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6 養液栽培パッケージモデル 小中規模タイプ (葉茎菜類)

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Page 1: Ⅰ 養液栽培パッケージモデル 小中規模タイプ (葉茎菜類) · 栽培規模、栽培作物に応じたハウスの大きさとし、施設導入コストの低減を図る。

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Ⅰ 養液栽培パッケージモデル 小中規模タイプ

(葉茎菜類)

Page 2: Ⅰ 養液栽培パッケージモデル 小中規模タイプ (葉茎菜類) · 栽培規模、栽培作物に応じたハウスの大きさとし、施設導入コストの低減を図る。

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近年、道内においても太陽光利用型養液栽培により、葉茎菜類の生産販売に取り組んでいる経営

体が増加しており、新たに取り組みたいとのニーズも高まっていることから、養液栽培の導入に当

たり、その導入の参考となるモデルを提示する。

このモデルは、葉茎菜類で太陽光利用型の養液栽培に取り組んでいる4生産事例の実態調査及び

7生産事例のアンケート調査と、市況動向調査等を基に作成したものである。

1 想定する導入規模

新規参入による経営立ち上げや、既存経営体の後継者による経営の新たな複合部門とする導入

を想定。なお、新規参入の場合は、この部門で自活できる所得が得られる経営を目指す。

○ 100~150坪ハウスを設置して30~50a規模の経営とし、500~800万円の所得確保を目標とす

る。

○ 経営の一部に補完部門として導入する場合は、10a当たり100~200万円の所得確保を目指す。

2 用地、施設、栽培面積の確保のための留意点

(1)用地の確保

○ 用地は、冬期間の除雪スペースも考慮し、施設(ハウス)面積の2~3倍程度の面積を確保

する。

○ 育苗、出荷作業施設の設置スペース、将来的な規模拡大の計画を考慮して確保する。

○ 平坦な用地を確保する。傾斜地は、平坦化するためのコストが加算され、傾斜したハウスで

は、均一な温度管理や養液管理が困難となる。

○ 水、電源が確保できる場所を確保する。

(2)施設規模

○ ハウスの長さは50~60mが望ましい。単棟ハウスは長すぎると、場所による温度、肥料濃度

の差が出やすく、生育がばらつく。また管理作業も作業者の往復距離が長くなり、作業効率が

低下する

○ ハウス設置コストは、1棟1,000㎡のように大型の場合、建設単価が非常に大きくなるので、

栽培規模、栽培作物に応じたハウスの大きさとし、施設導入コストの低減を図る。

○ ハウス内で実際に栽培に使用する有効栽培面積率は、規模により異なり、小規模で45%、中

規模55%、大規模60%である。ハウス規模が小さくなると、有効栽培面積率は小さくなる。移

動ベンチで作業通路を少なくすると、さらに10%程度栽培面積を増やせる。しかし、ベンチ導

入コストが上昇するので、規模により費用対効果を確認して導入を検討すべきである。

○ 育苗施設は、栽培面積の15~25%を確保する。栽培規模が10aを超える場合は、大量の苗供

給が必要となる。育苗は別棟の専用育苗施設を設置し、発芽機(器)、一次育苗室、二次育苗

室があると効率的である。補完経営で規模が小さい場合は、栽培ハウス内に育苗コーナーを設

置することも可能である。

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3 施設の設置コストの目安

(1)先行事例の実態調査

養液栽培はハウス内に養液施設を設置するため、北海道でハウスを設置する場合は、耐雪構

造のハウスが前提となる。

道内における先行事例(4農場)の施設設置コストの事例調査結果は下表のとおりである。

これらの施設は、設置年から相当な期間を経過しているものもあり、その後資材価格が上昇

しているので、現在(H28)新設する場合は施設設置コストが上昇しているので、以下の目安

を参考としていただきたい。

(2)各種設置コスト

ア ハウス設置コスト

<大型ハウスのコスト>

1棟1000㎡のハウスを設置すると設置コストは30,000円/㎡と高額となる。

しかし、用地面積利用効率が良く、また有効栽培面積も高い。

用地面積や生産規模、初期投資への補助、自己資金、融資、支援等の条件を検討し、将来的

A農場 B農場 C農場 D農場

棟数 棟 4 3 1 2

施設総面積 ㎡ 4,032 1,879 354 750

1棟当り面積 ㎡ 1,008 626 354 375

設置費 千円 145,152 42,000 3,700 15,568

10a当り設置費 千円 36,000 22,352 10,452 20,757

㎡当り設置費 千円 36 22.4 10.5 20.8

項  目

単位 A農場 B農場 C農場 D農場

(種別) パイプ パイプ パイプ パイプ

棟数 棟 4 3 1 2

設置年 年 H9 H23 H22 H24

形状 間口×奥行 m 24×42 7.2×87 6.5×54.5 7.5×50

棟高(軒高) m 5.5(3.5) 4.0(1.8) (  ) (  )

柱(パイプ)間隔 ㎝ 300 90 50 50

柱(パイプ)の径(太さ) ㎜ 100×100 43 28 32

被覆 資材(フィルム等資材の種類) フッ素フィルム PO PO スカイコート5

構造(二重、三重、空気膜等) 空気膜 2重空気膜 3重空気膜 3重、空気膜(2層目)

施設面積 (1棟平均) ㎡ 1,008 626 354 375

(小計) ㎡ 4,032 1,879 354 750

自動天窓、側窓装置の有無 有 有 側窓有 1層目側窓

複合環境制御装置の有無 有 無 無 無

炭酸ガス発生装置の有無 無 無 無 無

冷暖房の熱源(灯油、重油、地中熱等) 灯油 灯油 灯油 灯油

冷暖房機 機種 FES200U 温風

能力(消費カロリー量 kcal 51,000 34,000

養液栽培 a.湛液型、b.NFT、c.噴霧耕 NFT 湛液型 底面給水 湛液型

システム 固形培地耕(培地の種類) ピートモス ピートモス

水源(d.水道、e.地下水、f.雨水) 雨水 水道 水道 水道

養液供給方式(j.循環、h.使い切り) 循環 循環 使い切り 使い切り

栽培実(ベッド)面積 (1棟平均) ㎡ 758 384 161 173

面積 (小計) ㎡ 3,032 1,152 161 345

% 75% 61% 45% 46%

育苗用施設 別棟 ㎡ 1,008 360

本圃 ㎡ 34

% 20% 16% 10%

項    目

育苗施設面積率(育苗面積/施設面積計)

施設の種別(パイプ・鉄骨ハウス等)

有効栽培面積率(ベッド面積/施設面積)

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規模拡大を想定した場合は、1棟1000㎡程度が望まれる。

事例としては、H社の場合、3連棟型1000㎡ハウスで、NFT養液施設込みで4,500万円、4

5,000円/㎡程度である。

<100坪ハウスなど小型ハウスのコスト>

初期投資に制限がある場合や、経営の補完部門の場合は小型の耐雪ハウスでの栽培は効率的

である。

耐雪構造のトラスハウス1棟325㎡の場合は12,000円/㎡である。

この小型ハウスを10~15棟設置した栽培は、各棟ごとに栽培品目を変え専用化することによ

り管理がし易く、また、病害虫発生のリスクも分散化し低減できるメリットもある。

しかし、除雪スペース、有効栽培面積の減少などの課題がある。

イ 養液施設設置コスト

養液栽培システムは、参考3のとおり多様であるが、一般に普及している以下のシステムの

コストを示す。

<湛液方式(DFT)のコスト>

ハウス面積が650㎡で15,000円/㎡程度、

325㎡で20,000円/㎡程度である。

<流下方式(NFT)のコスト>

湛液方式とほぼ同等の価格で設置できる。

養液施設設置コストでは、施工費、資材運搬費のコスト比率が比較的大きい。これらのコス

トは設置場所や、水の確保、電源等の設置環境で大きく変化するコストである。

ウ 暖房機導入コスト

暖房システムについては、灯油暖房機、ガス暖房機、地中熱、空気熱ヒートポンプ、木質ペ

レット暖房機等多様である。それぞれの導入コストは、7の(2)を参照していただきたい。

ここでは一般に普及している灯油温風暖房機を標準モデルとして示す。

灯油温風暖房機導入コストは、その他コストを含めると、100坪ハウス1棟で約70万円、 10

a当たり3台で210万円が必要であり、10a当たりの減価償却費は約20万円程度となる。

名称 数量 単位 単価 金額

小型温風機KAー405T 1 台 508,000 508,000

煙突セットBEP-HB1201 1 組 47,200 47,200

コーナーダクトー63 1 個 12,500 12,500

ポリダクト630×0.1×50m 2 巻 6,300 12,600

クロスラムダクト63cm×15m 1 個 8,700 8,700

合計 589,000

減価償却費(耐用年数8年)

温風機、煙突セットのみ対象

※ H28 メーカー見積書より試算

6.3m×50m養液栽培用ハウス対応灯油暖房機導入コスト

62,460

650㎡ 325㎡

間口6.5m 奥行100m

間口6.5m奥行50m

資材費 万円 701 455

施工費 万円 129 87

運搬諸経費 万円 155 141

合計(税別) 万円 985 683

㎡当たり 円 15,154 19,514

※ H28 メーカー見積もり資料より

湛液方式コスト

ハウス面積

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4 栽培品目別の経営試算結果

40~50aの中小規模栽培で自立できる品目を検討した結果は、以下のとおりである。

(1)品目選定

先行事例の実態調査により、栽培事例があり栽培マニュアルが確立している品目で検討し

た。

採用した品目の市場、販売環境は、次表のとおりである。

販売単価は、先行事例の実績と近年の取引状況等より設定した。

養液栽培の商品は、土耕栽培に比較して、安定的に供給できること、より衛生的な清浄野菜

であることが商品メリットである。これらを条件に販売ルートを確保し、市場単価よりも高い

付加価値を実現することが経営を安定させる条件となる。新規参入や補完生産の場合、ロット

不足でこれらを実現させることが困難と思われるので、既存生産者と連携した取組の検討も必

要である。

主要品目(葉茎菜類)の市況、販売環境、導入の考え方

品目 市場・消費動向 北海道での動向 導入の考え方

ホウレンソウ

高温の夏秋期の供給量が少なく、市場単価も高くなるが500~700円/kg程度の単価で推移している。

播種が高温期となる7~9月が品薄となり、高単価となる。

市場出荷の単価では低収益となる。 清浄野菜、サラダホウレンソウ等、値決め高単価での販売先を確保することが導入の前提となる。

ミツバ

正月商材であり、12~1月が特異的に高単価で1200~1500円/kgである。 それ以外の時期は500~700円/kg程度で推移する。

道内生産の60%が水耕栽培である。道内の市場動向も左記と同様である。

通年生産では、低単価の生産となり低収益である。高単価の冬期間出荷での生産、または1000円/kg以上での販売契約単価を維持できれば導入可能品目となる。

グリーンリーフレタス

グリーンリーフレタスは、レタス市場の10~15%程度のシエアである。レタス単価の変動の影響を受け不安定である。秋冬期が高値傾向である。

道内市場でのレタスの11%程度がグリーンリーフレタスである。市場単価は200~400円/kg程度である。

養液栽培の商品は清浄レタスとして高値で取引されている。1000円/kgを維持できる販売先を確保できれば、導入可能品目である。

サラダ菜

サラダ食材としの需要は大都市では拡大傾向にあるが、まだ小さい。市場価格は700~800円/kgで推移している。

価格が安定しているため、既存生産者の基幹栽培品目の一つとなっている。

清浄サラダ食材として付加価値をつけ、1000円/kg程度で新たな販売ルートを開発するか、既存生産者との提携を図る必要がある。

ベビーリーフ

サラダのパック商品化素材として成長が期待され、年間を通じて安定した取引がされている。価格面でも東京市場の場合1500円/kg程度で推移し、比較的安定している。

道内でも大手の生産法人が取り組んで成果を上げている。業務用としての販売が多い。

価格が安定しているので導入しやすい品目である。しかし中小規模での取り組みは、商品のロットが小さく販売先の確保が困難となる。既存大手生産者と提携した生産、販売を行うか、個性的な商品を開発などが必要である。

ハーブ類

年間安定的な市場取引が展開されている。ここ数年の東京市場の平均単価は2700円/㎏であるが、ハーブの品目は多く、単価は種類により多様である。

道内でも一定の市場販売がある。小売りでは品揃え的な少量販売となっている。業務用を含めた新たな市場開拓が必要である。

価格が安定しているので、先に販売ルートを確保して取り組む場合は、有望な品目である。品目によっては土耕栽培との組み合わせも可能である。

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(2)経営検討結果

ア 減価償却費の算定

養液栽培では、投資額の大きいハウス及び施設設置コストが経営結果を左右するため、以下

のデータを基に減価償却費を試算した。

施設設置コストでは、資材運搬費、設置コストの比率が高く、立地条件や施工方法でこれら

の減価償却費は大きく異なる。

また、育苗施設関係も栽培規模で投資額が大きく異なる。簡易型の育苗施設か、本格的育苗

施設か、今後の経営規模を考慮して決定する。本試算は中小規模のため簡易型で試算している。

イ 主要品目での経営試算結果

減価償却費の試算 (H28 メーカー見積もり資料より)

内訳 湛液型 NFT 簡易底面給水

10a当たり減価償却費 2,935,738 3,318,702 1,410,702

内訳 10a当たり購入費

ハウス 11,502,000 739,414 739,414 739,414

養液栽培施設 M式 18,444,848 1,660,036

養液栽培施設 NFT 22,700,000 2,043,000

簡易底面給水自家施工 1,500,000 135,000

暖房機 1,767,000 198,788 198,788 198,788

播種育苗等資材 3,000,000 337,500 337,500 337,500

※ トラス型耐雪ハウス設置費見積もり

  間口7.4m×奥行45m 3,834,000円 3棟分 1,1502,000円

※ 耐用年数 ハウス14年、養液栽培施設10年、暖房機、育苗施設資材8年で試算

減価償却費

主要品目での経営試算結果

スイートバジル チャービル

栽培面積 ㎡ 1000 1000 1000 1000 1000 1000 1000

栽培ベッド実面積 ㎡ 752 650 650 466 650 455 466

324㎡ 324㎡ 324㎡ 324㎡ 324㎡ 324㎡ 324㎡

3棟 3棟 3棟 3棟 3棟 3棟 3棟

栽培方式 湛液 NFT NFT 湛液 NFT 簡易底面給水 湛液

栽培ベンチ生育日数 日 15 38~55 30~45 18~24 30~90 23~30 18~24

年間作付け回数 回数 20 8 10 17 8 14 17

内自家労働時間 時間 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000

雇用労働時間 時間 4,587 3,287 2,215 769 2,430 4,600 5,139

総労働時間 時間 5,587 4,287 3,215 1,769 3,430 5,600 6,139

販売量 kg 10,000 9,233 12,197 13,102 6,423 7,311 11,863

販売単価 円 1,000 1,200 1,000 1,000 2,000 1,625 1,500

販売量金額 千円 10,000 11,080 12,197 13,102 12,846 11,880 17,795

減価償却費 千円 2,936 3,319 3,319 2,936 3,319 1,411 2,936

修繕費 千円 294 332 332 294 332 141 294

種苗費 千円 175 155 715 175 332 565 205

肥料費 千円 100 429 377 256 377 141 256

農薬費 千円 30 129 129 48 64 99 48

諸材料費 千円 70 100 337 321 218 903 321

販売費 千円 100 1,757 1,543 3,532 2272 480 1343

光熱動力費 千円 1,200 794 794 2,219 119 2203 2219

雇用労賃 千円 4,587 3,287 2,215 769 2,430 4,600 5,139

出荷運賃 千円 112 343 343 47 772 565 760

合計 千円 9,604 10,645 10,104 10,597 10,235 11,108 13,521

10a当たり 千円 396 435 2,093 2,505 2,611 772 4,274

1時間当たり収益 円 71 101 651 1,416 761 138 696

40a当たり所得 千円 1,586 1,739 8,372 10,022 10,444 3,089 17,096

利益 10a当たり 千円 -604 -565 1,093 1,505 1,611 -228 3,274

※ 品目別総労働時間は実態調査より試算。自家労賃、雇用労賃とも1,000円/hで試算した。

※ 品目別のベンチ生育日数、年間作付回数、生産量、販売量、販売単価はそれぞれ実態調査より試算した。なお、販売単価は年間平均による。

※ 修理費は購入価格の10%まで認められるが、実際は多様なため本試算では減価償却費の10%として試算した。

※ その他生産費は、実態調査を元に試算した。

所得

生産費

栽培方法

収入

ハウス構造

労働時間

区分ハーブ類

ホウレンソウ 水耕ミツバグリーン

リーフレタスサラダ菜 ベビーリーフ単位項目

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(3)試算結果のまとめ

40a程度の経営規模で自立できる経営を目指す場合、目標販売単価、収量を確保できれば「グ

リーンリーフレタス」「サラダ菜」「ベビーリーフ」「ハーブ類のチャービル」は40a当たり800

万円以上の所得となり、自立可能な品目であった。

導入品目については、単品での生産は価格変動や病害虫トラブルのリスクが想定される。こ

れらのリスクを回避し経営の安定を図るために、複数品目を導入して組み合わせた栽培が望ま

しい。

また、季節により生育日数の差があり、生産量が変化するので、ホウレンソウは生産量の少

ない夏季に、ミツバは需要の多い冬季を中心に栽培を組み合わせると導入可能な品目となる。

効率的な生産計画を樹立するため、参考2のとおり現地事例調査による季節毎の収量、販売

金額等を品目ごとに示しているので、品目毎の導入や組み合わせなど栽培計画の参考としてい

ただきたい。

5 中小規模経営試算モデル

(1)単一型

経営試算結果を基に、40~50a規模で自立でき、また複合経営として100~200万円/10aを得

れる経営試算モデルは、次のとおりである。

主要品目の経営モデル(各単品での通年栽培経営試算)

ハーブ類

チャービル

栽培面積 ㎡ 1000 1000 1000 1000

栽培ベッド実面積 ㎡ 650 466 650 466

324㎡ 324㎡ 324㎡ 324㎡

3棟 3棟 3棟 3棟

栽培方式 NFT 湛液 NFT 湛液

栽培ベンチ生育日数 日 30~45 18~24 30~90 18~24

年間作付け回数 回数 10 17 8 17

内自家労働時間 時間 1,000 1,000 1,000 1,000

雇用労働時間 時間 2,215 769 2,430 5,139

総労働時間 時間 3,215 1,769 3,430 6,139

販売量 kg 12,197 13,102 6,423 11,863

販売単価 円 1,000 1,000 2,000 1,500

販売量金額 千円 12,197 13,102 12,846 17,795

減価償却費 千円 3,319 2,936 3,319 2,936

修繕費 千円 332 294 332 294

種苗費 千円 715 175 332 205

肥料費 千円 377 256 377 256

農薬費 千円 129 48 64 48

諸材料費 千円 337 321 218 321

販売費 千円 1,543 3,532 2272 1343

光熱動力費 千円 794 2,219 119 2219

雇用労賃 千円 2,215 769 2,430 5,139

出荷運賃 千円 343 47 772 760

合計 千円 10,104 10,597 10,235 13,521

10a当たり 千円 2,093 2,505 2,611 4,274

1時間当たり収益 円 651 1,416 761 696

40a当たり所得 千円 8,372 10,020 10,444 17,094

利益 10a当たり 千円 1,093 1,505 1,611 3,274

区分 ベビーリーフ

栽培方法ハウス構造

単位 グリーンリーフレタス サラダ菜項目

生産費

所得

収入

労働時間

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(2)複合型

季節的な価格変動が大きく、通年単品生産では収益の小さい、ホウレンソウ、ミツバについ

ては、それぞれ高単価時期を中心に栽培、それ以外の時期を他品目と組み合わせることにより、

目標所得を実現できる。

組み合わせモデルとして、ホウレンソウ+サラダ菜、ミツバ+グリーンリーフレタスの経営

試算モデルを示す。

ア ホウレンソウ(5~10月)、サラダ菜(11~4月)組み合わせ経営モデル

供給量が減り単価が上昇する夏季にホウレンソウ、それ以外はサラダ菜を栽培したモデルで

ある。

10a当たり

通年

栽培面積 ㎡ 1000 1000

栽培ベッド実面積 ㎡ 752 466

324㎡ 324㎡

3棟 3棟

栽培方式 湛液 湛液

栽培ベンチ生育日数 日 15 18~24

年間作付け回数 回数 10 8

内自家労働時間 時間 500 500 1,000雇用労働時間 時間 2,294 385 2,678総労働時間 時間 2,794 885 3,678販売量 kg 5,000 6,551 11,551販売単価 円 1,100 1,000 1,043販売量金額 千円 5,500 6,551 12,051減価償却費 千円 1,468 1,468 2,936修繕費 千円 147 147 294種苗費 千円 88 88 175肥料費 千円 50 128 178農薬費 千円 15 24 39諸材料費 千円 35 161 196販売費 千円 50 1,766 1,816光熱動力費 千円 1,200 1,110 2,310雇用労賃 千円 1,147 385 1,531出荷運賃 千円 56 24 80

合計 千円 4,255 5,299 9,55410a当たり 千円 1,245 1,253 2,4971時間当たり収益 円 446 1,416 1,86240a当たり所得 千円 4,979 5,010 9,989

利益 10a当たり 千円 745 753 1,497

項目

所得

ハウス構造

労働時間

収入

生産費

栽培方法

単位 ホウレンソウ サラダ菜区分

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イ ミツバ(12~2月)、グリーンリーフレタス(3~11月)組み合わせ経営モデル

冬期間、単価の高い時期に2作だけミツバを栽培、それ以外はリーフレタスを栽培したモデ

ルである。

このほか現地事例では、冬にミツバ、夏にホウレンソウ、春、秋はミズナ、コマツナなどを

栽培している事例もある。

6 経営開始にあたっての留意点

養液栽培を開始するにあたって次の点に留意する必要がある。

① 初期投資額が大きいので、生産上の失敗が許されない。目標収量、品質を確保するために、

栽培技術の習得の事前研修を各研修機関や既存生産者の下で行うことが重要である。

② 目標単価を得るためには、養液栽培による付加価値を実現した販売ルートの確保が重要であ

る。実需者との契約栽培、既存生産者との連携が有効であるが、生産のみ行い、販売を既存生

産者に委託する場合は、既存生産者の選別、貯蔵、労働力の問題があるので、開始前からの計

画的な事前協議が重要である。

③ 初期投資負担を軽減するために様々な支援措置(P80参照)がある。経営に適合する支援措

置の活用を検討していただきたい。

10a当たり

通年

栽培面積 ㎡ 1000 1000

栽培ベッド実面積 ㎡ 650 650

324㎡ 324㎡

3棟 3棟

栽培方式 NFT NFT

栽培ベンチ生育日数 日 38~55 30~45

年間作付け回数 回数 2 7

内自家労働時間 時間 250 750 1,000雇用労働時間 時間 822 1,661 2,483総労働時間 時間 1,072 2,411 3,483販売量 kg 2,308 8,538 10,846販売単価 円 1,800 1,000 1,170販売量金額 千円 4,155 8,538 12,693減価償却費 千円 830 2,489 3,319修繕費 千円 83 249 332種苗費 千円 39 501 539肥料費 千円 107 264 371農薬費 千円 32 90 123諸材料費 千円 25 236 261販売費 千円 439 1,080 1,519光熱動力費 千円 199 556 754雇用労賃 千円 822 1,661 2,483出荷運賃 千円 86 240 326

合計 千円 2,661 7,366 10,02710a当たり 千円 1,494 1,172 2,6651時間当たり収益 円 1,394 486 1,88040a当たり所得 千円 5,974 4,687 10,662

利益 10a当たり 千円 1,244 422 1,665

収入

生産費

所得

グリーンリーフレタス

栽培方法ハウス構造

区分 項目 単位 水耕ミツバ

労働時間

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7 再生可能エネルギーの活用

○ 周年生産を行う養液栽培では、経営費に占める暖房費の割合が高く(3割以上)、冬期間の

暖房費の低減が重要な課題。また、二酸化炭素削減という地球温暖化対策の観点、地域資源

の活用という観点から、温泉熱、地熱、地中熱、バイオマスなどを活用することが期待され

る。再生可能エネルギーごとのメリット、デメリットは次表のとおり。

○ 再生可能エネルギーを活用する暖房機は、燃油ボイラーに比べてイニシャルコストが高

いほか、まだ研究中、あるいは実証段階の技術もある。空気ヒートポンプについては、道

内においても徐々に導入が進んできている。

○ 将来の導入検討の目安として、調査事例に灯油ボイラー以外の再生可能エネルギーを熱

源とする暖房機を組み合わせた場合の試算を行った。

エネルギー メリット デメリット 暖房機の概算価格

温泉熱 源泉に近いところは有利。 故障など不測の事態への対応が必要。

地熱 地熱発電所が近いところは有利。 地熱を活用できる地域は限定される。

ヒートポンプ運転と灯油ボイラーが自動的に切り替わるので、安定した加温効果。

導入コスト(ボイラー、工事費等)が高い。

240万円(定格暖房86.1kw)、工事費が必要

ヒートポンプは除湿の効果もある。 -15℃以下では能力が大きく落ちる。

地下水熱利用型ヒートポンプ

空気ヒートポンプと比べ、冷房・暖房能力が高い。ランニングコストが安い。

地下水が利用でき、水質に問題のない地域に限られる。道内で導入事例はない。

220万円(5馬力)工事費が必要

地中熱交換システム地中熱は年次変動が小さく安定。ランニングコストが安い。

設置費が高い。冬期に10℃以上、夏期に20℃以下に温度設定できない。灯油ボイラー等との併用が必要。

400万円(リブクール80m)、工事費込み

木質ペレットボイラーペレット製造施設が近くにあり、安価に入手できれば燃油軽減効果は高い。

導入コスト(ボイラー、サイロ、工事費等)が高い。

460万円(10万kcal)、保管設備、工事費が必要。

木質チップボイラーチップ製造施設が近くにあり、安価に入手できれば燃油軽減効果は高い。

導入コスト(ボイラー、サイロ、工事費等)が高い。チップの確保が難しい。中型ハウス以上向け。導入事例は少ない。

290万円(5万kcal)、保管設備、工事費が必要。

畜産バイオマスバイオマス発電装置に近いところでは安価に活用できる。

実用化までに時間を要する。

タイヤボイラー古タイヤが大量・安価に入手可能な場合、燃油軽減効果は高い。

導入コスト(ボイラー、工事費等)が高い。

1,700万円(50~60万kcal)、工事費が必要。

大型の施設向け。灰の処理に労力が必要。

空気ヒートポンプ(灯油ボイラーとのハイブリッド)

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(1)再生可能エネルギーの活用試算の前提条件

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(2)再生可能エネルギーの活用試算(100坪1棟当たり)

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【参考1】道内の各地域における施設の立地条件

1 降雪・積雪

道内各地域における降雪・積雪の状況

【参考】豪雪地帯及び特別豪雪地帯の指定状況

・豪雪地帯179(35市 129町 15村) ・特別豪雪地帯86(15市 61町 10村)

平成22年4月1日現在(国土交通省ホームページより)

ハウスには単棟と連棟がある。単棟では降雪があっても屋根からの落雪が期待できるが、連棟で

は雪の多い地域では屋根谷部への積雪が日照の妨げになり作物生産に大きく影響を及ぼすととも

に、屋根谷部の融雪のための暖房等のコストを要する。

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2 日照・日射等

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3 地域ごとの特徴

網走市、帯広市などの道東地域は、日射量が多いが、全体に気温が低く、特に冬期の積算温

度が低い。

札幌市、函館市は、冬期の積算温度はある程度確保できるが、夏期の暑さが厳しく、冬期の日

射量も少なく、積雪も多い。

苫小牧市(むかわ町)は、日射量は多少劣るが、気温が温暖で、積雪が少ない。

4 その他立地に関し留意すべき事項

(1)水質

養液栽培では、井戸水、河川水、水道水、雨水などが培養液の用水として使用されている。

いずれの場合でも、使用する水は理化学的性質だけではなく、有害物質を含まないこと、病原

菌を含まないこと、さらには長期にわたって質的にも量的にも安定的に確保できることが必

要。

用水に含まれている各イオン濃度の分析を行い、限界濃度を超えていないことを確認する。

(「養液栽培のすべて」より)

(「養液栽培のすべて」より)

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【参考2】品目別の導入の目安

調査事例に基づき、一つの試算結果として取りまとめものである。今後、事例数の増などによ

り精査していくことが必要である。

1 サラダナ

育苗期間は夏期20日、冬期25日。養液ベッド栽培期間は夏期18日、冬期24日。年間の回

転数は17回。栽植密度は23.6株/㎡。収穫株歩留まりは75~85%。

※施設面積 1,000㎡あたり

2 リーフレタス

育苗期間は夏期30日、冬期45日。養液ベッド栽培期間は夏期30日、冬期45日。年間の回転数

は10回。栽植密度は26株/㎡。収穫株歩留まりは80~90%。アブラムシ類・病気に要注意。

※施設面積 1,000㎡あたり

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3 こまつな

育苗期間は夏期7日、冬期14日。養液ベッド栽培期間は夏期20日~30日。年間の回転数は1

回。栽植密度は120株/㎡。収穫株歩留まりは80%。アブラムシ類に要注意。回転数が低く設定さ

れているが、1回の収穫が完了しても計画的に次の定植ができないなど、1週間以上のブランク

は往々にして生じる可能性がある。

※施設面積 1,000㎡あたり

4 みつば

育苗期間は夏期14日、冬期28日。養液ベッド栽培期間は夏期38日、冬期55日。年間の回転数

は8回。栽植密度は60株/㎡。収穫株歩留まりは85~90%。アブラムシ類・べと病・立枯病に要注

意。

※施設面積 1,000㎡あたり

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5 ルッコラ

育苗期間は夏期23日、冬期30日。養液ベッド栽培期間は夏期20日、冬期25日。年間の回転数

は16回。栽植密度は44株/㎡。収穫株歩留まりは70%。アザミウマ類に要注意。

※施設面積 1,000㎡あたり

6 スイートバジル

育苗期間は夏期25日、冬期30日。養液ベッド栽培期間は夏期23日、冬期30日。年間の回転数

は14回。栽植密度は44株/㎡。収穫株歩留まりは80%。アザミウマ類に要注意。

※施設面積 1,000㎡あたり

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7 ターサイ

育苗期間は夏期25日、冬期30日。養液ベッド栽培期間は夏期18日、冬期25日。年間の回転数

は17回。栽植密度は70株/㎡。収穫株歩留まりは70~85%。

※施設面積 1,000㎡あたり

8 チャービル

育苗期間は夏期35日、冬期40日。養液ベッド栽培期間は夏期18日、冬期24日。年間の回転数

は17回。栽植密度は59株/㎡。収穫株歩留まりは70~80%。

※施設面積 1,000㎡あたり

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9 ベビーリーフ

育苗期間は夏期14日、冬期28日。養液ベッド栽培期間は夏期30日、冬期90日。年間の回転数

8回。栽植密度は83株/㎡。収穫株歩留まりは85~90%。自動収穫機の利用で収穫効率の向上、

バラ出荷で調整効率の向上を図る。アブラムシ類・ハモグリバエ類などに要注意。

※施設面積 1,000㎡あたり

【参考3】養液栽培の方式

培地の有無による分類

特徴 メリット デメリット

DFT(湛液型水耕)

栽培ベッドの培養液の水深は5~10cmあるいはそれ以上で、培養液の量が多い。

pHやECの調節は容易。液温を調整することで根液温度を調節できる。廃液で地下水の汚染を引き起こす可能性が少ない。

一旦病害が発生すると、短時間のうちに同一水系に広がる恐れがある。そのため、培養液殺菌システムを組み入れることが多い。

NFT(薄膜水耕)

栽培ベッドの培養液の水深は1cm前後で、培養液の量が少ない。

pHやECの調節は容易。液温を調整することで根液温度を調節できる。廃液で地下水の汚染を引き起こす可能性が少ない。

一旦病害が発生すると、短時間のうちに同一水系に広がる恐れがある。そのため、培養液殺菌システムを組み入れることが多い。

噴霧耕培養液を霧状にして根に吹きかける形で施与する方式。

植物の根は空気に十分触れることができるので酸素を吸収しやすい。

故障などでポンプが止まると、短時間のうちに水分欠乏になる恐れがある。

毛管水耕不織布の毛細管現象による吸水力を利用して、作物に培養液を供給・吸収させる。

トマトなど長期間にわたって栽培するには課題がある。

パッシブ水耕地面に掘った穴にプラスチックフィルムを敷いて培養液をため、そこに固形培地を詰めた栽培筒を立てて栽培。

定植時に一度に必要な量の培養液を与え、生育途中では培養液を補充しない。

普及は限定的。

れき、砂、やし殻、ロックウール、ピートモス、樹皮などの培地に培養液を点滴かん液システムなどで供給。

培養液を介在する病害の蔓延の心配がない。培地の購入費用がかかる。廃液は栽培装置系外へ排出されるので、水や肥料の無駄、土壌や地下水の汚染などに注意が必要。

培地に土を使い、液肥とかん水併用あるいは培養液単用により植物の生長に必要な水分と養分を過不足なく与える。

培養液を介在する病害の蔓延の心配がない。 連作障害が発生する可能性がある。

方   式

各種培地耕

養液土耕

培地なし

培地あり

水耕

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【参考4】施設園芸省エネルギー対策

施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル【改訂版】 (農林水産省生産局、平成25年12月)

Ⅰ 省エネのための暖房技術 Ⅱ 温室の保温性向上技術

1 燃油暖房機のメンテナンス 1 採光条件の点検

① 熱交換面(缶体)の清掃 ① 被覆資材の汚れ等の確認

② バーナーノズル周辺の清掃 ② 採光を妨げる障害物等の確認

③ バーナーノズルの交換 2 外張被覆の点検

④ エアーシャッターの調整 3 内張カーテンの点検

⑤ 暖房機利用時の留意点(燃焼用新鮮空気の取り入れ) ① 内張カーテンの保温効果

② 内張カーテンの破れや隙間の点検

2 ヒートポンプによる省エネルギー対策 4 保温効果の高い被覆設備の導入

① 設置場所の条件 ① 空気膜2重被覆

② 恒常風の影響への対策 ② 外張りの固定2重化

③ デフロスト水、積雪への対策 ③ 多層断熱被覆資材(布団資材)

⑤ エアフィルターの点検・清掃 Ⅲ 省エネのための温度管理技術

⑥ ハイブリッド方式の運転方法 1 施設園芸作物の適温管理

⑦ ヒートポンプの配管等による隙間の点検 ① 野菜の生育適温

② 花きの生育適温

3 木質バイオマス利用加温設備による省エネルギー対策 ③ 果樹の生育適温

① 燃料貯蔵タンク(サイロ)の設置場所 2 天敵資材や花粉媒介昆虫の活動適温

② 設備(燃料搬送装置、暖房機本体)の設置

③ 木質バイオマス利用加温設備の点検・清掃 ① 送風ダクトの適切な配置

④ 適切な運転管理の実施 ② 循環扇の適切な配置

⑤ ダウンシュートの対策 4 多段サーモ機能を活用した変温管理

⑥ ハイブリッド方式の運転方法 ① 多段サーモ装置による変温管理

② 日射演算機能の付加

4 温度センサーの設置と点検 5 作物の局所加温技術

・適切な高さ(作物の生長点付近など)に設置 ① イチゴのクラウン温度制御技術

・暖房機や送付ダクト吹出口付近への設置は避ける ② ナスの株元加温技術

・ハイブリッド運転の際は同一センサーによる運転 ③ バラの株元加温技術

④ トマトの生長点加温技術

http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/ondanka/index.html

④ 室内機と室外機の適切な配置(配管長、電線の太さ、こう長)

3 温度ムラの改善(送風ダクト、循環扇の有効利用)

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