ビブリオバトルにおける コミュニティ形成のダイナミクス
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ビブリオバトルにおけるコミュニティ形成のダイナミクス
⾕⼝忠⼤ビブリオバトル普及委員会理事・発案者
⽴命館⼤学2016年10⽉29⽇
ビブリオバトルシンポジウム2016@仙台
Contents
1. はじめに2. ビブリオバトルの記号過程3. ビブリオバトルによる⾔論空間とコミュ
ニティの形成4. まとめ
Tadahiro Taniguchi, ⾕⼝忠⼤ @tanichu• ⽴命館⼤学情報理⼯学部,知能情報学科
創発システム研究室,准教授• 2006: 博⼠(⼯学),京都⼤学⼯学研究科• 2008-: ⽴命館⼤学情報理⼯学部助教• 2010-:⽴命館⼤学情報理⼯学部准教授• 2015-16: Visiting Associate Professor(客員准
教授), Imperial College London(インペリアル・カレッジ・ロンドン) http://www.tanichu.com/
Machine learning
Cognitive robotics
Decentralized autonomous system
Human communication
Symbol Emergence in Robotics(記号創発ロボティクス)
⾕⼝忠⼤ 「コミュニケーションするロボットは創れるか」(NTT出版)2010⾕⼝忠⼤「記号創発ロボティクス」(講談社メチエ)2014
ビブリオバトルの発案と普及⾃律分散型スマートグリッド(市場メカニズムを⽤いた分散最適化)
機械学習を⽤いた⾃動作曲
記号創発システム論
⾕⼝忠⼤ 「コミュニケーションするロボットは創れるか」(NTT出版)2010
イラストで学ぶ⼈⼯知能概論
(講談社)2014
⾕⼝忠⼤「記号創発ロボティクス」(講談社メチエ)2014
Tadahiro Taniguchi, Takayuki Nagai, Tomoaki Nakamura, Naoto Iwahashi, Tetsuya Ogata, and Hideki Asoh, Symbol Emergence in Robotics: A SurveyAdvanced Robotics, .(2016)DOI:10.1080/01691864.2016.1164622
Pragmatics(語⽤論)
Syntax(統語論)
Semantics(意味論)
Phonetics(⾳韻論)
共有信念(Shared belief)
Symbol Emergence in Robotics(記号創発ロボティクス)
⾕⼝忠⼤ 「コミュニケーションするロボットは創れるか」(NTT出版)2010⾕⼝忠⼤「記号創発ロボティクス」(講談社メチエ)2014
ビブリオバトルの発案と普及⾃律分散型スマートグリッド(市場メカニズムを⽤いた分散最適化)
機械学習を⽤いた⾃動作曲
ビブリオバトル⽣誕10周年へ
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2007 ビブリオバトル誕⽣普及委員会設⽴
公式ルール成⽴全国へ浸透
紀伊国屋書店ビブリオバトル⾸都決戦
Tokyo Biblio古⺠家×ビブリオバトル
奈良県⽴図書情報館
胎動期
全国の図書館⼩中⾼校への急速な普及
ビブリオバトルシンポジウム
LoY 2012⽂科省
「第三次⼦どもの読書活動」
新書「ビブリオバトル」
「BISビブリオバトル部」ビブリオバトル協会
⼩学校
研究室
⾼等学校
公共図書館
中学校
書店⼤学⽣協
⼀般企業
イベント
家族
カフェPTA
サークル
読書会
さまざまな広がりと活⽤!!
クレジットなし
いろんな本を出させていただきました(^^)
そもそものビブリオバトル• 2007年5⽉頃,京都⼤学⼤学院情報学研究科,⽚井研
究室にて,⽣まれる.• ⾕⼝が「読むべき本について誰も理想的な知識を持ち
得ない状況」において「勉強会に使う本をメンバー全員で選ぶ⽅法」として考えだした.
2008年ごろ@⽚井研新書の中のビブリオバトル@右⼾研
⾃律分散的な知識共有の場「なぜチャンプ本を決めるのか?」
• 「チャンプ本」があることで,「みんなが『読みたい』といってくれる本」を持ってこようと思うから,そこに⾯⽩い本が集まってくる.
• 発表者が⾃分で本を選んでくること必須
チャンプ本のフィードバック
⼤量の書籍群
探索
ビブリオバトルはみんなで⼿分けして本の森を探索する冒険の旅!
個々の参加者の⾃律性(モチベーション)を⾼め,それぞれの知識と思考を活かすことで知識共有をすすめる場作り
ビブリオバトルは仲間と⾯⽩い知識・本を探す冒険の旅
⾕⼝忠⼤,川上浩司,⽚井修「ビブリオバトル:書評により媒介される社会的相互作⽤場の設計」ヒューマンインタフェース学会誌, Vol.12 (4), pp.93-104 .(2010)
ビブリオバトルの提案 (2010): 2009 submitted
ビブリオバトル公式ルール1. 発表参加者が読んで⾯⽩いと思った本を持って集まる.2. 順番に⼀⼈5分間で本を紹介する.3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関する
ディスカッションを2〜3分⾏う.4. 全ての発表が終了した後に「どの本が⼀番読みたく
なったか?」を基準とした投票を参加者全員⼀票で⾏い,最多票を集めたものを『チャンプ本』とする
ビブリオバトル公式サイト http://www.bibliobattle.jp/
ビブリオバトルの素敵な機能!
– 書籍情報共有機能– 「参加者で本の内容を共有でき
る.」– スピーチ能⼒向上機能
– 「スピーチの訓練になる.」– 良書探索機能
– 「いい本が⾒つかる.」– コミュニティ開発機能
– 「お互いの理解が深まる.」
ビブリオバトル開催⽅式の分類1. コミュニティ型(少⼈数)
– 10⼈程度以下規模のコミュニティでの繰り返し開催.
– コミュニティが何らかのテーマを持っていることが望ましい.
– ゲーム後や⽇常での相互交流が期待できる.2. ワークショップ型(⼤⼈数)
– ⼤⼈数をグループにわけてパラレルでコミュニティ型のビブリオバトルを模擬する.
– ⾃然な相互交流は期待できる.類似メンバーでの繰り返し開催が出来ない.
3. イベント型(⼤⼈数)– 少数の発表者と⼤多数の聴衆.
繰り返し開催が困難.相互交流も期待できない.
ビブリオバトルのお祭り的開催,イベント活⽤としてのイレギュラー.
Contents
1. はじめに2. ビブリオバトルの記号過程3. ビブリオバトルによる⾔論空間とコミュ
ニティの形成4. まとめ
⼈を通して本を知る,本を通して⼈を知る
「やるぜ!ビブリオバトル」鈴⽊出版
書籍のメディアとしての「⼆重性」• ビブリオバトルはメディアとしての書籍
に「⼆重性」を与える.• 解釈に潜む⼆次創作性
著者 読者
読者(発表者)
読者(参加者)
「本を通して⼈を知る」こそビブリオバトルがもたらした⾰命コミュニティの形成
記号論における記号(記号過程=Semiosis)
• パースの記号の三項関係
sign object
interpretant
Symbol
解釈項
サイン 対象
• 事前知識• 経験• ⽂脈• ⽂化• 状況• etc.etc.
読書における記号過程 (Semiosis)
解釈項interpretant
サインsign
対象object
解釈項interpretant
サインsign
対象object
読者の経験ナド
書かれたこと
本の主題,情報ナド
読者なりの理解読者なりの理解
ビブリオバトルにおける記号過程
O(筆者の考え)
I
S1 S2
I
O(読者の理解) O
I
⼈を通して本を知る本を通して⼈を知る
筆者のメッセージに読者(発表者)の解釈が重なり合って⾃然とメディアの⼆重性が⽣まれる.
ビブリオバトルの記号過程(つづき)
O
I
S1 S2
I
O O
I
I’
O’S1
“違い”
“違い(多様性)”の”気づき”
さらに紹介された本を読めば?
Contents
1. はじめに2. ビブリオバトルの記号過程3. ビブリオバトルによる⾔論空間とコミュ
ニティの形成4. まとめ
【問題】「なぜあなたはしゃべらないのか?」
共有信念と発話⽣成
共有信念
共有信念⼤
ランがねー
共有信念⼤あそこのモンブ
ランがねー
共有 中
有名で・・・
共有信念中ケーキと⾔えば京都の北⼭通りにあるマールブランシュってお店ごぞんじでしょうか?
その店はモンブランで有名で・・・
共有信念⼩・・・
共有信念⼩・・・
共有信念Aさんが〇〇を知っていることを
Bさんが知っている.そして,それをAさんが知っている・・
ビブリオバトルで何を「知れる」か?〜共有信念〜
• 形式知– 本の内容
• 共有信念– 発表者がその本を好きだということ– 発表者がその本の内容を知っている
ということ– コミュニティのみんなの好みの傾向– 話しかけにいった⼈がその本に興味
があるということ– 話しかけにいった⼈が発表者がその
本の内容を知っているということを知っているということ
– 話しかけに⾏った⼈が発表者がその本を好きだということを知っているということを知っているということ
– ・・・・
インフォーマルコミュニケーションの加速コミュニティの深化
「本を通して⼈を知る」とは新しい⼈と知り合うという意味ではない.
その⼈の内⾯にある⼈となり,事前知識などをビブリオバトルの記号過程を通して表出させ,共有信念を形成すること.
これが次の発話⽣成を促し更なる(インフォーマル)コミュニケーションを加速させる.
コミュニティの深化
Tadahiro Taniguchi, Takayuki Nagai, Tomoaki Nakamura, Naoto Iwahashi, Tetsuya Ogata, and Hideki Asoh, Symbol Emergence in Robotics: A SurveyAdvanced Robotics, .(2016)DOI:10.1080/01691864.2016.1164622
共有信念の形成 コミュニティの形成
コミュニティの階層性⽇本(語圏)
A県
D市
地域 会社 趣味
⾳楽B社
営
部
営業部
E
店
E⽀店
ピ
ノ
ピアノ
⾝近な⾔論の不在と巨⼤単⽅向メディアによる断絶
超巨⼤
・実質的に参加不可能・実感的に貢献不可能・「意⾒」として不満を⾔うばかり・封建的上意下達社会の継続・個性(個の意⾒)が尊重されない社会
マイクロメディア/メディアビオトープとしてのビブリオバトル+
⾝近なところに⾔論空間をつくり知識と意⾒,個性を回していくコミュニティを育み,繋げていく書籍(先⼈の思考)の循環も加速し
コミュニティ外からの情報の流れも作る
社会の中での知識循環の⾃⼰組織化
イギリスの議会ディベート議会制⺠主主義 誕⽣の国
まだ,⽇本⼈には無理ジャー!by 伊藤博⽂@明治初期
イギリスのディベート(⾔論)をウォッチしてきた気づき
1. 楽しそう!(ぼくも参加したい!)2. ⾃分の考えをきちんと説明することが重要視される.3. ⾸相⾃⾝がいちばん⼀⽣懸命どんな質問にも⾔葉を尽
くして説明する.4. ⼩学校から⾃分の考えをきちんと説明できるようにな
ることに教育の努⼒が費やされる.読書と紹介.5. ⾃分の意⾒をみんながきちんと⾔えるような雰囲気作
り,ルールの厳守が重要視される.6. ディベートはそれ⾃体にゲームの要素が⼤きい.
ディベート
ビブリオバトル(参考)茂⽊ 秀昭「ザ・ディベート―⾃⼰責任時代の思考・表現技術 」(ちくま新書)
読書と⾔論• 本を読み,⾃らの知識としながら,⾃らの考えを持つことが⼤切.
• そのためには読んだ内容について話す事が⼤事.• ⾃分の考えをハッキリと述べられる⼈間が近代的
な社会においては⾮常に重要.• また,その考えは証拠(evidence)や事実
(fact)にもとづいている必要がある.ディベート ビブリオバトル
多様な読みの重要性
著者読者
☓ 著者の意図を理解し従う.◯著者の意図を理解して
⾃分なりの考えを持つ.
社会で僕達が語れるために⺠主的社会とディベートの前提
• 社会的前提– 暴⼒や過度な権威にさらされない– 議論の結果として社会的⽴場を失わない– ⼀⼈ひとりの意⾒が尊重される– 多様性を許容する⽂化
• 個⼈的前提– ⾃信と安⼼(self-confidence)を養う– ⾃らの考えをきちんと語れる素養(⾔語表現⼒ w
grammar)を養う– 証拠(evidence)と事実(fact)を決定的に重要視す
る.– 依存(interdependent)から⾃⽴・⾃⼰責任
(independent)へ
ルール遵守ゲーム性
⽔平の関係(⼀⼈⼀票)多様性への寛容さと愛
楽しく充実した⺠主的社会を作っていくインフラストラクチャとしてのビブリオバトル
Alternate Reality Game(もしくは,ゲーミフィケーション)
• ゲームの持てる⼒を他の領域に応⽤すること.-ジェイン・マクゴニガル
ゲームの4要素1. ルール2. ゴール(⽬的)3. フィードバック4. ⾃発的な参加
ビブリオバトルはゲームの4要素を満たすことでゲームの楽しさ,機能を書籍紹介のコミュニケーションの場に導⼊している.書評のゲーミフィケーション.
ロジェ・カイヨワ「遊びと⼈間」
• アゴン(競争)– 運動や格闘技、⼦供のかけっこ、ほ
か。• アレア(偶然)
– くじ(宝くじなど)、じゃんけん、賭博(競⾺など)、ほか。
• ミミクリ(模倣)– 演劇、物真似、ごっこ遊び(ままご
となど)、ほか。• イリンクス(めまい)
– メリーゴーランド、ブランコ、ほか。
Wikipedia 「遊び」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8A%E3%81%B3
ハンドブックで須藤先⽣も議論されていました.
ビブリオバトルの中にもある!
「みんなで考える」の意味を考える
• ⽇本型全会⼀致の危険性– それぞれが意⾒を持つとまとまらない– 巨⼤な権⼒により黙殺される社会– 対⽴構造に関して⾮常にセンシティブ,悲観的
• イギリス型多数決の本当の意味– それぞれの意⾒をハッキリ⾔う– 多様性を認める– 対⽴構造があっても楽しむ
「和」を超えて⾃らの考えが語れる社会,⼀⼈ひとりが尊重される社会へ
語り合うことでコミュニティをつくる
ポジティブなコミュニティはあなたが主体的に作ってあなたの個性を活かし,承認する.
ネガティブなコミュニティはあなたを受動的に従わせて無名化,無個性化する.
個⼈と⽂化のアップデート!
ビブリオバトルの普及を通してよりよい社会へ
Contents
1. はじめに2. ビブリオバトルの記号過程3. ビブリオバトルによる⾔論空間とコミュ
ニティの形成4. まとめ
まとめ• ビブリオバトルのはじまりと経緯につい
て振り返った.• 書籍のメディアとしての⼆重性を⽀えるビブリオバトルの記号過程を説明した.
• 共有信念とコミュニケーションに関して説明した.
• 社会におけるコミュニティと⾔論空間の形成の関連と⺠主的社会における重要性に関して議論した.
繰り返し開催の重要性• コミュニティのメンバの
価値観を理解し,書籍を探索し,また,作⽤を与えていく上でも繰り返しは⼤事.
• ビブリオバトルの多くの効果は「1回きりの開催」では得られない.
ビブリオバトルはサイクルを伴った活動だ!
1. ビブリオバトルの広がりは⼗分か?
実数確認⽇ 2016/10/12ただし,実は⼤きな地⽅格差.普及委員の少ない地域には「相談相⼿がいない」「誤解が多い」などの声もある・・・
全国のあまねく⼈々へビブリオバトルの楽しさを!
ビブリオバトル普及委員会会員募集中!
• ビブリオバトルの活⽤や普及に興味をお持ちの⽅ならどなたでも⼊会できます!
• 年会費無料!• シンポジウム中に是⾮,普及委員会会員
にお問い合わせください!⽇本には
3,000⼈の普及委員が必要です!
(⾕⼝個⼈試算)
⾕⼝忠⼤のビブリオバトル全国⾏脚!
あまねく⼈々に伝えたいなら,まずは「隗より始めよ」
ビブリオバトル発案10周年事業,ビブリオバトル協会設⽴記念事業として,⾕⼝が全都道府県を回ることを⽬標に講演会を募集!
くわしくは http://angya17.bibliobattle.jp/ を御覧ください!
講演依頼受付中!
2. ビブリオバトルの学術研究展開
ビブリオバトルの発案 (2007-2010)
ビブリオバトルの基礎的な検討 (2011-2015)
誕⽣フェーズ
普及フェーズ
活⽤・展開フェーズ
図書館学 国語教育 英語教育 アクティブラーニング
情報システム政治学
さまざまな学術分野の学際領域としてビブリオバトルの活⽤や分析を科学的・学術的に⾏い
知識を共有していく必要性
ビブリオバトル学会構想!多様なビブリオバトル活⽤に関わる研究を⾏っていく
学術コミュニティ現在進⾏形でたくらみ中です.現在,発起⼈,コアメンバー(100⼈程度)を募集して
います.興味を持ってくださる⽅は,⾕⼝ or 須藤先⽣(室蘭⼯
⼤)にお声がけください!
(⼀社)ビブリオバトル協会
※2016末設⽴予定
ビブリオバトル普及委員会ビブリオバトル学会ビブリオバトル学会
Thank you for listening
Twitter: @tanichu ビブリオバトル普及委員会会員募集中 本⽇は懇親会の最後までぶらぶらして
いますので,気軽にお声がけください. スライドは後ほどWEBにアップします.
BoY2016⽀援事業「チャンプブックス」絶賛発売中!ぜひ,数冊ご購⼊ください!\(^o^)/
シンポジウムはフル参加するので,いつでも声をかけてください!\(^o^)/(いろんな⼈とお喋りするために京都から来ました!)
⼀⼝1500円ご寄付の意味で!