年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割...

18
2009 1 23 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用に向けて (鼎談) 東邦大学薬学部臨床薬学研究室 松尾 和廣 先生 パスカル薬局 横井 正之 先生 薬局つばめファーマシー 萩田 均司 先生 ―医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割・薬学管理上必要な情報―このテー マでこれまでに3回にわたり、入院については「救命救急センターにおける薬 剤師の役割」と題して、松尾和廣先生に、外来については「保険薬局における 薬剤師の役割」と題して、横井正之先生に、そして在宅については「在宅医療 における薬剤師の役割」と題して、萩田均司先生にそれぞれお話をいただきま した。 今回は、3人の先生方に医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割について、 それぞれのお立場でより深くお話し合いいただきます。 医薬品の適正使用について、日頃心掛けていること、心掛けておか ねばならないことは。 ―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。松尾先生には救命救急センタ ーのみならず、病院内全体における薬剤師のお立場でお話しいただきます。 1

Upload: others

Post on 06-Mar-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

2009 年 1 月 23 日放送分

医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割

薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用に向けて

(鼎談) 東邦大学薬学部臨床薬学研究室 松尾 和廣 先生

パスカル薬局 横井 正之 先生

薬局つばめファーマシー 萩田 均司 先生

―医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割・薬学管理上必要な情報―このテー

マでこれまでに3回にわたり、入院については「救命救急センターにおける薬

剤師の役割」と題して、松尾和廣先生に、外来については「保険薬局における

薬剤師の役割」と題して、横井正之先生に、そして在宅については「在宅医療

における薬剤師の役割」と題して、萩田均司先生にそれぞれお話をいただきま

した。

今回は、3人の先生方に医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割について、

それぞれのお立場でより深くお話し合いいただきます。

医薬品の適正使用について、日頃心掛けていること、心掛けておか

ねばならないことは。

―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。松尾先生には救命救急センタ

ーのみならず、病院内全体における薬剤師のお立場でお話しいただきます。

1

Page 2: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

松尾 病院薬剤師は、病院における患者さんの薬物療法が適正で効果的かつ安全

に行われるよう、薬の専門家としてさまざまな業務に携わっています。

病院薬剤師の主な業務として、①責任ある医薬品管理、②患者情報に基

づいた処方せんの解析・評価、③適正な処方せんによる正確な調剤と交付、

④臨床検査値、副作用の初期症状、患者さんの訴えなど、患者情報の解析・

評価とその対応、⑤重篤な副作用を未然に防止するための情報活動と考え

られます。

しかし、「④」の臨床検査値を必要時に検討することができる点を除いて、

大部分が病院、薬局、在宅を問わず、薬剤師としての業務として共通して

いるものと思われます。医薬品の適正使用に関しましても、特に病院だか

ら特別だというものはないと思われます。「新・薬学概論」において望月先

生が、「薬剤師は、それぞれの医薬品の目的に合わせて、その効果を 大限

に引き出し、副作用や相互作用を 小にすることを重要な役割とし、医薬

品の適正使用の推進がそのような結果をもたらす も大きな力となる。

近では、この適正使用に有効性と安全性だけでなく、経済性を含めること

がある。」と書かれていますが、まさにそのとおりだと思います。

私は、救命救急センターで仕事をさせていただいておりましたが、抗M

RSA薬であるバンコマイシンを投与する際、「この患者さんは腎機能が悪

いから、少なめで投与したい」と相談されました。しかし、薬剤師から見

るとはるかに少ない投与量でした。当然ですが投与量が少なく、血中濃度

が低値を推移しても効果が得られるのであれば問題はないと思います。し

かし、早期に十分な量を有効血中濃度域まで上げる必要性を医師とともに

検討し、増量となりました。結果的には血中濃度は有効域を推移し、臨床

症状も回復し、早期にバンコマイシンは終了となりました。

以上のように、MRSAと闘う目的でバンコマイシンを投与するわけで

すから、効果を 大限にするということは重篤な感染症を改善することで、

副作用を恐れ、有効血中濃度域以下の投与を漫然に行うのではなく、必要

十分量の投与量を使用すべきだと考えます。当然ですが、副作用について

も注意深く観察することは言うまでもありません。

―保険薬剤師の立場から、横井先生のお話です。

横井 まず、調剤段階においては、服用方法についての工夫をしています。薬

はきちんと服用することがその前提ですが、外来では意外にそれができて

いません。少しでも飲みやすく、また飲み忘れがないように、積極的に一

包化をしたり、朝と夕の薬袋を分けるなど工夫したり、字の大きさや注意

事項の記載などを心掛けています。

2

Page 3: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

服薬指導については、服用方法のほか生活上の注意、薬の保存方法など、

まずベーシックな点をしっかり伝えるようにしています。そして、言うま

でもなく副作用の前兆症状、併用医薬品や、ほかの病気についても気を配

らなくてはなりません。薬剤師はどうしても薬のほうを見がちですが、前

立腺肥大の方に抗コリン作用のある薬など、他科の疾病との関係のチェッ

クも忘れてはなりません。

また、重篤な副作用については、添付文書はもちろんのこと、重篤副作

用疾患別対応マニュアルに記載されている前兆現象などを患者さんに質問

してチェックする必要があります。

ほかの診療科からの薬については、お薬手帳が威力を発揮しますが、薬

局ごとに手帳を持っていたり、医師や薬剤師に見せずに、ただひたすら自

宅でシールを貼っているという方もいます。お薬手帳そのものの使用方法

の指導も心掛けておくことが大事です。

―在宅医療薬剤師の立場から、萩田先生のお話です。

萩田 外来の横井先生と同じことですが、在宅はどちらかといいますとキュア

よりケアですね。治そうというよりも、ケアをしていこうというのが中心

になってきます。そういった観点から、患者さんのいろいろな、少しずつ

の変化をいかにとらえていくかということが大事になってきます。

そこで、患者さんの在宅を訪問したときに、薬や医療材料、衛生材料等

をお渡しするわけですが、訪問の必要な患者さんは、根本的に通院が困難

な患者さんということが言えます。実際訪問してわかるのですが、患者さ

んは実に多くの薬を持っている場合が多いのです。あちこちからいろいろ

な薬が出てきまして、それを整理していく。そういったことが中心になり

ますので、適正使用のためにはそれらを整理して、それから次の処方につ

なげるということが大事になってきています。

その次にコンプライアンスが大事なのですが、横井先生と同様にコンプ

ライアンスを上げるために一包化をしたり、カレンダーに貼り付けたり、

あるいは薬箱に整理したりして、コンプライアンスの向上に努めておりま

す。

また、頓服や自己調整する薬もたくさん出てまいりますので、そういっ

たものを飲みやすいように、どういったときにどれを使用したらよいか、

それを患者さんと一緒に工夫して作っていくことが在宅薬剤師の役目にな

ってきます。外来では見えなかったことが、生活とともに入ってきますの

で、その生活の中での患者さんの適正使用ということを常に考えていく状

況が多いと思います。

3

Page 4: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

患者情報をどのようにチーム医療に反映させればよいか。

―保険薬剤師の立場から、横井先生のお話です。

横井 患者さんには医師や看護師、介護士さんなど、それぞれの職種に対する

患者さんの顔があります。もちろん、薬剤師に対する患者さんの顔もあり

ます。まず、そこから得られる情報を共有化していくことが大事だと思い

ます。特に、家族や家庭環境などのバックボーンを共有し、チーム医療に

反映することが重要だと思います。

薬剤師からの情報のアウトプットは、看護師さんやヘルパーさんをはじ

めとするコメディカルの方々へも行うことにより、副作用の前兆症状もい

ち早く見つけることも可能となります。薬剤師の仕事は、目の前で起きて

いる患者さんの状態について薬学的な目で関与することが重要で、例えば

昼間うとうとしていたら睡眠薬が効き過ぎていないかとか、便秘は副作用

ではないかとか、そういう患者情報を薬学的視点からフィードバックして

いくことが重要ではないかと思います。

チーム医療では、たくさんの職種の方が参加しています。情報のインプ

ットもアウトプットもマルチになるということがチーム医療の特徴で、そ

れをみんなでうまく活用していかなくては効果が上がらないと思います。

主治医やコメディカルの方々と、情報の共有という点では、メーリングリ

ストなどのITツールの利用も有効かもしれません。ただ、その前提とし

ての個人情報の管理には、注意が必要かと思います。

―在宅医療薬剤師の立場から、萩田先生のお話です。

萩田 在宅医療の場合は、携わる医師や看護師やそのほかの介護職、そういう

チームメンバーが決まっております。そういうことで、いろいろな人にい

ろいろな連携をいかに図るかということが大事なのです。お互いに携帯電

話とかの番号を交換しておいて、刻々と変わる状態を常に交換するという

ことが大事になってきます。それによって、 終的に医師の処方につなげ

ていくということが大事なのです。

われわれ在宅医療薬剤師が訪問するときには患者さんの食事の状況、排

泄の状況、睡眠の状況、あるいは運動、ADLなどの状況をしっかり把握

して、それがお薬の働きに問題はないかどうか、その辺の対応をすること

が大事だと思います。

特に緩和ケアになってきますと痛みの感じ方、あるいはレスキュードー

ズの使用回数、その他の副作用、そういったものがいかに変わってくるか。

4

Page 5: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

そして終末期になりますと、刻々と、瞬時に報告しなければいけない。携

帯電話ですぐ主治医に連絡する、あるいはナースから連絡を受ける、そう

いったことが大事になってきます。 終的には医師の判断を仰ぐわけです

が、少しでも時間が遅れますと状況が変わってくる場合があります。 近

では写メールを使って、患者さんの状況の映像を医師に送る場合がありま

す。

その辺りもいろいろ工夫して適正使用に反映していきますが、病院薬剤師

の方にお願いしてその連携を図る場合もありますし、そういった中ではお

薬手帳などの活用も非常に有効だと思います。

―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。

松尾 病院でのチーム医療は、医師、看護師、検査技師、臨床工学士など、多

くのスタッフと情報を交換する必要があります。チーム医療に患者情報を

反映させるためには、薬剤師は薬剤に対してほかの医療者が理解できるよ

うに教育するとともに、薬剤師の視点で情報を反映させることが重要だと

思われます。

まず、患者に対する問題点を抽出することから始めます。次に、現在の

症状に関連した薬物療法の妥当性を検討いたします。以上をまとめ、回診

やカンファレンスに参加し、医薬品の適正使用を提言します。ここでは、

患者情報を基にした患者個人に対する適正使用で、有効性および安全性を

考慮してチーム医療に反映させていきます。

高齢患者への対応と緩和ケアの対応は。

―在宅医療薬剤師の立場から、萩田先生のお話です。

萩田 人口推計では、現在約100万人の方が亡くなっていると言われており

ます。それが2038年には、約170万に膨らんでいくということです。

昨年3月、在宅療養支援診療所の全国協議会が発足しましたが、その発足

のときに、国立長寿医療センターの在宅推進会議では、5年後に4人に1

人を在宅で看取る体制を作るという提言をされています。

そうなりますと、100万人のうち25万人を在宅で看取るということ

なんですが、そのためにはどうしなければいけないか。そういった中で、

これから看取りも含めた在宅医療というのがだんだん増えてくると考えて

おります。

その中で、医師、看護師はもちろん、歯科医師や薬剤師も看取りのでき

5

Page 6: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

る医療人として活躍しなければならないと思います。そうした中で、薬剤

師としては、「対応が難しい」と言うのではなくて、薬剤師が薬局を出て患

者さんのお宅に行く必要性があるというふうに考えていくべきだと思いま

す。そして、病院でしかできなかった技術ではなく、病院と同じ技術を在

宅に持ち込めるようなことも大事ではないかと思います。

施設死と施設外死という、これも人口統計があるのですが、1979年

辺りから、病院で亡くなる方と自宅で亡くなる方が同じ数ぐらいになり、

近では逆転しております。そういった在宅死の状況に対応するためには、

それだけのいろいろな覚悟や、あるいは工夫や連携が必要だと思います。

緩和ケアに関しては、麻薬等の適正使用が非常に重要になってきますが、

この麻薬をどのように活用するかというのは、看護師とかほかの介護職で

はなく、薬剤師がしっかり服用を適正に指導していくことが大事だと思い

ます。

また、患者さんが亡くなられたときに余った麻薬ですとか、薬をいかに

整理するか。そこまで含めた対応の必要性がこれからも叫ばれると思いま

すし、現にナースが行っている「グリーフケア」、これは亡くなったあとの

家族へのケアなのですが、それも含めて薬の整理とともに適正にできるの

ではないかと。非常に広い視点で、これから対応すべき観点だろうと思っ

ております。

―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。

松尾 高齢者への対応ですが、高齢者では代謝、排泄など生理機能の加齢変化

により薬物の体内動態が変わり、副作用が生じやすいと思われます。必要

に応じてTDM(薬物血中濃度モニタリング)などを行いながら、適切な

量を投与するように推奨しています。

また、アレルギーが関与する副作用や個人的な過敏症による副作用は、

予知は困難ですが、初期の症状をとらえて重篤化を防止できると思ってい

ます。また、高齢者では初期症状が目立たなくなる傾向があり、薬の専門

家が直接モニタリングしたり、副作用の自己管理のための支援が必要だと

思われます。

緩和ケアへの対応については、病院では緩和医療に対する薬剤師の関与

は、一般病棟や緩和ケア病棟などの病棟と、緩和ケアチームによる関与が

考えられます。しかし、薬剤師としての視点は同じであり、薬物療法を支

え、患者さんのQOLを改善することにあると思われます。

先ほどのチーム医療とのかかわりと同様、薬剤師は薬剤の薬効、副作用、

相互作用をチェックし、適切な投与量をチームメンバーとともに検討する

6

Page 7: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

必要があると思われます。特に患者さんの意思を確認し、自分で納得し、

参画するような服薬指導をすることが大きな役割であると思われます。

―保険薬剤師の立場から、横井先生のお話です。

横井 高齢者の方の場合は、まず服用タイミングなど、薬の使用方法をよく理

解してもらうということが大切です。それには、専門用語を使用しない表

現や聞き間違いのない表現を工夫し、かつ、なるべくシンプルに服薬指導

をする必要があります。

また、腎臓や肝臓の機能が低下している方が多いので、マーカーに注意

して検査結果を見せてもらうように心掛けています。副作用の前兆をうま

く見つけるためには、毎日患者さんと接している家族の方やコメディカル

の方々との連動も非常に大切です。例えば、イレウスを起こす患者さんは

多いですが、便秘や下痢の状態をチェックすることにより、カマグの量や

服用タイミングを提案して、QOLのアップにつながったということもあ

ります。薬剤師としては、病状を薬学的に管理し、その情報を使いやすい

かたちで家族や他職種の方と共有していくことが大切です。

緩和ケアに関しては、その大前提として、各薬局で麻薬の許可を取るこ

とが必要になります。許可の取得には時間もかかります。処方せんが来て

からでは遅いのです。従って、開局の薬剤師としては、現在緩和ケアの患

者さんを扱っていなくても、将来への布石として、まず麻薬の許可を取得

しておくということが必須の条件です。

薬の使い方としては、例えば頻繁にレスキューを使用するというケース

では、そもそもレギュラーで服用している量が少なかったということもあ

りました。痛みも変動していきますので、きちんとコントロールできてい

るか、よりよいコントロールをするために、常に薬学的な視点で管理する

ということが大切です。

薬局薬剤師と病院薬剤師がいかに連携を取り合っていけばよいか。

―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。

松尾 病院薬剤師と保険薬局薬剤師の連携は、患者情報の一元化ということが

特に大切であると思われます。患者さんの入院前の薬歴、副作用歴など、

患者情報はかかりつけ薬局が管理し、入院中は病院薬剤師が管理、退院後

にはまたかかりつけ薬局に戻ることになるため、病院薬剤師と薬局薬剤師

が患者情報を共有することが重要です。

7

Page 8: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

病院によっては、病院を退院する際、病院薬剤師は退院サマリーを記載

し、患者さんにかかりつけ薬局に持参してもらうようにしている病院もあ

ります。しかし、現在お薬手帳を利用している患者さんが多いため、今以

上にお薬手帳を活用した患者情報の一元化が、病院薬剤師と薬局薬剤師の

連携に有効であると思われます。

―保険薬剤師の立場から、横井先生のお話です。

横井 少し違った角度かもしれませんけども、病院から処方される場合に、一

般には代替調剤が認められていない日本では、薬の調達が難しいというこ

とがしばしばあります。患者さんの状態から、薬をすぐに調剤したほうが

いいと考えられる場合、疑義照会して変更を求めるということになります

が、処方医の不在や病院の採用薬の問題などで難しい場合もあります。

薬がないということは薬物治療の根幹に関わる問題で、当然薬局側の在

庫努力は言うまでもないですが、現在の日本の状況ではそれも限界があり

ます。一般名処方の推進なども含めて、もう少し病院全体の認識を高めて

もらえるように、病院薬剤師の先生に活躍していただきたいと思います。

それから、処方せんの書き方にもまだまだ不備が多いのが目立ちます。医

療安全の観点から、処方せん記載方法の指導を期待しています。

薬局薬剤師と病院薬剤師、それぞれの患者情報の特徴としては、薬局薬

剤師はどちらかというと生活情報というのがより多く、病院薬剤師は薬の

情報がより多いと常々感じています。連携という観点から考えると、この

辺りの情報交換をうまくできればよいと思います。また、そのためにも生

の情報を交換することが重要で、病院、薬局双方の薬剤師が退院時のカン

ファレンスへの参加や、日ごろから勉強会や研究会などを通じて交流をし

ていくことも大事であると思います。

―在宅医療薬剤師の立場から、萩田先生のお話です。

萩田 在宅医療の場合には、やはり病院の退院から始まる場合が多いです。そ

のときに退院時カンファレンスを行います。退院時カンファレンスには担

当の主治医や看護師や、あるいはMSW(医療ソーシャルワーカー)のよ

うな方が参加されるのですが、その中に悲しいことに病院薬剤師がおられ

ない場合が多いのです。そうなりますと、入院中の調剤をどう工夫してい

たのかという情報が伝わってきません。そうなりますと、われわれとして

はこれからどのように在宅で調剤して、適正に使用するかということが必

要なのですが、その辺りの情報をやはり一番欲しいなと思っております。

もう少し具体的に言いますと、「これは一包化していた」とか、「これは調

8

Page 9: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

整する薬だ」とか、その状況を細かく判断したいなというのが現状です。

ですから、これからもお薬手帳とかそういうサマリーだけではなく、顔

を合わせて向かい合って、お互い連絡が取れるような関係を作っていけれ

ばよいと思っております。

薬・薬連携のまとめ。

―病院薬剤師の立場から、松尾先生のお話です。

松尾 今、お話を聞いておりまして、やはり日ごろからの情報交換というもの

が非常に大切だと思いました。紙切れ1枚のようなサマリーとかお薬手帳

も確かに大切だと思いますが、地域医療に密着して、病院薬剤師も薬局薬

剤師も、患者さんのために薬を通してみんな一緒にやっていきたいと思い

ましたので、ご協力よろしくお願いします。

―保険薬剤師の立場から、横井先生のお話です。

横井 薬局薬剤師、病院薬剤師、働いている場所は違いますが、薬を通して患

者さんに接しているという面では同じかと思います。薬を通じては同じ共

通言語で会話をすることができますので、先ほど松尾先生がおっしゃいま

したようにいろいろな機会を通じて交流を深めていくということと、また

薬剤師同士だけではなくて、主治医の方やコメディカルの方も含めた輪の

中で、もう少しコミュニケーションを取っていくと、大きな枠の中でまた

連携が取れていくのではないかなと思います。

―在宅医療薬剤師の立場から、萩田先生のお話です。

萩田 今やもう在宅医療の推進とともに、薬剤師の職能というのが非常に期待

されていると思います。ただ薬局の中で待っているだけではなく、薬局を

出て、地域でネットワークを作り、他職種と連携して、在宅医療は推進さ

れるものと思います。ですから、われわれ開局の薬剤師が在宅へ行くとい

うことは、病院薬剤師の先生方が病棟へ行くのと全く同じ現状だと思いま

す。その中で情報を共有して、お互いに面と面で会って、そして情報をう

まく回していければ、いい医療につながるものと思っております。

「医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割」

番組URL http://medical.radionikkei.jp/yyrenkei/

提 供

9

Page 10: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

10

Page 11: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

11

Page 12: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

12

Page 13: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

13

Page 14: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

14

Page 15: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

15

Page 16: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

16

Page 17: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

17

Page 18: 年 月 日放送分 医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割 薬学管理上必要な情報―医薬品適正使用 …medical.radionikkei.jp/yyrenkei/final/pdf/090123.pdf ·

18