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SHIPPING NOW 2012-2013 日本の海運

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Page 1: 日本の海運 SHIPPING - kaijipr.or.jp · 日本の豊かな生活と産業を支える外航海運(写真はlng船) 運の重要性が再認識されました。 日常あまり目にすることの

SHIPPINGNOW2012-2013

SHIPPING NOW2012-2013

(一社)日本船主協会http://www.jsanet.or.jp

(公財)日本海事広報協会

〒104-0043 東京都中央区湊 2-12-6TEL03-3552-5033 FAX03-3553-6580

http://www.kaijipr.or.jp

●協力●

●編集・発行●

日本の海運

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▲日本の豊かな生活と産業を支える外航海運(写真はLNG船)

運の重要性が再認識されました。 日常あまり目にすることのない「船」は、私たちの暮らしと産業に欠かせない物資を輸送するという重要な役割を担っています。

SHIPPING NOW 2012-2013

内航海運の活躍

日本海運の現況と課題

安全運航への取り組み

環境問題への取り組み

船員育成への取り組み

日本と世界をつなぐ日本の海運

船のいろいろ

海運用語集

CONTENTS暮らしと経済の原点を支える海上輸送

 日本の貿易物資のほぼ 100%(重量ベース)が「船」で運ばれていることをご存じでしょうか。 現代の私たちの暮らしは、資源・エネルギーの大量消費の上に成り立っています。その、「衣・食・住」に必要な食料・原材料をはじめ、原油、天然ガスなどのエネルギー資源のほとんどは外国からの輸入に頼っています。 私たちの身近にある電化製品、家具、衣類やガスコンロなどどれをとっても元をたどれば外国の製品や原材料でできているのです。 日本は島国のため、これらの大量な必要物資はすべて船で運ばれてきます。 また、日本は輸入した工業原料を加工し製品にして輸出する加工貿易により経済成長を遂げてきました。 現在では、日本企業の海外進出が拡大し、海外での現地生産が進むなど、貿易形態は変化していますが、日本の海運はこれら海外進出した日本企業の輸送ニーズに応えて地球規模のグローバル輸送ネットワークを形成しています。さらに、中国やインドをはじめアジアの新興国の経済発展に対応して増大する輸送ニーズにも応え、今では世界の産業や生活に必要な物資を輸送する重要なインフラストラクチャーとして貢献しています。

SHIPPING NOW 2012-2013

 国内輸送においても、長距離・大量輸送の利点を生かして暮らしを運ぶ大動脈として貢献しています。 特に平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災においては、いち早く救援隊や救援物資の輸送に従事し、被災者をはじめ関係者から高い評価を受け、海

暮らしと経済の原点を支える海上輸送 暮らしを運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・4 エネルギーを運ぶ・・・・・・・・・・5 産業を運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

7

2 3

8

9

10

11

19

日本商船隊※によるわが国の物資の積取比率(2011年)

私たちの生活と産業 を支える海運

12~13

2~6

14~18

903

177

7912

128

175

26

306

2011

世界

わが国の海上荷動き量が世界に占める割合(2011年) 主要品目別海上荷動き量 単位:100万トン

出典:国土交通省海事局

全 体

原 油

鉄鉱石

石 炭

穀 物

12.1%

9.6%

12.2%

18.7%

7.7%

日本

2007

964

203

6714

139

186

28

327

2008

970

205

6914

140

192

28

322

2009 2010

833

180

6512105

162

26

283

915

181

7012134

185

27

306

原油

LNG (液化天然ガス)

LPG (液化石油ガス)

鉄鉱石

石炭

穀物

その他

出典:Clarksons「SHIPPING REVIEW DATABASE」   国土交通省海事局

2007

原油

鉄鉱石

石油製品

石炭

穀物

その他

2008 2009 2010 2011

779

752302

3,505

833

8,238

841

776323

3,599

866

7,838

898

778317

3,281

824

8,591

992

898338

3,693

819

1,053780 796771

812837

938344

3,935

1,905 1,9031,793

1,8581,840

日本商船隊による輸送量

出典:国土交通省海事局※は巻末の「海運用語集」参照

輸出 輸入

775

8,0238,947

日本商船隊28.4%

全体100%

日本籍船0.7%

日本商船隊58.0%

全体100%

日本籍船6.0%

国際貨物輸送における海上輸送と航空輸送の割合(2010年、重量ベース)

航空輸送400万トン(0.4%)

海上輸送9億1,500万トン(99.6%)

出典:日本船主協会「日本海運の現状」

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SHIPPING NOW 2012-2013

SHIPPING NOW 2012-20134 5

 デパートやスーパーマーケットの衣料品売り場。並んでいる商品を手に取ってつい生産地を見るとメイドインチャイナとかベトナムとか、外国製品が所狭しと並んでいます。もちろん航空機で運ばれるアパレル製品もありますが、その多くは「船」で運ばれます。 食料品も同様です。冷凍エビやウナギなどは外国で養殖されたものが大量に運ばれてきます。肉類も国内産と言ってもその飼料となるトウモロコシなどはほとんど輸入品です。パンや麺類に至っても原料の小麦は輸入がほとんど。このように私たちの食卓

は外国からの贈り物であふれています。 住まいはどうでしょう。マンションなどの建設用鋼材、木造家屋の木材、内装の板、フローリング、テーブル、プラスチックの容器まで考えてみればどれも外国から運ばれた製品だったり国内製でも原材料は外国産です。 このように、私たちの身近にあるものの多くは、「船」で遠い外国から運ばれた来たものであり、「船」がなければ私たちの日々の暮らしは成り立たないといっても過言ではないでしょう。

 生活に欠かせない電気、ガスはもちろん、ガソリンや重油など全ての産業にとってエネルギーは不可欠です。 しかし、日本のエネルギー資源の自給率はわずか4%です。原油の 99.6%、天然ガスの 96.7%、石炭は 100%を海外からの輸入に依存しています。 近年、電力では太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入も進められていますが、その供給率は、石油、天然ガス、石炭のそれに遠く及びません。

 原子力発電所の事故により、電力の不足が大きな問題になっていますが、石油・天然ガスの供給がストップすれば私たちの生活は根底から崩れてしまいます。都市ガスに使用される天然ガスやプロパンガスも同様に外国からの輸入です。 これらエネルギー資源を日本に安定的に運んでいるのが船です。外航海運は、エネルギー資源国と日本をつなぐ欠くことのできないパイプラインといえるのです。

▲国際定期航路の主力として多種多様な貨物を運ぶコンテナ船

日本の暮らしと産業に欠かせない原油を運ぶタンカー

エネルギー資源国と日本を結ぶパイプライン暮

らしを運ぶ

船が運ぶ私たちの「衣・食・住」

ロシア6.1%

ロシア4.5%

インドネシア4.5%

ニュージーランド5.3%

ニュージーランド20.2%

羊毛輸入量1万t

綿花輸入量12万t

小麦輸入量621万t

大豆輸入量283万t

木材輸入量5,202万㎥

100%

100%

3%

91%

94%

100%

19%

62%

44%

74%

46%

74%

「衣・食・住」関連物資の主な輸入先(2011年)主な「衣・食・住」関連物資の輸入依存度(2010年)

綿花

羊毛

小麦

大豆

とうもろこし

野菜

果実

肉類

砂糖類

魚介類

木材

衣 食 住

オーストラリア25.0%

台湾19.5%

中国12.0%

ブラジル19.5%

オーストラリア17.3%

ブラジル18.9%

カナダ12.5%

その他0.1%

中国1.6%

カナダ14.7%

米国11.2%欧州9.6%

中国4.1%

出典:財務省貿易統計、「森林・林業白書」平成24(2012)年版出典:「食料需給表」平成22(2010)年度版 「木材需給表」平成22(2010)年 他0 50 100(%)

米国33.8%

シリア6.8%

インドネシア3.9%

その他14.3%

その他4.9%

フランス6.7%

英国3.5%

マレーシア8.2%

その他0.4%

オーストラリア20.3%

カナダ21.2%

米国58.1%

米国66.9%

チリ9.1%

その他14.8%

オーストラリア14.9%

(注)木材のみ2010年

マレーシア7.3%

エネルギー原料の輸入依存度(2010年度) エネルギー原料の主な輸入先(2010年度)

出典:「エネルギー白書」2011年版

エネルギー全 体

原 油

石 炭

LNG

96%

99.6%

100%

96.7%

0 50 100(%)

インドネシア19.0%

中国 3.5%

その他 1.5%アメリカ 2.0%

カタール10.9%

輸入量2億1,433万キロリットル

輸入量1億8,664万トン

輸入量7,056万トン

アラブ首長国連邦20.9%

サウジアラビア29.2%

その他 14.4%

原油

カタール11.6%

一般炭及び無煙炭(  )石炭

その他7.2%

アラブ首長国連邦7.2%

オーストラリア62.3%

LNG

マレーシア20.7%

カナダ 5.6%

クウェート 7.0%

インド4.4%

イラン9.8%

ロシア7.1%

ロシア8.5%

ブルネイ8.4%

インドネシア18.3%

オーストラリア18.8%

エネルギーを運ぶ

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SHIPPING NOW 2012-2013

SHIPPING NOW 2012-20134 5

 デパートやスーパーマーケットの衣料品売り場。並んでいる商品を手に取ってつい生産地を見るとメイドインチャイナとかベトナムとか、外国製品が所狭しと並んでいます。もちろん航空機で運ばれるアパレル製品もありますが、その多くは「船」で運ばれます。 食料品も同様です。冷凍エビやウナギなどは外国で養殖されたものが大量に運ばれてきます。肉類も国内産と言ってもその飼料となるトウモロコシなどはほとんど輸入品です。パンや麺類に至っても原料の小麦は輸入がほとんど。このように私たちの食卓

は外国からの贈り物であふれています。 住まいはどうでしょう。マンションなどの建設用鋼材、木造家屋の木材、内装の板、フローリング、テーブル、プラスチックの容器まで考えてみればどれも外国から運ばれた製品だったり国内製でも原材料は外国産です。 このように、私たちの身近にあるものの多くは、「船」で遠い外国から運ばれた来たものであり、「船」がなければ私たちの日々の暮らしは成り立たないといっても過言ではないでしょう。

 生活に欠かせない電気、ガスはもちろん、ガソリンや重油など全ての産業にとってエネルギーは不可欠です。 しかし、日本のエネルギー資源の自給率はわずか4%です。原油の 99.6%、天然ガスの 96.7%、石炭は 100%を海外からの輸入に依存しています。 近年、電力では太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入も進められていますが、その供給率は、石油、天然ガス、石炭のそれに遠く及びません。

 原子力発電所の事故により、電力の不足が大きな問題になっていますが、石油・天然ガスの供給がストップすれば私たちの生活は根底から崩れてしまいます。都市ガスに使用される天然ガスやプロパンガスも同様に外国からの輸入です。 これらエネルギー資源を日本に安定的に運んでいるのが船です。外航海運は、エネルギー資源国と日本をつなぐ欠くことのできないパイプラインといえるのです。

▲国際定期航路の主力として多種多様な貨物を運ぶコンテナ船

日本の暮らしと産業に欠かせない原油を運ぶタンカー

エネルギー資源国と日本を結ぶパイプライン暮

らしを運ぶ

船が運ぶ私たちの「衣・食・住」

ロシア6.1%

ロシア4.5%

インドネシア4.5%

ニュージーランド5.3%

ニュージーランド20.2%

羊毛輸入量1万t

綿花輸入量12万t

小麦輸入量621万t

大豆輸入量283万t

木材輸入量5,202万㎥

100%

100%

3%

91%

94%

100%

19%

62%

44%

74%

46%

74%

「衣・食・住」関連物資の主な輸入先(2011年)主な「衣・食・住」関連物資の輸入依存度(2010年)

綿花

羊毛

小麦

大豆

とうもろこし

野菜

果実

肉類

砂糖類

魚介類

木材

衣 食 住

オーストラリア25.0%

台湾19.5%

中国12.0%

ブラジル19.5%

オーストラリア17.3%

ブラジル18.9%

カナダ12.5%

その他0.1%

中国1.6%

カナダ14.7%

米国11.2%欧州9.6%

中国4.1%

出典:財務省貿易統計、「森林・林業白書」平成24(2012)年版出典:「食料需給表」平成22(2010)年度版 「木材需給表」平成22(2010)年 他0 50 100(%)

米国33.8%

シリア6.8%

インドネシア3.9%

その他14.3%

その他4.9%

フランス6.7%

英国3.5%

マレーシア8.2%

その他0.4%

オーストラリア20.3%

カナダ21.2%

米国58.1%

米国66.9%

チリ9.1%

その他14.8%

オーストラリア14.9%

(注)木材のみ2010年

マレーシア7.3%

エネルギー原料の輸入依存度(2010年度) エネルギー原料の主な輸入先(2010年度)

出典:「エネルギー白書」2011年版

エネルギー全 体

原 油

石 炭

LNG

96%

99.6%

100%

96.7%

0 50 100(%)

インドネシア19.0%

中国 3.5%

その他 1.5%アメリカ 2.0%

カタール10.9%

輸入量2億1,433万キロリットル

輸入量1億8,664万トン

輸入量7,056万トン

アラブ首長国連邦20.9%

サウジアラビア29.2%

その他 14.4%

原油

カタール11.6%

一般炭及び無煙炭(  )石炭

その他7.2%

アラブ首長国連邦7.2%

オーストラリア62.3%

LNG

マレーシア20.7%

カナダ 5.6%

クウェート 7.0%

インド4.4%

イラン9.8%

ロシア7.1%

ロシア8.5%

ブルネイ8.4%

インドネシア18.3%

オーストラリア18.8%

エネルギーを運ぶ

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航空0.2%

(10億トンキロ)

出典:財務省貿易統計単位:100万トンキロ %は国内全輸送量に占める割合出典:「内航船舶輸送統計総括表」平成22(2010)年度

2012年3月31日現在/単位千総トン ( )内は隻数出典:国土交通省海事局数値については四捨五入しているため、合計と内計が一致しない場合がある。

日本の地域別海上貿易量の内訳(2011年) 主要品目別内航輸送量(2010年度) 輸送機関別にみる国内貨物輸送トンキロ(2010年度)

内航海運の船別船腹量(2012年)

主な工業原料の輸入先(2011年)

出典:国土交通省海事局

欧州4.8%

アフリカ2.2%

米国8.3%

ロシア3.7%

その他2.4%

その他1.1%

南アフリカ3.6%

インド2.7% その他

2.7%

インド13.5%

石灰石・原油等非金属鉱物 36,263

石油製品 41,359

鉄鋼等金属 23,907

その他 36,173

13.3%

9.4%

5.5%3.1%

1.4%4.1%

20.0%

20.2%

23.0%

出典:国土交通省「交通関連統計資料集」

鉄道4.5%

(204億トンキロ)

ブラジル28.5%

オーストラリア62.5%

インドネシア8.3%

その他6.0%

ペルー14.5%

銅鉱輸入量439万t

チリ47.5%

鉄鉱石輸入量

1億2,840万t

原料炭輸入量6.866万t

インドネシア21.4%

オーストラリア53.5% マレーシア

3.9%

フィリピン19.7%

ニッケル鉱輸入量365万t

インドネシア53.4%

ニューカレドニア26.9%

オーストラリア77.2%

中国4.3%

アルミニウム鉱輸入量99万t

自動車55.8%

(2,541億トンキロ)

内航39.5%

(1,799億トンキロ)

中東22.5% 大洋州

25.2%

アジア30.6%

中南米6.8%

北米7.9% カナダ

10.7%

オーストラリア9.2%

パプアニューギニア5.7%

カナダ8.8%

セメント 16,831化学薬品・肥料・その他 9,814

砂利・砂・石材 5,549石炭 2,567

輸送用等機械 7,435その他貨物船

1,723(3,482)49.2%

特殊タンク船211(322)6.0%

自動車専用船96(20)2.8%

合計3,502(5,357)

土・砂利・石材専用船249(408)7.1%セメント専用船369(140)10.5%油送船853(985)24.4%

SHIPPING NOW 2012-2013

SHIPPING NOW 2012-20136 7

 四面環海の日本では、国内の物資輸送でも船が積極的に活用され、港と港を結んで海上輸送する内航海運が活躍しています。 内航海運は鉄鋼や石油、セメントなど国内の産業基礎物資の約 8割以上を輸送しています。さらに、私たちの暮らしに身近な新聞用紙などの紙材、生鮮食品や牛乳など、さまざまな物資がその製品輸送に適した船によって運ばれています。 一方、内航海運は災害時にも重要な役割を果たします。東日本大震災の際も、内航船が救援物資を被災地にいち早く輸送しました。

 また、国内の他の輸送機関であるトラックや鉄道などに比べて、長距離・大量輸送に優れているのも内航海運です。陸上輸送と比べ二酸化炭素の排出量も少ないため、トラック輸送からエネルギー効率のよい内航海運へ、貨物輸送を振り替える「モーダルシフト」が進められています。最近では、より環境にやさしく経済的な電気推進船(スーパーエコシップ)も就航しています。 日本列島の大動脈を航行する内航海運は、さまざまな面で私たちの生活を守る役割を果たしているのです。

※は巻末「海運用語集」参照※は巻末「海運用語集」参照

 従来、日本の経済は、外国から工業原料を輸入しこれを加工して製品にし、輸出することで外貨を獲得し、生活必需品やエネルギーを輸入して成り立っていました。この工業原料の輸入も製品の輸出も船による輸送です。 原料の調達先も製品の輸出先も、日本の産業界と一緒に世界中に広げています。 近年、日本は「円」の過大評価による円高に悩ま

され、輸出産業を中心に製造業の海外移転が急速に進展しつつあります。 この日本の企業の海外進出に呼応して海外の生産拠点から直接外国の消費地に運ぶ「三国間輸送」も日本海運の活躍する場となっています。 海運は、海洋でつながった世界の国々と国境を越えてつながっているのです。

▲世界の港に日本製の自動車を運ぶ自動車専用船

暮らしを運ぶ日本の大動脈産業を運ぶ

国境を越えて活躍する日本商船隊内航海運の活躍

スピーディーな荷役で雑貨輸送に活躍するRORO船

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航空0.2%

(10億トンキロ)

出典:財務省貿易統計単位:100万トンキロ %は国内全輸送量に占める割合出典:「内航船舶輸送統計総括表」平成22(2010)年度

2012年3月31日現在/単位千総トン ( )内は隻数出典:国土交通省海事局数値については四捨五入しているため、合計と内計が一致しない場合がある。

日本の地域別海上貿易量の内訳(2011年) 主要品目別内航輸送量(2010年度) 輸送機関別にみる国内貨物輸送トンキロ(2010年度)

内航海運の船別船腹量(2012年)

主な工業原料の輸入先(2011年)

出典:国土交通省海事局

欧州4.8%

アフリカ2.2%

米国8.3%

ロシア3.7%

その他2.4%

その他1.1%

南アフリカ3.6%

インド2.7% その他

2.7%

インド13.5%

石灰石・原油等非金属鉱物 36,263

石油製品 41,359

鉄鋼等金属 23,907

その他 36,173

13.3%

9.4%

5.5%3.1%

1.4%4.1%

20.0%

20.2%

23.0%

出典:国土交通省「交通関連統計資料集」

鉄道4.5%

(204億トンキロ)

ブラジル28.5%

オーストラリア62.5%

インドネシア8.3%

その他6.0%

ペルー14.5%

銅鉱輸入量439万t

チリ47.5%

鉄鉱石輸入量

1億2,840万t

原料炭輸入量6.866万t

インドネシア21.4%

オーストラリア53.5% マレーシア

3.9%

フィリピン19.7%

ニッケル鉱輸入量365万t

インドネシア53.4%

ニューカレドニア26.9%

オーストラリア77.2%

中国4.3%

アルミニウム鉱輸入量99万t

自動車55.8%

(2,541億トンキロ)

内航39.5%

(1,799億トンキロ)

中東22.5% 大洋州

25.2%

アジア30.6%

中南米6.8%

北米7.9% カナダ

10.7%

オーストラリア9.2%

パプアニューギニア5.7%

カナダ8.8%

セメント 16,831化学薬品・肥料・その他 9,814

砂利・砂・石材 5,549石炭 2,567

輸送用等機械 7,435その他貨物船

1,723(3,482)49.2%

特殊タンク船211(322)6.0%

自動車専用船96(20)2.8%

合計3,502(5,357)

土・砂利・石材専用船249(408)7.1%セメント専用船369(140)10.5%油送船853(985)24.4%

SHIPPING NOW 2012-2013

SHIPPING NOW 2012-20136 7

 四面環海の日本では、国内の物資輸送でも船が積極的に活用され、港と港を結んで海上輸送する内航海運が活躍しています。 内航海運は鉄鋼や石油、セメントなど国内の産業基礎物資の約 8割以上を輸送しています。さらに、私たちの暮らしに身近な新聞用紙などの紙材、生鮮食品や牛乳など、さまざまな物資がその製品輸送に適した船によって運ばれています。 一方、内航海運は災害時にも重要な役割を果たします。東日本大震災の際も、内航船が救援物資を被災地にいち早く輸送しました。

 また、国内の他の輸送機関であるトラックや鉄道などに比べて、長距離・大量輸送に優れているのも内航海運です。陸上輸送と比べ二酸化炭素の排出量も少ないため、トラック輸送からエネルギー効率のよい内航海運へ、貨物輸送を振り替える「モーダルシフト」が進められています。最近では、より環境にやさしく経済的な電気推進船(スーパーエコシップ)も就航しています。 日本列島の大動脈を航行する内航海運は、さまざまな面で私たちの生活を守る役割を果たしているのです。

※は巻末「海運用語集」参照※は巻末「海運用語集」参照

 従来、日本の経済は、外国から工業原料を輸入しこれを加工して製品にし、輸出することで外貨を獲得し、生活必需品やエネルギーを輸入して成り立っていました。この工業原料の輸入も製品の輸出も船による輸送です。 原料の調達先も製品の輸出先も、日本の産業界と一緒に世界中に広げています。 近年、日本は「円」の過大評価による円高に悩ま

され、輸出産業を中心に製造業の海外移転が急速に進展しつつあります。 この日本の企業の海外進出に呼応して海外の生産拠点から直接外国の消費地に運ぶ「三国間輸送」も日本海運の活躍する場となっています。 海運は、海洋でつながった世界の国々と国境を越えてつながっているのです。

▲世界の港に日本製の自動車を運ぶ自動車専用船

暮らしを運ぶ日本の大動脈産業を運ぶ

国境を越えて活躍する日本商船隊内航海運の活躍

スピーディーな荷役で雑貨輸送に活躍するRORO船

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-20138 9

出典:IHS(旧ロイド船級協会)「WORLD FLEET STATISTICS」   国土交通省海事局 出典:国土交通省海事局 (注)対象船舶は2000総トン以上の外航貨物船

世界船腹量に占める日本商船隊の割合(2011年) 日本商船隊の構成の推移(各年央)

(2,000総トン以上の外航貨物船)

世界船腹量10億4,308万総トン

100%IHS統計による

100総トン以上の貨物船

■隻数の推移 ■船腹量の推移外国用船 日本籍船 外国用船日本籍船

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2,4282,535

日本商船隊1億2,034万総トン

約12%

10,09210,880

2,5552,653

9,78110,499

2,2142,306

8,5829,309

2,128全体2,223隻

8,153全体8,888万総トン

107 788

2,6232,742

10,82911,840

119 1,011

2,6722,808

10,91512,034

98 718

92 727

95 735

 外航海運企業は、世界単一市場の中で熾烈な国際競争にさらされています。 このため海運主要国では、自国海運企業、自国籍船の国際競争力維持の観点等から、税制をはじめとする様々な海運政策を講じています。 特に 1990 年代後半から、トン数標準税制(船舶のトン数に応じて法人税額を決める制度)の導入が世界で相次いだため、わが国においても2008年に日本籍船を対象とする同税制の導入が決定されました。

 しかしながら、諸外国の制度は外国籍船を含むすべての船舶を対象にしており、わが国の制度と比べ、きわめて有利な条件であることから、わが国においても対象の拡充についての検討がなされ、現在、一定の要件を満たす外国籍船にも拡充する方向で準備がすすめられています。 わが国外航海運企業活動の国際競争条件が、諸外国と真に同等となるための努力が続けられています。

▲各国の原料生産地と日本の生産拠点をダイレクトに結ぶばら積み船

 船舶の安全運航の確保は、海運会社にとって当然の責務であり、また事故等に起因する環境破壊を防ぐための最重要課題でもあります。わが国外航海運は、国民生活に不可欠な物資を安定的に輸送していくため、国土交通省をはじめとする関係省庁や、さまざまな国際機関と連携し、安全運航の徹底に努めています。 ソマリア沖・アデン湾において航行中の船舶を襲撃する海賊事件は依然として頻発しており、2011年は前年 (219 件 ) からさらに増加し 237 件にのぼりました。 一方、同海域における 2011 年のハイジャック件数は、2010 年の 48 件から 28 件へと大幅に減少しました。これは日本の海上自衛隊をはじめとする各国海軍による海賊対処のための活動や、船舶内に篭

城設備を設置するなど、商船における自衛対策等が功を奏したものとみられています。 しかしながら、海賊事件はさらに凶悪化するとともに、各国艦艇による護衛・哨戒活動が及ばないインド洋およびアラビア海の全域にまで拡大しています。 このため、欧州諸国を含む多くの国々が、公的もしくは民間の武装保安要員の乗船を許容するようになっていますが、日本籍船では民間人による武器の所持が禁止され、武装保安要員を乗船させることができません。 日本の海運会社は、日本籍船とその乗組員の安全を確保するため、公的もしくは民間の武装保安要員を乗船させることができるような措置の導入・実施を求めています。

安全運航支援センター

136 1,119

▲船舶を護衛する護衛艦

▲ソマリア沖・アデン湾に赴く海上自衛隊を見送る

船舶の安全運航確保と海賊対策の推進国際競争条件の均衡化に向けて安全運航への取り組み

日本海運の現況と課題

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-20138 9

出典:IHS(旧ロイド船級協会)「WORLD FLEET STATISTICS」   国土交通省海事局 出典:国土交通省海事局 (注)対象船舶は2000総トン以上の外航貨物船

世界船腹量に占める日本商船隊の割合(2011年) 日本商船隊の構成の推移(各年央)

(2,000総トン以上の外航貨物船)

世界船腹量10億4,308万総トン

100%IHS統計による

100総トン以上の貨物船

■隻数の推移 ■船腹量の推移外国用船 日本籍船 外国用船日本籍船

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2,4282,535

日本商船隊1億2,034万総トン

約12%

10,09210,880

2,5552,653

9,78110,499

2,2142,306

8,5829,309

2,128全体2,223隻

8,153全体8,888万総トン

107 788

2,6232,742

10,82911,840

119 1,011

2,6722,808

10,91512,034

98 718

92 727

95 735

 外航海運企業は、世界単一市場の中で熾烈な国際競争にさらされています。 このため海運主要国では、自国海運企業、自国籍船の国際競争力維持の観点等から、税制をはじめとする様々な海運政策を講じています。 特に 1990 年代後半から、トン数標準税制(船舶のトン数に応じて法人税額を決める制度)の導入が世界で相次いだため、わが国においても2008年に日本籍船を対象とする同税制の導入が決定されました。

 しかしながら、諸外国の制度は外国籍船を含むすべての船舶を対象にしており、わが国の制度と比べ、きわめて有利な条件であることから、わが国においても対象の拡充についての検討がなされ、現在、一定の要件を満たす外国籍船にも拡充する方向で準備がすすめられています。 わが国外航海運企業活動の国際競争条件が、諸外国と真に同等となるための努力が続けられています。

▲各国の原料生産地と日本の生産拠点をダイレクトに結ぶばら積み船

 船舶の安全運航の確保は、海運会社にとって当然の責務であり、また事故等に起因する環境破壊を防ぐための最重要課題でもあります。わが国外航海運は、国民生活に不可欠な物資を安定的に輸送していくため、国土交通省をはじめとする関係省庁や、さまざまな国際機関と連携し、安全運航の徹底に努めています。 ソマリア沖・アデン湾において航行中の船舶を襲撃する海賊事件は依然として頻発しており、2011年は前年 (219 件 ) からさらに増加し 237 件にのぼりました。 一方、同海域における 2011 年のハイジャック件数は、2010 年の 48 件から 28 件へと大幅に減少しました。これは日本の海上自衛隊をはじめとする各国海軍による海賊対処のための活動や、船舶内に篭

城設備を設置するなど、商船における自衛対策等が功を奏したものとみられています。 しかしながら、海賊事件はさらに凶悪化するとともに、各国艦艇による護衛・哨戒活動が及ばないインド洋およびアラビア海の全域にまで拡大しています。 このため、欧州諸国を含む多くの国々が、公的もしくは民間の武装保安要員の乗船を許容するようになっていますが、日本籍船では民間人による武器の所持が禁止され、武装保安要員を乗船させることができません。 日本の海運会社は、日本籍船とその乗組員の安全を確保するため、公的もしくは民間の武装保安要員を乗船させることができるような措置の導入・実施を求めています。

安全運航支援センター

136 1,119

▲船舶を護衛する護衛艦

▲ソマリア沖・アデン湾に赴く海上自衛隊を見送る

船舶の安全運航確保と海賊対策の推進国際競争条件の均衡化に向けて安全運航への取り組み

日本海運の現況と課題

Page 9: 日本の海運 SHIPPING - kaijipr.or.jp · 日本の豊かな生活と産業を支える外航海運(写真はlng船) 運の重要性が再認識されました。 日常あまり目にすることの

SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201310 11

航空(国内線)

自家用自動車

営業用自動車

  内航海運

    鉄道

単位:キロジュール/トンキロ出典:「交通関連統計資料集」

1トンの貨物を1km運ぶために必要なエネルギー(2008年度)

21,072

10,734

2,128

437

タンカーのダブルハル化

シングルハル ダブルハル

原油 原油

外板 内板

燃料タンクの二重構造化

従来型 新型

燃料タンクバラストタンク燃料タンク

543

 安全運航を達成し、維持するためには、船舶の運航に直接関わる優れた船員(海技者)の育成は欠かすことのできないものです。将来の優秀な日本人船員を確保するため、日本の海運会社は国や海事教育機関と協力し、中学生を対象としたガイダンスの実施など、さまざまな活動を展開しています。これからの日本人船員には海上現場の中核としてだけではなく、グローバルで活躍する、海運界でリーダーシッ

プをとる能力が期待されています。 他方、外国人船員も日本商船隊にとっては欠かせない存在です。海運各社は世界各国の商船系大学と提携、海外に船員養成施設を設置し、外国人船員を将来の幹部候補として、積極的に養成しています。 船上での定期的な事故対応訓練、陸上での最新のシミュレータを利用した研修を実施し、高い技術力と安全運航への意識向上を図っています。

▲日本の海運会社では外国人船員の育成に努めている

▲次世代の優秀な日本人船員の確保に向けて

職務体制(注)総乗組員24人の場合

一等航海士  二等航海士  三等航海士  甲板部員6人

機関長  一等機関士  二等機関士  三等機関士  機関部員6人船長

通信長

事務部員3人

船体形状の改善プロペラ・船尾形状の改善船体重量の軽減省エネ・低公害エンジンの開発 タンカーの二重構造化サブスタンダード船の排除シップ・リサイクルの促進海洋での排出物規制安全な船底塗料の使用航路環境整備の促進

省エネの推進と地球温暖化対策

地球に優しい海運

海洋環境の保全

地球環境保護のための海運の対策

 長距離・大量輸送に適した外航海運は、最も地球に優しい輸送モードですが、世界経済の成長にともない、国際的に物流量の増大が見込まれているため、CO₂等の温室効果ガス(GHG)の排出増加など地球環境への負荷が懸念されています。国際海運からのGHG排出削減は、海上輸送で世界経済を支え続けている海運業界の責務といえます。船舶からのGHG排出削減対策については、国際海事機関(IMO)において検討が行われており、関係条約の改正を行うなど着実に成果を上げています。 また、それぞれの海運会社としても、運航スケジ

ュールに配慮しつつ低速で航行することで燃料消費量とCO₂排出量を抑える運航上の工夫を行ったり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した次世代の船舶を開発するなど、さまざまなGHG排出削減対策を実施しています。 このほか、船の構造や設備などの国際基準を満たしていない基準以下船(サブスタンダード船)の排除、老朽化した船舶を環境に影響を与えずに解体するためのシップ・リサイクル方法の検討なども行われています。 海運業界は、今後も船舶による環境負荷の低減に向けたルール作りや技術開発、さまざまな工夫を続けることにより、地球環境保全に貢献していきます。

※は巻末「海運用語集」参照

▲最新の高機能操船シミュレータ(商船三井)

2012年竣工予定ハイブリッド自動車専用船(商船三井)

グローバルに活躍する優秀な海技者を育成

安定輸送と環境保全の両立へ船員育成への取り組み

環境問題への取り組み

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201310 11

航空(国内線)

自家用自動車

営業用自動車

  内航海運

    鉄道

単位:キロジュール/トンキロ出典:「交通関連統計資料集」

1トンの貨物を1km運ぶために必要なエネルギー(2008年度)

21,072

10,734

2,128

437

タンカーのダブルハル化

シングルハル ダブルハル

原油 原油

外板 内板

燃料タンクの二重構造化

従来型 新型

燃料タンクバラストタンク燃料タンク

543

 安全運航を達成し、維持するためには、船舶の運航に直接関わる優れた船員(海技者)の育成は欠かすことのできないものです。将来の優秀な日本人船員を確保するため、日本の海運会社は国や海事教育機関と協力し、中学生を対象としたガイダンスの実施など、さまざまな活動を展開しています。これからの日本人船員には海上現場の中核としてだけではなく、グローバルで活躍する、海運界でリーダーシッ

プをとる能力が期待されています。 他方、外国人船員も日本商船隊にとっては欠かせない存在です。海運各社は世界各国の商船系大学と提携、海外に船員養成施設を設置し、外国人船員を将来の幹部候補として、積極的に養成しています。 船上での定期的な事故対応訓練、陸上での最新のシミュレータを利用した研修を実施し、高い技術力と安全運航への意識向上を図っています。

▲日本の海運会社では外国人船員の育成に努めている

▲次世代の優秀な日本人船員の確保に向けて

職務体制(注)総乗組員24人の場合

一等航海士  二等航海士  三等航海士  甲板部員6人

機関長  一等機関士  二等機関士  三等機関士  機関部員6人船長

通信長

事務部員3人

船体形状の改善プロペラ・船尾形状の改善船体重量の軽減省エネ・低公害エンジンの開発 タンカーの二重構造化サブスタンダード船の排除シップ・リサイクルの促進海洋での排出物規制安全な船底塗料の使用航路環境整備の促進

省エネの推進と地球温暖化対策

地球に優しい海運

海洋環境の保全

地球環境保護のための海運の対策

 長距離・大量輸送に適した外航海運は、最も地球に優しい輸送モードですが、世界経済の成長にともない、国際的に物流量の増大が見込まれているため、CO₂等の温室効果ガス(GHG)の排出増加など地球環境への負荷が懸念されています。国際海運からのGHG排出削減は、海上輸送で世界経済を支え続けている海運業界の責務といえます。船舶からのGHG排出削減対策については、国際海事機関(IMO)において検討が行われており、関係条約の改正を行うなど着実に成果を上げています。 また、それぞれの海運会社としても、運航スケジ

ュールに配慮しつつ低速で航行することで燃料消費量とCO₂排出量を抑える運航上の工夫を行ったり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した次世代の船舶を開発するなど、さまざまなGHG排出削減対策を実施しています。 このほか、船の構造や設備などの国際基準を満たしていない基準以下船(サブスタンダード船)の排除、老朽化した船舶を環境に影響を与えずに解体するためのシップ・リサイクル方法の検討なども行われています。 海運業界は、今後も船舶による環境負荷の低減に向けたルール作りや技術開発、さまざまな工夫を続けることにより、地球環境保全に貢献していきます。

※は巻末「海運用語集」参照

▲最新の高機能操船シミュレータ(商船三井)

2012年竣工予定ハイブリッド自動車専用船(商船三井)

グローバルに活躍する優秀な海技者を育成

安定輸送と環境保全の両立へ船員育成への取り組み

環境問題への取り組み

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201312 13

スエズ運河

バブ・アル・マンデブ海峡

スンダ海峡

ロンボク海峡マラッカ・シンガポール海峡

ホルムズ海峡

パナマ運河

サザンプトン

オスロ

ゴーテボルク

ストックホルムフ

ェリクストウ

ヘルシンキ

サンクトペテルブルク

モスクワコペンハーゲン

ハンブルクアムステルダム

ロッテルダムアントワープルアーブル

パリ ミュンヘンチューリッヒ

ウィーン

オデッサ

ポチイスタンブール

ピレウス

トリエステミラノジェノバ

マルセイユフォス

バルセロナ

リスボン

タンジールカサブランカ

マデイラ

モンロビア

アビジャンテマロメ

コトノウ

ラゴス/アパパ

ルアンダ

ポートサラザール

サルダナ

ケープタウン

ポートエリザベス

イーストロンドン

ダーバン

リチャードベイ

ダルエスサラームタンガモンバサ

タマタブ

レユニオン

ポートレイス

ジェッダ

ポートサイド

ドバイ

アブダビ

ドーハラスラファン

ラスタヌラダンマン

バーレーン

クウェート

バスラ

アバダンバンダルホメイニカーグブシェール

ダス島バンダルアバス

チェリヤビンスク ノボシビルスク

カラチ

カンドラ

ムンバイ

モルムガオ

マンガロール

コロンボ

トリンコマリー

チェンナイ

コルカタ

チッタゴン

ロスマウエ

ペナン

シンガポール

バンコク

ホーチミンニャチャン

ダナン

カンファハイフォン

香港

厦門寧波上海

青島

大連

仁川釜山

ナホトカ

ウラジオストック

ボストーチニー

基隆高雄

マニラバタンガスセブカガヤン

タワウタラカン

バリクパ パン

マカッサルコタバルバンジェルマシン

スラバヤ

セマラン

ジャカルタ

ポンチアナ

クーチン ポンタン

ルムット

コタキナバル

サンダカン

サイパン

グアム

トラック

ポナペ マジュロ

タラワ

ホニアラ

ラエポートモレスビー

ダーウィン

ポートヘッドランドポートウォルコットポートダンピアポートカビア

フリーマントルバンバリー

アルバニー

エスペランス

アードロサン

アデレード

ジーロング

メルボルン ポートケンブラ

バーニー

エデン

シドニー

ニューキャッスルブリスベーン

グラッドストーンヘイポイントマッケイ

アボットポイント

タウンズビル

ワイハ

グルートアイランド

ゴーブ

ポートチャルマーズリッテルトン

ナピアウェリントン

オークランド

ニューカレドニア

ワイラスパ

ラウトカパゴパゴアピア

ブエナベンツラマンタ

グアヤキル

カラオ

マタラニアリカイキケ

アントファガスタ

カルデラグアヤカンバルパライソサンアントニオ

コロネル

プエルトマドリン

ブエノスアイレス

モンテビデオ

リオグランデ

パラナグア

サントス

セペティバ

リオデジャネイロ

ビトリア

ツバロン

レシフェ

サルバドル

ベレンマナウス

ムングバマカパ

ヤクタートランゲル

スチュワートプリンスルパート

バンクーバーシアトルタコマ

ポートランドクースベイエウレカ

オークランド

サンフランシスコ

ロサンゼルスロングビーチ

セドロスグァイマス

プエルトケツアル

コリント

クリストバルカルタヘナブエルトカベヨ

サンファン

アカジュトラ

ダラス

ヒューストン

カンザスシティ

ビューモント

ニューオーリンズ

モビール

ジャクソンビルマイアミ

サバンナチャールストン

ボルチモア

ウイルミルトンアトランタ ノーフォーク

フィラデルフィアニューヨーク

シカゴトリード

ボストン

トロント

セントジョン

ハリファックス

セブンアイランズ

ケベック

モントリオール

デトロイト

 四面環海である日本は海で世界中とつながっています。 生活に欠くことのできない穀物や羊毛・綿花をはじめとする生活物資、日本に欠くことのできない原油や天然ガスなどのエネルギー資源が、今日も目に

見えないライフラインに乗って船で運ばれてきます。 また、原料や部品の調達から、生産や販売、さらには在庫保管からデリバリーまでの企業ニーズに応えるため、日本の海運は効率的かつ的確な物流サービスの実現をめざし、日々努力を続けています。

アデン湾ソマリア沖

●この地図は、わが国の代表的な輸出入品目の主な積揚港をもとに、 日本船主協会が作成したものです。 なお、地図の経路は実際の航路ではありません。

 例

生活物資の輸入経路(物・羊毛・綿花・木材等)エネルギー資源の輸入経路(石油・石炭・LNG・LPG等)工業原料の輸入経路(鉄鉱石・原料炭・銅鉱石・ニッケル鉱石等)国際定期航路(製品等の輸入航路)ランドブリッジ・サービス

日本と世界をつなぐ日本の海運

日本を中心とする海上物流ルート日本と世界をつなぐ日本の海運

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201314 15

 船はさまざまな貨物を運んでいます。原油、LNG(液化天然ガス)、鉄鉱石、穀物、自動車、雑貨など、液体があれば固体もあり、その形や大きさも千差万別。それぞれの貨物の特徴に合わせて、もっとも安全で効率的な輸送方法を追求した結果、多彩な専用

船が生まれました。また、大量輸送を効率的に行うための大型化も進んでいます。 今の時代のニーズに応えながら、暮らしや産業を支え続ける海上輸送のエキスパート。ここにご紹介したのは、そんな個性豊かな船のプロフィールです。

水を積むバラストタンク  積荷スペース  荷役装置

貨物船の中では最速を誇る雑貨輸送の専用船。

衣類や電気製品などの生活雑貨から危険品ま

で多種多様な貨物を国際規格のコンテナに収

納して運ぶ。コンテナ化された貨物はトラッ

クや鉄道などへの積み替えが容易なため、荷

役の迅速化とともに海陸一貫によるドア・ツ

ー・ドアの輸送を実現。国際定期輸送に画期

的な変化をもたらした。

コンテナ船

ばら積み船

木材専用船

チップ専用船

暮らしを運ぶ船

暮らしを運ぶ船

NYK VIRGO(8,600TEU)97,825総トン/103,207重量トン/全長338.17m

穀物や石炭などのばら積み貨物を運ぶ。貨物

の流動を防ぐため、船倉上部に傾斜をつけ、

トップサイドタンクという三角形のバラスト

タンクを設置している。本船自体に荷役装置

を持つものと持たないものがあるが、穀物の

揚げ荷役には、通常、陸上に設けられたニュ

ーマチックアンローダーというバキューム方

式の荷役装置が使われる。 SANKO TITAN30,051総トン/52,514重量トン/全長189.99m

木材を専門に運ぶ船。貨物は船倉内だけでな

く甲板上にも積まれ、甲板積みの木材は両舷

に建てられたスタンションと呼ばれる支柱で

左右を押さえ、丈夫なワイヤーで固定される。

荷役施設の不備な積み地が多いため、ほとん

どの船がクレーンを装備する。積み荷役は、

筏に組んで運ばれた木材を沖合いで積み取る

方法が一般的である。 FRAGRANT ISLAND19,885総トン/33,362重量トン/全長177m

製紙原料となるチップ(木材を砕いた小片)

を専門に運ぶ。チップは比重がきわめて小さ

いため、船倉容積を最大限にして大量に積み

込むとともに、バラストスペースを船底部に

設けている。積み荷役は、陸上のニューマー

(空気圧送式荷役装置)で行われ、揚げ荷役

には、本船装備のベルトコンベヤーとバケッ

トクレーンが使用される。 SHIN CHUETSU22,601総トン/25,331重量トン/全長162.0m

石炭専用船石油代替エネルギーとして近年比重が高まる

電力用石炭の効率輸送に活躍する専用船。国

内の石炭専焼発電所の専用バースサイズに合

わせた船型や喫水、バースに備え付けられた

揚炭機の可動範囲に合わせたハッチ構成など、

日本の発電所向けの輸送に最適な船として設

計されている。現在、日本とオーストラリア

などを結んでいる。 SHOHO48,950総トン/87,996重量トン/全長235m

LNG船天然ガスをマイナス162℃の超低温で液化し

たLNG(液化天然ガス)を運ぶ。超低温輸送

のための特殊な材質のタンク、荷役時の事故

を防ぐ緊急遮断装置、輸送中に気化した天然

ガスを燃料として使うタービンエンジンなど、

先端技術を駆使したハイテク船。船価が高い

ため、特定の天然ガス輸入プロジェクトの専

用船として建造されることが多い。

LPG船プロパンやブタンなどを液化したLPG(液化

石油ガス)を運ぶ。輸送方式には常温で加圧

して液化する加圧式、常圧で冷却して液化す

る冷却式及び半冷加圧式があるが、大型LP

G船はすべて冷却式。防熱材はばら積み船の

ような船倉内に防熱を施した低温L PGタン

クを設置している。輸送中に気化したガスを

液化する再液化装置も備えている。 YUYO45,966総トン/49,999重量トン/全長230m

原油タンカー原油を運ぶ専用船。複数の区画に仕切られた

タンク状の船倉を持ち、事故時の原油流出を

最小限に抑えるため船側と船底を二重構造化

している。荷役用のパイプラインとポンプを

持ち、積み荷役には陸側のポンプを、揚げ荷

役には本船装備のポンプを使う。50万重量

トンを超す大型の船も出現したが、現在は30

万重量トン級のVLCCが主力。 ENEOS TOKYO160,062総トン/300,976重量トン/全長333m

冷凍運搬船野菜や果物、冷凍肉、鮮魚などの生鮮食品を

低温輸送する。野菜や果物のように常温に近

いものからマイナス50℃という超低温が必

要な冷凍マグロまで、さまざまな条件に対応

できるよう船倉内の温度は広範囲に調整が可

能。温度も適切にコントロールできる。船倉

は中甲板で何層かに仕切られ、輸送温度の異

なる貨物を積み分けて運べる。 CROWN OPAL10,519総トン/10,316重量トン/全長151.99m

エネルギーを運ぶ船

MUSCAT LNG118,219総トン/77,351重量トン/全長289.5m

船のいろいろ

船のいろいろ

個性豊かな船たち

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201314 15

 船はさまざまな貨物を運んでいます。原油、LNG(液化天然ガス)、鉄鉱石、穀物、自動車、雑貨など、液体があれば固体もあり、その形や大きさも千差万別。それぞれの貨物の特徴に合わせて、もっとも安全で効率的な輸送方法を追求した結果、多彩な専用

船が生まれました。また、大量輸送を効率的に行うための大型化も進んでいます。 今の時代のニーズに応えながら、暮らしや産業を支え続ける海上輸送のエキスパート。ここにご紹介したのは、そんな個性豊かな船のプロフィールです。

水を積むバラストタンク  積荷スペース  荷役装置

貨物船の中では最速を誇る雑貨輸送の専用船。

衣類や電気製品などの生活雑貨から危険品ま

で多種多様な貨物を国際規格のコンテナに収

納して運ぶ。コンテナ化された貨物はトラッ

クや鉄道などへの積み替えが容易なため、荷

役の迅速化とともに海陸一貫によるドア・ツ

ー・ドアの輸送を実現。国際定期輸送に画期

的な変化をもたらした。

コンテナ船

ばら積み船

木材専用船

チップ専用船

暮らしを運ぶ船

暮らしを運ぶ船

NYK VIRGO(8,600TEU)97,825総トン/103,207重量トン/全長338.17m

穀物や石炭などのばら積み貨物を運ぶ。貨物

の流動を防ぐため、船倉上部に傾斜をつけ、

トップサイドタンクという三角形のバラスト

タンクを設置している。本船自体に荷役装置

を持つものと持たないものがあるが、穀物の

揚げ荷役には、通常、陸上に設けられたニュ

ーマチックアンローダーというバキューム方

式の荷役装置が使われる。 SANKO TITAN30,051総トン/52,514重量トン/全長189.99m

木材を専門に運ぶ船。貨物は船倉内だけでな

く甲板上にも積まれ、甲板積みの木材は両舷

に建てられたスタンションと呼ばれる支柱で

左右を押さえ、丈夫なワイヤーで固定される。

荷役施設の不備な積み地が多いため、ほとん

どの船がクレーンを装備する。積み荷役は、

筏に組んで運ばれた木材を沖合いで積み取る

方法が一般的である。 FRAGRANT ISLAND19,885総トン/33,362重量トン/全長177m

製紙原料となるチップ(木材を砕いた小片)

を専門に運ぶ。チップは比重がきわめて小さ

いため、船倉容積を最大限にして大量に積み

込むとともに、バラストスペースを船底部に

設けている。積み荷役は、陸上のニューマー

(空気圧送式荷役装置)で行われ、揚げ荷役

には、本船装備のベルトコンベヤーとバケッ

トクレーンが使用される。 SHIN CHUETSU22,601総トン/25,331重量トン/全長162.0m

石炭専用船石油代替エネルギーとして近年比重が高まる

電力用石炭の効率輸送に活躍する専用船。国

内の石炭専焼発電所の専用バースサイズに合

わせた船型や喫水、バースに備え付けられた

揚炭機の可動範囲に合わせたハッチ構成など、

日本の発電所向けの輸送に最適な船として設

計されている。現在、日本とオーストラリア

などを結んでいる。 SHOHO48,950総トン/87,996重量トン/全長235m

LNG船天然ガスをマイナス162℃の超低温で液化し

たLNG(液化天然ガス)を運ぶ。超低温輸送

のための特殊な材質のタンク、荷役時の事故

を防ぐ緊急遮断装置、輸送中に気化した天然

ガスを燃料として使うタービンエンジンなど、

先端技術を駆使したハイテク船。船価が高い

ため、特定の天然ガス輸入プロジェクトの専

用船として建造されることが多い。

LPG船プロパンやブタンなどを液化したLPG(液化

石油ガス)を運ぶ。輸送方式には常温で加圧

して液化する加圧式、常圧で冷却して液化す

る冷却式及び半冷加圧式があるが、大型LP

G船はすべて冷却式。防熱材はばら積み船の

ような船倉内に防熱を施した低温L PGタン

クを設置している。輸送中に気化したガスを

液化する再液化装置も備えている。 YUYO45,966総トン/49,999重量トン/全長230m

原油タンカー原油を運ぶ専用船。複数の区画に仕切られた

タンク状の船倉を持ち、事故時の原油流出を

最小限に抑えるため船側と船底を二重構造化

している。荷役用のパイプラインとポンプを

持ち、積み荷役には陸側のポンプを、揚げ荷

役には本船装備のポンプを使う。50万重量

トンを超す大型の船も出現したが、現在は30

万重量トン級のVLCCが主力。 ENEOS TOKYO160,062総トン/300,976重量トン/全長333m

冷凍運搬船野菜や果物、冷凍肉、鮮魚などの生鮮食品を

低温輸送する。野菜や果物のように常温に近

いものからマイナス50℃という超低温が必

要な冷凍マグロまで、さまざまな条件に対応

できるよう船倉内の温度は広範囲に調整が可

能。温度も適切にコントロールできる。船倉

は中甲板で何層かに仕切られ、輸送温度の異

なる貨物を積み分けて運べる。 CROWN OPAL10,519総トン/10,316重量トン/全長151.99m

エネルギーを運ぶ船

MUSCAT LNG118,219総トン/77,351重量トン/全長289.5m

船のいろいろ

船のいろいろ

個性豊かな船たち

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201316 17

重量物船

原料を運ぶ船

プラント部品や大型建設機械など重量物を専

門に運ぶ。構造は一般貨物船に似ているが、

重い貨物を自力で積み降ろせるよう、強力な

荷役装置を備えている。船倉内に入らない大

きな貨物は甲板上に積んで運ぶので、甲板は

強固に建造されている。重量物の荷役中に船

体が大きく傾斜するのを防ぐため、大容量の

バラストタンクを両舷に設置している。 KAMO8,145総トン/9,433重量トン/全長120m

セメント専用船工場でつくられたセメントをばら荷の状態で

全国の流通基地まで運ぶ。軽い粉末であるセ

メントの特徴を利用し、積み降ろしには空気

圧で搬送する方式がとられ、そのための荷役

装置を装備している。流通基地で荷揚げされ

たセメントはセメントサイロに格納され、そ

の後、袋詰めまたはばら荷のままタンクロー

リーに積まれて搬送される。 第六芙蓉丸3,610総トン/5,477重量トン/全長98.02m

自動車専用船自動車を専門に運ぶ船。貨物となる自動車を

専門のドライバーが運転し、船側のランプウ

ェイから船内に積み込む。船内は何層ものデ

ッキに分かれ、バスなど大型車両を積むため

のデッキは車高に合わせて上下する。全体に

屋内駐車場のような構造をしている。最大級

のものでは13層ものデッキを持つ6,500台

積みの大型船もある。 LONDON HIGHWAY55,600総トン/17,765重量トン/全長199.94m

LPG船(内航)LPG(液化石油ガス)を国内輸送するための

専用船。冷却式の外航LPG船に対して、内航

LPG船は常温で加圧して液化する加圧式を採

用。球形または円筒形の圧力タンクを持つ。

常温で輸送できるので断熱材は持たない。加

圧式はタンクの大型化に限界があるため、小

型船に限られるが、貨物の取り扱いは冷却式

よりはるかに容易である。 第三十二雄豊丸749総トン/960重量トン/全長67.9 m

ケミカルタンカー

CHEMROUTE BRILLIANT16,360総トン/25,594重量トン/全長159.03m

ケミカルタンカー(内航)合成樹脂やポリウレタンなどの原料となる石

油化学品をはじめ、液体化学品を専門に運ぶ

船。油タンカーの構造と似ているが、タンク

内を細かく区切っているのが特徴である。有

害な液体物質を運ぶことが多いため、タンク

内をコーティングしたり、ステンレス製のタ

ンクを用いるなど、腐食や汚染防止、環境保

全が考慮されている。

鉱炭兼用船製鉄原料の石炭と鉄鉱石を運ぶ。鉱石専用船

同様、大型化が進んだ船種で、最近は製鉄原

料輸送の主力。鉄鉱石と比べてはるかに比重

の小さい石炭も運ぶため、鉱石専用船より積

荷スペースは広い。石炭の場合は全船倉に満

載されるが、比重の大きい鉄鉱石の場合は船

倉1つおきに積み込むジャンピングロードと

いう方法を採用する場合もある。 FIRST EAGLE90,111総トン/180,199重量トン/全長288.93m

油タンカー石油製品を運ぶ油送船。重油用の黒油船(ダ

ーティー・タンカー)とガソリン、ナフサ、

灯油、軽油用の白油船(クリーン・タンカー)

に分類される。黒油船はタンク内が鉄板のま

まなのに対し、白油船はコーティングされて

いるのが特徴。タンク内は壁で仕切られ、船

体が揺れても、油が片側に移動しないようバ

ランスが保たれている。 鶴宝丸3,869総トン/4,999重量トン/全長104.94 m

鉱石専用船鉄鉱石を専門に運ぶ船。鉄鉱石は比重が極端

に大きいため、積荷スペースを狭くし、船体

中央部に積荷を高く積み上げられるようにな

っている。戦後、日本の製鉄業の発展にとも

なって登場し、スケールメリットの追及から

タンカーに次いで大型化した船種。最大級の

ものでは30万重量トンに及ぶものもある。

NSU INSPIRE132,868総トン/250,813重量トン/全長329.95m

一般貨物船鋼材、機械、家具、食料、衣類などのばら積

み貨物を運ぶ、最もオーソドックスな内航貨

物船。船倉内に雑貨を混載し、さまざまな貨

物に対応できるよう汎用性のある構造になっ

ている。699総トン型、499総トン型、199

総トン型が輸送効率の高い船型として多く建

造されている。

豊竜丸499総トン/1,600重量トン/全長74.86m

製品を運ぶ船

国内貨物を運ぶ船

のじぎく499総トン/1,199重量トン/全長64.8m

プラスチックや化学繊維の原料となる石油化

学品や燐酸、硫酸など液状の化学品を運ぶ。

多種類の貨物を積み合わせるため、数多くの

タンクを持ち、タンクごとに独立したポンプ

とカーゴラインを備えている場合が多い。腐

食や貨物同士の汚染を防ぐため、ステンレス

を用いたり、特殊なコーティングを施すなど、

タンク内も工夫されている。

船のいろいろ

船のいろいろ

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SHIPPING NOW 2012-2013 SHIPPING NOW 2012-201316 17

重量物船

原料を運ぶ船

プラント部品や大型建設機械など重量物を専

門に運ぶ。構造は一般貨物船に似ているが、

重い貨物を自力で積み降ろせるよう、強力な

荷役装置を備えている。船倉内に入らない大

きな貨物は甲板上に積んで運ぶので、甲板は

強固に建造されている。重量物の荷役中に船

体が大きく傾斜するのを防ぐため、大容量の

バラストタンクを両舷に設置している。 KAMO8,145総トン/9,433重量トン/全長120m

セメント専用船工場でつくられたセメントをばら荷の状態で

全国の流通基地まで運ぶ。軽い粉末であるセ

メントの特徴を利用し、積み降ろしには空気

圧で搬送する方式がとられ、そのための荷役

装置を装備している。流通基地で荷揚げされ

たセメントはセメントサイロに格納され、そ

の後、袋詰めまたはばら荷のままタンクロー

リーに積まれて搬送される。 第六芙蓉丸3,610総トン/5,477重量トン/全長98.02m

自動車専用船自動車を専門に運ぶ船。貨物となる自動車を

専門のドライバーが運転し、船側のランプウ

ェイから船内に積み込む。船内は何層ものデ

ッキに分かれ、バスなど大型車両を積むため

のデッキは車高に合わせて上下する。全体に

屋内駐車場のような構造をしている。最大級

のものでは13層ものデッキを持つ6,500台

積みの大型船もある。 LONDON HIGHWAY55,600総トン/17,765重量トン/全長199.94m

LPG船(内航)LPG(液化石油ガス)を国内輸送するための

専用船。冷却式の外航LPG船に対して、内航

LPG船は常温で加圧して液化する加圧式を採

用。球形または円筒形の圧力タンクを持つ。

常温で輸送できるので断熱材は持たない。加

圧式はタンクの大型化に限界があるため、小

型船に限られるが、貨物の取り扱いは冷却式

よりはるかに容易である。 第三十二雄豊丸749総トン/960重量トン/全長67.9 m

ケミカルタンカー

CHEMROUTE BRILLIANT16,360総トン/25,594重量トン/全長159.03m

ケミカルタンカー(内航)合成樹脂やポリウレタンなどの原料となる石

油化学品をはじめ、液体化学品を専門に運ぶ

船。油タンカーの構造と似ているが、タンク

内を細かく区切っているのが特徴である。有

害な液体物質を運ぶことが多いため、タンク

内をコーティングしたり、ステンレス製のタ

ンクを用いるなど、腐食や汚染防止、環境保

全が考慮されている。

鉱炭兼用船製鉄原料の石炭と鉄鉱石を運ぶ。鉱石専用船

同様、大型化が進んだ船種で、最近は製鉄原

料輸送の主力。鉄鉱石と比べてはるかに比重

の小さい石炭も運ぶため、鉱石専用船より積

荷スペースは広い。石炭の場合は全船倉に満

載されるが、比重の大きい鉄鉱石の場合は船

倉1つおきに積み込むジャンピングロードと

いう方法を採用する場合もある。 FIRST EAGLE90,111総トン/180,199重量トン/全長288.93m

油タンカー石油製品を運ぶ油送船。重油用の黒油船(ダ

ーティー・タンカー)とガソリン、ナフサ、

灯油、軽油用の白油船(クリーン・タンカー)

に分類される。黒油船はタンク内が鉄板のま

まなのに対し、白油船はコーティングされて

いるのが特徴。タンク内は壁で仕切られ、船

体が揺れても、油が片側に移動しないようバ

ランスが保たれている。 鶴宝丸3,869総トン/4,999重量トン/全長104.94 m

鉱石専用船鉄鉱石を専門に運ぶ船。鉄鉱石は比重が極端

に大きいため、積荷スペースを狭くし、船体

中央部に積荷を高く積み上げられるようにな

っている。戦後、日本の製鉄業の発展にとも

なって登場し、スケールメリットの追及から

タンカーに次いで大型化した船種。最大級の

ものでは30万重量トンに及ぶものもある。

NSU INSPIRE132,868総トン/250,813重量トン/全長329.95m

一般貨物船鋼材、機械、家具、食料、衣類などのばら積

み貨物を運ぶ、最もオーソドックスな内航貨

物船。船倉内に雑貨を混載し、さまざまな貨

物に対応できるよう汎用性のある構造になっ

ている。699総トン型、499総トン型、199

総トン型が輸送効率の高い船型として多く建

造されている。

豊竜丸499総トン/1,600重量トン/全長74.86m

製品を運ぶ船

国内貨物を運ぶ船

のじぎく499総トン/1,199重量トン/全長64.8m

プラスチックや化学繊維の原料となる石油化

学品や燐酸、硫酸など液状の化学品を運ぶ。

多種類の貨物を積み合わせるため、数多くの

タンクを持ち、タンクごとに独立したポンプ

とカーゴラインを備えている場合が多い。腐

食や貨物同士の汚染を防ぐため、ステンレス

を用いたり、特殊なコーティングを施すなど、

タンク内も工夫されている。

船のいろいろ

船のいろいろ

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SHIPPING NOW 2012-201318

石灰石専用船鉄鋼業界やセメント業界向けの石灰石を専門

に運ぶ。ばら積み船のような構造の船もある

が、最近はセルフアンローダー型の船型が増

えている。これはベルトコンベヤー方式の揚

げ荷役装置を船底部に持ち、ホッパー状の船

倉から落とされた石灰石をそのまま陸上に運

び出す方式で、荷役に人手がほとんどかから

ないという特徴を持つ。 名友丸4,734総トン/7,400重量トン/全長105.63m

RORO船船の前後のランプウェイからトラックやトレ

ーラー、フォークリフトによって直接貨物を

積み降ろしするRORO(ロールオン/ロール

オフ)方式の貨物船。クレーンで荷役する方

式はLOLO(リフトオン/リフトオフ)方式

と呼ばれる。主に定期航路に就航し、雑貨輸

送に活躍。荷役の迅速化とともにモーダルシ

フトの受け皿としても注目される。 ほくれん丸13,950総トン/6,597重量トン/全長173.34m

自動車専用船(内航)自動車を専門に運ぶ船。専門のドライバーが

自動車を運転して船内に積み込む。船内は床

を広くとり、5層以上の多層構造になってい

る。バスやトラックなど車高の高さに合わせ

て床の一部を上下することもできる。海上雑

貨輸送の需要増加にともない、トレーラーな

どの大型車両を同時に運べる構造の船も増え

ている。 しゃとるえーす8,280総トン/5,271重量トン/全長161.52m

プッシャーバージ貨物を積むバージ(はしけ)とそれを押すプ

ッシャー(押船)を組み合わせた水上輸送シ

ステム。バージの船尾に造られたノッチ(切

り欠き部)にプッシャーの船首部分をはめ込

んで連結し、プッシャーの推進力でバージを

運航する。波やうねりのある沿岸でもある程

度活動できるように改良が加えられ、近年、

大型化も進んでいる。 プッシャー:鉱翔丸 全長24m/幅15.72m石灰石バージ:鉱翔 全長117.4m/幅21m

外航客船

飛鳥Ⅱ50,142総トン/全長241m

国内貨物を運ぶ船

レジャーを楽しむ船

レジャークルーズのための客船。5~6層に

分かれたデッキには、客室やレストラン、ラ

ウンジ、シアターなど贅沢な設備が整えられ、

航海中はショーやイベントなどが開催

される。単なる移動手段を超えて、

船旅そのものを楽しむために、設

備とサービスの充実をめざす。新

しい時代のレジャーとして人気を高めている。

【日本商船隊】日本の外航海運会社が運航する船隊全体を指し、日本籍船と外国船主から用船した外国籍船によって構成される。近年は、日本商船隊全体に占める日本籍船の割合は減少し、隻数で4.8%、トン数で9.3%(2011年)となっている。

【総トンと重量トン】総トン数は、船舶の大きさ(容積)を表す単位。重量トン数は、満載喫水線の限度まで貨物を積載した時の全重量から船舶自体の重量を差し引いたトン数であり、燃料・水・食料などの重量を含むが、船が積める貨物の重量を示す目安となる。

 船員になるには、様々な方法がありますが、外航船員になるためには、中学校卒業後に商船高等専門学校へ進学する道と、高校卒業後に専門部のある大学へ進学する道が一般的です。資格を得て、乗船すると航海士・機関士としてスタート。乗船履歴を積みながら、上のクラスへ試験にパスしていくと、やがて船長・機関長として船を運航するチャンスがやってきます。 また、国内の貨物輸送に携わる内航船員になるためには、別の教育機関があります。

【トンキ口】輸送トン数に輸送距離(km)を乗じた単位で、船舶など輸送機関の活動量を表すために用いる。

【モーダルシフト】地球環境問題や道路混雑、労働力問題など、制約要因が顕著になってきたトラックから低公害で効率的な大量輸送機関である船舶などへ輸送モードをシフトさせることをいう。

【シップ・リサイクル】老朽船を解体し、資源を再利用すること。船舶は解撤による鋼材や部品の再利用/再使用率が90%以上と、自動車や家電と比較しても極めて高く、解徹の促進は、海洋環境の保全とともに資源の有効活用という点でも意義が大きい。

【サブスタンダード船】構造・設備・人員等の面で、国際条約による安全基準に達していない船舶。海上交通の安全からも海洋汚染防止の観点からも、国際海運市場から排除する必要がある。また、寄港国(港が所在する国)は、入港船舶に対し、船舶設備や船員の資格等についてIMO(国際海事機関)などが定めた国際条約に適合しているか検査を行うことが認められており、これをポートステートコントロール(PSC)という。このPSCによって、サブスタンダード船については、条約の基準を満たすまで改善措置(場合によっては航行停止)をとらせることができる。

【当直】24時間休みなく運航される船舶では、航海士と部員(甲板手)のペアによって構成される当直員が交替で船橋に立ち、運航状況や周囲の船舶の動きなどを監視する。これが航海当直で、通常は1日を4時間ごとの6つの時間帯に分け、一等から三等の各航海士が甲板手1名と組み、それぞれが4時間当直して8時間休むというサイクルで当直を行う。同様に機関室の当直も機関士と部員によって行われるが、最近では自動運転され、機関当直を行わない船も多くなっている。

海運用語集

船員になるには

船のいろいろ

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SHIPPING NOW 2012-201318

石灰石専用船鉄鋼業界やセメント業界向けの石灰石を専門

に運ぶ。ばら積み船のような構造の船もある

が、最近はセルフアンローダー型の船型が増

えている。これはベルトコンベヤー方式の揚

げ荷役装置を船底部に持ち、ホッパー状の船

倉から落とされた石灰石をそのまま陸上に運

び出す方式で、荷役に人手がほとんどかから

ないという特徴を持つ。 名友丸4,734総トン/7,400重量トン/全長105.63m

RORO船船の前後のランプウェイからトラックやトレ

ーラー、フォークリフトによって直接貨物を

積み降ろしするRORO(ロールオン/ロール

オフ)方式の貨物船。クレーンで荷役する方

式はLOLO(リフトオン/リフトオフ)方式

と呼ばれる。主に定期航路に就航し、雑貨輸

送に活躍。荷役の迅速化とともにモーダルシ

フトの受け皿としても注目される。 ほくれん丸13,950総トン/6,597重量トン/全長173.34m

自動車専用船(内航)自動車を専門に運ぶ船。専門のドライバーが

自動車を運転して船内に積み込む。船内は床

を広くとり、5層以上の多層構造になってい

る。バスやトラックなど車高の高さに合わせ

て床の一部を上下することもできる。海上雑

貨輸送の需要増加にともない、トレーラーな

どの大型車両を同時に運べる構造の船も増え

ている。 しゃとるえーす8,280総トン/5,271重量トン/全長161.52m

プッシャーバージ貨物を積むバージ(はしけ)とそれを押すプ

ッシャー(押船)を組み合わせた水上輸送シ

ステム。バージの船尾に造られたノッチ(切

り欠き部)にプッシャーの船首部分をはめ込

んで連結し、プッシャーの推進力でバージを

運航する。波やうねりのある沿岸でもある程

度活動できるように改良が加えられ、近年、

大型化も進んでいる。 プッシャー:鉱翔丸 全長24m/幅15.72m石灰石バージ:鉱翔 全長117.4m/幅21m

外航客船

飛鳥Ⅱ50,142総トン/全長241m

国内貨物を運ぶ船

レジャーを楽しむ船

レジャークルーズのための客船。5~6層に

分かれたデッキには、客室やレストラン、ラ

ウンジ、シアターなど贅沢な設備が整えられ、

航海中はショーやイベントなどが開催

される。単なる移動手段を超えて、

船旅そのものを楽しむために、設

備とサービスの充実をめざす。新

しい時代のレジャーとして人気を高めている。

【日本商船隊】日本の外航海運会社が運航する船隊全体を指し、日本籍船と外国船主から用船した外国籍船によって構成される。近年は、日本商船隊全体に占める日本籍船の割合は減少し、隻数で4.8%、トン数で9.3%(2011年)となっている。

【総トンと重量トン】総トン数は、船舶の大きさ(容積)を表す単位。重量トン数は、満載喫水線の限度まで貨物を積載した時の全重量から船舶自体の重量を差し引いたトン数であり、燃料・水・食料などの重量を含むが、船が積める貨物の重量を示す目安となる。

 船員になるには、様々な方法がありますが、外航船員になるためには、中学校卒業後に商船高等専門学校へ進学する道と、高校卒業後に専門部のある大学へ進学する道が一般的です。資格を得て、乗船すると航海士・機関士としてスタート。乗船履歴を積みながら、上のクラスへ試験にパスしていくと、やがて船長・機関長として船を運航するチャンスがやってきます。 また、国内の貨物輸送に携わる内航船員になるためには、別の教育機関があります。

【トンキ口】輸送トン数に輸送距離(km)を乗じた単位で、船舶など輸送機関の活動量を表すために用いる。

【モーダルシフト】地球環境問題や道路混雑、労働力問題など、制約要因が顕著になってきたトラックから低公害で効率的な大量輸送機関である船舶などへ輸送モードをシフトさせることをいう。

【シップ・リサイクル】老朽船を解体し、資源を再利用すること。船舶は解撤による鋼材や部品の再利用/再使用率が90%以上と、自動車や家電と比較しても極めて高く、解徹の促進は、海洋環境の保全とともに資源の有効活用という点でも意義が大きい。

【サブスタンダード船】構造・設備・人員等の面で、国際条約による安全基準に達していない船舶。海上交通の安全からも海洋汚染防止の観点からも、国際海運市場から排除する必要がある。また、寄港国(港が所在する国)は、入港船舶に対し、船舶設備や船員の資格等についてIMO(国際海事機関)などが定めた国際条約に適合しているか検査を行うことが認められており、これをポートステートコントロール(PSC)という。このPSCによって、サブスタンダード船については、条約の基準を満たすまで改善措置(場合によっては航行停止)をとらせることができる。

【当直】24時間休みなく運航される船舶では、航海士と部員(甲板手)のペアによって構成される当直員が交替で船橋に立ち、運航状況や周囲の船舶の動きなどを監視する。これが航海当直で、通常は1日を4時間ごとの6つの時間帯に分け、一等から三等の各航海士が甲板手1名と組み、それぞれが4時間当直して8時間休むというサイクルで当直を行う。同様に機関室の当直も機関士と部員によって行われるが、最近では自動運転され、機関当直を行わない船も多くなっている。

海運用語集

船員になるには

船のいろいろ

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SHIPPINGNOW2012-2013

SHIPPING NOW2012-2013

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