09,臨外,石川
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インドシアニングリーン蛍光測定
高知大学医学部外科2
石川 忠則、前田 博教、岡崎 泰長、
による消化管血流評価
川田 通広、笹栗 志朗
目的
ICG(Indocyanine green)は血漿蛋白質と結合し、 特定のLED(発光ダイオード)で励起するとピーク波長830~840 nmの蛍光を発するため、可視化できる。冠動脈bypass後のgraft血流評価や乳癌手術におけるセンチネルリンパ節(SLN)の同定あるいは消化器癌におけるSLNの同定にもその有用性が言われている。今回我々は、消化管の血流評価に応用可能か否かにつて検討した。
対象
腹部大動脈瘤:2例 下腸間膜動脈を切離後、再建の必要性を判断するためのS状結腸の血流評価 食道癌:3例 頸部食道胃管後壁機械吻合部血流の評価:2例 胃浸潤胃全摘再建空腸の血流の評価:1例
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方法
ICGを0.2mg/Kgで末梢静脈内注射した。注入直後よりLEDによるICGの蛍光励起と観察装置が一体となった近赤外線カラーCCDカメラを用い、手術室を暗くし、腹壁より20~30cm離して、液晶テレビモニターにて観察した。
一体型近赤外線カラーCCDカメラ
腹部大動脈瘤手術時 S状結腸の血流評価1
S状結腸
人工血管
腹部大動脈瘤手術時 S状結腸の血流評価2
S状結腸間膜
S状結腸
食道癌手術時 頸部食道胃管吻合部血流の評価1
再建胃管断端部大網
再建胃管後壁
頚部食道
甲状腺
食道癌手術時 頸部食道胃管吻合部血流の評価2
再建胃管後壁
再建胃管断端部大網
頚部食道
食道癌手術時 再建空腸の血流評価
再建予定空腸脚
第二空腸動脈 クランプ
再建予定空腸脚
血流評価の結果
腹部大動脈瘤:2例 2例ともS状結腸の強い蛍光を確認でき、 下腸間膜動脈の再建必要ないと判断。
食道癌:3例 頸部食道胃管後壁吻合部2例:胃管後壁に弱い蛍光を確認でき、胃管断端の大網の蛍光を確認できた。 再建予定空腸脚の蛍光を確認できた。
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術後経過
腹部大動脈瘤:2例 2例とも良好に経過
食道癌:3例 頸部食道胃管後壁吻合2例:吻合部縫合不全なく良好に経過 再建空腸症例:横隔膜上で再建空腸壊死あり、再建空腸切除、食道、空腸瘻増設
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問題例
食道癌再建空腸症例で横隔膜上で再建空腸壊死を発症
挙上した再建空腸の血流は良好であったが、その後食道裂孔部での栄養血管の周囲からの締め付けによる血流不良が原因と推測され、術中の血流評価では予測できなかった。
結語
インドシアニングリーン蛍光測定は消化管血流評価に有用である可能性が示唆されたが、再建胃管食道吻合部では、観察部位やICG注入量の検討が必要と考えられた。