投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

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Page 1: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

3

- 詩の国よりの使者 no.02 -

投稿作品目録

ツラクモ堂

Page 2: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

[ はじめに ]

“誰もが詩の国よりの使者になり得る。”

それが本企画「詩の国よりの使者」の理念です。

誰もが抱く詩的な心を、誰もが閲覧できるように、詩の国よりの使者 no.02への投稿作

品を網羅し、目録としました。

当目録には詩の国よりの使者 no.02へ投稿された 30名の作品が並んでいます。

その中から選考・選抜された作品に、挿絵が付いて冊子化するのは 2016年 5月の予定

です。どの作品にどんな挿絵がつくのか、おたのしみに。

気に入った作品があれば、ぜひ作者に感想を届けてみてください。

宛先のわからない人への感想は、編集部 [email protected] へ送ってください。そ

の人の ペンネーム と 作品名 が記載されていれば、本人へメールを転送します。気兼

ねなくいつでもどうぞ。

詩の国へ、ようこそ。

詩の国よりの使者編集長 つらくも七瀬

*各作品の著作権は、各作者が所有しております。当目録に記載された作品の、作者以外の人物

による無断利用を禁じます。転載や、朗読など2次利用の際には必ず、作者又は詩の国よりの使

者編集部 [email protected] までご連絡下さい。

Page 3: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

1

目次

・木皮

希皮「ホワイトレディーを持った、若い女」

・鈴木勝也「ほっといてよ」

・海絵「(

ちへいせんのむこうから)

」 ・微温湯「へんなの」

・はらは「(ちへいせんの向こうには)

・金子晃「(ささやか)

・玄川静夢「風の歩く日」

・osusowakevinyl

「無題」「ほより」

・deadoc

「賽の目いくつ?」

・Mori_Natsuka

「車中にて」

・やーくん「光りあう」

・きゆみ「蛹」

・May

「回転する日々」

・松股

展弘「紫陽花と蛍」

・藤原さき「同級生とスピンオフ」

Page 4: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

2

・トリノコハイジ「ハローハロー」

・やまぽん「それから」

・たあな「たあな」

・安堂琉「鋼鉄の鳥1

945

・ひろせちの「N

OTE

」 ・三蔵美佳「額縁に」

・あいうぉん「無題」

・蒲公英「櫻花賛」

・うつつうつろ「はじまりは、いつも、見えやしない。」

・RK

「マンマのはなし」

・S.

キタダ「(

無題)

・小林や子「川」

・イザワヒロト「寝室」短歌2点

・白川湊太郎「道標」

・新山セル「夜空の下、君と」「無題」

以上

投稿順、敬称略。

Page 5: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

3

- 詩の国よりの使者 no.02 -

投稿作品目録

ツラクモ堂

Page 6: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

4

ホワイトレディーを持った、若い女

著:木皮

希皮

彼女がやってきたんだってさ。

そうなんだ、ここんとこ面白くなかったもんねぇ。

うん、だからやってきたんだってさ。

迎えに行こうか。

雪降るなか積もるなか

やってきた

片手には

ホワイトレディー

唇を赤く塗って、鼻を赤くして

黒いコートに身を包んで やってきた

これから何をなさるのですか。

目を光らせて尋ねた小人。

コートを脱ぐのよ

こたえた彼女

ほら、近づいてきた。

微笑んだ、はるか、遠くの太陽

Page 7: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

5

木皮

希皮■温泉と湯葉が好きな、21歳の大学生です。

Page 8: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

6

ほっといてよ

著:

鈴木勝也

めをとじていたい

みえないから

いいこともある

あなたのあかるさ

いやだった

つかれているこころには

しんどさにかわる

わたしはしんどいの

ほっといてよ

すこしあわないでいましょう

かなしいことは

ひとりでしかわからない

あなたには

わたしのことはわからない

きずぐちはひらいたまま

じかんがいやす

そうであってほしい

Page 9: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

7

すこしほっといてよ

あなたはいま

なにもできないわ

Page 10: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

8

(

ちへいせんのむこうから)

著:海絵

ちへいせんのむこうからやってくるものについて。

少し悲しくてやさしいおはなしをします。

ぼくには優しくてちょっと過激なお友達が体の中にいる。

彼とはいつも交代しながら生活するんだけど、時々ぼく自身が手に負えない時に彼は最後の

リミッターを優しく優しく外してくれる。

その行為はほんとうに優しくてほんとうにかなしいもので

きっと明日もきみはやさしく

てかなしい

いつも隣にいるくせに君の声はちへいせんのむこうからやってくるんだ

遠くの方から聞こ

えるような聞こえないような

だから色んな所を切ってみたりしてる

そうするとすぐにそばにやってきてくれる

切ってるといつもは大好きなタートルネックのセーターが苦しくて堪らなくなるんだ

どん

どん首が絞まって、ああしあわせだなあ

ぼく多分このまま死ぬんだ

って思うんだよね

多分独りだったらこれも虚しかったんだと思うんだけど、2人だからしあわせで堪らなかっ

Page 11: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

9

たし

2人だから歯止めもきかない

今だってそうだ。

彼の優しさは過激だ。

ぼくの優しい彼氏にだって容赦はしないし、時々ぼくにだって容赦はしてくれない。

感じたのはそういうことだ

容赦のない愛と容赦のない生、容赦のない死。2

人で生きて行く

のはあまりに生きづらいこと、傷口はしばらく脈打っていること、きみはいつか死んでしま

うということ。

ちへいせんのむこう。ゆこう。

そうしてぼくはもどられなくなるのだ。

えいえんにきみだけ。

海絵■被写体。実森と海絵でひとりです。

Twitter @memento_m_mori

gmail [email protected]

Page 12: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

10

へんなの

著:微温湯

望遠鏡をのぞいてみると

何の変哲もない星々が見える

隣で望遠鏡をのぞいている少女はいう

へんなのがいる、へんなのがいる

望遠鏡をのぞいてみると

何の変哲もない満月が見える

隣で望遠鏡をのぞいている少女はいう

へんなのが来た、へんなのが来た

少女には見えて私には見えない変なの

ただ少女は星、月という言葉を知らないだけなのかもしれない

少女の望遠鏡をのぞいてみると

見えた、見えた

へんなのが

微温湯■大学生です。細々と詩を書いてます。

Page 13: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

11

(

地平線の向こうには)

著:はらは

地平線の向こうには何がある

地平線の向こうからは何がくる

私たちは

認識できないものの恐怖に怯えながら

地平線の向こうに

何があるかを想像する

人なのか

それともものなのか

宇宙人なのか

地平線は私たちの想像力を

喚起する存在

Page 14: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

12

(ささやか)

著:金子晃

ささやか

でも、何がかは言わないの

でも、多分正しいの

精一杯なの

金子晃■アメブロ、アキラの徒然草

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詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

13

風の歩く日

著:玄川静夢

太陽がつま先から姿を見せる日は

空と海の

境界線の向こうから

風が歩いてくる

時が登り

それから音もなく

風が歩いてくる

訪れる沈黙を拒むかのように

波はざあざあと

愉快にわめきながら

少しずつ光をこぼしながら

「忘れ物はありませんか?」

僕に問いかける

……落とし物なら

沢山してきたのだけれど

Page 16: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

14

退屈に身を委ね続けると

人は皆

棒となってしまうから

まっすぐに滑り落ちていくのだろう

海辺に突き刺さる一つの棒となって風を見るとき

風は僕に最も近いところまでやってくる

そうしてこう挨拶するのだ

「はじめまして!」

玄川静夢■詩を書いたり、作詞をしたり。

[HP]http://shizumu.com/

[Twitter]@shizumu96

Page 17: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

15

無題

著:osusowakevinyl

風を腕が流れる

肘だけがそのままを追いかけない

踵の友であろうとする

回れ

蒸気的喜びを撒きちらせ

おびただしい酸を振りほどいて

一点のレディ・バグになれ

ほより

著:osusowakevinyl

あぶちゃこ

ほより

しゅびしゅび

せっけん

ぎゃもつれ

びよくさ

さぬててて

さぬててて

さもえ

さぶこちおり

さもえ

Page 18: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

16

しゃーきらきやき

むんすぱらっから

ようこうえ

ひれもいえ

まぐやかんぞぞぞ

おぶやかんぞぞぞ

なぶたまはふや

もうこちょ らはふや

めやめや

しぇさこゆ

のむはた

らたくかいえ

ほより

Page 19: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

17

賽の目いくつ?

著:deadoc

賽の目いくつ?

賽の目六つ

いいえ違います

賽の目八つ

お地蔵さんには見えてます

Deadoc

■石仏や石塔などの背景にあるものを調べています。

Page 20: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

18

車中にて

著:Mori_Natsuka

あなたがくれた約束の

優しさと、儚さを乗せて、車は走る。

誰にも知られることのない、孤独な運命(さだめ)の愛が、

都会の向こうで生まれたばかりの光を受けて、か弱く泣いた。

後部座席の車窓から、朝靄に霞む静かな街並み。

その先のどこかには、太陽が昇る地平線が見えるだろう。

いつかあなたと、それを追い掛けてみたい。

時も人も、忘れて。

Page 21: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

19

光りあう

著:やーくん

温かいオレンジに輝いて

夕日が空を照らしている

暗くなりかけた周囲に対して

自らを鼓舞するかのように

最後の光を放っている

夕日がなくなるとやがて夜がくる

暗くて怖い

星が青白く輝いている

月もひと際輝いている

雲で途切れ途切れになった光が

かえって鋭さを増す

そして時々、光が流れて闇の中へと消える

しばらく経つと

濃い闇から薄い闇へと変わる

そして次第に、あたり一面がぼんやり明るくなる

東から一か所だけ眩しい光が登場する

Page 22: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

20

オレンジ、赤、黄

日の出は現れてはじめて色がわかる

ニコニコ顔のオレンジ

少々ご機嫌ななめの赤

いつも穏やかな黄

今日はどうかなと眺める

そして「よろしく」とつぶやく

牛乳瓶を受け取る頃

いつもみんな黄に変わる

一日は自然の輝きにあふれている

眩しい光、温かな光、鋭い光、か弱い光

その一つ一つが多様な命の輝きを

教えてくれる

すこし気をつけて、あたりを見渡せば

誰でも必ず見える

異なった輝きを認め合い

お互いが連携して

この素晴らしい世界が出来ていることを

やーくん■58歳男性

Page 23: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

21

著:きゆみ

幼虫が夢見た姿なれるかは分からない

蛹の中で

ドロドロに溶け

新しい身体を造る

殻を破るまで分からない

Page 24: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

22

回転する日々

著:May

引力と遠心力のつりあう交差点の真ん中で

君はぽっかりと浮かんで天を仰ぐ

摩耗して随分と小さくなった希望を手のひらに拾い集め

まるで地上から見放されたように自由を歌う

帆を張れ、帆を張れ。

昨日の街は置いていけ。

恐怖という名をつけなければ、

眼前の航路を直視することすら叶わない。

たとえば水面上を走る銀色の数直線

あるいは無風の砂漠に点々と続く足跡

まだ誰も知らない風景の記憶を心臓の檻に映して

そこから君は確かに信号を送る

舵を切れ、舵を切れ。

荒野の果てに明日を見よ。

Page 25: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

23

後悔という名をつけなければ、

背後の軌跡を振り返ることすら叶わない。

すべての物語が沈黙した後になお

君を上昇させようとするその力は何か

どんな肯定も否定も届かないはるかな場所に

君はあの日なくした着地点を今も探し続けている

May

■E-mail [email protected]

Twitter @May_Rock_2096

Page 26: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

24

紫陽花と蛍

著:松股

展弘

夜空に浮かぶ

星空の群れ

紫陽花に

灯りが点って

神秘な夜に

神秘な夜に

蛍のような

君の残像

綺麗なものに

憧れていた

この世界

汚れているから

神秘な夜に

神秘な夜に 蛍のような

君の残像

儚さは何故?美しい

蛍が飛んでいく

儚さは何故?美しい

失恋の様な

ポツリと浮かぶ

君の横顔

何気ない

そんな日だった

神秘な夜に

神秘な夜に

蛍のような

君の残像

Page 27: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

25

紫陽花にとまる蛍を見て

君を思い出した

紫陽花にとまる蛍を見て

涙が溢れてた

儚さは何故?美しい

蛍が飛んでいく

儚さは何故?美しい

失恋の様な

松股

展弘■桜

良い言葉だね

Page 28: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

26

同級生とスピンオフ

著:藤原さき

彼女はまた

半年後にやってくる

他意のない 無意識によって

無関心など 容易く散ってしまう

背後にしのばせ現れる

せっせっと

積もらせたところで

多くの付箋を

露にしている彼女に

問わぬわけにも

いかぬのだ

たとえ影を湿らせることになろうとも

藤原さき■何処かにいる者です

Page 29: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

27

ハローハロー

著:トリノコハイジ

「忘れていたのね」と君が言う

僕が君と出会えることを

君が僕と出会えることを

僕は僕を知らない

君は君を知らないだろう

積年の恨みも辛みも

願いがあったことも

こぼしたことにも気づかずに

けれど

「それはそれは、余程のことだったのね」

無邪気に笑う

無責任に笑う

それだけで

砂糖を舐め過ぎても

心臓を取り替えても

Page 30: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

28

陽が昇ることはないと思っていた

君はそっと鼓動にふれた

僕も、そうした

忘れても失くさないように

僕の足もとには、君の泣いたあと

静寂が終わると、僕はひとりになった

変われたことなんて無いよ

ただ、息がしやすくなった

君を忘れるときまで、君を覚えていたい

このわがままを許してほしい

トリノコハイジ■迷走中のもの書き屋です。

Tumblr

→http://honey-shop.tumblr.com/

Twitter→@mustache96

Page 31: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

29

それから

著:やまぽん

影の中の足音が淀んで

新しい“それから”と語り合う時間

さあ、目を閉じて。一歩。

やまぽん■呟き先、@yamapone_

毎日ひとつ、写真と変な文を呟いています

Page 32: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

30

『たあな』

著:たあな

空(くう)も地(ち)も特に知らない

建造物、建造物

空も地も特に知らない

建造物、建造物

建造物建造物

建造物建造物建造物

健康を、職を、人を、

とにかく、何らかを失った

日々押し寄せる波と波の間に立つ時、在ったことを知る

絶え間ぬ

当たり前の

波間に

たあな■当たり前として忘れる者であることを知り続ける為に。

Twitter @ta_a_na_

メールアドレス [email protected]

Page 33: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

31

鋼鉄の鳥1945

著:安堂琉

鋼鉄の鳥よ

どうか来ないでおくれ

わたしはおまえが大嫌いだ

水平線の彼方からうなり声をあげてやってきては鉛の卵を産み落とし

かえった雛は火を撒き散らすと

頭上にやむことのない灰の雨を降らせる

あぁ

なんと忌まわしく

醜い姿なのか

お前が羽根を持っていることに怒りすら覚える

だが時折思うのだ

おまえは哀しいな

己の意思で行く先を選べない

ほんとうは自由に飛びたいのだろう

Page 34: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

32

火の海と血の砂漠の上などを羽ばたきたくはないんだろう

しかし安心するがいい

多くの命を奪った憎たらしいお前も

いつかは大海原を自由に駆け

世界中の希望を運ぶ鳥になれる日も来るはずさ

わたしはもうすぐ炎になる

新しい時代の空で出逢った時は

どうか背中に乗せてくれないか

その時は呼ぼう

火の魂をまとい

生まれ変わったお前の名を

火の鳥と

安堂琉■駆け出し三年目の物書きです。よろしゅう。

Page 35: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

33

NOTE

著:ひろせちの

ぼくは真昼のひかりの中で夜をおもう。

歌声を魔女に引き渡すことで

人魚姫が得たものの本質は

二本の脚などではなく

最終的には短剣だった。

彼女の姉たちの犠牲が

多少なりと貢献したのだとしても。

そしてその短剣は

使われることなく波間にきえた。

それがすべて。

「最善の選択」が自身の

喜びにつながるとは限らない

Page 36: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

34

この世界では、ぼくはきっと

泡にすらなれやしないのだ。

きみの真の理解者はぼくなのだと

声高に叫ぶことができたら。

けれどそれでは駄目なんだ。

ぼくはやっと

ぼくのほんとうの望みを知った。

だからひとりで行くよ。

そして、門のむこうがわで、きみに会う。

ひろせちの■絵や文章を生成する地球人。

Twitter

→ @hirose_chino

Mail

[email protected]

Page 37: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

35

額縁に

著:三蔵美佳

額縁に

棲みやすいように

砂をしきつめた

胎生が開始され

中耳に

鐘が鳴り響く

卵のカラザがよじれる

わたしを繋ぐものが

いともたやすく

フライパンの上でじゅっと焼かれる

切れ目が入る

千切りにされる

塩コショウされる

砂が動いた

頭が見える

さらざら

さらざら

Page 38: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

36

焦げ付いて

跡形もない

不甲斐ない青い炎が

やがて胎生を仕留めるため

16時の空を

仰ぐ

0時の月を

撫でる

血潮が満ちるとき

囚われていた声が

咲く

三蔵美佳■1986

年、愛媛県生まれ。

[email protected]

Page 39: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

37

無題

著:あいうぉん

地平線の向こうに見える

憧憬

私は彼を乗り越えられるだろうか

あいうぉん■書いたり作ったりしてる人

ツイッター→@hakuaIwon0035

Page 40: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

38

【漢詩原文】

櫻花賛

著:沈

継庚

樱花开时无叶陪,

枝干处处绽花蕾。

树龄越老花越旺,

精彩不输新一辈。

樱花开时无叶陪,

倾情蓄锐迎春归。

寒流袭来花不散,

朵朵拥紧闪光辉。

樱花开时无叶陪,

倾城欣赏独特美。

绿叶不知今何在,

花期短暂无怨悔。

Page 41: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

39

【漢詩訳文】

賛桜

著:沈

継庚

訳:沈

麗麗、沈

広平

葉のない枝に桜が花をつける。

その枝には更に多くの蕾が綻ぶ。

樹齢を重ねるほど、花は旺盛。

その姿は若木に劣らぬ精彩を放つ。

葉のない枝に桜が花をつける。

再び春を迎える。鋭気を蓄え、心を養って。

花を散らすこともなく、寒の戻りに耐える。

一輪一輪が抱き合って輝きを放つ。

葉のない枝に桜が花をつける。

その独特の美への称賛は城をも揺るがす。

ところで、緑の葉は今何処に。

何の悔いも残さず、短い花の季節が過ぎる。

継庚 ■中国在中の72歳男性

麗麗と沈 広平■蒲公英の娘

Page 42: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

40

はじまりは、いつも、見えやしない。

著:うつつうつろ

ここは、実に愉快だ。目を閉じてみる。何が見えたか。何も見えはしない。ただ、僕は線を

追いかけ、いつからか疲れは感じない。

ここは、いつの日かの夜の世界。散り散りと精魂があちらこちらに飛び回る。お互いに語る

こともなく、ただただ、舞う。足に重みはなく、持ち前の軽さで浮遊していく。

ここは、眠るものはいない。みんな何かに包まれた状態で生きている。そうおもっている。

ちなみに最近だと、僕も×

×

に包まれている。だけど、ぼくには見えない。

ただ、今、

ぼくの横を過ぎたものは、何なのか。

うつつうつろ■ようやく名古屋にきて、一年が経ちました。名古屋の眼

鏡っ娘が、鶴舞線に多いので鶴舞線よく乗ります。

Twitter @utsutsuutsuro

Page 43: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

41

マンマのはなし

著:RK

ぼくのマンマが死にました。

「わたしが死んでしまったら、地平線をながめなさい」

マンマは死ぬ前に言いました。だがらぼくはマンマが死んでしまった日から、ずっと地平

線をながめています。何日も、何ヶ月も、何年も、ながめています。

ある日ぼくは思いつきました。地平線の向こうにマンマがいて、ぼくを待っているのでは

ないかと。

さっそくぼくはキラキラかがやく地平線に向かって歩き出しました。何日も、何ヶ月も、

何年も、歩きました。

そうしてぼくは地平線の向こうをめざしたのですが、もとのばしょに戻ってしまいました。

またぼくは地平線をながめることにしましたが、地平線が以前とちがって見えることに気づ

きました。

地平線の先にぼくが見えるのです。ぼくが座れば地平線の先のぼくも座ります。はっとし

ました。ぼくはマンマが言いたかったことがわかったのです。ぼくが地平線で、マンマはぼ

くなのです。

ぼくは地平線をながめなくなりました。地平線はなくなりませんから。そのかわり鏡をよ

く見るようになりました。ぼくの目はマンマに似ています。ぼくのなかにマンマがいる、ほ

こらしい証拠です。

Page 44: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

42

(無題)

著:S.

キタダ

地平線の向こうから光が洩れてくると

僕はむしょうに寂しくなる

地平線の向こうに星たちが去ると

僕は困った顔で笑ってしまう

地平線の向こうから太陽が昇ると

僕は訳も分からず泣きたくなる

地平線の向こうに思いを馳せると

僕は、僕は、僕は、僕は

星たちの間に昨日は滑り落ち

思い出の中の君は闇に溶けていく

太陽は僕に笑顔を見せるけれど

その優しさで僕は少し迷ってしまう

光は道を鮮やかに照らし出すが

そのまぶしさに彼らの声はかき消される

星々の思い出の中でまどろむには

もう今は少しまぶしすぎるんだ

去っていったもの、久しぶりに会うもの、初めてみるもの

でも本当は僕も彼らも動いてなくて 動いてるのは僕が立ってるこの地面なんだって

そういうふうにどこかで聞いた気がするけど

なんだかそうは思えないな

僕のいのちは僕自身のものだから

彼らだって、きっとそれは同じだろう?

僕の立つこの世界は

今日もまたほんの少し動いたらしい

ばいばい、またね、はじめまして、こんにちは

地平線の向こうを見つめ

そして時間が流れていく

Page 45: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

43

S.

キタダ■Twitter: @fuzzy_clumsy

Page 46: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

44

著:小林や子

生活と夢をつなぐ

モノレール

それにわたしは乗っている

生活の背景みたいな場所へと帰っていく

道の途中で

大きな川を渡っている

お母さんを

眩しく思い

結論をだすことは

まちがいだと信じた

本物も

偽物も 流れてゆくなか

結露するわたしと 車内が「あつい」

それすら

遠く

ボンヤリしてくる

あなたにも生活があるのを

知っているよ

私にも生活があるのを

知っているでしょ

生活と夢をつなぐ

モノレール

それにわたしは乗っている

こちらとあちらは足の裏でつながっている

夢はそのまま

天国なのかもしれなくて

Page 47: 投稿作品目録 詩の国よりの使者no.02

詩の国よりの使者 no.02 投稿作品目録

45

あなたを

いつか

恋しく思う

それなのに

身体に生活というのが

ふかく

重く

染みついているのは

世界の仕組みというものを

じょじょに

飲み込んでいる

せい

なのでしょう

小林や子■tw

itter @

ya_covayashi

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寝室

著:イザワヒロト

君は聴いている

長針が刻む音を

遠ざかっては近づいて

決して誰にも交わることはない

長針が刻む音

生まれてからどれだけのものが

通り過ぎて行ったのだろうか

手は二本しかなく

君も私も多くのものを掴み損ねてきた

君は言った

砂浜で一カラットのダイヤを落としたら

誰かが見つけてくれるのだろうか

目を凝らして私は探した

語られることのない

物語の亡骸を辿るように

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【短歌】

著:イザワヒロト

波しぶき溶けゆく泡に囁いた白夜の果てのトワイライトよ

変わらない鼓動の中で朽ちていくベルガモットの花束を君に

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道標

著:白川湊太郎

地面と空がぶつかる場所

それが地平線だ

私はそれを越えねばならないのだ

もしも赤土の地面と澄んだ青空がぶつかっていたのなら

地平線の場所などすぐにわかっただろう

しかし目の前にあるのは

アスファルトと厚みのある雲で覆われた空だ

これらがどこでぶつかっているのか

私はわからず鉛色の巨大な壁の前で立ちつくす

どんよりとした雲り空から雨が降った

雨が落ちた場所

それが地平線だ

それがアスファルトと曇り空の境界線だ

私はそれを越えればよいのだ

雨の落ちた場所を道標にして

今からそちらへ向かおうか

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白川湊太郎■小説家を目指しています。

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湊集編

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夜空の下、君と

著:新山セル

「これはせめてもの罪滅ぼしだ」

彼はそう言って何かを私の右手に乗せた。

彼の澄んだ褐色の瞳を見上げると、彼は微笑んだ。

彼と出会ったのは夜空の下、どこまでも広がる草原。遥か遠くに、天まで届きそうな高くて

険しい山脈が見える。

彼は<

あっち>

からやって来たという。<

あっち>

というのは草原の向こう、山脈を越えたとこ

ろだ。

それに対して、私は<

こっち>

側の者だ。

普通、<

あっち>

から<

こっち>に来ることはない。反対も然りだ。

でもふとしたはずみで<

こっち>

に来ることがあるらしい。

“ふとしたはずみ”ってどういうこと?

彼に尋ねた。だけど彼もよく分からない、という表情をした。

「寝ていると時々ふわふわした感覚がするんだ」と言う。

「その時に意識が風に乗って、ここまでたどり着いたんじゃないかな?」

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あなたはこれから何処に行くの?<

あっち>

に戻るの?

「もう戻れないんだ。いったん<

こっち>

に来てしまったら、<

こっち>

の引力から背くことな

んてできない。だからといって行くあてもない。でもいつまでも此処にいるような気はしな

いんだ。おかしいね、僕は自分の力で移動することなんてできないのに」

でもそれは私だって同じだよ、おかしくなんかはない。いったん生きる場所が決まったら此

処から動くことはできない。でも風になびかれて動くことはあるし、こどもたちは他の力に

よってどこか遠くへ運ばれる。そしてまた新しい場所で生き続けていく。

罪って何?

彼から何かを受け取りながら、私は聞いた。

「僕が<

こっち>

にやって来たとき、君を傷付けてしまったようだ。だから」

ああ、私の足のことね。別に足一本くらいつぶれても他の足があるし、これくらい大した問

題じゃない。私が生きていくのには何も支障は無い。

…って、私は何を言っているのだろう?私の足には何もダメージも受けていないはず。そう

思った瞬間、頭の片隅で何かがチカッと光った。記憶が次第に蘇る。

草原にいる。そのことを認識するほんの少し前、何かが落ちてきた鈍い音が聞こえた気がし

た。そして彼に出会ったのだ。

空は既に白み始めていた。

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気付くと彼も私も、いつの間にか姿が薄れ始めている。

彼は何かを言いかけた。しかし声を聞く前に昇って来た太陽の光を背に受け、彼は消えてし

まった。私の意識もそこで途切れた。

目が覚めた。

窓の外からの暖かい光と鳥のさえずりが織り成すいつもと変わらない朝。でも何かを予感さ

せるような朝。

夢の情景が忘れられない。あれは確か街のはずれの草原…

行こう。

全ては理解できないかもしれない。でもきっと何かが分かる。

此処だ。彼と出会ったのは。

記憶の中の情景と全く同じ場所に、私は立っている。

そこで見つけた石。ありふれたように見えるけど、どこか違うと直感で分かる。

あれは夢で見た―いや、あれは夢じゃない。石の重みは、その証。

石に付いた朝露がきらりと輝いた。

まるで彼のあの澄んだ瞳のようだった。

そういえば、彼と話していたのは誰だっただろう?

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確かに私はあの場所にいた。でも私が話していたようには思えない。

誰かの意識と私の意識が重なり合ったかのような、そんなふわふわした感覚―。

足元では小さな花が風に吹かれて揺れていた。

帰ってからラジオのスイッチを入れる。するとこんな言葉が耳に入ってきた。

「…昨日は流星群が見られたそうですね。その中でもひときわ明るい流れ星が一つあって、

ずっと長い尾を引いていたそうです。詳しいことは分かりませんが、もしかしたら小さな隕

石となって落ちていったのかもしれませんね。…」

草原には、一つの小さな花が咲いていた。その傍らには、小さな石が一つ、転がっていた。

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無題

著:新山セル

海のさかいって、何だ。

空のさかいって、何だ。

新山セル■自然と音楽が好きな大学生。

Mail:[email protected]

Twitter:@celljadew_

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2016 年 04 月 15 日 第一版配信

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