1. 図書、図書館の整備 ① 図書、学術雑誌、視聴覚 …...1....

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9章 図書館及び図書等の資料、学術情報 1. 図書、図書館の整備 ① 図書、学術雑誌、視聴覚資料、その他教育研究上必要な資料の体系的整備とその量的整備の 適切性(項目№1951) 資料の量的整備 〔現状〕 本学付属図書館は現在、湘南校舎に 4 館のほか、代々木、清水、沼津、伊勢原(2 館)の各校舎を 含めて合計 9 館から構成されている。2002 3 月末現在、本学図書館の資料所蔵数は図書約 184 冊、雑誌約 2 7 千種類、視聴覚資料約 4 5 千点である。また、2001 年度の年間資料受入数は、 図書約 5 3 千冊、雑誌約 1 万種類、視聴覚資料約 9 百点となっている。総蔵書冊数は歴史の長い大 学にはおよばないものの、近年の受入冊数は他大学と比較すると遜色のない状況にある。さらに、本 学図書館は物理的空間を有効に利用するため、量的な拡張よりも質的な方向へと転換を図ってきた。 中央図書館、 11 号館分館では開架図書は学生の利用率の高い図書を、一方専門性の高い図書は閉架に 配架して出納式を採用している。それ以外の図書館は全面開架式を採用し、より利用しやすい環境と 資料の効果的配置を目指している。 図書資料の購入にあたっては、利用者の多様な要求に応えるべく幅広く資料を収集するために、原 則として重複購入を避けるが、利用の多い図書は 5 冊を限度として複本を購入してきた。その一方に おいて湘南校舎では、利用の少なくなった旧版の図書や重複図書などの資料を整理するとともに、雑 誌の分担保存をも進めている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 文部科学省「平成 13 年度大学図書館実態調査報告」で総蔵書数をみると、大学の歴史や学部構成 は異なるが、学部数 8 学部以上を有する私立大学 12 校の平均は約 227 万冊である。この平均値は早 稲田大学、日本大学などの 400 万冊以上を所蔵する大学を含むために数値が高くなっているが、中間 値では本学図書館は若干少ない程度である。 一方、日本私立大学連盟「平成 13 年度大学図書館実態調査」を基に学生数が同程度の他大学の総 蔵書数と比較すると、2000 年度末の数値では本学が約 180 万冊(9 館)に対し、明治大学約 188 冊(3 館)、中央大学約 197 万冊(13 館)で本学が若干少ない。雑誌の所蔵種数は、本学が和雑誌約 1 6 千種類・外国語雑誌約 1 1 千種類、明治大学が和雑誌約 1 4 千種類・外国語雑誌約 6 5 百種類、中央大学が和雑誌約 1 3 千種類・外国語雑誌約 1 1 千種類と雑誌所蔵種数では本学が若 干優っている。 また、2000 年度の年間受入図書冊数は本学が約 5 3 千冊、明治大学が約 5 7 千冊、中央大学 が約 5 5 千冊である。 受入雑誌種数は本学が和雑誌約 8 千種類・外国語雑誌約 3 千種類、明治大 学が和雑誌約 6 1 百種類・外国語雑誌約 3 千種類、中央大学が和雑誌約 7 3 百種類・外国語雑誌 5 3 百種類となっており、全体的にみれば大差はない。雑誌受入種数はこの数年は減少の傾向に あるが、これは電子ジャーナルの契約が増加し、冊子体の雑誌を中止した結果であり、理・工学系雑 誌については今後もこの傾向は継続すると予想している。 大学総経費に対して図書館資料費が占める比率は、東海大学 0.87%、明治大学 2.09%、中央大学 2.14%、慶應義塾大学 1.16%、早稲田大学 2.10%、平均 2%台であり、本学の比率が一見低いようで あるが、それは本学が医学部を擁していることによる。一般に医学部を擁する大学の平均比率は低く 1%台である。資料の量的整備については大きく不足するところはない。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 今後はオンライン・データベースおよび電子ジャーナルの整備・充実を目指し、学内相互利用ネッ トワークを一層発展させる。一方、全学的規模で分担収集・保存を促進し、効率の良い資料の収集、 学習用図書の網羅的購入、授業に密着した図書の収集を進めるなど、すべての校舎で情報格差のない 7

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

1. 図書、図書館の整備 ① 図書、学術雑誌、視聴覚資料、その他教育研究上必要な資料の体系的整備とその量的整備の

適切性(項目№195) 1) 資料の量的整備

〔現状〕 本学付属図書館は現在、湘南校舎に 4 館のほか、代々木、清水、沼津、伊勢原(2 館)の各校舎を

含めて合計 9 館から構成されている。2002 年 3 月末現在、本学図書館の資料所蔵数は図書約 184 万

冊、雑誌約 2 万 7 千種類、視聴覚資料約 4 万 5 千点である。また、2001 年度の年間資料受入数は、

図書約 5 万 3 千冊、雑誌約 1 万種類、視聴覚資料約 9 百点となっている。総蔵書冊数は歴史の長い大

学にはおよばないものの、近年の受入冊数は他大学と比較すると遜色のない状況にある。さらに、本

学図書館は物理的空間を有効に利用するため、量的な拡張よりも質的な方向へと転換を図ってきた。 中央図書館、11 号館分館では開架図書は学生の利用率の高い図書を、一方専門性の高い図書は閉架に

配架して出納式を採用している。それ以外の図書館は全面開架式を採用し、より利用しやすい環境と

資料の効果的配置を目指している。 図書資料の購入にあたっては、利用者の多様な要求に応えるべく幅広く資料を収集するために、原

則として重複購入を避けるが、利用の多い図書は 5 冊を限度として複本を購入してきた。その一方に

おいて湘南校舎では、利用の少なくなった旧版の図書や重複図書などの資料を整理するとともに、雑

誌の分担保存をも進めている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 文部科学省「平成 13 年度大学図書館実態調査報告」で総蔵書数をみると、大学の歴史や学部構成

は異なるが、学部数 8 学部以上を有する私立大学 12 校の平均は約 227 万冊である。この平均値は早

稲田大学、日本大学などの 400 万冊以上を所蔵する大学を含むために数値が高くなっているが、中間

値では本学図書館は若干少ない程度である。 一方、日本私立大学連盟「平成 13 年度大学図書館実態調査」を基に学生数が同程度の他大学の総

蔵書数と比較すると、2000 年度末の数値では本学が約 180 万冊(9 館)に対し、明治大学約 188 万

冊(3 館)、中央大学約 197 万冊(13 館)で本学が若干少ない。雑誌の所蔵種数は、本学が和雑誌約

1 万 6 千種類・外国語雑誌約 1 万 1 千種類、明治大学が和雑誌約 1 万 4 千種類・外国語雑誌約 6 千 5百種類、中央大学が和雑誌約 1 万 3 千種類・外国語雑誌約 1 万 1 千種類と雑誌所蔵種数では本学が若

干優っている。 また、2000 年度の年間受入図書冊数は本学が約 5 万 3 千冊、明治大学が約 5 万 7 千冊、中央大学

が約 5 万 5 千冊である。 受入雑誌種数は本学が和雑誌約 8 千種類・外国語雑誌約 3 千種類、明治大

学が和雑誌約 6 千 1 百種類・外国語雑誌約 3 千種類、中央大学が和雑誌約 7 千 3 百種類・外国語雑誌

約 5 千 3 百種類となっており、全体的にみれば大差はない。雑誌受入種数はこの数年は減少の傾向に

あるが、これは電子ジャーナルの契約が増加し、冊子体の雑誌を中止した結果であり、理・工学系雑

誌については今後もこの傾向は継続すると予想している。 大学総経費に対して図書館資料費が占める比率は、東海大学 0.87%、明治大学 2.09%、中央大学

2.14%、慶應義塾大学 1.16%、早稲田大学 2.10%、平均 2%台であり、本学の比率が一見低いようで

あるが、それは本学が医学部を擁していることによる。一般に医学部を擁する大学の平均比率は低く

1%台である。資料の量的整備については大きく不足するところはない。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 今後はオンライン・データベースおよび電子ジャーナルの整備・充実を目指し、学内相互利用ネッ

トワークを一層発展させる。一方、全学的規模で分担収集・保存を促進し、効率の良い資料の収集、

学習用図書の網羅的購入、授業に密着した図書の収集を進めるなど、すべての校舎で情報格差のない

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

同一のサービスを利用者に提供できるよう努力していく。

2) 資料の体系的整備 〔現状〕 資料収集においては、各図書館で教員と図書館員が、それぞれの学部学科構成に基づいた資料の選

書を行っている。それ以外に購入希望も随時受け付け、利用者の要望や必要に応じた図書を揃えられ

るように努めている。 なお、従来から講義で紹介された参考資料の収集を行ってきたが、1998 年度からは組織的に収集を

進めてきた。代々木図書館では、1999 年度にシラバス・コーナーを設置しており、湘南校舎では、

2002 年度秋セメスターから中央図書館にシラバス・コーナーを新設し、利用者により使いやすい環境

を提供している。各館はそれぞれの利用対象である学部の学生と教員の専門に対応した、特徴のある

収書を行っている。

本学図書館の所蔵図書資料(2002年 3月末現在)

図 書 館 名 主な担当分野 図書(冊) 雑誌(種類) 視聴覚資料

( 点 )

電子ジャーナル(種

類)

中央図書館 総合教育科目 462,497 5,975 11,737

11 号館分館 人文科学・社会科

479,773 5,880 124

12 号館分館 理学・工学 228,289 4,450 1,141

13 号館分館 芸術学・環境学 60,474 805 23,687

代々木図書館 工学 98,115 971 907

清水図書館 海洋学 207,229 3,470 2,755

沼津図書館 先端技術工学 56,912 535 997

914

伊勢原図書館 医学・看護学 246,171 4,757 3,237 594

計 1,839,460 26,843 44,585 1,508

湘南校舎では、中央図書館は総合教育科目を含め、幅広い分野の資料を収集するとともに、日本の

古典籍や西洋古版本などの貴重図書・特別図書を設置している。 11 号館分館では人文科学・社会科学関係図書を中心に専門図書を設置しているが、他の私立大学に

ない特徴としては考古学関係の専門書、北欧諸国の図書資料、アラビア語・トルコ語・ペルシャ語・

ベンガル語・オスマントルコ語などの中東および南アジアの言語の資料が充実している点である。な

かでも北欧諸国語の約 3 千 9 百冊、ベンガル語約 4 千 5 百冊のコレクションは国内では他に類をみな

い。12 号館分館は理工学関係の専門書を設置し、特に航空宇宙関係や原子力関係の専門資料などが充

実している。 13 号館分館は芸術学関係と環境学関連分野の資料を設置する他、特にジャズ・コレクション、民族

音楽コレクションなどの音楽資料にも特色があり、視聴覚資料の充実に努めている。 代々木図書館は工学系夜間学部が主な利用者であるため、12 号館分館と資料構成の面で重なる部分

が多いが、両館は密接な連携の基に分担収集と分担保存を行っている。 清水図書館は海洋学関係の図書資料が、沼津図書館は先端技術工学関係の資料が充実している点に

特徴がある。 伊勢原図書館は医学・看護学系専門図書資料と社会福祉関係資料を設置している。また、「医の倫

理室」を設け医療倫理に関する図書を設置しているほか、本学各付属病院の図書室にもそれぞれ医学

系専門資料を設置している。 文献充実のため大型コレクションの購入予算(2002 年度は図書資料費の 7.6%)を確保し、毎年数

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

点ずつ雑誌のバックナンバーやコレクションを選定し、重点的に専門資料の充実に努めている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 各図書館は、それぞれが担当する学部・学科と密接な連携をとりながら資料収集を行っている。

利用者の多様な要望を満たすために、それぞれの館が重複して資料を購入することを避け、付属図書

館全体としてできる限り広範に資料収集を実施している。各校舎に設置された図書館では、一般教養

の図書は別として専門分野に関しては重複を避けて収書を行うため、付属図書館全体としてバランス

のとれた収書ができている。 湘南校舎においては学習・研究用の新刊和書はほぼ網羅的に購入し、特定の出版社の出版物につい

てはスタンディング・オーダーを採用して資料収集の網羅性を高めている。出版点数が少ない語学な

どの分野は集中的に購入し、整備を行っている。 分担収集については、利用の多い基礎的な資料や学習用資料は関係する各館が重複して購入し利用

に供する必要があるため、これらの資料を分担して購入するわけにはいかない。研究用の専門資料に

ついては分担収集を進め、予算の有効利用を図ることができる。 随時受け付けている図書の購入希望では、特定の利用者からの受付が多く、特定の分野に偏る傾向

を持つ問題点もある。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 付属図書館には明文化された選書基準はないが、今後は、より授業開講科目に密着した体系的な資

料収集を図書館全体で行うために、収書のための基準を策定する必要がある。 具体的な一例としては、湘南校舎の各図書館に分散している白書・統計類を中央図書館に集中し、

さらに充実させる計画を進めている。 購入希望については、今後多くの利用者がこの制度を認知し、利用されるよう図書館から積極的に

広報を強化してゆく必要がある。 ② 図書館施設の規模、機器・備品の整備状況とその適切性、有効性(項目№196) 〔現状〕 本学の図書館は 12 号館分館と沼津図書館を除いて蔵書数が図書収容能力を既に超過しており、書

庫スペースの不足が深刻な問題となっている。 書庫スペースの不足を補うための対策として、湘南校舎では校舎内に新たに書庫(収容能力約 2 万

9 千冊)を、また清水市の「総合資料センター」に保存書庫(収容能力約 16 万 8 千冊)を確保した。

付属図書館各館の規模

図書館名 床面積(㎡) 図書収容能力(冊) 総蔵書数(冊)

中 央 図 書 館 3,771 322,222 474,234

1 1 号館分館 3,485 426,744 479,897

1 2 号館分館 3,098 257,722 229,430

1 3 号館分館 640 43,306 84,161

代々木図書館 480 53,750 99,022

清 水 図 書 館 1,895 206,389 209,984

沼 津 図 書 館 1,440 182,500 57,909

伊勢原図書館 3,168 254,000 249,408

合 計 17,977 1,746,633 1,884,045

文部科学省「平成13年度大学図書館実態調査結果報告」2002年 3月 31日現在

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

各図書館はそれぞれ開架図書と参考図書を設置した閲覧室を備えているほか、11 号館分館、12 号

館分館、伊勢原図書館には個人閲覧室、グループ閲覧室を設置している。また、湘南校舎では中央図

書館に視聴覚コーナーを、12 号館分館、13 号館分館に視聴覚資料室を設置し、ビデオ、DVD、LD、

CD、カセットテープなどの機器を備えている。特に 13 号館分館では音楽資料を所蔵しているため、 これらの資料に対応する機器を備えている。 湘南校舎以外の各館も各種のメディアに対応する機器を設置し、DVD、CD、ビデオなどが館内で

利用できるように配慮している。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 湘南校舎では 4 つの図書館が分散して設置されている。これは本学が学部と隣接した分散型の図書

館運営方針をとったためであり、中央図書館をはじめ各館が付属図書館として統一された組織の中で

それぞれ専門図書館として有効に機能している。しかし、一方では利用者にとって必要な資料が複数

の館に分散される欠点と、図書館員の配置の面でも各館に窓口担当の図書館員を確保する必要があり、

予算面、人的構成においても効率的ではない。 また、書庫スペースの不足分に相当する資料を図書館外の場所に分散して管理しなければならない

ため、利用者に対するこれらの資料の提供とその運用面において大変深刻な問題を抱えている。 付属図書館全体では毎年約 5 万冊の図書が増加しており、2004 年度には保存書庫も収容能力の限

界に達する見込みである。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 湘南校舎における施設面の問題点の解消と情報化時代に求められる教育・研究支援のさらなる充実

のためは、現在分散している 4 館の機能を 1 館にまとめた新総合図書館の建設が も有効である。こ

の新図書館建設の構想は、1999 年度に「新図書館基本構想案」として具申した。 新図書館が実現するまでは、開館時間の延長や電子情報への対応など機能面を中心に改善・改革を

進めていく。 ③ 学生閲覧室の座席数、開館時間、図書館ネットワークの整備等、図書館利用者に対する利用

上の配慮の状況とその有効性、適切性(項目№197) 1) 座席数について

〔現状〕 座席数については私立大学図書館協会が大学図書館の望ましい基準として定めている、収容定員数

の 10%をほぼ満たしている。 付属図書館各館の座席数

図書館名 学生収容定員

(人)

座席数 座席数/収容定員(%)

中 央 図 書 館 10,096 931 9.2

1 1 号 館 分 館 3,574 509 14.2

1 2 号 館 分 館 5,336 519 9.7

1 3 号 館 分 館 686 87 12.7

代 々 木 図 書 館 640 56 8.8

清 水 図 書 館 2,986 315 9.5

沼 津 図 書 館 1,492 213 14.3

伊勢原図書館(1・3号館) 1,500 305 20.0

合 計 26,310 2,935 11.2

2002 年 5 月 1 日現在

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

〔点検・評価(長所と問題点)〕 通常の利用では現在の座席数でも充分であるが、定期試験期には満席になり、なお座席数に余裕を

持たせる必要がある。また、各館に視聴覚機器やパソコンなどを利用するためのさまざまな機器に対

応する座席を用意する必要がある。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 湘南校舎における施設面の問題点を解消するには、「1. 図書、図書館の整備 ② 図書館施設の規

模、機器・備品の整備状況とその適切性、有効性」ですでに述べた新総合図書館の建設が も有効で

ある。この新図書館建設の構想では、閲覧座席数を 2,600 席としており、現在の湘南校舎の全席数の

1.27 倍となっている。

2) 開館時間について 〔現状〕 湘南校舎の 4 図書館では 2002 年度秋セメスターから中央図書館と 12 号館分館が 20 時から 22 時

に、11 号館分館と 13 号館分館が 19 時から 22 時にそれぞれ開館時間を延長した。 授業期間および定期試験期間以外は開館時間を短縮して運営している図書館もある。 各図書館は授業開始前の 9 時に開館するが、代々木図書館は夜間部学生を対象とした図書館である

ため、午後からの開館となっている。 伊勢原 1 号館図書館では平日 24 時間開館を 1993 年度から開始し、日曜開館を 2000 年 5 月から開

始した。伊勢原 3 号館図書館は定期試験期間の 19 時以降は無人入館システムにより 24 時間開館を実

施している。

授業期間および定期試験期間の開館時間

図書館名 平日 土曜日 日曜日

中 央 図 書 館 9:00~22:00 ※1 9:00~19:00 ※1 閉館 ※5

1 1 号 館 分 館 9:00~22:00 9:00~19:00 閉館

1 2 号 館 分 館 9:00~22:00 9:00~19:00 閉館

1 3 号 館 分 館 9:00~22:00 9:00~19:00 閉館

代 々 木 図 書 館 12:00~22:00 12:00~20:30 閉館

清 水 図 書 館 9:00~19:30 ※2 9:00~18:30 閉館 ※5

沼 津 図 書 館 9:00~20:00 9:00~15:00 閉館

伊 勢 原 1 号 館 24時間 ※3 9:00~19:00 10:00~21:00

伊 勢 原 3 号 館 9:30~22:00 ※4 9:30~15:00 閉館

※1 中央図書館自由閲覧室は 22 時 30 分まで開室している。 ※2 定期試験期間は 21 時まで開館。19 時 30 分~21 時は貸出・返却サービスは行っていない。 ※3 館内閲覧、返却(ブックポスト)、コイン式複写、オンライン・CD-ROM 検索は 24 時間可能。

その他のサービスは短縮で行っている。 ※4 伊勢原 3 号館図書館は定期試験期間、19 時以降無人入館システムで 24 時間開館を実施してい

る。 ※5 定期試験期間は休日開館を実施している。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 湘南校舎の 4 図書館では 2002 年 10 月より開館時間を延長し、9 時から 22 時まで開館している。

図書館員の時差勤務と人材派遣社員などの導入により、利用時間の延長が実現できた。医学部や夜

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

間二部制の学部を設置していない私立大学の中では開館時間の長い大学に入る。 開館時間の延長は、学生の利用も多く好評を得ている。特に、実験等により深夜まで学内に滞留す

ることの多い理工学系の学生に対してはおおいに役立っている。 清水図書館では通常の授業期間、平日は 19 時 30 分までを開館時間としているが、定期試験期間な

どの利用の多い時期には 21 時まで開館している。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 図書館サービスの理想は 24 時間のフルタイム・サービスであるが、現実的にはフルタイム開館を

実施するにも職員の配置、安全対策、予算等多くの問題を解決しなければならない。 本学図書館で平日の 24 時間開館を実現しているのは医学部・健康科学部を主な対象としている伊

勢原 1 号館図書館のみであるが、有人の開館であるにもかかわらず一部の利用者により閲覧スペース

が専有されるなどの問題が発生している。また、定期試験期間の 19 時以降無人入館システムで 24 時

間開館を実施している伊勢原 3 号館図書館では、利用者のマナーの悪さが問題となっているなど、運

営管理面での整備が急務となっている。

3) 図書館の利用状況 〔現状〕

2000 年度・2001 年度の利用状況を比較すると、入館者・貸出冊数に関しては、やや増加している。

相互貸借による学外への貸出冊数の数値にはあまり変化がみられない。

付属図書館利用統計

サービス 2000年度 2001年度

入館者数 1,137,484人 1,198,369

学生 247,336冊 242,822冊

大学院生 22,438冊 22,992冊

貸出冊数

教職員他 28,412冊 29,880冊

相互貸借による他館への貸出冊数 1,266冊 1,254冊

注)数値は付属図書館の合計

〔点検・評価(長所と問題点)〕 図書館の利用状況は利用対象者数と利用条件に大きく影響されている。本学の利用対象者数は、学

部学生 29,933 人・大学院生 1,315 人・教職員 4,208 人(2002 年 5 月現在)であり、また本学図書館

における貸出利用条件は、学部学生は貸出冊数 5 冊・貸出期間 2 週間、大学院生は貸出冊数 20 冊・

貸出期間 3 ヶ月、教職員は貸出冊数 100 冊・貸出期間年度末までとなっている。さらに学部学生はこ

の利用条件に加えて卒論貸出・ゼミ貸出などの特別貸出が設定され、利用目的に応じて各種貸出を受

けることができる。 日本私立大学連盟「平成 13 年度大学図書館実態調査」によれば、2000 年度の本学の学生数(大学

院生を含む)は 32,224 人、学生の貸出冊数は 237,328 冊であり、一人あたり平均約 7.4 冊図書を貸

出している。教員数は 1,227 人、教員の貸出冊数は 27,847 冊であり、一人あたり平均約 22.7 冊図書

を貸出している。 学生数が同規模の他大学と比べると、学生への貸出は明治大学が一人あたり平均約 5.8 冊となって

おり、中央大学は約 6.5 冊となっている。一方、教員の貸出は明治大学では一人あたり平均約 11 冊で

あり、中央大学では約 22 冊となっている。この 3 大学を比較した上では、本学図書館は良く利用さ

れている。

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 効果的に図書館が利用されるためには、多様な要求に応えられる資料の充実を図る。また、大学院

生や教職員も対象とし、入門から高度なレベルに対応した利用ガイダンスの実施を検討する。さらに、

「新図書館構想」に盛り込んだ個人閲覧室、グループ閲覧室やパソコンの利用などの多様な条件に対

応した多目的な閲覧室など、施設の充実を図っていく。

4) 利用者教育について 〔現状〕 湘南校舎では、毎年 4~6 月にかけ新入生向けのガイダンスを行い、2001 年度には計 50 回のガイ

ダンスを行った。また、近年はゼミ単位や学科単位での多人数のガイダンスの申し込みも多く、中央

図書館情報検索室に 50 台のパソコンを設置したため、多人数に対するガイダンスの実施が可能とな

った。 代々木図書館・沼津図書館では新入生全体ガイダンスの際に図書館利用方法を説明をしている。清

水図書館では新入生全体を対象とした図書館ガイダンスとともに、3・4 セメスター以上を対象とした

ガイダンスの要望にも対応している。伊勢原図書館においては新入生のほか、研修医などの教職員や

在学生に対して、外部データベースの検索方法や文献収集の指導を行っている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 2000 年度に湘南校舎ではインターネットに接続できるパソコンを約 100 台設置し、中央図書館で

は一度に 50 人までのガイダンス実施を可能となり、ガイダンスの要望が増加する傾向にある。また、

中央図書館では図書館以外の部署との共催で「資料の探し方」というテーマでガイダンスを行ってい

るが、さらに、授業の一環としてインターネットによる専門的な文献検索の指導等を行うなど、より

専門的な内容が求められるようになってきた。 新入生向けガイダンスの内容は OPAC(Online Public Access Catalog)検索指導、ライブラリー・ツ

アー、利用指導などである。担当の図書館員は誰もがマニュアルに沿って同レベルの指導が行える。

しかし、5 セメスター以上の学生に対する文献探索の指導は教員側から申し出があった場合に、経験

豊富な特定の図書館員が対応している。専門資料の文献検索、外部データベース、ビブリオグラフィ

ック・インストラクション等の中級および高レベルな資料探索については、情報化時代に即したマニ

ュアル整備が遅れている。各館の特色にあわせ、利用者の目的にあったガイダンスのプログラム開発

の必要がある。 また、図書館主催の新入生ガイダンスは、ポスターや図書館ホームページなどでの案内を行ってい

るが、参加者数が少ないため、今後様々な広報手段を検討する必要がある。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 利用者教育は単に図書館利用についての内容だけではなく、パソコンの利用法等情報リテラシー教

育とあわせてのプログラムを準備する必要がある。この点については図書館が一手に担うのではなく、

学内関係組織との連携も検討しなければならない。現在、外部データベース等の特定分野に関するガ

イダンスを定期的に行っているのは伊勢原図書館にとどまり、電子ジャーナル・データベース利用講

習会を定期的に行っている図書館はない。 今後は、図書館が提供する資料を広く利用してもらうために、学内組織・教員との連携を図り、ガ

イダンスの内容を充実させ、広報を充実させる。ガイダンスの対象も学部学生と大学院生だけに留ま

らず、今後は新任教員・非常勤教員、専任職員等を対象としたガイダンスの実施を検討して、図書館

利用の向上に努めていく。

1443

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

5) 図書館ネットワーク 〔現状〕

1987 年の新規受入資料から図書館システムでの目録作成を稼動し、そのシステムを TIME(Tokai Information Media Enterprise=東海大学図書館総合情報システム)と名付け、1988 年には目録検索

サービスを開始して各校舎の図書館に設置した端末機から本学図書館の蔵書が検索可能となった。

1999 年 6 月からはインターネット上での所蔵検索と 24 時間検索が可能となった。図書館内はもちろ

ん、学内のコンピュータ室や研究室、自宅からも全蔵書約 188 万件の検索ができる。 2001 年度より学園の短期大学図書館(2 館)を本学図書館ネットワークに加え、大学と同様の所蔵

検索と相互利用が可能となった。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 OPAC で本学図書館の全蔵書を公開したことは、情報サービスの拡張と学外への図書館開放にとっ

て有意義であった。外部からの利用希望などで、本学図書館に所蔵する特色ある資料への申込が多く

あり、有効に利用されていることがわかる。 目録作成では、本学図書館では件名を採用していないため、網羅的に主題を検索するには若干不充

分な部分がある。 本学図書館が導入したシステムは発注から利用までを含むトータルシステムであるが、発注・受入

は学内の「財務情報システム」が使われているため、図書館システムは目録作成から利用までが運用

されている。相互のシステムのデータが連携していないことによる弊害として、重複調査を二重に行

う必要があるなどの事務の煩雑さと、発注から利用までの図書の流通経過がわかり難い、などの欠点

がある。 図書館システムのネットワークに新たに短期大学の 2 つの図書館が加わったことで、従来にもまし

て資料整理の標準化を進める必要性が増した。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 資料が発注されてから、利用者が手にするまでの事務処理の効率化を図り、図書の流通経過を透明

にするためには発注・受入情報の検索を OPAC と連動させることも改善点の一つである。あわせて電

子ジャーナルと OPAC のリンク等、機能拡張・発展について検討し、改善していく。 本学図書館システムの標準化については、整理および閲覧システムを中心とした研修を年 1 回程度

行ってきたが、2001 年度より新たに短期大学の 2 図書館を含めた総合的な研修会を実施することに

した。今後、さらに充実した図書館員教育を実施していく。 2. 学術情報へのアクセス ①学術情報の処理・提供システムの整備状況、国内外の他大学との協力の状況(項目№198)

〔現状〕 本学図書館では 1970 年代から既に、増加する蔵書を合理的かつ迅速に利用者に提供することがで

きるように、コンピュータによる所蔵目録データベースの構築作業を検討・計画してきた。その前段

階としては、1977 年から資産管理のための蔵書管理システムの運用を開始している。 1980 年代半ばから本格的に構築作業の計画が進行し、富士通のパッケージソフト ILIS/M を図書館

システムとして取り入れることに決定した。1987 年の新規受入資料から目録作成をスタートさせ、

1988 年には図書館に設置した検索用端末機を使用した目録検索システムが稼動している。 一方、既に蔵書数は 1981 年には 100 万冊を超えており、蔵書目録を利用者へ提供するために早急

に図書・雑誌資料の遡及入力を開始する必要があった。まず湘南校舎の図書館の資料約 60 万冊を遡

及入力第 1 次計画として 1988 年から 1992 年までの間に完成させた。そして 1993 年には第 2 次計画

として代々木・伊勢原・清水図書館の遡及入力を開始した。また、沼津図書館は開設時からシステム

1444

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

による目録作成を開始している。1994 年末までには図書・雑誌資料の遡及入力が終了し、本学図書館

全体で、約 160 万件の所蔵目録データベースができあがった。 その後、図書館システムが ILIS/M から ILIS/X-70 へバージョンアップするとともに、Telnet での

TIME 所蔵目録データベースの公開(OPAC)を開始した。さらに 1999 年に iLiswave にバージョン

アップすると同時に、インターネット経由で図書館のデータベースにアクセスができる www-OPACになり、稼動時間も 24 時間になった。 学外とのネットワークでは、1990 年 8 月に湘南校舎の図書館が NACSIS-CAT(共同分担目録シス

テム)に参加した。これにより他機関と書誌情報を共有することができ、目録作成作業が効率化され

データ作成数が飛躍的に向上した。接続前の 1 ヶ月平均目録作成冊数が約 2,200 冊だったのに対し、

接続後は約 3,000 冊となり、約 130%処理能力が向上した。 また、1993 年に NACSIS-ILL(図書館間相互貸借システム)に加入した。この ILL システム参加

を契機として、学外類縁機関との現物貸借サービスも本格化した。 遡及入力が進み、目録データベースの規模が格段に大きくなった 1991 年以降、文献複写と相互貸

借は申込・受付共に利用が増加したが、ILL に参入したことでさらに相互協力活動が活発化した。湘

南校舎以外の本学図書館も 1993 年末までに NACSIS-CAT、NACSIS-ILL ともに接続を完了した。 新規受入資料の目録データ作成に関しては、2002 年 3 月末現在、NACSIS-CAT に本学図書館の蔵書

は図書約 184 万冊のうち約 22 万冊、雑誌約 2 万 7 千種類のうち約 2 万 2 千種類が登録されている。 2001 年度の図書の受入状況をみてみると 53,362 冊である。そのうち TIME への所蔵データ登録件数

は 53,313 冊で、ほぼ 100%新規受入資料のデータを登録している。また NACSIS-CAT への所蔵デー

タ登録件数は、2001 年度が 20,966 冊で、ほぼ 40%を登録し、他大学との相互協力に貢献している。 高度情報化が進むなかで情報量も飛躍的に増加し、従来の冊子体による二次資料の提供のみでは利用

者の要望に応えることができなくなってきた。その状況に対応するために、本学図書館では既に 1980年から、各種外部データベースの代行検索を導入している。当時の主なデータベースとしては「JOIS」(科学技術に関する文献情報等)や、「DIALOG」(広範な分野にわたるデータベース)、

「NACSIS-IR」(学位論文索引等)などがあった。 伊勢原図書館では、1990 年にネットワーク対応の CD-ROM を導入して MEDLINE などの医学情

報を利用者自身が検索できるシステムを構築した。湘南校舎の図書館でも、1997 年 CD-ROM ネット

ワーク・システムを導入し、「BUNSOKU」(「科学技術文献速報」の CD-ROM 版)「CA on CD」

(「Chemical Abstracts」の CD-ROM 版)等を購入して、利用促進を図った。 しかし、この CD-ROM ネットワーク・システムは各校舎単位の利用に限定され、本学図書館全体

での運用は困難である。また、情報が膨大な量になり、CD-ROM ネットワークで提供していくこと

が困難になってきた。この 2 つの欠点を解消するために、2000 年から「Lexis-nexis」を始めとして、

インターネット上で提供されるオンライン・データベースの導入を始めた。本学図書館全体で契約す

ることで、どの校舎の利用者でも利用することができる。利用者はインターネットへの接続条件さえ

満たせば、自宅から様々なデータベースにアクセスすることが可能であり、情報提供サービスの環境

が大きく改善された。 また、図書館から積極的かつタイムリーに情報提供を行うため図書館ホームページの公開が検討さ

れ、1996 年、 初に沼津図書館がホームページを開設した。その後付属図書館ホームページを立ち上

げ、本学図書館ホームページ全体を完成させた。現在、このホームページは図書館の情報サービスに

おいて も重要な基幹サービスの一つと位置付けられている。 情報サービスに関係する本学図書館の設備については、従来の CD-ROM 専用、OPAC 専用パソコン

に加えて、2001 年に湘南校舎に約 100 台の情報検索用パソコンを設置したほか、各校舎の図書館で

も情報検索用パソコンを設置した。このパソコンから図書館ホームページを通して、様々なデータベ

ースを利用することができ、利用者の論文作成や研究活動に大きく貢献している。 データベース面での他大学との協力では、神奈川県内で県立図書館と大学図書館など賛同する図書

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

館 10 館が協力して「神奈川地区 OPACs 並列検索」を提供している。これにより 1 回の検索で、いく

つもの図書館の所蔵を調べることができる。また、大学院生や教職員は「神奈川県内大学図書館共通

閲覧証」の交付を受ければ、神奈川県内大学図書館相互協力協議会加盟の他大学図書館を利用するこ

とができる。 その他、他大学との協力としては私立大学図書館協会や日本図書館協会などを通した活動がある。

付属図書館として加入しているこれらの協会が主催する研究会、研修会を通してさまざまな活動を行

ってきた。また、中央図書館は神奈川県図書館協会と神奈川県内大学図書館相互協力協議会、清水図

書館と沼津図書館は静岡県図書館協会と静岡県大学図書館協議会、伊勢原図書館は医学図書館協会な

ど各館の実情に合った協会などへ参加し、情報の収集、共通の問題の検討と改革など独自の活動を展

開している。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 現在、本学図書館の所蔵データベースに約 188 万件のデータが登録されているが、そのデータの約

半分はカード目録からの遡及入力によるものであり、データ的に不備な点が多く、これらのデータの

調整と整備が必要である。 2001 年度より、本学図書館システムの有効利用を進めるため、学園内の東海大学短期大学部静岡図

書館と東海大学福岡短期大学図書館が当システムに参入した。この短期大学の蔵書合計約 15 万冊を

TIME データベースに加えたことで、短期大学の特徴ある蔵書を OPAC で同時に検索できるようにな

り、蔵書構成の幅が広がるとともに相互利用サービスが拡大した。 NACSIS-CAT と NACSIS-ILL の積極的な活用により、他大学図書館をはじめ公共図書館からの相

互貸借と文献複写の依頼、問い合わせが増加した。ホームページによる積極的な情報公開や OPAC の

公開とあわせて、図書館資料の公開と有効利用が促進されている。 電子ジャーナルなどのオンライン・データベースは冊子体に比べ迅速に論文の検索ができ、原文の

入手を可能とする。また、本学図書館のように各図書館が各地に散在する場合は一括契約をすること

ができれば、どこでも同質・同量の情報提供が可能となる有効なサービスである。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 世界各国の大学や図書館との連携、留学生、海外で活躍する卒業生などを視野に入れた国際的な視

点から、世界に広く情報を提供するために世界のデータベース基準にあわせた Z39.50 サーバーの導

入を検討していく。 オンライン・データベースの必要性が年々高まるなか、他大学図書館との協力やコンソーシアムと

しての契約を検討していく。 大学間の提携や授業の相互乗り入れなどが一般化する状況に対応するため、図書館相互の協力体制

を強化し、コンソーシアムの働きかけを積極的に進めていく。 3. 学術情報インフラ ① 学術資料の記録・保管のための配慮の適切性(項目№199) 〔現状〕 湘南校舎の図書館においては、資料は集中的に中央図書館で発注から整理までの処理を行い、校舎

内の各図書館に送付し利用に供されている。湘南校舎の発注と予算の管理に関しては「1.図書、図

書館の整備 ③ 学生閲覧室の座席数、開館時間、図書館ネットワークの整備等、図書館利用者に対す

る利用上の配慮の状況とその有効性、適切性 5) 図書館ネットワーク」で述べたように、学内の「財

務情報システム」で処理され、発注処理の迅速化という目的は達成されている。 図書館はこの「財務

情報システム」で扱う予算管理・発注・受入以外の業務を図書館パッケージ・ソフトウェアの iLiswaveで処理している。1987 年よりコンピュータ化を開始し、所蔵データの遡及入力はほぼ終了し、現在イ

1446

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

ンターネット上で OPAC として全所蔵情報を公開している。 また、2001 年度より学園の短期大学図書館の 2 校がこの図書館システムに参加し、TIME OPAC

の書誌と所蔵件数は増加している。 目録作成では「NACSIS-CAT」のネットワークに参加し、書誌の共同分担入力をしている。書誌デ

ータは NACSIS のコーディングマニュアルに基づいて作成しているため標準化されている。ただし、

中国の図書と視聴覚資料については本学 TIME のみ目録・所蔵データを作成している。 分類は、NDC 新訂 9 版を採用しているが、医学部・健康科学部を利用対象とする伊勢原図書館で

は NLM と LC 分類を採用している。 本学の図書館システムを TIME と呼ぶが、このシステムに参加している本学および本学園の短期大

学の図書館は相互協力体制のもとに共同で所蔵目録データベースを作成し、このデータベースを利用

し、さらに、所蔵資料を互いに利用することができる。 本学で発行される紀要 16 点の目次情報を国立情報学研究所のデータベースに入力し、既に 6 点は

初号まで遡って入力を終えた。現在は、湘南校舎のみ実施しているが、今後、全校舎の図書館で実施

することになっている。 電子ジャーナルについては 2000 年度より伊勢原図書館と中央図書館で導入していて、徐々に増加

している。電子ジャーナルとデータベースの主なものは下表の通りである。中央図書館では本学全体

のサイト契約することを基本的な方針としているが、一部については契約をめぐる諸問題のため実現

できていない。これらの電子ジャーナルは図書館ホームページからアクセスすることができる。 図書資料の廃棄に関しては、利用の少なくなった重複図書や旧版の図書である「不用資料」のほか、

「回収不能図書」、「紛失」、「破損」、「汚損」、などの理由による除籍を全館一斉に定期的(年に 1 回)

に行っている。この中で利用頻度が高い紛失図書や破損図書については新たに購入し、補充を行って

いる。

電子ジャーナルおよびデータベース・リスト 2003年 1月末現在

名 称 契 約 内 容(校舎名)

情報検索サービス NACSIS-IR 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

電子図書館サービス NACSIS-ELS 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

Knowledge Worker 湘南

JCR on Web 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原、付属病院

EnjoyJOIS 湘南、代々木、清水、沼津

官報情報検索サービス 湘南中央図書館、11 号館分館

FIS online 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

Academic Universe 湘南、代々木、清水、伊勢原、沼津

LexisNexis Academic 湘南、代々木、清水、伊勢原、沼津

IEEE All-Society Periodicals 湘南

ACS 電子ジャーナル 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

Hein on line 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

サイエンス・ダイレクト コンプリート・コレクション 湘南、代々木、清水、沼津

サイエンス・ダイレクト コンプリート・ナビゲーション 湘南、代々木、清水、沼津

Emerald Online Journal 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

ProQuest Academic Research Library 湘南、代々木、清水、沼津

日経 BP 記事検索サービス 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

日経テレコン 21 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

MathSciNet 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

SciFinder Scholar 湘南、代々木、清水、沼津、伊勢原

1447

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

Literature Resource Center 湘南

AgeLine 伊勢原

EMBASE & MEDLINE 伊勢原

The Cochrane Library 伊勢原

CINAHL(MEDLINE) 伊勢原

PubMed 伊勢原

ProQuest Health and Medical Complete 伊勢原

Science Direct 伊勢原

Social Work Abstracts 伊勢原

朝日新聞記事データベース 伊勢原

医学中央雑誌 伊勢原

国立国会図書館雑誌記事索引 伊勢原

〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 図書 目録作成に関しては各館が本学図書館統一の目録規則・マニュアルで作成し、OPAC で全蔵書が検

索できる。 書誌データの面からは本学の遡及入力作業時に生じた簡略書誌や二重書誌が多数存在するため、目

録検索時に複数ヒットするなどの使いにくいデータもあり、今後書誌データの整備が必要である。 2) 雑誌 雑誌は基本的に「NACSIS-CAT」と TIME の目録・所蔵データは同じである。ただし、中国語資

料と電子ジャーナルは「NACSIS-CAT」に所蔵を登録していない。 現在、電子ジャーナルは図書館ホームページからアクセス可能となっていて TIME に書誌・所蔵を作

成していないが、OPAC から利用できるように対応を検討している。 雑誌の保存期間はそれぞれの雑誌の内容や利用のされ方を考慮し年限を定めている。全館の所蔵調

整と保存館の決定を行い、より効果的に利用と保存を行うために他の媒体(CD-ROM、電子ジャーナ

ル等)に切り替える検討も行っている。 雑誌は図書館システムの中で目録データと所蔵データの入力と検索のみを使用し、受入チェックシ

ステムを採用していない。このため雑誌の 新受入号が OPAC に反映されず、現在の新着号が利用者

にわかりにくい。 3) 視聴覚資料 視聴覚資料は NACSIS-CAT のコーディングマニュアルがないため「NCR」「AACR2」を基に目録

作成をしている。 貴重な資料については劣化の恐れがあるため、ディジタル化へのメディア変換を検討している。 4) データベース データベースの提供の方法には、CD-ROM を購入して学内のネットワークで利用できるものと外

部のオンライン・データベースをインターネットを通して利用するものとがある。 湘南校舎では CD-ROM ネットワークで「BUNSOKU」「雑誌記事索引」「Chemical Abstracts」な

どを運用しサービスを行ってきたが、徐々にオンライン・データベースに切り替わり、現在では「雑

誌記事索引」「CD-ASAX」「OED」「MUSE」「Social Sciences Index」を提供しているのみである。 オンライン・データベースに関しては「JOIS」の導入を 初として「DIALOG」「NACSIS-IR」な

ど、徐々に増加していった。利用については、「EnjoyJOIS」を例にとれば下表のように予想をはる

かに越えて利用されていることがわかる。

EnjoyJOIS利用件数(2002年 4月~5月)

1448

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

4月 5月

3,310件 8,115件

電子ジャーナルの利用について、Elsevier 社「Science Direct」を例にとれば下表の通りの利用状

況である。

Science Direct 利用件数(2002年 4~5月)

サービス 4月 5月

Requests for all pages 3,393件 2,944件

Requests for full text articles 237件 319件

Number of searches 322件 215件

〔将来の改善・改革に向けた方策〕

TIME所蔵目録の遡及入力作業時に発生した二重書誌に関しては書誌データの整備を進めなければ

ならない。 雑誌に関しては、iLiswave の新着雑誌自動チェックインシステムを稼動させる。現在準備中である

が、実現により 新受入号が OPAC に反映され利用者への情報提供サービスは大きく向上する。 電子ジャーナルの OPAC 書誌作成に関しては iLiswave のバージョンアップを待って対応する予定

である。現在、OPAC と図書館ホームページの両方から学術雑誌を検索する必要があるが、書誌デー

タに雑誌のURLを記述できれば OPAC 上で書誌を検索し、電子ジャーナルであればリンク先へ移動

することができる。 視聴覚資料については、新たなメディアに対応しながらも過去のレコードや録音テープも維持する

必要がある。今後、CD やDVD などのディジタル記録形式の媒体に置きかえることを検討していく。 外部データベースや電子ジャーナルは利用者からの要望が強く、今後も一層充実させていくが、ナビ

ゲーション機能を備えたシステム構成になっている場合はそれぞれのデータベースにおいて利用でき

るジャーナルが重複していることも多い。導入にあたっては慎重に選定することが必要である。 データベースの利用については、前述した例のように利用件数は増加しているが、まだ充分に周知

されているとはいえない。今後は広報活動を通じて広く利用者に知らせ、利用指導を定期的に行って

いく。 ② 国内外のほかの大学院・大学との図書等の学術情報・資料の相互利用のための条件整備とそ

の利用関係の適切性(項目№200) 1) 相互貸借サービス・文献複写サービス

〔現状〕 情報量の増加・多様化に伴い、各図書館は自館だけで全ての資料を揃えることは不可能となってい

る。 本学図書館では、以前から学内の各図書館間を相互利用ネットワークで連携し利用者に相互利用サ

ービスを展開してきた。図書館間の図書の貸出と利用者への貸出を行っている。文献複写サービスに

ついても館内での複写サービスと同じ料金で取り寄せている。学園内の 3 大学の図書館との間でも相

互利用に関する協定により同じサービスを展開している。 さらに学内・学園内に所蔵がない場合は、国立情報学研究所の NACSIS‐ILL システムや諸外国の

図書館などを利用して他大学・他研究機関の図書館への相互貸借と文献複写依頼サービスを実施して

いる。こうしたサービスにより学外諸機関とも相互協力関係を結んで、情報の共有化を進めている。

1449

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

〔点検・評価(長所と問題点)〕 相互利用サービスについては、1993年より学術情報センター(現在の国立情報学研究所)のNACSIS

‐ILL システムに参入したことで、業務の簡便化が図られ、各サービスの処理件数は増加した。(グ

ラフ 1・2 参照) <グラフ1>

文 献 複 写 サ ービス (依 頼 ・受 付 )

0

2 0 0 0

4 0 0 0

6 0 0 0

8 0 0 0

1 0 0 0 0

1 2 0 0 0

1 4 0 0 0

1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 年度

件数

依頼

受付

<グラフ2>

相 互 貸 借 サ ー ビ ス ( 依 頼 ・ 受 付 )

0

2 0 0

4 0 0

6 0 0

8 0 0

1 0 0 0

1 2 0 0

1 4 0 0

1 6 0 0

1 8 0 0

1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 年 度

件 数

依 頼

受 付

注)数値は付属図書館全館の合計

両サービスともここ数年間で受付件数が依頼件数を上回る傾向にあるが、全体の処理件数について

はあまり伸びていない。これは本学図書館における資料の充実と、外部データベースや電子ジャーナ

ルの積極的な導入などが要因となっている。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 インターネットが広く普及してきているため、利用者自身による情報収集が進み、図書館に申し込

1450

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

まなくても直接資料を入手できるケースが増えてきている。このことも処理件数に影響を与えている。 図書館員の専門知識や検索技術の向上は必須である。今後、これらのサービスの利用を促進するた

め、各種広報活動やガイダンスなどを工夫してより広く利用者にサービスの存在を周知させる。 今後、インターネットの普及と国際化の推進により、海外との相互協力のより一層の増加が見込ま

れるが、これらの状況に備えて過去の事例をマニュアルとして整備をし、迅速なサービスを提供でき

るように海外機関との諸手続きの見直し・簡素化などを検討していく。

2) 学外機関との相互利用・地域との相互協力 〔現状〕 本学図書館に利用者の求める資料がない場合、直接学外の図書館を利用する相互利用サービスを行

っている。また、他大学・他研究機関からの来館利用にも対応している。 OPAC を公開しているため、国内で本学図書館のみ所蔵している資料の来館利用が増加している。

湘南校舎では 1983 年より「神奈川県内大学図書館相互協力協議会」に加盟している国公私立の大学

図書館・短期大学図書館(2002 年 6 月現在 43 館加盟)が、所属する大学院生・教員などの研究者を

対象として「神奈川県内大学図書館共通閲覧証」を発行し自由な相互利用を可能にしている。 一方、地域との相互協力に関しては、生涯教育・企業における研究など様々な目的での利用を希望

する地域住民の増加に伴い、近隣住民を対象に大学図書館の公開を行っている。湘南校舎の図書館で

は、1988 年より秦野市・平塚市に在住の市民に対して、各々の市立図書館を通して「共通閲覧証」を

発行し、図書館資料の閲覧と複写の利用サービスを行っている。これは大学と各市が提携事業・交流

事業の一環として結ぶ協定に基づいているものであり、もちろん相互貸借サービスや文献複写サービ

スも対象となっている。さらに沼津図書館においても 1995 年より所在地の沼津市立図書館と協定を

結び、地域住民に対して資料の閲覧と複写のサービスを行っている。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 学外の機関との相互利用に関しては、インターネット上への OPAC 公開の効果が大きい。他大学所

属の学生から本学図書館への利用希望が多くなっている。 地域住民への図書館の開放についても、湘南校舎では利用は年々増加している。またこの地域住民

の利用に関する問い合わせも増えている。このことは大学の地域に対する社会的・文化的活動の一端

を担う図書館として高く評価できる。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 年々増加する外部利用者については、前述したように資源共有、情報の公開という側面から大学と

利用者双方にとって有意義なサービスであるが、他方で 1 日中コピー機を独占する外部利用者がいた

り、本学に所属する学生・教職員の利用を阻害する一面もある。 将来、さらに地域に密着した大学図書館として理解されていくために、学外の利用者とは相互によ

り良い環境を維持しながら図書館の公開を進める方法を検討している。 ③ コンテンツ(文書、画像、データベース等のネットワークを流通する情報資源)やアプリケ

ーション・ソフト(個々の応用目的をもったコンピュータソフトウェア)の大学・大学院間

の効率的な相互利用を図るための各種データベースのナビゲーション機能の充実度(項目№

201) 〔現状〕 本学の図書館システムは、1999 年に iLiswave へと新しくなり、図書館蔵書検索システムは改善さ

れ、充実してきている。現在は約 100 万書誌、約 188 万件の所蔵がインターネット上で検索できるよ

うになっている。

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

1993 年以降、学術情報センターの目録所在情報サービスに参加をして、NACSIS-CAT、

NACSIS-ILL を利用している。 また、1998 年 8 月より、湘南校舎が先行する形で、国立情報学研究所が開始した「学術雑誌目次速

報データベース」に参加をして、東海大学で発行される紀要の目次を入力している。 一方、電子化、マルチメディア化に対応して、本学図書館でも従来の冊子形態ではない CD-ROM

やオンライン・データベースなどの資料を取り扱うようになってきた。 CD-ROM 資料は 1997 年より湘南校舎の図書館、沼津図書館、伊勢原図書館で利用されはじめた。

伊勢原校舎内では伊勢原図書館に設置された CD-ROM サーバーに伊勢原校舎内の研究室から接続を

して検索ができるようになっていたが、現在ではオンライン・データベースに切り替わっている。湘

南校舎では図書館に CD-ROM ネットワークを構築し、「雑誌記事索引(国立国会図書館)」「Chemical Abstract on CD-ROM」「CD-ASAX」「OED2」「MUSE」「Social Sciences Index」「NTIS」「Sociological Abstracts」を提供している。 オンライン・データベースは、従来 JOIS や DIALOG などを各図書館ごとに契約をして、図書館

員による代行検索を行っていたが、現在ではインターネット経由で自宅のパソコンから利用すること

が可能となっている。資料としては「NACSIS-IR」「Enjoy JOIS」「Lexis-nexis」「Journal Citation Reports on Web」「Hein on line」などがある。中央図書館では東海大学全体を 1 サイトとしてのデータ

ベース契約を原則としている。 電子ジャーナルについても「Science Direct」「IEEE 出版雑誌」「ACS 出版雑誌」「FIS online」

「ProQuest」「日経テレコン」「日経BP」「SciFinder Scholar」などが利用可能となっている。 この OPAC、CD-ROM、オンライン・データベースを整備し、体系付け、利用者に提供するのに欠か

せないのが、図書館ホームページの存在である。図書館ホームページは 1996 年に沼津図書館、1997年に伊勢原図書館が先行して開設し、1999 年 7 月に図書館システム iLiswave の図書館蔵書検索

OPAC の公開にあわせて、付属図書館ホームページを開設した。その後、2000 年 3 月に清水図書館、

4 月に代々木図書館が開設し、本学図書館すべてのホームページが立ち上がった。それぞれのホーム

ページに利用案内、OPAC、CD-ROM、オンライン・データベースや電子ジャーナルへのリンクなど

の説明が掲載されている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 図書館は、単に情報を蓄積・保存する場所ではなく、「必要な情報を、必要な時に、必要な形で使

えるようにする」ことが重要である。インターネットを介した OPAC の公開、図書館ホームページに

よるオンライン・データベースや電子ジャーナルのリンクはこの要件を十分に満たしている。 OPAC の画面は GUI 画面へと変更され、利用者にとって検索の際の文字入力や検索方法がわかり

やすくなった。検索方法は「キーワード検索」「リテラル(文字)検索」があり、旧字・新字を一緒に検索

できるなど、利用者が求める資料を探しやすくなった。また、所蔵検索に加えて、貸出記録の多い資

料を一覧できる「ベストリーダー一覧」を表示することも可能となって利用実態を把握できるように

なった。この機能は複本購入の参考資料として役立てている。 CD-ROM 資料は索引に頼る冊子に比べて検索機能が優れており、ネットワーク対応のものは各図

書館で複数購入をしなくても良い。オンライン・データベースに比べて、安価であり、使用する人数

が限られている場合は有効である。 オンライン・データベースは全般的にその導入費用が高いが、大学内に資料や検索サーバーを用意

しないで済み、データベースによっては契約も単館だけではなく大学全体で契約することが可能であ

る。これは校舎数が多い東海大学にとって対費用効果の上から有効な一つの方法である。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 オンライン・データベースや電子ジャーナルの充実に対する要望が強く、図書館はこの要望に応え

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

ていかなければならない。そのために、今後はこれらのデータベースや電子ジャーナルの内容につい

て調査と研究を強化していく。 限られた予算の中で、これらの電子ジャーナルを効果的に導入していくには、図書館コンソーシア

ムとして他の図書館と共同で契約・導入していくことも有効な方法である。今後、検討を重ねていく。 オンライン・データベースや電子ジャーナルはそれぞれ提供元の仕様にあわせて異なった検索方法を

しなければならないが、統一・連携できる方法を模索していく。 また、利用者個人に対するきめ細かなサービスを実現するために、個人認証を使用し学内情報と連

携する方法について関係部署と調整を図る。 さらに、図書館ホームページでの本学紀要目次検索と紀要全文へのリンクを計画している。今後は、

貴重図書や特殊コレクションなどの画像情報の公開についても検討していく。 ④ 資料の保存スペースの狭隘化に伴う保存庫の整備状況や電子化の状況(項目№202) 〔現状〕 本学図書館の総蔵書数は図書約 184 万冊、雑誌約 2 万 7 千種類、視聴覚資料約 4 万 5 千点となって

いる。これに対し、設置されている書架から計算した総収容能力(注)は約 174 万 6 千冊である。保

存スペースにまだ余裕がある 12 号館分館と沼津図書館以外、すべての館において収容能力を上回る

蔵書を抱えている。そのため、保存スペース狭隘化対策として図書館以外の施設 2 ヵ所を資料保存ス

ペースとして確保して使用している。湘南 10 号館地下に書庫を確保し、また清水市の旧付属高校の

跡地施設を転用した「総合資料センター」の一部を図書館の資料保存用に使用している。 10 号館書庫の収容能力は約 2 万 9 千冊で、中央図書館と 13 号館分館の資料を順次移動し、利用で

きる状態となっている。残余収容能力は約 1 万冊である。「総合資料センター」の収容能力は約 16 万

8 千冊で、現在は中央図書館、11 号館分館、代々木図書館、清水図書館、伊勢原図書館の資料を移動

し、書架に配架している。「総合資料センター」の残余収容能力は約 8 万 8 千冊である。 (注)収容能力は、「文部科学省大学図書館実態調査」の[棚板 90cm あたり 25 冊の割合]の計算方法

により算出

各館毎の蔵書数および収容能力

図書館名 図書(冊) 雑誌(種類) 視聴覚資料(点) 収容能力(冊)

中央図書館 462,497 5,975 11,737 322,222

11号館分館 479,773 5,880 124 426,744

12号館分館 228,289 4,450 1,141 257,722

13号館分館 60,474 805 23,687 43,306

代々木図書館 98,115 971 907 53,750

清水図書館 207,229 3,470 2,755 206,389

沼津図書館 56,912 535 997 182,500

伊勢原図書館 246,717 4,757 3,237 254,000

計 1,839,460 26,843 44,585 1,746,633

注)2002年 3月末現在の数字

10号館書庫の概況

資料移動館 収容能力(冊) 移動数(冊) 残余収容能力(冊)

中央図書館および

13号館分館 29,000 19,000 10,000

総合資料センターの概況

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第9章 図書館及び図書等の資料、学術情報

資料移動館 収容能力(冊) 移動数(冊) 残余収容能力(冊)

中央図書館および

11号館分館 77,500 36,000 40,000

代々木図書館 29,500 31,000 0

清水図書館 37,000 2,000 36,000

伊勢原図書館 24,000 11,000 12,000

計 168,000 80,000 88,000

注)2002年 3月末現在の概数

〔点検・評価(長所と問題点)〕

本学図書館の各館においては、数年前より資料の保存スペースの狭隘化が問題となっている。解決

策として、湘南校舎では図書館以外の建物の一部を図書館の資料保存用に確保する案が過去にいくつ

か取り沙汰された。特に13号館分館の狭隘化が甚だしく、早急な解決策が求められていたが、13号

館分館に隣接する10号館の一部を図書館書庫として確保することができた。8段組の書架を設置し、

13号館分館が窓口となって出納方式による利用ができるように態勢を整えているので、別置書庫とし

ての機能を十分果たしている。

「総合資料センター」については、付属高校の統合に伴い、その跡地施設転用の一環として総合資

料センター構想が浮上した。他部署と同様、本学図書館も施設利用に参加することとなり、旧付属高

校の教室等の一部に書架を設置し、図書館の資料保存庫として利用できるよう整備が進められた。清

水図書館のみならず湘南校舎の図書館、代々木図書館、伊勢原図書館も含めた大規模な資料移動が可

能となった。「総合資料センター」に設置した図書の利用希望があった場合には、週に一便、清水図書

館から送付されることになっている。利用者は 大1週間ほど待てば利用することができる。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕

本学図書館の年間受入状況は、ここ数年約5万冊である。増え続ける資料をすべて保存するのは物

理的にも限界がある。スペースの有効利用のために、資料によって永久保存するものと、ある程度利

用年数が経過してから除籍するものとに選別している。また、複数館で重複して所蔵している資料に

ついては所蔵調整を行い、保存館を限定する必要がある。湘南校舎の図書館においては既に雑誌の所

蔵調整を実施しているが、今後は他校舎の図書館も含めた調整を検討していく。

さらに、資料のメディア変換も有効な方策の一つである。伊勢原図書館では冊子体の医学雑誌バッ

クナンバーの一部をマイクロフィルムに入れ替えており、中央図書館では創立者松前重義博士の講義

テープの CD 化が進められるなど、既に一部メディア変換が実施されている。CD-ROM 資料や電子ジャ

ーナル等メディアの多様化に伴う受入も着々と進んでいる。今後もメディア変換を積極的に推進して

限られた保存スペースの有効利用に繋げていかなければならない。

将来的には「新図書館構想」の実現に期待したいが、この新図書館には湘南校舎の4館を統合する

ばかりではなく、本学図書館全体の保存図書館としての機能をもたせている。

当面は現状の保存スペースの有効利用について十分検討し、効果的な活用を進めていく。

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