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GC/MS による ヘッドスペース高性能セプタムの 性能評価 技術概要 概要 新しい高性能ヘッドスペース (HS) セプタムは、各種の HS 温度 (最高 300 °C) における 汚染のないサンプル分析を可能にし、一般的な HS 溶媒に対する化学的耐性も備えてい ることを、ヘッドスペース GC/MS の複数ロット試験により実証しました。高性能 HS セプタムは、高温ヘッドスペース GC 分析に最適です。 はじめに ガスクロマトグラフィー (GC) とヘッドスペースの組み合わせにより、複雑なサンプル マトリクス中に存在する揮発性成分の定量および定性データが得られます。Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラは、アジレントのガスクロマトグラフィー製品のひと つです。世界中で使用されている Agilent 7890A GC システムと組み合わせれば、きわ めて要件の厳しいラボにおける HS アプリケーションにも十分に対応できることが実証 されています [1-2]7697A ヘッドスペースサンプラとトレイは 300 °C までのサンプル加熱に対応できるた [3]7697A のアプリケーションは、ポリマー材料の検証といった高温分析にまで広 げることが可能です。高温条件下では、さまざまな揮発性成分がマトリクスから放出 されるため、より多くの明確な定性データが得られるほか、定量分析の対象範囲を広 げることもできます。 現在、ヘッドスペース分析には PTFE/シリコンベースのバイアルセプタムが広く使わ れていますが、この種のセプタムは 200 °C を超える条件での使用には推奨されません。 これらのセプタムを高温で使用すると、セプタムに由来するシロキサンが検出されま す。ヘッドスペース温度が高くなると、シロキサンピークの強度も大きく上昇し、最 終的には一番大きな揮発性化合物ピークとなります。こうした干渉ピークは、特にフ ルスキャンモードを用いた定性または半定量分析において、高温ヘッドスペース分析 の信頼性と効率に大きな影響を与えます。 著者 Limian ZhaoJared Bushey Agilent Technologies, Inc. 2850 Centerville Road Wilmington DE 19808 USA

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GC/MS によるヘッドスペース高性能セプタムの性能評価

技術概要

概要

新しい高性能ヘッドスペース (HS) セプタムは、各種の HS 温度 (最高 300 °C) における

汚染のないサンプル分析を可能にし、一般的な HS 溶媒に対する化学的耐性も備えてい

ることを、ヘッドスペース GC/MS の複数ロット試験により実証しました。高性能 HSセプタムは、高温ヘッドスペース GC 分析に最適です。

はじめに

ガスクロマトグラフィー (GC) とヘッドスペースの組み合わせにより、複雑なサンプルマトリクス中に存在する揮発性成分の定量および定性データが得られます。Agilent7697A ヘッドスペースサンプラは、アジレントのガスクロマトグラフィー製品のひとつです。世界中で使用されている Agilent 7890A GC システムと組み合わせれば、きわめて要件の厳しいラボにおける HS アプリケーションにも十分に対応できることが実証されています [1-2]。

7697A ヘッドスペースサンプラとトレイは 300 °C までのサンプル加熱に対応できるため [3]、7697A のアプリケーションは、ポリマー材料の検証といった高温分析にまで広げることが可能です。高温条件下では、さまざまな揮発性成分がマトリクスから放出されるため、より多くの明確な定性データが得られるほか、定量分析の対象範囲を広げることもできます。

現在、ヘッドスペース分析には PTFE/シリコンベースのバイアルセプタムが広く使われていますが、この種のセプタムは 200 °C を超える条件での使用には推奨されません。これらのセプタムを高温で使用すると、セプタムに由来するシロキサンが検出されます。ヘッドスペース温度が高くなると、シロキサンピークの強度も大きく上昇し、最終的には一番大きな揮発性化合物ピークとなります。こうした干渉ピークは、特にフルスキャンモードを用いた定性または半定量分析において、高温ヘッドスペース分析の信頼性と効率に大きな影響を与えます。

著者

Limian Zhao、Jared BusheyAgilent Technologies, Inc.2850 Centerville RoadWilmington DE 19808USA

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高温でのセプタム由来のシロキサン干渉を低減し、高温ヘッドスペース分析の信頼性を高めるために、代わりとなるヘッドスペースバイアルセプタムが開発されました。高性能セプタムがこの新しいセプタムです。このセプタムの性能を実証するために、高温および高圧で HS ブランクバックグラウンドをモニタリングし、ヘッドスペースアプリケーションで一般的に用いられる溶媒に対する化学的耐性を検証しました。この試験により、新しいセプタムを使えば、きわめて厳しい条件においても、バックグラウンドが著しくクリアになることが実証されました。化学的耐性も良好であることが明らかになりました。新しい高性能セプタムは、高温 HS-GC 分析において信頼性と効率を得られる最適なセプタムです。

実験手法

スクリューキャップ高性能セプタムとクリンプキャップ高性能セプタムの両方について、各種の圧力および温度条件におけるブランクバックグラウンドと溶媒耐性を検証しました。セプタムの 3 つの製造ロットをテストし、ロット間の一貫性を検証しました。また、他のベンダー 3 社のテフロン HS セプタムをテストし、同条件下で高性能セプタムと比較しました。

化学物質と試薬すべての試薬と溶媒は、HPLC または分析グレードのものを使用しました。また、Milli-Q 水を使用しました。ジメチルスルホキシド (DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド (DMAC) を Sigma-Aldrich (セントルイス、ミズーリ州、米国) から購入しました。トルエンを Honeywell B&J (マスキーゴン、ミシガン州、米国) から入手しました。 酢酸とトリエチルアミン (TEA) を EMD (ダルムシュタット、ドイツ) から購入しました。1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI) を Fluka (スイス)から購入しました。氷酢酸 10 mL と Milli-Q 水 90 mL を混合し、10 % 酢酸水溶液を調製しました。

バイアルブランクと溶媒ブランク空の 20 mL ヘッドスペースクリンプトップバイアルまたはスクリュートップバイアルに直接ふたをして、バイアルブランクサンプルを作成しました。ふたをする前に不活性ガスでバイアルをパージするといった操作は行っていません。これらのバイアルブランクサンプルを用いて、ブランクバックグラウンドとセプタム由来の汚染を評価しました。バイアルに溶媒ブランク 1 mL を添加したのちにふたをして、溶媒ブランクサンプルを作成しました。DMI については、GC/MS システムへの汚染のリスクを低減するために、5 µL のみを添加しました。

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使用機器すべての試験には、Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラを備えた Agilent 7890A GCシステムと Agilent 5975C MSD システムを使用しました。表 1 に試験に使用した機器条件を、表 2 に試験に使用した消耗品を記載しています。

表 1. 高性能セプタムの性能確認試験に用いた Agilent HS-GC/MS システムの機器条件

HS サンプラ Agilent 7697A HS サンプラ温度 オーブン/ループおよびバルブ/トランスファーライン温度は、

各試験で 85 °C~300 °C の間で変化時間 GC サイクル

時間 : 32 分、バイアル平衡時間 : 30 分、圧力平衡時間 : 0.10 分、注入時間 : 0.50 分

構成 バイアル加圧ガスの種類 : He、サンプルループボリューム : 1 mL、スタンバイ流速 : 20 mL/min

バイアル 充填モード : 流量一定モード、充填圧力 : 各試験で 15 psi~75 psi の間で変化、充填流速 : 50 mL/min、カスタムループ充填モード、ループ充填ランプ速度 : 20 psi/min、ループ最終圧力 : 10 psi、バイアルサイズ : 20 mL、攪拌 : 1

キャリア GC 制御分析後のパージ パージ流速 : 100 mL/min、パージ時間 : 1 分

GC Agilent 7890A GC シリーズキャリアガス ヘリウム、コンスタントフロー 2.5 mL/min注入口 スプリットモード : 250 °C、スプリット比 : 10:1オーブンプロフィール 40 °C (1.5 min) – 15 °C/min – 325 °C (2.5 min)分析カラム DB-5MSUI、30 m、0.25 mm、0.25 µm (部品番号 122-5532UI)

MSD Agilent 5975C イナート、高性能エレクトロニクス搭載真空ポンプ 拡張ターボモード スキャンチューンファイル Atune.uEM 電圧 Atune 電圧トランスファーライン温度 250 °Cイオン源温度 230 °C四重極温度 150 °C溶媒待ち時間 なしスキャン範囲 25 – 570 amu

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表 2. 消耗品

バイアル ヘッドスペース 20 mL クリンプトップ透明バイアル、100/pk (部品番号 5182-0837)ヘッドスペース 20 mL スクリュートップ透明バイアル、100/pk (部品番号 5188-2753)

バイアルキャップ 高性能セプタム、スチールクリンプキャップつき、100/pk (部品番号 5190-3987)高性能セプタム、スチールスクリューキャップつき、100/pk (部品番号 5190-3986)

クリンパ 20 mm エレクトロニッククリンパ (部品番号 5190-3189)デキャッパ 20 mm エレクトロニックデキャッパ (部品番号 5190-3191)トランスファーライン FS 不活性チューブ、0.530 mm x 5 m (部品番号 160-2535-5)トランスファーラインフェラル ポリイミドグラファイト 1/32-in (部品番号 0100-2595)フィッティング 内部リデューサ 1/16~1/32-in (部品番号 0100-2594)GC 注入口セプタム 高性能グリーンノンスティック 11 mm (部品番号 5183-4759) GC 注入口フェラル 0.4 mm id、85/15 ベスペル/グラファイト (部品番号 5181-3323)O -リング ノンスティックライナ O リング (部品番号 5188-5365) 注入口シール 金メッキ不活性シール、ワッシャーつき (部品番号 5188-5367)注入口ライナ ダイレクトライナ 2 mm id、不活性 (部品番号 5181-8818)

結果と考察

この研究の目的は、新しい高性能ヘッドスペースセプタムの性能を評価し、厳しいヘッドスペース条件下でも良好なクロマトグラムが得られることと、一般的なヘッドスペース溶媒に対する耐性を備えていることを実証することにあります。

クロマトグラフィー純度を検証するために、各種の温度および圧力条件下でバイアルブランクを分析しました。オーブン/ループおよびバルブ/トランスファーライン温度を、85 °C、150 °C、250 °C、300 °C として検証しました。Agilent 7697A HS サンプラの3 つのサーマルゾーンをすべて同じ温度に設定しました。バイアルをまず 15 psi、50 psi、75 psi に加圧してから、6 ポートバルブにつながったサンプルループを 10 psiに減圧してサンプルを充填しました。

ヘッドスペース溶媒耐性試験では、8 種類の溶媒を検証しました。使用した溶媒は、水、10 % 酢酸水、トリエチルアミン (TEA)、トルエン、ジメチルスルホキシド (DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド (DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド (DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン (DMI) で、いずれも各種の特性や顧客のアプリケーションを代表するものです。

高性能セプタムには、スチールスクリューキャップつき高性能セプタム (部品番号5190-3896) とスチールクリンプキャップつき高性能セプタム (部品番号 5190-3897) という 2 つの種類があります。スチールキャップを用いているのは、バイアルリークやサンプルのロスを防ぐためです。スクリューキャップ構成は、スチールキャップをクリンピングする必要がないため、利便性が向上します。スチールが硬いため、スチールクリンプキャップを使用する場合には、エレクトロニッククリンパおよびデキャッパの使用を強く推奨します。

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クロマトグラム一般的に用いられる PTFE/シリコン HS セプタムは、高温 (>200 °C) になるとセプタム由来の汚染物質がシリコンから浸出しはじめるため、通常の温度上限は最高 200 °C に規定されています。高温で PTFE/シリコン HS セプタムを使用すると、環状シロキサンのピークが検出されます。バイアル温度が高くなると、ヘッドスペースサンプルのシロキサン強度が著しく大きくなり、最終的には、図 1 に示すように、一番大きな揮発性化合物ピークとなります。

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おもなセプタム由来の汚染ピークの番号

1. トリメチルシラノール2. Trans-(2-クロロビニル) ジメチルエトキシシラン3. ヘキサメチルシクロトリシロキサン4. オクタメチルシクロテトラシロキサン5. デカメチルシクロペンタシロキサン6. ドデカメチルシクロヘキサシロキサン7. テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン8. ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン9. オクタデカメチルシクロノナシロキサン10. エイコサメチルシクロデカシロキサン

図 1. 300 °C に加熱した PTFE/シリコンヘッドスペースセプタムを用いたバイアルブランクのGC/MS クロマトグラムでは、高温でサンプルを加熱した際に生じるセプタム汚染が顕著に見られます

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新しい高性能ヘッドスペースセプタムは、セプタム材料から浸出するシロキサンの量を大幅に減らすことで、高温時に発生するセプタム汚染の問題を直接的に解消します。バックグラウンドのシロキサンが減少することで、汚染が大幅に減少します。図 2 では、複数のメーカーの PTFE/シリコンヘッドスペースセプタムと高性能セプタムのバイアルブランククロマトグラムを比較しています。図からもわかるように、高性能セプタムでは、300 °C で業界最高のきれいなクロマトグラムが得られます。

異なる温度と圧力を用いて、新しい高性能セプタムを検証しました。これらの温度と圧力で得られたブランクバイアルのクロマトグラムを図 3 および 4 に示しています。図3 では、すべてのバイアルを 15 psi に加圧してからサンプルループに 10 psi に減圧して計量し、さまざまな温度で検証した結果を示しています。図 4 では、オーブン/ループおよびバルブ/トランスファーライン温度を 300 °C として、さまざまな初期バイアル圧力を検証しています。少量のスケールを明確に示すために、ベースラインの拡大図を図 3 および 4 の挿入図として示しています。この挿入図を見ると、300 °C においても、少量のシロキサンピークがごくわずかしか検出されていないことがわかります。検出されたシロキサンピークのシグナル/ノイズ比はおおむね 100 未満です。この数字は、ほとんどのアプリケーションでクリーンなバックグラウンドとして許容される値です。

図 2. 各種の PTFE/シリコンヘッドスペースセプタムと高性能セプタムを用いた場合のバイアルブランクの GC/MS クロマトグラフィーの比較。バイアルを 300 °C で 30 分平衡化しました。高性能セプタムを使った場合のバイアルブランククロマトグラムでは、セプタム由来汚染が著しく少ない事が明らかです

2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00 18.00 20.00

メーカー 3 Thermaseal HS セプタム300 °C までで使用可能と記載

メーカー 2 テフロン/シリコン HS セプタム200 °C までで使用可能と記載

メーカー 1 テフロン/シリコン HS セプタム200 °C までで使用可能と記載

Agilent 高性能セプタム300 °C までの高温 HS 分析に対応

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シロキサン

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図 3. 各温度における高性能セプタムのバイアルブランク GC/MS クロマトグラムの比較。バイアルを各温度で 30 分平衡化し、初期圧力 15 psi に加圧したのち、注入前にサンプルループに 10 psiに減圧して充填しました。高性能セプタムでは、検証した温度全域にわたって、クリーンなクロマトグラフィーバックグラウンドが得られていることがわかります

図 4. ここに記載した圧力は、減圧に先立って各バイアルにかけた初期圧力を表しています。すべてのバイアルを注入前に 10 psi まで減圧しました。バイアルを 300 °C で 30 分平衡化しました。高性能セプタムを用いたバイアルブランククロマトグラムでは、低圧~高圧のバイアル初期圧力において、セプタム汚染のないクロマトグラムが得られることが示されています

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温度 85 °C

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温度 300 °C

温度 250 °C

温度 150 °C

温度 85 °C

拡大図

バイアル初期圧力 15 psiバイアル初期圧力 50 psiバイアル初期圧力 75 psi

バイアル初期圧力 75 psi

バイアル初期圧力 50 psi

バイアル初期圧力 15 psi

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拡大図

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化学的耐性一般的に用いられる 8 種類のヘッドスペース溶媒/溶液を用いて、高性能セプタムの化学的耐性を検証しました。耐性試験では、各溶媒の沸点や純度に応じて、それぞれの溶媒で異なるメソッドを使用しました。ほとんどの溶媒では、Agilent 7697A HS サンプラのオーブン温度を溶媒の沸点より 15°C 低い温度を用いてサンプルを加熱しました。ただし、10 % 酢酸水溶液は例外です。この溶媒では、水が溶液の主成分であるため、水の沸点を使用しました。また、DMI も例外です。DMI の沸点は 225 °C ですが、以下の 2 つの理由から、試験では 150 °C を使用しました。

• 高沸点不純物によるカラム汚染を防ぐため

• 比較に用いた PTFE/シリコンセプタムからの汚染を最小限に抑えられる温度で試験をおこなうため

一貫性をもたせるために、初期バイアル圧力を 15 psi、最終圧力を 10 psi としました。表 3 に、溶媒耐性試験のメソッド条件をまとめています。

機器条件を各溶媒で一定に保ち、複数メーカーの PTFE/シリコンヘッドスペースセプタム 3 種類を高性能セプタムとともに検証しました。図 5 では、PTFE/シリコンセプタムの溶媒ブランククロマトグラムのうち、もっともクリーンなものと高性能セプタムの溶媒ブランククロマトグラムとを比較しています。すべての溶媒ブランククロマトグラムで、常に溶媒ブランクピークが最大のピークとなっています。溶媒由来の少量の不純物もクロマトグラム中で検出されています。図 5 からもわかるように、高性能セプタムでは、PTFE/シリコンヘッドスペースセプタムと同じ溶媒ブランククロマトグラムが得られています。高性能セプタムの化学的耐性は、一般的なヘッドスペース溶媒に十分対応できるもので、低~中温のヘッドスペースアプリケーションにおいて、PTFE/シリコンセプタムと同程度であることが示されています。

表 3. 溶媒耐性試験のメソッド概要

溶媒 沸点 (ºC)

オーブン/ループおよびバルブ/トランスファーライン温度 (ºC)

20 mL バイアル中のサンプルボリューム 平衡時間

バイアル圧力

水 100 85/95/105 1 mL 30 分 15 psi

10 % 酢酸水 100 と仮定 85/95/105 1 mL 30 分 15 psi

TEA 88.7 73/83/93 1 mL 30 分 15 psi

トルエン 111 96/106/116 1 mL 30 分 15 psi

DMF 153 138/148/158 1 mL 30 分 15 psi

DMSO 189 174/184/194 1 mL 30 分 15 psi

DMAC 165 150/160/170 1 mL 30 分 15 psi

DMI 225 150/160/170 5 µL 30 分 15 psi

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図 5. PTFE/シリコンセプタムと高性能セプタムの溶媒ブランク GC/MS クロマトグラム。高性能セプタムは、一般的なヘッドスペース溶媒に対応できます

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PTFE/シリコンセプタムの溶媒ブランク 高性能セプタムの溶媒ブランク

10 % 酢酸水

TEA

トルエン

DMF

DMSO

DMAC

DMI

溶媒

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結論

Agilent 7697A HS サンプラを用いた性能確認試験により、新しい高性能セプタムの高温 (最高 300 °C) におけるクロマトグラムは、PTFE/シリコンセプタムよりもきれいであることが実証されました。また、高性能セプタムは、一般的なヘッドスペース溶媒に対して、良好な化学的耐性を備えていることも確認されました。高性能セプタムは、7697A HS サンプラの高温アプリケーション機能に完全に対応しています。サンプルのヘッドスペースに侵入する汚染物質の量を大幅に減らすことで、定性および定量データの精度と信頼性を高めます。また、低~中温 HS アプリケーションにおいても、溶媒の有無にかかわらず、PTFE/シリコンセプタムと同等かそれ以上のクロマトグラムを得られるため、現行の PTFE/シリコンセプタムに置き換えて使用することも可能です。

参考文献

1. R.L.Firor, 「Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラによる再現性に優れた USP<467> 残留溶媒分析」、アジレント資料番号 5990-7625JAJP

2. J.Bushey, “Automated Sampler Preparation of Headspace Standards Using theAgilent 7696 WorkBench”, Agilent Technologies publication 5990-9025EN.

3.「Agilent 7697A ヘッドスペースサンプラ」、アジレント資料番号 5990-6905JAJP

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