ールノー均衡 とシュタッケルベルク均衡 99k1176j ヨーディン スパシ - 3-...
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クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
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Introduction
「ゲーム理論」の中には、クールノー(Cournot)モデルと、シュタッケルベルク
(Stackelberg)モデルがある。クールノーモデルというのは、全ての企業が同時に生産量を
決めるモデルである。シュタッケルベルクモデルというのは、まず企業1が leader 企業と
し、生産量 1 q を決定し、残りの 1 − n 企業が 1 q を観察してから、同時に生産量を決めるモデ
ルである。ここでは、どちらのモデルでも市場にn企業存在しているときに、逆需要関数が
線形 Q a p − = のときをまず取り扱う。 企業 iの生産量を i q 、 総生産量をQ、 市場価格を p 、
どの企業も固定費用は 0 で限界費用が一定の c と仮定すると、クールノーモデルの解は
1 + −
= n
c a q i であり、シュタッケルベルクモデルの解は、leader 企業1の生産量は 2 1 c a q
− =
で、残りの 1 − n 企業の生産量は n i n c a q i ,..., 2 ;
2 =
− = である。つまり、市場にある企業の
数が変化しても、必ずこの結果になるわけである。(論文の本文の . 1 と . 2 を参照)しかし、
逆需要関数は必ず線形になるとは限らない。 逆需要関数は ) (Q f p = が一般的な場合である。
また、 企業の費用については、 一定の限界費用cとは限らなく、 費用関数 ) ( i q c C = である。
逆需要関数と費用関数は一般的のときに、クールノーモデルとシュタッケルベルクモデル
の解はどうなるかを調べてみたいと思う。この論文では、逆需要関数 ) (Q f p = は
0 ) ( < ′ Q f 、費用関数 ) ( i q c C = は、 0 ) ( > ′ ′ i q c の限界費用逓増の場合を考慮する。
これから、この論文にすることは、次の項目のようである。
. 1 n企業のクールノー均衡(線形の需要関数、限界費用一定の場合)
. 2 n企業のシュタッケルベルク均衡(線形の需要関数、限界費用一定の場合)
. 3 シュタッケルベルク寡占(leader 企業が複数の場合)
. 4 クールノー複占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
. 5 クールノー複占の均衡の存在
. 6 最適反応関数が減少関数になる例
. 7 シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
. 8 シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
. 9 シュタッケルベルク寡占の leader 企業の生産量の反例
. 10 逆需要関数の形状
. 11 逆需要関数の形状(Cobb-Douglas 関数と CES 関数の場合)
. 12 クールノー複占、シュタッケルベルク複占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合) . 13 クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合) . 14 クールノー複占、シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関
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数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
. 15 クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数
が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
. 16 一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f の仮定の必要性
. 17 クールノー寡占の均衡の存在
--------------------------------------------------------------------------------
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目次
本文
. 1 n企業のクールノー均衡 (線形の需要関数、 限界費用一定の場合) ……………………4
. 2 n企業のシュタッケルベルク均衡(線形の需要関数、限界費用一定の場合)………5
. 3 シュタッケルベルク寡占 (leader 企業が複数の場合) …………………………………7
. 4 クールノー複占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)…………………………9
. 5 クールノー複占の均衡の存在……………………………………………………………10
. 6 最適反応関数が減少関数になる例………………………………………………………11
. 7 シュタッケルベルク複占 (一般的な需要関数、 限界費用一定の場合) ………………13
. 8 シュタッケルベルク寡占 (一般的な需要関数、 限界費用一定の場合) ………………14
. 9 シュタッケルベルク寡占の leader 企業の生産量の反例…………………………….16
. 10 逆需要関数の形状…………………………………………………………………………21
. 11 逆需要関数の形状(Cobb-Douglas 関数と CES 関数の場合)…………………………25
. 12 クールノー複占、シュタッケルベルク複占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)……………………………………………………………………………………………….29 . 13 クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)……………………………………………………………………………………………….30 . 14 クールノー複占、シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関
数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合) ……………………………………………………………………………32
. 15 クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数
が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合) ………………………………………………………………………………34
. 16 一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f の仮定の必要性………………………………………….36
. 17 クールノー寡占の均衡の存在……………………………………………………………….37
Conclusions……………………………………………………………………………………40
参考文献リスト………………………………………………………………………………..41
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本文
1. n企業のクールノー均衡(線形の需要関数、限界費用一定の場合)
仮定:市場に企業数を n、企業 iの生産量を i q 、総生産量をQ、市場価格を p 、どの
企業も固定費用は0で限界費用が一定のc 逆需要関数を Q a p − =
全ての企業を同時に生産量を決める。
n企業がそれぞれの生産量を同時に決定するとき
企業 iの利潤 i i i cq p q − = π ) ( c p q i − =
) ) ... ( ( 2 1 c q q q a q n i − + + + − =
一つ一つ企業のことを考えると、
企業1の利潤は ) ) ... ( ( 2 1 1 1 c q q q a q n − + + + − = π である。
0 1
1 = dq dπ
のときに、利潤最大する。
つまり、 0 ) ... 2 ( 2 1 = − + + + − c q q q a n
2 ) ... ( 3 2
1 n q q q c a
q + + + − −
= のときに、利潤が最大する。
同様に、以下のように企業1から企業nまでの利潤と最大化する生産量の関係がまとめ
られる
) ) ... ( ( 2 1 1 1 c q q q a q n − + + + − = π 、 2
) ... ( 3 2 1
n q q q c a q
+ + + − − = ) 1 (
) ) ... ( ( 2 1 2 2 c q q q a q n − + + + − = π 、 2
) ... ( 3 1 2
n q q q c a q
+ + + − − = ) 2 (
) ) ... ( ( 2 1 c q q q a q n n n − + + + − = π 、 2
) ... ( 1 2 1 − + + + − − = n
n q q q c a
q ) (n
また、生産量の式 ) ( ),..., 2 ( ), 1 ( n を変形すると、以下のようになる。
c a q q q q n − + − = + + + 1 3 2 2 ... ) 1 ( c a q q q q n − + − = + + + 2 3 1 2 ... ) 2 (
c a q q q q q n − + − = + + + + 3 4 2 1 2 ... ) 3 (
c a q q q q q n n − + − = + + + + − 2 ... 1 3 2 1 ) (n
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連立方程式を解いて、
: ) 2 ( ) 1 ( − c a q c a q q q + − + − + − = − 2 1 1 2 2 2
2 1 q q = : ) 3 ( ) 2 ( − c a q c a q q q + − + − + − = − 3 2 2 3 2 2
3 2 q q = ) ( ) 1 ( n n − − までにしたら、以下のことが成立すると証明できる
n q q q q = = = = ... 3 2 1
だから、 2
) 1 ( i i
q n c a q
− − − = である。
整理すると、
1 + −
= n
c a q i (1-1)
になり、これはナッシュ均衡である。
そのとき、企業 iの最大利潤は、 ) ( c nq a q i i i − − = π
2
2
) 1 ( ) (
) 1 ) ( (
1
+ −
=
+ −
− − + −
=
n c a
n c a n c a
n c a
(1-2)
である。
ちなみに、独占の場合(企業の数は一つしかないとき)の生産量 m q 、利潤 m π は(1-1)、
(1-2)で 1 = n とおいて、 2 c a q m
− = 、
4 ) ( 2 c a
m −
= π になる。
2. n企業のシュタッケルベルク均衡(線形の需要関数、限界費用一定の場合)
仮定:市場に企業数を n、企業 iの生産量を i q 、総生産量をQ、市場価格を p 、どの
企業も固定費用は0で限界費用が一定のc 逆需要関数を Q a p − =
最初に企業1が生産量 1 q を決める。次にそれを見て、残りの 1 − n の企業が同時に生産量
n q q q ,..., , 3 2 を決めるとき
企業2の利潤は ) ) ... ( ( 2 1 2 2 c q q q a q n − + + + − = π
そのとき、利潤最大化生産量は 2
) ... ( 3 1 2
n q q q c a q
+ + + − − = である。
同様に、企業3からnの利潤とその最大化生産量も、クールノーの場合にまとめた式と同じ
である。つまり、次のことが成立する。
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n q q q = = = ... 3 2
この場合はクールノーの場合と違って、 1 q については成立しない。
これに対して、企業2からnの利潤最大化生産量は、
2 ) 2 ( 1 i
i q n q c a
q − − − −
= ただし、 n i ,..., 4 , 3 , 2 =
整理すると、
n q c a
q i 1 − −
= ただし、 n i ,..., 4 , 3 , 2 =
企業1は自分が生産量 1 q を選んだとき、残りの 1 − n の企業は上にまとめた生産量を選ぶ
ことが予想できる。そこで、考慮に入れて自分の利潤 1 π を最大にする。したがって、
) ) ... ( ( 2 1 1 1 c q q q a q n − + + + − = π に n q c a
q i 1 − −
= ただし、 n i ,..., 4 , 3 , 2 = を代入する
と、
n q c a
q c n
q c a n q a q
) ( ) )
) )( 1 ( ( ( 1
1 1
1 1 1
− − = −
− − − + − = π
そのとき、企業1の利潤最大化生産量は
2 1 c a q
− = (2-1)
である。
(2-1)を n q c a
q i 1 − −
= ただし、 n i ,..., 4 , 3 , 2 = に代入すると、
n c a q q q q n 2
... 4 3 2 −
= = = = = (2-2)
また、企業1の最大利潤
n c a c
n c a n c a a c a
4 ) ( ) )
2 ) )( 1 (
2 ( (
2
2
1 −
= − − −
+ −
− −
= π (2-3)
企業2から nの最大利潤
2
2
3 2 4 ) ( ) )
2 ) )( 1 (
2 ( (
2 ...
n c a c
n c a n c a a
n c a
n −
= − − −
+ −
− −
= = = = π π π (2-4)
(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2-4)を表にまとめると、
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ケース 均衡生産量 均衡の時の利潤
クールノー(Cournot)均衡
1 + −
= n
c a q i 2
2
) 1 ( ) (
+ −
= n
c a i π
シ ュ タ ッ ケ ル ベ ル ク
(Stackelberg)均衡 2 1 c a q
− =
n c a q q q n 2
... 3 2 −
= = = =
n c a
4 ) ( 2
1 −
= π
2
2
3 2 4 ) ( ...
n c a
n −
= = = = π π π
(1-2)と(2-3)を比べると、
0 ) 1 ( 4
) 1 ( ) 1 (
1 4 1 2
2 > +
− =
+ −
n n n
n n ) 2 ( ≥ n
であるから、(2-3)の方が(1-2)より大きい。言いかえると、シュタッケルベルクの leader
企業はクールノー企業より高い利潤を得ている。 もう一つ注目されるのは、 (2-1)である。
シュタッケルベルクの leader 企業の生産量は follower 企業の数に依存しないことである。
言いかえると、follower 企業の数が変化しても、シュタッケルベルクの leader 企業の生
産量は 2 1 c a q
− = で変わらない。
次節では、leader 企業は一つ以上のときに、leader 企業の生産量はどうなるかを調
べる。
3. シュタッケルベルク寡占(leader 企業が複数の場合)
仮定 : 市場に存在している企業数は4、 企業1と2はleader企業で、 企業3と4はfollower
企業とする。企業 iの生産量を i q 、総生産量をQ、市場価格を p 、どの企業も固定費用は0 で限界費用が一定のc
逆需要関数を Q a p − =
最初に leader 企業 1 と 2 が生産量 2 1 ,q q を同時に決める。それを見て、follower 企業 3
と 4 が生産量 4 3 ,q q を決める。
まず、企業 3 と 4の利潤を考える。 ) ) ( ( 4 3 2 1 3 3 3 3 c q q q q a q cq pq − + + + − = − = π (3-1)
(3-1)を最大化、
0 2 4 3 2 1 3
3 = − − − − − = c q q q q a dq dπ
つまり、
2 ) ( 4 2 1
3 c q q q a
q − + + −
= (3-2)
) ) ( ( 4 3 2 1 4 4 c q q q q a q − + + + − = π (3-3)
(3-3)を最大化、
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0 2 4 3 2 1 4
4 = − − − − − = c q q q q a dq dπ
つまり、
2 ) ( 3 2 1
4 c q q q a
q − + + −
= (3-4)
(3-2)と(3-4)を変形すると、 c q q q a q − − − − = 4 2 1 3 2 (3-5)
c q q q a q − − − − = 3 2 1 4 2 (3-6)
(3-5)から(3-6)を引いて、
3 4 4 3 ) ( 2 q q q q + − = −
4 3 q q = (3-7)
(3-7)を(3-2)と(3-4)に代入すると、
3 ) ( 2 1
4 3 c q q a
q q − + −
= = (3-8)
次に、leader 企業 1と 2 の利潤を考える。 ) ) ( ( 4 3 2 1 1 1 c q q q q a q − + + + − = π (3-9)
(3-9)に(3-8)を代入すると、
)) ) ( (3 2 ( ( 2 1 2 1 1 1 c q q a q q c a q − + − + + − − = π
)) ( (3 1 ( 2 1 1 q q c a q + − − = (3-10)
(3-10)を最大化、
2 2
1 q c a
q − −
= (3-11)
)) ) ( (3 2 ( ( 2 1 2 1 2 2 c q q a q q c a q − + − + + − − = π
)) ( (3 1( 2 1 2 q q c a q + − − = (3-12)
(3-12)を最大化、
2 1
2 q c a
q − −
= (3-13)
また、(3-12)と(3-13)を解いて、
2 1 q q = (3-14)
(3-14)を(3-11)と(3-13)に代入すると、
3 2 1 c a q q
− = = (3-15)
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(3-15)を(3-8)に代入すると、
9 4 3 c a q q
− = = (3-16)
また、leader 企業 1と 2 の利潤は、
27 ) ( 2
2 1 c a −
= = π π (3-17)
follower 企業 3 と 4の利潤は、
81 ) ( 2
4 3 c a −
= = π π (3-18)
4.クールノー複占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
第 1 から第 3 節までは逆需要関数が線形の Q a p − = を使っていた。限界費用は今ま
でと同じく一定と仮定する。この節からは、需要関数がごく簡単な線形の関数に限らない
一般的な関数の場合に、シュタッケルベルクの leader 企業はクールノー企業より高い利
潤を得ていることと、シュタッケルベルクの leader 企業の生産量は follower 企業の数に
依存しないことが成立するかどうか調べる。
まず、 この第 4節では、 逆需要関数が一般的な場合のクールノー複占の結果について、
説明していきたいと思う。
以下の仮定である。企業数は 2、逆需要関数は ) (Q f p = とする。 0 ) ( < ′ Q f だけを仮
定しておく。これは需要曲線が右下がりであることを意味している。その他の条件は第 1
節と同じとする。
そのとき、企業 1 の利潤は
1 2 1 1 1 1 1 ) ( ) ( cq q q f q cq Q f q − + = − = π (4-1)
(4-1)を最大化する 1 q を求めるため、(4-1)を 1 q で偏微分して0とおくと、
0 ) ( ) ( 2 1 1 2 1 1
1 = − + ′ + + = ∂ ∂ c q q f q q q f q π
(4-2)
(4-2)を ) , ( 2 1 q q F とおくと、 0 1 ≠ F ならば陰関数の定理 1 により(4-2)は、
) ( 2 1 q r q = (4-3)
と解ける。これが企業 1 の最適反応関数である。この時、(4-3)は微分可能で
1 陰関数の定理
0 ) , ( 0 0 ≠
∂
∂ y x f
y で 0
, ) , (
0 0
0 0 ≠
= = ∂
∂
y y x x y x
y
f のときに、
0 0
0 0
,
) (
y y x x y
f x f
x x x x
y
= = ∂
∂ ∂
∂
− = ′ =
= ∂
∂ φ が成り立つ。
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) ( ) ( 2 ) ( ) ( ) ( 2 1 1 2 1
2 1 1 2 1
1
2 2 q q f q q q f
q q f q q q f F F q r
+ ′ ′ + + ′ + ′ ′ + + ′
− = − = ′ (4-4)
企業 1 の最適反応関数(4-3)が 2 q の減少関数であるための十分条件を求める、(4-4)の最後
の等式の右辺が負になる条件を求める。
0 ) ( ) ( 2 ) ( ) (
2 1 1 2 1
2 1 1 2 1 < + ′ ′ + + ′
+ ′ ′ + + ′ −
q q f q q q f q q f q q q f
(4-5)
は
) ( ) ( 2
1 1
2 1
2 1 1 q q f
q q f q + ′ + ′ ′
+ > (4-6)
と同値であるので、
1 ) ( ) (
2 1
2 1 1 − >
+ ′ + ′ ′ q q f q q f q または、 2
) ( ) (
2 1
2 1 1 − <
+ ′ + ′ ′ q q f q q f q (4-7)
は企業 1 の最適反応関数(4-3)が 2 q の減少関数であるための十分条件である。
一般に、 ) (x f y = のとき、 y の x弾力性ε として、 ) ( ) ( x f x f x
′ = ε で定義される。
) ( ) (
2 1
2 1 1 q q f
q q f q + ′ + ′ ′
は 2 q を一定として、 1 q だけが変化したときに需要曲線の傾き ) ( 2 1 q q f + ′ が
どのくらい変わるか、一種の弾力性を表している。
0 ) ( 2 1 < + ′ q q f と考えて良いので、 0 ) ( 2 1 < + ′ ′ q q f なら、(4-7)は満たされる。また、
0 ) ( 2 1 > + ′ ′ q q f の場合も(4-7)を満たす場合もある。
企業 2についても同じように議論できる。企業 2 の利潤は、
2 2 1 2 2 2 2 ) ( ) ( cq q q f q cq Q f q − + = − = π (4-8)
である。これは(4-1)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しい。したがって、企業 2 の最適反
応関数は(4-3)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しくなる。つまり、
) ( 1 2 q r q = (4-9)
となる。
最適反応関数 r が 2 q の減少関数であると仮定すると 2 q の関数(4-3)は逆関数が存在し、
) ( 1 1
2 q r q − = (4-10)
と書ける。企業 1 の最適反応関数と企業 2 の最適反応関数は互いに逆関数になる。
5.クールノー複占の均衡の存在
クールノーナッシュ均衡は、 ) ( 2 1 q r q = と ) ( 1 2 q r q = を同時にみたすような 2 1 ,q q であ
る。もし、 ) (e r e = (5-1)
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となるようなeが存在すれば、 e q q = = 2 1 は、 ) ( 2 1 q r q = と ) ( 1 2 q r q = を同時に満たす。
最適反応関数 r が関連な減少関数であるとする。 M r = ) 0 ( として最適反応関数 r を閉
空間[ ] M , 0 から [ ] M , 0 への関数と見直すと、Brouwer の不動点定理 2 により(5-1)を満たすe が存在する。しかも減少関数であることからそのようなeはただ 1 つである。次のようなグ
ラフで表せる。 y x y =
M ) (e r e =
) (e r ) (x r
0 e x
以下ではナッシュ均衡はただ 1 つ存在すると仮定する。
6.最適反応関数が減少関数になる例
逆需要関数
β
− = b Q a a p (6-1)
は +∞ < < β 0 でQの減少関数でかつ最適反応関数が減少関数になる。
証明 (6-1)の右辺を ) (Q f とおく。Qについて、1 回と 2 回微分すると、
0 ) ( 1 < − = ′ − − β β β Q b a Q f (6-2) 2 ) 1 ( ) ( − − − − = ′ ′ β β β β Q b a Q f (6-3)
であるから、
2 1
1 1 1 ) 1 ( ) 1 (
) ( ) (
q q q
Q q
Q f Q f q
+ − = − =
′ ′ ′
β β (6-4)
2 不動点定理(fixed point theorems)
集合 X からそれ自身への写像 X X f → : の不動点とは、 * *) ( x x f = を満たす点 X x ∈ * のことである。
写像 f の不動点は f によってそれ自身に移る、すなわち、動かない点のことである。
Brouwer の不動点定理
n R のコンパクトな凸集合 X からそれ自身への連続写像 f は不動点 * x をもつ。
・ n
R のコンパクト集合は有界閉集合と同値である。
・ 凸集合とは、その集合の任意の 2点間を結ぶ線分がその集合に含まれるような集合である。
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ここで 2 1 q q Q + = を用いた。(6-4)の右辺は 1 ≥ β のときいは正である。また、 1 0 < < β の
ときは 0 1 1 < − < − β で、また、
1 0 2 1
1 < +
< q q
q (6-5)
であるから、(6-4)の右辺は、
1 ) 1 ( 2 1
1 − > +
− q q
q β (6-6)
よって、 +∞ < < β 0 で
1 ) ( ) (
) ( ) (
2 1
2 1 1 1 − >
+ ′ + ′ ′
= ′ ′ ′
q q f q q f q
Q f Q f q (6-7)
成り立ち。つまり、(6-7)は(4-7)の条件が満たされることにより、証明できた。
では、(6-1)のグラフを書いてみよう。ここで、 1 , 2 = = b a とおくと、
( ) β Q p 2 2 − = (6-8)
になる。(6-8)の下で、次の 3つのケースのグラフを書くことにする。
ケース 1: 5 . 0 = β のとき、次のグラフである。
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
0.5
0.5
1
1.5
2
この場合は、需要曲線は上に凹である。ふだんに見慣れた需要曲線の形状である。
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ケース 2: 1 = β のとき、次のグラフである。
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
1
0.5
0.5
1
1.5
2
この場合は、需要曲線は直線になる。
ケース 3: 2 = β のとき、次のグラフである。
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
2
1
1
2
この場合、需要曲線は上に凸である。あまり見かけない需要曲線の形状である。
7.シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
第 5と第 6節では逆需要関数が一般的な場合のクールノーモデルについて説明した。
本節と次節では、逆需要関数が一般的な場合のシュタッケルベルクモデルについて説明し
ていきたいと思う。まず、本節では、市場に企業が 2 つしか存在しないシュタッケルベル
ク複占について説明する。
企業数は 2、逆需要関数は ) (Q f p = とする。 0 ) ( < ′ Q f だけを仮定しておく。その
他の条件は第 2 節と同じとする。
企業 2 は企業 1 の生産量 1 q を見てから自分の生産量 2 q を決める。企業 2 の利潤は
2 2 1 2 2 2 2 ) ( ) ( cq q q f q cq Q f q − + = − = π (7-1)
であり、企業 2 の最適反応関数は
) ( 1 2 2 q r q = (7-2)
である。企業 1 の利潤は
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-14-
1 1 2 1 1 1 2 1 1 1 1 1 )) ( ( ) ( ) ( cq q r q f q cq q q f q cq Q f q − + = − + = − = π (7-3)
である。(7-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 2 1 2 1 1 1 2 1 1
1 = − ′ + + ′ + + = ∂ ∂ c q r q r q f q q r q f q π
(7-4)
第 4 節でしたクールノー複占の解を c c q q 2 1 , とする。(4-2)より、
0 ) ( ) ( 2 1 1 2 1 1
1 = − + ′ + + = ∂ ∂ c q q f q q q f q
c c c c c π (7-5)
になる。企業 2 の最適反応関数 ) ( 1 2 2 q r q = が 0 ) ( 1 2 < ′ q r であるとすれば(それは(4-7)の条
件があれば満たされる)、 0 ) ( < ′ Q f であるから、
) ( )) ( 1 )( ( 2 1 1 1 2 2 1 1 c c c c c c c q q f q q r q q f q + ′ > ′ + + ′ (7-6)
であり、また定義により ) ( 1 2 2 c c q r q = であるから、
0 )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 2 1 2 1 1 1 2 1 > − ′ + + ′ + + c q r q r q f q q r q f c c c c c c (7-7)
(7-7)よりシュタッケルベルク複占の企業 1 の利潤は c q 1 で増加の状態にある。よって、企業
1 は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。またその時の利潤は c q 1 の時より大きくなって
いる。言いかえると、企業 1 のシュタッケルベルク複占の生産量の解を S q 1 としたら、次の
ようなグラフのようである。
利潤
c q 1 S q 1 生産量
以上を要約すると、企業 1 のクールノーの時の利潤とシュタッケルベルクの時
の利潤をそれぞれ、 S c 1 1 ,π π とすると、次のことが成り立つ。
(i) S c q q 1 1 < 、つまり、企業 1 のシュタッケルベルクの時の生産量はクールノー
の時よりも多い。
(ii) S c 1 1 π π < 、つまり、企業 1 のシュタッケルベルクの時の利潤はクールノー
の時よりも大きい。
8.シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数、限界費用一定の場合)
前節では市場に 2 企業しかない場合(複占)を扱った。本節では前節の議論をわず
かに修正するだけで市場にn企業の場合(寡占)にも同様の結論、すなわち、leader 企業
はクールノー生産量よりも多く生産し、 利潤も多いことを示す。 以下のような証明である。
follower 企業 i ) ,..., 2 ( n i = の最適反応関数はすべて同じと仮定すると、最適反応
関数は、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-15-
) ( 1 q r q i = ) ,..., 2 ( n i = (8-1)
となる。 ) ( ) ( ) 1 ( ) ( ... ) ( ... 1 1 1 1 2 q R q r n q r q r q q n = − = + + = + + (8-2)
とすると、 0 ) ( 1 < ′ q r であるならば、 0 ) ( 1 < ′ q R である。
そのとき、企業 1 の利潤は
1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 )) ( ( ) ... ( ) ( cq q R q f q cq q q q f q cq Q f q n − + = − + + + = − = π (8-3)
(8-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 1
1 = − ′ + + ′ + + = ∂ ∂ c q R q R q f q q R q f q π
(8-4)
クールノー寡占の解を c i
c q q , 1 ) ,..., 2 ( n i = とすると、
0 ) ( ) ( 1 1 1 1
1 = − + ′ + + = ∂ ∂ c q q f q q q f q
c i
c c c i
c π ) ,..., 2 ( n i = (8-5)
企業 n ,..., 2 の最適反応関数はそれぞれ ) ( ),..., ( 1 1 2 2 q r q q r q n n = = であるから、
) ( ) 1 ( 1 q R q n i = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (8-6)
(8-4)が 0 ) ( 1 < ′ q R であるとすれば、 0 ) ( < ′ Q f であるから、
) ( )) ( 1 )( ( 1 1 1 1 1 c i
c c c c i
c c q q f q q R q q f q + ′ > ′ + + ′ ) ,..., 2 ( n i = (8-7)
であり、また定義により、 ) ( ),..., ( 1 1 2 2 c
n c n
c c q r q q r q = = 、つまり
) ( ) 1 ( 1 c c
i q R q n = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (8-8)
であるから、
0 )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 > − ′ + + ′ + + c q R q R q f q q R q f c c c c c c (8-9)
(8-9)よりシュタッケルベルク寡占の leader 企業の利潤は c q 1 で増加の状態にある。 よって、
leader 企業は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。 またその時の利潤は c q 1 の時より大き
くなっている。前節と同様に、言いかえると、leader 企業のシュタッケルベルク寡占の生
産量の解を S q 1 とし、leader 企業のクールノーの時の利潤とシュタッケルベルクの時の利潤
をそれぞれ、 S c 1 1 ,π π とすると、次のことが成り立つ。
(i) S c q q 1 1 < 、つまり、leader 企業のシュタッケルベルクの時の生産量はクー
ルノーの時よりも多い。
(ii) S c 1 1 π π < 、つまり、leader 企業のシュタッケルベルクの時の利潤はクール
ノーの時よりも大きい。
前節のシュタッケルベルク複占と同様な結論である。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-16-
9.シュタッケルベルク寡占の leader 企業の生産量の反例
前節までは逆需要関数は線形でも一般の関数でも、leader 企業のシュタッケルベル
クの時の生産量はクールノーの時よりも多いし、leader 企業のシュタッケルベルクの時の
利潤はクールノーの時よりも大きいことが成り立つことを示した。
次の議論は、 逆需要関数は線形関数の時に、 leader 企業の数が 1つの場合、 follower
企業の数が変化しても、シュタッケルベルクの leader 企業の生産量は 2 1 c a q
− = で変わら
ないが、逆需要関数は線形ではない一般的な関数の時に、follower 企業の数が変化しても、
シュタッケルベルクの leader 企業の生産量が変わらないか調べる。本節では、線形ではな
い一般的な逆需要関数 Q p − = 1 . 1 を反例にして証明していきたいと思う。
Q p − = 1 . 1 のグラフ
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
0.2
0.4
0.6
0.8
1
この関数の下で、独占の場合、企業数が 2 つの場合、企業数が 3 つの場合に分けて、それ
ぞれの場合の leader企業は同じになるか調べていく。 設定は総生産量をQ、 市場価格を p 、
どの企業も固定費用は0で限界費用が一定の単位あたり 1 . 0 である。
9.1)独占の場合(企業数が 1つしかない)
独占の生産量を m q とおくと、独占企業の利潤は
2 3
1 . 0 ) 1 . 1 ( m m m m m m q q q q q − = − − = π (9-1-1)
(9-1-1)を利潤最大化すると、
0 2 3 1 = − = m
m
m q dq dπ
(9-1-2)
(9-1-2)を解いて、独占生産量は
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-17-
... 4444 . 0 9 4
= = m q (9-1-3)
そのとき、独占利潤は、
... 148 . 0 27 4
= = m π (9-1-4)
9.2) 企業数 2 つの場合(企業 1 は leader 企業で、企業 2 は follower 企業)
まず、企業 2 の利潤は、
) 1 ( 2 1 2 2 q q q + − = π (9-2-1)
(9-2-1)を利潤最大化すると、
0 2
1 2 1 2 1
2
2
2 = + − +
− = q q q q
q dq dπ
(9-2-2)
(9-2-2)を解いて、
) 3 1 3 1 (9 2 ), 3 1 3 1 (
9 2
1 1 1 1 2 q q q q q + − − + + − = (9-2-3)
(9-2-3)によって、解は 2 つがあるので、それぞれのグラフを書くと、
) 3 1 3 1 (9 2
1 1 2 q q q + + − = のグラフ
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0.1
0.1
0.2
0.3
0.4
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-18-
) 3 1 3 1 (9 2
1 1 2 q q q + − − = のグラフ
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
) 3 1 3 1 (9 2
1 1 2 q q q + − − = のグラフによって、 2 q はずっとマイナスなので、使わない。
つまり、 ) 3 1 3 1 (9 2
1 1 2 q q q + + − = を使う。
一方、企業 1 の利潤は、
) 1 ( 2 1 1 1 q q q + − = π (9-2-4)
(9-2-4)に ) 3 1 3 1 (9 2
1 1 2 q q q + + − = を代入すると、
) ) 3 1 3 1 (9 2 1 ( 1 1 1 1 1 q q q q + + − + − = π (9-2-5)
(9-2-5)を利潤最大化すると、
0 ) 3 1 3 1 (9 2
3 1 3 1 (9 2 2
)) 3 3 1 2
3 (9 2 1 (
1 1 1 1
1 1 1
1 1
1
1 = + + − + − + + − +
− +
+
− = q q q q q q
q q
dq dπ
(9-2-6)
(9-2-6)を解いて、
... 466037 . 0 ) 7 2 1 ( 27 2
1 = + = q (9-2-7)
9.3) 企業数が 3 つの場合(企業 1 は leader 企業で、企業 2 と 3 は follower 企業)
まず、企業 2 と 3 の利潤を考える。企業 2の利潤は、
) 1 ( 3 2 1 2 2 q q q q + + − = π (9-3-1)
(9-3-1)を利潤最大化すると、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-19-
0 2
1 3 2 1 3 2 1
2
2
2 = + + − + +
− = q q q q q q
q dq dπ
(9-3-2)
(9-3-2)を解いて、
) 3 3 1 3 3 1 (9 2 ), 3 3 1 3 3 1 (
9 2
3 1 3 1 3 1 3 1 2 q q q q q q q q q + + + − − + + − − − = (9-3-3)
9.22 節と同様に、 ) 3 3 1 3 3 1 (9 2
3 1 3 1 2 q q q q q + + + − − = を使う。
企業 3 の利潤は、
) 1 ( 3 2 1 3 3 q q q q + + − = π (9-3-4)
(9-3-4)を利潤最大化すると、
0 2
1 3 2 1 3 2 1
3
3
3 = + + − + +
− = q q q q q q
q dq dπ
(9-3-5)
(9-3-5)を解いて、
) 3 3 1 3 3 1 (9 2 ), 3 3 1 3 3 1 (
9 2
2 1 2 1 2 1 2 1 3 q q q q q q q q q + + + − − + + − − − = (9-3-6)
同様に、 ) 3 3 1 3 3 1 (9 2
2 1 2 1 3 q q q q q + + + − − = を使う。
) 3 3 1 3 3 1 (9 2
3 1 3 1 2 q q q q q + + + − − = と ) 3 3 1 3 3 1 (9 2
2 1 2 1 3 q q q q q + + + − − = を連
立方程式を解くと、 やや大変である。 仮定によりどの企業も固定費用0、 限界費用一定の 1 . 0 なので、 3 2 q q = となる解があるはずである。ここでは、この解のみを求めよう。 3 2 q q = と
おくと、
) 3 3 1 3 3 1 (9 2
2 1 2 1 2 q q q q q + + + − − = (9-3-7)
になり、(9-3-7)を 2 q について解いたら、
) 5 4 5 2 ( 25 2 ), 5 4 5 2 (
25 2
1 1 1 1 2 q q q q q + − − + + − = (9-3-8)
(9-3-8)によって、解は 2 つがあるので、それぞれのグラフを書くと、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-20-
) 5 4 5 2 ( 25 2
1 1 2 q q q + + − = のグラフ
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0.1
0.1
0.2
0.3
) 5 4 5 2 ( 25 2
1 1 2 q q q + − − = のグラフ
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
グラフによって、 ) 5 4 5 2 ( 25 2
1 1 2 q q q + + − = を使うことにする。 また、 3 2 q q = なので、
) 5 4 5 2 ( 25 2
1 1 3 2 q q q q + + − = = (9-3-9)
一方、leader 企業 1 の利潤は、
) 1 ( 3 2 1 1 1 q q q q + + − = π (9-3-10)
(9-3-10)に(9-3-9)を代入すると、
) ) 5 4 5 2 ( 25 4 1 ( 1 1 1 1 1 q q q q + + − + − = π (9-3-11)
(9-3-11)を 1 q で微分して0とおいて最大化すると、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-21-
0 ) 5 4 5 2 ( 25 4
) 5 4 5 2 ( 25 4 2
)) 5 5 4 2
5 ( 25 4 1 (
1 1 1 1
1 1 1
1 1
1
1 = + + − + − + + − +
− +
+
− = q q q q q q
q q
dq dπ
(9-3-12)
(9-3-12)を解いて、
... 477676 . 0 ) 1 21 ( 15 2
1 = − = q (9-3-13)
では 3 つの場合の leader 企業の生産量を比べてみよう。(9-1-3)、(9-2-7)、(9-3-13)
を比較すると総企業数が 1 のとき、2 のときと 3 のときで leader 企業の生産量は異なるこ
とが分かる。また、反例に使っている関数によって、総企業数が多くなるほど、leader 企
業の生産量が多くなることも分かる。つまり、逆需要関数が一般的な関数のときは、線形
のときのように企業数が変化しても leader 企業の生産量が変わらないことが成り立たない
ことが分かる。
10. 逆需要関数の形状
企業数が 2 つしかない場合を考える。逆需要関数は ) (Q f p = が 0 ) ( < ′ Q f かつ
0 ) ( < ′ ′ Q f である場合には、 1 ) ( ) (
2 1
2 1 1 − >
+ ′ + ′ ′ q q f q q f q が常に満たされるので、企業の最適反応
関数は相手企業の生産量の減少関数になる。したがって、第 7 節で調べたようにシュタッ
ケルベルクの leader 企業はクールノー寡占の場合より利潤が大きくなる。
しかしながら、 逆需要関数 ) (Q f p = が 0 ) ( < ′ Q f という条件は価格が総生産量Qの減
少関数であるということ(縦軸を価格、横軸を生産量とすると、需要曲線が右下がりの曲
線の意味)を意味しており自然な仮定だが、 0 ) ( < ′ ′ Q f というのは逆需要関数のグラフ(需
要曲線)が上に凸ということを意味しており、ふだんほとんどのミクロ経済学の本で見慣
れた需要曲線の形状と異なる(次のページのグラフ参照)。本節では、需要曲線の形状の意
味について考察する。 0 ) ( < ′ ′ Q f の需要曲線 0 ) ( > ′ ′ Q f の需要曲線
価格 p 価格p
生産量Q 生産量 Q
逆需要関数は各消費者の逆需要関数を集計したものである。そこで、消費者の逆需要
関数の形状について考察する。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-22-
財が2つの場合を考える。 消費者の財1への需要 1 q は財1と財2の価格 2 1 , p p と所得Y の関数である。 ) , , ( 2 1 1 1 Y p p q q = と書ける。また、その Y p p , , 2 1 で達成される効用をu と
したとき、財の価格 2 1 , p p が変化しても同じ効用水準u が保証されるような需要量 2 1 ,h h (補償需要量)が定義される。これをヒックスの需要関数 3 という。
このときスルツキーの方程式 4 によると、
1 1
1
1
1
1 q Y q
p h
p q
∂ ∂
− ∂ ∂
= ∂ ∂
(10-1)
である。
(10-1)のスルツキーの方程式の左辺は、 1 q の逆需要関数の傾きの逆数である。右辺の
第 1 項は代替効果 5 を表す項である。この項が通常の場合つねにマイナスかゼロであること
は良く知られている。右辺の第 2 項は所得効果 6 を表す項で、下級財 7 でない限りプラスまた
はゼロである。よって、通常需要曲線の傾きは右下がりになるのである。
ここでは後の議論のために改めて第 1 項について考察しよう。
次の関係が知られている。
j
i
j
i
p p
q U q U
=
∂ ∂ ∂ ∂
(10-2)
(10-2)の証明は次のようである。
財がn財あるときに、予算制約式は、
Y q p q p q p n n ≤ + + + ... 2 2 1 1 (10-2-1)
で消費者は、一定の所得Y の制約下で、財を購買する。また、(10-2-1)を変形すると、
0 ) ... ( 2 2 1 1 ≥ + + + − n n q p q p q p Y (10-2-2)
になる。(10-2-2)を、
0 ) ,..., , ( 2 1 ≥ n q q q s (10-2-3)
3 ヒックス的需要関数(Hicksian demand function)
補償需要関数(Compensating demand function)という呼び方もある。ある財の価格変化に対し、消費者が価格変化
以前の効用水準(最適化の結果)維持するように所得を補償することを、ヒックスの補償という。価格変化に対応した
このような補償を前提として得られる需要関数が補償需要関数である。 4
スルツキー方程式(Slutsky equation)
財の価格が変化したとき、 消費者の需要の変化が所得効果と代替効果に分割されることを数学的に定式化したもの。 5
代替効果(Substitution effect)
消費者選択の理論において、 ある財の価格の変化が他財の需要量に与える効果から所得効果の分を差し引いたもの。
具体的には、同一の無差別曲線上の動きをいう。すなわち、消費者は相対的に高くなった消費財より相対的に安くなっ
た消費財に選択を変える。 6
所得効果(Income effect)
消費者行動の分析において、任意の財の価格下落はより高い無差別曲線の実現をもたらす。高次の無差別曲線の実
現は、価格を一定にして貨幣所得が増大しても可能であり、そのように仮説的に考えられた貨幣所得の増大による当該
財の需要量の変化をその財の価格下落に伴う所得効果という。 7
下級財(Inferior goods)
他の条件を一定にして、所得の増大とともにその需要量の減少するような財のこと。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-23-
とおくことにする。(10-2-3)の下に予算制約付きの効用 ) ,..., , ( 2 1 n q q q U 最大化問題を解かなければ
ならない。そこで、ラグランジュ乗数法 8 を用いると、
) ,..., , ( ) ,..., , ( ) , ,..., , ( 2 1 2 1 2 1 n n n q q q s q q q U q q q L λ λ + = (10-2-4)
ただし、 (10-2-4)の ) ,..., , ( ), ,..., , ( 2 1 2 1 n n q q q s q q q U は凹関数である。 次に ) , ,..., , ( 2 1 λ n q q q L の
最適点を求める。 ) , ,..., , ( 2 1 λ n q q q L を λ , ,..., , 2 1 n q q q で偏微分して、0 とおくと、
0 ) ,..., , (
.....
0
0
2 1
2 2 2
1 1 1
= = ∂ ∂
= − ∂ ∂
= ∂ ∂
= − ∂ ∂
= ∂ ∂
n q q q s L
p q U
q L
p q U
q L
λ
λ
λ
(10-2-5)
(10-2-5)を変形すると、
n
n
p q U
p q U
p q U
∂ ∂
= ∂ ∂
= ∂ ∂
= λ λ λ ,..., , 2
2
1
1 (10-2-6)
(10-2-6)から、次の関係が出てくることがわかる。
j
i
j
i
p q U
p q U
∂ ∂
= ∂ ∂
(10-2-7)
また、(10-2-7)を変形すれば、(10-2)になることが明らかである。
ここで、 2 = n として、 財2を価値尺度財としてその価格を常に1とすることにすれば、
1 2 = p とおいてよいので、(10-2)は、
1
2
1 p
q U q U
=
∂ ∂ ∂ ∂
(10-3)
となる。
ここで効用関数 ) , ( 2 1 q q U が一定とする。すると、陰関数の定理により 0 2
≠ ∂ ∂ q U
であ
るなら、 2 q は 1 q の関数となる。すなわち、
) ( 1 2 q f q = (10-4)
8 ラグランジュ関数(Lagrangian function) x を n次元ベクトル、F を(1次元の)目的関数、 g を k 個の制約式すなわち k 次元関数とし、制約付最適化問題: 0 ) ( ≤ x g の制約下での ) (x F の最大化を考える。条件式と同じ個数の非負のラグランジュ未定乗数、すなわち k 次元ベ
クトル 0 ≥ λ を用いてラグランジュ関数 ) ( ) ( ) , ( x g x F x L λ λ − = を定義すれば、 元の条件付最適化問題は 1関数の x に関
する最大化、 λ に関する最小化という鞍点問題に変換される。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-24-
と書ける。そこで、
0 ) ( , 0 ) ( 1 1 > ′ ′ < ′ q f q f (10-5)
と仮定しよう。こうすると無差別曲線は通常見かけるような右下がりで上に凹になる。そ
こで、(10-4)は次のグラフのような意味である。
2 q
無差別曲線
1 q さて、陰関数の定理により、
) ( 1
2
1 q f
q U q U
′ =
∂ ∂ ∂ ∂
− (10-6)
であるから、(10-3)により、
1 1 ) ( p q f = ′ − (10-7)
である。(10-7)を 1 q に関して解くと、
) ( 1 1 p g q = (10-8)
と表されるとしよう。(10-8)は 1 p のみが変化したとき効用水準を一定に保つには 1 q はどの
ように変化するかを示しているので、 1 p のみが変化したときの 1 h を表す。よって、
) ( 1 1
1 p g p h ′ =
∂ ∂
(10-9)
である。他方、(10-7)、(10-8)から、
)) ( ( 1 1 q f g q ′ − = (10-10)
となる。両辺を 1 q で微分すると、
)) ( )( ( 1 1 1 q f p g ′ ′ − ′ = (10-11)
(10-11)により、
0 ) (
1 ) ( 1
1 < ′ ′ −
= ′ q f
p g (10-12)
となる。最後の不等式は仮定(10-5)による。これと(10-9)から、
0 1
1 < ∂ ∂ p h
(10-13)
すなわち、(10-13)は代替効果はマイナスであるということを意味している。
(10-1)の両辺を 1 p で偏微分すると、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-25-
) ( 1
1 1 1
1
1 2
2 1
1 2
2 1
1 2
p q
Y q q
Y p q
p h
p q
∂ ∂
∂ ∂
+ ∂ ∂
∂ −
∂ ∂
= ∂ ∂
(10-14)
(10-14)の右辺の第 1項の符号がどうなるか知りたい。
そこで、(10-11)の両辺を 1 q で微分すると、
) ( ) ( )) ( )( ( 0 1 1 1 1 q f p g q f p g ′ ′ ′ ′ − ′ ′ − ′ ′ − = (10-15)
これより、
2 1
1
1
1 1 1 )) ( ((
) ( ) (
) ( ) ( ) ( q f q f
q f q f p g p g
′ ′ ′ ′ ′
− = ′ ′
′ ′ ′ ′ = ′ ′ (10-16)
となる。最後の等式は(10-12)を用いた。(10-9)を考慮すると、
2 1
1 2 1
1 2
)) ( (( ) (
q f q f
p h
′ ′ ′ ′ ′
− = ∂ ∂
(10-17)
を得る。
一般には無差別曲線を表す関数 ) ( 1 q f について仮定(10-15)より以上のことは仮定しな
いので、(10-17)より 2 1
1 2
p h
∂ ∂
の符号について何も言えないことが分かった。
そこで効用関数としてよく使われる Cobb-Douglas 関数と CES 関数の場合は(10-17)は
どうなるか次節で調べる。
11.逆需要関数の形状(Cobb-Douglas 関数と CES 関数の場合)
Cobb-Douglas 関数の形をした効用関数とは、
∏ =
= n
i i n i q k q q q U
1 2 1 ) ,..., , ( α
(11-1)
である。そこで、2財しか考えない時に、(11-1)は、 2 1
2 1 2 1 ) , ( α α q kq q q U = (11-2)
になる。この右辺を一定 k ′ ′ とおくことにより 2 1 ,q q に関する無差別曲線を得る。それを 2 q について解くと、
2
1
2 1
1
2 ) ( α α
α − ′ ′
= q k k q (11-3)
となる。そこで、
c k k
= ′ ′
2
1
) ( α (11-4)
とおくと、(11-3)は、
2
1
1 2 α α
−
= cq q (11-5)
になる。また、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-26-
) ( 1 2 q f q = (11-6)
によって、
2
1
1 1 ) ( α α
−
= cq q f (11-7)
(11-7)を 1 q について、1 回、2 回、3 回微分すると、
0 ) ( ) 1 (
1 2
1 1
2
1
<
− = ′
− − α α
α α cq q f (11-8)
0 ) ( ) 2 (
1 2
1
2
2
1 1
2
1
>
+
= ′ ′
− − α α
α α
α α
cq q f (11-9)
0 2 ) ( ) 3 (
1 2
1
2
1
2
2
1 1
2
1
<
− −
+
= ′ ′ ′
− − α α
α α
α α
α α
cq q f (11-10)
前節の(10-9)と(10-12)によって、
) ( 1
1 1
1
q f p h
′ ′ − =
∂ ∂
(11-11)
になる。ここで、(11-9)により、(11-11)は、
0 ) (
1
1 1
1 < ′ ′ −
= ∂ ∂
q f p h
(11-12)
になる。Cobb-Douglas 関数は代替効果はマイナスであることを意味している。では、
Cobb-Douglas 関数の需要曲線の形状はどうなるかを考慮するために、前節の(10-17)は、
2 1
1 2 1
1 2
)) ( (( ) (
q f q f
p h
′ ′ ′ ′ ′
− = ∂ ∂
(11-13)
である。(11-9)と(11-10)によって、(11-13)は
0 )) ( (( ) ( 2
1
1 2 1
1 2
> ′ ′ ′ ′ ′
− = ∂ ∂
q f q f
p h
(11-14)
である。(11-14)は所得効果を無視すれば、Cobb-Douglas 関数の需要曲線は上に凹である、
通常描かれているような需要曲線になることを示している。
これからは、CES 9 関数について需要曲線の形状を考えてみよう。
2 財のときの CES 関数の形をした効用関数とは、
ρ υ
ρ ρ δ δ −
− − + = ) ( ) , ( 2 2 1 1 2 1 q q k q q U (11-15)
である。ただし、 1 , 0 , 0 2 1 − > > > ρ δ δ と仮定する。(11-15)の右辺を一定 k ′ ′ とおくことに
より 2 1 ,q q に関する無差別曲線を得る。それを 2 q について解くと、
9 CES 関数の CESは Constant Elasticity of Substitutionから要約した。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-27-
ρ
ρ υ ρ
δ δ
δ
1
1 2
1
2 2
1 −
−
−
′ ′ = q
k k q (11-16)
となる。そこで、
c k k
=
′ ′ υ ρ
δ 2
1 (11-17)
とおくと、(11-16)は、
ρ ρ
δ δ
1
1 2
1 2
−
−
− = q c q (11-18)
になる。また、(11-6)によって、(11-18)は、
ρ ρ
δ δ
1
1 2
1 1 ) (
−
−
− = q c q f (11-19)
(11-19) を 1 q について、1 回、2回、3 回微分すると、
0 ) (
1 1
1 2
1 1 1
2
1 1 <
−
− = ′
− −
− − − ρ
ρ ρ
δ δ
δ δ q c q q f (11-20)
0 ) 1 ( 1 1 ) (
1 1
1 2
1 2 1
2
1
1 2
1 2
1 2 2 1
2
2
1 1 >
− + +
−
+
= ′ ′
− −
− − −
− −
− − − ρ
ρ ρ ρ
ρ ρ
δ δ
ρ δ δ
δ δ
ρ ρ δ
δ q c q q c q q f
(11-21)
ρ ρ ρ
ρ ρ ρ
ρ ρ ρ
ρ ρ ρ
δ δ
ρ ρ δ δ
δ δ
ρ ρ ρ δ
δ
δ δ
ρ ρ ρ δ
δ
δ δ
ρ ρ ρ δ
δ
1 1
1 2
1 3 1
2
1
1 2
1 2
1 2 3 1
2
2
1
1 2
1 2
1 2 3 1
2
2
1
1 3
1 2
1 3 3 1
2 3
2
1 1
) 1 )( 2 (
) 1 ( 1 1
) 2 2 ( 1 1
1 1 1 2 ) (
− −
− − −
− −
− − −
− −
− − −
− −
− − −
− − − + +
− − −
+
+
− − −
+
+
−
− −
+
= ′ ′ ′
q c q
q c q
q c q
q c q q f
(11-22)
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-28-
(11-22)について、 2 1 1 − ≤ < − ρ と
2 1
− > ρ の二つの範囲を分けて考えてみると、
2 1 1 − ≤ < − ρ のときに、(11-22)は、
) ( 1 q f ′ ′ ′ の符号は明らかでない (11-23)
2 1
− > ρ のときに、(11-22)は、
0 ) ( 1 < ′ ′ ′ q f (11-24)
である。次に、CES関数のときの(11-11)の符号を考える。(11-21)によって、(11-11)は、
0 ) (
1
1 1
1 < ′ ′ −
= ∂ ∂
q f p h
(11-25)
になる。CES 関数は代替効果はマイナスであることを意味している。では、CES関数の需要
曲線の形状はどうなるかを考慮する。つまり、(11-13)の符号を考える。
2 1 1 − ≤ < − ρ のときに、(11-21)と(11-23)によって、(11-13)は、
2 1
1 2 1
1 2
)) ( (( ) (
q f q f
p h
′ ′ ′ ′ ′
− = ∂ ∂
の符号が明らかでない (11-26)
2 1
− > ρ のときに、(11-21)と(11-24)によって、(11-13)は、
0 )) ( (( ) ( 2
1
1 2 1
1 2
> ′ ′ ′ ′ ′
− = ∂ ∂
q f q f
p h
(11-27)
(11-26)と(11-27)により、所得効果を無視しても、CES 関数の需要曲線の形状は必ず、
Cobb-Douglas 関数のように、上に凹であるとは限らない。しかし、ほとんど場合の 2 1
− > ρ
のときに、所得効果を無視すれば、CES 関数の需要曲線は上に凹である通常描かれているよ
うな需要曲線となるが、わずかな場合の 2 1 1 − ≤ < − ρ のときに、CES 関数の需要曲線は上
に凸か凹か何とも言えない。
以上を要約すると、所得効果を無視すれば、
i) Cobb-Douglas 関数の代替効果がマイナスで、需要曲線の形状は上に凹である需要
曲線である。
ii) CES 関数の代替効果がマイナスである。需要曲線の形状は、 2 1
− > ρ の時に上に凹
である需要関数だが、 2 1 1 − ≤ < − ρ の時には凸か凹か何とも言えない。
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-29-
12.クールノー複占、シュタッケルベルク複占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)
前節まで、企業の費用関数は一定の限界費用cと仮定してきた。この節からは、企業
の費用関数が、一般の費用関数 ) ( i q c C = の場合を扱う。企業の費用関数は一般的な関数
の場合でも、一定の限界費用のときのように、leader 企業のシュタッケルベルクの時の生
産量はクールノーの時よりも多いことと、 leader 企業のシュタッケルベルクの時の利潤は
クールノーの時よりも大きいことが成立するかどうか、証明していきたいと思う。
まず、この節では、市場に企業が 2 つしかない複線のとき、線形の逆需要関数と一般
の費用関数の場合を考える。次の節では、市場に企業数がnの寡占の場合を考える。費用
関数 ) ( i q c C = は、普通、 0 ) ( > ′ i q c 、 0 ) ( > ′ ′ i q c (限界費用逓増)である。次のグラフの
ようである。 ) ( i q c
費用曲線
i q 12.1 クールノー複占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
逆需要関数 Q a p − = 、また、市場には、企業が 2 つしかない。
企業 1の利潤 1 π は、
) ( )) ( ( ) ( 1 2 1 1 1 1 q c q q a q q c p q − + − = − (12-1-1)
企業 1 の利潤を最大化する。(12-1-1)を微分して 0 とおくと、
0 ) ( 2 1 2 1 = ′ − − − q c q q a (12-1-2)
(12-1-2)を ) , ( 2 1 q q F とおくと、 0 1 ≠ F ならば陰関数の定理により(12-1-2)は、
) ( 2 1 q r q = (12-1-3)
と解ける。これが企業 1 の最適反応関数である。この時、(12-1-3)は微分可能で
) ( 2 1 ) (
1 1
2 2 q c F
F q r ′ ′ − −
− − = − = ′ (12-1-4)
0 ) ( 1 > ′ ′ q c によって、(12-1-4)は、0より小さい。つまり、企業 1 の最適反応関数(12-1-3)
が 2 q の減少関数である。
企業 2についても同じように議論できる。企業 2 の利潤 2 π は、
) ( )) ( ( ) ( 2 2 1 2 2 2 q c q q a q q c p q − + − = − (12-1-5)
である。これは(12-1-1)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しい。したがって、企業 2 の最適
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-30-
反応関数は(12-1-3)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しくなる。つまり、
) ( 1 2 q r q = (12-1-6)
となる。
最適反応関数 r が 2 q の減少関数であると仮定すると 2 q の関数(12-1-3)は逆関数が存
在し、
) ( 1 1
2 q r q − = (12-1-7)
と書ける。企業 1 の最適反応関数と企業 2 の最適反応関数は互いに逆関数になる
12.2 シュタッケルベルク複占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
企業 2 は企業 1 の生産量 1 q を見てから自分の生産量 2 q を決める。企業 2 の利潤は
) ( )) ( ( 2 2 1 2 2 q c q q a q − + − = π (12-2-1)
であり、企業 2 の最適反応関数は
) ( 1 2 q r q = (12-2-2)
である。企業 1 の利潤は
) ( ))) ( ( ( 1 1 1 1 1 q c q r q a q − + − = π (12-2-3)
である。(12-2-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 ) ( ) ( ) ( 2 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − ′ − − − = ∂ ∂ q c q r q q r q a q π
(12-2-4)
第 12.1 節でしたクールノー複占の解を c c q q 2 1 , とする。(12-1-2)より、
0 ) ( 2 1 2 1 1
1 = ′ − − − = ∂ ∂ c c c q c q q a q π
(12-2-5)
になる。企業 2 の最適反応関数 ) ( 1 2 q r q = が 0 ) ( 1 < ′ q r であり、 0 1 > q によって、
0 ) ( 1 1 > ′ − c c q r q (12-2-6)
であり、また定義により ) ( 1 2 c c q r q = であるから、
0 ) ( ) ( ) ( 2 1 1 1 1 1 > ′ − ′ − − − c c c c c q c q r q q r q a (12-2-7)
(12-2-7)よりシュタッケルベルク複占の企業 1 の利潤は c q 1 で増加の状態にある。よって、
企業 1 は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。またその時の利潤は c q 1 の時より大きくな
っている。つまり、複占のとき、線形の需要関数において、企業の費用関数は一般的な関
数の場合でも、一定の限界費用のときのように、leader 企業のシュタッケルベルクの時の
生産量はクールノーの時よりも多いことと、leader 企業のシュタッケルベルクの時の利潤
はクールノーの時よりも大きいことが成立することが分かった。
13. クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)
前節では、市場に企業が 2つしかない複占の場合を考えた。この節では、市場に企業数
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-31-
が nである寡占の場合を考える。需要関数は線形で、費用関数が一般的な関数である。
13.1 クールノー寡占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
逆需要関数 Q a p − = 、また、市場には、企業数がnである。
企業 1の利潤 1 π は、
) ( )) ... ( ( ) ( 1 2 1 1 1 1 q c q q q a q q c p q n − + + + − = − (13-1-1)
企業 1 の利潤を最大化する。(12-1-1)を微分して 0 とおくと、 0 ) ( ) ... ( 2 1 3 2 1 = ′ − + + + − − q c q q q q a n (13-1-2)
ここで、企業 iの生産量が、 i q のとき、企業 i以外の企業の生産量の合計が、 i q − である
とする。陰関数の定理により(13-1-2)は、
) ( 1 1 − = q r q (13-1-3)
と解ける。
つまり、企業 iの利潤 i π は、
) ( )) ... ( ( ) ( 2 1 i n i i i q c q q q a q q c p q − + + + − = − (13-1-4)
企業 iの利潤を最大化する。(13-1-4)を微分して 0 とおくと、 0 ) ( ) ... ( 2 1 1 2 1 = ′ − + + + + + − − + − i n i i i q c q q q q q q a (13-1-5)
陰関数の定理により(13-1-5)は、 ) ( i i q r q − = (13-1-6)
これが企業 iの最適反応関数 10 である。この時、(13-1-6)は微分可能で
) ( 2 1 ) (
i i
i i q c F
F q r ′ ′ − −
− − = − = ′ −
− (13-1-7)
0 ) ( > ′ ′ i q c によって、(13-1-7)は、0 より小さい。つまり、企業 iの最適反応関数(13-1-6)
が i q − の減少関数である。
13.2 シュタッケルベルク寡占(線形の需要関数、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
follower 企業 i ) ,..., 2 ( n i = の最適反応関数はすべて同じと仮定すると、最適反応
関数は、 ) ( 1 q r q i = ) ,..., 2 ( n i = (13-2-1)
となる。 ) ( ) ( ) 1 ( ) ( ... ) ( ... 1 1 1 1 2 q R q r n q r q r q q n = − = + + = + + (13-2-2)
とすると、 0 ) ( 1 < ′ q r であるならば、 0 ) ( 1 < ′ q R である。
そのとき、企業 1 の利潤は ) ( )) ( ( ( ) ( )) ... ( ( 1 1 1 1 1 2 1 1 1 q c q R q a q q c q q q a q n − + − = − + + + − = π (13-2-3)
(13-2-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 ) ( ) ( ) ( 2 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − ′ − − − = ∂ ∂ q c q R q q R q a q π
(13-2-4)
10 企業数が n の場合の最適反応関数の詳しい証明は、第 17 節を参考。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-32-
クールノー寡占の解を c i
c q q , 1 ) ,..., 2 ( n i = とし、これと(13-2-1)より、(13-1-2)は、
0 ) ( ) 1 ( 2 1 1 1
1 = ′ − − − − = ∂ ∂ c c
i c q c q n q a
q π ) ,..., 2 ( n i = (13-2-5)
企業 n ,..., 2 の最適反応関数はそれぞれ ) ( ),..., ( 1 1 2 q r q q r q n = = であるから、
) ( ) 1 ( 1 q R q n i = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (13-2-6)
0 ) ( 1 < ′ c q R であり、 0 1 > c q であるから、
0 ) ( 1 1 > ′ − c c q R q ) ,..., 2 ( n i = (13-2-7)
であり、また定義により、 ) ( ),..., ( 1 1 2 c c
n c c q r q q r q = = 、つまり
) ( ) 1 ( 1 c c
i q R q n = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (13-2-8)
であるから、
0 ) ( ) ( ) ( 2 1 1 1 1 1 > ′ − ′ − − − c c c c c q c q R q q R q a (13-2-9)
(13-2-9)よりシュタッケルベルク寡占の leader 企業の利潤は c q 1 で増加の状態にある。 よっ
て、leader 企業は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。またその時の利潤は c q 1 の時より
大きくなっている。前節のシュタッケルベルク複占と同様な結論である。
14.クールノー複占、シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数
が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
第 12 節と第 13節では、需要関数が線形と仮定した。この節から、一般的な需要関数
と一般的な費用関数を使う。ただし、 0 ) ( < ′ ′ Q f の場合を考慮する。この場合でも、第 12
節と第 13 節と同じ結論が成立するか、まず、複占の場合を考える。
14.1 クールノー複占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
企業数は 2、逆需要関数は ) (Q f p = とする。 0 ) ( < ′ Q f を仮定しておく。これは需要
曲線が右下がりであることを意味している。また、 0 ) ( < ′ ′ Q f 11 とおく。また、費用関数
) ( i q c に関しては、 0 ) ( > ′ i q c (費用関数の接線の傾きが正)、 0 ) ( > ′ ′ i q c (限界費用逓増)
である。
そのとき、企業 1 の利潤は
) ( ) ( ) ( ) ( 1 2 1 1 1 1 1 q c q q f q q c Q f q − + = − = π (14-1-1)
(14-1-1)を最大化する 1 q を求めるため、(14-1-1)を 1 q で偏微分して0とおくと、
0 ) ( ) ( ) ( 1 2 1 1 2 1 1
1 = ′ − + ′ + + = ∂ ∂ q c q q f q q q f q π
(14-1-2)
11 このような仮定をする理由は、第 16 節を参考。
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
-33-
(14-1-2)を ) , ( 2 1 q q F とおくと、 0 1 ≠ F ならば陰関数の定理により(14-1-2)は、
) ( 2 1 q r q = (14-1-3)
と解ける。これが企業 1 の最適反応関数である。この時、(14-1-3)は微分可能で
) ( ) ( ) ( 2 ) ( ) ( ) (
1 2 1 1 2 1
2 1 1 2 1
1
2 2 q c q q f q q q f
q q f q q q f F F q r
′ ′ − + ′ ′ + + ′ + ′ ′ + + ′
− = − = ′ (14-1-4)
ここで、仮定により、 0 ) ( 2 1 < + ′ q q f 、 0 ) ( 2 1 < + ′ ′ q q f 、 0 ) ( 1 > ′ ′ q c と 0 1 > q によって、
(14-1-4)の最後の等式の右辺が負になることが分かる。つまり、
0 ) ( ) ( ) ( 2
) ( ) (
1 2 1 1 2 1
2 1 1 2 1 < ′ ′ − + ′ ′ + + ′
+ ′ ′ + + ′ −
q c q q f q q q f q q f q q q f
(14-1-5)
これは、企業 1 の最適反応関数(14-1-3)が 2 q の減少関数であることを意味している。
企業 2についても同じように議論できる。企業 2 の利潤は、
) ( ) ( ) ( ) ( 2 2 1 2 2 2 2 q c q q f q q c Q f q − + = − = π (14-1-6)
である。これは(14-1-1)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しい。したがって、企業 2 の最適
反応関数は(14-1-3)で 1 q と 2 q を入れ替えたものに等しくなる。つまり、
) ( 1 2 q r q = (14-1-7)
となる。
最適反応関数 r が 2 q の減少関数であると仮定すると 2 q の関数(14-1-3)は逆関数が存
在し、
) ( 1 1
2 q r q − = (14-1-8)
と書ける。企業 1 の最適反応関数と企業 2 の最適反応関数は互いに逆関数になる。
14.2 シュタッケルベルク複占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)
仮定は、第 14.1 節と同じである。
企業 2 は企業 1 の生産量 1 q を見てから自分の生産量 2 q を決める。企業 2 の利潤は
) ( ) ( ) ( ) ( 2 2 1 2 2 2 2 q c q q f q q c Q f q − + = − = π (14-2-1)
であり、企業 2 の最適反応関数は
) ( 1 2 q r q = (14-2-2)
である。企業 1 の利潤は
) ( )) ( ( ) ( ) ( ) ( ) ( 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 q c q r q f q q c q q f q q c Q f q − + = − + = − = π (14-2-3)
である。(14-2-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 ) ( )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − ′ + + ′ + + = ∂ ∂ q c q r q r q f q q r q f q π
(14-2-4)
第 14.1 節でしたクールノー複占の解を c c q q 2 1 , とする。(14-1-2)より、
0 ) ( ) ( ) ( 1 2 1 1 2 1 1
1 = ′ − + ′ + + = ∂ ∂ c c c c c c q c q q f q q q f q π
(14-2-5)
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-34-
になる。企業 2の最適反応関数 ) ( 1 2 q r q = が 0 ) ( 1 < ′ q r であるとすれば、 0 ) ( < ′ Q f である
から、
) ( )) ( 1 )( ( 2 1 1 1 2 1 1 c c c c c c c q q f q q r q q f q + ′ > ′ + + ′ (14-2-6)
であり、また定義により ) ( 1 2 c c q r q = であるから、
0 ) ( )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 1 > ′ − ′ + + ′ + + c c c c c c c q c q r q r q f q q r q f (14-2-7)
(14-2-7)よりシュタッケルベルク複占の企業 1 の利潤は c q 1 で増加の状態にある。よって、
企業 1 は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。またその時の利潤は c q 1 の時より大きくな
っている。一般的な需要関数と一般的な費用関数の場合でも、複占のとき、今までと同じ
結論が成立する。
15.クールノー寡占、シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数
が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
最後に、寡占のとき、一般的な需要関数と一般的な費用関数の場合も、leader 企業の
シュタッケルベルクの時の生産量はクールノーの時よりも多いことと、leader 企業のシュ
タッケルベルクの時の利潤はクールノーの時よりも大きいことが成立するかどうか、本節
で証明したと思う。全ての仮定は、第 14 節の複占のときと同じである。ただし、寡占のと
き、企業数はnとする。
15.1 クールノー寡占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の場合)
企業数はn、逆需要関数は ) (Q f p = とする。 0 ) ( < ′ Q f を仮定しておく。これは需要曲
線が右下がりであることを意味している。 また、 0 ) ( < ′ ′ Q f 12 とおく。 また、 費用関数 ) ( i q c に関しては、 0 ) ( > ′ i q c (費用関数の接線の傾きが正)、 0 ) ( > ′ ′ i q c (限界費用逓増)であ
る。
企業 iの生産量が、 i q のとき、企業 i以外の企業の生産量の合計が、 i q − であるとする。
つまり、
n i i i q q q q q q + + + + + + = + − − ... ... 1 1 2 1 (15-1-1)
そのとき、企業 1の利潤は
) ( ) ( ) ( ) ( 1 1 1 1 1 1 1 q c q q f q q c Q f q − + = − = − π (15-1-2)
(15-1-2)を最大化する 1 q を求めるため、(15-1-2)を 1 q で偏微分して0とおくと、
0 ) ( ) ( ) ( 1 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − + ′ + + = ∂ ∂
− − q c q q f q q q f q π
(15-1-3)
陰関数の定理により(15-1-3)は、
) ( 1 1 − = q r q (15-1-4)
と解ける。つまり、企業 iの利潤 i π は、
12 このような仮定をする理由は、第 16 節を参考。
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) ( ) ( ) ( ) ( i i i i i i i q c q q f q q c Q f q − + = − = − π (15-1-5)
企業 iの利潤を最大化する。(15-1-5)を微分して 0 とおくと、
0 ) ( ) ( ) ( = ′ − + ′ + + = ∂ ∂
− − i i i i i i i
i q c q q f q q q f q π
(15-1-6)
陰関数の定理により(15-1-6)は、 ) ( i i q r q − = (15-1-7)
これが企業 iの最適反応関数 13 である。この時、(15-1-7)は微分可能で
) ( ) ( ) ( 2 ) ( ) (
) ( i i i i i i
i i i i i
i
i i q c q q f q q q f
q q f q q q f F F q r
′ ′ − + ′ ′ + + ′ + ′ ′ + + ′
− = − = ′ − −
− − − − (15-1-8)
ここで、仮定により、 0 ) ( < + ′ −i i q q f 、 0 ) ( < + ′ ′ −i i q q f 、 0 ) ( > ′ ′ i q c と 0 > i q によって、
(15-1-8)は、
0 ) ( ) ( ) ( 2
) ( ) ( <
′ ′ − + ′ ′ + + ′ + ′ ′ + + ′
− − −
− −
i i i i i i
i i i i i
q c q q f q q q f q q f q q q f
(15-1-9)
つまり、企業 iの最適反応関数(15-1-7)が i q − の減少関数であることが明らかである。
15.2 シュタッケルベルク寡占(一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f 、費用関数が 0 ) ( > ′ ′ i q c の
場合)
仮定は、第 15.1 節と同じである。
follower 企業 i ) ,..., 2 ( n i = の最適反応関数はすべて同じと仮定すると、 最適反応関数は、
) ( 1 q r q i = ) ,..., 2 ( n i = (15-2-1)
となる。 ) ( ) ( ) 1 ( ) ( ... ) ( ... 1 1 1 1 2 q R q r n q r q r q q n = − = + + = + + (15-2-2)
とすると、 0 ) ( 1 < ′ q r であるならば、 0 ) ( 1 < ′ q R である。
そのとき、(15-1-1)によって、企業 1 の利潤は、
) ( )) ( ( ) ( ) ( ) ( ) ( 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 q c q R q f q q c q q f q q c Q f q − + = − + = − = − π (15-2-3)
(15-2-3)の最後の等式の右辺を 1 q で偏微分して0とおくと
0 ) ( )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − ′ + + ′ + + = ∂ ∂ q c q R q R q f q q R q f q π
(15-2-4)
クールノー寡占の解を c i
c q q , 1 ) ,..., 2 ( n i = とすると、(15-1-2)は、
0 ) ( ) ( ) ( 1 1 1 1 1 1 1
1 = ′ − + ′ + + = ∂ ∂
− − q c q q f q q q f q
c c c c c π (15-2-5)
企業 n ,..., 2 の最適反応関数はそれぞれ ) ( ),..., ( 1 1 2 q r q q r q n = = であるから、
) ( ) 1 ( 1 q R q n i = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (15-2-6)
(15-2-4)が 0 ) ( 1 < ′ q R であるとすれば、 0 ) ( < ′ Q f であるから、
13 企業数が n の場合の最適反応関数の詳しい証明は、第 17 節を参考。
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) ( )) ( 1 )( ( 1 1 1 1 1 1 1 c c c c c c c q q f q q R q q f q − − + ′ > ′ + + ′ (15-2-7)
であり、また定義により、 ) ( ),..., ( 1 1 2 c c
n c c q r q q r q = = 、つまり
) ( ) 1 ( 1 c c
i q R q n = − ) ... ( ; 3 2 n q q q = = = (15-2-8)
であるから、
0 ) ( )) ( 1 ))( ( ( )) ( ( 1 1 1 1 1 1 1 > ′ − ′ + + ′ + + q c q R q R q f q q R q f c c c c c c (15-2-9)
(15-2-9)よりシュタッケルベルク寡占の leader 企業の利潤は c q 1 で増加の状態にある。 よっ
て、leader 企業は c q 1 より多い生産量で均衡になっている。またその時の利潤は c q 1 の時より
大きくなっている。前節と同じ結論である。
つまり、線形の需要関数の場合、一般的な需要関数( 0 ) ( < ′ ′ Q f )の場合、一定の限
界費用の場合、一般的な費用関数の場合、どの場合でも、leader 企業のシュタッケルベル
ク寡占の生産量の解を S q 1 とし、leader 企業のクールノーの時の利潤とシュタッケルベルク
の時の利潤をそれぞれ、 S c 1 1 ,π π とすると、次のことが成り立つ。
(i) S c q q 1 1 < 、つまり、leader 企業のシュタッケルベルクの時の生産量はクー
ルノーの時よりも多い。
(ii) S c 1 1 π π < 、つまり、leader 企業のシュタッケルベルクの時の利潤はクール
ノーの時よりも大きい。
16.一般的な需要関数が 0 ) ( < ′ ′ Q f の仮定の必要性
第 14 節と第 15節では、一般的な需要関数に関しては、 0 ) ( < ′ ′ Q f と仮定している。な
ぜ、こういう仮定をするか、この節で説明したいと思う。また、この 0 ) ( < ′ ′ Q f の仮定は、
最適反応とどのような影響があるかも説明したいと思う。
まず、一般的な需要関数は、 ) ( ) ( y x f Q f + = (16-1)
とする。そのとき、利潤最大の条件 0 ) ( ) ( ) ( = ′ − + ′ + + x c y x f x y x f (16-2)
の左辺を ) , ( y x g とすると、
) ( ) ( ) ( 2 x c y x f x y x f x g ′ ′ − + ′ ′ + + ′ =
∂ ∂
(16-3)
である。 0 ) ( < + ′ y x f 、 0 ) ( > ′ ′ x c であるが、これらの条件だけでは、(16-3)の右辺の正負
が分からない。ここで、 0 ) ( < + ′ ′ y x f と仮定 14 すれば、(16-3)の右辺は負であることが分
かる。陰関数の定理によって、(16-2)は ) (y r x = であることを表している。また、 ) (y r x =
が微分可能であると、
14 この仮定の下、逆需要関数の形状に関しては、第 11 節を参考。
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x g y g
y r
∂ ∂ ∂ ∂
− = ′ ) ( (16-4)
である。(16-4)の右辺の分子が、(16-2)の下で、 ) ( ) ( y x f x y x f + ′ ′ + + ′ であり、 0 > x と
0 ) ( < + ′ ′ y x f の仮定において、負であることが分かる。これと(16-3)によって、
0 ) ( < + ′ ′ y x f の仮定の下で、(16-4)の右辺が負であることが分かる。つまり、最適反応関
数 ) (y r が減少関数であることを意味している。これが成立するために、 0 ) ( < + ′ ′ y x f と仮
定する必要がある。
今、(16-4)は、
0 ) ( ) ( ) ( 2
) ( ) ( ) ( < ′ ′ − + ′ ′ + + ′
+ ′ ′ + + ′ − = ′
x c y x f x y x f y x f x y x f y r (16-5)
であることが分かる。 0 ) ( < + ′ y x f 、 0 ) ( > ′ ′ x c と 0 ) ( < + ′ ′ y x f の仮定の下で、
) ( ) ( ) ( ) ( ) ( 2 y x f x y x f x c y x f x y x f + ′ ′ + + ′ < ′ ′ − + ′ ′ + + ′ (16-6)
が分かる。また、 0 ) ( ) ( ) ( 2 < ′ ′ − + ′ ′ + + ′ x c y x f x y x f によって、(16-6)は、
1 ) ( ) ( ) ( 2
) ( ) ( <
′ ′ − + ′ ′ + + ′ + ′ ′ + + ′
x c y x f x y x f y x f x y x f
(16-7)
になる。(16-5)と(16-7)により、 0 ) ( 1 < ′ < − y r (16-8)
であることが分かる。 これは、 最適反応関数が減少関数であり、 その傾きは 1 − より大きく、
緩やかであることを意味している。 ただし、 0 ) ( < + ′ ′ y x f と仮定する必要である。 以上は、
0 ) ( < + ′ ′ y x f の仮定の必要性を説明した。
17.クールノー寡占の均衡の存在
第 13 節と第 15 節で、クールノー寡占について説明した。この節では、クールノー寡
占の均衡の存在とその均衡が唯一であることを証明したいと思う。
まず、市場に企業数がnである。企業 iの生産量を i q とする。また、企業 i以外の企業の
生産量の合計を i q − とする。つまり、
n i i i q q q q q q + + + + + + = + − − ... ... 1 1 2 1 (17-1)
ここで、 i q と i q − を(16-1)から(16-3)の xと y に代入すれば、
) ( ) ( i i q q f Q f − + = (17-2)
そのとき、利潤最大の条件 0 ) ( ) ( ) ( = ′ − + ′ + + − − i i i i i i q c q q f q q q f (17-3)
の左辺を ) , ( i i q q g − とすると、
クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
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) ( ) ( ) ( 2 i i i i i i i
q c q q f q q q f q g ′ ′ − + ′ ′ + + ′ =
∂ ∂
− − (17-4)
が成立する。(17-3)は ) ( i i q r q − = (企業 iの最適反応関数が i q − と対応)であることを表し
ている。また、 ) ( i i q r q − = が微分可能であると、 0 ) ( < + ′ −i i q q f 、 0 ) ( > ′ ′ i q c 、
0 ) ( < + ′ ′ −i i q q f の仮定の下で、第 16節のような結論が出る。つまり、
0 ) ( 1 < ′ < − −i q r (17-5)
が言える。 ) ( i q r − は、 n i i q q q q q ,..., , ,..., , 1 1 2 1 + − に依存しているため、
1 ) ( ) (
⋅ ′ = ∂
∂ −
− i
j
i q r q q r
; ) ( j i ≠ (17-6)
である。よって、(17-5)は、
0 ) (
1 < ∂
∂ < − −
j
i
q q r
; ) ( j i ≠ (17-7)
になる。 ) ,..., , ( * * 2
* 1 n q q q が企業の均衡生産量の集合とすると、
) ( ),..., ( ), ( * * * 2
* 2
* 1
* 1 n n q r q q r q q r q − − − = = = (17-8)
が得られる。ここで、 * * 2
* 1 ... n q q q = = = という均衡が存在することを証明する。
) ( ) ) 1 (( q f q n r q = − − とおく。 0 ) 0 ( 0 ) 0 ( < − = r f であり、 0 Q が生産量として 0 ) 1 ( Q n − が市場に来ると、市場価格が0になるとおくと、 0 ) ) 1 (( ) ( 0 0 0 0 > = − − = Q Q n r Q Q f が得
られる。よって、 ) (q f が連続的な関数であれば、均衡生産量 * 0 q として、 0 ) ( *
0 = q f が存在
し、その時、 ) ) 1 (( * 0
* 0 q n r q − = である。ここで、 * *
2 * 1
* 0 ... n q q q q = = = = とすれば、
* * 2
* 1 ... n q q q = = = という均衡が存在することが分かる。
次に、その均衡が唯一であることを証明する。ここで、2 つの異なる均衡生産量の集合
n q q q ′ ′ ′ ,..., , 2 1 と n q q q ′ ′ ′ ′ ′ ′ ,..., , 2 1 がるとする。 i i i q q q ′ ′ − ′ = ∆ ; ) ,..., 2 , 1 ( n i = とおく。(17-7)によ
り、最適反応関数は減少関数であるから、最低一つの企業 iが 0 > ∆ i q である。そのとき、
(17-5)により、 0 ... ... 1 1 2 1 < ∆ + + ∆ + ∆ + + ∆ + ∆ = ∆ + − − n i i i q q q q q q であり、また、
i i i q q q − − ∆ − = ∆ < ∆ (17-9)
が分かる。(17-9)から、 0 < ∆ + ∆ −i i q q (17-10)
が得られる。反対に、ある数の企業 j として i j − ∈ が、 0 < ∆ j q であるとする。上の説明と
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-39-
同様に、そのとき、最適反応関数が減少関数なので、 0 > ∆ − j q である。よって、
j j q q − ∆ < ∆ (17-11)
が分かる。(17-11)は、
j j q q − ∆ < ∆ − (17-12)
と同値なので、整理すると、
j j q q − ∆ + ∆ < 0 (17-13)
が得られる。しかし、 j j i i q q q q − − ∆ + ∆ = ∆ + ∆ である。したがって、(17-10)と(17-13)が
お互いに矛盾している。これは、均衡が一つ以上存在しないと意味している。よって、ク
ールノー寡占の均衡が唯一であると証明できた。
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Conclusions
市場に企業数をn、企業 iの生産量を i q 、総生産量をQ、市場価格を p 、どの企業も
固定費用は0で限界費用が一定のcと仮定する上で次のことが言える。
逆需要関数が簡単な線形 Q a p − = のときに、 シュタッケルベルクの leader 企業は
クールノー企業より生産量が多いし、高い利潤を得ている。また、シュタッケルベルクの
leader 企業の生産量は follower 企業の数に依存しない。また、シュタッケルベルクの
leader 企業が複数の場合には、全ての leader 企業の生産量は同じであるが、leader 企業
の数によって、 その生産量が変わってくる。(leader 企業の数が多くなるほど、 その leader
企業の生産量は少なくなる。)
逆需要関数が一般の ) (Q f p = (需要曲線が右下がりであることで、 0 ) ( < ′ Q f )のと
きには、leader 企業のシュタッケルベルクの時の生産量はクールノーの時よりも多いし、
利潤もクールノーの時よりも大きい。 これは、 逆需要関数が線形のときと同じ結論である。
ただし、クールノー複占では、 1 ) ( ) (
2 1
2 1 1 − >
+ ′ + ′ ′ q q f q q f q または、 2
) ( ) (
2 1
2 1 1 − <
+ ′ + ′ ′ q q f q q f q の条件で
企業 1 の最適反応関数が 2 q の減少関数である。一般に、 ) (x f y = のとき、 y の x弾力性ε
として、 ) ( ) ( x f x f x
′ = ε で定義される。
) ( ) (
2 1
2 1 1 q q f
q q f q + ′ + ′ ′
は 2 q を一定として、 1 q だけが変化し
たときに需要曲線の傾き ) ( 2 1 q q f + ′ がどのくらい変わるか、一種の弾力性を表しているこ
とも発見した。企業 2 についても同じように議論できる。ところで、逆需要関数が一般的
な関数のときは、線形のときのように企業数が変化しても leader 企業の生産量が変わらな
いことが成り立たないことが分かった。
一般の需要関数の場合、代替効果はマイナスになることが確認された。しかし、関
数によっては需要曲線がどんな形状(凹凸)になるかははっきり言えない。Cobb-Douglas
関数の場合は、代替効果がマイナスで、所得効果を無視すれば、需要曲線の形状は上に凹
である。 これに対し、 CES関数の場合は、 代替効果はマイナスであるが、 需要曲線の形状は、
ほとんどの場合には、上に凹である需要関数の形をしているが、場合によっては上に凸で
ある形状になるときもあることが分かった。
また、一般的な費用関数の場合も、逆需要関数が線形のときと逆需要関数が一般的
であるとき(ただし、 0 ) ( < ′ ′ Q f と仮定)、複占と寡占の下でも、leader 企業のシュタッケ
ルベルクの時の生産量はクールノーの時よりも多いし、利潤もクールノーの時よりも大き
いことが言える。クールノーの理論では、最適反応関数が減少関数であることをまとめる
ために 0 ) ( < ′ ′ Q f の仮定が必要である。また、最後に、クールノー寡占の均衡が存在し、唯
一であることも分かった。
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クールノー均衡とシュタッケルベルク均衡 99K1176J ヨーディン スパシ
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参考文献リスト
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・ 金森久雄・荒 憲治郎・森口親司[編]、「有斐閣・経済辞典」、有斐閣、1971 年
・ 鈴木義也、「例解 微分積分学演習」、共立出版株式会社、1992 年
・ 武隈 慎一、「演習新経済学ライブラリ=1 演習ミクロ経済学」、新世社、1994 年
・ 西村和雄、「ミクロ経済学」、東洋経済新報社、1990 年
・ 水本久夫、「微分積分学の基礎」、培風館、1983 年
・ ロバート・ギボンズ,福岡正夫/須田伸一 訳、「経済学のためのゲーム理論入門」、創文社、
1995 年
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