59%
2回目
33%
4回目
以上
8%
初めて
2回目
4回目以上
初めて
44%
2回目
20%
3回目
6%
4回目
以上
30%
初めて
2回目
3回目
4回目以上
図4.3.21来場回数比(全体)
図4.3.22 来場回数比(青山劇場)
図4.3.23 来場回数比(円形劇場)
図4.3.24 来場回数比(銀河劇場)
表 4.3.6 来場回数データ
7 1 0 1 4 3 14 2 8 1 43 1 0 4
1 0 9 2 2 12 4 2 2 2 4 7 07 1 2 1 0
62
第5章
本調査 分析
1.各場所ごとの余韻度の差に着目した分析 1-1 劇場別にみた各場所ごとの余韻度の差 1-2 空間印象評価 1-3 行為
2.終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した分析
2-1 劇場別にみた終演直後と劇場退出時の 余韻度の差 2-2 満足度 2-3 同伴者 2-4 所要時間 2-5 来場回数
3.考察 3-1各場所ごとの余韻度の差に着目した分析 3-2終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した分析
第 5章 本調査 分析
63余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1 各場所ごとの余韻度の差に着目した分析
本項では、調査結果を元に、A~D各場所において算出した “各場所ごとの余韻度の差 ”に着目した分析を行う。
■ 各場所ごとの余韻度の差
本分析の各場所ごとの余韻度の差とは、指定した4つの場所のうち、連続して通った2箇所における余韻度の差の値である。 例: A→ B→ C→ D と通った場合、各場所ごとの余韻度の差は、B- A、C- B、 D- Cの 3件が算出される。 また、A→ C→ D と通った場合、各場所ごとの余韻度の差は、C- A、 D- Cの2件が算出される。
ここでは、空間印象評価・行為と各場所ごとの余韻度の差の関係を分析する。 各場所ごとの余韻度の差の結果一覧は、資料編に示す。
図5.1.1 各場所ごとの余韻度の差の概念図
A B C D
B の余韻度- Aの余韻度= Aと Bの余韻度の差 =- 20
余韻度
100 80 80 60
第 5章 本調査 分析
64余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 各場所ごとの余韻度の差の分類
結果から各場所ごとの余韻度の差を算出すると、最大値が+80、最小値が-70であった。図 5.1.2 は、各場所ごとの余韻度の差ごとの件数を表した図である。
上図からわかるとおり、各場所ごとの余韻度の差のデータの件数にばらつきがみられる。本分析においては、下降した余韻度の差 (―70 ~- 10) を2段階(- 70~- 30、- 20 ~- 10)に分類して扱う。また、上昇した余韻度の差 (10 ~ 80)は全ての値において件数が少ないため、1つのグループとしてまとめて扱う。
以上より、各場所ごとの余韻度の差のデータを- 70~- 30、- 20~- 10、0、10~ 80の計 4グループに分類し、分析を行う。 また、グループの分類を以下のように呼ぶこととする。
図 5.1.2 各場所ごとの余韻度の差の件数
-70 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 80
件数 1 5 4 15 20 37 93 5 2 2 2 2 2
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100件数(件)
余韻度の差
-70
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
分類 各場所ごとの余韻度の差「大きく下降」 -70~-30
「下降」 -20~-10「維持」 ±0「上昇」 10~80
表 5.1.1 各場所における余韻度の差の分類
第 5章 本調査 分析
65余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1 - 1 劇場別にみた各場所ごとの余韻度の差
以下グラフは、劇場ごとに見た各場所ごとの余韻度の差の割合を示す。
銀河劇場のデータを見ると、「大きく下降」・「下降」したグループは、全データ・他2劇場と比較しても、割合が低い。また、「上昇」・「維持」したグループの割合は、他劇場よりも高い。 これより、本調査においては、銀河劇場は余韻に浸りやすい劇場であることがわかる。
このことから、劇場によって、余韻の浸りやすさは変わると考えられる。
図 5.1.3 劇場ごとに見た各場所ごとの余韻度の差の割合
0% 20% 40% 60% 80% 100%
銀河
円形
青山
全データ
銀河 円形 青山 全データ
大きく下降 5 9 8 25
下降 7 19 25 57
維持 22 18 32 93
上昇 6 4 1 15
大きく下降
下降
維持
上昇単位:件
第 5章 本調査 分析
66余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-2 空間印象評価
■全データ
以下のグラフは、全データの空間印象評価の平均値と各場所ごとの余韻度の差の関係を示したものである。値が1に近づく程、グラフ下の形容詞の印象が強く、値が5に近づく程、グラフ上の形容詞の印象が強いことを示す。
全データグラフより、「上昇」したグループでは、「明るい」「綺麗な」「上品な」「古風な」の値が他のグループと比べて高い。一方で、「大きく下降」したグループでは、「狭い」の値が他のグループと比べて高いことがわかる。[ 図 5.1.4]
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
大きく下降
下降
維持
上昇
図 5.1.4 空間印象評価の平均値と各場所ごとの余韻度の比較 (全劇場)
明るい
広い
綺麗な
にぎやかな
開放的な
親しみやすい
現代的な
上品な
暗い
狭い
汚い
落ち着いた
圧迫感のある
よそよそしい
古風な
下品な
第 5章 本調査 分析
67余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 劇場別
次に、劇場ごとによる空間印象の違いをみる。
青山劇場での 空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較をしたものを以下に示す。[ 図 5.1.5] 各場所ごとの余韻度が「上昇」したグループでは、「明るい」「広い」「綺麗な」「古風な」の値が他のグループと比べて高い。 また、「大きく下降」したグループでは「暗い」「狭い」「汚い」の値が高い。 各場所ごとの余韻度の差のグループによって空間印象評価の値に差がみられる。つまり、同じ劇場内でも、人の受ける印象の違いで各場所ごとの余韻度の差に影響があると考えられる。
図 5.1.5 空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較(青山劇場)
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
大きく下降
下降
維持
上昇
暗い
狭い
汚い
落ち着いた
圧迫感のある
よそよそしい
古風な
下品な
明るい
広い
綺麗な
にぎやかな
開放的な
親しみやすい
現代的な
上品な
第 5章 本調査 分析
68余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
続いて、銀河劇場での空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較をしたものを以下に示す。[ 図 5.1.6] 各場所ごとの余韻度が「上昇」したグループでは、「明るい」「綺麗な」の値が他のグループと比べて高いことがわかる。また、「古風な」「上品な」の値が高い。 また、「大きく下降」したグループでは、「狭い」の値が高い。
最後に、円形劇場での空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較をしたものを示す。[ 図 5.1.7] 円形劇場での「上昇」したグループでの、数値の高い項目を並べると、 「暗い」「狭い」「綺麗な」「落ち着いた」「現代的な」となる。
青山円形劇場では他 2劇場とは違う傾向が見られる。他2劇場では、・「上昇」したグループでは、「明るい」の値が高い。・「上昇」したグループでは、「綺麗な」の値が高い。・「大きく下降」したグループでは、「狭い」の値が高い。という傾向が見られた。 しかし、円形劇場では、各場所ごとの余韻度が・「上昇」したグループでは「暗い」の値が高い。また、「大きく下降」したグループでは「明るい」の値が高い、という逆の傾向が見られる。・「大きく下降」したグループでは、「綺麗な」の値が高い。・「上昇」したグループでは、「狭い」の値が高い。という逆の傾向が見られる。
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
大きく下降
下降
維持
上昇
暗い
狭い
汚い
落ち着いた
圧迫感のある
よそよそしい
古風な
下品な
明るい
広い
綺麗な
にぎやかな
開放的な
親しみやすい
現代的な
上品な
図 5.1.6 空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較(天王洲銀河劇場)
第 5章 本調査 分析
69余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
各場所ごとの余韻度が上昇したグループにおける空間印象評価の劇場別比較したものを以下に示す。[ 図 5.1.8] 銀河劇場では、「明るい」「広い」「綺麗な」「上品な」など、印象評価の値が大きいことがわかる。5章1-1にて示した、銀河劇場が他の劇場に比べて、余韻に浸りやすいことに、このような項目が関係しているのではないかと考えられる。
図 5.1.7 空間印象評価と各場所ごとの余韻度の差の比較(青山円形劇場)
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
大きく下降
下降
維持
上昇
暗い
狭い
汚い
落ち着いた
圧迫感のある
よそよそしい
古風な
下品な
明るい
広い
綺麗な
にぎやかな
開放的な
親しみやすい
現代的な
上品な
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
青山劇場
円形劇場
銀河劇場
暗い
狭い
汚い
落ち着いた
圧迫感のある
よそよそしい
古風な
下品な
明るい
広い
綺麗な
にぎやかな
開放的な
親しみやすい
現代的な
上品な
図 5.1.8 各場所ごとの余韻度が上昇したグループにおける空間印象評価の劇場別比較
第 5章 本調査 分析
70余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
ここで、前述したそれぞれの劇場における、各場所ごとの余韻度が「上昇」したグループでの、他のデータと比べて数値の高い項目に着目する。 青山劇場と銀河劇場では、・「明るい」「広い」「綺麗な」「古風な」 円形劇場では、・「暗い」「狭い」「落ち着いた」「現代的な」があげられた。このように「上昇」したグループでも、劇場によって、項目の組み合わせが異なることがわかる。このように、余韻に浸りやすい空間の提案には、それぞれのテーマに沿った劇場の空間の演出が必要であることがわかる。
---- 以上より、全てのデータを見た際には、余韻に浸りやすい空間の特性として、「明るい」「綺麗な」「上品な」「古風な」という印象が挙げられた。 また、余韻に浸りにくい空間の特性として、「狭い」という印象が挙げられた。
しかし、劇場の設計コンセプトや様式によっては、それぞれのテーマに沿った劇場の空間の演出が必要であることが分かった。
第 5章 本調査 分析
71余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1-3 行為
次頁のグラフは、全劇場における9つの行為と各場所ごとの余韻度の差の比較を示したものである。[ 図 5.1.8]
「電話・メール(公演以外に関して)」「ベンチに座る」を見ると、各場所ごとの余韻度が「下降」したグループの割合が高い。 「電話・メール(公演以外に関して)」では、公演以外の内容で電話やメールをすることで、現実に引き戻される感覚があるため、余韻に浸りにくくなると考えられる。 また、本調査で対象とした劇場には、公演終了後にもゆっくりと休憩することを目的としたベンチはなかった。また、自由回答の項目では、「もう少し客席にいられたら嬉しい」「もう少し客席にいたかった」「アンケート(劇場から配布された公演に関するもの)を書く場所を探していた」などの意見が見られた。このため、「ベンチに座る」では、客席から退出する誘導があったこと、あるいは、混雑が理由でベンチを利用することが多かったのではないか、と考えられる。このようなことが原因で、「下降」したグループの割合が高かったのではないか。
次に、「公演に関するメール」、「グッズを買う」、「感想をネットに書き込む」を見ると、各場所ごとの余韻度が「維持」したグループの割合が高い。 「グッズを買う」では、欲しいものを手に入れた喜びの他、公演に関連するグッズを見ることで公演内容を振り返る機会を与えられるため、余韻に浸りやすいと考えられる。 「公演に関するメール」「感想をネットに書き込む」では、この場にはいない人と公演内容に関して共有することで、余韻に浸ることができると考えられる。
第 5章 本調査 分析
72余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
それぞれの行為を以下のように省略して表現する。
1.話す → 話す
2.ベンチに座る → ベンチ
3.グッズを買う → グッズ
4.混雑して前に進めない → 混雑
5.電話・メール(公演に関して) → メール
6.電話・メール(公演以外に関して) → 他メール
7.感想等をネットに書き込む → 感想8.公演以外の事柄で携帯を使用する → 携帯9.その他 → その他
図 5.1.8 行為と各場所ごとの余韻度の差の比較
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
話す
ベンチ
グッズ
混雑
メール
他メール
感想
携帯
その他
話す ベンチ グッズ 混雑 メール 他メール 感想 携帯 その他
大きく下降 16 2 0 3 0 1 0 3 2
下降 30 5 3 6 0 4 1 3 10
維持 62 1 14 8 4 4 3 6 10
上昇 6 0 1 2 0 0 0 1 1
単位:件
第 5章 本調査 分析
73余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した分析
本項では、調査結果を元に、A客席と D出口において算出した “終演直後と劇場退出時の余韻度の差 ”をに着目した分析を行う。
■ 終演直後と劇場退出時の余韻度の差
本分析の終演直後と劇場退出時の余韻度の差とは、終演直後の余韻度である Aの余韻度と、劇場出口を出る際の余韻度であるD、の余韻度の差の値である。
終演直後と劇場退出時の余韻度の差の結果一覧は、資料編に示す。
図5.2.1 終演直後と劇場退出時の余韻度の差の概略図
A B C D
Dの余韻度- Aの余韻度=終演直後と劇場退出時の余韻度の差 =- 40
余韻度
100 80 80 60
第 5章 本調査 分析
74余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 終演後と劇場退出時の余韻度の差の分類
結果より、終演後と劇場退出時の余韻度の差を算出すると、最大値が+ 50、最小値が- 70であった。図 5.2.2 は、終演後と劇場退出時の余韻度の差ごとの人数を表した図である。
上図からわかるとおり、終演直後と劇場た余韻度の差のデータの件数にばらつきがみられる。本分析においては、下降した余韻度の差 (―70~- 10) を2段階(-70~- 30、- 20~- 10)にわけ、分類して扱う。また、上昇した余韻度の差 (10~ 80)は全ての値において件数が少ないため、1つのグループとしてまとめて扱う。
以上より、各場所ごとの余韻度の差のデータを- 70~- 30、- 20~- 10、0、10 ~ 50 の計 4グループに分類し、分析を行う。また、グループの分類を以下のように呼ぶこととする。
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 30 40 50
件数 3 3 6 5 5 9 20 15 1 1 1 1
0
5
10
15
20
25-70
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
30
図 5.2.2 終演直後と劇場退出時の余韻度の差の件数
分類 各場所ごとの余韻度の差「大きく下降」 -70~-30
「下降」 -20~-10「維持」 ±0「上昇」 10~50
表 5.2.1 終演直後と劇場退出の余韻度の差の分類
単位:人
第 5章 本調査 分析
75余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2-1 劇場別にみた終演直後と劇場退出時の余韻度の差
以下のグラフは、全データ及び各劇場における、終演直後と劇場退出時の余韻度の差の割合を、全体の件数と比較したものである。
全データを見ると、終演直後と劇場退出時の余韻度の差が「大きく下降」・「下降」しているグループが 70%を超えている。多くの観客の余韻度が、舞台を観終わったあとから劇場を出るまでに下がってしまっていることがわかる。
続いて、劇場ごとにデータを見る。 円形劇場では、終演直後と劇場退出時の余韻度の差が「大きく下降」したグループの割合が高い。 一方で、銀河劇場では「維持」「上昇」したグループが 50%を超えている。半数以上の観客は舞台を観終わったあとの余韻を劇場を出るまで保った状態で退出できていることがわかる。
これらのことから、劇場によって、余韻の浸りやすさ、浸りにくさは変化すると考えられる。
図 5.2.3 劇場別にみた、終演直後と劇場退出時の余韻度の差の割合
0% 20% 40% 60% 80% 100%
銀河劇場
円形劇場
青山劇場
全データ
銀河劇場 円形劇場 青山劇場 全データ
大きく下降 4 11 7 22
下降 6 7 17 30
維持 9 2 4 15
上昇 3 1 0 4
大きく下降
下降
維持
上昇単位:人
第 5章 本調査 分析
76余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 - 2 満足度
以下グラフは、終演直後と劇場退出時の余韻度の差と満足度を比較したものである。[ 図 ]
「上昇」したグループは、満足度が 100 点と 90点のみで見られた。 満足度が低いほど、「大きく下降」したグループの割合が多いことがわかる。 また、70点のグラフを見ると、「大きく下降」「下降」したグループのみとなる。
これらより、公演に対する満足度が低いほど、余韻にひたりにくいと考えられる。
図 5.2.4 終演直後と劇場退出時の余韻度の差と満足度の比較
0% 20% 40% 60% 80% 100%
70点
80点
90点
100点
70点 80点 90点 100点大きく下降 2 2 3 5
下降 1 2 4 13
維持 0 2 1 4
上昇 0 0 2 2
大きく下降
下降
維持
上昇単位:人
第 5章 本調査 分析
77余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 - 3 同伴者
以下グラフは、全劇場における同伴者数と、終演直後と劇場退出時の余韻度の差の関係を示したものである。単独で観劇をした人は、同伴者数を0人と表す。
終演直後と劇場退出時の余韻度が「上昇」したグループは、同伴者が1人の場合のみで見られた。 また、終演直後と劇場退出時の余韻度が「維持」したグループは、同伴者が0人(単独での観劇)、1人の場合で見られた。 一方で単独で観劇する場合は、「大きく下降」する割合が高い。
以上より、同伴者数が1人の場合が余韻に浸りやすい傾向があった。 しかし、今回の調査では、同伴者数が1人の場合が77%と、8割近くを占めていた。今後は、属性に偏りのないよう調査をする必要があると考えられる。
図 5.2.5 終演直後と劇場退出時の余韻度の差と同伴者数の比較
0% 20% 40% 60% 80% 100%
0人
1人
2人
3人
0人 1人 2人 3人大きく下降 5 16 0 1
下降 3 21 1 4
維持 2 13 0 0
上昇 0 4 0 0
大きく下降
下降
維持
上昇単位:人
第 5章 本調査 分析
78余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 - 4 所要時間
以下グラフは、全劇場における終演後から劇場退出時までの所要時間と、終演直後と劇場退出時の余韻度の差の関係を示したものである。
所要時間が最も短い「0~ 5分」をみると、「大きく下降」したグループの割合が高く、「上昇」したグループは見られない。この理由として、帰宅路を急ぐことに意識が集中し、余韻に浸ることができなかったと考えられる。 また、「16~ 20 分」及び「21分以上」を見ると、「上昇」したグループは見られない。この理由として、退出者の混雑などが影響となって、退出に時間がかかってしまったことが考えられる。
一方「6~10 分」「11~ 15 分」を見ると、「上昇」・「維持」したグループの割合が高く、更に「6~ 10分」では「大きく下降」したグループの割合が低いことがわかる。
以上より、今回の調査では、劇場を退出する際に、余韻に浸りやすい状態で出るためには、6~10 分で退出できるような計画が必要であると考えられる。
図 5.2.6 終演直後と劇場退出時の余韻度の差と所要時間の比較
0% 20% 40% 60% 80% 100%
0~5分
6~10分
11~15分
16~20分
21分~
0~5分 6~10分11~15
分
16~20分
21分~
大きく下降 8 4 5 3 0
下降 4 12 7 2 1
維持 3 4 1 1 2
上昇 0 3 1 0 0
大きく下降
下降
維持
上昇
単位:人
第 5章 本調査 分析
79余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2-5 来場回数
以下グラフは、全劇場における来場回数と、終演直後と劇場退出時の余韻度の差の関係を示したものである。
初めに、「上昇」のグループに着目すると、来場回数 3回の時の割合が高く見える。しかし、来場回数 3回目の全件数が 3件であり、その内の 1件が「上昇」であるため、このデータから「終演直後と劇場退出時の余韻度の差が上昇するのは3回目である」という分析は不適切であると考えられる。
「大幅に下降」のグループに着目すると、4回以上来場している人の割合が高い。一方で、「維持」と「上昇」のグループに着目すると、来場回数 1回の人の割合が高い。 以上より、初めて来場する人は余韻に浸りやすく、何度も来場している人は余韻に浸りにくいという結果が出たが、理由としては劇場に対する慣れなどが考えられる。
図 5.2.7 終演直後と劇場退出時の余韻度の差と来場回数の比較
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1回
2回
3回
4回以上
1回 2回 3回 4回以上
大きく下降 9 3 0 7
下降 11 7 2 8
維持 9 3 0 2
上昇 2 0 1 1
大きく下降
下降
維持
上昇単位:人
第 5章 本調査 分析
80余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-1 各場所ごとの余韻度の差に着目した考察
「各場所ごとの余韻度の差」と、「空間印象評価」「行為」を比較した本分析では、以下のことがわかった。
■ 空間印象評価 全てのデータを見た際には、余韻に浸りやすい空間の特性として、「明るい」「綺麗な」「上品な」「古風な」という印象が挙げられた。 また、余韻に浸りにくい空間の特性として、「狭い」という印象が挙げられた。
しかし、劇場によっては例外もあり、「暗い・狭い・落ち着いた・現代的な」の印象評価値が高い時に、余韻に浸りやすいという事例があった。これは、先ほど述べた余韻に浸りやすい空間の要素である「明るい・綺麗な・上品な・古風な」とほぼ対照的な結果となっている。 このように、劇場の設計コンセプトや様式によっては、それぞれのテーマに沿った劇場の空間の演出が必要であることが分かった。
■ 行為 「公演関連グッズの購入」「公演内容に関しての電話・メール」「感想等をインターネットに書き込む」の行為をした人は、余韻に浸りやすい傾向が見られた。・モノを通して、公演を振り返る・公演への感動・感想を共有するということが、余韻に浸りやすい行為であると考えられる。
一方で、「ベンチに座る」「公演以外の内容に関しての電話・メール」の行為をした人は、余韻にひたりにくい傾向があった。 「ベンチに座る」では、客席から退出する誘導があったこと、あるいは、混雑のために、という理由でベンチを利用したことが、余韻に浸りにくい傾向につながったと考えられる。ここでは、「もう少し客席にいられたら嬉しい」「もう少し客席にいたかった」「アンケート(劇場から配布された公演に関するもの)を書く場所を探していた」などのニーズが発見された。 「電話・メール(公演以外に関して)」では、公演以外の内容で電話やメールをすることで、現実に引き戻される感覚があるため、余韻に浸りにくくなると考えられる。
「空間印象評価」と「行為」は、「各場所ごとの余韻度の差」に以上のような影響を与えていることが分かった。
第 5章 本調査 分析
81余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-2 終演直後と劇場退出時の余韻度の差に着目した考察
「終演直後と劇場退出時の余韻度の差」と、「満足度」「同伴者」「劇場を出るまでの所要時間」「来場回数」を比較した本分析では、以下のことがわかった。
■ 満足度 公演に対する満足度が低いほど、余韻にひたりにくいと考えられる。
■ 同伴者 同伴者数が1人の場合が余韻に浸りやすい傾向があった。 しかし、今回の調査では、調査協力者の約 8割が同伴者 1名であったため、結果にも偏りが出てしまったと考えられる。今後は、属性に偏りのないよう調査をする必要があると考えられる。
■ 終演後から劇場を出るまでの所要時間・所要時間が 6~ 10分の場合が、余韻に浸りやすい傾向がある。
■ 来場回数・初めて来場する人は余韻に浸りやすく、何度も来場している人は余韻に浸りにくい傾向がある。この理由として、劇場に対する慣れが考えられる。
各項目が、「終演直後と劇場退出時の余韻度の差」に以上のような影響を与えていることが分かった。
82
第 6章
ニーズ調査
1.調査概要
2.調査方法
3.調査結果・考察 3-1 余韻に対するニーズ 3-2 余韻に浸りやすい空間の機能の 提案に対してのニーズ調査
4.まとめ
第6章 ニーズ調査
83余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
余韻に関するニーズの実証調査
1 調査目的
現状の劇場に対する余韻のニーズを、実際に足を運んだ観客にアンケートを行うことで明らかにし、余韻に浸りやすい空間の機能の提案を行う。そこで、実際にその提案に対して、ニーズがあるのかどうか、実証することを目的とする。
第6章 ニーズ調査
84余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
2 調査方法
■ 調査日 10月7日~19日
■ 調査場所 青山劇場、青山円形劇場、天王洲銀河劇場
■ 調査対象者 観劇に来た一般の方 77名
■ 調査方法 街頭アンケート調査
■ 調査項目
□調査1 余韻に対するニーズ調査
質問項目 終演後、客席から出口に向かうまでのご心境を次の3つからお選びください。
1.落ち着いた状態で劇場から出たい 2.特に何も思わない 3.少しでも早く劇場から出たい
□調査2 余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対してのニーズ調査
質問項目 終演後、以下のような施設や機会が設けられている場合、利用したいと思いま すか。各項目ごとに、利用したい、特に何も思わない、利用したくない、のいず れかをお選びください。
1.ゆったりと座れるソファで、公演の内容について話し合えるスペース 2.出演していた役者とロビーで会える・写真を撮れる等の機会 3.本公演に関連した映像やパネルを閲覧できるスペース
本調査では、以上のような空間の機能がない劇場を調査場所として選定した。
第6章 ニーズ調査
85余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3 調査結果・分析
3-1 余韻に対するニーズ調査
■ 全体集計及び昼夜公演別集計の結果を以下のグラフで示す。
■ 自由記述回答欄 ・もう少し客席に座っていられたら嬉しい(10代女性) ・もう少し客席にいたかった(20代女性) ・昼の部だったらゆっくりアンケートかきたいし、夜だったら早く帰りたいです。 (30代女性) ・ソワレかマチネかによりますが、自宅まで 2時間くらいかかるのでゆっくり している時間があまりないので、施設があっても利用できないと思います。 (50代女性)(※マチネ:昼公演、ソワレ:夜公演) ・大体夜公演を見るので早めに帰宅したいので特にないです(20代女性)
図 6.3.1 客席から出口に向かうまでの心境(全データ)
図 6.3.2 客席から出口に向かうまでの心境 ( 昼夜 )
第6章 ニーズ調査
86余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 考察 図 6.3.1 より、落ち着いた状態で劇場から出たいという人が約 60%を占めており、余韻に浸りたいというニーズがあることを把握できた。
また、図 6.3.2 より、公演の昼夜の時間帯で、落ち着いた状態で劇場から出たいという人の割合が昼公演の方が高いことがわかる。これは、自由記述回答から、夜公演は帰りの交通事情や翌日の予定があることなどが理由として考えられる。昼公演では終演後にも余裕があることが理由として考えられる。 以上のように、昼夜で余韻に浸りたいというニーズに違いがあることが把握できた。昼夜によっても余韻に浸りやすい空間の提案を変化させるべきだと考えられる。
また、自由記述回答より、客席にもう少し長くいたい、という意見があった。これより、劇場の現状として、客席から係員によって追い出されてしまうことがわかる。客席での滞在時間においても、余韻に浸りやすい劇場からの提案ができるのではないだろうか。
第6章 ニーズ調査
87余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
3-2 余韻に浸りやすい空間の提案に対してのニーズ調査
■ 全体集計及び劇場別集計の結果を以下のグラフで示す。
図 6.3.4 終演後に利用したい施設・機会 ( 青山劇場 )
図 6.3.5 終演後に利用したい施設・機会 ( 青山円形劇場 )
図 6.3.6 終演後に利用したい施設・機会 ( 天王洲銀河劇場 )
図 6.3.3 終演後に利用したい施設・機会 ( 全体 )
第6章 ニーズ調査
88余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
■ 自由回答記述欄 ・お茶できるようなとこ。おしゃれなカフェならなお○ (30 代女性 ) ・オフトークイベント 握手会 出演者の見送り (30 代女性 ) ・感想を話せるようなバーが劇場の近く(又は内部)にあったら利用すると思う (30 代女性 ) ・サイン会 (20 代女性 ) ・パンフレット等を自由に読んだり感想をゆっくり書いたり、浸ることができる 場所 (20 代女性 ) ・ポスターなどを大きく貼るスペース。帰り際にもう一度みると記憶に残る (20 代女性 ) ・アンケートをゆっくり書ける場所がほしい (20 代女性 ) ・この劇場と言えばオリジナルの「この企画」みたいな企画 (30 代女性 ) ・ご飯を食べる場所とかがあれば、感想とか話せるから良いと思う (50 代女性 ) ・もっと公演のアンケートをゆっくり書ける場がほしい (20 代女性 )
■ 考察 調査2では、余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対してのニーズ調査を行った。 図 6.3.3 より、全ての項目において、利用したいという人が約半数を占めており、余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対し、ニーズがあることが把握できた。 さらに、「公演に関連した映像やパネルを閲覧できる空間」を利用したいという人は、すべての劇場において 70%を超えていた。
図 6.3.4-6 より、劇場別に結果を見ると、「ゆったりと座れるソファで公演の内容について話し合える空間」や「出演していた役者とロビーで会える・写真を撮れる等の機会」に対するニーズが異なる。青山円形劇場では、「ゆったりと座れるソファで公演の内容について話し合える空間」を利用したいという人は、50%を下回っている。この理由として、公演に来る目的 ( 公演内容が好き、役者のファンである、等 ) によって、終演後に求める余韻に浸りやすい空間が異なることが考えられる。公演の内容、ターゲットとする客層の目的に対しても、空間の機能の提案を変化させるべきであると考えられる。
また自由回答記述では、感想を話しながら食事ができるようなカフェや食事処を劇場内に求める人が意見が多く見られた。今回の提案以外にも、観劇に来た人に余韻に浸りやすい空間の機能に対してのニーズが把握できた。
第6章 ニーズ調査
89余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
5-4 まとめ
1.余韻に対するニーズ調査
○ 落ち着いた状態で劇場から出たいという人が約 60%を占めており、余韻に浸りたいというニーズがあることを把握できた。
○ 公演の昼夜の時間帯で、余韻に対するニーズに違いがある。昼公演は時間の余裕があるが、夜公演は帰りの交通網や翌日の予定等により、ニーズが減少する。昼夜によっても余韻に浸りやすい空間の提案を変化させるべきだと考えられる。
○ 客席にもう少し長くいたい、という意見から、劇場では客席から係員によって追い出されてしまうことがわかる。観客の客席での滞在時間に配慮することでも、余韻に浸りやすい空間を劇場側から提案できるのではないか。
2.余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対してのニーズ調査
○ 提案した 3項目全ての余韻に浸りやすい空間の機能おいて、利用したいという人が約半数を占めていることから、余韻に浸りやすい空間の機能の提案に対し、ニーズがあることが把握できた。
○「公演に関連した映像やパネルを閲覧できる空間」を利用したいという人は、すべての劇場において 70%を超えていた。
○ 公演に来る目的 ( 内容目当て、役者目当て、等 ) によって、余韻に浸りやすい空間への需要が異なることが考えられる。公演の内容、ターゲットとする客層の目的に対しても、空間の機能の提案を変化させるべきであると考えられる。
○劇場内で感想などを言いながら食べれるカフェや食事処を希望する人がいることがわかり、余韻に浸りやすい空間の機能に対してのニーズが把握できた。
2つの調査より、「余韻に対するニーズ」、「余韻に浸りやすい空間の機能に対するニーズ」が証明された。 劇場によって、観客を早く客席から退出させる劇場や、余韻に浸りやすい空間を設けることが厳しい劇場もあるかもしれないが、再び劇場に足を運んでもらうことができるように、観客を気分よく帰すことが大切であると考える。 また、以上のような空間を設ける際には、目的や公演内容に応じて、余韻に浸りやすい空間の機能を変化させる余地を残す必要がある。
90
第7章
終章
1.まとめ・展望
2.謝辞
3.参考文献
第7章 まとめ
91余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
1 まとめ・展望
1. 空間には、「余韻に浸りやすい空間」と「余韻に浸りにくい空間」がある。余韻に浸りやすい空間では、余韻度が維持又は上昇し、余韻に浸りにくい空間では、余韻度が下降する。そのような空間では、余韻が作り出されたり、または損なわれたりすることがわかった。
2.余韻に浸る状況や余韻に浸りやすい空間を明らかにするために、以下の6つの要素をパラメータとして抽出した。(1) 内容(2) 主観的要素(3) 場所(4) 属性(同伴者数など)(5) 終了後からの経過時間(6) 余韻に浸る行為
3.劇場の終演後における余韻に関する調査から、以下のことが考えられる。
(1) 内容○ 本調査では観劇に焦点をあてた。
(2) 満足度(主観的要素)○ 満足度が高いほど余韻に浸りやすい
(3)-1 空間(場所)○ 余韻に浸りやすい空間の特性として、「明るい」「綺麗な」「上品な」「古風な」という印象があげられる○ 余韻に浸りにくい空間の特性として、「狭い」があげられる
(3)-2 劇場(場所)○ 余韻に浸りやすい劇場と浸りにくい劇場がある○ 浸りやすい劇場の特性として「明るい」「広い」「綺麗な」「古風な」「上品な」○ 「暗い・狭い・落ち着いた・現代的な」という印象の値が高いときに余韻に浸りやすいという事例もある○ 劇場の設計コンセプトや様式によっては、それぞれのテーマに沿った劇場の空間の演出が必要である
第7章 まとめ
92余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
(4) 同伴者数 ( 属性 )○ 同伴者が 1人の場合が余韻に浸りやすい傾向があったが、調査協力者の約 8割が同伴者 1人であったことから、結果に偏りがあると考えられる○ 今後調査する際には、属性に偏りのないよう、調査する必要がある
(5) 終演後から劇場を出るまでの所要時間(終了後からの経過時間)○ 所要時間が短すぎず、長すぎない時間がよい○ 本調査では、所要時間が 6~10 分のときに浸りやすい傾向がある○ 終演後に 6~10 分かけて劇場を退出できる計画(動線計画等)をすると、余韻に浸りながら劇場を出ることができる
(6) 行為(余韻に浸る行為)○「公演グッズの購入」「公演内容に関する電話・メール」「感想等をインターネットに書き込む」の行為をした人は余韻に浸りやすい○ モノを通して公演を振り返ることができるような機会を与えられると、余韻に浸りやすい○公演に対する感動・感想を他人と共有すると余韻に浸りやすい
4.余韻に関する実証調査から、以下のことが考えられる。○ 調査結果より、余韻に対するニーズがあることがわかる○ 終演後に、客席にもっと長い時間いたかった、という意見等から、劇場側は終演後の客席での滞在時間に配慮することで、余韻に浸りやすい空間を提案できる○ 余韻に浸りやすい空間の機能に対するニーズがある○ 昼公演夜公演によって終演後の余韻に対するニーズの種類が変わる○ 公演内容や、客層によって、余韻に浸りやすい空間の機能に対するニーズが変わる○ 余韻に浸りやすい空間をつくるときは、時間帯や客層目的を意識する必要がある
第7章 まとめ
93余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
謝辞
この論文を着手した理由は色々ありますが、一番の理由は、舞台や音楽が好きである、ということでした。 趣味を研究にする、ということは楽しくもあり、非常につらくもありました。「好きなことを仕事にするとつらくなる」という言葉をよく聞きますが、初めてその言葉の意味を理解した気がします。( 仕事ではないですが…。) しかし、普段とは違う方向から自分の趣味と向き合うことで、今までは気づかなかった面に気がつくことができ、最終的には自分の好きなことで研究ができて良かったと思います。
しかし、このような独特なテーマを取り上げたため、先生先輩方友人にはたくさんご迷惑をおかけしました。仁史先生*私の研究は仁史先生のご意見があったからこそ取り組むことのできた研究だと思っています。他の建築系の研究室では出来ないテーマでした。たくさんのご指導ありがとうございました。夏子さん*夏子さんの暖かいお言葉、いつも励まされていました。嬉しかったです。また、卒論とは関係なく、ゼミや ischool など色々な場所で多くのことを教えていただき、刺激を受けました。たくさんのご指導ありがとうございました。林田先生*林田先生がプレゼンのときにくださるアドバイスが、毎回自分と向き合ういい機会になっていました。ありがとうございました!卒論終わったらプロジェクトがんばります ( 笑 ) 健康体感ゼミのみなさん*ゼミでは、タコスや伊豆やお茶女などなど、楽しかった思い出がたくさんあります!卒論のテーマも親身になって考えてくださってありがとうございました!情報行動ゼミのみなさん*卒論合宿やプレゼンのときなど、アドバイスくださってありがとうございました!ゼミは違っても先輩方がたくさん話しかけてくださって嬉しかったです!先輩方お一人お一人メッセージをかきたいのですが、また直接お声かけたいと思います ( 笑 ) もえ・まさと・もにわ*他の研究室の人からも「いつものメンバーじゃん!」と何度言われたかわからないメンバーが偶然仁史研に集まりましたが、本当に一緒で嬉しかった!ありがとう♪ そして、ぴーさん。本当に本当にお世話になりました。第1回中間発表の時点で既にご迷惑をおかけし、それから、毎月のように何かしらご迷惑をかけていた気がします。。。テーマも変わったものだったので、とてもやりづらかったと思いますが、ずっと親身にご指導くださってありがとうございました!本当に感謝しています。 他にも、小劇場研究会のみなさま、舞台・コンサート・音楽好きの多くの友達、両親、たくさんの方にありがとうを伝えたいです。
さて、最後になりましたが、私はこの研究をしている途中で新たな夢ができました!いつか叶うときがきたらご報告しようと思います♪本当にありがとうございました! 2011 年 11 月 4日
第7章 終章
94余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
参考文献
*1,*41 実川俊之 船越徹 積田洋 浦部智義 : 空間構成による類型化―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その1) ― 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) p393-394 [2000]
*2 実川俊之 船越徹 積田洋浦部智義 伊藤伸一 加藤智久 : アプローチ・ホワイエ空間の類型化と心理量分析 ―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その2)― : 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) p435-436 [2001]
*3 浦部智義 船越徹 積田洋 加藤智久 佐々木里紗 : エントランスから客席までの心理分析 ―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その4)―: 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) p257-258 [2002]
*4 浦部智義 船越徹 積田洋 加藤 智久 佐々木里紗 : ホワイエから客席までの空間の指摘量・相関分析 ―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その5)―: 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) p259-260 [2002]
*5 浦部智義 船越徹 積田洋 加藤 智久 佐々木里紗 劇場・ホールのエントランスから客席までの空間構成に関する研究 ―劇場・ホールのアプローチ・ホワイエ空間に関する研究(その6)―: 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 )p353-354[2003]
*6 勝又英明 小川利和 : 劇場・ホールのロビー・ホワイエにおける付帯的サービスに関する調査研究 : 日本建築学会大会関東支部研究報告書 p401-404 [1997]
*7,*42 小塚智世 加藤彰一 劇場におけるコモンスペースに関する研究 鑑賞者の滞在行動に着目して 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) 125-126 [2009]
*8 大沢久美 安田幸一 村田涼 内藤誠人 人の分布・行動からみた劇場のアプローチ空間 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東北 ) p689-690 [2009]
*9 遠山直子 添田昌志 大野隆造 劇場の周辺環境と鑑賞前後の行動との関係 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東海 ) p1127-1128 [2003]
第7章 終章
95余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
*10 宮城智子 鈴木弘樹 積田洋 吉村彰 学校建築におけるアプローチ空間の心理評価の予備実験と考察 学校建築尾アプローチ空間に関する研究 ( その1)p553-554[2010]
*11 野村恒司 三輪康一 末包伸吾 栗山尚子 美術館のアプローチ空間の構成とその評価に関する研究 ―1990 年以降の美術館建築の事例分析を通して― 日本建築学会近畿支部研究報告書 p101-104 [2009]
*12 伊藤嘉記 山口満:参道空間における空間構成要素の誘導効果に関する研究 ( その1) 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 東海 ) p985-986 [2009]
*13 江藤 元治:観覧施設までのアプローチ空間における人のいる状態による期待感の演出 : 渡辺仁史研卒業論文 [2009]
*14 小柳英治 松本直司:期待感を与える空間構成とその要因―街路の期待感に関する研究―: 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 近畿 ) p689-690 [1996]
*15 日比淳 松本直司 折れ曲がり街路空間における期待感―期待感最大位置とその強さについて―: 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 北陸 ) p979-980 [2009]
*16 小島恵子 松本直司 栢木亜衣 ゲートにより分節された街路空間における期待感最大位置とその強さ その2 ―連続する要素がある場合― : 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 北陸 ) p757-760 [2008]
*17 久野和宏;心に響く音 : 社団法人電子情報通信学会 p25-29 [1993]
*18 西田日和 岸塚正昭:水琴窟音のもつ余韻効果の解明: 造園技術報告集3[2005]
*19 日本ナショナルインスツルメンツ株式会社HP http://japan.ni.com/
*20 木村建一:建築士技術全書2 環境工学 彰国社 p106-107 [1976]
*21 小野測器ホームページ http://www.onosokki.co.jp/default.htm
第7章 終章
96余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
*22 朴 相俊 関口明克 : ホール建築における残響可変装置の使用実態に関する研究: 日本建築学会関東支部研究報告書 P589-592 [2001]
*23 株式会社サンケン・エンジニアリングHP http://www.sanken-eng.co.jp/index.htm
*24 俳句入門講座 http://www.haiku.jp/haiku/nyumon.htm
*25 工藤美代子: 余韻のある生き方 PHP新書 [2009]
*:26 食べログ「casa M 」口コミ・評価 http://r.tabelog.com/osaka/A2702/A270201/27041692/dtlrvwlst/3167733/
*27 接客マナーは心の掟 http://projectishizue.blog60.fc2.com/blog-entry-154.html
*28 京都吉兆 おもてなしと文化 http://www.kitcho.com/kyoto/service/index.html
*29 山口有次: ディズニーランドの空間科学 学分社 [2009]
*30 ストレスに関するアンケート : NTT ナビスペース株式会社 [2009] http://www.research.nttnavi.co.jp/304z/905stress.html
*31-*35 レジャー白書 2010 P7,13,15,40,137 公益財団法人日本生産性本部 [2010]
*36 宝塚観光ガイド http://www.kanko-takarazuka.jp/spot/amusement.html
*37 古谷隆祥 紙野桂人: 公共建築のアプローチ空間における遷移的特質に関する基礎的研究 ~ザ・シンフォニーホ-ルを事例にして~ : 日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 近畿 )[1996]
*38 BLUE MAN HP http://blueman.jp/index.html
第7章 終章
97余韻空間研究~劇場における終演後の余韻について~
*39 blast HP http://www.blast-tour.jp/
*40 日本演劇協会監修 演劇年鑑 [2010]
*43 篠木正義 浦部智義: 施設利用者の劇場・ホールに対する印象評価に関する研究 ―一般開放性を重視した劇場・ホールの利用者空間に関する研究― 日本建築学会大会学術講演梗概集 P181-182[2008]
第7章 終章
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第2部 * 資料編