の た 外 る 伝 け い 四 目 ら で ん れ は ド 6 ィ ブ だ イ ウ 報 は に...

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金紅石 ω 30 使 ・S 使 使 168

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Page 1: の た 外 る 伝 け い 四 目 ら で ん れ は ド 6 ィ ブ だ イ ウ 報 は に …isidora.sakura.ne.jp/data/fusigi1.pdf · 姪 に あ た る 作 家 で 、 彼 女

●不思議な物語①

『悪魔

の恋人』

稲生平太郎

金紅石

ここ十年ほどのあいだに欧米の幻想小説や

怪奇小説は随分と翻訳紹介されたけれど、た

とえばE

・F

・ブライラーの

『ざ

Qざ懸ヽヽれ

 ∽ヽヽヽヽヽヽ 「ヽヽいヽsヽ ヽヽヽ ∽ミヽヽヽヽヽミヽヽヽヽ

『ヽヽいヽミ

(一九七八)や

『ざ

Qミヽヽさ

●ミ了

ミヽヽミヽミ

『ヽヽいヽsヽ

(一九八三)

を経けば

目瞭然、それらはほんの九牛の

一毛にすぎな

い。もちろん、層みたいな作品が多いのは判

っている。でも、死ぬまでにできるだけ沢山

〈不思議な物語〉を読みたいと念じてい

る僕

みたいな人間は、影しい量の物語の山のどこ

かに素晴しい宝が隠されているかもしれない

と、今日も吉本屋に註文の手紙を書き、本棚

に手を伸ばす……。

そういうわけで、今回から連載を始めるの

は、僕のささやかな

〈不思議な物語〉狩りの

報告書――扱うのは主として英米の作品、時

代としては十八世紀後半から現代まで。日本

ではほとんど知られておらず、紹介の可能性

も薄い作品を中心にしたいと思う。

皮切りとして、J

・W

oプロウデ

ィ=イネ

}ゴ>

ω8一一o‐F目8

(一八四八―?)

『悪魔

の恋人

『ざ

じミヽ●最「ミミ●こ

(一九

一五)はどうだろう。スコットランドの法律

家プロウデ

ィ=イネスの名前を知

っているの

は、熱心な幻想文学の読者のなかでも少ない

んじゃないかな。オカルティズムに関心を寄

せている人ならば、彼を

〈黄金の暁〉

エデ

ンバラ支部の中心人物のひとりとして記憶し

ているかもしれないけれど。ともかく、彼の

遺した小説のほとんどは忘却の淵に沈んでし

った。僕の経験からするとオカルティスト

の書く小説はたいていつまらないので、大し

て期待もせずに頁を開いたのだけれど、これ

は予想に反しておもしろか

った。オカルト小

説ではなくて、超自然的要素の濃い歴史

ロマ

ンスといったところ。

舞台はクロムウ

ェルの時代のスコットラン

ド。ジ

ェイムズ

・ホッグの傑作

『悪

の誘惑』

はこれより半世紀ほど後のスコットランドに

舞台を設定しているが、どちらも宗教的狂信

の支配していた時代ということで共通して‘

る。物語は、悪魔に魅入られてその恋人、さ

らには魔女の女王となった女イザベル・ガヮ

ディ

F”げ20o暉一一の、悪魔に魂を売

って秘め

られた智識を得た領主、それに悪魔の三者を

めぐって展開する。巧みな人物描写、適度な

ユーモア、生き生きした文体――スコットラ

ンドの歴史とフォークロアが巧みにちりばめ

られたこの物語は

一読に価するだろう。

ところで、この作品、実話に基づくという

設定になっていて、作者自身の先祖も登場す

るのだけれど、てっきり小説上の技巧かと思

っていたところ、実は魔女イザベル・ガウデ

ィは実在していたのである。

手元にあるウィッチクラフト関係の研究書

をあたってみると、そのいくつかが彼女の名

を挙げており、ウィッチクラフトの世界では

有名な人物らしい。なかでも最も詳しく論じ

ていたのが、スコットランドの魔女であるせ

いか、ウォルター・スコット

いミヽミ●ミ

ミヽsヽoざ”ヽヽヽヽ

dSヽ卜ヽミヾ

(一八三〇)。

スコットによると、焚殺される前に遺した告

白が異常なまでに具体的で詳細であること、

また、そのなかで悪魔のみならず妖精の存在

についても語

っていること↑」れは『悪魔の恋

人』において活かされている)などが、魔女ガ

ウデ

ィの際立

った特色らしい。プ

ロウデ

ィ=

イネスはかなり忠実に記録に従

っているよう

だ。ち

なみに、この物語は作者と親交のあ

った

ブラムoストーカーに捧げられている。

次に紹介したいのは、 マーガニタ

・ラスキ

〓”おFコ】ご

r”升一2

一五― )

『ヴ

ィクトリ

ア朝

の寝

子 『き

 くヽヽ

ミヽきヽ

6ざ

●ヽヽ‐ヽS”ミと

(一九五三)。

才者は

ハロル

・ラスキの姪にあたる作家で、彼女の小説

一冊翻訳されているというも

(『失わ

れた少年』〔雄鶏社、 昭30〕、 日本ではほと

んど無名の存在といっていいだろう。

さて、物語自体は非常に単純といえば単純

で、病に苦しむ若い女

メラ

ニーが、骨董屋か

ら手に入れたヴィクトリア朝の寝椅子に寝て

目を覚ますと、時は九十年近く遡

って

一八六

四年、ミリーという女にな

って床に臥せって

いた――というもの。しかし、こうして筋だ

け取りだしてみても、この作品の素晴しさを

伝えることはできない。物語のなかで経過す

る時間は七、八時間、舞台は寝室から

一歩も

へ動くことがなく、ミリーの肉体に転移し

たメラニーの意識の流れを描くことこそ作者

の意図するところなのだから。しかも、ミリ

―の意識がときどき不意にメラニーの意識に

混じりこんでくる。したが

って、複雑精妙な

文体が要求されるわけだけれども、 エリザベ

・ボウ

エンを思わせる女性作家ならではの

肌理の細かい文体を駆使することによ

って、

ラスキは見事な成功を収めている。ヴィクト

リア朝

ロンドンの陰鬱な空気が病室に吹きこ

んでくるのさえ、僕たちは肌で感じとること

ができるのだ。

隔た

った時間に存在する肉体に意識が転移

したことから生じる、時間と意識の問題やタ

イム

・パラド

ックスをめぐる考察

も、

『ヴィ

クトリア朝の寝椅子』の読みどころのひとつ

だろう。タイムoパラド

ックスを扱うといえ

ばSFの独檀場みたいに思われ

てい

ど、この作品やチャールズ

・ウィリアムズの

・Sミヽじ

毯ヽミ●ヽミ●2

九三

一)

など幻想小

説にもその秀れた例がある。

った文体ゆえに決して読みやすくはない

物語だが、佳作の名に恥じないものだと思う。

今回の最後はぐ

っと新しいところで、ウィ

リアム・ヨーツパーグ

.■〓ご日

口一8一ひ8”

(一九四

一― )――この名前の読みかたには

あまり自信がないので、まちが

っていたらご

めんなさい――

の『堕ちていく天使

『ヽヽヽき”

、ミ”こヽ

(一九七八)。

ヨーツパーグは六十年

代の終りから作品を発表しはじめたアメリカ

の作家で、長編の数はそう多くない。

「もしレイモンド

・チャンドラーが

『エクソ

シスト』を書いていたらどうな

ったかを思い

描いてみようとする」とはスティーヴン・キ

ングの

『堕ちていく天使』評の

一節――そう、

この作品はなんと

ハードボイルド

・オカルト

小説

(!)なのだ。

一九五九年、 ニューヨーク、主人公の私立

探偵

ハリィ・エンジ

ェルがルイ

・サイファー

なる正体不明の人物の依頼を受けるところか

ら、物語は始まる。戦前に

一世を風靡した流

行歌手ジ

ョニー

・フェイヴァリットの現在の

行方をつきとめろというのが依頼の内容だ

たが、断片的な手がかりを追跡していくうち

に、エンジ

ェルは意外な事実にぶつかる……。

大都市の片隅で秘かに行なわれる黒ミサや

ヴードゥ教の儀式など通俗オカルト小説とし

ての趣向はた

っぶりだが、五十年代末のニュ

ーヨークが丹念に描かれているのも魅力だろ

う。途中で予想がつくとはいえ最後にどんで

ん返しも用意されていて、娯楽小説としては

なかなかよくできた作品だ。

では、また次回……。

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