¡ À §° 理事長 渡邊 幸江 大切な仲間と共に“さくら”頑張って ... ·...

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福島県 利用者さんの声を聴き「やっぱり“さくら”は、 なくせない」という強い気持ちを持って、避難先の 二本松市で事業を再開したアクセスホームさくら。 自立支援を理念に、明るさ・優しさ・本音でいられ る大事な居場所になっています。 理事長  渡邊 幸江さん(権現堂) 取材者:浪江町役場 三瓶・鴫原 取材日:2月3日 大切な仲間と共に“さくら”頑張っています! 13 4 10 6 宿 2 20 2 8 26 11 特定非営利活動法人 アクセスホームさくら ▲二本松市内に再開した新事業所にて ▲利用者の皆さんと一緒に 平成23年3月11日に発生した東日本大震災、 そして福島第一原子力発電所の事故により、福島 県内外に分散避難した浪江町民。長期化する避難 生活、先の見えない不安の中で、町民の皆さんが どのような思いで生活し、ふるさとへの思いを抱 いているのか。 こうした町民の思いをつなげるために、“浪江の こころプロジェクト”が立ち上げられました。 一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアム (※) が中心となり、全国各地のNPO、大学等の皆さ んが取材を進め、浪江町との連携のもと「浪江の こころ通信」が編集・発行されます。 浪江のこころプロジェクトは、分散避難してい る町民の皆さんの声を「浪江のこころ通信」を通 してお届けし、ふるさと浪江町がかつての暮らし を取り戻すことへの願いとこだわりを発信・共有 しようとするものです。 ※一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアムは、 東北圏(7県)の地域コミュニティ再生や協働の まちづくりの推進を目的として、大学、NPO、 企業、経済団体、行政等が連携したコミュニティ 支援ネットワーク。仙台が本拠地。 57 「浪江のこころ通信/第57号」への 感想をお寄せください。 【連絡先】〒964-0984 福島県二本松市北トロミ573番地 「浪江のこころ通信」宛 FAX.0243(22)4218

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Page 1: ¡ À §° 理事長 渡邊 幸江 大切な仲間と共に“さくら”頑張って ... · 2016-02-29 · 大切な仲間と共に“さくら”頑張っています! 障 が

福島県

利用者さんの声を聴き「やっぱり“さくら”は、なくせない」という強い気持ちを持って、避難先の二本松市で事業を再開したアクセスホームさくら。自立支援を理念に、明るさ・優しさ・本音でいられる大事な居場所になっています。

理事長 渡邊 幸江さん(権現堂)取材者:浪江町役場 三瓶・鴫原取材日:2月3日

大切な仲間と共に“さくら”頑張っています!

障がいがある方の日中の居場

所づくりをと〝浪江町手をつな

ぐ親の会〞が母体となってアク

セスホームさくらが設立された

のは、平成13年4月でした。そ

れから10年経っての震災。私は

いわきに出張していて電話がつ

ながらず「津波が来るからみん

なを送迎しないで!」と、祈り

ながら6時間かけて戻りまし

た。事業所では、利用者さんの

中に請戸の方がいるから送迎は

できない、保護者が来るのを待

とうと判断し、絶対迎えが来る

からね!と、励ましていたそう

です。夜は帰れなかった利用者

さんと職員で車中に泊まりまし

た。翌日、着の身着のまま津島

小学校の体育

館に避難しま

したが、車の

ガソリンが少

なくて不安を

抱えての移動

でした。何か

あった時にガ

ソリンがなく

てはどうしよ

うもないと思

い、その日の

うちに中通り

に向かいまし

た。そのため、一回目の爆発の

時は、すでに二本松。ガソリン

がないピンチのお蔭でした。磐

梯熱海に宿が取れ2泊はしまし

たが、20人程の大所帯ではこの

先動けないと判断して、いった

んバラバラに避難しようと決め

ました。

職員で福島を避難先にしたの

は2人だけでしたが、利用者さ

んの安否確認ができてから、県

内外の避難先を回れるだけ回り

ました。「みんなに会いたい」

「もう一度手話をやりたい」そ

んな声を聴いて、やっぱり〝さ

くら〞は、なくせない、目標を

持って今まで積み上げてきた一

人ひとりの課題をだめにしたく

ないと思いました。実は、何度

か開いていた理事会で事業は無

理ではないかという話になって

いたのですが、大切な仲間、居

場所を守りたいとみんなでもう

一度話し合い、震災の年の8月

に二本松市の古民家で再開しま

した。

それから、たくさんの方々の

支援を受けて、新しく始めたお

菓子作りや、震災前からの自動

車部品の作業をやっています。

平成26年11月に現在の新事業

所に移転し、新たなスタートを

切りました。ここには、居心地

良くみんな明るい〝さくらカ

ラー〞があります。利用者さん

が毎日休まず、いきいきと活動

できているのは幸せです。地元

の人も新しくさくらの仲間に

なってくれたのは嬉しいこと。

この地域でこんなにも連携させ

てもらい、二本松事業所として

前に進む事を決めました。ここ

はここで進んでいく、地域に根

差した活動をしていく、そして

浪江に戻れるようになって、必

要性ができたら浪江でやる、そ

れが新事業所を建てた時の決心

です。アクセスホームさくらの

所在地は浪江ですから。

特定非営利活動法人 アクセスホームさくら

▲二本松市内に再開した新事業所にて

▲利用者の皆さんと一緒に

����

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災、

そして福島第一原子力発電所の事故により、福島

県内外に分散避難した浪江町民。長期化する避難

生活、先の見えない不安の中で、町民の皆さんが

どのような思いで生活し、ふるさとへの思いを抱

いているのか。

 こうした町民の思いをつなげるために、“浪江の

こころプロジェクト”が立ち上げられました。

一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアム(※)

が中心となり、全国各地のNPO、大学等の皆さ

んが取材を進め、浪江町との連携のもと「浪江の

こころ通信」が編集・発行されます。

 浪江のこころプロジェクトは、分散避難してい

る町民の皆さんの声を「浪江のこころ通信」を通

してお届けし、ふるさと浪江町がかつての暮らし

を取り戻すことへの願いとこだわりを発信・共有

しようとするものです。

※一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアムは、東北圏(7県)の地域コミュニティ再生や協働のまちづくりの推進を目的として、大学、NPO、企業、経済団体、行政等が連携したコミュニティ支援ネットワーク。仙台が本拠地。

● 第57号 ●

「浪江のこころ通信/第57号」への感想をお寄せください。

【連絡先】〒964-0984 福島県二本松市北トロミ573番地 「浪江のこころ通信」宛          FAX.0243(22)4218

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Page 2: ¡ À §° 理事長 渡邊 幸江 大切な仲間と共に“さくら”頑張って ... · 2016-02-29 · 大切な仲間と共に“さくら”頑張っています! 障 が

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福島県

息子さんご夫婦とお孫さんと6人で、賑やかに暮らしておられる𠮷本さんご夫妻。愛犬くるみちゃんと一緒に気候のよいいわき市にお住まいです。ワンちゃん好きのご近所さんとのつながりは、くるみちゃんがお散歩で一役かっているとのこと。同居しているお孫さんを見守りながら、地域デビューの日を楽しみに元気に過ごしておられる毎日です。

𠮷本 和夫さん・和枝さん(請戸)取材者:コミュニティ・ワークス 青木取材日:1月24日

いわき いいとこ 元気に にこやかに

◆早めの行動が功を奏して

私たちは、はじめ川俣高校の

体育館に避難しました。けれど

も寒くて寒くていられなかった

ので、13日の朝には出かけて、

真っすぐいわきに行ったんで

す。たまたまガソリンも満タン

に入れていたし、息子の会社が

いわきでこちらに住んでいたの

でね。それから半月位でアパー

トを借りました。少し落ち着い

てきた頃に、家はもう津波でな

いので土地を探し始めました。

早め早めに動いた分、値上がり

する前に買えて、ちょっとはい

いことあったかな。

◆ここはすごくいいですよ

ここにはね、2013年の7

月に息子夫婦が先に住んで、私

たちは8月に同居しました。結

構見晴らしがよくて、夏は涼し

いし、海も近くて見えるんです

よ。花火もよく見えるし、四季

折々いいところ。しいて言え

ば、風が強いくらい。元々浜に

住んでいたからこう

いう気候は慣れてい

るけど、それよりも

こっちは暖かいな。

買い物も便利で、そ

れなりにスーパーと

かもあるし、駅も歩

いてそんなに時間が

かからないしね。

◆5年たってそれな

りに進んでいる

向こうにいたころ

は自分の畑とかあっ

たので、手入れとか

しなくちゃならな

かったから、そこそ

こ時間が潰れていた

んだけど、今は何もやることな

くなっちゃったので「どこか行

くか」っていうのが多くなった

かな。これまで南の方は行った

ことなかったので、いわきに来

てからそういう機会は増えまし

たね。常磐道が開通して便利に

なったのはいいですね。5年

経ってそれなりに進んでいる。

あっという間だったね。請戸も

綺麗になっていてびっくりした

よ。お彼岸にあわせてお墓を建

てているんです。あの辺は見晴

らしがよくていい。年に3回は

行くでしょうね。

◆あれはいいよ、タブレット

は!

それなりに使っています。町

の情報やメールとかくるじゃな

いですか、便利ですね。あとは

なみえ新聞のところ、みんな写

真アップしているからね。ああ

いうのはいいですよね。懐かし

いっていうか、あれで大分みん

なの様子がわかりますね。情報

制限っていうか上限があります

が、あれ撤廃してくれるとなお

いいかな(笑)。

▲リビングでひなたぼっこ。愛犬くるみちゃんと一緒に。

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福島県

二本松市の仮設住宅で避難生活を送っている清水さん。震災前から勤めている一樹デイサービスセンターで現在も仕事を続けています。「解除になったらすぐに帰る。とにかく、帰りたい一心でいるから」と、思いを語られました。

清水 日出男さん(川添)取材者:浪江町役場 三瓶・鴫原取材日:2月5日

みんなに言いたい“帰りましょうよ! 浪江町、無くなるよ”

震災の時は、一樹デイサービ

スセンターで畑仕事をしていま

した。原発事故が起きてから、

センターの利用者を家族に引き

渡すまでの10日間は、職員と一

緒に猪苗代町の福祉施設の体育

館に避難しました。暖房があっ

て良かったけど、食べ物がなく

てね。それから、家族と二本松

市の民家で生活したけど、引き

渡さなきゃいけなくて。一樹デ

イサービスセンターが杉内多目

的運動広場仮設住宅にできるの

に合わせてここに来ました。あ

れから5年だね。

◆仕事のこと

朝6時にセンター

を開けて、まきス

トーブで部屋を暖め

て掃除をする。施設

の修繕とか細々とし

たことを一手に引き

受けてやっているか

ら忙しいよ。それか

ら、本宮と杉内のそ

れぞれで7反の畑に

いろいろ作っている

けど、土が良くなく

て売れるものはでき

ないから利用者で欲しい人にあ

げているんだ。菊も作って、

飾ったりあげたりしてます。年

末は30年近く続けている門松作

りをして、作りたい人には教え

ているよ。1年の計は元旦にあ

り。元旦は大事だと思って、4

か所のサポートセンターにき

ちっと飾っています。門松を見

た利用者に、ああ、今年も一年

が始まるね、今年も立派だ、っ

て喜んでもらえるのが嬉しい

ね。

◆家族のこと

妻は週2回、センターでお

しゃべりとか楽しんでいます。

娘はセンターの設立からのメン

バーで、一言でいうと、よく

やってます。毎日朝6時半に家

を出て原町と浪江に通っていま

す。大変だから原町に住まいを

借りたらと言っても、お父さん

とお母さんを2人にしておけな

いから、って。親孝行過ぎます

ね。子ども3人、孫4人に恵ま

れて幸せだよ。

◆体調のこと・思い

去年、仕事で浪江に行った

時、気持ちが塞いでしまい本当

に辛くて、高瀬川に架かる橋か

ら飛び込みたい衝動に駆られま

した。でも、そんなことをした

ら、家族に負担がかかると思い

とどまりました。そのあと、体

調を崩して入院。イライラし

て、気を揉んでだめなんだ。今

は、なんぼか良くなったけど、

薬で生活してるようなもんだ。

楽しみなんて考えない。早く浪

江に帰りたい。解除になったら

すぐ帰る。精神的に参っている

から、帰りたい一心でいるか

ら。補償金は、孫・ひ孫の代ま

で祟ってくるべ。私ら、お金の

問題でなく、早く帰れることを

考えてもらわないと。このまま

でいると、置き去りにされちゃ

うよ。店や病院は、原町やいわ

きに行けばあるから、何でも揃

わなきゃだめってことはない。

とにかく、解除になったら帰る

と決意している。みんなに言い

たい、帰りましょうよ。