学校安全 危機管理マニュアル リーフレット版(簡 …...学校安全...

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学校安全 危機管理マニュアル 児童生徒の安全を守るために 「気付く力」「危険を予測し回避する力」の育成を 姶良・伊佐教育事務所 学校の安全を守るために 学校における安全管理上の最大の目的は, 「児童生徒の生命や心身の安全を確保するこ と」です。しかし,負傷事故や登下校中の交 通事故は,後を絶たず,平成28年度における 小中学生の負傷・疾病の数(災害共済給付対 象)は,全国で719,653件となっています。 そこで,「自分の身の安全は,自分で守る」 意識の醸成を図ることが必要になります。そ のためには,児童生徒自身に,周囲の変化に 気付き,危険を予測し回避する能力を身に付 けさせなければなりません。 学校では,事故を未然に防ぐために常日頃 から,安全な学習環境の維持管理に努めると ともに,三つの危機管理(①事前の危機管理, ②事故発生時に適切かつ迅速に判断・対処 し,被害を最小限に抑えるための危機管理, ③心のケアや再発防止を図る事後の危機管 理)に教育と管理の両面から取り組むことが 重要です。 事件・事故発生時の対処の在り方 安全管理は,事件・事故・災害が発生した 場合を想定し,適切な応急手当や安全措置が できるような組織体制を確立しなければなり ません。 特に,正確かつ迅速な情報連携は,組織で の対応をよりスムーズに進めることが可能と なるばかりでなく,被害を最小限に食い止め, 拡大を防ぐ等,児童生徒の安全確保を図る上 で非常に重要です。 また,万が一校長不在の場合の連絡体制や, 特別な支援の必要な児童生徒への配慮の在り 方等については,事前に情報の共有化を図っ ておかなければなりません。 危機管理マニュアルの作成,見直し 《参考文献》 学校の危機管理マニュアル作成の手引 (平成30年2月文部科学省) 学校事故防止対応に関する指針 (平成28年3月文部科学省) 学校安全参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校 での安全教育」 (平成22年3月文部科学省) 立地環境や児童生徒の実情を踏まえる。 事前・発生時・事後の危機管理を想定する。 必要な対応・手順を明示する。 家庭・地域・関係機関等との連携を図る。 訓練や研修を通して改善点を明らかにする。 最新情報を基に随時更新する。

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Page 1: 学校安全 危機管理マニュアル リーフレット版(簡 …...学校安全 危機管理マニュアル ~児童生徒の安全を守るために 「気付く力」「危険を予測し回避する力」の育成を~

学校安全 危機管理マニュアル

~ 児童生徒の安全を守るために 「気付く力」「危険を予測し回避する力」の育成を ~姶良・伊佐教育事務所

1 学校の安全を守るために学校における安全管理上の最大の目的は,

「児童生徒の生命や心身の安全を確保すること」です。しかし,負傷事故や登下校中の交通事故は,後を絶たず,平成28年度における小中学生の負傷・疾病の数(災害共済給付対象)は,全国で719,653件となっています。そこで,「自分の身の安全は,自分で守る」

意識の醸成を図ることが必要になります。そのためには,児童生徒自身に,周囲の変化に気付き,危険を予測し回避する能力を身に付けさせなければなりません。学校では,事故を未然に防ぐために常日頃

から,安全な学習環境の維持管理に努めるとともに,三つの危機管理(①事前の危機管理,②事故発生時に適切かつ迅速に判断・対処し,被害を最小限に抑えるための危機管理,③心のケアや再発防止を図る事後の危機管理)に教育と管理の両面から取り組むことが重要です。

2 事件・事故発生時の対処の在り方安全管理は,事件・事故・災害が発生した

場合を想定し,適切な応急手当や安全措置ができるような組織体制を確立しなければなりません。特に,正確かつ迅速な情報連携は,組織で

の対応をよりスムーズに進めることが可能となるばかりでなく,被害を最小限に食い止め,拡大を防ぐ等,児童生徒の安全確保を図る上で非常に重要です。また,万が一校長不在の場合の連絡体制や,

特別な支援の必要な児童生徒への配慮の在り方等については,事前に情報の共有化を図っておかなければなりません。

3 危機管理マニュアルの作成,見直し

《参考文献》○ 学校の危機管理マニュアル作成の手引

(平成30年2月文部科学省)

○ 学校事故防止対応に関する指針

(平成28年3月文部科学省)

○ 学校安全参考資料「『生きる力』をはぐくむ学校

での安全教育」

(平成22年3月文部科学省)

○ 立地環境や児童生徒の実情を踏まえる。

○ 事前・発生時・事後の危機管理を想定する。

○ 必要な対応・手順を明示する。

○ 家庭・地域・関係機関等との連携を図る。

○ 訓練や研修を通して改善点を明らかにする。

○ 最新情報を基に随時更新する。

Page 2: 学校安全 危機管理マニュアル リーフレット版(簡 …...学校安全 危機管理マニュアル ~児童生徒の安全を守るために 「気付く力」「危険を予測し回避する力」の育成を~

安全管理のための未然防止チェック安全管理には,児童生徒の心身や生活の管理が含まれるため,様々な観点からチェックを行い,

未然防止に努めなければなりません。

施設・設備の安全確認はしたか

⑥ 施設・設備のチェック

ア □校内受付を設置し,来校者をチェックする等体制は整っているか。

イ □不審者対策の道具(さすまた等)は整備しているか。

ウ □消火器,火災報知器,防火扉,警報装置等の点検は実施しているか。

エ □薬物・劇物の保管は適切に管理しているか。オ □登下校時以外は,校門を施錠する等の対策を取っているか。

カ □駐車場,校門付近の安全表示は適切であるか。キ □プールサイドには,テント等の日除け対策が整っているか。

ク □作業用具等は,あるべき場所に整理・整頓しているか。

ケ □窓際の転落防止策は適切であるか。コ □樹木の腐敗や害虫が発生していないか確認しているか。

サ □危険箇所の定期点検は形骸化していないか。(サビ,ひび割れ,外壁落下等を意識し,目視,打音,振動,負荷・作動等による点検を行う)

シ □遊具や道具の安全管理はできているか。ス □校庭に釘やガラス等の危険物は落ちていないか。

⑦ その他のチェック

□避難訓練は,体験的なものになっているか。

□緊急避難場所,避難方法等に関する情報の共有化を図っているか。

□肢体不自由,情緒障がい者等の特別な配慮を要する児童生徒への個別対応の方法について,情報の共

有化を図っているか。

□AEDの使用及び心肺蘇生を行うことができるか。

□エピペンの使用方法やアナフィラキシーショックに対する対処法は,共通理解できているか。

□不審者侵入時の対処法は,共通理解できているか。

□保護者や地域,関係機関等との連携・協働体制の整備はできているか。

ク コ

オカ

児童生徒の安全を確保し,児童生徒の変化を捉えているか

① 通学路のチェック ④ 給食時のチェック

□通学路における交通マナーの指導は適切であるか。 □給食の前に,手洗い,うがいを行うよう指導□危険箇所の確認は適切であるか。 しているか。

□給食の準備(異物混入含む),配膳(食物アレルギー対応② 登下校時のチェック 含む)は適切であるか。□行動,言動,身なりの変化に目を向けているか。 □食前,食後の健康管理は確実に行っているか。□交通ルール,マナー及び危険予知,危険回避に関する指導の徹底は適切であるか。 ⑤ 学校生活におけるチェック

□不審者遭遇時の対処法,避難先の確認は適切であ □生活の記録や日記,ノート等に気になる記載るか。 はないか確認しているか。

□一人で寂しくしている状況はないか,注視し③ 学習・部活動時のチェック ているか。□実験器具,薬品,部活動用具等の安全管理は適切 □衣服の汚れや髪の乱れ等がないか,注視してであるか。 いるか。□学習用具,実験器具の取扱は適切であるか。 □ナイフやはさみ等の学習に不要な危険物を持□部活動中の熱中症対策はできているか。 ってきていないか,注視しているか。

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事故事例をもとにした危機管理 (平成27年度,平成28年度日本スポーツ振興センター 学校の管理下の災害報告書から)

※ 事故事例に添付してある画像は,事案とは関係ありません。1 登下校時

【交通事故】 【事故の概要】小1男子児童が,通学路を登校中,横断歩道を渡っている際に,軽

乗用車が車体の右前方部分で本児童をはね,さらに対向してきた普通乗用車が,本児童をはねた。

【事故防止策】(1) 周囲を見て,「気付き,危険を予測し,回避する力」が自分の身を守ることにつながる指導を行う。

(2) 常に時間に余裕をもって行動する。(3) 交通ルール,マナーを守る。(横断歩道であっても気を付ける。)(4) 複数で登校する。

【水難事故】 【事故の概要】小3女子児童が,通学路を一人で下校していた。雨が降って水量が

増えた側溝に近づき流された。

【事故防止策】(1) 普段は,安全な場所も天候や時間帯等によっては,危険な場所になることの指導を行う。

(2) 危険な場所では,特に気を付けて行動するよう指導する。

【その他】 不審者による声かけ等 → 「いかのおすし」等の徹底

2 学習活動,休み時間等

【転落事故】 【事故の概要】小4男子児童が,休み時間に風で位置のずれていた展示物を元に戻

そうと窓近くにあった棚に乗ったところ,バランスを崩し,開いていた窓から転落した。【事故防止策】(1) 窓際には児童生徒が登り,転落事故につながるような机等を設置しない。

(2) 棚には絶対に乗らない等のルールを徹底する。(3) 窓枠や手すり部分に負荷を与え,接合部分のネジの緩み等の安全確認を行う。

【授業:保健体育】 【事故の概要】中2男子生徒が,水泳の授業中,飛び込みをしたときに,プールの

底で頭部を強打した。【事故防止策】(1) 小・中学校では,水中からのスタートのみを指導し,授業での跳び込みによるスタートは,絶対に行わない。

(2) 高い位置から水中を注意深く監視する。(3) バディ(二人組)による相互チェック体制の徹底を図る。(4) 排水口の蓋,破損箇所等の点検を行う。

【授業:理科】 【事故の概要】小6の男子児童が,アルコールランプを移動させ,斜めにして蒸発

皿を温めたとき,アルコールランプから引火し,左手を伝って顔面の左部分をやけどした。【事故防止策】(1) 実験上の留意点について,指導を徹底する。(2) よけいなものを机上に置かない等の学習ルールを徹底する。(3) 火気を扱う等の危険を伴う実験の際は,きめ細かく周囲の安全確認に気を配るよう指導する。

飛び込みによるスタートの禁止

【交通事故の主な要因】① 飛び出し② 悪ふざけ③ 信号無視等の横断違反

【水難事故の主な要因】① 海,川,池での釣り

水遊び,遊泳等② 登下校時の水辺遊び

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3 給食時間,昼休み時間,清掃時間等

【給食時間】 【事故の概要】小5女子児童が,乳製品にアレルギーがあるにもかかわらず,おか

わりを希望して,担任からチーズが入ったチヂミをもらい,知らずに食べてしまった。

【事故防止策】(1) 生活管理指導表による個別対応の情報共有を行う。(2) アレルギー除去食が,確実に本人に渡るよう,チェック体制を整える。

(3) アナフィラキシー症状の特徴を理解するとともに,エピペンの打ち方や緊急連絡方法の研修を行う。

【昼休み時間】 【事故の概要】【鉄棒事故】中3男子生徒が,鉄棒にぶら下がった際,支柱が腐食していたため,

鉄棒ごと転倒し,後頭部の裂傷を負った。

【ゴールポストによる事故】中2男子生徒が,同級生3人と運動場でサッカーボールを使って遊

んでいる際に,風にあおられてサッカーゴールが倒れ,ゴールの上部のバーで頭部を強打し,死亡した。【事故防止策】(1) 定期的にサビや腐食,固定の状況等を目視するだけでなく,打音,振動,負荷,作動等を組み合わせた点検方法で確認する。

(2) 危険であれば使用禁止し,迅速に改善を図る。

【清掃時間】 【事故の概要】小2男子児童が,掃除の準備時間に,雑巾を投げて遊んでいた。キ

ャッチするときに滑って転んだ。

【事故防止策】(1) 道具の取扱方及び危険性について指導する。(2) 作業用具等の安全点検及び整理整頓を行う。

4 課外活動(部活動)

【部活動】 【事故の概要】中3男子生徒が,バッティングの練習中,背後にあった防球ネット

(高さ2m×幅3m)が強風にあおられて倒れ,生徒の後頭部から首にかけて直撃した。【事故防止策】(1) 施設・設備・用具等の安全な使い方や環境づくりに努める。(2) 運動の特性を踏まえた科学的で合理的な指導を行う。(3) 天候や気象を考慮した指導を行う。

【その他】 熱中症 → こまめな水分補給,汗をかいたら塩分(ナトリウム)補給

5 霧島山噴火(新燃岳,硫黄山 等)

【噴火の概要】 【1事前の危機管理】(備える)(新燃岳) ①体制整備と備蓄 ②定期的な安全点検(天井材,外装材,照明,棚,避難経路,避難場所等)平成29年10月11日 ③避難訓練(噴火を想定した訓練で実践力を育成) ④教職員研修(噴火発生時の連絡体制の確認)6年ぶりに噴火 【2発生時の危機管理】(命を守る)平成30年3月1日 初期対応:安全を確保(屋内へ避難,マスクやヘルメットの着用) 姶良・伊佐教育事務所再噴火 二次対応:素早い情報収集(噴火規模,風向き等) 霧島山(新燃岳)に関現在(H30.3.6) 【3事後の危機管理】(立て直す) する情報は,こちらの噴火警戒レベル3 引き渡し,安否確認,心のケア等 QRコードから。(入山規制継続中)

鉄棒

ゴールポスト