オープンソースソフトウェア開発における...

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Copyright© 2015 OLL All Rights Reserved. 1/30 2015年11月29日 第15回研究大会 オープンソースソフトウェア開発における IT技術用語の法務知財担当への理解を支援する活 動について (一社)オープンソースライセンス研究所 杉本 等 大堀・山本法律事務所 大堀 健太郎 名古屋大学大学院法学研究科 藤本 亮

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Page 1: オープンソースソフトウェア開発における IT技術用語の法務知財担当への理解を支援する活動について

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2015年11月29日第15回研究大会

オープンソースソフトウェア開発におけるIT技術用語の法務知財担当への理解を支援する活

動について

(一社)オープンソースライセンス研究所

杉本 等大堀・山本法律事務所

大堀 健太郎名古屋大学大学院法学研究科

藤本 亮

 

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オープンソースライセンス研究所の概要

• OSS適正利用のための人材育成• OSSの適正利用の啓蒙活動• OSSライセンスの調査および研究活動• OSSビジネスサポート

• OSSを理解し、適正に利用し、ビジネスに生かす企業や個人を増やす。

• 企業がOSSを利用するにあたり、直面する様々な問題の解決方法を相談できる場をつくることにより、安心してOSSを活用できる社会・文化をつくる。

◎IT業界+法曹界で協力

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出典:情報処理推進機構「第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」(2009年)

クラウド、携帯電話、CMSの分野への期待が大きい

OSS活用の傾向

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4/30IDC 国内オープンソースソフトウェア市場 ユーザー利用実態調査とソリューションプロバイダーの採用動向 2011

過去3年間のITビジネスにおけるOSSプロジェクト数の変化

ソリューションプロバイダーの30%以上はOSSプロジェクトが増加傾向

OSSビジネスの傾向

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2012年 国内オープンソースソフトウェア市場 ユーザー利用実態調査(IDC)

OSSビジネスの傾向

・ユーザー企業におけるOSSの導入率は25%、従業員5,000人以上の企業では37%・OSSのメリットはコスト削減とベンダーロックインを回避できるオープン性・OpenFlowやOpenStackなどOSSクラウド関連ソフトウェアの利用意向が高い・サポートを含めOSSソリューションを継続して提供することがOSSビジネス価値を高める

Source: IDC Japan, 4/2013

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OSSライセンスの状況

https://github.com/blog/1964-open-source-license-usage-on-github-com(2015.3)

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OSSライセンスの状況

http://osswatch.jiscinvolve.org/wp/2015/02/05/open-source-software-licensing-trends/(2015.2)

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リーガルリスクの存在

Ciscoとの和解を報じるFSN のWebページhttp://www.fsf.org/news/2009-05-cisco-settlement.html

ソースコード公開 損害賠償

製品の打ち切り 企業イメージの低下

ライセンス違反

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最近の話題

http://sfconservancy.org/news/2015/mar/05/vmware-lawsuit/

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身近なリーガルリスクの存在

スマホの拡大

http://www.linuxplanet.com/linuxplanet/news/7315/1/

OpenLogic社の調査によるとアプリの71%がライセンス違反

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OLLの活動(2011年7月~)

• セミナー(計14回)• 東京周辺2回、名古屋2回、大阪2回、三河2回、福岡

• 島根、大分、徳島、東京2回(協賛、後援)

• 勉強会(ほぼ毎月 計19回)

• 企業向け研修(4回)

• オープンソースカンファレンス浜名湖

• 学会発表● オープンソースソフトウェアライセンスの現状と課題

● OSSライセンス情報のニーズの構造

● OSS利用と現場の悩み

● 問題となるOSSライセンスとその理由

技術用語解説分科会

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用語のギャップを埋め、相互理解し、適切なOSS利用

とOSS利用拡大

開発法務知財

本日の発表内容

技術用語解説分科会の活動紹介

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オープンソースソフトウェアを利用したソフトウェア開発について~利用する時に直面する問題点~

ソフトウェア開発を行うとき、 オープンソースソフトウェア(OSS)

を利用するケースが増えていますが、 そこにはいろいろな問題があります。

第13回研究大会より

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開発担当

法務担当

「OSS」ってなに?ソースコードが公開されているって、勝手に使っても大丈夫なの?「権利侵害」で訴えられない?ライセンスをちゃんと読んでね。

OSSという、ソースコードが公開されているソフトがある。工数や開発期間の削減につながるので、最大限に利用したい。勝手に使ってもいいかな。

1.OSSの存在を知ったときの反応

ライセンスを確認するのは法務の仕事でしょ?

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15/30法務担当

オープンソースソフトウェアのライセンスを読んでみたが

 ①英語で書かれている

 ②技術用語ばかりで分からない

 ③義務もいろいろあるようだ

 ④アメリカではライセンス違反で訴訟になり

   ソースコードを開示したケースもある

 ⑤解釈がいろいろありすぎて何を信じていいのか

   分からない

          困った・・・。

ライセンスを読んでみての感想(法務担当)

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16/30法務担当

例えば、GPLのライセンスはフリーソフトウェア財団(FSF)が策定し、誰でも自分が書いたプログラムにライセンス適用できるようになっている。

ライセンスの解釈について、FSFと著作権者の想いが完全に一致すればいいが、必ずしも一致していないケースがある。

解釈について、コミュニティに確認したいが、GPLと矛盾した回答が返ってきた。

顧問弁護士数人にも相談したが、明確な回答が得られずもやもやした感じが残った。

特に気になるところ・・・

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法務担当としての回答

開発担当

今回は、JAVAで開発します。この場合って、リンク云々の問題ではないのですが、気にせず使ってもいいですよね? 法務担当

GPLの場合、開発したプログラムと動的リンク・静的リンクすれば、開発したプログラムのソースコードも公開しないといけません。

GNUのホームページにLGPLとJAVAの関係が書かれていましたが、イマイチはっきりしません。。

現場としては、明確な回答がないと動くことはできません。代替案を検討する場合、費用や時間がかかります。

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【それぞれの悩み】法務担当は、

①ライセンスを理解したいが、そもそも技術的なことが分からない。

②ライセンスを作った人と著作権者の意図が必ずしも一致しない。QAとライセンスの内容と矛盾しているものもある。

③技術内容から解釈しきれないライセンスもある。

    →技術担当者に対して具体的な指示ができない。

開発担当は、   どのような制限があるのか、   何をやったら違反になるのか、具体的に指示をしてほしい。

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【課題】(1)技術(プログラミング知識)が分かる法務担当がいない。

開発担当も頭では分かっているが、それを法務担当者に分かるようになかなか説明できない。

※開発(技術)・法務の両面で対応できる人材の養成が必要

※開発内容の【見える化】が必要

(2)ライセンスの解釈に関し、不確定性があり、調べれば調べるほど泥沼化してしまう。

※最終的に採用の可否は、会社のポリシーに従い判断する

ことになるが、その判断材料も乏しい。

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OSSの積極的な活用に向けて

開発の途中で円滑な

コミュニーケーションが必要

開発と法務知財との

用語の乖離を埋める必要がある

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OSSの積極的な活用に向けて

■技術用語解説分科会(2015年4月~)・成果物:オープンソースソフトウェア(OSS)のライセンスに関わる法務担当、知財担当の方々に向けに、技術用語などを分かり易く解説した資料を作成する。 ・目的技術に詳しくない法務/知財担当者向けに補助資料を提供することにより、OSSを利用する開発者とのコミュニケーションを円滑に行えるようにする。これにより、法務/知財担当者が適切な判断を行えるようになり、OSSライセンスを遵守した利用を促進する。 ・開催頻度1回/月 主に富士通SSL(武蔵小杉)にて開催

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x.API(Application Programming Interface)

他のプログラムから機能を利用できるように、連携するためのプログラムを開発するための規約、あるいはこの規約を採用した連携プログラムをAPIといいます。

<API>連携

プログラム作成規約

<プログラムA>  ・機能a・機能b・機能c

<プログラムB>・プログラムAの機能を利用

API利用

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議論

法務:図の説明と解釈した意味を提示

技術A:説明A

技術B:説明B

技術C:説明C

※同じ用語でも社や立場によって微妙に異なる

法務:再度、理解した内容を提示し確認

法務:持ち帰り、他の法務に通じるか確認

完成

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一時間半の成果

APIは、他のプログラムから機能やデータ等を利用できるように、連携するプログラムを開発するための規約をまとめたドキュメントです。また、この規約を利用して開発した連携プログラムをAPIと呼ぶケースもあります。

他のプログラムから機能やデータ等を利用できるように、連携するプログラムを開発するための規約をまとめたドキュメントです。また、この規約を利用して開発した連携プログラムをAPIと呼ぶケースもあります。例えば、モジュール名や、モジュールの呼び出し順番、受け渡すデータの型(文字列、数値 等)等を定めています。

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摺り合わせの終わった用語例

● インクルード(インポート)

● 動的リンク

● 静的リンク

● パイプ

● ソケット

● コマンドライン引数

● プロセス

● スレッド

● モジュール

● システムコール

● システムライブラリ● wrapする● wrapを介する● インタプリタ● スクリプト● ソース● バイナリ● コンパイル● SDK● Java

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カーネル

X.システムコール

システムコール(System Call)は、OSの機能を呼び出すための仕組みです。OSが提供する関数(API)を示すこともあります。

OS(例:Unix系)

【例:時計プログラム】

getTimeOfDay()

時計プログラム

getTimeOfDay()を呼び出し

時刻を表示

周期的に繰り返し

システムコール

日時を取得する仕組み

制御

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X.プロセス

プログラム(バイナリコード)がロードされ、メモリに展開され動作している状態のものです。

<バイナリコード>0100100111001100

プロセス

<実行結果>

コンピュータ

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X.スレッド

スレッドは一つのプロセス内で複数の処理を同時に行う方法です。

<実行結果1>

処理1

処理2

処理3

処理1

コンピュータ

処理2処理3

<実行結果2>

<実行結果3>

<実行結果1>

<実行結果2>

<実行結果3>

複数プロセス

スレッド

一つのプロセス

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今後分科会で扱う用語例

● コールする

● 共有メモリ

● メモリ空間

● 共有アドレス空間

● データ構造

● バイパス

● バインディング

● ローダブルモジュール

● コールバック

● シェル

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まとめ

OSSライセンスの理解のために

● 開発者と法務知財との間での言葉の理解

← 技術用語解説分科会

毎月第三水曜日 19時〜

富士通SSL(武蔵小杉)

詳細は、 http://www.osll.jp/ にて