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【はじめに t 近年、本物志向や健康志向、自然志向が高まる中で、消費者のキノコに対する要望は多様化
している。
クリタケも原木栽培により生産力t始まり、野生昧のあるキノコとして需要拡大が期待されて
いる。
また、長野県林業総合センターの試験研究により菌床栽培技術も開発された。
そこで、林地を生かしたキノコ栽培を推奨するため、クリタケ栽培について、原木栽培技術
を整理するとともに、林床の有効活用のための菌床栽培技術を合わせて「栽培マニュアルjと
して発行した。
【クリタケとは 】クリタケは、担子菌類の中のモ工ギタケ科に分類されるキノコで木材腐朽菌の一種である。
里山かう奥地の山まで、比較的幅広く野生しており、多くはコナラ、クリ等の切り株、倒木
に株状に発生するキノコである。
色、姿、形、昧が良く、いろいろな料理法ができ、とくに茎が繊維質でサクサクとした歯ご
たえと風昧が楽しめる。
〔クリタケ菌の性質 t 菌糸の成育温度範囲は3------30
0
C程度であり、最適伸長温度は250
C前後である。
菌糸は土中の有機物を伝わって繁殖し、切り株等の地上に立ち上がっているものにぶつかる
と、その地際に子実体を発生させる性質がある。
菌床栽培
L原木栽培法 】(1 )栽指方法
原木の樹種はコナラ、ブナ等が良い。他の樹種でもほとんどの広葉樹が使用できる。
カラマツ材でも発生は可能であるが、現在ある品種では収量|主は広葉樹より劣る。
普通栽培、短木断面栽培、長木栽培、伐根栽培が可能である。一般的な長さ 1m前後、太さ
10-----1 5cm位の原木を利用する普通栽培について以下に説明する。
(2)原木の伐採
クリタケ菌は、材組織の生きている生木状態の原木では伸長できない。特にほだ木を土中に
埋めるので、生木では土の中で枯れが進ます菌糸の伸長ができない。
このため、黄葉の初期 (10月中頃)の伐採・葉枯らしをする。
(3)種菌 ・植菌
種菌は駒種菌であり、自然発生の時期が9-----1 0月上旬を早生、 10月下旬-----1 1月を晩生、
中聞を中生としている。発生温度範囲は8-----1 80
Cである。
原木の枯れ具合を見て、 3月から4月に植菌するが、生原木には植菌しない。
(4)仮伏せ
植菌後は種菌の活着を促すために仮伏せを行う。仮伏せは低い横積みにして周囲をムシ口等
で覆い、 15日位毎日散水を行う。
黄葉初期
葉枯らし
生原木には
植菌しない
調整・包装
植菌後散水 排水のよい所
'
傘の膜切れ前
覆土はほだ木の上部がチラチラと見える程度
9月下旬~11月下旬
(5)本伏せ
土中で管理する栽培方法であるから、一度伏せ込むとほだ木の移動は不可能である。このた
め、ほだ場は排水のよい所、覆土の作業性等十分に吟昧して選定する。
ほだ木の間隔を10cm程度あけ伏せ込み、覆土は土が落ち着いてからほだ木の上部がチラ
チラと見える程度がよい。
直射日光が当る林縁ほだ場や裸地ではネットで日覆をする。
(6)発生
子実体の発生は通常2夏経過した秋から始まる。lまだ木の寿命は3-----5年間であり、年 1回
の発生である。
外気温が10-----1 50
C、土の中の温度が10-----140
Cになると早生晶種から始まり、 9月下旬か
ら11月下旬にかけて発生する。
(7)収穫・出荷
子実体の発生は短期間に集中するので、適期をのがさないで採取する。
傘は聞き過ぎるともろくなるので、傘の膜が切れる前に株ごと採取する。
包装・出荷は、野生昧を生かしてできるだけ株ごとイチゴパックやトレイ芯どで行うのがよ
い。
クリタケの形状
クリタケの発生状況
〔菌床栽培法 一一 t(1 )栽培方法
菌床栽培の多くのキノコは、冷暖房の整った空調施設が用いられている。そのため、一般に
菌床栽培キノコは、「山」や「土」といったイメージ、かう遠い存在に芯っている。
しかし、元来キノコは森林内に存在しており、土との相性は必す、しも悪いものではない。
クリタケは、培養した菌床も林内の土壌中で十分に生患でき、子実体を発生するきっかけと
して土が重要な役割を果たしている。
そこで、クリタケの菌床栽培法のうち、林内栽培、簡易施設栽培、空調栽培について紹介す
る。
(2)指地調整
広葉樹のチップ及びブナオガコにトウモロコシヌ力系 (スーパープラン、コーンプラン)を
容積比で10対1-----2程度に混合し、ポリプ口ピレン製の袋及びビンに詰める。
含水率は湿量基準で65-----70%程度がよい。
試験結果では、ブナオガコにスーパープランを容積比で10対1.5-----2程度の培地組成が最も
収量性がよい。
ビンとしては、 800ccの広ロビンでよく、 1ビン当り550-----600g程度が標準で、口一
杯まで詰める。中央には、 1.5-----2cm程度の接種孔を空けておく。
袋培地では、 800g-----2kg程度がよく、基本的には長い培養には大きめの培地、短い培養
には小さめの培地を用いる。接種孔は表面積の大きさに応じて1-----3力所空ける。
-巨砲亙函aヨ盛話通量E・
オガコ:栄養材=10:1.5-2程度袋 800g......2kg 常圧殺菌 一昼夜 種菌接種量
水 65"'70% ビン 800cc広口ビ、ン 高圧殺菌 15cc程度
問自傘の膜切れ前 平均温度12"'11'C 裸出し埋め込む 温度 20.C
調整・包装 期間 3"'6か月
」
(3)殺菌・冷却・接種
ナメコ栽培等通常に行われている菌床栽培の方法でよい。
(4)埼養
培養温度は、空調施設で人工調節する場合、 200
Cである。
培養期間は、 3~5か月程度で十分であるが6か月以上に延ばすほど収量性は少しすつ良く
なる。
(5)林内栽培
8~9月に、クリタケのほだ場として適当な林内の土中に、袋かう取り出して裸出した培地
を埋め込む。埋め込みの深さは培地が土壌中に隠れる程度が妥当である。
埋め込み当年の10月中旬頃に気象条件によって子実体の発生があるが、本格的な発生は翌
年の秋からである。
子実体の発生は、少なくとも2年間にわたり、埋め込んだ菌床面からのみでなく、 20cm以
上離れた土壌中からも見られる。
(6)簡易施設栽埼
培地を林内に埋め込むより短期間に収穫でき、空調施設を使うよりコストがかからない方法
として、パイプハウス等の簡易な施設内の利用も可能である。
3~5か月間培養後に、秋の初め頃から外側にビニール、内側にタイベスト等を張って保温
と日陰対策を実施したパイプハウス内(平均温度12~17 じ程度)に移して発生を行う 。
培地を袋から取り出した後、コンテナ及びプランターに入れて鹿沼土で埋め込んで散水し、
有効ポリで覆って保湿を図る。その際、鹿沼土へ埋め込む深さは表面がやや裸出しする程度で
よく、完全に埋設してしまうと収量が落ちる。
収量は、培地重量の平均25%以上の収量が得られた。
林内への埋設
(7)空調栽指
ナメコ、エノキタケ等の冷暖房設備の整った空調施設を用いたビン又は袋による栽培である。
200
Cで3~5か月程度の培養で子実体が発生可能となるが、さらに期聞を延ばせば収量性は
良くなる。発生混度は 12~170
C程度の通常の温度範囲で十分である。
収量は、発生期間60日で培地重量の15%程度であった。
(8)収穫・出荷
子実体の発生は原木栽培より時期がぱらつくが、適期をのがさないで採取する。
傘は聞き週ぎるともろくなるので、傘の膜が切れる前に株ごと採取する。
包装-出荷は、里子生昧を生かしてできるだけ株ごとイチゴパックやトレイなどで行うのがよい。
(9)子実体形状の比較(菌床栽指と原木栽培)
子実体の「傘の直径」、「傘の厚さ」、「茎の長さ」、「茎の直径」の4項目について、菌床栽培
と原木栽培による形状を比較した。
結果は、菌床栽培による子実体が、原木栽培より傘の径が大きくなる傾向にあった。
その他は、原木栽培の茎が多少長めなだけで、差は見られなかった。
簡易施設栽培(鹿沼土に埋設)