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U.D.C.る78.る占4
ウ レタンゴムの特性と応用Properties and Applications ofUrethane Rubber
岡 田 伸 一*
Sbin'icbiOkada
最近,
内 容 梗 概
工業用部品関係に応用され始めたウレタンゴムの加工法と性能について述べた。
のゴムに比較して機械強度が格段にすぐれており,特に耐摩耗性がすばらしい。さらに,
清 水 克 美**KatsumiShimizu
ウレタソゴムは従来
耐油性もニトリルゴ
ムに匹敵するものもある。ただ,耐熱性に乏しいことが欠点で,使用温度は80~100℃程度である。加工面で
は托入成形,射出成形など,従来のゴム加工法には見られない特異な面があり,用途に応じて使い分ければ非
常に有用な材料と考えられる。なお,最後にウレタンゴムの特徴を生した応用分野についても列挙した。
1.緒 □
分子中にウレタソ結合(-NHCOO-)を有する一群の高分子物質は
ポリウレタソと総称され,ゴム弾性体,フォーム,塗料,接着剤お
よび繊維などの広分野に応用されている。ポリウレタンほ1940年
代にドイツで開発され,その後,欧米において研究が進められてき
たが,戦後,石油化学の進歩にともなってフォームを中心に急速な
発展を遂げ各方面で注目されるようになった。ゴム弾性体(ウレタ
ンゴム)は,わが国でも数年前よりゴムメーカ数社が外国各社との
技術提携により製造に若手し,市販されてきた。
ウレタソゴムは液状ゴムを拝入成形により加工できる点が大きな
特長であるが,また,従来のゴムと同様,ロール操作により加工で
きるものもある。さらに最近は熱可塑性の材料も開発されている。
これらはいずれも,従来の天然あるいは合成ゴムと比較して,耐摩
耗性,機械強賛が格段にすぐれ,また,耐油性も良好なため主とし
て工業用部品や靴底などに応用されている。
ここでは,これらのウレタンゴムについて,その特徴ある性能を
報告し,今後の活用の参考とするしだいである。
2.各種ウレタンゴムの加工法
2.1ウレタンゴムの製造と種類
現在市販されているウレタンゴムは製造原料や加工操作の相違に
第1去 現在 ま で発表 さ れ
より一般に第1表のように分摂される。それぞれのタイプについ
て,現在まで工業用あるいは試作品として発表された製品である。
注入成形型ウレタンゴムとは金属の鋳造法に似た加工法により加
硫成形できる液状ゴムであり,ロール混練型とほ一般のゴムと同
様,ロール操作により加tできるゴムである。また,熱可塑件型ほ
ポリエチレンやポリ塩化ビニルと同じ方法により加工できるもの
で,それぞれの加工法の概要は後述する。
ウレタソゴムはジイソシアネート(OCN・R・NCO)と多価アルコ
ール(HO・R・OHなど)やジアミン(H2N・R・NH2)などの括性水素を
2個以上有する化合物との反応により得られ,その合成過程は通常
次の3段階に大別される。
(1)ポリエステル,ポリエーテルあるいほポリエステルアミド
を基体とする比較的高分子量の鎖状多価アルコー′レ(ベー
スポリマ)の合成
(2)ジイソシアネートと上記ベースポリマとの反応による鎖状
のプリポリマあるいは生ゴムの合成
(3)硬化剤あるいは加硫剤の添加による三次元網状化
第1段階のベースポリマについては,現在市販のものは第1表の
ようにエステル系が圧倒的に多い。第2段階では,ジイソシアネー
トとベースポリマとの配合比により末端基が決定される。もし,ベ
ースポリマ(多価アルコール)が過剰の場合ほヒドロキシルプリポ
リマとなり,また,ジイソシアネートが過剰の場合はイソシアネー
た ウ レク ソ ゴ ム の 種 頬
加工法による分現
空†三人 成 形 型
rニ ー/L 混 練 型
熱 可 塑 性 型
原料組成による分類
エ ー
テ ル 系
エ ス テ ル 系
エステルア ミド系
エ ー
テ ル 系
エ ス テ ル 系
ネステルア ミド系
エ ス テ ル 系
不
日立電線株式会社日高工場**
日立電線株式会社電線工場
商仁l口IJ 名
Adiprene L(lト(6)
Vulkollan r6ト(8)
Desmophen2,200Ⅵr(D)
Multrathane(10)
Solitbane(1)
Neothane(10)
Vulcaprene(1)(2)
Adiprene B(11)
Adiprene C(11)
Desmopllen A/TT(12)
Urepan E(13)
Gentllane S(14)
Elastotbane(1t;)
Vibrathaneく10)
Vulcaprene A(16〉
Estane(17)-(1‡り
Texin(20)(21〉
du Pont
Bayer
Bayer
Mobay
TbiokoI
Goodyear
I.C.I
du Pont
du Pont
Bayer
Bayer
GeneralT&R
ThiokoI
U.S.Rubber
I.C.t.
Goodricb
Mobay
-74-
末 端 プi∈
一NCO
架 橋
アミン,ポリオール,水
一NCO
-OH
-NCO
不 明
不 明
明■
川H
H
H
H
H
川0
0
0
0
0
不■
【一一一一
不不"不
不
不
明
明
明
明(安定化)
明(安定化)
アミン,ポリオール,水
ジイソシアネート
アミン,ポリオール,水
不 明
不 明
不 明
ジイソシ7ネート
硫黄,有機過酸化物
ジイソシ7ネート
有機過酸化物フィソシアネート
有枚過酸化物硫黄,右横過酸化物
有機過酸化物
アミン,ホルムアルデヒド
+垂全塑_ ______■____
な し
な し
摘 要
硬郭三‾王‾す郁7二‾213,315の4種がある
l■ワ一冬竺空空†l
r
】製造 中 ∫卜
可
可
塑
塑
性
性
ワ レ タ ン ゴ ム
トプリポリマができる。第3段階における硬化剤(架橋剤)として
は,ヒドロキシルプリポリマに対してほジイソシアネート,また,
イソシアネートプリポリ■7に対してほ水,ジアミンあるいほ多師ア
ルコー′Lが用いられる。これらの架橋ノ丈応の一例は次のとおりで
ある。
ヒドロキシルプリポリマの場合
、一∴--0・CO●NHOH l
+ OCN・R・NCO 一-→ R
-OH +
ヒドロヤシル
プリポリマジイソシアネート
ーへ-、-・0・CO・NHCON・R・NCO
--→-
-ノーーー()H
R
10・CO・N
イソシアネートプリポリマの場合
ェーーーノ\-NCO
、\ユーNCO
イソシアネート
プリポリマ
、∴-NCO‾‾‾¶--→
へ(√-、--0・CO・NH
ウレタン結合
-CO・NH・R・NH・CO・0アロフγネート轟㌔j合
十 H2N・R・NH2-「
ジアミン
一1-、∴-NH・CO・NHIR
lノー〉γNH●CO●NH
秋葉結合
NH・CO・NH
IR
INH・CO・N・CO・NH
ピューレット統合
ジイソシアネートは湿気を極端にきらい,貯蔵や加二【二操作上,特
別の配艦が必要となる。したがって最近でほ,これらの架橋法のほ
かに,ジェンタソSやウレバンEなどのロール混練塑のプリポリマ
にこおいては有機過酸化物(DicumylperoxideやDi-tert-butylper()一
Ⅹideなど)による架橋法が広く用いられている‖3)り4-。
2.2 注入成形型ウレタンゴム
往入成形型のウレタンゴムは原料が液状という点で大きな特色を
有するとともに,加工面においても従来のゴムとはまったく違って
いる。すなわち,加工者は,従来のゴムでは高分子に重合した生ゴ
ムから出発するのに対し,ウレタンゴムでほ原料素材から取り扱う
ことができ,原料から最終製品までの合成過程を自由に調節するこ
とにより,いろいろな性能を有する幅の広いゴムを製造できると同
時に,全工程を自動化された一つの流れのなかに収め得る可能性を
有している。
筆者らは,従来,du Pont社のアジプレンL-100を中心に弘一卍一
化への検討を進めてきたので,ここではアジプレソL【100を例に
とって,その加工法の概略を述べる。
アジプレソL-100は飴色の液体で,その性状ほ舞2表のとおりで
ある。この生ゴムはイソシアネートプリポリマのため架橋剤はジア
ミンあるいは多価アルコール(ポリオール化合物)が用いられる。
硬質ゴム用には4,4′-Methylene-bis(-Orthochloroaniline)(商品名
第2末 アジプレンL-100の取成と物理l柳生状(3)
組 成
イソシアネート含有謎
平 均 分 子 量
粘 度(@ 30℃)
粘 度(@100℃)
比 罵
貯 歳 安 定 性
揮 発 性 物 質
溶 解 性
1,4-Butanediolと2,4-Toluenediisocyanateを
原料とするイソシアネート末端のポリマ
4.0~4.3%
約 2,000
16,000~19,000cps
600、800cps
l.07
稚気なけ′i=王安定
な し
ケトン,エステル,芳香族炭化水素に可溶
特 性
アジプレンIノー100
(液状)
加熱
りヒノ\
脱
与〈
(金型) 巧り予熱 注形
時化刺
(漆占削
硬化
応
睨1i
2035
第1図 アジプレソ L-100の加工工程の原理
MOCA),また,軟質ゴム用には1,4-ButanediolとTrimethyloト
propaneの組み合わせが一般に軌、られておi)(3),筆者らもこれな
用いた。架橋剤の構造は次のとおりである。
CI Cl
\ /
H2N-ぐニラrcH2】くニラーNH2MOCA(mp.100~104℃)
HO-(CH2)4-OH CH3・CH2・C(CH20H)31,4-ButanedioI Trimetbylolpropane
(bp.230℃) (mp.57~59℃)
次に加工工程の原理を弟1図に示す。プリポリマおよび架橋剤は
混合温度を一定に保つために加熱する。また,混合温度は,得られ
る聾糾11の性能から,100℃程度が適当である。
アジプレンLなどの注入成形型ウレタンゴムの加二I二において帝要
なことは反応混合物の脱気である。もし,脱気が不十分の場合は製
品■=如こポイドを生じる原閃となる。また,金型の形状も重要な点で
ある。たとえば,大形のシート状製品を得たい場合は,遠心力を利
用した回転ドラムなどの特殊な方法を用いる必要がある。
このように汀入成形型のゴムには,従来のゴム加工法とほ異なる
根本的な問題がいくつか存在する。したがって,加二L法の面からそ
の適用分野を検討した場合,従来のゴム分野のすべてに適用される
というより,むしろ従来のゴム加工法では,不利あるいほ不可能と
された分野が亥当かと思われる。なお,液状ゴムの成形法にほ常圧
下で注入成形する方法のはかに,加圧成形法や遠心成形法などの特
殊な方法も効果がある(1)。
2.3 ロール混練型ウレタンゴム
ロール混練型ウレタンゴムほ一般の合成ゴムと同様に生ゴムの状
態で入手され,従来のゴム加工装置を用いて加工できる。この生ゴ
ムほ注入成形型のプリポリマに相当するが,このままでは強度が小
さく実用に耐えないので,補強剤あるいは加硫剤をオープソロール
やバンパリミキサで配合し,加硫することむこより最終製品とする。
充てん剤としては,一般の合成ゴムとまったく同様にカーボンブラ
ック,その他の無機充てん剤あるいは樹脂類も配合でき,さらにこ
れらの充てん剤を適当に組み合わせることにより,硬度の低いもの
から高いものまで,用途に応じた製品を得ることができる。
筆者らはGeneralT.&R.社のジェソタンSおよびBayer社の
ウレバソE,デスモへソA/TTについて検討を行ない,パッキン
グやロール顆の二r二業用部品としてすでに実用化している。
2.4 熱可塑性型ウレタンゴム
現在市販されているものにはエステン(Goodrich社)とテキシソ
(Mobay杜)の2種があり,いずれも熱可塑性という点で非常に特
異な材料である。これらの材料は次に示すようなウレタン結合間の
ー75-
2036 昭和39年12月
第3表 エステン5740×1の射出成形条件(17)
_1ム
材 料 度 温 (℃)
i後 部/こ レ ル 温 度 (℃)■一一-‾‾
l前 部
ス ル 温 度 (℃)
ラ ム
-】ト イ ク
型 混
刊 収
圧 (kg/cm2)
ノ1 〔sec)
度 (℃)
177
121
177
177
1,400
30~90
38
締(cm/cm〕1 0.009
水素結合による配向構造をうまく組み合わせることにより,事実上
加硫を完了したような直鎖状のポリウレタソプリポリマであるとい
われる(17)‾(21)。
を有しており,
\N/
】H
したがって,このままの状態でもすぐれた機械強度
プラスチック弾性体ともいうべき挙動を示す。
0
11C\0/CH2~-′〉CH2\cH2/0\c/NH→\
l10
O H
llI
/C\0/CH2\cH2、ノ〉、ノ\CH2/0\c/N\cH2/
】10
このタイプのゴムはポリエチレンなどの一般のプラスチック加工
装置を用いて,まったく同様の操作により加工できるのが最大の特
徴である。すなわち,射出成形,圧縮成形および押出成形が可能で
あり,特に射出成形では連続的な量産を可能にするものとして,従
来のゴムでほ得られない有利な面を有している。弟3表はエステソ
の加二[条件の一例であるが,エステソは,また,ロール操作により
補強剤や着色剤を離合することも可能である。ただ,これらのゴム
は,いずれもプリポリマ自身の硬度が高いため得られる製品の幅も
かなり限定される。
3.ウレタンゴムの性能
3.1一般的機械特性
ウレタソゴムは一般に機械特性が従来のゴムに比較して格段にす
ぐれている。弟4表に各種ウレタソゴムについて機械特性の測定結
果を示す。比較としてニトリルゴム(NBR)を併記した。
アジプレンはポリオール架橋の場合,一般に硬度の低いものが得
られるが,これは強度が小さい。しかし,それ以外のものでは,い
ずれもすばらしい機械的強じんさを有している。引張り強さでは,
ニトリルゴムなどの従来のゴムが,およそ2kg/mm2程度であるの
論評
(∈モ叫づれ璽爪諸一丁
(N∈溝、虹亡れ凛こし垂廿
第46巻 第12号
1,100
gOO
/X (婆ン〕き
0
_XノX-Xノー√X分哉
かたさ
0.4 0.6 0.8
ト・10CA爪モノし款
1.0 1.2
500
300
100垂
90 実11J
80モノ、一丁
丁ノ7しンIノー100ノーモ′し放
第2図 アジプレソ L-100における MOCAの配合量と
特性の関係
に対し,ウレタンゴムは2-~4kg/mm2を有し,また,伸びも350%
以上あり申しj-こんない。また,引裂きに対する抵抗性も大きい。
耐摩耗性においてほ,アジプレソのアミン架橋物およびエステソ
は特に優秀で,従来のゴムの中でも耐摩耗性の大きいといわれるニ
トリルゴムの3~5倍ある。ジェンタンSやウレバソEにおいても
ニトリルゴムより高い耐摩耗性を有している。また,硬質ゴムでも
弾性に富んでおり,ショブ弾性は非常に高い値を示す。ただ,エス
テンは熱可塑性のため一般のプラスチックと同様,熱による流れが
大きく勲変形に対しては回復力が小さいので,実用上留意する必要
がある。しかし,ロール混練型のジェソタンSおよぴウレバソE
は,いずれもゴム特有のすぐれた回復力を有している。
アジプレソLなどの液状ウレタンゴムでは,成形過程が合成反応
であるためか,一般のゴムのように充てん割による補強効果が期待
できず(5),製品の幅は反応条件や硬化剤により限定される。弟2図
はアジプレンL-100において,硬化剤(MOCA)の配合量と機械特
性の変化を示す。MOCAの量はプリポリマに対して,モル比が約
80%のときに最も良好な結果を示す。これは,機械特性が架橋点の
数とポリマの鎖状部分の長さに影響されるためと思われる。すなわ
ち,第2章で述べたようにアジプレソLのアミン架橋では架橋がピ
ューレット結合により起こるた軌 アミノ基に対しイソシアネート
基が過剰に必要であるが,あまり多過ぎても鎖延長反応が十分でな
くなるためと思われる。
ロール混練型においてほ,充てん剤を適当に配合することにより
補強効果を得ると同時に,用途に応じた特性を有するゴムを得るこ
とができる。ウレバソEやジェソタンSは純ゴム配合では強度は非
第4表 ウ レ タ ソ ゴ ム の 機 枕 的 特 性
____
銘 柄 アジプレンL-100 ジエソタン S l ウレバソ E エス7▼ソ
5740×15740×7
ニトリルゴム
パッキン配合特性
配合種
アミン架橋■表リオ▼蒜No・1
No・2■【lNo・1l■No・2か た さ(JIS), 庶
引 張 り 壊 さ,kg/mm2
200% モジュラス,kg/mm2
伸 び, %
引裂き強さ(JIS.B法),kg/mm
圧縮ひずみ(ASTM,B法)(70℃×22br処理),%
*耐摩耗性,Cm3 (体構摩耗量)
反発弾性率(ショプ式) %
3
エリ
O
5
6
0
8
2
4
て0・810・137851・8。25・40・8。那3
1
7
10
0
お
87
3.74
0.87
602
5.85
0.06
43.2
93
4.12
1.56
538
6.73
0.04
40.4
20.5
0.16
17.2
※ ウイリアム式摩耗試験機720回転
ー76w
ウ レ ン/ コ 応と性特 2037
(Eモ葺小梨肌璽町
(N∈モ孝ぺl卜・∴芸芸N(N∈モ孝恥婦二重m
ズ\ 仲乙【
ヱ0α~もモノ1プ
引張り強さ
×
\メ、
40京
30 盲'ト
20 違10
蛙
500
哀
3()()こ喜一
100
100妥1
25 50 75 100
あーつ小ぺ・や
0
0
カーボンブラックの配合最(pbr)
第3図 ウレバソEにおけるカーポンプラックの配介量と
特性の関係
E亭叱づ1T′彗爪諜【廿
(リム
1
0
■∵∈苧、空‥
吋叶‥.い小。昌ON
N∈号聖二小漂「義一廿
「iこ輔iこけ.7′
×\
\
Jj+手空き催さ
枇l・・
200?ムモソ+ラス
引肘J強さ
Y\--
\x_
(ヂぺ十∴窪川F
700
室500 s
・∈8・
300
100
10 20 30 40
-フライオライトS6Bの配合益(phr)
0
一世〓S-「)れ‖ナや
0
nV
ロ0
6
第4図 ジェソタンSにおけるハイネチレン樹脂(プライ
オライトS6B)の配合量と特性の関係
常に小さく実用に耐えないが,カーポンプラックなどの補強剤を
20~30PHR(生ゴム100重量部に対する重量部,以下PHRとある
のはすべて同じ)配合することにより最高の強度を有するようにな
る(13)(14)。弟3図はウレバソEにおけるカーポンプラック配合量と
機械強度の関係を示す。ここでは20PHR以上の配合量についての
検討結果であるが,カーボンブラックの配合量を調節することによ
りモジュラスあるいは硬度の異なる幅広いゴムを容易に得ることが
できる。
第4図はジェソタンSにおける硬質ゴム用充てん剤の配合による
特性の変化を示すが,引張り強さや引裂き強さなどを犠性にするこ
となく非常に硬質のゴムが得られる。
3.2 耐 熱 性
100℃および120℃における熱空気老化による特性の変化を弟5
囲および弟d図に示す。
100℃において,アジプレンのポリオール架橋物はほかのウレタ
ンゴムに比べて劣化がかなり著しい。アジプレソのアミン架橋物お
よぴウレバソEは引張り強さにおいて,わずかに劣化の傾向を示す。
しかし,20日間老化でもなお2.5kg/mm2程度は保持している。ジ
ェソタンSはわずかに軟化する程度で,強度的には100℃において
は問題なく,エステソではほとんど変化が認められない。なお,ニ
こ巳E
葺
小宅へ一題二叫】
〈㌔一.・、
童
〈糾〓
へ∽Hコ
机ヤ巾
+ 10 ユ5
‾芭化一丁致(目)
(a)引張 り 熱さ
ジLンタンS
_tlテ ン
=)レハン E
-1-・ニトリルコーム
アンプレン
(ポリオール架脚
7'シ‾/レン
(ホリオー/レタ淵)
20;[=
100
0
0
10
老化 日 数(剛
7ノブレン
けミニ 耳Lご七倍)
エステニ
∴ニニ ダニ S
ウいく■ンE
X-ニト=ルゴ∴
15 20
(b)伸 び
ニ/Y
7'ノブレン
(アミン架ン架倍〉
入■ニトリルゴム
ウレバンE
ジ'ェンタンS
アンプレン
〔ポリオール努さ憶)
b lO 15 20
老 化 r寸 鉄 しH)
(C)か た さ
第5図 100℃ 熱空気老化による特性の変化
トリルゴムは結晶性のため老化により硬質化するのに対し,ウレタ
ンゴムは一一般に軟化の現象を起こし伸びが増大する傾向な示す。
120℃においては,ウレタンゴムは劣化がかなり著しい。特にア
ジプレソおよびウレバンE(老防なし)では劣化が大きく実用に耐え
ない。4銘柄のなかではエステソが最もゆるやかな劣化を示すが,
実用には無〕型かと思われる。
また,ウレタンゴムは通常用いられているゴム用老化防止剤では
効果がないが,適当な湿熱老化防止剤を配合したものについて熱老
化性を検討した。図中の老防入りウレパンEは4PHR配合したも
のであるが,老化防止剤の効果がかなり認められ耐熱1生の向上に有
効であることを認めた。また,4PHR以上の添加ではこれ以上の効
果は期待できなかった。
次に,高温における機械滋彦の測定結果を第7図に示す。ウレタ
ソゴムは常温付近における機械強度は格段にすぐれているが,80℃
程度以上の高温においてほニトリルゴムと同等あるいはそれ以下と
なる。
-77-
2038 昭和39年12月
(内∈モ址望
仙空「▲遥二つ
(㌔一
+
至
10 15
ウレバンE
立 評 論
70け
第46巻 第12号
老化 rJ払 r口)
(a)引成 り 弧 さ
(U
.(U
O
nU
ごノェンタ/S
ニトリ-Lゴム
7ソナレン(7享 ンな!標
ウ レ′
(老臣々
アン7Lシ
(了ミン~L三倍)
ーン‡_シタンS
20三[二
70
■
60
50
(轡)
(∽【「)
小心・や
0
0
、‾--
\ ___
10
老化[l致 =‖
(b)伸
15
び
エ1一子ニ
】1し′、二 E
■と仁方んリノウし一、こE
宅帖㌧-■
:=三ト■=Lコム20
ー′一一一一
/ ※ノ1一ニトリJし-:ム
1'/‾71レニ
「7ミニ与rて怖ト
t て一テ ニ′
ンレ、ニー:
〔と〔ノ_†ノ、】
二一′ニンタンS
「/レバンI二
(即方乙▲し)
10
老 化 F】放 =ll
15 20
(c)か た さ
第6図120℃熱空気老化による特性の変化
以上のようにウレタンゴムの耐熱性はあまり良好でない。アジプ
レソでは100℃以下,70~80℃程度が好ましく,ジェソタンS,エ
ステソおよび老化防止剤配合のウレバソEでほ,およそ100℃程度
と考えられる。ウレタンゴムのこのような低い耐熱性ほポリマの基
本をなしているウレタン結合の次のような熱解離に起凶する本質的
なものと考えられており(2),ウレタンゴムの最も大きな欠点の一つ
といえよう。
約200℃R・NHCOO・R′ 三=ヱ R・NCO+HO・R′
R・NHCONHR′ご R・NCO+H2NR′
3.3 耐 水 性
エステルタイプのウレタンゴムではポリマ中のエステル結合の加
水分解性により耐水性に乏しく,特に湿熱のふん閃気中では劣化が
著しいとされている(18)。ウレバンEおよびジェソタンSについて,
熱水試験および湿熱劣化防Ⅰヒ剤の効果の検討結実を第8図にホす。
ニトリルゴムでほ熱水浸漬による劣化の傾向は認められ-ないのに対
し,湿熱劣化防止剤を添加しないウレタンゴムでほいずれも48時
50
一らか一レ+
圭
nU
O
ハリ
ハU
(NERて址ヰ
杓磨三至や
訂E王孝小雪ニ〉空1
鳩
「\エステン
アシr70し
りルゴム
タン S
シー7【レン
トり/Lコ′ム
Lン タンS
-020 30 40 50 60 70 80 9010011り120130140
i盗 I聖 (一cl
第7図 ウレタンゴムの高温における特性
150
900
800
700
600
500
30L200
とr;七1・
24
ンEl巳F_〃′1
シ`工シ タンS(邑ドガ乙-リ
′′しパニE/ノ名帖2p仙
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第8図 95℃熱水辺土如こよる特性の変化
間以内で熱水により分解を起こし測定不能になる。しかし,図から
も明らかなように劣化防止剤の配合量を増加するに従い劣化はゆる
やかになり,ジェソタンSでは4PHRの配合により120時間浸漬
してもなお2kg/1nm2程度の引張り強さを保持している。実用にお
いては95℃の熱水中に浸漬することはほとんどないと考えられる
ので多くの用途に対しては,この程度の抵抗を有しておればさしつ
かえないと思われる。
このように,湿熱による劣化の現象はエステル系ウレタソゴムで
ほ避けられない問題であるが,適当な劣化防山剤の添加によりかな
り改良することができる。
3.4 液体抵抗性
アジプレソおよびジェンタンSの室温(20℃)における膨潤性につ
-78-
ソ ゴ ム の 特 性 と 応
第5表 室温における各種液体浸洗結果(15日間浸漬)
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第9餅170℃ における各種抽「い浸洪による特性の変化
いて,ニトリルゴムと比較検討した結果を第5表に示す。また,各
種ウレタンゴムについて70℃油中に浸漬した場合の機械強度の変
化を弟9図に示す。ジュンタンSは油に対して膨潤率がきわめて小
さく,最も耐油性のあるゴムとして知られるニトリルゴムにほぼ匹
敵する祇抗性を有する。アジプレンはジエソタンSより膨潤が大き
く,耐油性がやや劣るが,ゴムとしては優秀である。機械強度の変
化i・こついては,ウレタンゴムはいずれも低下が非常に小さい。70℃
油中一週間の浸漬でも引張り強さにおいてはとんど90%を保持し
ている。
また,溶剤瑛iこ対しては,ウレクソゴムはほとんどのゴムと同
様,クロロホルムのような極性溶剤あるいは芳香族系の溶剤に対し
て膨潤が激しい。酸,アルカリにおいてほ,エステルタイプのジュ
ンタンSは加水分解により重量減少の傾向を示す。
このようにウレタンゴムは耐油性が優秀なことも特長の一つで
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(6)パッキン(UrepaneE)
第10【頁lウレタンゴムの応用製品例
ある。
3.5 耐オゾン性,電気特性および金属との接着性
ウレタンゴムはタイプのいかんにかかわらず分子中に二重結合を
存しないため一機にオゾン′や酸素に対して強い.。アジプレンは20℃
において,0.010~0.015%濃度のオゾンr「叩こ25%伸長を与えて30
時間放置してもはとんどき裂を生じなかった。プチルゴムでは約10
時間,天然ゴムにおいてほ約1時間以内でき裂を生じる。
ウレタンゴムの電気的性質はあまり良好でない。アジ′プレンでほ
基引山こおいて体積准〔抗率,誘電正接,誘電率がそれぞれ1.85×1010ヱト
cm,0.063,6.44(60c/s)であり,また,ジェンダンSの絶縁配合に
おいても体積抵抗率は1010∫トCm程度である。このようにウレタン
ゴムの電気絶縁性はニトリルゴムよりやや劣り,絶縁ゴムとしてほ
不適当である。
また,一般にゴムほ工業用部品として用いられる場合,金属との
接着性が問題となる。ウレタンゴムでは,往入成形型において接着
性が非偶にすぐれているが,ロール混練型などにおいては,従釆,
接着が不十分であった。しかし,筆者らはロール混練型において,
イソシアネート系接着剤を使用することにより70kg/cm2以上の引
張り接着弥さを得ることができ,実用上の問題を解決した。
4.ウレタンゴムの用途
現在までに筆者らのところで実用化あるいは試作検討した製品例
を策10図に写真で示す。
また,ウレタンゴムの加工および性能上の特徴を考慮に入れて,
有望と思われる応用分野をあげると次のようなものがある。
== 工業田機械部品
ダイヤプラム,ガスケツト,0-リング,パッキン,ロール撰,
緩衝材,べノしト楳,べヤリング,ギヤ苧鼠 マグネットバルブ
(2)土木,鉱‥1関係
ポンプライニングおよび羽根,コンベヤベルト,たわみ継手,
ガイドローノL,さく岩槻用グリップ
(3)自動叶わよび車両用部品
カップリング,ワイパ,燃料ホース,ダイヤフラム,ソリッド
タイヤ,キャスク
(4)宿気音響関係
平べ′レト,タイミソグベルト,7イドラタイヤ,ピンチローラ
(5)事務機器関係
ベルト輯,ギヤ類,フリクショソロール
(6)電線ラ‾-ブル関係
ケーブルのシース,端末処理材
(7) コーティング関係
レザーの仕上げ,床の塗装
ー79叫
2040 昭和39年12月 日 立 評 論 第46巻 第12号
(8)そ の 他
籾(もみ)すりロー′レ,/、ソマ,紡績田口ール,靴匠,電気機器
の補強材
5.緯 口
以上,ウレタンゴムの加工法,性能および用途について述べた
が,要約すると次のとおりである。
(1)ウレタソゴムには注入成形型,ロール混練型,熱可塑性型
がある。注入成形型は従来のゴム工業には見られない特異な加1二
法で,原料から最終製品までを自動化された一つの工程のなかに
収めうる可能性を有する.。また,熱可塑性型は加工が比較的簡単
で,プラスチックとまったく同様にして大量生産が可能である。
ロール混練型は従来のゴム加工設備により加工できる。
(2)ただ,これらの加工法には一長一短があり,実用にあたっ
てほ,それぞれの特徴が十分いかされるよう用途に応じた使い分
けが必要である。
(3)ウレタンゴムほ機械的強じんさに非常にすぐれ,特に耐摩
耗性が大きい。しかも,硬質ゴムでも弾性に富んでおり工業用部
品として適している。
(4)ウレタソゴムは耐油性にもすぐれている。なかでも,ジェ
ソタンSはニトリルゴムに匹敵し,その他でもこれに次いで優秀
である。また,溶剤に対する抵抗性もニトリルゴムと同等以上で
ライニング用としてすぐれた材料である。
(5)しかし,耐熱性が悪いことが最大の欠点である。供試銘柄
のうち比較的良好なエステソおよびジエソタンSでも使用限界温
度は100℃程度であり,アジプレンLやウレバンE(老化防1Ⅰ二剤
なし)では70~80℃程度と考えられる。二)また,こ芭化防止剤の添
加によっても耐熱性ほ,およそ100℃程度しか望めない。したが
って,実用化に当たってほこれらの耐熱性を十分認識する必要がある。
〔6)エステル系のウレタンゴムでは湿熱による劣化が著しいこ
とが欠点であるが,適当な劣化防止剤を添加することにより,か
なり改良できる。
(7)ウレタンゴムの電気的性質ほ良好でない。したがって,電
気絶縁材料としては不適当で,むしろ機械的強じんさを利用した
一 絶縁物の保護材料として適する。また,金属との接着ほ実用上問
題ない。
なお,ウレタンゴムは現在,生ゴムが高価(800~2,500円/kg程
度)なことが実用化への-・つの障宍となっているが,将来,原料(ポ
リエステル,ポリエーテルおよびイソシアネート)のコストの低下
が十分予想されるので,この点ほ漸次解決されていくものと考
える。
最後に本研究に当たりご指導,ご助言くださった日立電線株式会
社吉川課長,松賀主任,渡辺主任ならびに実験に協力された川和田
(誠)氏に深謝する。
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2
3
4
5
6
7
00
9
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1
2
3
4
5
6
7
参 勇 文 献
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149(1961,棋書店)
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