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我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。 第1節 我が国製造業の足下の状況 注1 新型コロナウイルス感染症の発生と我が国製造業の業績動向 我が国経済は、雇用・所得環境の改善や、設備投資 の拡大などを背景に緩やかな回復を続けてきたが、 2018 年後半以降、中国経済の減速や度重なる災害、 天候不順、通商問題や海外経済の不確実性等の影響 が、製造業を中心に企業収益や投資にも波及してい る。さらに、2020 年4月1日現在、新型コロナウイ ルス感染症(COVID-19)(以下、「新型コロナウイ ルス感染症」と表記)の世界的な感染拡大の影響によ り内外経済が大幅に下押しされ、景気は厳しい状況に ある。 ここではまず、喫緊の問題である新型コロナウイル ス感染症の感染拡大の影響について、2020 年4月1 日までの状況を概観した上で、近年の我が国経済の全 体的な動向や製造業の業績について概観していく。 (1)新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響 2020 年1月に中国湖北省武漢において最初に発生 した新型コロナウイルス感染症は、まず中国国内で拡 大した。2月中旬までに中国国内での感染者数は約 8.1 万人にまで増加したが、それ以降中国での感染者 数の増加速度は大幅に低下した。ところが3月上旬か らその感染範囲が世界的に拡大し、米国、イタリア、 スペイン等で感染が拡大している。 4月1日現在、世界の感染例は約 85 万例、感染に よる死者は約 4.2 万人に上る。国内においても感染 例は 2,178 例、死亡者は 57 人になるなど、感染の 収束は見通せない状況である。これにより各国経済に 深刻な影響が及んでおり、我が国もかつてない危機に 直面している。 続いて、我が国製造業への影響と、これまでの対 策を概観したい。我が国においては、2020 年1月末 日、中国湖北省全域が感染症危険レベル3(渡航中止 勧告)、中国全域が感染症危険レベル2(不要不急の 渡航を制限)まで引き上げられた。湖北省武漢には自 動車産業の集積地として国内自動車メーカーや同部品 メーカー等が進出しており、日本は、現地で生産され たバネや繊維・樹脂製の部品、素材などを輸入してい たため、部品調達の寸断を背景に、多くの進出企業や その拠点が操業停止を余儀なくされただけでなく、中 国に進出している日系企業や、中国と取引のある国内 企業、インバウンド消費、サプライチェーン全体に大 きな影響を与えた。 このような状況を受けて、日本政府は、2月13日、 「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」を 決定し、帰国者等への支援、水際対策、国内感染症対 策などを中心に、予備費 103 億円を含む総額 153 億 円の対応策を実行することとし、25 日には「新型コ ロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定した。さ らに3月 10 日には、「新型コロナウイルス感染症に 関する緊急対応策(第2弾)」として、財政措置 0.4 兆円、金融措置総額 1.6 兆円の対応策を決定したが、 その中には、サプライチェーン毀損等に対応するため の設備投資や販路開拓などに取り組む事業者の優先支 援も盛り込まれた。 しかし、3月 11 日に WHO(世界保健機関)が「新 型コロナウイルスは『パンデミック』といえる」と宣 言し、米国では3月 19 日に日本を含む全世界への渡 航中止が勧告されるなど、新型コロナウイルスの世界 的な感染拡大は深刻化していった。そうした中、3月 13 日午前の東京株式市場はニューヨーク市場の株価 下落などを受けて売り注文が殺到し、日経平均株価は 前日と比べて一時 1,869 円値下がりとなるなど歴史 的な値下がり幅を記録した(図111-1)。 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 第1章 5

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Page 1: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

第1章我が国ものづくり産業が直面する課題と展望

注1 本白書における統計の数値については、2020 年4月1日時点で公表されているものを元にしている。

第1節 我が国製造業の足下の状況注1

新型コロナウイルス感染症の発生と我が国製造業の業績動向1

我が国経済は、雇用・所得環境の改善や、設備投資の拡大などを背景に緩やかな回復を続けてきたが、2018 年後半以降、中国経済の減速や度重なる災害、天候不順、通商問題や海外経済の不確実性等の影響が、製造業を中心に企業収益や投資にも波及している。さらに、2020 年4月1日現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、「新型コロナウイルス感染症」と表記)の世界的な感染拡大の影響により内外経済が大幅に下押しされ、景気は厳しい状況にある。

ここではまず、喫緊の問題である新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響について、2020 年4月1日までの状況を概観した上で、近年の我が国経済の全体的な動向や製造業の業績について概観していく。

(1)新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響2020 年1月に中国湖北省武漢において最初に発生

した新型コロナウイルス感染症は、まず中国国内で拡大した。2月中旬までに中国国内での感染者数は約8.1 万人にまで増加したが、それ以降中国での感染者数の増加速度は大幅に低下した。ところが3月上旬からその感染範囲が世界的に拡大し、米国、イタリア、スペイン等で感染が拡大している。

4月1日現在、世界の感染例は約 85 万例、感染による死者は約 4.2 万人に上る。国内においても感染例は 2,178 例、死亡者は 57 人になるなど、感染の収束は見通せない状況である。これにより各国経済に深刻な影響が及んでおり、我が国もかつてない危機に直面している。

続いて、我が国製造業への影響と、これまでの対策を概観したい。我が国においては、2020 年1月末

日、中国湖北省全域が感染症危険レベル3(渡航中止勧告)、中国全域が感染症危険レベル2(不要不急の渡航を制限)まで引き上げられた。湖北省武漢には自動車産業の集積地として国内自動車メーカーや同部品メーカー等が進出しており、日本は、現地で生産されたバネや繊維・樹脂製の部品、素材などを輸入していたため、部品調達の寸断を背景に、多くの進出企業やその拠点が操業停止を余儀なくされただけでなく、中国に進出している日系企業や、中国と取引のある国内企業、インバウンド消費、サプライチェーン全体に大きな影響を与えた。

このような状況を受けて、日本政府は、2月 13 日、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」を決定し、帰国者等への支援、水際対策、国内感染症対策などを中心に、予備費 103 億円を含む総額 153 億円の対応策を実行することとし、25 日には「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定した。さらに3月 10 日には、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策(第2弾)」として、財政措置 0.4兆円、金融措置総額 1.6 兆円の対応策を決定したが、その中には、サプライチェーン毀損等に対応するための設備投資や販路開拓などに取り組む事業者の優先支援も盛り込まれた。

しかし、3月 11 日に WHO(世界保健機関)が「新型コロナウイルスは『パンデミック』といえる」と宣言し、米国では3月 19 日に日本を含む全世界への渡航中止が勧告されるなど、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は深刻化していった。そうした中、3月13 日午前の東京株式市場はニューヨーク市場の株価下落などを受けて売り注文が殺到し、日経平均株価は前日と比べて一時 1,869 円値下がりとなるなど歴史的な値下がり幅を記録した(図 111-1)。

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

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Page 2: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

3月中下旬以降、欧米やインドなどにおいても感染拡大が深刻化し、感染者や感染による死者が急増し、各国で外国人の入国制限や渡航禁止、さらには外出禁止などの移動制限が行われるようになると、需要の急減が自動車産業を始めとする国内製造業に直接的な打撃を与え、各自動車メーカーの国内拠点においても生産停止に追い込まれる事例が相次いだ。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスクや医療用ガウン等の防護具等の医療関連物資の需要が急増した。我が国においても、不足する医療関連物資の生産体制の強化や感染症指定病院等の優先施設への配布などの対応が急がれている。また、科学研究費助成事業(特別研究促進費)を利用して、アジア地域の感染症研究拠点を活用し、新型コロナウイルス感染症に関する情報や検体の収集・分析、流行実態や宿

主動物に関する疫学調査、迅速診断技術の確立等、予防・診断・治療法の開発に向けた基礎的研究を実施するとともに、新型コロナウイルス感染症に関する研究開発に際して、同ウイルスを用いた遺伝子組換え実験を行い、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成 15 年法律第 97 号、いわゆるカルタヘナ法)に基づく大臣確認が必要となる場合には、迅速に必要な審査を行うなどの対応が取られている。

このような動きに対応して、各国においても財政出動を柱とする緊急対策が取られているところであるが(図 111-2)、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う消費や設備投資の減少といった実体経済への影響は、今後もさらに深刻化する恐れがある。

資料:日本経済新聞社

図 111-1 株価の推移(日次データ)

123456789101112123456789101112123456789101112123 12345678910111214,000

16,000

18,000

20,000

22,000

24,000

26,000

16 17 18 19 20

(円)

(月)(年)

6

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(2)我が国経済の全体的な動向次に、近年の我が国経済の全体的な動向をみていく。我が国の経済成長率の指標となる実質 GDP 成長率

の推移を確認すると、2013 年以降、2014 年4月の消費税率引き上げ後を除き、おおむね緩やかな回復基調が続いてきた(図 111-3)。2016 年から 2017 年にかけて、雇用・所得環境の改善も背景とした個人消費の持ち直しや、設備投資の増加などが見られ、実質GDP 成長率は8四半期連続の前期比プラスとなった。

しかし、2018 年に入ると、第3四半期には 2018年7月豪雨を始めとする相次ぐ自然災害の影響等によ

り企業設備投資や個人消費が悪化し、前期比マイナスとなった。2018 年第4四半期以降は4四半期連続で前期比プラスとなり持ち直しが見られたが、2019 年第4四半期においては、公需が内需を下支えする一方で、民間消費では5四半期ぶりのマイナス、企業設備投資が3四半期ぶりのマイナスとなり、前期比マイナス1.8%と2014年第2四半期以来の下げ幅となった。

このような状況に加え、2020 年以降は新型コロナウイルス感染症による悪影響が見通される。引き続き、内外の環境変化の影響に注視が必要な状況である。

図 111-2 各国の主な経済対策

資料:日本経済新聞、野村證券、Bloomberg、Deuchbank(2020 年3月 24 日時点)

国・地域

米国 220兆円(9.3%)

18.9兆円(1.2%)

47兆円(16%)

84兆円(23%)41兆円(14%)45兆円(21%)

家計:現金給付(大人1200ドル、子ども500ドル)企業:大企業向けの融資・債務保証(5000億ドル、うち航空会社に   300億ドル)   雇用を維持する中小企業への資金支援(3700億ドル)

家計:休業従業員の給与の80%を政府が肩代わり企業:航空会社、店舗、ホスピタリティ業界への支援。   VAT支払いを繰り延べ   企業支援で43兆円の信用枠。

370億ユーロ(4兆円)の投資促進策企業:零細企業や個人事業主への支援   企業の債務保証、出資なども実施家計:ワークシェアリング、直接税と社会保険料の猶予企業:3000億ユーロまでの新規銀行融資を国が保証家計:100億ユーロの家計所得支援企業:売上減の企業を支援。流動性支援(3500億ユーロ)

企業:中小企業などの社会保険料負担を減免   地方政府への債務発行の前倒し

・政策金利を1.5%→1.0%→ ゼロ金利に・ドルスワップ金利の引き下げ、 スワップ対象国の拡充・無制限の量的緩和

・MLFの金利引き下げ・金融機関への流動性の供給・預金準備率の引き下げ

・0.75%→0.25%→0.1%と事 実上のゼロ金利に・量的緩和の再開

ECBは90兆円規模の量的緩和

中国

英国

EU

ドイツ

フランス

イタリア

対策の主な中身 金融政策規模(GDP比)

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

7

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我が国 GDP に占める業種別の内訳を確認すると、直近となる 2018 年についても 20.7%と全体の2割

以上を占め、我が国経済を支えている(図 111-4)。

資料:内閣府「2020 年 10-12 月期四半期別 GDP 速報(2 次速報値)」(2020 年 3 月 9 日公表)

図 111-3 実質 GDP 成長率の推移(前期比)とその寄与度

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

12 13 14 15 16 17 18 19

純輸出 政府支出 在庫 設備投資 住宅 個人消費 GDP

(四半期)

(年)

(前期比:%)

資料:内閣府「国民経済計算(GDP 統計)」備考:ここでいう「サービス業」とは、「宿泊・飲食サービス業」、「専門・科学技術、業務支援サービス業」、「公務」、「教育」、「保健衛生・社会事業」、「その   他のサービス業」とする。

図 111-4 業種別 GDP 構成比の変化

21.4%

20.7%

29.5%

30.0%

13.9%

13.7%

11.2%

11.3%

5.1%

5.7%

19.0%

18.5%

0 20 40 60 80 100(%)

08年

18年

製造業 サービス業 卸売・小売業 不動産業 建設業 その他

8

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(3)国内製造業の業況①国内製造業の業況と営業利益

続いて、我が国製造業の業況について確認する。企業の全般的な業況を示す日本銀行「全国企業短

期経済観測調査(短観)」の業況判断 DI を見ると、大企業の製造業は、2013 年半ば以降プラス圏を推移してきたが、2019 年に入り、米中貿易摩擦への懸念や原材料価格の上昇などを背景に DI プラス幅は縮小し、2019年第1四半期以降5期連続の悪化となった。

また、中小製造業においても 2019 年に入りプラ

ス幅が縮小し、2019 年第2四半期以降は「悪い」と回答した企業が「良い」と回答した企業を上回り、DI がマイナスとなる状況が4期連続している。非製造業では 2019 年第4四半期時点では高水準を維持しており、2019 年以降業種別の業況の差が拡大していたが、4月1日に公表された 2020 年第1四半期分では、新型コロナウイルス感染症等の影響を受け、製造業、非製造業ともに悪化し、大企業製造業では2013 年第1四半期以来7年ぶりとなるマイナスを示した(図 111-5)。

製造業の営業利益の推移を見ると、2012 年以降、熊本地震による被害や英国の EU 離脱を支持する国民投票による世界情勢の不透明感の高まりなどを背景に利益が縮小した 2016 年を除き、2017 年まで増加傾向を続け、同年には 17.3 兆円まで拡大した。

しかし、2018 年秋以降の米中貿易摩擦による中国経済の減速や海外経済の不確実性等の影響を受け、

2018 年、2019 年は2年連続の減益となった。特に、2019 年は中国経済のさらなる悪化に加えて台風や暖冬による個人消費の縮小などもあり輸送用機械器具製造業(自動車等)、生産用機械器具製造業、化学工業等業種別に見ても大幅な減益となり、製造業の営業利益は2013年以降最低となる12.5兆円に留まった(図111-6)。

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠ

10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(%ポイント)

(年)

大企業 製造業 大企業 非製造業中小 製造業 中小 非製造業

業況が良い

業況が悪い

(四半期)

備考:「業況判断 DI」は、回答企業の収益を中心とした業況についての全般的な判断を示すものであり、「良い」という回答比率から「悪い」という回答比率   を引いて算出。資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

図 111-5 日銀短観・業況判断 DI の推移(企業規模別)

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

9

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企業規模別に見ると、中小企業、大企業共に営業利益、売上高いずれも、「減少」または「やや減少」の

合計が「増加」または「やや増加」と回答した割合より大きくなっている(図 111-9・10)。

製造業の業績に関する認識を 2019 年 12 月に行われたアンケートで確認したところ、売上高、営業利益

とも悪化傾向が続いている(図 111-7・8)。

備考:資本金 1 億円以上の企業の四半期の営業利益の合計資料:財務省「法人企業統計」

図 111-6 営業利益の推移(製造業業種別)

2.2 2.5 2.6 2.9 3.1 3.5 3.3 3.4

-0.1

0.4 0.6 0.4 0.1 0.4 0.4

0.0

0.1 0.2 0.2 0.20.2

0.3 0.3 0.20.5

0.9 1.0 1.0 0.81.4 1.6 1.2

0.60.7 0.8 0.7 0.6

0.7 0.70.5

0.30.7

1.2 1.1 0.7

1.5 1.61.2

-0.1

0.61.2 1.1

0.7

1.3 1.2

0.4

1.6

3.73.6 3.7

2.2

3.4 3.1

1.83.3

3.73.1 3.7

4.2

4.7 4.3

3.9

8.5

13.4 14.3 14.9

12.6

17.3 16.5

12.5

-2

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

12 13 14 15 16 17 18 19(年)その他製造業 輸送用機械器具製造業(集約)情報通信機械器具製造業 電気機械器具製造業業務用機械器具製造業 生産用機械器具製造業はん用機械器具製造業 鉄鋼業化学工業 製造業(合計)

(兆円)

16.0 6.5 5.9

26.5

15.0 13.6

32.6

35.3 35.0

17.4

28.0 29.6

7.5 15.1 16.0

0

20

40

60

80

100(%)

2019FY2018FY2017FY(n=3,205)(n=4,521)(n=4,389)

増加やや増加横ばいやや減少減少

22.8 14.0 10.2

23.6

16.8 15.2

29.0

32.7 32.7

15.7

21.6 25.3

9.0 14.9 16.7

0

20

40

60

80

100(%)

2019FY2018FY2017FY(n=3174)(n=4499)(n=4333)

増加やや増加横ばいやや減少減少

図 111-7 業績の動向(売上高) 図 111-8 業績の動向(営業利益)

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

10

Page 7: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

営業利益の増減の理由を尋ねると、増加理由については「販路開拓・シェア拡大」や「好況・景気の持ち直し」等売上の増加が要因として挙げられているが、「高付加価値へのシフト」や「調達コストの削減」といった経営見直しによる要因もこれらに続いている。

一方、減少理由については、「不況・景気の後退」、「貿

易摩擦・通商環境変化」も上位となっているが、「人件費の上昇」、「調達コストの上昇」、「販路縮小・シェア縮小」といった要因も影響していると認識されている。

業績の「増加」と「減少」共に、外部要因の影響はあるものの、内部要因の影響も大きく認識されていることが分かる(図 111-11)。

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

図 111-9 業績の動向(売上高 : 規模別) 図 111-10 業績の動向(営業利益 : 規模別)

3.9 48.3

2.4

6.5

1.6

3.7

53.3 22.2

14.9

28.8

17.2

9.2

3.8 70.7

2.6 12.4

17.2

27.5

7.3

6.4

3.0

26.6 30.3

42.3

21.3

7.8

9.2 19.2

0 20 40 60 80(%)【外部要因】 為替レートの影響

好況・景気の持ち直し/不況・景気の後退

規制や制度・ルールの利活用/強化

労働力不足(■)

資源価格の下落/高騰

貿易摩擦・通商環境変化

消費税率の引き上げ(■)

自然災害(■)

他社による新技術・サービスの登場

【内部要因】 販路開拓・シェア拡大/販路縮小・シェア縮小

調達コストの削減/上昇

人件費の削減/上昇

高付加価値へのシフト/価格競争

自社の新商品・サービス開発/不振

新規事業への進出/低迷

設備投資による減価償却費の増加(■)

(n=751) 営業利益が増加した理由 (n=1,446) 営業利益が減少した理由

備考:■印:営業利益が減少した場合のみの選択肢資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月)

図 111-11 業績の増減理由

備考:資本金 1 億円以上の企業の四半期の営業利益の合計資料:財務省「法人企業統計」

7.4

8.3

17.3

22.0

32.7

31.2

26.4

31.2

16.2

7.3

0 20 40 60 80 100

中小企業

大企業

(n=

3,0

88

)(n

=1

09

)

増加 やや増加 横ばい やや減少 減少

(%)

8.8

12.8

15.9

11.0

29.2

25.7

23.6

21.1

22.5

29.4

0 20 40 60 80(%)100

中小企業

大企業

(n=3,057)

(n=109)

増加 やや増加 横ばい やや減少 減少

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

11

Page 8: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

今後5年間程度のビジネスを取り巻く環境への認識については、「変化しない」と回答する割合が減少し、変化を見込む企業が増加している(図111-12)。また、今後3年間の国内外の業績の見通しについては、足下

での通商問題の動向や、中国経済の先行き不透明感などの影響もあり、2019 年1月のアンケート時と比べると増加見通しと回答する企業の割合は減少し、減少見通しとする企業が増加している(図 111-13・14)。

5.3 5.3 5.3 3.1 2.3 12.2 9.3 5.7

36.2 35.7 34.1

36.0 40.2 43.1

10.4 10.4 11.6 11.6 14.8 14.8

0

20

40

60

80

100

2019FY2018FY2017FY(n=1,198)(n=1,755)(n=1,623)

増加やや増加横ばいやや減少減少

(%)

5.4 3.5 2.4 15.2 9.8 7.1

41.4 42.7 41.4

30.3 35.3 37.5

7.8 8.7 11.5

0

20

40

60

80

2019FY2018FY2017FY(n=1,174)(n=1,741)(n=1,609)

100(%)

増加やや増加横ばいやや減少減少

図 111-12 今後5年程度の自社のビジネスを取り巻く環境

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業   の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

0

20

40

60

80

100

大規模な変化が見込まれる

これまでよりは大きな変化が見込まれる

これまでと同程度の変化を見込む

変化しない

(%)

3.2 7.9 8.5

36.7 33.6 39.1

47.6 47.1 43.5

12.5 11.5 8.9

2019FY2018FY2017FY(n=3,205)(n=4,494)(n=4,368)

図 111-13 今後3年間の見通し(国内)

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

国内売上高 国内営業利益

7.8 4.4 3.2

22.6 13.6 10.1

39.4 40.6

38.9

25.4 33.6 38.6

4.7 7.7 9.3

0

20

40

60

80

100

2019FY2018FY2017FY(n=3,191)(n=4,459)(n=4,306)

増加やや増加横ばいやや減少減少

(%)

8.3 5.3 3.8

25.0 15.6 12.4

38.8 41.7 42.1

23.9 31.0 34.4

4.0 6.3 7.4

0

20

40

60

80

100

2019FY2018FY2017FY(n=3,176)(n=4,420)(n=4,289)

(%)

増加やや増加横ばいやや減少減少

図 111-14 今後3年間の見通し(海外)

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

海外売上高 海外営業利益

12

Page 9: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

③資金調達の動向続いて、我が国企業に対する市場の評価を確認す

る。日経平均株価は 2016 年 11 月の米国大統領選後から 2017 年初めにかけて上昇に転じ、2018 年 1月には 24,000 円を突破、同年 10 月には 27 年ぶりの高値を付けた(前掲:図 111-1)。2019 年の株価はおおむね 20,000 円台から 22,000 円台の間で推移し、12 月中旬には 24,000 円台に達したものの、2020 年2月下旬から4月1日にかけては新型コロナウイルス感染症による世界的な情勢不安の影響を受け、大幅に低下している。

業種別の株価騰落率を見ると、2016 年2月中旬から、「電機・精密」が東証株価指数を上回る状態で推移している。特に、2019 年後半以降では、電機・精密分野における在庫調整が進んだことや、5G 普及への期待感、車の電装化等の需要拡大を背景に、東証株価指数を大きく上回った。機械分野も同様に 2019年後半以降好調に推移していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により世界の経済活動が抑制されたこと等を背景として、2月下旬以降から4月1日にかけては、全業種で悪化している(図 111-17)。

②生産の動向続いて、国内製造業の生産の動向を確認するため、

鉱工業生産活動の全体的な水準を示す鉱工業生産指数をみると、2015 年半ばから 2016 年にかけて一旦低下した後、2016 年半ば以降、上昇基調が続いた。しかし、2018 年秋以降は世界経済の減速等も背景に

電気機械工業、輸送機械工業等が低下傾向にある(図111-15)。

稼働率指数も、はん用・生産用・業務用機械工業を始めとして 2019 年夏以降低下した(図 111-16)。今後、新型コロナウイルス感染症の影響による需要縮小を受け更に悪化する可能性がある。

80

85

90

95

100

105

110

115

120

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 213 14 15 16 17 18 19 20

(2015年=100 、季節調整値)

(年)(月)

輸送機械工業鉱工業 はん用・生産用・業務用機械工業 電気機械工業

資料:経済産業省「鉱工業指数」

図 111-15 鉱工業生産指数の推移

13 14 15 16 17 18 19 20(年)(月)

輸送機械工業製造工業 はん用・生産用・業務用機械工業 電気機械工業

80

85

90

95

100

105

110

115

120(2015年=100 、季節調整値)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 910 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1

資料:経済産業省「製造工業生産能力指数・稼働率指数」

図 111-16 稼働率指数の推移

012/12 14/12 16/12 18/12

20406080100120140160180

電機・精密東証株価指数(TOPIX) 自動車・輸送機 機械

備考:2012 年 12 月 28 日を基準とする騰落率の推移。資料:Bloomberg より経済産業省作成

図 111-17 株価の騰落率の推移(東証株価指数、業種別株価指数)

資料:日本経済新聞社

前掲:図 111-1 株価の推移(日次データ)

123456789101112123456789101112123456789101112123 12345678910111214,000

16,000

18,000

20,000

22,000

24,000

26,000

16 17 18 19 20

(円)

(月)(年)

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

13

Page 10: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

企業の株式による資金調達額の推移をみると、企業の資金調達額は 2012 年以降、2015 年にかけては増加したが、2016 年には低金利などの環境を活用した社債発行による資金調達の動きが広がり、株式による

資金調達は減少した。その後、株式による資金調達額は 2017 年には持ち直したものの、2018 年以降には再び減少に転じ、2019 年の資金調達額は 2013 年以降、最少の金額となった(図 111-18)。

④雇用・所得の動向2019 年の完全失業率は 2.4%と前年に引き続き

3%を下回る低水準が続いている。有効求人倍率は2018 年4月から 2019 年6月までの間 1.6 倍を超える高水準が続いてきたが、米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速の結果、製造業の生産活動が弱まったことなどの影響を受け、その後は低下傾向となっている。2020 年1月には、ハローワークの求人票の記載項目が拡充され、一部に求人の提出を見送る動きがあったことから、求人数の減少を通じて有効求人倍率が低下したこともあり、同年1月、2月は 1.5 倍を下回った。雇用情勢は近年着実に改善してきたものの、2020 年3月以降も、新型コロナウイルス感染症による製造業の生産活動への影響や、イベント等の自粛に伴う需要縮小による影響について注視していく必要がある(図111-19)。

残業時間などを表す所定外労働時間を見ると、2016 年半ば以降、企業の設備稼働率が増加傾向を示し、企業の生産活動が回復するにつれ、2017 年には増加したが、2018 年後半からは、働き方改革の効果もあり、所定外労働時間は減少傾向にある。この傾向は、2019 年はより一層顕著となり、2018 年 12 月以降、14 か月連続で前年同月比マイナスとなった(図111-20)。

2020 年4月1日時点で公表されている製造業における月々の賃金動向を確認すると、製造業の所定内給与は、ベースアップの広がり等もあり 2017 年 11月以降 27 か月連続で前年同月以上となっている一方で、所定外給与を見ると、2018 年 12 月以降 14か月連続で前年同月比マイナスの水準となった(図111-21)。

備考:「国内」における「株券」による資金調達。資料:日本証券業協会

図 111-18 株式による資金調達の推移

86

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

13 14 15 16 17 18 19

(兆円)

0

20

40

60

80

100(件数)

調達額・新規公開 調達額・新規公開以外調達件数・新規公開以外(右軸) 調達件数・新規公開(右軸)

0.7

0.8

1.0

0.1

0.4

0.20.1

0.19

0.22

0.09

0.12

0.09

0.14

0.09

18

14

Page 11: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

注2 我が国の国際収支統計は 2014 年1月の公表分から、IMF 国際収支マニュアル第6版に準拠した統計に移行しており、主要項目の組み   替えや表記方法、計上基準などの変更が行われている。従来の「所得収支」は「第一次所得収支」、「経常移転収支」は「第二次所得収支」   へと項目名が変更されている。本白書では原則、移行後の統計を用いる。

我が国の経常収支2

我が国の経常収支注2黒字は 2011 年以降4年連続で縮小し、2014 年には比較可能な 1985 年以降で最少となる 3.9 兆円を計上したが、2015 年からは3年連続で拡大し、2017 年には 22.6 兆円となった。2018年、2019 年は 2017 年と比較すると黒字額がやや縮小したものの、エネルギー価格の安定化やエネルギー輸入量の減少を背景に、2019 年では 20.1 兆円と高水準を維持した。海外現地法人の収益等からなる第1次

所得収支を見ると、グローバル化に伴う我が国企業の海外進出や海外の株式・債券などへの投資が活発化したことにより、2019 年では 20.1 兆円まで拡大した。貿易収支は 2016 年に黒字に転じたが、2019 年は中国の景気減速による電気機器・一般機械の輸出減少等を背景とした輸出額の減少により、黒字幅を縮小した。2005 年以降は第1次所得収支が貿易収支を上回り、我が国の経常収支の黒字を支えている(図112-1・2)。

ここでは製造業の観点から、我が国経常収支の構造変化を分析する。

備考:いずれも季節調整値。2011 年 3 月~ 8 月までの完全失業率は、補   完推計値を用いている。また、2020 年1月から求人票の記載項目が   拡充され、一部に求人の提出を見送る動きがあったことから、求人数   の減少を通じて有効求人倍率・新規求人倍率の低下に影響しているこ   とに留意が必要。資料:総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」

図 111-19 雇用環境の動向(完全失業率、有効求人倍率)

備考:1. 事業所規模5人以上   2.一般労働者(常用労働者のうち、パートタイム労働者でない労働者)   3. データについては、4月1時点で公表されている 2020 年1月(速     報)を利用資料:厚生労働省「毎月勤労統計調査」から作成

図 111-20 製造業の所定外労働時間の動向

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 9101112113 14 15 16 17 18 19 20

特別に支払われた給与

所定外給与

所定内給与

現金給与総額

(前年同月比%)

(月)(年)

備考:1. 事業所規模5人以上。   2. 一般労働者(常用労働者のうち、パートタイム労働者でない労働者)。   3. データについては、4月1時点で公表されている 2020 年1月(速報)を利用資料:厚生労働省「毎月勤労統計調査」から作成

図 111-21 製造業の所得環境の動向(現金給与総額)

0

0.4

0.8

1.2

1.6

2

08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(倍)

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

(%)完全失業率(左軸) 有効求人倍率(右軸)

-16

-12

-8

-4

0

4

60

70

80

90

100

110

16 17 18 19(月)(年)20

(2015年=100) (%)前年比(右軸)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1

所定外労働時間指数(左軸)第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

15

Page 12: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

(1)製造業の貿易収支動向主要な品目別(「貿易統計」の概況品ベース)に貿

易収支注3を見ると、2000 年来、貿易赤字方向に寄与した要因は「鉱物性燃料」、「食料品」、「原料品」などの輸入超過であるが、特に「鉱物性燃料」の寄与が大きい(前掲:図 112-2)。

2019 年の原油価格は直近ピークである 2014 年6月の1バレル= 105 ドルと比べ低い水準で安定的に

推移していたが、2020 年3月は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた原油需要減見通しに対応するために行われた OPEC 加盟国の減産協議が決裂し、大幅値下げとなった。このような原油価格の大幅減は、今後プラント産業の新規案件組成等に悪影響を与える可能性がある。輸入量については、2017 年以降減少傾向が続いている(図 112-3・4)。

注3 「国際収支統計」の貿易収支と「貿易統計」は、金額計上に当たっての範囲や時点等が異なるため、値は一致しない。

資料:財務省・日本銀行「国際収支統計」

図 112-1 経常収支の推移

備考:品目の分類は「貿易収支」の概況品ベース。資料:財務省「貿易統計」

図 112-2 貿易収支の推移

0

20

40

60

80

100

120

140

0

5

10

15

20

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

液化天然ガス(左軸)原油(右軸)

(ドル/百万Btu) (ドル/バレル)

(年)1.7

1.8

1.9

2.0

2.1

2.2

2.3

2.4

2.5

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

液化天然ガス(左軸)原油(右軸)

(万トン) (億キロリットル)

(年)

備考:1. 液化天然ガスはインドネシア産液化天然ガスの1百万 Btu。2. 原油は米国産 WTI 原油の1バレルあたりのドル価格。液化天然ガスは英国熱量単位あたりドル価格。資料:IMF「Primary Commodity Prices」

図 112-3 エネルギー価格の推移

備考:1. 液化天然ガスは HS コード「271111000」。2. 原油は HS コード「270900900」。資料:財務省「貿易統計」

図 112-4 エネルギー輸入量の推移

12.7 11.8 9.5-0.3

-4.3-8.8

-10.5

-0.95.5 4.9 1.2

-5.3 -4.1 -2.7 -2.8-3.8

-3.5 -3.0

-1.9 -1.1 -0.7 -0.80.2

7.711.9

13.6

14.614.0 17.7 19.4

21.019.1 20.5

20.920.7

14.118.7 19.4

10.4

4.8 4.5 3.9

16.2

21.4 22.619.220.1

-15-10-5051015202530

2000 05 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

第二次所得収支 第一次所得収支 サービス収支貿易収支 経常収支

(兆円)

(暦年)

0.6

-8.2-14.1-16.3

-20.6 -23.1 -25.9 -26.2-17.0

-11.2-14.7

-18.0-15.6

6.6 7.78.5

8.8 7.8 7.4 7.5 7.4 7.3 8.5 8.6 7.5

7.8 7.1 4.5 3.6 3.0 1.7 1.1 1.3 1.5 1.6 1.8 1.2

9.413.1 13.6 12.3 12.7 13.5 13.9 15.0 14.2 15.1 15.4 14.6

10.7 8.76.6

-2.6-6.9

-11.5-12.8

-2.84.0 2.9

-1.2 -1.7

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

2000 05 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

その他輸送用機器電気機器一般機械原料別製品化学製品鉱物性燃料原料品食料品

収支総額

(兆円)貿易黒字

(輸出超過)

(輸入超過)貿易黒字

(暦年)

16

Page 13: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

我が国製造業の設備投資動向と設備老朽化の状況3

(1)製造業における設備投資動向続いて、国内の民間企業設備投資を確認する。我が

国の設備投資額の推移を見ると、リーマンショックを底として 2019 年まで増加基調が続いている。機械受注もリーマンショック以降おおむね増加基調だが、リーマンショック以前の水準までは回復していない

(図 113-1)。製造業の設備投資額と減価償却費の関係を見ると、

リーマンショック以降の 2009 年から 2011 年にかけては設備投資額が減価償却費を下回って推移するなど低調な時期が続いていたが、2014 年から 2019 年まで増加基調が続き、減価償却費を上回りながら推移している(図 113-2)。

(2)製造業の所得収支動向第1次所得収支注4は拡大基調にあり、2019 年には

20.7 兆円の黒字を計上した。内訳を見ると、2000年代では海外の株式や債券など有価証券投資に対する収益である「証券投資収益」が中心だったが、海外現地法人の収益である「直接投資収益」の占める割合が

年々拡大し、2019 年には 50.2%と半分以上を占めた(図 112-5)。直接投資収益の業種別内訳を見ると、製造業全体では 2019 年第3四半期で 1.9 兆円と第 1 四半期から 0.37 兆円増加し、第1次所得収支の増加に貢献していることが分かる(図 112-6)。

注4 企業が工場など海外現地法人を開設するために投資を行うと、対外直接投資として認識され、その海外現地法人の収   益は直接投資収益として第1次所得収支に計上される。

備考:「その他」は、「その他投資収益」と「その他第1次所得収支」の合計。資料:財務省・日本銀行「国際収支統計」

図 112-5 第1次所得収支の推移

7.78.2

7.8 8.610.3

11.914.2

16.514.312.613.6

14.614.017.7

19.421.319.120.5

20.920.7

23.316.4

1.8 2.4 2.72.0

3.5 3.6 3.3 4.1 4.4 3.96.6 7.8 8.8 8.3

9.6 10.110.4

1.3 1.31.012.6

15.123.6

23.1

24.3

21.7 14.1

26.3 29.830.128.1

37.3 40.3

41.243.3

46.748.350.2

0

10

20

30

40

50

60

-5

0

5

10

15

20

200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

25(兆円) (%)

(暦年)

直接投資収益証券投資収益その他雇用者報酬 第一次所得収支 第一次所得収支に占める

直接投資収益の比率(右軸)

備考:「その他」は、「その他投資収益」と「その他第1次所得収支」の合計。資料:財務省・日本銀行「国際収支統計」

図 112-6 対外直接投資収益(業種別)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ

17 18 19

化学・医薬 鉄・非鉄・金属 一般機械器具電気機械器具 輸送機械器具 その他製造業鉱業 卸売・小売業 金融・保険業その他非製造業

(億円)

(四半期・年)

3,375 2,544 2,516 2,463

2,2682,009 1,958 1,446

2,9262,420 2,514 2,300

4,3945,254

7,075

3,447

3,2172,879

3,542

2,961

1,1611,865

1,776

5,3916,446

8,301

4,499

4,352 7,324

4,033

3,735

2,1452,844

3,563

5,263

6,1003,145

2,205

2,030

2,464

2,626

3,6755,987

2,734 3,832

2,780 2,745

4,7205,502

3,916

6,5533,797

5,866

2,807

2,5041,164

2,624

6,862

1,969

3,302

6,780

2,519

1,927

7,147

6,086

3,945

3,958

3,997

4,359

1,711 2,149

1,987 1,7911,920 2,268

5,049 5,064

4,2824,171

3,617 3,676

5,1406,238

3,772

7,0294,277

4,338

2,044

1,892

3,607

6,166

4,923

2,785

9,838

4,853

3,946

820635 893 887

659

900 972823 971 817

1,376733733

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

17

Page 14: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

設備投資額(製造業) 減価償却費合計(製造業)

(兆円)

資料:財務省「法人企業統計」

図 113-2 製造業の設備投資額と減価償却費

備考:季節調整値資料:内閣府「2019 年 10 - 12 月期四半期別 GDP 速報(2 次速報値)」、「機械受注統計調査」

図 113-1 設備投資額の推移

3.05

2.91

1.89

2.5785.3

84.4

90.1

85.9

65

70

75

80

85

90

95

1.8

1.9

2.0

2.1

2.2

2.3

2.4

2.5

2.6

2.7

2.8

2.9

3.0

3.1

ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣ06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

機械受注(船舶・電力除く民需)(左軸) 名目民間企業設備投資(右軸)

(兆円) (兆円)

(四半期)

(年)

18

Page 15: 1 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 - METI第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 注1 本白書における統計の数値については、2020年4月1日時点で公表されているものを元にしている。第1節

日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」により企業の業況判断と設備投資の過不足感を確認すると、リーマンショック以降どちらも著しく落ち込んだものの、その後の業況判断の改善に伴い設備投資の過剰感が解消され設備投資の意欲も回復した。しかし、2019 年以降業況判断 DI が落ち込み、設備投資判断も 2019 年第3・第4四半期および 2020 年第1四半期では再び過剰側に転じている(図 113-3)。

2019 年 12 月に実施したアンケートにより今後3年間の設備投資の見通しを確認しても、国内・海外いずれ

も「増加」、「やや増加」の割合が減少し、「減少」、「やや減少」と回答する割合が増加している(図113-4・5)。

近年国内の設備投資は好調に推移してきたが、2019 年以降では短観、アンケート等で陰りが見える。さらに 2020 年第1四半期以降については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けた世界経済の減速・活動停止や国内外のサプライチェーン毀損、深刻な世界的需要減による影響を受け、設備投資が縮小することが見通される。

図 113-3 業況・設備投資 DI(製造業、全規模)

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

50

60-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ Ⅲ Ⅰ03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

過剰

良い

悪い

不足業況判断 DI(左軸)生産・営業用設備判断 DI(右軸)

資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

9.25.22.614.1

8.25.1

43.642.5

41.2

25.733.041.8

7.411.29.3

0

20

40

60

80

100

2019FY2018FY2017FY(n=3126)(n=4347)(n=4269)

増加やや増加横ばいやや減少減少

(%)

図 113-4 今後3年間の設備投資の見通し(国内)

6.94.01.512.87.04.3

50.150.3

45.7

24.228.239.0

6.010.59.5

0

20

40

60

80

100

2019FY2018FY2017FY(n=679)(n=903)(n=739)

増加やや増加横ばいやや減少減少

(%)

図 113-5 今後3年間の設備投資の見通し(海外)

資料:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019 年 12 月)

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

19

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注5 設備投資営業キャッシュフロー比率とは、営業活動で稼いだ現金に対して、設備投資に使用した資金の占める比率を指す。

国内企業における投資の積極性を見るため設備投資営業キャッシュフロー比率注5を確認すると、90 年代前半までは高水準で推移したものの、90 年代後半以降では、リーマンショックの影響による営業キャッシュフロー自体の大幅減少時(2008 年後半~ 2009年前半)を除き低位で推移しており、積極性に欠ける状態が続いている(図 113-6)。

ここで、保有する資産が生み出す利益と設備投資の

関係をみると、資産の収益性は増加し続けている一方で、2006 年頃から連動性が崩れ始め、両者の差が広がっている。すなわち、資産が生み出す利益が増加し、新規に設備投資するポテンシャルは年々高まっているものの、実際の設備投資の伸びは低調であると読み取れる(図 113-7)。

これらのことから、企業が設備の利益率、すなわち設備効率をより重視するようになっていると考えられる。

資料:財務省「法人企業統計」

図 113-6 設備投資営業キャッシュフロー(CF)比率の推移

05

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

0

100

200

300

400

500

600

700

ⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡⅠⅣⅢⅡ75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 8586 87 88 89 90 91 82 93 94 95 96 97 9899 2000 01 02 0304 06 07 08 0910 11 12 13 14 15 16 17 18 19

(百億円) (%)営業CF(左軸) 設備投資額÷営業CF(右軸)

資料:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

図 113-7 資産の収益性(ROA)と設備投資の推移

2

3

4

5

6

7

8

-60

-40

-20

0

20

40

ⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢⅠⅢ76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 82 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

%前年同期比(%) 設備投資(対前年同期比)(左軸) 資産の収益性(ROA=営業CF÷固定資産額)(右軸)

20

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(2)製造業における設備老朽化の状況我が国製造業企業は設備効率を高めてきた一方で、

設備投資が見送られる傾向が続いており、設備の老朽化に伴う更新の必要性が高まっている。日本機械工業連合会が 2018 年 12 月に行った生産設備保有期間に関するアンケートによると、調査を行った機械機種のうち、金属工作機械、第二次金属加工機械、鋳造装置

では 50 ~ 80%近くの設備が導入してから 15 年以上経過している(図 113-8)。

また、設備を導入してからの経過年数について、経済産業省による 1994 年調査、2013 年調査と比較すると、二次金属加工機械、溶接機及び溶断機、レーザー加工機、自動組立装置では、15 年以上経過している機器が2~3割程度増加している(図表 113-9)注6 。

注6 ただし、1994 年調査は 12,388 件、2013 年調査は 1,033 件、2018 年調査は 388 件と、アンケートの回答件数に大幅な変化があっ   た点には留意が必要である。ここでは、「金属工作機械」「第二次金属加工機械」「溶接機及び溶断機」「レーザー加工機」「自動組立装置」   「産業用ロボット」について各調査でアンケート項目を設けていたため、簡易的な比較を行ったものである。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1002018年2013年1994年2018年2013年1994年2018年2013年1994年2018年2013年1994年2018年2013年1994年2018年2013年1994年

金属工作

機械

二次金属

加工機械

溶接機及び

溶断機

レーザー

加工機

自動組立

装置

産業用

ロボット

3年未満 3~5年未満 5~10年未満 10~15年未満 15年以上

(%)

資料:日本機械工業連合会 2018 年度、経済産業省 2013 年度、1994 年度生産設備保有期間実態調査(ビンテージ調査)

図 113-9 生産設備導入からの経過年数の比較(2018 年、2013 年、1994 年の比較)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

金属工作機械

第二次金属加工機械

鋳造装置

その他機械・装置

ソフトウエア

3年未満 3~5年未満 5~10年未満 10~15年未満 15~20年未満 20~30年未満 30年以上

(%)

資料:日本機械工業連合会 2018 年度生産設備保有期間実態調査(ビンテージ調査)

図 113-8 生産設備導入からの経過年数(2018 年調査)

第1節

我が国製造業の足下の状況

我が国ものづくり産業が直面する課題と展望  第1章

21

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以上、本節においては、我が国製造業の置かれた環境や、業況や今後の見通し等を概観した。

我が国経済は好調な設備投資等を背景に 2018 年央まで回復を続けていたが、中国経済の減速や度重なる災害、天候不順、通商問題や海外経済の不確実性等の影響により大きな環境変化に直面し、2018 年後半から 2019 年にかけて、製造業を中心に業況判断が弱まっている。2019 年には米中貿易摩擦を理由として国内回帰を行った企業が増え、さらに 2020 年1月以降では新型コロナウイルス感染症の影響が深刻化し、国内製造業が大きな判断を迫られる局面が増加し

ている。製造業は依然として我が国 GDP の2割を占め、我

が国全体の経常収支にも大きく貢献しているが、その根幹を支える設備投資について見ると、設備の老朽化が進み、昨今の情勢不安を受けて今後も積極的な投資が見送られることが懸念される。

先行き不透明な情勢下においては、企業は内外の資源を再構成するための投資を行い、外部要因の変化に対応しうる体制に変革することが重要である。続く第2節は、我が国を取り巻く不確実性の高まりについて、更に考察を深めたい。

22