[ 運動器② ] p 5 超音波画像診断装置を用いた小殿筋の筋厚測...
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【目的】 股関節などの下肢疾患を有する症例においてトレンデンブルグ歩行やデュシャンヌ歩行といった異常歩行は問題になる。この原因として、股関節外転筋の機能低下が挙げられるが、その主動作筋は中殿筋と小殿筋となる。これらの筋は表層に中殿筋、深層に小殿筋という位置関係となり、両筋は force couple 作用を持ち共同的に働くと考えられる。しかし、これらの異常歩行の原因は中殿筋の機能低下と考えられていることが多く、小殿筋の関与については不明な点が多い。これは、小殿筋が深層に存在するため、評価方法が限られているためと考える。我々は、簡便且つ定量的に評価できる方法として超音波画像診断装置を用いて、小殿筋を評価できると考えた。最良な小殿筋の機能訓練を考える上で小殿筋機能を正確に評価できる方法が必要となる。そこで今回は、超音波画像診断装置を用いた小殿筋の筋厚測定の検者内・検者間信頼性を明らかにすることを目的とした。
【方法】 対象は下肢に既往の無い健常男性10名右下肢10脚とした。測定者は経験年数7~11年目の理学療法士3名。測定には超音波画像診断装置 Noblus(日立メディコ)の B モードを使用し、5MHz のマイクロコンベックスプローブを用いた。 測定は側臥位を基本として、股関節角度を調節した以下の4肢位:(i)屈伸・内外転0°、(ii)屈曲30°・内外転0°、(iii)伸展10°・内外転0°、(iv)屈伸0°・外転20°で行った。それぞれの肢位にて安静時(r)と股関節外転等尺性収縮時(c)の2条件で小殿筋の前方線維(Ant)と後方線維(Post)の2部位を、各3回ずつ測定した。測定部位は前方線維を上前腸骨棘と大転子を結んだ遠位1/3、後方線維を上後腸骨棘と大転子を結んだ遠位1/3の部位とした。撮像部位の再現性を高めるため前方線維撮像時は大腿骨頭が画面の中央、後方線維撮像時は股関節裂隙が画面の中央に撮像されるように統一した。また、筋疲労による筋厚変化の影響などを考え、撮像条件はランダムに実施した。筋厚の測定にはフリーソフトであるimage-j を使用した。各検者が測定した3回の筋厚測定値の平均値を算出した。統計学的分析には R8.2.1を用い、検者内および検者間での級内相関係数(ICC)をそれぞれ求めた。
【説明と同意】 対象者には、本研究の目的を十分に説明し、書面にて同意を得た。
【結果】 今回計測した方法での検者3名の検者内信頼性 ICC(1, 1)は そ れ ぞ れ(i)Ant-r/c= 0.80~0.96/0.80~0.91,
Post-r/c= 0.77~0.89/0.76~0.79、(ii)Ant-r/c= 0.81~0.97/0.80~0.93, Post-r/c= 0.76~0.95/0.71~0.96、(iii)Ant-r/c = 0 .85 ~ 0.98/0 .86 ~ 0.97 , Post-r/c = 0 .80 ~0.92/0.83~0.90, (iv)Ant-r/c= 0.88~0.95/0.90~0.96, Post-r/c= 0.85~0.97/0.81~0.92であった。また各条件における検者間信頼性 ICC(2, 3)は、(i)Ant-r/c= 0.94/0.98, Post-r/c= 0.93/0.87、(ii)Ant-r/c= 0.93/0.94, Post-r/c= 0.86/0.77, (iii)Ant-r/c= 0.96/0.95, Post-r/c= 0.91/0.77,
(iv)Ant-r/c= 0.96/0.94, Post-r/c= 0.94/0.92であった。【考察】 10名の被検者に対し、3名の検者が小殿筋の筋厚測定を行い、検者内・検者間信頼性を検証した。Fleiss らによるICC の判断基準によると、ICC >0.75以上であれば excellent reliability, ICC =0.40~0.75であれば fair to good reliability, ICC <0.40であれば poor reliability であると分類している。結果に示したように3名の検者の検者内信頼性はいずれも十分高く、検者間信頼性の検証に耐えるものであると考えた。また、すべての条件での小殿筋筋厚の測定項目について、検者間信頼性は0.77~0.98であり、いずれについても excellent reliability であった。これは本研究の測定では体表上の測定点のマークのみでなく、画像の中央に撮像するランドマークを統一したため良好な信頼性が得られたと考えた。前方線維と後方線維の検者間信頼性では全体的に後方線維で ICC が低値を示す傾向があった。これは後方線維を撮像した部位では小殿筋、中殿筋の表層に大殿筋が存在し、後方線維の撮像のランドマークとなる股関節裂隙がより深層に位置することになったためと考えた。しかしながら、最も検者間信頼性が低い条件でも excellent reliability であり、すべての撮像条件において高い検者間信頼性を得られた。したがって、本研究で撮像した運動課題による小殿筋の筋厚変化の大規模データを収集し、最良な小殿筋の機能訓練を検討するための小殿筋機能の評価方法が確立されたと考える。
【理学療法研究としての意義】 本研究の結果は小殿筋の筋厚の大規模データを収集するための基礎的検討として有意義な結果であったと考える。今回用いた測定方法で各運動課題時の小殿筋の筋厚変化を比較検討することで、最良な小殿筋の機能訓練が明らかにできると考える。
超音波画像診断装置を用いた小殿筋の筋厚測定の 検者内・検者間信頼性の検討
○兼岩 淳平(かねいわ じゅんぺい)1)2),福田 大輔1)2),野村 陽子1),山下 龍太1),山﨑 裕佳子1),浅田 沙姫1),角田 晃啓2)3),工藤 慎太郎2)3)
1)東大阪病院 リハビリテーション部,2)森ノ宮医療大学 保健医療学部 理学療法学科, 3)森ノ宮医療大学 保健医療学研究科
Key word:小殿筋,超音波画像診断装置,検者内・検者間信頼性
ポスター 第7セッション [ 運動器② ]
P7-5