原 著 metronidazolestrip法 による嫌気性菌集落の鑑別につい...
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昭和58年6月20日 459
原 著
Metronidazolestrip法 に よ る嫌 気 性 菌 集 落 の 鑑 別 に つ い て
聖マリアンナ医科大学臨床検査医学教室
成 川 新一 中塩 哲 士 西 田 信一 中 村正 夫
聖マリアンナ医科大学病院臨床検査部細菌
原 沢 功
(昭和57年11月17日受付)
(昭和58年3月15日受理)
Key words: Metronidazole strip, Differentiating anaerobe, Detection of anaerobe, Anaerobic technique
要 旨
Metronidazole は通常嫌気培養を必須とする Bacteroides, Fusobacterium, Clostridium, Peptococcus,
Peptostreptococcus などの嫌気性菌に対し選択的効果を示す抗菌剤である。同剤耐性の嫌気性菌は英国お
よび オ ース トラ リアで報 告 され たBacteroides)fragilis各1株 ずつ のみ で あ り,invitroに おい て嫌気 性
菌 に耐 性 を獲得 させ るに は変異誘 発物 質 が必要 で あ る とい う.こ の ためわ れわ れ はMetronidazole感 受
性を嫌 気 性菌 確認 に用 い る こ とを提 案 して きた.今 回わ れ われ は同剤 含有paperstripを 作製 し,嫌 気 性
菌 集 落 と通 性嫌 気 性 菌集 落 を鑑 別 す る方 法 を検 討 した.両 者 の混 合菌 液 をGAM寒 天 平板 に分 離 培 養
し,Metronidazole5μg含 有stripを 塗 抹方 向 に対 し直角 に置 い て嫌気培 養 した.48時 間後,濃 厚塗 抹
部strip周 囲 に は嫌 気性 菌 の存在 を示 すsparserzoneを 生 じ,独 立 集落 が得 られ て い る部 分で は通性 嫌
気性 菌集 落 がstripの 辺 縁近 くまで認 め られ るの に対 し,嫌 気性 菌集 落 はstripか ら5~15mm以 上離 れ
て認 め られた.し た が って好気 培養 を併 用す る ことな く嫌 気性 菌集 落鑑 別が 可能 に な る と考 え られ る.
しか も本 検査 法 にお いて通 性嫌 気性 菌 の存在 に よる影 響 は少 ない.同 剤 力価 はStnptococcnsfaecal空 な
ど限 られた菌 種 に よって低 下す るが,同 剤 は嫌気 性菌 を よ り短 時間 内 に殺菌 す るため,患 者材料 中 に こ
れ らの菌 が混 在 して も本法 を行 ううえに障害 とな る ことは ない.そ のた め通 性 嫌気 性 菌 が102~103倍 多
く存 在 し,嫌 気 性菌 の独 立集 落 を得 る こ とが難 しい患者 材料 に おい て もsperserzoneを 生ず るので,嫌
気性 菌 の存在 を知 る ことがで きる.こ の場 合 は選 択培 地 を用 いれ ぽ分離 も可 能 にな る と考 え られ る.
は じめ に
患 者 病 巣 中 に お け る嫌 気 性 菌 感 染 の有 無 を い ち
早 く知 り,適 切 な抗 菌 剤 を 選 択 で き る よ うに す る
た め,嫌 気 性 菌 検 査 の迅 速 化 が望 まれ て い る1)~4).
こ の た め ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィー3)4),螢 光 抗 体
法,Metronidazoleデ ィス ク法2)な ど の 鑑i別 診 断
法 が 報 告 され て い る.
Metronidazoleデ ィ ス ク法 に よ る鑑 別 診 断 は,
細菌検査室において菌分離 と同時に同じ寒天平板
上にて嫌気性菌の有無を検査することができる簡
易迅速法である.患 者材料を画線塗抹す るとき濃
厚塗抹 した部分に同ディスクを置いて嫌気培養す
ると,デ ィスク周囲の所見により嫌気性菌の有無
を知 ることができるが,生 じている幾種かの独立
集落中いずれが嫌気性菌であるかは判断で きな
い.し たがってこれ らを釣菌して嫌気性菌確認を
行 うが,こ のためには1~3日 間を要する.そ こ
でわれわれはいっそ うの簡易迅速化を 目的 とし
て,直 接分離平板上における嫌気性菌集落 と通性
別刷請求先:(〒213)川 崎市宮前 区菅生2095
聖 マ リアンナ医科大学臨床検査医学教室
成川 新一
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460 感染症学雑誌 第57巻 第6号
嫌気性菌集落を鑑別す る方法について検討 した.
この結 果Metronidazole含 有strip法 を用 いれ
ば,多 くの場合この目的を達 しうると考えたので
報告する.
材料および方法
1.使 用 菌 株
嫌 気 性 菌 と して 既 報2)4)で使 用 した Bacteroides
fragilis Ju-13, Fusobacterium varium No. 03076,
Bacteroides asaccharolyticus Rm-1, Peptococcus
asaccharolyticus No. 11083, Peptostreptococcus
anaerobius No. 03079, Clostridium perfringens
No.03236,計6種6株 を 使 用 した.日 本 化 学 療 法
学 会 標 準 法 に 基 づ い て 測 定 した これ らの株 に対 す
るMetronidazoleの 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)は
そ れ ぞ れ0.78μg/m1,0.39μg/ml,0.025μg/ml,
0.39μg/ml,0.39μg/m1,0.78μg/mlで あ る2).
通性嫌気性菌として標準株の Escherichia coli
ATCC 25922, Klebsiella pneumoniae ATCC
13883, Enterobacter cloacae ATCC 23355,
Proteus vulgaris ATCC 13315, Serratia marces-
cens ATCC 8100, Staphylococcus aureus ATCC
25923, Staphylococcus epidermidis ATCC 12228,
Streptococcus pyogenes ATCC 19615, 臨床分離株
の Klebsiella oxytoca No.6 , Morganella morganii
No.1, Proteus rettgeri No.3, Citrobacter freundii
No.1, Streptococcus faecalis No.1, Streptococcus
pneumoniae No.1, Streptococcus agalactiae No.2,
a-hemolytic streptococci No.1, 計16種16株 を使用
し た.こ れ ら の 株 に 対 す るMetronidazoleの
MICは いず れ も>400μg/m1で あ る2).
2.Metronidazole含 有strip
抗 生 物 質 試 験 用 濾 紙(厚 さ1.2mm,東 洋 濾 紙)
を8×60mmの 大 き さ に 裁 断 しstripと し た.こ
れ を 高 圧 滅 菌 し,ふ らん 器 内 で乾 燥 させ た.つ ぎ
にMetronidazole原 末 を 精 製 水 に 溶 解 して10μg/
m1のMetronidazole水 溶 液 を調 製 し,そ の0.5m1
を メ ス ピペ ッ トを 用 い てstripに し み 込 ま せ た.
0.5m1は8×60×1.2mmの 濾 紙 に 水 溶 液 を 均 等
に満 た す た め の 至 適 量 で あ る.こ の5μg/stripの
同剤 含 有 濾 紙 を 真 空 デ シ ケ ー タ 内 で五 酸 化 二 燐 を
乾 燥 剤 と し てMaxtedの 方 法 で 乾 燥 し た2).こ の
Metronidazolestripを 試 験 日 ま で デ シ ケ ー タ 内
に遮 光 して保 存 した.な おstripの 薬 剤 含 有 量 は,
既 報2)に 準 じ て嫌 気 性 菌 阻 止 域 が 適 度 な広 さ と な
る 至 適 含 有 量 を 求 め,5μg/stripと した.stripの
寸 法 は,幅 はMetronidazoleデ ィス ク1)2)5)6)の直 径
(8mm),長 さ は シ ャ ー レの直 径(90mm)とstrip
周 囲 のinhibitionzoneの 大 き さ を 基 準 と し て
8×60mmと 定 め た.
3.分 離 用 平 板 培 地
既 報2)に 述 べ た よ うに,嫌 気 性 菌 を 含 む 材 料 を
塗 抹 した 平 板 上 に お い て,Metronidazole含 有 濾
紙 周 囲 に 生 ず るinhibitionzoneあ る い はsparser
zoneの 観 察 に は,不 透 明 で あ る血 液 加 寒 天 平 板 は
適 当 で な い た め,透 明 か つ 充 分 な 発 育 支 持 力2)の
あ るGAM寒 天 平 板(厚 さ4mm)を 用 い た-
4.混 合 菌 液
嫌 気 性 菌 と通 性 嫌 気 性 菌 各1種 の組 み 合 わ せ を
無 作 為 に3種 選 ん で,菌 種 と菌 数 が既 知 で あ る混
合 菌 液 を 調 製 し,分 離 培 養 用 の 材 料 と した.そ れ
ぞ れ の 菌 数 は以 下 に 示 す よ うに,両 者 ほ ぼ 同数,
通 性 嫌 気 性 菌 多 数,嫌 気 性 菌 多 数 の3種 の 組 み 合
わ せ に つ い て 試 み た 。
a-1. F. varinm4×108 Colony Forming
Units (CFU)/mlとSanzms 1×108 CFU/mlを
含 む.
a-2. Evarinm 4×106 CFU/mlと Smnus
1×108 CFU/m1 を 含 む.
a-3. Evariu1n 4×108CFU/mlとS. anrens
1×106 CFU/m1を 含 む.
b-1.B. fragilis4×108CFU/mlとE. coli
2×108CFU/mlを 含 む.
b-2. B, fragilis 4×106 CFU/mlとe.coli
2×108 CFU/mlを 含 む.
b-3. Rfragi1is 4×108 CFU/mlとE- 60li
2×106 CFU/mlを 含 む.
c-1. Pasaccharolyticns 2×108CFU/mlと S.
faecalis 4×108 CFU/mlを 含 む.
c-2. Pasaccharolyticns 2×106 CFU/m1とS
faecalis 4×108 CFU/mlを 含 む.
c-3. Pasacchazolyticns 2×108 CFU/m1とS
faecaliS 4×106 CFU/mlを 含 む.
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昭和58年6月20日 461
以 上 の 混 合 菌 液 を 嫌 気 性 グ ロ ー ブ ボ ッ ク ス
(フ ォー マ 社 製,model 1024)内 の 嫌 気 的 条 件 下
(85% N2, 10% CO2, 5% H2)で 調 製 した.
5.分 離 培 養 法
a.10倍 階 段 希 釈 菌 液 と綿 棒 を 用 い る方 法
嫌 気 性 菌 集 落 鑑 別 法 の 基 本 的 原 理 を検 討 す る 目
的 で 調 製 した 混 合 菌 液 お よ び混 合 前 の嫌 気 性 菌 菌
液 の 分 離 培 養 に用 い た.こ の方 法 で,ほ ぼ 同 一 な
分 離 状 態 の平 板 を幾 枚 も得 る こ とが で き る.直 径
90mmの 寒 天 平 板 を 平 行 線 で 区切 り,各 区 画 に 綿
棒(日 本 綿 棒100A 1504)に 含 ませ た108,107,106,
105, 104, 103, 102 CFU/mlの 菌 液 を 塗 抹 した.平
行 線 の 間 隔 は,独 立 集 落 が 得 られ る 区 画 を 広 くす
るた め,7.5, 7.5, 7.5, 7.5, 30, 20, 10mmと
した.な お 綿 棒 に よ る寒 天 面1cm2あ た りの 塗 抹
菌 液 量 は 約0.8μlで あ る.
b.画 線 培 養 法
当 院 細 菌 検 査 科 に依 頼 の あ った 患 者 材 料 に つ い
て,白 金 耳 を 用 い る通 常 の画 線 培 養 法 に よ り分 離
を試 み た.
6.嫌 気 性 菌 集 落 鑑 別 法 の 基 本 的 手 技
混 合 菌 液 を 平 板 に5.-a.の 方 法 で 分 離 培 養 し,
平 板 上 部 の 濃 厚 塗 抹 部 分 か ら下 部 の 独 立 集 落 の 得
られ る部 分 に か け て 縦 にMetronidazole stripを
置 き確 実 に 密 着 させ た.こ れ を 嫌 気 性 グ ロー ブ
ボ ック ス 内 の 嫌 気 的 条 件 下 で35℃48時 間 培 養 し
た.
7.本 検 査 法 に 対 す る通 性 嫌 気 性 菌 の影 響 に 関
す る検 討
a.通 性 嫌 気 性 菌 に よ るMetronidazole不 活 化
の 有 無7)
対 数 増 殖 期 に あ る各 通 性 嫌 気 性 菌 を10μg/ml
のMetronidazole加 GAM broth中105 CFU/ml
に な る よ うに 接 種 し,35℃ で嫌 気 培 養 した.こ の
培 養 液 を 培 養 開 始2,4,6,24時 間 後 に採 取 し
て0.45μmの メ ン ブ ラ ン フ ィル タ ーで 濾 過 除 菌
後,凍 結 乾 燥 法 に よ り1/10倍 に濃 縮 した.こ の液
をLevisonのBioassay法8)に 準 じpaperdiscに
含 ませ,Clostridium sporogenes J-62を 混 釈 した
GAM寒 天 平 板 を 用 い てMetronidazole濃 度 を
測 定 した.
b.Metronidazoleに よ る嫌 気 性 菌 殺 菌 時 間9)
対 数 増 殖 期 に あ る 嫌 気 性 菌 を10μg/mlの
Metronidazole加GAM broth lm1中106CFU/
mlに な る よ うに接 種 し,35℃ で嫌 気 培 養 した.こ
のbrothを 培 養 開 始1,2,3,4時 間 後 にEppen-
dorfpipetを 用 い て0.1ml採 取 し,こ の原 液 あ る
い は10-1,10-2希 釈 液0.1mlを50℃ に 保 温 して お
い たGAM寒 天100mlに 混 釈 し,薬 剤 を 最 大 発 育
許 容 濃 度(MAC)以 下 に 希 釈 した.こ れ を 角 型
シ ャ ー レ に流 して 平 板 と し,35℃72時 間嫌 気 培 養
後 生 菌 数 を 求 め た.た だ しCperfringensに 関 し
て は ガ ス発 生 に よ り寒 天 が破 壊 され る お そ れ が あ
る の で混 釈 法 は避 け,平 板 塗 布 法 を 用 い た.
c.Metronidazole strip法 に よ る嫌 気 性 菌 の 検
出 限 界
通 性 嫌 気 性 菌 のE. coliをGAM brothで
35℃24時 間嫌 気 培 養 し,こ の菌 の 生 理 的 食 塩 水 浮
遊 液 を100,10-1, 10-2, 10-3, 10-4に 希 釈 して109,
108, 107, 106, 105 CFU/mlの 生 菌 液 と した.同 じ
く嫌 気 性 菌 のB. fmgilisをGAM brothに 嫌 気 培
養 し,100, 10-1, 10-2, 10-3に 希 釈 し て109, 108,
107, 106CFU/mlの 生 菌 液 と した.両 菌 液 を 相 互 に
等 量 混 合 し,生 菌 数 の組 み 合 わ せ に よ り20種 類 の
混 合1菌液 を 調 製 した.同 様 に 通 性 嫌 気 性 菌 のK.
pneumoniae, S. aureus, S. faecalis, 嫌気性菌の
F. varium, B. asaccharolyticus, P. asaccharo-
lyticus, P. anaerobius, C. perfringens の希釈液
をつ く り,各1菌 種 を 等 量 混 合 して 総 計480種 類 の
混 合 菌 液 を 調 製 した.こ れ らの 各 菌 液 を綿 棒 に浸
み 込 ま せ て 直 径90mmのGAM寒 天 平 板 に 均 等
に 塗 抹 した が,こ の 際 の 塗 抹 菌 液 量 は 約0.8μl/
cm2で あ っ た.塗 抹 後,各 平 板 に 各1枚 の
Metronidazole stripを 置 き,軽 く押 え て密 着 させ
て35℃48時 間 嫌 気 培 養 した.こ の 場 合,混 合 液 中
の 嫌 気 性1菌の み が発 育 阻 止 され るた め,strip周 囲
に 生 ず るsparser zoneの 有 無 につ い て++(き わ め
て 明 瞭 に 認 め られ る.),+(透 過 光 で 観 察 す る と認
め られ る.),-(認 め られ な い.)の3段 階 に判 定
した.
8.臨 床 検 査 に お け るMetronidazole strip法
の 利 用 お よび 好 気 培 養 を 併 用 す る 従 来 法 との比 較
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462 感染症学雑誌 第57巻 第6号
当院検査部細菌科において約4ヵ 月間に嫌気培
養を行った膿,胆 汁,腹 水などの患者材料706検 体
を用いた.材 料を3枚 のGAM寒 天平板に通常の
画線培養法(平 板の角度を変えずに上端より下端
へ塗抹する方法.)で 分離培養 した.こ れ らの平板
の1枚 には画線方向にして直角にMetronidazole
stripを 置いて嫌気培養 した(本鑑別法).他 の2枚
の うち1枚 を35℃48時 間好気培養し,残 りの1枚
を嫌気培養した(従 来法).嫌 気培養には嫌気性 グ
ローブボックスを用い,35℃48時 間培養を行った.
成 績
1.嫌 気性菌集落鑑別法の基本的原理
a.F. mrium と S. aurms の 集 落 鑑 別:F.
varium 8×108 CFU/mlの み を 含 む 菌 液 を 分 離
し,Metronidazole stripを 置 い て 嫌 気 培 養 した 平
板 で は,図 の様 にstrip周 囲 に 嫌 気 性 菌 発 育 阻 止
域 が 見 ら れ,F. variumの 集 落 はstripか ら離 れ
た 位 置 に 良 好 な発 育 を 示 して い る.阻 止 域 内 に耐
性 菌 集 落 は 認 め られ な い(Fig.1,左).S.aureus
2×108 CFU/mlの み を 含 む 菌 液 を 分 離 し,
Metronidazole stripを 置 い て嫌 気 培 養 し た 平 板
で は,図 の 様 にS. aureusはstripに 接 し て 発 育
し,strip周 囲 に発 育 阻 止 域 は 見 られ な い.集 落 は
Metronidazole stripに 発 育 阻 害 され る こ と な く
105と104菌 液 塗 抹 区 画 に 均 等 に存 在 し て い る(Fig-
1,右).両 者 の 混 合 菌 液(菌 液a-1)を 分 離 し,
Metronidazole stripを 置 い て 嫌 気 培 養 した 平 板
で は,strip上 部 の濃 厚 塗 抹 部 に発 育 が 周 囲 よ り希
薄 に な っ て い る部 分"sparser zone"が み られ,嫌
気 性 菌 の存 在 を 示 して い る.独 立 集 落 が 得 られ て
い る部 分 で は,Fusobacteriumの 集 落(灰 色,や や
大)がstripか ら離 れ て 存 在 す るた め,嫌 気 性 菌 発
育 阻 止 域 を 形 づ く って い る の に 対 し,Staph-
ylococcusの 集 落(白 色,や や 小)はstripに 発 育
阻 害 され る こ と な く均 等 に 発 育 が み ら れ て い る
(Fig.2).し た が ってsparser zoneを 確 認 した う
え で 各 菌 の 集 落 性 状 を 正 し く 識 別 し,集 落 が
Metronidazole stripに 接 し て 存 在 す る か 離 れ た
位 置 の み に存 在 す る か を 観 察 す れ ば,嫌 気 性 菌 集
落 を 鑑 別 で き る と思 わ れ る.F. mrium 4×106
CFU/mlとS. mreus 1×108 CFU/mlを 含 む 菌
液(a-2)を 分 離 し,stripを 置 い て 嫌 気 培 養 した 平
Fig. 1 Differentiation of single colonies of obligate from facultative anaerobesusing paper strips each containing 5kg of metronidazole. Bacterial suspensions
containing 108 to 102 CFUs/ml of F. varium or S. aureus were uniformlyinoculated onto each area. The agar plates were incubated anaerobically for 48hours.
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昭和58年6月20日 463
Fig. 2 Differentiation of single colonies of ob-
ligate from facultative anaerobes using a
metronidazole strip. Mixed bacterial suspensions
containing 108 to 102 CFUs/ml of F. varium and
S. aureus were uniformly inoculated onto each
area. The agar plate was incubated anaerobically
for 48 hours. Grayish colonies are F. varium
(arrows) and smaller white colonies are S. aure-
us (wide arrows). The "sparser zone" is recog-
nized in the upper areas (Dark arrows indicate
the border of the sparser zone).
板 で はF. variumの 菌 数 がS. aureusの1/25で あ
る た め,F. variumの 独 立 集 落 がS. aureusの 集
落 に 被 い か く さ れ て,わ ず か しか 認 め られ ず,
stripか ら離 れ た 位 置 に の み 存 在 す る嫌 気 性 菌 で
あ る か 否 か判 断 し に くい よ うに 見 られ た.し か し
濃 厚 塗 抹 部 に はsparser zoneが 明 瞭 に 認 め られ,
zoneの 境 界 線 を 下 方 の 塗 抹 菌 数 が 少 な い 区 画 に
向 か って 延 長 す る とF. varimの 集 落 がstripか
ら離 れ た 位 置 の み に存 在 して い る こ とが 容 易 に わ
か る.し た が っ てsparser zoneの 境 界 線 を よ く観
察 す れ ば,嫌 気 性 菌 の独 立 集 落 がわ ず か で あ って
も 鑑 別 で き る と 思 わ れ る.F. varium 4×108
CFU/mlとS. aureus 1×106 CFU/mlを 含 む 菌
液(a-3)を 分 離 し,stripを 置 い て嫌 気 培 養 した 平
板 で はsparser zone内 にS. mreusの 独 立 集 落 が
生 じ,F. variumの 集 落 はstripか ら離 れ て 平 板
中 央 部 か ら下 部 に 多 数 認 め られ,集 落 鑑 別 は 容 易
で あ る.
b.B. fragilisとE. coliの 集 落 鑑 別
混 合 菌 液b-1, b-2, b-3を 分 離 し,stripを 置 い
て嫌 気 培 養 し た 平 板 で の 所 見 はF. varimとS.
aureusの 混 合 菌 液 を分 離 した と ぎ得 られ る所 見
と ほ とん ど同 一 で あ った.
c. P. asaccharolyticus と S. faecalisの 集 落 鑑
別
F.varium と S. aureus, B.fragilisとE. coliの
場 合 と 同様 で あ るが,両 菌 の 集 落 性 状 の 相 違 が わ
ず か で あ る た め,よ く観 察 し,正 し く識 別 す る必
要 が あ る.
2.通 性 嫌 気 性 菌 に よ るMetronidazole不 活 化
の有 無
被 検16菌 種 は い ず れ も6時 間 嫌 気 培 養 後 に生 菌
数 が108~109に 達 し た が,S.faecalis, K. pne-
umoniae, M. morganii, E. coliを 除 く各12菌 種
を 培 養 したbroth中 のMetronidazole濃 度 は2,
4,6時 間 後 に お い て も,培 養 前 と同 じ10μg/ml
を 示 した.24時 間 後 に は9.6μg/mlと な った が,対
照 の 菌 を 接 種 し な いbrothも9.6μg/mlで あ り,
不 活 化 に よ る も の で は な い と 考 え ら れ る.S.
faecalisの 培 養brothは2時 間 後 に4.5μg/ml,
Fig. 3 Decrease in concentration of metronidazole
in the medium by actively growing cells of six-
teen species of facultative anaerobes
Symbols: •œ-•œ, S. faerates, • -• , K. pnewnoniae; •¢-•¢, M. morganii;
○-○, E, coli;
•œ
-•œ, S. aureus, S. epidermidia, S. pneumoniae.
S. pyogenes, S. agalactiae, a—hemolytic streptococci, K. oxytoca,
E. Cloacae, C. freundii, Y. rulgaris, P. rettgeri, S. marcescens
and medium alone.
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464 感染症学雑誌 第57巻 第6号
Fig. 4 Rapid bactericidal effect of metronidazoleagainst B. fragilis, F. varium, B. asaccharolyticus,P. asaccharolyticus, P. anaerobius and C. perfrin-
gens
Metronldazole was added at zero time to give
a final concentratlon of 10 μg/ml.
Symbols:○-○, B.fragilig; ●--●, F.varium;
□---□, B. asaccharolyticus;
▲---▲, P. asaccharolyticus; △--△, P. anaerobius;
■---■, C. perfrzngens.
4時 間 後 に 本Metronidazole濃 度 測 定 法 に よ
る 検 出 限 界 値0.5μg/ml以 下 を 示 し た.K、
pneumoniaeで は6時 間 後 に9μg/mlを 示 し た
が, M. morganii, E. coli では変化が認め られず,
24時 間 後 に はK. pneumoniaeで は5μg/ml,M.
morganiiで は5.7μg/ml, E. coliで は7.9μg/ml
を 示 し,Metronidazoleの 不 活 化 が 認 め ら れ た
(Fig.3).
3. Metronidazoleに よ る 嫌 気 性 菌 殺 菌 時 間
B.fragilisは2時 間,F. varium, B. asaccharo-
lyticus, P. asaccharolyticus, P. anaerobiusとC.
perfringmsは1時 間 以 内 に 殺 菌 さ れ,生 菌 数 は
broth 0.1mlあ た り0 CFUで あ っ た(Fig.4).
4. Metronidazole strip法 に よ る 嫌 気 性 菌 の 検
出 限 界
E. coli, K. pneumoniae, S. aureusは,B.
fragilis, F. varium, C. perfringensに 対 し て103
~104倍, P. asaccharolyticus, P. anaerobiusに
対 し て は102~103倍,菌 液 中 に 通 性 嫌 気 性 菌 が 多
く存 在 し て もsparser zoneが 形 成 さ れ,菌 液 中 嫌
気 性 菌 の 存 在 を 知 る こ と が で き る.S. faecalisは
他 の3種 の 通 性 嫌 気 性 菌 よ り や や 強 くsparser
zone形 成 の 障 害 に な っ た.嫌 気 性 菌 のB. asac-
charolyticusは ヘ ミンとメナジオンを発育に必要
とす ることが多 く10)11),GAM寒 天を用 いた場合
メナジオンが不含であるのでやや発育不 良 とな
り,48時 間培養ではその菌数が通性嫌気性菌 より
多数であるときのみsparser zoneが 認められる.一般 に通性嫌気性菌菌数が少なく嫌気性菌菌数が
多いほどsparser zoneは 明瞭に認め られる.し か
しF. variumとE. coliの 組み合わせにおいてみ
られ るように,両菌菌数が近似 しているときには,
sparser zoneの 内側 と外側の発 育様相が似 るた
めcontrastが 悪 くなり,F. varium菌 数が1段 階
少ない方がsparser zoneが 明瞭に認め られ る現
象がみられる(Table1).
5.臨 床検査における本鑑別法の利用 および従
来法 との比較
膿,胆 汁,腹 水などの患者材料706検 体について
検討 したが,こ の うち394検 体はいずれの菌 も分離
されず,271検 体から通性嫌気性菌 と好気性菌が分
離された.残 りの41検 体から嫌気性菌が分離 され
たが,こ の うち12検 体 は嫌 気性菌(Bacteroides
sp.)の みの感染であ り,29検 体は嫌気性菌 と通性
嫌気性菌の混合感染であった.
嫌気性菌のみが分離された12検 体では,本 鑑別
により濃厚塗抹部にinhibition zoneを 生 じ,独 立
集落はstripか ら離れて認め られた.し たがって
分離された菌はいずれも嫌気性菌であると判断 し
た.こ れ らの検体では従来法においても好気培養
陰性,嫌 気培養陽性であるため,嫌 気性菌のみで
あると考える.嫌 気性菌 と通性嫌気性菌の両方が
検出された29検 体についての培養では本鑑別法に
より例外なく濃厚塗抹部にsparser zoneを 生 じ,
材料中嫌気性菌の存在を知 ることができた.し か
しこの うち3検 体では,通 性嫌気性菌菌数が嫌気
性菌菌数 よりかな り(102~103倍)優 勢であるた
め,嫌 気性菌の独立集落を得 ることができなかっ
た.こ の場合,通 性嫌気性菌の発育を押えて,嫌
気性菌を分離する必要があると考え,市 販の嫌気
性菌分離用選択培地(バ クテロイデス培地,変 法
FM培 地,Kanamycin加CW寒 天培地(日 水))に
この3検 体を再分離 した ところ,いずれの検体から
も,バ クテ ロイデス培地あるいはKanamycin加
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昭和58年6月20日 465
Table 1 Detection of obligate anaerobes using metronidazole strips on plate
cultures of mixed bacterial suspensions containing obligate and facultative
anaerobes
The presence of obligate anaerobes was revealed by a zone of sparser growth
round the strip due to inhibition of obligate anaerobes.
Symbols:++, reliably detectable;+, fairly detectable;
-, not detectable;------, range of detection.
CW寒 天培地を用いることによりB. fragilisの独
立集落が得 られた.こ の3検 体は従来の方法では,
嫌気,好 気培養 ともに同様の所見を示し,嫌 気性
菌陰性 と判定 されるおそれがある.
考 察
1969年Princeら の報 告 を初 め としてMetro-
nidazoleは 好 気 性 菌 お よ び 通 性 嫌 気 性 菌 に 対 し
無 効 で あ り(MICは500~>2,000μg/ml)2)12)~14),
嫌 気 性 菌 に 選 択 的 効 果 を 示 す こ とが 報 告 され て い
る2)12)~15).現在 まで に 多 くの 研 究 者 が 嫌 気 性 菌 に
対 す る 同 剤 のMICを 測 定 し て い る が,総 じ て
Bacteroides, Fusobacterium, Clostridium は感受
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466 感染症学雑誌 第57巻 第6号
性(MICは0.05~6.25μg/ml2)15))で あ る が,
Propionibacterium, Actinomycesな どの 無 芽 胞 グ
ラ ム 陽 性 桿 菌 お よ びPeptostreptococcusな ど の グ
ラ ム陽 性 球 菌 中 に は 耐 性 株 が 多 く存 在 す る と いわ
れ て い る16)17).し か し近 年,こ れ ら耐 性株 は,通 常
真 の 嫌 気 性 菌 で な い こ と が 明 ら か に さ れ て き
た1)2)6)17).すなわ ちPropioniろacteriumは 空 気 寛 容
性 で あ り18),そ の 多 くが10%炭 酸 ガ ス培 養(酸 素 濃
度 は 約19%に な る19).)で 発 育 す る18).
Actinomyces israeliiは,Slackら に よれ ば 嫌 気 培
養 が最 適 で あ る が,63株 中12株 が好 気 培 養,50株
が 炭 酸 ガ ス培 養 に よ っ て 良好 に発 育 す るた め,通
性 嫌 気 性 菌 で あ る と定 義 され て い る20,.嫌 気 性 グ
ラ ム 陽 性 球 菌 と し て 分 類 さ れ て い たHare
group VIa,VIIb型 菌6),あ る い はPeptostreptococ-
mS属 に 分 類 さ れ て い た6)Streptococcus
intermedius21)な ど のMetronidazole耐 性 菌 は
10%炭 酸 ガ ス培 養 で発 育 す るた め,微 好 気 性 菌 あ
る い は 炭 酸 ガ ス要 求 性 株 で あ る と考 え ら れ て い
る6)14).ま たDuerdenら はBacteroides ochraceus
が低 感 受 性 で あ る こ とを 報 告 して い るが,同 時 に
こ の菌 が10%炭 酸 ガ ス培 養 で 発 育 す る こ とを確 認
した た め, B.ockraceusをBacteroidaceae科 よ り
除 去 す る よ う に 提 案 し て い る1).現 在, B.
ochzacmsはNewmanら の 研 究 に よ り Cap-
nocytopkaga属 に 分 類 さ れ て い る22).こ の よ うに
Metronidazole耐 性 菌 は 嫌 気 培 養 を 必 ず し も必 要
と し な い た め,真 の嫌 気 性 菌 で は な い とい わ れ て
い る14)17)19).
嫌 気 培 養 を 通 常 必 須 と す る 嫌 気 性 菌 で あ る
Hacteroides, Fnsobacterium, Clostridium, Pep-
tococcns, PeptostnptococcuSな どは 嫌 気 性 菌感 染
症 の お も な起 炎 菌 で あ り,前 述 の よ うな例 外 を 除
きMetronidazoleに 対 し感 受 性 で あ る.わ れ わ れ
が 当院 検 査 部 に お け る臨 床 分 離 嫌 気 性 菌88株 に つ
い て 行 った 測 定 に お い て もMICは0.1~3.13μg/
mlで あ った.し た が っ てMetronidazole耐 性 で
あ るPropionibacterium acnes2)18), A.israelii20),
S.intermedius6)な ど好 気 培 養 で は通 常 発 育 せ ず,
嫌 気 培 養 が 適 す るが6)18)20),これ を 必 須 と しな い 嫌
気 性 菌6)18)20)の集 落 に つ い て は 鑑 別 で き な い も の
もあるが,嫌 気培養を必須す ると嫌気性菌につい
ては, Metronidazoleを 鑑別に使用 して差 しつか
えない と考 えている.
現在,患 者材料中の嫌気性菌を検索す る場合,
嫌気培養 した平板上の集落が嫌気性菌であるか通
性嫌気性菌であるか判別するため,も う1枚 の平
板に材料を画線塗抹 して好気培養 し,両 平板を比
較する方法が用い られている.こ の方法では,炭
酸ガス要求性株は嫌気培養時に添加 される炭酸 ガ
スによって発育するが6)14)17),好気培養では発育し
ないため,嫌 気性菌 として判定される.
われわれが試みたMetronidazole stripに よる
嫌気性菌集落鑑別法 は,分 離 菌を同剤感受性に
よって判別するため好気培養を併用する必要がな
い.し たがって培地 と塗抹時間を節約することが
で きるため検 査の迅速化 が可能 で あ る.ま た
strip周 囲の嫌気性菌発育阻止域以外では,嫌 気性
菌 と通性嫌気性菌いずれの発育も阻害 されないた
め,各 種抗菌剤を添加した選択培地の ように一部
嫌気性菌の検索を障害することはない.す なわち
Kanamycin加 寒天はClostridiumの 選択分離能
にす ぐれ,Nalidixic acid Tween寒 天 は Proteus
他の腸内細菌の増殖を押さえ,グ ラム陽性陰性を
問わず,嫌 気性菌の分離率を非選択培地使用時 と
比較 して高める23)といわれるが,反 面前者は一部
のBacteroides,多 くの Peptococms, Peptostrep-
tococcus, Veillonella,全 てのFnSobacterium,後
者は一部のClostridiumの 発育を阻止す るため,
これらの分離が不能である23). GAM寒 天平板に
患者材料 を画線塗抹 してMetronidazole stripを
置いた場合,選 択性がないので通性嫌気性菌が嫌
気性菌 より102~103倍 多 く存在する検体では,嫌
気性菌の独立集落を得 ることがむずかしいが,=濃
厚塗抹部のstrip周 囲にはsparser zoneを 生ず る
ため,嫌 気性菌の存在を知ることはで きる.こ の
場合,次 の段階 として,前 述の選択培地を組み合
わせて分離 しなければならないが,こ のような例
は少ない.し かし,わ れわれの方法を用いない場
合には嫌気性菌の存在を知 ることも困難であ り,
方法 としても数多 くの培地の組み合わせを行な う
必要がある23)など,手 数 と多 くの時間を要する結
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昭和58年6月20日 467
果 とな る.わ れ わ れ はMetronidazole strip法 に
よ っ て選 択 培 地 を 無駄 な く有 効 に使 用 し,従 来 法
で は 存 在 を知 る こ とが で き な か った 嫌 気 性 菌 (B.
fragilis)を3例 の患 者 材 料 よ り分 離 す る こ とが で
きた.
菌 鑑 別 を抗 菌 剤 に対 す る感 受 性 に よ っ て行 う と
きに 注 意 す べ き こ とは,被 検 菌 の 耐 性 獲 得 の 有 無
で あ る.Metronidazoleは 英 国,フ ラ ン ス,ド イ ツ,
ア メ リカ,そ の 他 の 国 に お い て嫌 気 性 菌 感 染 症 に
対 す る化 学 療 法 剤 と して 用 い られ て い るが14)17),
腸 管 内 常 在 菌 で あ る B.fragilisの 耐 性 獲 得 は3.5
年 の長 期 経 口投 与 を 続 け た 患 者 よ り分 離 され た英
国 の1例17)お よび オ ー ス トラ リア で の1例24)の み
報 告 さ れ て い る.in vitroに お げ る耐 性 獲 得 も試
み ら れ て い る が,変 異 誘 発 物 質 (N-methy-N'-
nitro-N- nitroso- guanidine)を 用 い て 耐 性 変 異 株
を 選 択 した 報 告24)お よ び微 好 気 性 菌 と考 え られ 嫌
気 培 養 で は 発 育 し な いCampylobacter jejuniの
感 受 性 親 株 よ り耐 性 変 異 株 を選 択 した 報 告19)を 除
き,い ず れ の試 み も不 成 功 に終 って い る14). Clos-
tridnmの 耐 性 菌 選 択 に つ い て も Freeman
(1973)が 試 み て い るが 失 敗 して い る.わ れ わ れ も
Fusobacterium nucleatum, Peptococms aero-
genes, Eubacteriumahctolyticumな どを 用 い て
耐 性 獲 得 を 試 み た が,同 様 の 成 績 で あ った2).す な
わ ちMetronidazole耐 性 を 獲 得 し た 嫌 気 性 菌 出
現 は 現 在 の と こ ろ心 配 な い と思 わ れ る が,今 後 も
注 意 す べ き点 と考 え る.
Metronidazole stripを 用 い て 集 落 鑑 別 を 行 う
た め に は,材 料 中 に混 在 す る通 性 嫌 気 性 菌 に よ っ
て 抗 菌 力 が 失 わ れ な い こ と と,嫌 気 性 菌 菌 数 の 比
率 が 極 端 に低 くな い こ とが 必 須 条 件 に な る.こ の
2点 につ い て 検 討 した と こ ろ,16種 の通 性 嫌 気 性
菌 中12種 はMetronidazoleの 力 価 を 低 下 させ な
か った が, E.coli, K.pneumoniae, M.nzorganii,
S.faecalisは そ の 増 殖 過 程 に お い て 同 剤 力 価 を 低
下 させ,特 に S.faecalisは 培 養4時 間 で0.5μg/ml
以 下 に 不 活 化 した.同 剤 不 活 化 に つ い て は Ralph
ら も同 様 の報 告 を して い る7).し た が って,こ れ ら
4種 の 通 性 嫌 気 性 菌 は 本 鑑 別 法 の 障 害 に な るか と
思 わ れ た.し か し,6種 被 検 嫌 気 性 菌 に対 す る 同
剤の殺菌時間を求めた ところ,2時 間以内に0
CFU/mlに なった.す なわちstripに 含有され る
Metronidazoleは S.faecaliS他4菌 種によって力
価が低下するが,同 剤は嫌気性菌をより短時間内
に 殺 菌 す る7)ので,通 性嫌 気 性 菌 は Metroni-
dazole stripに よる本鑑別法の障害にならない と
考えられる.一 方,嫌 気性菌菌数について,そ の
比率が極端 に低い場合に,嫌 気性菌の独立集落を
得ることは技術的にむずか しいと考えられるが,
1枚 の平板上にいかに多 くの独立集落を生 じさせ
ることができるかは術者の熟練 と技術によるとこ
ろが大 きく,い ちがいに混合菌液中嫌気性菌の分
離可能限界を求めることはできないと思われる.
しか し材料を濃厚塗抹 した部分における嫌気性菌
の発育は,通 性嫌気性菌発育によって完全阻止さ
れることはなく,sparser zone形 成による嫌気性
菌検 出感度はTable 1に 示す よ うにか な り鋭敏
であった.こ のように,材 料中に通性嫌気性菌が
混在 しても本検査法は可能であると考えられる.
文 献
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昭和58年6月20日 469
Metronidazole Strip Method for Differentiating Single Colonies of Obligate from
Facultative Anaerobes on Primary Agar Plates
Shinichi NARIKAWA, Satoshi NAKASHIO, Shinichi NISHIDA & Masao NAKAMURA
Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University, School of Medicine
Isao HARASAWA
Bacteriology Section, Clinical Laboratory, St. Marianna Medical School Hospital
Metronidazole is active in vitro against obligate anaerobes such as Bacteroides, Fusobacterium,
Veillonella, Peptococcus and Peptostreptococcus, but has no activity against facultative anaerobes.
However it is generally less active against non-sporing Gram-positive bacilli such as Actinomyces and
Propionibacterium, it is also less active against some species of Peptostreptococcus, but less sensitive
strains are usually not truly anaerobic. Metronidazole may, therefore, be a useful tool in differentiation
of obligate anaerobic bacteria.
And so paper strips each containing 5ƒÊg of metronidazole were prepared to differentiate single
colonies of obligate from facultative anaerobes on primary plate cultures of mixed bacterial suspensions
containing obligate and facultative anaerobes. This suspension was inoculated onto a GAM agar plate to
obtain single colonies and a metronidazole strip was placed at right angles to the well of inoculum, so
that it extended into the area where single colonies would be expected.
After 48 hours of anaerobic incubation, in the area uniformly inoculated, a zone of inhibition around
the metronidazole strip with intrazonal growth revealed the presence of an obligate anaerobe together
with a facultative anaerobe. The area where this phenomenon is recognized is called "sparser zone".
Complete inhibition of growth around the metronidazole strip indicated that obligate anaerobes only
were present. In the area where single colonies were obtained, colonies of facultative anaerobes were
recognized even right up to the edge of the strip and colonies of obligate anaerobes were recognized at a
distance of 5 to 15 mm at least from the edge of the strip. Therefore it seems to be able to differentiate
single colonies of obligate from facultative anaerobes without examining the plate which was incubated
aerobically.
Facultative anaerobes have little influence on the metronidazole strip method. Although
metronidazole was inactivated by certain facultative anaerobes such as Streptococcus faecalis, their
presence in mixed culture with obligate anaerobes did not inhibit the activity of metronidazole. This was
because of the more rapid bactericidal effect of metronidazole before any significant inactivation by the
facultative anaerobes. Therefore the metronidazole strip method is able to detect obligate anaerobes on
primary plate cultures of clinical specimens containing 102 to 103 times as many facultative anaerobes as
obligate anaerobes so that it is difficult to obtain single colonies of the obligate anaerobes. In this case
multiple anaerobic selective media are recommended for the isolation of the obligate anaerobes of all
types.