09-1 nmr研究会 mr-1h. 13c - 東京工業大学...09-1 nmr研究会 主題=多核m在r-1h.13c...

27
09-1 NMR 研究会 主題=多核 m R-1 H. 13c 以外の核種で何が見えるか <趣旨> NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ れぞれの核種から特徴的な情報が得られ,それらを多角的に解析できることがあげられます。今 回の NMR 研究会では、合成高分子、生体高分子、ガラス、触媒、エネルギー材料など多方面の試 料を対象に、それぞれの分野で先駆的な研究をなさっている先生方に,構造情報・物性情報を得 るのに最適な核種をターゲットとした NMR の応用例についてご講演いただきます.特に,多核と 呼ばれる lH 13 C 以外の核種の N 恥伎にご興味をお持ちの方や,今後,研究現場でお使いになる予定 の方の参考にしていただき、さらには N 恥伎の新しい可能性を考える機会となることを願っており ます。 今回の研究会が,研究の発展につながる討論と交流の場として多いに活用されることを期待い たします. 高分子学会 NMR 研究会 日本化学会 日本核磁気共鳴学会 平成 21 5 15日(金) 東京工業大学(大岡山キャンパス)西 9 号館ディジタル多目的ホール (東京都目黒区大岡山 2 12 ・1) 東急目黒線・東急大井町線 大岡山駅下車徒歩約 3 htto:llwww.titech.ac.io/camous-mao07/i/ookavama i11 ustmao2i.html 催費時場 主協日会 ,画、 有機・生体分子系のための半整数四極子核固体 NMR 法の開発 (東京工業大学)山田和彦・・・ l プログラム < 1 10:40 > 1. 17 0NMR < 2. llB 27 A l ,2 9Si のMv偲 無機ガラス材料の構造解析 庚薫・・・ 3 (AGC 旭硝子)閏 < 3. 129 Xe N 1R 各種高分子の静・動的構造解析例 戸『¥ 吉水広明・・・ 7 (名古屋工業大学) < 4. 2H N 恥1R ラセン高分子のダイナミクス (北海道大学)平沖敏文・・・ 11 < 5. 7Li N 恥皿 リチウム電池材料への応用 (東京工業大学)黒木重樹・・・ 15 ガラス・鉱物中の低感度核種の構造 (新日本製織)金橋康二・・・ 20 < 6. 17 0 2SMg 43CaNMR 強磁場固体 NMR によるチーグラー・ナッタ触媒の構造解析 (東邦チタニウム)斎藤雅由・・・ 22 < 7. 47 Ti 49 Ti NMR

Upload: others

Post on 26-Dec-2019

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

09-1 NMR研究会主題=多核m在R-1H.13c以外の核種で何が見えるか

<趣旨> NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

れぞれの核種から特徴的な情報が得られ,それらを多角的に解析できることがあげられます。今

回の NMR研究会では、合成高分子、生体高分子、ガラス、触媒、エネルギー材料など多方面の試

料を対象に、それぞれの分野で先駆的な研究をなさっている先生方に,構造情報・物性情報を得

るのに最適な核種をターゲットとした NMRの応用例についてご講演いただきます.特に,多核と

呼ばれる lH,13C以外の核種のN恥伎にご興味をお持ちの方や,今後,研究現場でお使いになる予定

の方の参考にしていただき、さらにはN恥伎の新しい可能性を考える機会となることを願っており

ます。

今回の研究会が,研究の発展につながる討論と交流の場として多いに活用されることを期待い

たします.

高分子学会 NMR研究会

日本化学会 日本核磁気共鳴学会

平成 21年 5月 15日(金) 10:00~17:00 東京工業大学(大岡山キャンパス)西9号館ディジタル多目的ホール

(東京都目黒区大岡山 2・12・1)

東急目黒線・東急大井町線 大岡山駅下車徒歩約 3分

htto:llwww.titech.ac.io/camous-mao07/i/o okavama i11ustmao2 i.html

催費時場

主協日会

,画、

有機・生体分子系のための半整数四極子核固体NMR法の開発

(東京工業大学)山田和彦・・・ l

プログラム

< 1 O:OO~ 10:40 >

1. 170のNMR

< 10:40~11:20> 2. llB,27Al,29SiのMv偲 無機ガラス材料の構造解析

庚薫・・・ 3(AGC旭硝子)閏

< 1l :20~12:00> 3. 129XeのN勘1R 各種高分子の静・動的構造解析例戸『¥

吉水広明・・・ 7(名古屋工業大学)

< 13:00~13:40> 4. 2HのN恥1R ラセン高分子のダイナミクス

(北海道大学)平沖敏文・・・ 11

< 13:40~14:20>

5. 7LiのN恥皿 リチウム電池材料への応用

(東京工業大学)黒木重樹・・・ 15

ガラス・鉱物中の低感度核種の構造

(新日本製織)金橋康二・・・ 20

< 14:30~15:10> 6. 170, 2SMg, 43CaのNMR

強磁場固体NMRによるチーグラー・ナッタ触媒の構造解析

(東邦チタニウム)斎藤雅由・・・ 22

< 15:10~15:50> 7. 47 Ti,49TiのNMR

Page 2: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

< 15:50----17:00> ポスタ}発表

pl)電界紡糸法により作製したポリフッ化ピニリデンナノファイパの固体 19FMAsm但法を

基礎とした構造解析

(東工大院理工)滝上義康・黒木重樹・松本英俊・ 0 谷岡明彦・安藤慎治

P2) 固体 19F_MASNMRによる多フッ素化分子/s・シクロデキストリン包接体の構造・運動性解析

(東工大院理工) 0 小糸祐介・滝上義康・安藤慎治

P3)生体分子系固体酸素 17核磁気共鳴法の開発

(東工大院理工) 0 山田和彦・安藤慎治

P4) カルシウム結合性を付与した絹様タンパク質の固体NMR構造解析

(農工大工) 0 山内一夫・渋谷かおり・谷間由望・朝倉哲郎

P5) アラニンオリゴペプチドを用いた平行および逆平行3・シートの分子間構造に関する固体

N恥1R構造解析

(農工大工) 0 亀谷俊輔・堀口紅実子, (奈良女子大)黒子弘道

(農工大工)青木昭宏・山内一夫・朝倉哲郎

P6)ハチが作る有用物質の固体NMR構造解析

P7)小型超伝導磁石の NMR

P8) SBRの lHMAsm低スベクトルと緩和時間

(農業生物資源研) 0 亀田恒徳

(理研) 0 室洋一・仲村高志

(防衛大応用化学) 0 浅野敦志・堀俊介, (バリアン)芦田淳

(防衛大応用化学)田中千香子・黒津卓三

P9) 立体規則性の異なるポリ(N・アルキルアクリルアミド)のI3CNMRスベクトルの多変量解析

(徳島大院 STS) 0 平野朋広・板東洋一・那須朔・百瀬陽・右手浩一

P10) ポリアクリル酸エステルのラテックス NMR法における緩和時間

(長岡技科大)。渡謹和哉・山本祥正・赤堀敬一・河原成元

P11)エチレンーピニルアルコール共重合体に収着した水分子の観察

(名工大院工)大村和義・.吉水広明

P12) NMR法によるガラス状高分子中における気体の拡散挙動評価

(名工大院工) 0 岡揮載裕・吉水広明

P13)溶液及び溶融状態から調製した超高分子量ポリエチレンフィルムの延伸/圧縮による

単斜晶の生成

(群大院工)・森田朔, (東工大院理工)撹上将規, (群大院工)上原宏樹・山延健

P14) Po1y(m-xylylene adipamide)の結晶化挙動のIn-situ解析

(群大院工) 0 宇津木洋平・上原宏樹・山延健

P15)高分子溶融体の物性と分子運動に関する研究

、-

(群大院工)・山延健・大神奈津美・森田朔・上原宏樹 )

P16)結晶性高分子の延伸過程における NMR測定

(群大院工) 0 宮崎紀明・森田期, (東工大院理工)撹上将規,

(群大院工)上原宏樹・山延健

P17) ポリ (L-アスパルテート)ジブロック共重合体における主鎖ヘリックス構造の反転挙動

(東工大院理工) 0 高宮奈美・古屋秀峰

P18) 高分子電解質の構造転移に及ぼす対イオン混合効果

(東工大院理工)0森久・若川真輝・黒木重樹・佐藤満

P19) リン酸ドープされたベンズイミダゾールーアラミド交E共重合体のプロトン交換膜の特性

(帝人)。畳間真之・永阪文惣・桑原広明

(東工大院理工)黒木重樹・早川鏡晃・柿本雅明

P20) 13C固体NMRを用いた結合様式制御型ポリ (3ーヘキ、ンノレチオフェン)の動的構造と

共役長に関する研究

(東工大院生命理工)。矢津宏次・井上義夫

(物質材料研究機構)清水禎・丹所正孝, (阪大産研)浅川直樹

Page 3: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

170のNMR - 有機・生体分子系のための半整数四極子核

国体NMR法の開発(東工大院理工)山田 和彦

E-mail k'>[email protected]

電話IF位 03同 5734・2889

核磁気共鳴 (NMR)法は化学や物理のみならず生物の分野においても、標準的な実験手

法として幅広く普及している。特にタンパク質の構造・機能解析においては、安定同位体標

識法の技術革新や測定手法および装置の改良なので、数年前に比べると測定可能なタンパク

戸、 質の種類や分子量は格段に増えている。しかしながら、近年の生体分子系附Rでは主に

IH, 13C, 15Nなどスピン数が1/2である双極子核にほぼ限定されている。生体分子の研究分野に

おいて酸素は鍵となる重要な原子である。酸素剛R測定は理論上可能であるにも関わらず、

残念ながら実験報告は皆無に等しい。これは唯一の NMR測定可能核である酸素 17安定同位体

の天然存在比が 0.037切と著しく低いことと、

そのスピン数が 5/2、つまり、四極子核であ

ることに起因すると思われる。前者の問題は、

酸素 17安定同位体を試料に標識することで

ある程度解決することが可能であるが、後者

の問題は深刻である。例えば、溶液中におけ

るタンパク質のような巨大分子の場合、四極 醐

子相互作用の影響(四極子緩和)で FIDシグ

戸、 ナルの検出自体が出来なくなる。このような

状況により、溶液酸素 17NMR測定はほとんど

発展しなかった。

一般に、酸素 17核のような四極子核

は試料を国体状態にすることで、その NMR測

定が可能になることがある。さらに国体NMR

スベクトルは溶液 NMRスベクトノレよりも多く

自m ・ω200 0 -200 _ _

Chemi<alsl、1ftI ppm

5110 2四' 制園田 ー官DD

Chemi<al shlft I ppm

図1アミノ酸の静止状態での酸素17NMRスペクトル

Page 4: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

の分子情報を含んで 14

いる。本来、 NMRパラ12

メータは異方性を有 炉、a工

しており、テンソル~ 10 、、、(lJ

量で表すことができコrn 8 m 〉

σ る。固体問Rスベク u

6

トルを詳細に解析す4

ると、溶液問Rで得

られるパラメータ

(例えば、化学シフ

I Urea

-1

AmidE

心.5 o η

Ketone

。~

0.5

図2 酸素17核四極結合定数(亡。)と非対称因子(η。)の関係

1

トのようなスカラー量)に加えて、立体的な電子情報を反映するテンソル量を得ることが出 )

来る。固体酸素 17NMRの場合、遮蔽テンソノレと電場勾配テンソルが重要なパラメータである。

生体分子を対象にした溶液酸素 NMRは実験上不可能なことから、酸素核周辺の電子情報を直

接計測することができ、かっ、豊富なパラメータを提供することができる固体酸素 NMR法は、

新規タンパク質機能解析法として、近い将来飛躍的に発展することが期待できる。本発表で

は、有機化合物や生体分子を対象とした固体酸素 17陥眠法の基礎、特にスベクトルの解析方

法や酸素 1刊MRパラメータの解釈などを中心に説明をする。

図 1にアミノ酸の静止状態における酸素 17NMRスベクトルを示す。 11.7と16.4Tの磁

場を使用して測定をした。あわせて、それぞれ最適化した理論スベクトルも示す。この場合

は、遮蔽テンソルと電場勾配テンソノレ由来の合計8種類のパラメータを使い、実験スベクト

ルを再現するまで、シュミレーション操作を繰り返した。有機・生体系分子における固体酸

素 NMRでは、このような複雑な線形を示すことが多いので、複数の磁場で測定した実験スベ

クトルに対して最適化の結果を確認すると良い。図 2に代表的な官能基の酸素 17核四極結合 )

定数(~)と非対称因子 (ηQ) の関係、を示す。本来、これら二つのパラメータは独立してい

るが、非対称因子の範囲をーlから+1まで拡張すること(つまり、電場勾配テンソルの主

値の符号を区別すること)で、二つのパラメータ聞で一次相闘があることが分かつた。酸素

17剛Rパラメータは広範囲に渡り官能基の種類や水素結合状態などの分子間相互作用に敏感

に変化するが、このような相聞を活用することで、より深く NMRパラメータの傾向を理解す

ることができる。

-2-

Page 5: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

11B. 27Al, 29Siの則R 無機ガラス材料の構造解析

1.はじめに

みん きょんふん

(AGC旭 硝 子 ) 閲 庚 薫

E-mail [email protected]

電話 045・374・7524 FAX045・374-8892

私は企業に勤務する技術者として、これまで、構造解析に携わってきた。対象は、無機ガ

ラス材料と有機材料である。これらが、工業製品、もしくは、工業化を前提とする開発品

であることは言を待たない。無機ガラス材料の構造解析には、国体N恥m.法、赤外・ラマ

ン分光法が用いられる。中でも固体NMR法は、配位構造に関する情報も得られ 1)特に有

用である。固体N恥1R法における観測核は、いわゆる多核である。工業製品を対象とする

戸、 場合、観測核をエンリッチすることは考えにくい。天然存在比のまま観測可能な核として

は、 "B、27Al、29Si、31p、7Li、 23Na等が挙げられる。これらの多くは、近年における MAS

速度の向上と高磁場化により、無機ガラス材料の多くにおいて実用的な観測核となった。

B、Al、Si、Pの4元素は、無機ガラス材料の骨格を形成するため、その構造には特に興味

が持たれる。本講演では、 "B、27Al、29Siの3核を取り上げ、構造解析例を述べる。具体

的には、①配位構造が支配するガラスの屈折率、②高磁場NMRを用いたガラス相分離挙

動の解析、③シリカゲ、ル中水酸基密度の算出、の 3点である。

2. 実験

『試料A-x~ は光学ガラスであり、その組成は、 65P203-xA1 203-(20-x) B203-10CaO-5LiO (mol) である。試料名中のxは、 A1203の含有率を表す。 x=O、5、10、15、20である試料を調製した。

ガラスは粉砕したものを、そのまま測定に供した。

『試料B~ は低融点ガラスであり、その組成は、 65Si02-25B203-5A1203-5CaO(mol)である。

本試料は粉末状であり、そのまま、もしくは所定の温度で、3hr加熱処理したものを測定に供

した。処理温度は、 6000

C、7000

C、7500

C、800"C、 8750

Cの5水準とした。

戸、 『試料 C-x~ は多孔質シリカゲ、ルで、あり、工業的に調製されている0 ・全 9 点である試料

は、比表面積が 150-900m2/ gの範囲内に収まる。

則 R測定には、日本電子社製の ECA930(21. 8T)、ECA600(14. 1 T)、ECP400(9. 4T)を用いた。

3. 実験結果と考察

3-1. Alの配位構造が支配するガラスの屈折率 2)

試料 A-xについて、アルミナ含有率、屈折率 nd、および、アッベ数 vdの関係、を Fig.l

に示す。屈折率 nd、および、アッベ数 vdともに、アルミナ含有率がlOmol%において極大

を示す。この現象は、極めて特徴的である。原因を解明するために、アルミナ含有率に対

する、モノレ屈折率R、および、モル体積Vの関係をプロットした(Fig.2)。アルミナ含有率

の増大とともに、モノレ屈折率 Rは単調に増大する。これは、モル屈折率が試料の化学組成

に支配されていることを表す。これに対して、モル体積Vはアルミナ含有率がlOmol%にお

いて極大を示す。このことから、屈折率 nd、および、アッベ数 vdがアルミナ含有率に対

-3-

Page 6: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

1.533十一 一 -1 6ム1.530

1.527 ; 2

1.524

1.521

1.518

0

-.-一一"--169.5

一一一一企一一• 5 10 15 Al:z03 [rrol%]

69.3~

69.1

68.9

20

Figure 1 The behavior of Ild (・)and Vd

(企)in the composition 65P20S・xB203・(20・x)Ah03・lOCaO・5LhO(x=O, 5, 10, 15,20).

w.r.t AI(NO~3 VI

明 WV…弘一Figure 3 27 Al NMR spectra of sample A5, AIO, A15, and A20. IV. V • VI denote coordination number of alumina.

14.4 r……山 一一一… “主 46.5

14.3

14.2 }出

14.1

14.0

13.9

0

J .R-!~_ i企V; 。• 一一←.一一企一一

46.0s E 巳)

]

豊ー一一一一A

10 15 Al:z03 [問問

45.5

20

Figure 2 The behavior of the molar re会actionR (・)and the molar volume V (企)in the composition 65P205・

xB203・(20・x)Ah03・IOCaO・5Li20(x=O. 5. 10.15‘20).

100

!5ω li: 。。 5 10 15 20

Ak03 (rro恥]

FIlrure 4 The ratio of coordination Ae+(VI) (・), Ae+( v) (企)and Al勺IV)(・).

して極大を示す

原因は、モル体積

にあると考えら

れる。ここで、試

料 A-xについて、

ホウ素およびア

ルミニウムの配

位組成比を固体

NMR法により算出

した。何れの試料

もホウ素は4配位

構造をとる。他方、

アルミニウムは、何

れの試料も 4,5,6

の各配位構造が共

存し、その配位組成

比は試料ごとに異

なる (Fig.3)。各試

料におけるアルミ

ニウムの配位組成

比を Fig.4に示す。

アノレミナ含有率が

lOmol切において、

4,5配位構造の分率

は極小を示し、 6配位構造の分率は極大を示す。この配位組成比の変化が、モル体積、ひ

いては、屈折率およびアッベ数の挙動を特徴付けていると考えられる。

3-2. 高磁場N恥伎を用いたガラス相分離挙動の詳細解析 3)

試料 Bの典型的なlIBNMRスベクトルを Fig.5に示す。lIBNMRスベクトルは、ガウス型

の理論曲線 3本に分離可能であり、これらは、高磁場側から B04、B03non-ring,B03ring にそれ

る。 B04は 4配位ホウ素を表し、 B03non-ring 'n~ヘ B03non.ringとB03ri刊は 3配位ホウ素を表す。 3つのホウ素と 3つ

の酸素によりホウ酸環が形成される。この環を形成

するホワ素が B03ri珂である。 3配位ホウ素には、四極

子結合が存在するため、複雑なスベクトノレを示す。

ガラス試料の場合、その構造分布を反映して化学シ

フトにも分布を生じる。 21.8Tの高磁場装置により ー 'it',M" ;."'パぷ・ぷ...'J ,"~'.<".r!. 7', '̂,;'干.lIB NMRスベクトルを得る場合、化学シフトの分布に Figure 5 llB剛 Rspectrum of boro-

aluminosilicateσlass 比べ、四極子結合による線幅の広がりは十分小さい。 spectrum is deconvolV日 with

このため、ガウス型の理論曲線でスベクトノレの分離 gaussian curves.

-4-

、-

、-

Page 7: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

ができる。

llB NMRスベクトルのピーク強度比から配位組

成比を算出し、試料の処理温度との関係をプロッ

トした (Fig.6) 0 B04の比率は開であり、熱処理条

件によらず一定している。これに対して、 B03ring

とB03non-ri刊の比率は、処理温度が 7500

Cの場合に、

それぞれ極大および極小を示す。試料は、 650"C

以上で熱処理を行うことでケイ酸相とホウ酸相

に分離し、また、より高温で処理することで相分

離が進行することが知られているぺ B03ringは、

ホウ酸相の内部に多く、ケイ酸相との界面には少

ないと考えられる。この考えに従えば、高温処理

により相分離が進行すると、ホウ酸相のドメインサイズが巨大化し、 B03ringが増大する。よ

り高温で処理すれば、相分離は進行し、B03ringが増大すると推察される。実験事実は異なり、

875"C処理品は、 800"C処理品に比べ B03ri唱が少ない。これは、熱エネルギーによりホウ酸

環の化学結合が部分的に切断され、 B03ringが B03non-ringに変化すると解釈される九この 2つ

の現象を考慮すれば、 750"Cの処理温度で、 B03ringの比率が極大を示すことが説明できる。

ホウケイ酸ガラスについて、熱処理に伴なう相分離挙動と配位構造の関係を明らかにした。

21. 8T高磁場 NMRにより、ホウ素の配位組成定量が高い精度で実施できる。

L' ・NT 6000

C 7000C 7S00

C 8000C 87S0

C

Temp (OC)

ト-----・・--------

-一一・-- 曹-----,・

80

60 t

2 40 偲

20

Figure 6 The composi tion of boron. ・..A denote B03non-ring. B03ri暗 andB04 respectively.

,画、

200 400 600 800

Surface area (m2 / g) Figure 8 The relationship between surface area and Q4・Q2ratio of each sample

3 -3. 29Si NMRの高感度化とシリカゲル中水酸基密度の算出 6)

試料の典型的な 29Si剛 Rスベクトノレを Fig.7に示す。同スベクトルは、 3本のピークに

分離可能である。 Q4、Q3、Q2は、シリカネットワークにおける基本構造単位を表す。 3本

のピークは、高磁場側から Q4、Q3、Q2に帰属される。試料c-xについて、ピーク面積比か

ら、 Q4-Q2の組成比を算出し、比表面積に対してプロットした (Fig.8)。比表面積の増大に

伴い、水酸基を有する Q2とQ3の分率は増大し、水酸基を持たない Q4の分率は減少する。

Q4、Q3、Q2の各成分の比率と比表面積との関係は、直線で近似できる。このことから、各

直線の傾きによって、表面水酸基密度を算出できる。また、各直線の y切片は、比表面積

がゼロの状態における Q4-Q2の組成比を表す。つまり、各直線の y切片から、内部水酸基

密度を算出することができる。これによると、表

面水酸基密度は 6.84μmol/m2であり、内部水酸基

密度は

2. 33mmol/g

である。

Fig. 7 ~こ

示すスベク

トノレは、 取

千尋に20hrを

要し、 S/N

比は11であ

1000

100

80

40

20

o o

60 (揖)O事

SL

Figure 7 Peak resolved _ 29Si NMR spectra of porous silica gel

戸町、

-5-

Page 8: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

る。 S/N比が低いため、微量成分である Q2は、そ

の組成比に大きな実験誤差を含む。この実験誤差を

低減するためには、スベクトルの積算効率向上が有

効である。ここでは、その手段として緩和試薬の活

用を試みた。緩和試薬はこれまでにも無機ガラスに

活用されている 7)。しかし、その利用は、常磁性金

属酸化物を無機ガラスの原料とともに混合・焼成す

ることで行われている。このため、工業材料に適用

することは難しい。ここでは、試料が多孔質である

点に着目し、細孔表面に緩和試薬を吸着させること

Mヤ主守~一戸「や~←"一一-,-.-.--.~吋mゅー叩}卑M- ・・ 帽 園 田

Figure 9 Peak resolved 29Si NMR spectra of porous silica gel treated with relaxation reagent

に思いが至った。この方法によって緩和試薬処理を行うと、試料の T]を500分の lに短縮

可能である。緩和試薬処理した試料の 29SiNMRスベクトルを Fig.9に示す。測定時間は 2hr

であり、 S/N比は 43である。 Fig.7に比べ、 Fig.9は、取得時聞が1/10と短い上に、 S/N

比も 4倍高い。緩和試薬処理した試料を用いて、改めて水酸基密度の算出を行った。これ

によると、表面水酸基密度は 6.17μmol/m2であり、内部水酸基密度は 1.88mmol/gである。

緩和試薬処理を行うことで、比表面積と Q2、Q3の成分比との関係における相関係数は、向

上していると土を確認済みである。さらには、表面および内部の各水酸基密度について、

Q3と Q2各成分の寄与率を算出した。興味深いことに、何れの水酸基密度についても、 Q3

とQ2各成分の寄与率は 75: 25であり、同じ値を示す。

4. まとめ

llB、27Al、29Siの3核を取りとげ、無機ガラス材料に対する固体N為偲法の適用例を紹介

した。固体 N恥1R法は、無機ガラス材料について、実用的かっ詳細な構造情報を与える。

光学ガラスについては、構造と材料物性の問に、密接な関連があることも明示された。詳

細な構造情報を引き出すためには、装置の進歩も重要ではあるが、材料および NMR法に

関する深い知識がより重要である。工業製品としての無機ガラス材料の中には、組成が複

雑なものが多く、これらの構造解析は難しい。しかしながら、材料開発において構造解析

が重要であることは、明らかである。裏を返せば、この分野は未聞の沃野であると言える。

5. 参考文献

l)A. H. Silver and P. J, Bray, J, Chem. Phys.29, 5 (1958).

2) H. Okawa, K.H. Min, R. Akiyama, K. Yamamoto and N. Sugimoto, J. Non-Cryst. Soljds, 90,

354 (2008).

3) K.H. Min, K. Yamamoto, M. Murakami, M. Tansho, T. Shimizu, 4Ef' ENC,丹-eprInts334 (2007)

4) T. Nakashima,地wGlass, 20, 3-3 (1989).

5)]. Krogh-Moe, J.八fon-C乃Tst.So!Jds, 1, 269 (1969).

6) K.H. Min, H. Miyahara, ACS236th National Meeting and Exposition, Philadelphia, PA, (2008)

Inorganic Chemistry 73 7

7) K.J,D. Mackenzie and M.E. Smith, Multinuclear Solid-State NMR of lnorganic Materials,

Pergamon, Amsterdam, (2002) 202

-6一

、-〆

、国,;

Page 9: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

129Xeの NMR-各種高分子の静・動的構造解析例

(名古屋工業大学大学院工学研究科) 吉水広明

E-mail: [email protected]

電話&FAX:052・735・5272

[はじめに]12~e 核は天然存在比 26.4%,スピン量子数 112 であり,その磁気回転比は 13Cの約 1.1倍であるから, NMRシグ‘ナルの検出感度は比較的高く,共鳴周波数も 13Cに近い

ので標準仕様のチューナブルプローブであれば,ほとんどの場合観測可能である.我々の

経験では,常圧の Xeガス単体なら, IHが400閲Izの装置を用いて数回の積算で良好な S別

比のスベクトノレが得られている.また 129XeNMR化学シフト値は周囲の環境を反映して

大きくシフトする. 200 ppm超の化学シフトを示すので,超伝導マグネット下であれば,

ロックを掛けず,表現が悪くて恐縮だが,“手抜き"感覚でシム調整して測定を強行しでも,

戸、 得られるスベクトルの品質に多大な影響はないと考えてよい.ことまで 12~e N1\伎の観測

の“し易さ"を強調したが,圧縮ガスをガラス製の細長い NMR管に封入するには手聞が

掛かる上に,何より大変危険である 12~eNMR の実験(もちろん圧縮ガスを取扱う実験は

核種を間わず全て)を行なうにあたり,安全面での注意と配慮が格段に必要であることを最

も強く訴えておきたい.我々は,真空脱気用として市販されているスクリューキャップ付

き N恥R 管を,使用者の責任において,流用したりしているが,ガラス棒を“落し蓋"と

してサンプルとともに入れ極力試料管の内容積を小さくしたり,封入圧力の上限を厳しく

管理したりしている.幸いにも過去 10年間ほとんど無事故で来ているが,今後,圧縮ガス

を繰り返し封入でき,破損爆裂の危険が確実に無いと言える専用試料管の市販化が待たれ

る.本講演では, 129XeNMRの測定の実際について,各種高分子材料の静・動的構造解析を

例に解説する.一方,多孔質ではない高分子固体材料(例えば膜材料分野では轍密膜なrと

呼ばれるもの)の凝集状態を分子レベルで正確に表現するには,どんな構造情報が必要だろ

うか? ランダム形状で無数の高分子鎖が複雑に絡まり合っている様子を模式的に描画す

るにしても,分子鎖自身のみならず,鎖聞の空隙の量やサイズ,形状,分布などを考慮し

なければならない.さらに経時変化(動的描写)も表現しなければならない.つまり,高分

戸、 子固体の凝集状態や動力学的な実像などの解明は,学問的にも,また応用面では高分子膜

の気体輸送特性(気体の収着,拡散,透過特性)を理解する上でも,重要且つ不可欠で、あ

る.高分子轍密膜を透過する気体分子は,間違いなくその非晶性高分子固体が内部に提供

する微小空間に存在する.プロープとして NMRが比較的容易に観測できる Xeを用い,そ

のNMR信号を基に,高分子固体における Xeの存在し得る微小空間を検討する価値は高い

と考える.ここで紹介する 12今XeNMR法は, NMRの実験としては溶液NMRのテクニック

を使い,議論する対象は固体状態の物質であるところに,特徴の一つがある.

[12~eNMR化学シフトについてl 一般に通常の有機高分子では, 129XeNMR化学シフト値

8は, δ=δ(8)+δ(Xe)と表現できる. 8(S)は Xe原子とそれが存在する空孔内壁との相互作

用の項であり空孔サイズが小さいほど大きくなる.8(Xe)はXe原子同士の相互作用の項で,

Xe密度(濃度)とともに直線的に増加する.Jamesonらは気体状態の8を評価し, 0.54ppm/atm

(25t)の低磁場シフトを報告した. 8(S)値は, δの実測値を Xe濃度 Oに外挿すれば得られ,

一 7-

Page 10: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

これから空孔サイズを評価できる.実際, Fraissardらは,種々のゼオライトの空孔サイズ

と倒的値の相関について,空孔中の Xe原子の平均自由行程距離を用いて次式を導出した.

2.054 o(S) = 243x一一一一一(1)

2.054+λ

入は平均自由行程距離を表す関数であり,空孔形状に依存する.空孔が球状またはシリンダ

ー状である場合,入はそれぞれ(2)式および(3)式で表される.

λ一(ds-dx.)一一

2 (3)

dxeはXe原子の vander Waals直径(=4.4A), dsおよびdcはそれぞれ球状およびシリンダー

状空孔の直径(A)である.Xeが収着した高分子試料中の Xe密度(存在量)に対する8の関係を

調べれば8(S)値が特定でき,これから試料内に存在している微小空間或いは微空孔のサイ

ズを評価する解析手法が考案できる.

λ=dc-dx. (2),

、-

、-

Iガラス状高分子]高分子における気体収着機

構は,ゴム状高分子では液体と同様 Henry員IJに従

うのに対し,ガラス状高分子では収着した気体の

一部がミクロボイドと呼ばれる微空孔に収納さ

れるとするこ元収着モデ、ルで説明される.即ち

Henry則に従う収着サイトと Langmuir型収着サ

イトの共存モデルである. Langmuir収着サイト

の飽和定数(CH')は, ミクロボイド総量を示す尺

度と解釈され,ミクロボイドは非平衡状態である

ガラス状高分子の未緩和体積に対応付けられる.

多くの実験事実がこのそデ、ルを支持しているが,

ミクロボイドのサイズやその分布に関する知見

はCH'からでは汲み取れない.近年,陽電子消滅

法による微空孔サイズやその分布の評価方法が提案されている.しかし,完成の域に達し

たとは言い難く, l29XeNMR法による相補的議論が必要不可欠であると強調しておきたい.

ガラス状高分子(ポリスチレン伊S),ポリフェニレンオキシド伊問),ポリカーボネート

伊C),テトラメチルポリカーボネート(TMPC))の Xe収着等温線は二元収着モデ、ノレに従っ

た.即ち,収着した Xeは試料の Henry及びLangmuirの両収着サイトに存在する.しかし,

12~e NMRスベクトノレには,常に対称性の良い単一ピークが観測されたので,両サイトに

ある Xeは互いに速い交換をしている.一方,高圧,すなわち収着量が増加するとともに

129XeNMR化学シフト値は低磁場シフトした.この低磁場シフトは試料中の Xe密度の増加

に帰せられる.先述したが高分子では, 129XeNMR化学シフト値 δは, δ=8(8) + 8(Xe)と

表現でき, Xe密度に比例する.実際,液体やゴム状高分子の場合, 8値は圧力とともに直

線的に低磁場シフ卜する.これは Xe密度(収着量)と圧力が線形関係、(Henry則)にあるから

である.これに対し,ガラス状高分子では圧力とともに線形には低磁場シフトしなかった

(Fig.1).これは両サイトにおける収着量の増加に対応した Xe密度の増加の度合いが,互い

30 10 20 C (cm3STP/cm3

polymJ

Fig.1 The plo旬。f句 eNMRchemi儲 Ishift against total so巾tionamounts of Xe into glassy polymer membranes.

f ps pc

ノ 〆

180

0

240

230

220

210

200

190

{Eaa)gzω百三E曲

ZUMLEZ由一xaNF

-8-

Page 11: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

225

215

o 5 10 15

C, Co, CH (cm3STP/cm

3 POlym.)

220

E 235 c.

== 三 230ω 帽U

E a z ω 白tE Z 曲

>< 詩

Fig.2 Jhe plots of the observed and calculated 129Xe NMR chemi国 Ishifts against total,

Henry-site and Langmuir-site so巾tionamounts into PS membrane, respectively

Table 1 The values of glass-transition tempe~ture Tg, Langmuir sorption白 pacitiesCH¥'''';;:IXe NMR chemical shifts O(S)H and mean pore size of glassy polymer memb悶 nes

Sample Tg CH' O(S)H mean pore slze 1'"Xe NMR PALS

PS 98 4.9 205.4 5.14 5.76 PC 160 13.3 199.7 5.28 5.88

TMPC 196 17.4 169.7 6.18 6.40 PPO 216 19.1 165.4 6.34 6.56

Tg : in oc, CH' : in α"T1~STP I cm~ poIym O(S)H・Inppm., mean p口問 size:in A

に著しく異なるためであるσig.2参照).事実,

ム状高分子では収着量(または圧力)に対するシフ

ト量は,ガラス状高分子におけるそれよりかなり

小さい.これについては後に詳しく述べる.

Henry, Langmuir両サイトにおいてそれぞれ

o = o(8) + o(Xe)の関係が成り立っとし,速い交換

のため両サイトの Xe収着量分率に従った位置に

実測ピークが現れるとし、う仮定に基づき,各サイ

トの化学シフト値の圧力依存性を求めたσig.2).

次に Langmuirサイトの化学シフト値ゐを同サイ

トの収着量 CHに対してプロットし, CH 0に外

挿した.この外挿値はミクロボイド内壁と Xeの

相互作用のみによる化学シフト値, O(S)Hであ

り, ミクロボイドの平均サイズに対応づけら

れる(Table1).結果は陽電子消滅法伊'ALS)によ

る報告値と概ね一致しており, 129Xe NMR化

学シフト値からミクロボイドの平均サイズを

評価し得ることがわかった.

また, PPOについて温度を下げて同種の検

討を行ったところ,ミクロボイドは温度の低

下とともに直線的に増大し,ある温度以下で

はほぼ一定となる事実が確認された.

,画、

100

Fig.3 The plot of o(S) for PMP membrane vs

degree of αysta附nity

Degree of Crys句IIInity(%)

Mean pore slze = 4.54A

80

227 ppm

60 40

Iポリ (4・メチル↓ベンテン)]12~e NMR法による

高分子膜中の微空孔サイズ評価法の精度を確認す

るために,気体を収着可能な結晶構造をもち,そ

の結晶構造から収着サイトのサイズが見積もれる

高分子,ポリ (4・メチル・1・ベンテン)(P恥1P)を用い

て検討した.種々の結晶化度を有する PMP膜を

調製し, Xeを収着させて NMR測定を行った.実

測の化学シフト値からo(S)値を外挿法により求め,

これを試料の結品化度に対してプロットしたとこ

ろ,結晶化度とともに線形に低磁場シフトした

(Fig.3)ので,結晶化度 100%に補外して PMPの結

晶相のo(S)値,約 227ppmを得た.この値からシリ

ンダー状を仮定して平均空孔サイズを見積もると,

およそ 4.54Aとなり,これは PMPの結晶構造と矛盾しない値で、あった.

20

270

250

230

190

170

0

210

(Eaa}(包由

,町、

iゴム状高分子lゴム状高分子は,ミクロボイドがない,即ち時間及び空間的に固定され

た微空孔がありえない系であるから,ここに存在する 129Xe核が示すN恥R 信号はガラス状

-9-

Page 12: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

高分子の場合とは異なると予想される.アクリロ

ニトリループタジエン共重合体ゴム(NBR)を用い

て検討した.NBRのXe収着等温線は原点を通る

直線であり, Henry員IJに従っている. Xe溶解度

係数はアクリルニトリル(AN)含率の増加ととも

に低下し, 129XeNMR化学シフト値は収着量の増

加とともに僅かに且つ線形に低磁場、ンフトした.

従って,ゴム状高分子におけるo(S)値は,収着量

0(=圧力 0)へ直線外挿した値とした.溶解度係数

並びにo(S)値は各試料膜の自由体積分率σFV)と

非常に良好な相関関係にあったσig.4)・ゴム状高

分子では, 129XeNMR化学シフト値はその系の自

由体積もしくは密度を知る良いパラメーターの

250 305

2.5 0 ..

n

2.0えω →

1.5 ~ ヨ

1.0 0

ヨ0.5 ~

nunu

a『

qd曹

4

4{Eaa} U; 220 。。

210

200

0.14 0.16 0.18 0.20 0.22

FFV

Fig.4 The relationships between 12干XeNMRchemical shift, O(S) (・)or Xe solubility coefficient, kD (・)for NBR membrヨnesand fractional骨田 volume,FFV.

、、,〆ーっと結論付けられた.

なお, NBRで得られたo(S)値はガラス状高分子におけるO(S)H値よりも低磁場で、あったの

で,仮に空孔サイズに換算すれば,これはガラス状高分子のそれよりも小さいことになる.

温度上昇によりガラス状態からゴム状態に変化するのであるから,一般論としてゴム状高

分子の方が自由体積は大きい.にもかかわらず個々の空孔サイズ、は小さいとするなら,必

然的にその個数が多いことになる.これは,言い換えればゴム状態での活発なセグメント

運動が 129XeNMR化学シフト値に反映されていると解釈できる.つまり,活発なセグメン

ト運動の故に高分子鎖との衝突頻度が上がり,高分子-Xe相互作用。(S))の寄与が Xe-Xe

十日互作用(O(Xe)項)の寄与を相対的に上回った結果として, Xe同士が衝突する確率が低下し,

収着量の増加に対する低磁場シフトの割合がガラス状高分子の場合に比べて概ね一桁小さ

くなったと考えられる.

以上, 12~e NMR法は,高分子膜の微細構造,とりわけ系内に存在する微空孔や自由体

積に関する情報を引き出せる手法であることが確認できた.講演当日は,各種高分子中に

ある Xeの拡散挙動に関する解析・解釈についても触れる予定である.

I参考文献l 、-

1. T. Suzuki, M. Miyauchi, H. Yoshimizu, Y. TsujitaヲT.Kinoshita; Characterization of microvoids in glassy polymers by means of 129Xe NMR spectroscopy, Polymer人 33,934・938(2001).

2. T. Suzuki, M. Miyauchi, M. Takekawa, H. Yoshimizu, Y. Ts吋ita,工 Kinoshita;百四

characterization ofthe microvoids in poly(2,6-dimethyl-l,4・phenyleneoxide) by means of12~e NMR spectroscopy, Macromolecules, 34, 3805・3807(2001).

3. T. Suzuki, H. Yoshimizu, Y. Tsujita; Characterization ofMicrovoids in PPOIPS Polymer Blend by means of 129Xe NMR Spectroscopy, Desalination, 148, 359・361(2002).

4. 工Suzuki,T. Tanaka, M. Nakajima, H. Yoshimizu, Y. Tsujita; Characterization ofthe Cavity in Poly(4・methyl-l・pentene)Crystal by Gas Permeation and 129Xe NMR Measurements, Polymer J., 34,891 (2002).

5. 129XeNMR法による高分子の固体構造解析,吉水広明,鈴木智幸,辻田義治,輝雄学設嘉 60,P-498・503(2004).

-10-

Page 13: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

,町、

2HのNMR;ラセン高分子のダイナミクス

1.序

(jt海道大学工学研知ヰ)平湖奴

E-mai1 ; [email protected] 電話:011-706-6640 FJ収 :011-706-6859

回体重水素NMRパラメーターは、主に重水素核と電場勾配但FG)テンソルとの四極子相互作

用に支配されている。ト3)EFGは核自身の性質なので、重水素核部位の配向を通して分子運動や秩

序度が事錯すできる。重水素核の四極子相互作用の大きさは約200kHzであり、その部位の局所的な

分子運動を極めて広範囲の時間領域 102""""'10-12

Sにわたり調べることができる。

ここでは固体重水素NMRの特徴と、ラセン高分子の主鎖と倶IJ鎖のダイナミクスについて固体重

水素NMRを用いて角軌庁した例を紹介する。

2.国体重水素NMRスベクトルの特徴

長1の重水素核は電気四重極モーメントを持ち、 EFGと相互作用して四極子相互作用を生じる。

スベクトルの周波数VIま次式で表される。

3 V=Vo 土 (8/~vρcos2s-I-ηs向 co山(I)

ここで、 VJまラーモア周波数、 vQ=e2Qq/hは核四極子相互作用定数、 ηは非対称定数、 (α.,13)は EFGテンソル主軸と静磁場とのなす角度で、ある。脂肪族のC-2Hはη田 Oなので、次式が得られるo

a v=vo±(wpVQ(3dp-l)(2)

ω式はvが静磁場と C-2H軸とのなす角戸のみに依存することを示している。分子がrigid状態の粉

末誤料ではFig.1の左側一番下に示す典型的な線形が現れる。スベクトルはv。に対して対称で、角

部分 (s=9{)0に対応)の間隔は四重極分裂幅企η=(314)vQと呼ばれ、運動モードに特徴的な値を示

す。左右の裾部分(戸 =00に対応)の間隔は

(312) vQで、ある。脂肪族c・2Hのもは約 170kHz

なので、スベクトルはFig.1に示すように250

kHzにも及ぶ。この広い観測幅と短いおの信

jump rate (Hz) jump rate (Hzl

10M 1¥ 11 10M

,町、 号を観測するためには、通常四極子エコー法 ノV¥ M KA M

(則一τ-90;-τ)で行う。 一一一 一---' '---一一

固体重水素NMRスベクトルは著しく分子運

動の影響を受けその線形が変化する。しかも運

動のモードと速さに鞘蜘句な線形を示すので分

子運動を詳細に検討することが可能である。典

型的な例として、Fig.1にπフリップ運動する

芳香環(左)と 3-sitejumpするメチノレ基(右)

の計算スペクトノレをjumprateに対して示す。

両者ともjumpra也が VQに近い場合、その線形

が大きく変化し、しかもその強度が著しく減少

することが特徴である。この場合、四極子エコ

ー法のエコ一時間 τを変えると線形も変化する

一~へ~一一

1伺

10k

手 1国

一一ー一一-~へ一一一一一一ー10k

1k

Fig.l Calcula飴d2HNMRspぽ trasぽ aphenyl ring(J.eft)

and a methyl group恒ght)時四国thejump rate.

-11

Page 14: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

3.ポリペプチドの主鎖と側鎖のダイナミクス

位置選択的に重水素化したラセン高分子であるポ

リペプチド、の主鎖と側鎖の動的挙動について固体重

水素NMRを用いた検討した。ポリペプチドの主鎖

は水素結合による α-helixや s-sheet構造のコンフ

ォメーションをとり rigid状態にあるが、側鎖はそ

の結合軸回りの多重内部回転自由度が存在する。

( 3a) メチル基

Fi.g.2に側鎖末端に重水素化メチル基を持つ左巻

きω-helixの poly{s-methylL-aspar回te)(PMLA

-ωと右巻き α-helix の poly~γmethylL-glu回mate)

(PMLG-ωのスペクトルの温度依存性を示す。心低

温ではPMLA-daは企%が38kHzの軸対称なスベ

クトルを示し、メチル基の速い回転を示している。

線形は 50旬以上から少しずつ変化し、シグ、ナル

のSIN比も悪くなる。これは%程度の運動が存在

することを示している。加えて、 I1vqはこの温度

領域で38から34kHzに減少しj覇制直の42kHz

よりも小さく、かなり速いlibrationの存在も示唆

している。

Fi.g.3に T1の温度依存性を示す。スベクトルの

T1は異方性を示し、戸 =0。成分の値が 90。成分の

約半分なので、メチノレ基の回転が 3-sitejumpで 0.01

あることを示している。この運動の相関時間は

-950Cでは 15psで、活性化エネルギーは 6.8

kJ/molである。これは酸素原子に結合したメチル

基の立体障害が小さいことを示している。 -400C

以上から Tlは直線からずれ、しかも I1vqも減沙、す

るので他の側鎖運動が存在することを示唆している。 Cs-Cy軸はCa軸に対して仕出国にあり、この

軸の回りの運動は線形に変化を及ぼさないので、高温における線形の変化は Cn-C~軸の運動に起因

する。この運動の速さはkHz程度で回転角が約 110。であることが、計算スベクトルとの対比から

分かつた。

Fi.g.2(b)はPMLA-daより側鎖メチレン基が一つ多い右巻き α-helixのPMLG・むのスAクトルの

温度依存性を示す。線形は室t匙 I下では P阻.A-dsと似ているが、室t臨1上から著しく変化し、高

温ではsingletになる。これはメチル回転に加えて、大振幅で40世Iz以上速い運動がPMLG側鎖

に生じていることを示しており、ガラス様転移が室温付近に存在することに対応している。室温以

下で T1の異方性が観測され、メチル基の回転は3・sitejumpである。温度上昇に伴い、 T1の極大値

と極小値がそれぞれ100Cと1300Cに観測され、 C3軸自体の運動の存在を示している。 1300Cにお

ける相関時間は約5nsである。

ので、付加的な情報が得られる。 jumprate < 103 Hz、

>107Hzでは、線形はもはや変化しないので、前者

では二次元交換法@、後者では巴から分子運動につ

いての情報が得られる。

-12←

(a)PMLAーの (b)PMLGーの

、、--

Fig.2 Temperature dependent line shapes of

PMLAdaandP阻 sda

-」

FO

。。。e.

h

F

E

E

0.

oo--

0

0

・0. -0

• 0 • 0

0

・・・。O R

g

・0

s

• • ー,。削LA-<I,・PMUHI,

. s 1α)(}ff I K"'

Fig.3Tem戸田raturedependent Tl of

F阻 A也血dP阻 β 也 、-

Page 15: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

(3 b)フェニル環

フェニル環を重水素化した poly札-phenylalanine)

(PLF司ds)の温度依存性をFig.4に示す。。環の対科軸回

りの回転により o位と m位の線形は変化するが、 p位

は影響されず rigid状態の線形を示す。従って、フェ

ニル環のスベクトルはp位の rigid状態の線形と運動

するo位と m位の線形が重なったものになり、それら

のZも異なる。

-1000Cの線形はほとんどrigid状態に近いが、中央

部分に32kHzの企Vqがわずかに観測される。温度上昇

に伴い、この成分が成長する。この線形の変化は環が

π血p運動していることを示している。 65-1300Cの

線形は 650Cと同じなので、 Cα一Cs軸回りの大樹冨運

戸、動は生じていない。観測スベクトノレを説明する π血p

運動の相関時間は分布しており、 220Cでは平均の相

関時間は1.2x10喝sである。

(3 c) poly(γbenzyl L-glu回mate)( PBLG)の仮l鎖

PBLGの主鎖は右巻き α-helixで、その固件靖造は棒伏の α-helixが擬六方晶を示し、側鎖はガ

ラス様状態にあり、その込は室温付近にあることが知られている。側鎖の y位(PBLGyd!0、 E位(PB凶 td!0、フェニル環(PBlβωをそれぞれ重水素化した謝ヰの温度依存性をFig.4に示す。 6)

200Cにおける PBLGdsの線形はPLFdsと同様で、回転軸の周 \.~C. 1/0

りにπ血pJ劃していることをノサo .1vq 1:1:別Izで、 P出の yvkoreEJ 値より小さいので、より樹齢大きなlibrationが存在する。蝦 PB凶 糊 f 、上昇に伴し、続形は著しく変化して、 1加。 Cでは半値幅 10阻 zの ¥戸t

singletとなり、環の回転軸自身がπ血p ωPB凶判 (b) PB凶出

とH凶猛onに加えて、大樹冨の速し運動

をしていることを示す。これは、完以上

の温度では、環は側鎖末端にあるので多

重内部回転運動によって生じたものであ

る。

PBLGdsシグ‘ナルの積分強度の温度依

存性をFig.6に示す。-400Cで極外値を示

し、約到。Cで最/Jvj直をとる。これらは、

それぞれπ血p運動と回転軸自身の運動

に対応する。 Tl値と線形から求めた200C

におけるπ血pの平均jump-rateは2.3x

105Hzである。

PBLGt<hの線形と積分強度の温度依

存性をFig.5と6に示す。 C(2H2軸と

<;-CTl軸は0,-<;軸に関して共通の内部回

転軸なので、 PBLGtd2のスベクトルか

ら環の分子運動についての情報も得られ

る。泊。Cではrigid状態と異なる線形を示し、 H加 tionの存在が存在する。温度上昇lこ伴し、線形が減

少し、積分強度は約到。Cで最小{直を示す。さらに温度を上げると、線形は血19letになり積分強度

,町、

(0) (b)

J 八Jc:ULn ,,,,.fL J七'''~YL∞,,~仁1

2曲A o

kHZ

-200 t

200 AO出

-,∞

100-- 創.".

Fig.4百mperaturedependent line shapes of

PLF、'dso.eft)and the calculated spぽ tra.

-~I~I

(c) PBLGむ

~ ゴしづLA yへ」

Fig.5 Temperature dependent line shap凶 ofPBLG.

調。岨

.出

-13-

Page 16: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

は回復する。一方、40-ω。Cの温度領域で四極子

エコーの τ依存性が観測され、強度が働j、値をと

ることと一致する。

PBLG~d2 の T1の温度依存性を Fig.7 に示す。

温度上昇に伴し、 T1値は減少し、室温付近から減少

割合が急になり、 1100Cで最小{直をとる。

PBLGyd2の線形と積分強度の温度依存性をFig.

5 と 6 に示す。 230C では L1Vq i.J~ 117kHzのほぼ軸

対称な線形を示し、印。Cでは 11加Izに減少する。

積分強度も減少し、約 550Cで最小値をとる。線

形はこの温度以上から大きく変化する。との結果

は、 y位に 105Hz程度の運動が生じていることを

示す。さらに高温では隷形は doubletを示し、

1300Cでは 12kHzのL1vqで、あり、高速の大振幅運

動を示している。

積分強度の温度依存性はPBLGy也、 PBLG~d2、

PBLGrl5の三者でほぼ同じ傾向を示し、しかも極

小値がほぼ同温度の 500Cで生じていることは、

PBLGの側鎖に沿って同じ速さの運動が生じて

いることを示している。更に PBLGyd2の Tlは

PBLG~ぬとほぼ閉じ傾向を示す。とくに高温の

110-1200Cで同じ極小値を示すことは、共通の

の分子運動が側鎖の離れた位置で生じていること

を示している。得られた平均の速さは1100Cで約

1.0←・ 。-・..-0

E

。0.8

-・・・・~企 .・.d.d. .-. d.a a a 0 ad.

.d. -d.

d.. d d. 。。。企

0.2トoPBLG鴨 2

a 君 00。~J, • PBIβζ.d

2

企 PBIβ-d,

。。L-1∞ -50 。 50 100 150

T/OC

Fig.6 Temperature dependent intensities of PBIβ.

、、,〆

0.1

0 • 0

0

・問、 0 • ト

0.01 d

64MHzである。

(3 d)主鎖

Ushaらは右巻きα-helixの PBlβ 主鎖のアミ

ド重水素の線形と温度依存性を測定し、N斗f軸を

含むペプチド平面が室温で 16psの速さで、角度が8-12度のlibrationしていることを示した。司

0.001

2 3 5 6 4

lOOOlT IK1

Fig.7τ切nperaturedependent Tl ofPBLG.

固体重水素NMR を用いてポリペプチドの線形、強度、~からそのダイナミクスを検討した。当 )

日は他のラセン高分子や溶液系に対する適用例も報告する予定である。

Referenαぉ

1. H. W. Spiess,Adv. Polym. Sci., 66, 23(1985).

2.R.R.油ldand R. L. Vold,Adv.焔gn.Reson.,16,85(1991).

3. K. Schmidt-Rohr and H. W. Spiess, Multiaimenswnal Soild-S.ωe NMR and Polymers,A伺 demic炉問s,

ch.2血 d7,1994.

4.T.日raoki,K. Tomita, A. Kogame, and A. Tsu回m誼,Polym.J., 26, 766(1994).

5. T.阻raoki,A.Kogame,N.Nおhi,andA.Tsutsw凶,1.Mol. Strnc., 441 , 243(1998).

6. T.回raoki,S. Kitazawa, and A. Ts山田ni,Ann. Rev. NMR Spectrosc., 53,297(2α>4); T.回raoki,Mαfem

ルfagneticResonance, Ed. G. A. Webb, Springer, p.617-623, 2∞6.

7. M. G. Usha, W. L. Peti∞las,血dR.J.Wi也:bort,Bi町佐mis的,30,3955(1991).

一 14-

Page 17: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

1.はじめに

7Liの NMR ー リチウム電池材料への応用

東京工業大学理工黒木重樹、和田慎太、中山将伸

e-mail:[email protected]

リチウムイオン二次電池は、層状化合物の正極・負極間でリチウムイオンをやり取

りすることにより充電と放電が可能になる電池である。充放電メカニズムは、正極か

らリチウムイオンが脱離することにより充電、挿入することにより放電が起こる(負

極では逆の反応が発生している)。リチウムイオン二次電池の基本性能は理論的には

正極・負極の組み合わせによって決定されるが、実際には電解質の選択が電池性能に

大きな影響を与える。その電解質として、現状では有機電解液が主に用いられている。

しかしながら、有機電解液を用いた場合、その高エネルギー密度に由来する発熱性、

電解液の自己燃焼性が電池の安全性に重大な影響を及ぼす。その代替候補としてイオ

戸、 ン伝導性ポリマーが有力となってきている。

イオン伝導性ポリマーは固体状態でイオンを拡散できる機能性材料であり、電気化

学デ、パイスに適用することによって以下のような優れた特長を得ることができる。

電解液と違い漏液がなく、耐久性が向上する。

デバイスの薄型化、大面積化が可能となる。

デ、パイス破損時に電解液の飛散がなく、安全性が向上する。

イオン伝導性ポリマーは固体でありながら、そのマトリックスの性質上柔軟性に富

み、無機固体電解質の場合において問題とされている電極材との界面抵抗が緩和され

る。また無機物質に比べ成形性の自由度が高い。イオン液体と比べても安価で、リチ

ウムイオン二次電池における有機電解液の代替電解質として最も実用化に近いと考

えられる。さて、ポリマー電解質中ではLi塩は部分的に解離しているため、リチウム

イオンと対アニオンの2種類のイオンが存在する。実際にポリマー電解質をリチウム

イオン二次電池に組み込んだ場合、電荷のキャリヤーとなるのはリチウムイオンのみ

である。従って、イオン伝導性に加えてリチウムイオン輸率の向上はリチウムイオン

ベ 二次電池の性能向上に本質的に重要である。ここでは、リチウムイオン二次電池にお

けるイオン伝導性ポリマー中のリチウムイオン輸率の評価法として磁場勾配NMR法

を用いた例を示す。

2. リチウムイオン輸率と Li塩の解離度

ポリマー電解質中のイオンの輸率を求める方法としては交流インピーダンス法、直

流分極法、 Hittorf法、磁場勾配 NMR法などが知られている。例えば、直流分極法

と交流インピーダンス法を組み合わせた方法は、直流分極直後(t=O)における系を流れ

る初期電流量を知る必要があるが、分極に寄与する成分には緩和時間がミリ秒以下の

寄与もあるため、現在の計測装置のスペック上で正確な初期電流の値を得ることは技

術的に困難である。曽於例外にも、電極として用いている Li金属が実際はアニオン

や可塑剤等と反応しているため Liの泳動のみによる電流値が得られない等の問題が

-15-

Page 18: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

あり、輸率の測定精度に問題があると考えられる。磁場勾配 NMRでは、リチウム核

の動きを直接測定することができるため、核種ごとの拡散係数を求めることができる。

輸率と解離度の導出法

先述したように、 NMR測定を用いることによって電気化学測定では得られない

個々のイオンの挙動に関する情報を得ることが出来る。電気化学測定で観測される電

流はカチオンの運ぶ電流とアニオンの運ぶ電流の和であり、カチオンとアニオンを

各々区別して観測する事は原則できない。それに対し NMR測定では、測定に際して

適当な核種を選択する事で、個々の核種の拡散を議論できる。しかし一方で NMR測

定ではイオンの電荷の有無、つまりイオンなのか解離していない塩なのかを区別する

事が出来ないという難点がある。そのため NMR測定で得られる核の拡散係数は、必

ずしもイオンの拡散係数をみているわけではなく、系中の全ての状態にある原子核の

拡散についての平均値となっている。以下では、 NMR測定より得られた拡散係数と

Liイオン輸率や Li塩の解離度の関係について述べる。

電解質中のリチウム塩 LiXのリチウムイオン輸率 tLi+lま

、‘ー〆

一X

一rt

+-μ

一+

rt

一同

令-

L

-71

4守

vL

,,z・

(1)

と定義される。 ここで 1ムおよび hはそれぞれリチウムイオンとアニオンが運ぶ電

流である。これを以下の(2)式を代入すると、

四ー

(2)

十 f.iι-u' μu+ +μx-

(3)

となる。ここで、μL爪仰には各イオンの移動度を表す。さらに、イオン濃度が低くイオ

ン聞に働く相互作用が無視できるときは

D = jiRT (アイン、ンュタインの関係式) (心zF

、』〆

より

t."=~Li+ Lf DU++DX

(5)

と表すことが出来る。 DLi+、Dxーはそれぞれリチウムイオンとアニオンの拡散係数で

ある。この式より拡散係数から Liイオン輸率 tLiーチを求めることができる。(但し、NMR

測定によって得られる拡散係数は自己拡散係数であり、この値から求められる輸率は

電場の存在しない静的な条件での並進拡散速度の比であり、正確なイオン輸率と言え

nhU

Page 19: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

るかどうかは議論が必要なところである。)Watanabeらはこの(3.4)式を用いて NMR

より得られた拡散係数から見かけのイオン輸率を算出している[1,210しかし、上述の

ように NMRより得られる拡散係数は実際にはイオンの拡散係数ではなく、解離した

イオンの拡散と解離していない Li塩の拡散の平均値である。その値は Li塩の解離度

αを用いて

DLi =αDLi+十(1ー α)D(6)

Dx =αDx-+ (1ーα)D (7)

のように表される[3]。ここで DLi,Dxは NMR測定より得られた拡散係数、 Dは解

離していない Li塩の拡散係数である。ここでは見かけのイオン輸率を tLlとし、

t" = Du Li一DLi+Dx

~

(8)

と定義する。この tLlは解離度α=1のときに tL1= tLlチとなり、 αが小さくなるに従って

その値は 0.5に近づく。

また、 (6)式、 (7)式を両辺足し合わせると

Dr; +Dx =α(Dr;+ + Dx-)+ 2(1ー α)D

となる。ここで DL1++D:dこ

Z2lぞαF2

_ cαF2{ フフ l

σ=一一一一一D=一一-Iv.z刀 +vz~D I RT RT、 ーー -/

(9)

(10)

を代入すると

い )D=~(DLi +Dx芸 dimp)‘、‘,r

唱EA

-A

,,s‘、,画、

が得られる。 cはLi塩濃度、白血pは交流インピーダンス法によって求められるイオン

伝導度である。イオン輸率 tLi+1土、 (6)式、 (7)式より

t 一 DLf 一 Du一(1-α)DLi+一Du++ Dx-一Du+Dx -2(1ーα)D

(12)

と表されるため、(11)式を代入してイオン輸率を求める事が出来る。

さらに、 Watanabeらは見かけの U塩の解離度(=日とする)についても言及してお

り、交流インピーダンス法により求められるモル伝導度で、あるAimpと、

^NMR =主(Dr;+Dx) RT (13)

によって表されるモル伝導度で、あるANMRを用いて

-17-

Page 20: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

Aimv/ _ _. Dr;+ +D α(DLi' +Dx-) β=tmp=α-Lr.-x-IAM肌 DLi+Dx α(Dν+Dx-)+判1ーα)D

(14)

と表している。この式で、はANMRを電解質中に存在する全ての塩が解離しておりイオ

ン伝導に寄与しているとしたときの値とみなしている。日は、α→1のときp→αとなる。

、ーー〆

、--

3. イオン伝導性ポリマー中のリチウムイオン輸率と解離度

すでに述べた手法基づき、実際のイオン伝導性ポリマー中のリチウムイオン輸率と

解離度を算出した。用いたポリマー電解質試料はポリエチレングリコールモノメタク

リエート、ポリエチレングリコールジメタクリエートと光重合開始剤を混合し、それ

に可塑剤を加え、さらに成形性をよくするため分子量 100万の PEOを加え、最後に

LiN(S03CF3h (LiTFSI)を添加、これを光重合することにより得た。以下試料は、加

えた添加剤により、 P-'I、FSI-X (0:可塑剤無添加、 B9 boron-ester(n=9)、A9:

Al-eter(n=9)、P11: PEGDME(n=l1))と表記する。

Fig.lは各試料中の 7Li、19F拡散係数のア

レニウスプロットである。全ての試料、核種

において絶対温度の逆数に対して良い直線

性を示した。また、B-esterに比べ PEGDME

を添加したサンフ。ル中の方が、すべての核種

の拡散係数について高い値となった。これは

イオン伝導度の測定結果と一致する。さらに

全ての試料で 7Liより 19Fの拡散係数が大き

くなった。

Fig.2はP-TFSI-B9の 7Li、19F、lH核の

拡散係数のアレニウスプロットである。 lH

核は良い直線性を示し、さらに全ての温度で

19F核の値とほぼ一致している。

7Liと19Fの拡散係数の比から見かけのリチウムイオン輸率むを算出した。その結

果を Fig.3に示す。これより、 B-esterやAl-esterを可塑剤として用いることによる

むの向上は見られなかった。また、iLiは温度に依存せず、どの温度でもほぼ同じ値

を示した。

続き、見かけの Li塩の解離度βを算出した (Fig.4) 0 PEGDMEを用いた電解質に

比べ、特に B-esterを用いることによって解離度防2大きく向上していることが分か

る。これらの結果より、 B-esterのルイス酸性効果は有効に働き Li塩のアニオンと相

互作用して Li塩の解離を促していることがわかる。しかし、ルイス酸を中心に持た

ない P-TFSI子11とP-TFSI-B9との間にリチウムイオン輸率の違いがなかったこと

から、 B-esterはトラップしているアニオンごと系中を移動しており、その結果輸率

が上昇しなかったものと考える事ができる。これはアニオンを表す 19Fの拡散係数と

+口。。

Fig.l

3.2

Arrhenius plots of di血lSlon

∞e伍cien旬 ofP-TFSI -x.

a×+ロ

o

3.0 3.1 r'f1(r刊が

A

×

+ロ

O

+ ロ

O

2.9

一9.5

-10.0

KJu nu -

(旬、EVG

由。一

110

11.5

一 18-

Page 21: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

,画、

B-esterを表すlHの拡散係数がほぼ一致

し、リチウムイオンを表す 7Liの拡散係

数のみ離れた値をとることとも一致する。

NMR測定から B-esterのルイス酸性

効果により、 Li塩の解離を促すことが分

かった。しかしながら、期待したほどの

リチウムイオン輸率の向上効果は得られ

なかった。その原因として、アニオンを

トラップした B-ester自体がポリマー電

解質中を拡散していることが挙げられる。

今後、アニオンをトラップした B-ester

の並進拡散を抑えるような分子設計を行

えば、リチウムイオン輸率の向上が可能

であると思われる。

0.8

0.6 ..J

場ーO

合同V

E---rE

A『

4

n

u

n

u

*

3 3.1 ~1 I 11 "'..3 TJI" ~l T' / 1O-~ K

,圃、

Fig.3 Arrhenius plots oflithium

transference numbers of

p-τ官、SI-X.

o P-TFSI-B9 IJ -10 '" P-TFSI-B9 F

x P-TFSI-B9 H

イ¥10.5 × 巴の

A

呂送

凸ol) O ×

F・O叫 -11 A 。 O

ー11.5O

2.9 3 3.1 -1 司3T'/10-'>K"

Fig.2 Arrhenius plots of

出血lSloncoe血cientsof

3.2

P-TFSI-X.

O

O

o I

0.8

qユ A

0.4

0.2

3.2

。D

マム

V

A

マA

3.2

3 3.1 -1 J 1 1'¥-3 T,,.1 r / 10-~ K

Fig.4 Arrhenius plots of

dissociation rates of

P-τ'FSI-X

文献

[1] S. Tabata, T. Hirakimoto, M. Nishiura, M. Watanabe, Electrochimica Acta,

48, 2105 (2003).

[2] H. Shobukawa, H. Tokuda, S. Tabata, M. Watanabe, Electrochimica Acta, 50,

1 (2004).

[3] M. Videa, W. Xu, B. Geil, R. Marzke, and C. A. Angell, J Electrochem. Soc.,

148, A1352 (2001).

-19←

Page 22: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

170,25Mg,43CaのN孔1Rーガラス・鉱物中の低感度核種の構造

[緒言】

(新日本製織先端技術研究所)金橋康二

(E-mail: kanehashi.koi i(a),nsc.co. ip)

TEL: 0439-80-2264 FAX: 0439-80-2746

無機酸化物系のガラスや鉱物は、地質学的に重要な研究対象で、あるのと同時に、その優

れた物理的・化学的特性から、産業上の利用価値も高い。核種別の情報が得られ、低結晶

性の材料解析に対しでも有効である m伎の特徴を活かして、ガラスや結晶鉱物に構造に

関して、これまでに多くの国体 N乱伎を用いた報告がなされてきた。その中心は、 29Siや

27Al等 1)、感度的に比較的“測り易い"核種がターゲットとなっており、ガラスや結品の

骨格構造についての知見は蓄積されているものの、その他の重要な核種である 1702)•

25Mg3) . 43Ca4)等の低感度核種に関しては、その“測り難さ"から、報告が限られているの

が現状である。

今回の研究では、同位体濃縮した CaO・MgO・Ab03-Si02(CMAS)系の同組成のガラスお

よび結晶を合成し、低感度核種である 170・25Mg・43Caの構造情報を得た明。さらに、冷

却速度の違いが化学構造に与える影響について検討したの。

[実験】

韮担全盛170、25Mg、43Caが同位体濃縮された CMASガラスおよび結品を合成するために、

4JCa(170Hh {43CaC03の脱炭酸および HPOによる水和を経て合成}・25MgO{購入品}・Ab03

{AIO(OH)とH2170の水熱反応および脱水を経て合成}・ Si1702{SiC14とH2170の反応によ

り合成iの各ラベル体を、典型的な高炉スラグ(製鉄プロセスで発生する副産物)の主成

分 組成 (43.0 wt% CaO ・7.0 wt% MgO - 15.0 wt% Ab03 - 35.0 wt% Si02

Ca3.61 Mg082Ah 38Si275012 00) となるように秤量・混合し、 15000

Cで 30分溶融させた後、急

冷することによってガラスを、徐冷することによって結晶をそれぞれ得た。

主血盟u亙170 (J= 5/2)、25Mg(J = 5/2)、 43Ca(J= 7/2)の固体 NMR測定には、 JNM-ECA・700(16.4

T)を用いた。それぞれの共鳴周波数は 170: 94.90 MHZ、25Mg: 42.85 Hz、 43Ca:47.11 MHz

である。 MASスベクトルの測定には、シングルパルスを用い、フリップ角は 180

とした。

また、いずれの核種も半整数スピンを有する四極子核であるため、 z-filter型 7)の 3QMAS '-

および 5QMASスベクトノレ測定によって、詳細な構造情報を得た。

[結果・考察}

ガラス・結晶鉱物の酸素を介した連結構造

酸素の構造、特に Si04や AI04図面体から成る骨格を連結する架橋酸素 (BO)および隙

聞に入る陽イオンにより生成される非架橋酸素 (NBO) の存在状態は、粘性等の物性に大

きく影響する。

徐冷によって合成した結晶の 170MASスベクトルで観測された 5本のシャープなピーク

は結晶中の非等価な酸素に起因している (Fig.1 (a))。一方、急冷ガラスで観測されたブロ

ードな 2本のピークは、カルシウムアルミノケイ酸塩ガラスの MASスベクトルと類似し

ており、 70ppmおよび 110ppmのピークはそれぞれ BOおよびNBOに対応するものと考

えられるが (Fig.l(b))、今回のガラスには Mgが含まれており、 BO領域に Mg由来の NBO

ピークが重なることが報告されていることから、 MASスベクトルからだけでは、詳細な酸

-20-

Page 23: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

,町、

,町、

素の環境を特定することが不可能である。

170MQMASによって、 2次の四極子相互作用によるブロードニングを平均化することで、

スベクトルの分解能は飛躍的に向上した。 MASスベクトルで見かけ上 5本に見えていたピ

ークは、 6本に分裂しており、 melilit怠および merwiniteに帰属される非等価な 6つの酸素

環境の存在が明らかとなった CFig.l(c))。ガラスについては、 Si-O-Alおよび Si-O-Siに相

当する BOや、 Mg2+または Ca2+イオンが近接した NBO等が明瞭に区別された CFig.l(d))。

同 .U ~)-一一一一一一一一

ト川 町

~-jV1山内N,. 星。臥…剛73VvL山川 ! I…ゥYJV-」 !j(叩• (b)

lv-..--A 弘 一型空ア土

Fig. 1 170 MAS Sp町田 ofthe (a) crys凶!ineand (b) amo叩housCMAS, an 170 3QMAS spec廿山nof the (c) crystalline CMAS,制阻.'0 5QMAS spectrum of批 (d)amorpho凶 CMAS.

骨格の間隙環境

ガラス骨格の周囲の隙聞に存在するアルカリ金属・アノレカリ土類金属イオンは、ネット

ワークの電荷補償や NBOの形成に携わるなど、多様な働きをしている。紙面の都合上、

ここでは Ca2+イオンの存在状態について議論する。

結晶性の鉱物とガラスの 43CaMASスベクトルを比較すると、線幅と見かけ上のシフト

値に大きな差が見られた CFig.2(a)(b))。線幅の違いは、結晶性の違いによる化学シフトの

分布の程度の違いによるものである。さらに、 5QMASスベクトルによって、 170同様に分

解能が向上した結果、同一組成の結晶とガラスとでは、 Ca周りの配位状態が明らかに異な

っていることがわかった。結晶中の Ca2+イオンは、 melilit怠および merwinit怠由来の 8配位

として存在するのに対し CFig.2(c))、ガラス中のそれは 6,7,8配位の混合(平均配位数:

6.9) であった CFig.2(d))。

当日は 29Siや 27A1N恥1R、 MD計算と組み合わせることによって得た、高炉スラグ系ガラ

スの包括的な化学構造解析結果について報告する 6)。

-c..3_包...・回開)W.l.lc.c辺倒

!;!議81 一一一一-""関. ""・肝・"・e、也市町、,

事吊「一一一一一一

Fig.2 4JCa MAS spectra ofthe (a) crystalline and (b) amorphous CMAS, and 43Ca 5QMAS spectra ofthe (c)αystalline and (d) amorphous CMAS

文献1)例えば、K.Kanehashi, M. Hatakeyama, K. Saito,工 Matsumiya,Tetsu-to-Hagane, 89 (2003) 27. 2)例えば、J.F. Stebbins, Z. Xu, Nature, 390 (1997) 60. 3)例えば、 M.Hatakeyama, T. Nemoto, K. Kanehashi, K. Saito, Chem. Lett., 34 (2005) 864. 4)例えば、 K.Shimoda, Y. Tobu, K. Kanehashi, T. Nemoto, K. Saito, Solid State Nucl. Magn. Reson., 30

(2006) 114. 5) K. Shimoda, Y. Tobu, K. Kanehashi, T. Nemoto, K. Saito, J Non-Cryst. SoUゐ, 354 (2008) 1036. 6) K. Kanehashi, K. Shimoda, K. Saito, Tetsu・to・Hagane,95 (2009) 321. 7) J. -P.Amoぽ eux,C. Femandez, S. Steuemage1, J Magn. Reson., A123 (1996) 116.

-21-

Page 24: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

47Ti,49TiのNMR

~強磁場固体 NMRによるチーグラー・ナッタ触媒の構造解析~

東邦チタニウム株式会社萱産整皇、藤田 孝

NIMS 清水禎、出口健三

JEOL 中井利仁、内海博明

E-mail m-saito@toho-titanium. co. jp

Tel 0467-82-2851 FAX 0467-83-0213

1 はじめに

本研究は、ポリエチレン (PE)およびポリプロピレン (PP)といった汎用樹脂を製造する時

に使用する触媒の構造について、独)物質・材料研究機構(NIMS)が所有する強磁場固体

NMRを用いて解析したものである。 、ーー"

PEおよびPPの開発は戦前から行っている。例えばPEの製造方法は、 lOO't以上の高

温と 1000気圧以上の高圧下で行う必要があり大変難しいものであった。

1 954年西ドイツの科学者チーグラ一博士は、常温常圧下でPEの製造に成功し])、その翌

年イタリアの科学者ナッタ博士が PPの合成に成功した-.九今日、我々の生活において無く

てはならない汎用樹脂となっているのも、彼らの研究成果(チーグラー・ナッタ触媒と呼ば

れている)によるものである。彼らの功績は、 1963年ノーベル化学賞を授与され称えら

れている。

現在 PEおよびPPの高分子材料は、汎用の時代から高機能化高分子の時代へと変化しつつ

ある。しかし、高機能化高分子材料を開発するためには、精密な分子レベル4)で、の触媒設計と

製法技術を確立する必要がある。

チーグラー・ナッタ触媒開発から 60年近くなるが、この触媒の主成分である、 MgC12,

T i C 14および電子供与体間の相互作用については未だ充分に判っていない。しかし、 T

C 14のT i元素はポリマーを発現させるために重要な中心金属であることは確認されている

5),6), 7), 8),札 10)。このT i元素とMgC 12および電子供与体聞の相互作用が判れば、高機能化高

分子材料用触媒の設計が容易となることが期待できる。、

-2 強磁場固体核磁気共鳴 (NMR)の誕生

チーグラー・ナッタ触媒の分子構造を非破壊分析で唯一決定できる手

法として、固体NMRである。しかし今までの固体NMRでの報告は、

測定が比較的容易な元素である電子供与体中のC (炭素)や S i (珪

素)核の変化で議論してきた 11),12),1九触媒中心金属である T の状態

についての測定には、特殊なNMR装置が必要であるため、測定には

難解を極め不可能であるとまで言われていた。

近年、 NIMSによって、強磁場NMRが開発された(図1)。こ

のNMRは、非常に強力な磁場有し、 Ti,Mg,C1といった測

内ノト“つ'u

Page 25: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

,町、

,岡、

定が困難と言われていた元素を比較的容易に測定できる装置と期待されている ω。

3:NMR測定対象元素と 47,4.9T 元素の特徴

日1= 1/2 圏1>1 NMRの対象元素を図 2に示す青色と黄色の

口U崎 臨or1= 0

闘ω麗霊園内閣闇値圏画調時謹iAtl骨量掴『製盟国軍αIEs IFmlMdH LI I

元素は、汎用的に市販されている 12テスラ程

度の低磁場NMRで測定可能な元素である。チ

ーグラー・ナッタ触媒は、 T 、Mg、C 1元

素から構成されている(緑枠内)。周期表の赤塗

りの元素は四極子元素である。 T 、Mg、

C 1は四極子元素に属しているため、この四極

子元素を克服させるには強力な磁場を有すNMRを用いて感度を上げることが必須で、ある 15)

図2 NMR測定対象元素 20)

Spin Frequency*

( I ) (MHz)

47Ti 5/2 54.420

“Ti 7/2 54.434

表 1 4749T の特徴

本 21. 8テスラNMR

T iの特徴を表 1に示す。 T 信号は 47T と

49T の2本現れることが判っている 2川 2)。

2 l. 8テスラのNMRを用いた場合2つの信号

幅が 14KHzしか離れていないため、近い場

所に 2本の信号が現れることが判った。周波数の

関係から高周波側に 47T 、低周波側に 49T の

信号になる。

4 強磁場固体NMRによるモデル触媒中のTi元素測定の確認

この装置を用いて、 MgC 12とT i C 1 4のモデル触媒

を合成し、 47,49

T 核のNMR測定を試みた。

結果を図 3に示す。結果、触媒中のT 測定が行えるこ

とを ft世界で初めで.. 16すQごとに成劫ノした。なお、

このNMR信号は、向かつて左側が質量数4.9T 、右側

が47T である。

図 3 強磁 場固体 NMRによる

4i, 49T i NMRスベクトル

5 強磁場固体NMRによるチーグラー・ナッタ触媒中のT 元素と触媒性能の確認

モデ、/レ触媒で、はあるがチーグラー・ナッタ触媒中の T 元素の測定できることを確認したの

で、次にTiのNMRデータと触媒活性の関係、について調べることを実施した。

【実験方法15-1 触媒合成条件

MgC12 30gとTiC14 6.0mlを内容積 1リッターのステンレス製振動ミル

-23-

Page 26: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

にて O時間、 2時間、 5時間および 20時間共粉砕した。次にこれら粉砕物を、窒素置換

されたフラスコ内に移し、遊離のT i C 1 4が無くなるまで、へプタンで洗浄・乾燥して触

粉砕時間(時間)。

2

5

20

表 2

チタン含有量(重量%)

0.2

1.2

2.3

4.3

T 含有量

媒とした。この時の各触媒のT i含有量を表 2に示す。

結果、粉砕時間を長くしていくことで、 Tiの含有量が

増大していくことが判った。

5-2 強磁場固体N M R測定条件

機種 ]EOL製 ECA930

プローブ ]EOL製 4mm M A Sプローブ

試料回転数 12~15KHz標準:四塩化チタン(-4!iT i = 0 p p m)

5-3 エチレンスラリー重合条件

・1. 5リッターオートクレーブ

(a)

(b) ・溶媒 nーへプタン 700m1

. A 1 /T i = 5 0

-仕込み触媒量二 O. 0 1 7 6 mm 0 1 (T i )

-アノレキノレアルミニウム=トリエチルアノレミニウム

・水素=3.21 ter

-重合温度=8 0 "(:-2時間一O. 8MP a

→咽押個

6 結果と考察図4 (a) 四塩化チタン(ベース) •

Catalyst Catal,st Elbylene (b)粉砕時間O時間、 (c)粉砕NKR results 時間2時間、 (d)粉砕時間5時

system analysis 殴lyuerizatioDresults 問、 (e)粉砕時間 20時間C咽iliing.πiCh噌ical 49Ti ch帽l日149T岡田.) PolyethJl叩Etl齢 11EOBteH15biftdlft1 A

強磁場国体 NMRスベクトルを図 4に-47,Ihl 信) ~国 (凶 1Hz) Ig-PE/g-ωt,) 4.9T とエチレンスラリー重合結果を(TiC14) -2邸.4 19 trace 表 3に示す。

0.2 -u -210.8 49 1,200 触媒合成時の粉砕時聞を長くすることで

2,200 1.2 -6.2 -214.6 m 次の 2点のことが判明した。

2. J -9.1 -281.1 864 J,曲。 1 .; 7, 49T の信号が高周波数側にシフ

20 u -21.1 -281.8 1610 6,700 トすること。aWul1制崩Iat Half-Height

2 エチレンスラリー重合活性の向上す

ることつ表 3 47,

49T とエチレンスラリー重合結果

以上の結果から、重合活性の向上とチタンNMRスベクトノレの変化との聞に一定の相聞が見ら

れた。

今後は、重合活性とチタン剛Rスベクトルの相関原因を解明することが目標である23)。

-24-

、、ー〆

、-〆

Page 27: 09-1 NMR研究会 mR-1H. 13c - 東京工業大学...09-1 NMR研究会 主題=多核m在R-1H.13c 以外の核種で何が見えるか NMRの優れた特徴として、試料に含まれる様々な核種の観測が別個に可能であり、そ

7 :まとめ

7-1 強磁場固体NMRを用いることで、触媒中のチタン原子測定が可能であることが

判った。

7-2 国体触媒のチタン信号を高周波数側にすることで、重合活性が高くなることが

半リった。

8 今後の予定

今後本研究は、重合物性とチタン NMRスベクトル相関やT iを中心金属に用いている担持

型チーグラー・ナッタ触媒で得られる全ての樹脂、例えば、車(インパネ、パンパ一、燃

料タンク等)、食品用フィルムシート、合成ゴム、収納箱、住宅用じゅうたん、衣服等に

使用される樹脂生産に適用する高機能性触媒の開発に展開する計画である。

,町、

-、

9 参考文献

1) K.Ziegler,E.Holzkamph,H.Breil,H.Martin,Angew.chem. ,67,541, (1955) 2) G. Natta,]. Polym. Sci. , 16, 143, (1955) 3) G.Natta, Angew.chem.,堕, 393,(1956) 4) http://www.twosite-model.com/ 5) V.Busico,P.Corradini,L.De Martino,A.Proto,E.Albizati,

Makromol. Chem. ,1.皇1,1115(1986) 6) M.Kakugo, T,Miyatake, Y.Naito,K.Mizunuma,Macromolecules,21,314(1988) 7) T. Yano, T. Inoue,S. Ikai,M.Shimizu, Y.Kai,M. Tamura,].Polym.Sci. ,PartA,盆, 447,(1

988) 8) K.Soga, T.Shiono, Y.Doi, Makromol.Chem., 189, 1531(1988) 9) M. Terano, T.Kataoka, T. Keii,].Polym. Sci. ,PartA,笠, 2035,(1990) 10)C.B. Yang,C. C. Hsu, Makromol.Chem.,Rapid Commun.当, 387(1993) 11)L.Abis,E. Albizzati,U. Giannini,G. Giunchi,E. Santoro,L . Noristi,Makromol.Chem. ,

189, 1595 (1988) 12)M. Terano,M.Saito, T.Kataoka, Makromol.Chem. ,Rapid Commun.迫, 103(1992)13)K. Ishii, T.Mori, T. Fujita, Kobunshi Ronbunshu, Vo151,No. 10,685(1994) 14)未踏科学協会編、強磁場固体NMR調査報告書(2004)15)粛藤公児,日本電子ニュース (2003)16)金橋康二,鷲藤公児,触媒, Vol.46,No.7,607(2004) 17)金橋康二,粛藤公児,触媒, Vol.46,No.8,667(2004) 18)金橋康二,鷲藤公児,触媒, Vol.47,No.1,47(2005) 19)K.Hashi, T. Shimizu,A. Goto, T.Kiyoshi,S.Matsumoto,H.Wada,S.Hayashi,].Magn.

Reson., lQ皇, 318, (2002) 20)T. Shimizu, Chem. Lett. ~1502, (2004) 21)宗像恵、北川進、柴田進、「多核 NMR入門(状態分析へのアプローチ)J、講談社サンエ

ンティフク, 13822)北川進、水野元博、前川雅彦、「多核種の溶液および固体NMRJ、三共出版, 13423)M.Saito, T.Fujita, T. Shimizu,K. Deguchi, T.Nakai,H. Utsumi, Polymer Preprints,

]apan, Vol. 57, No. 1,470, (2008)

phu

L