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海外におけるデジタル・デバイドへの挑戦 平成 14 (財)社会経済生産性本部 情報化推進国民会議

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Page 1: 海外におけるデジタル・デバイドへの挑戦『Falling through the Net: Defining the Digital Divide』というレポートの中で挙げら れているもの以外にも原因があると思われる。我が国でもこの原因についての深い議論がも

海外におけるデジタル・デバイドへの挑戦

平成 14 年 8 月 8 日

(財)社会経済生産性本部 情報化推進国民会議

Page 2: 海外におけるデジタル・デバイドへの挑戦『Falling through the Net: Defining the Digital Divide』というレポートの中で挙げら れているもの以外にも原因があると思われる。我が国でもこの原因についての深い議論がも

目 次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第一部 デジタル・デバイドに何が起こっているか ・・・・・・・・・・・・・・・・・3

1.デジタル・デバイド解消のためのプログラムに対する補助金のカット ・・・・・・・・3

2.『A Nation Online』報告書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

3.英国などでの動き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

第二部 デジタル・デバイド解消のための挑戦領域 ・・・・・・・・・・・・・・・・9

第三部 デジタル・デバイド解消への試み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

1.米国:ジョージァ州ラグランジェ市 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

2.フランス:パルトネ市の「都市の研究」の試み ・・・・・・・・・・・・・・・・13

3.英国:ウェールズ地方/デヴォン地方での通信インフラ導入 ・・・・・・・・・・14

4.米国:パソコンの再生・供給・支援活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

5.米国:NPO への技術的サポーターCompuMentor 社 ・・・・・・・・・・・・・・25

6.米国、英国:コミュニティ・テクノロジー・センター ・・・・・・・・・・・・・28

7.米国:全中学生に一人一台のコンピュータを持たせたメイン州 ・・・・・・・・・35

8.開発途上国:ナミビアでのデジタル・デバイド解消の試み ・・・・・・・・・・・37

おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39

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はじめに

世界の人口は約 62 億人。そして今、そのうち 4 億 3000 万人の人がインターネットを使っ

ている。しかし、その人々は世界の総人口の 7%に満たない。

そして、その中では、次のようなことが行われている。

◆毎日約 15 万人の人が、はじめてインターネットにログオンしている。

◆ウェブのコンテンツは毎日、一日 2 百万ページづつ増え続けている。

◆子供がテレビの前で過ごす時間が、昨年はじめて減り始めた。

◆オーストラリア人の 75%は所得税申告と還付金の受け取りをインターネットを使っ

て行っている。

◆シンガポール電子政府のポータルからは、150 件の政府サービスが利用できる。

◆エストニアでは、1991 年には個人所有のパソコンは一台もなかったが、現在ではイ

ンターネット利用率では世界の 20 位台に入っている。

◆フランスでは年間 10 億件の健康保険請求が、紙でなくインターネットでできる。

◆ スカンジナビア警察では、指紋イメージを他警察に送るのに 25 秒でできる。

(出典:Douglas Holmes「eGov: eBusiness Strategies for Government、2001」)

このようにインターネットは、現代の象徴的テクノロジーであり、また過去に例のない速

さで成長し続けているメディアである。 しかしその反面、男女差・教育とリテラシーの差・収入差・言語・人種・民族、等の違い によって、インターネット利用に大きい差が生じていることは、事実である。 インターネット利用者の半分以上は米国人であり、その米国の人口は世界の人口の 5%に も満たない。そして、ニューヨーク市にあるウェブ・ホストの数は、アフリカ大陸全体にあ

るホスト数より多い。しかし一方では、世界人口の 80%以上が、電話のダイアル・トーンを

聞いたことがないと言われている。

コンピュータやインターネットとは、我々にとって昔の「読み、書き、そろばん」と全く

変わらない常識になっている。

このインターネットの爆発的な普及に伴い、デジタル・デバイドの問題が浮上してきた。

デジタル・デバイドとは、所得・年齢・居住地域・国・心身の障害など様々な原因から最新

の情報技術にアクセスできる人々と、そうできない人々の間にできる就職や生活ぶりに生じ

る格差のこと。情報格差と呼ばれているものである。

このような格差は、社会問題の原因になる可能性があるという観点から、また情報通信技

術がもたらす恩恵を誰でも受けられるようにしたいという観点から、デジタルデバイドの解

消が世界各国で重要課題となっている。

デジタル・デバイドを作り出す原因にはさまざまなものがあるが、アメリカ商務省の

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『Falling through the Net: Defining the Digital Divide』というレポートの中で挙げら

れているもの以外にも原因があると思われる。我が国でもこの原因についての深い議論がも

っと必要であると感じる。

デジタルデバイドを単なる皮相的な議論でなく、地に足を踏まえた議論をしていくには、下

記の表に挙げた各項目について検討していく必要がある。

デジタル・デバイドの原因 1.収入 所得の差 2.人種/出生地 「南北問題」 3.教育レベル 卒業学歴より、読む力、理解する力 4.家族構成 高学歴の親がいる家族 5.年齢 若い人と中高年の間 6.居住地域・地区 都会と地方 7.州/都道府県 「南北問題」 8.読み解く力 子供だけでなく大人も 9.語学力 特に英語力

第1部 デジタル・デバイドに何が起こっているか 2002 年2月 27 日、米国連邦政府のゲートウエイサイト『FirstGov』が一新された。ゴア前副

大統領のサイト『National Partnership for Reinventing Government(NPR)』は既に、新大統

領就任式以前にアーカイブ入りしたため、クリントン政権時代のウェブサイトは、全て姿を消し

たことになる。しかしそれ以上に、深刻な問題がそれ以前の2月4日に起こっていた。 1. デジタル・デバイド解消のためのプログラムに対する補助金のカット

都会から離れた町の地方住民、低所得層、障害者等が、情報通信技術(ICT:Information &Communication Technology)やインターネットにアクセスできるよう補助してきた二つの補

助金プログラム、『TOP(Technology Opportunities Program):商務省管轄』と『CTCP(Community Technology Centers Program):教育省管轄』が、2月4日、ブッシュ大統領が

議会に提出した来年度予算から除外された。 その理由は、昨年9月 11 日のテロ報復のための軍事費増強のためとされており、さらに、

TOP はその目的をほぼ達成したからと説明されている。 当然、これらのプログラムを推進してきた諸団体からは、非難の声が大きく上がっている。

既に昨年から、このことを予測させる施策の手が打たれていたことも事実であり、TOP の予算

4,250 万ドルは、約 3 分の一に近い 1,240 万ドルにカットされていたのである。 デジタル・デバイド解消を目的とする NPO である Digital Divide Network(DDN)の Andy

Carvin 氏は『ブッシュ政権は、これらのプログラムはすでにその役目を果たしていると言うが、

不幸な、恐ろしい間違いである』といっている。

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TOP(Technology Opportunity Program)は、地方の市町村のテクノロジー・プログラム

の重要な育成役であり、その補助金は、教育、公共安全、ヘルスケァのプログラムのため非常

に貴重である。TOP の補助金利用者の一つに、ワシントン州の See Forever Foundation があ

る。同基金の Student Technology Center という団体は、ワシントン州西北部の低所得層地域

で、コンピュータやインターネットの講習会を提供し続けている。 このプログラムは、学生や高齢者層を教育し、技術に関する州民のリテラシーを高めるとも

に、コミュニティ全体にアクセスとリソースを提供することを目的としている。 もし、この補助金がカットされると、この地域に対しては重大な打撃となる。

CTCP(Community Technology Centers Program)は、地方住民や自宅にコンピュータを

持てない人々のため、コンピュータやインターネット等が利用できる中心場所である CTC(Community Technology Center)を提供し、IT についての目を開かせ、IT リテラシー醸成

の援助をするためのプログラムである。 注:Community Technology Cente (CTC)、Public Access Cente (PAC)、Community

Access Center(CAC)等いろいろな呼称のセンターがある。 r r

CTC の目的は、人々がテクノロジーにアクセスできるようになるということだけでなく、そ

のアクセスをどう活用するかを知る場所である。この補助金から生まれた地域のグループ活動

こそが、デジタル・デバイドの解消になくてはならないものである。これらの補助金がなくな

れば、全米で数千のローカル・プログラムは維持できなくなる。 デジタル・デバイド解消の活動は、昨年から幕引きが始まっていた。TOP プログラムの予算

削除について、商務省のビクトリ女史は『小さな削除である』と説明しているが、それは昨年

4,500 万ドルから 1,500 万ドルに減額したからである。2001 年から 2003 年(計画)までのデ

ジタル・デバイドに関係する予算額の推移を図 1-1に示す。 図 1-1 2001 年~2003 年のデジタル・デバイド関係予算

ディジタル・ディバイド予算推移

0

20

40

60

80

100

120

140

FY2001 FY2002 FY2003*

会計年度

単位 百万$

TOP(商務省)

CTC(教育省)

PT3(教育省)

*予算案

注:PT3(Preparing Tomorrow’s Teachers to Use Technology)

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この予算削減は、商務省の報告書である『A Nation Online』(2002 年 2 月)の中で、デジ

タル・デバイド改善の施策が効を奏し、事実上デジタル・デバイドは既に大きい問題ではな

くなっているとしている。著者は、商務省の National Telecommunications and Information Administration(NTIA:米国通信情報局/米国情報通信庁)の長、ナンシー・ビクトリ(Nancy Victory)女史で、国勢調査局の数字を根拠に節減理由を説明している。これに対し、NTIAのこれまでの報告書作成を指揮したラリー・アーヴィング(Larry Irving)氏は、同じ統計か

ら全く逆の説明ができると反論している。 また、同報告書の中で、『米国の低所得者、マイノリティ住民層のインターネット使用の伸

び率が、裕福な白人あるいはアジア系米国人のそれより遥かに高い』とビクトリ女史は報告

している。人種によるインターネット利用伸び率は、2000 年~2001 年の一年間の伸び率の

差から、『黒人系・ヒスパニック系の米国人が白人に追いつくのは時間の問題である』と、同

報告書では結論づけている。

表1-1 インターネット利用の伸び率(2000/8~2001/9)

人 種 インターネット利用の伸び率 黒人系米国人 33% ヒスパニック系米国人 30% 白人、アジア系米国人 20%

これに対しアーヴィング氏は同じ数字から、図1-2のグラフに見るように、『低所得者と

高額所得者との間のギャップは拡大している』と反論している。他にも、同様な反論をして

いる。全く同じ統計情報から、全く別な結論を導き出す論争が以後も続いているのである。

図1-2 高所得層と低所得層との差の拡大

インターネットへのアクセス率(収入別)

0102030405060708090

97/10 98/12 00/08 01/09

インター

ット利用家庭

(%

年収:$15,000未満

年収:$75,000以上

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デジタル・デバイド解消の動きに関しての米国政府見解発表から間もなく二ヶ月経つが、連

邦政府の補助金が削減されても、民間企業がこの後を引き継ぐかどうかはまだ定かではないが、

これまで民間企業や諸団体はこの種のプログラムに多くの支援をしており、この課題の重要性

は充分認識はされていると考える。 この間の諸外国の情報を見る限り、欧米諸外国でのこの課題への取り組みはブッシュ大統領

の決定には関係なく続くと思われるが懸念は残る。 確かに、デジタル・デバイドには当初から懐疑的な見方をする人々があり、上記の報告書の

発表後も、これに賛成するロバート・サミュエルソン氏((Robert J. Samuelson、Newsweek誌コラムニスト)の発言も話題となった。ある面で、デジタル・デバイドの縮小を示すデータ

が顕著な部分はあるが、全体として見る時、これを『ボトルがもう半分埋まった』と安心する

ビクトリ女史の発言に賛成する人は少ないのではないかと思われる。 2.「A Nation Online」 報告書

『A Nation Online:How Americans Are Expanding Their Use of the Internet(オンライン

国家:米国人のインターネット利用拡大状況)』報告書は、商務省の NTIA と経済統計局が共同

制作した報告書である。この報告者はブッシュ政権の発表に合わせて出されたもので、2001 年

の国勢調査局の国勢調査で 57,000 の家庭と、137,000 の個人についての調査を基にして作られ

たものである。 しかし同報告には、随所に短絡的と思われる結論部分があり、これまで積極的にこの活動 を

進めて来た省のものとは思えないほどであるが、ブッシュ発言があると、すぐそれに追随する

発言があることも現実である。

昨年ブッシュ政権誕生と同時に、前任の FCC(Federal Communications Commission:ア

メリカ連邦通信委員会)のケナード長官に代わり、新長官に就任したマイケル・パウェル

(Michael Powell)氏は、新政権の他の閣僚と同様、デジタル・デバイド問題には批判的であ

る。マイケル・パウェル氏は、「誰でもメルセデス(ベンツ)は欲しい。みんながそれを欲しが

るようなものだ」と、逆に非難の元となった「メルセデス・デバイド」論を唱えているほどで

ある。 ブッシュ政権は低所得者層、辺地居住者に対して、ブロードバンドのインターネット・ア

クセスを提供する企業への税制優遇にも反対している。また現政権は、前政権時に好評であ った FCC の学校や図書館・病院等がインターネットに接続するための割引料金(20~90%) 援助制度『E-rate(education rates)プログラム』にも反対している。 これらの動きに対して、この不景気な中、最大弱者である低学歴住民のためのプログラムを

廃止・変更を目論む現政権に、民主党を初めとして大反対の声があがっている。 NTIA は、TOP に対する 2003 年度予算として 224,000 ドルしか要求していない。 デジタル・デバイド解消と前政権施策に対する、このような露骨な 180 度の態度豹変の元 になった報告書と現政権に対して、さまざまな反論が起こった。

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「Digital Divide is Not Some Fairy Tale」(2002 年 5 月:シカゴ・トリビューン紙) 「Does the Digital Divide Still Exist? Bush Administration Shrugs, But Evidence

Says Yes」(2002 年 5 月:市民権フォラム、消費者組合連合、米国消費者連盟) 政府は自論の証明に数字を曲げて解説していると、非難する声がこの数ヶ月続いている。

民主党上院バーバラ・ミクルスキ(Barbara Mikulski)議員等が、これら報告書には欠点が 多いこと。仮に、低所得者層の人々が以前よりコンピュータにアクセスする率が増えている ことが事実としても、その人達が仕事や医療情報探し等生活に役立てるための利用レベルに はまだ程遠い状態であると論争していた。

この5月、「Digital Empowerment Campaign」という超党派キャンペーンが、ミクル

スキ議員等の呼びかけで発足した。 これには、Leadership Conference on Civil Rights(LCCR)、CTCNet、AFL-CIO、National

Education Foundation、National Urban League、National Congress of American Indians、 American Council of the Blind 等 100 を越える団体が加わり、デジタル・デバイド改善への

援助を要求している。 この7月「Bringing A Nation Online: The Importance of Federal Leadership」という 新報告書は、上記キャンペーンのメンバーである LCCR Education Fund(LCCREF)と Benton Foundation が共同で出したもので、全 65 ページである。

政界からは民主党共和党の上院議員が加わっている。キャンペーンのウェブ・サイトは www.digitalempowerment.orgである。

このキャンペーンの目的は現政権への政策転換の働きかけ、TOP や CTC プログラムの 継続・強化である。そのため今秋の予算復活に最初の活動を賭けている。

3.英国などでの動き

英国の「ホワイト・ハウス」に相当する首相官邸ホームページ「ダウニング街 10 番地」は、 コンサルタント会社「Booze-Allen and Hamilton」(後出)に依頼し作成させた報告書、

「Achieving Universal Access」を基に、来年 2003 年までに国民の少なくとも 70%が日常

的にインターネットにアクセスできるようになることを目標にしている。 (★注:「10 Downing Street(http://www.number-10.gov.uk)」 これがなければ、三年後には 2 千万人が時代から取り残されると、首相自身が警告を発し

ている。そこには、デジタル・デバイドはほぼ解消されたという、米国大統領の発言とは程

遠いものがある。 カナダ、オーストラリア、香港、ニュージーランド等は、英国と同じ動きを取っている。

4.デジタル・デバイド解消のための組織 米国では、特にNPOの活動がすばらしく、海外で活動している団体も多い。特に、CTC

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関連では各州毎に無数といってよいほどの CTC があり、活動の奥行きの深さを感じる。 これに対し、カナダ、英国、欧州等では政府関連団体での活動が多い感じである。後の事

例でそれらの組織の活動を紹介するが、ここでは特に米国のそれを挙げる。

1)米国(欧州、オセアニア、中南米でも活動している団体が多い) Digital Divide.gov(政府機関。下と名前が似ているが、今は改称) Digital Divide.org HUD’s Neighborhood Networks(HUD:住宅都市開発省) E-Gov Collaboration(GSA:一般調達局) National Governors’ Association(NGA:全米知事協会) Bridges.org Computers for Youth(CFY) The Children’s Partnership edutopia(The George Lucas Education Foundation、ジョージ・ルーカス) oneworld PowerUp Benton Foundation の Digital Divide Network(DDN) Digital Empowerment Campaign CTCNet(Community Technology Centers’ Net) National Urban League Digital Economic Opportunity Committee(DEOC) National Urban League

2)カナダ Smart Community(政府の Connecting Canadian の一部) Community Access Program(CAP)

3)オーストラリア e-Communities Task Force

4)英国 e-Communities Task Force Department for Transport, Local Government and the Regions(DTLR) Local Government Association(LGA)

5)EC Rural-Europe

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第2部 デジタル・デバイド解消のための挑戦領域 デジタル・デバイド改善に向けての特効薬はない。当然、幾つもの施策を複合して行くことが

必要である。2000 年 10 月、商務省は今回で 4 回目のレポートとなる『Falling through the Net: Defining the Digital Divide(ネットの目から漏れ落ちる人々:デジタル・デバイドを定義する)』

(NTIA:National Telecommunications and Information Administration;1999 年)を発表し

た。本レポートは、パソコンやインターネットの米国民における普及状況を調査したもので、そ

の中の第三章『Challenges Ahead』には次のような挑戦領域があるとしている。 1)競争導入による、ユニバーサル・サービスの拡大

誰もが使える、安く、簡単なコンピュータ、インターネット環境の提供 それでも高い人々のために、より安いコンピュータ、機器、インターネットの提供

2)コミュニティ・アクセス・センター(CAC)の拡大・充実 自宅にコンピュータ、インターネット設備を持てない人々が、気軽に使える施設 コミュニティ内でのアクセス手段の提供

3)住民のアウェアネスの強化 昔の「読み書き」に匹敵 必要性・重要性の認識

4)コンテンツへの関心 データ・機密漏えい プライバシー侵害

5)モニターリングの継続 果たして前進しているのか、効果は上がっているのか 満足されているのか

6)読む力の教育 あまりにも多くの大人、子供の「読む力」の低下、これを放置する周囲の環境 これが「真のディバイド」を生じさせる

次の第三部では、これらの領域に挑戦している欧米の事例を探り、考えて行きたい。 デジタル・デバイド(DD)解消策と第三部各章との関連

第三部の章名 DD解消策

コミュニティ活動への支援 ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ 開発途上国への支援 ○ ○ ○ ◎ 過疎地のICTインフラ整備 ○ ○ ◎ ○ ○ 小さい町の大きいリーダー達 ◎ ◎ ○ ○ 一人一台のコンピュータ ◎ 再生パソコンの利用 ◎ ○ ○ ○

注:表内の◎、○は関連の深さ。

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参照:インターネット利用者数・利用者率(2002 年 2 月)

データ:(Nua International 社から作成)、(人口 10 万人以上、または利用率 10%以上)

# Country Date Source Number %Pop

1 Sweden 02/2002 Nielsen NetRatings 5.74 64.68

2 Iceland 12/2000 ITU 0.17 60.79

3 Denmark 02/2002 Nielsen NetRatings 3.23 60.38

4 Hong Kong 02/2002 Nielsen NetRatings 4.31 59.01

5 U.S.A. 01/2002 Nielsen NetRatings 164.14 58.50

6 The Netherlands 02/2002 Nielsen NetRatings 9.28 58.07

7 United Kingdom 06/2001 Jupiter MMXI 33.00 55.32

8 Norway 07/2001 Nielsen NetRatings 2.45 54.40

9 Australia 02/2002 Nielsen NetRatings 10.63 54.38

10 Canada 02/2002 Nielsen NetRatings 16.99 53.26

11 Taiwan 07/2001 Nielsen NetRatings 11.60 51.85

12 Singapore 02/2002 Nielsen NetRatings 2.26 50.76

13 New Zealand 02/2002 Nielsen NetRatings 1.95 49.90

14 Switzerland 07/2001 Nielsen NetRatings 3.41 46.82

15 South Korea 07/2001 Korea Network Information Center 22.23 46.40

16 Finland 08/2000 Taloustukimus Oy 2.27 43.93

17 Austria 12/2001 Media Research 3.55 43.45

18 Bermuda 04/2000 ITU 0.03 39.67

19 Japan 02/2002 NetRatings Japan 49.72 39.16

20 Germany 02/2002 SevenOne Interactive 30.20 36.37

21 Andorra 04/2001 Information Society Commission 0.02 36.26

22 Portugal 12/2001 Instituto das Comuni. de Portugal 3.60 34.37

23 Italy 08/2001 Nielsen NetRatings 19.25 33.37

24 Belgium 12/2001 GfK Web-gauge 3.40 33.14

25 Ireland 02/2002 Nielsen NetRatings 1.27 33.07

26 Greenland 12/2000 ITU 0.02 31.61

27 Slovenia 12/2000 Emarketer 0.60 31.13

28 U.A.E. 12/2000 ITU 0.74 31.02

29 Estonia 10/2001 Emor E-Track 0.40 27.75

30 France 12/2001 Mediametrie 15.65 26.28

注)Number:インターネット利用者数(単位:百万)、%:同利用者率

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第3部 デジタル・デバイド解消への試み 1.米国:ジョージア州ラグランジェ(City of LaGrange)市

City of LaGrange(http://www.lagrange-ga.org/homepage.cfm) ラグランジェ市は、ジョージア州アトランタ市の西南 100km にある人口 27,000 人の市で、

2000 年 12 月ワシントン D.C.で行なわれた Government Technology Leadership Institute(GTLI)の会場で、その年の Government Technology Leadership Award を受賞した。同賞

は、優れた電子政府プログラムに対して贈られる年次賞で、Government Executive Magazine社が主催する評判の高い賞である。

67 の候補の中から 22 団体が受賞したが、その内、州・市自治体は下記の 3 つであった。 ヴァージニア州(人口:708 万人)受賞対象活動:”My Virginia” ニューヨーク市(人口:801 万人)受賞対象活動:”Electronic Case Folder” ラグランジェ市(人口:27,000 人)受賞対象活動:”Internet TV Initiative”

ラグランジェ市の行政責任者は、デジタル・デバイド解消の鍵を『コミュニティの結びつき

の強化にある』と考え、市は市民全員に無料のインターネット・アクセスを提供することを決

めた。コミュニティ全体、全市民に学校や公立図書館だけでなく、金持から低所得者層に至る

までの全市民がネットにつながることが必要であると考えた。 この結果『ユニバーサル・アクセス』を具現化した、最初の自治体活動となった。E-Rate を

利用した連邦政府、デルタ航空、フォード自動車等からの資金を利用した活動はあったが、地

方自治体がこのように創造性・革新性に富んだ活動を展開したことはなかった。 同市は、市内のケーブルテレビ全契約者に、LaGrange Internet TV Initiative組織を通して、

無料でインターネットへのアクセスを提供している。市民は、コンピュータやモデムがなくて

も、テレビを使って WWW のサーフィングをすることができる。 市長のジェフ・ラッケン氏は『このように劇的な方法で、市民の生活にインパクトを与える

機会は、地方自治体にはめったにあるものではない』、また『ジョージア州は、過去 7 年間に

16 億ドルを使い、州の全学校にコンピュータを導入したが、それ自体の効果はあまり評価でき

るものではなかった。また学校の教師達は、生徒達の意識の低さ、インターネットが彼等の将

来にとって全く無関係であると信じ切っていることと日々格闘しなければならなかった』と言

っている。 このような状態から脱するため、ラグランジェ市の幹部達は、全市をインターネットになじ

むコミュニティを創ることを決めた。市長のジェフ・ラッケン氏は、ミズリー州セントルイス

市のケーブル業者 Charter Commu-nications 社に掛け合い、全市 11,000 の家庭が無料の高速

ケーブル・モデムを持てるよう交渉した。この結果 Charter 社はセット・トップ・ボックスを

提供し、基本サービス料は月額 9 ドルすることに合意した。この支払能力がない家庭には、市

が全額負担することとなった。

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市長は『人が技術に抵抗を示す理由は、それがその人の人生に全く無関係であると思うから

である。技術にはひるむだろうし、不信感も抱き、買おうとしないのだろう。導入することに

対する、全ての障害物を取り去りたい』と述べている。 この結果、同市は老人ホームから、低所得者住宅各戸に至るまで、全世帯・全企業に高速回

線が敷かれ、世界の叡智に触れ、世界の商品を購入できる道が開かれることとなった。 初年度の 2000 年、9,200 世帯のケーブル・テレビ契約者の 15%が無料のインターネット・

アクセス権を取得、世帯の 30%はダイアル・アップ・サービスを受け始めた。その結果、市民

の 45%が無料でインターネットにアクセスしている。 また同市は、今年 6 月 12-13 日 Intelligent Community Conference(ICC)の主催者を務

めることになっている。このコンファレンスは、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学

院が資金協力をしているもので、インターネット・アクセス、電子自治体、公私協力、ベンチ

ャー投資、デジタル・デバイド等を討議することになっている。

図3-1:ラグランジェ市のホームページ (http://www.lagrange-ga.org/homepage.cfm) 同市がこれまでに獲得した賞のは、次のようなものがある。

Harvard 大学 JFK 行政大学院:「2001 Innovation in American Government」

World Teleport Association:「2000 Intelligent City of the Year」

Government Technology 誌社:「2000 Government Technology Leadership」

ジョージア州郡市協会:「2000 Georgia City of Excellence」

全米図書館情報科学財団:「2000 Official Sister Library Site」

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2.フランス:パルトネ市の「都市の研究」(Urban Laboratory)の試み

Parthenay 市(http://www.district-parthenay.fr/intownnetacceuil.htm

①パルトネ市(Parthenay) パルトネ市は、フランスの西岸ボルドーの北方 300km、人口 18,000 人の農業と小企業の

小さな町で、市長を中心に『デジタル・タウン』を創るというビジョンの実現に成功した。 マルチ・セクター方式により、25 年間市長職にあるミシェル・エルベ市長がコミュニティ

の全メンバーを説得し、IT の積極的採用、町のアプリケーションとツールの開発を呼びかけ

た。 インターネットに強い市民の数を増やし、コミュニティの中に強いリンクを創り出すこと

によって、町に強力な経済基盤を構築したいと願ったことが始まりであった。この成功の原

因は、『ローカルであることのアイデンティティの素晴らしさを市民に考えさせた』ことにあ

り、地域の強いネットワークと、活力あるコミュニティをベースにしている。 フランスの多くの田舎のコミュニティと同じで、パルトネ市はこれまでの農業と工業とに

行き詰まりを全員が感じていた。その結果として、住民の多くが高収入を狙って次々と都会

へ流出していた。この流れに歯止めをかけるために、エルべ市長は画期的なコンセプトを打

ち出した。それが『アクティブ市民』という概念で、新しい産業を町に誘致するよりも、パ

ルトネ市の市民を説得して、雇用創出のための革新的解決の名案を考えさせた。この時出て

来た『ヒューマン・ネットワーク』こそ、パルトネ市の成功の元である。 ②「デジタル・タウン」の実験目的

新しい情報技術と、それを市民がどう使えるかについて、絶えずフィードバックする 状況とシステムを創り出すこと。

市民が新しいテクノロジーに適応できるようにする。 2002 年までに、町は日常生活のあらゆる所に、新しい通信技術を取り入れる。 新しいテクノロジーを使いこなすために、産業人・研究者の実験と評価の場所として

の『研究所』になる。 ③「接続」が先、「コンテンツ」は後の思想 過去 4 年間『デジタル・タウン』の実験で、パルトネ市の市民のため、次のようなあらゆ

る種類の実験活動をしてきた。 「ディジタル空間」:新情報通信技術を実体験するための公共空間を市内各個所に設置。

20 台のパソコンとマルチメディア装置を置き、インターネットを無料で自由に使用さ

せた結果、すぐに市内 11 個所に増えた。 「全市民無料インターネット」:ISP 業者が尻込みするので市がブロバイダーになった。

全市民にアドレスを与え、自分で簡単にホームページを作れるツールを支給。

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「オペレーション(作戦)1000PC」:月 300 フラン(約 40 ドル)で 2 年間パソコンを

使用すれば、パソコンとインターネットが自分の物となる。ウェブは市民にとって、

電気・水道と同じ物という考え方。 「In-Town Net」:市全体のためのイントラネットで、全市民のための『ポータル』で、

全市民がアクセスできる。現在 350 人の市民による 7 万ページ以上のページに。 ④今日のパルトネ市 人口 18,000 人のかつての小さな農業の町が、250 を越える各種コミュニティ・グループ

を持ち、年間 150 の文化的事業やお祭りを主催している。市役所は一切ノータッチである。

町の議会は、その支援機能の一つとして、新技術(特にインターネット関連)がプロジェ

クトと市民間の対話がスムースに行くように刺激を与える程度のサポートしかしていない。 図3-2:パルトネ市のホームページ (http://www.district-parthenay.fr/intownnetacceuil.htm) 3.英国:ウェールズ地方/デヴォン地方での通信インフラ導入 1996 年 2 月、英国政府による最初の包括的な情報技術政策『情報社会イニシアティブ』が発

表され、ビジネス、保健医療、教育、行政分野を対象に、5 ヶ年計画(1996-2000 年)として

開始した。2000 年 9 月、ブレア首相は情報技術政策『UK Online』を発表した。英国をオンラ

イン化するための戦略を詳細に定め、次のようなアクションを提起している。 ■ 英国市場を近代化する ■ 新しい技術を利用するために必要なアクセス等を各個人が得られるようにする ■ 電子政府を実行する ■情報技術分野で英国を世界の一流国にする

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① ウェールズ/デヴォン等地方の高速通信インフラ整備プロジェクト 英国政府は、1999 年 3 月「Modernizing Government」白書を議会に提出した。この中で

ブレア首相は「次の世紀に向けて、わが国の学校、病院、経済、犯罪防止システムを刷新す る」と述べ、中央政府だけでなく、ウェ-ルズ、スコットランド、北アイルランド、および 旧植民地領、議会、地方議会刷新の計画を発表した。 仕事を求めて都会への人口流出が続く地方の衰退化を避けるためには、必要な IT インフラ

構築投資が急務であると、「Putting Wales Online」「Putting Devon Online」等、地方の

「e-Government」強化策を打ち出し、目標どおりの成果を挙げつつある事例である。

英国政府の電子政府計画は 2005 年を目標に、政府の仕事の 100%電子化を目指している。 この計画の成功には、ローカルの IT インフラストラクチャの整備が成功・失敗の鍵を握って いると、常々ブレア首相は語っている。

英国は、England、Wales、Scotland、North Ireland の四つの地方からなる。ウェールズ (Wales)地方は、バーミンガム(Birmingham)の西方に開ける、四国と沖縄本島を合わせ

た広さ(3 万平方 km)に、香川県と徳島県を合わせた人口(300 万人)の山・海・田園の静

かで美しい地方である。 このウェールズ地方の三つの郡が協力して、広帯域協同ネットワークを構築するために、

MARAN プロジェクトを始めた。 下記の写真に見るような「いなか」に、ブロードバンドのネットワークの完成を急ぐ理由 は、そこにある。

「ルーラル」のインフラをまず活性化しなければ、ルーラル政府は国政に参加できない。 ②MARAN(Multi‐Agency Rural Area Network)プロジェクト

MARAN プロジェクトは 1990 年代の中期のポウィーズ(Powys)郡でのパイロット・プ

ロジェクト成功と、米国での研究『Rural America At The Crossroads』の結果がきっかけと

なった。

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この『Rural America At The Crossroads』とは、米国議会から大学に委託された研究結果

で、1991 年 4 月に報告されたものである。米国でも当時、地方のコミュニティが経済活力の

低下、収入の相対的下落、高い失業率、労働力の協同のなさ、人材の都会への流出に悩んで

いた。地方コミュニティが持つ距離的・面積的な不利さを、進歩する通信・情報技術の活用

により、地方の活性化につなげることが悲願であり、この研究を生んだ。 この 1991 年の研究結果をウェールズの自治体が研究し、これが重要な成功要因となった。

この報告書からの発見は、地方がこれ以上の没落を経験したくなければ、必要なインフラへ

のアクセスを確保するために、何らかの対策を取る必要があることに気づいた。 そのため、彼らは複数の地方自治体が協力して、地域の通信バックボーン・インフラを整

備し、地方経済の興隆を図るためには、『規模の利益』の追求によって、周辺地域への波及効

果を促すこととした。 1993 年に Rural Wales Telematics Forum を開催し、情報通信技術(ICT)推進戦略を策

定し、複数自治体の協同による『Rural Area Network』開発の一項目ができた。 複数の地方自治体・大学・民間企業によるプロジェクト・チームでの研究に入り、1996 年

『Regional Challenge』を発足、1997 年には MLL Telecom 通信会社をパートナーに加え、

国連地域開発資金 220 万ポンドの協力を得て、『Llwybr-Pathway Rural Wales ICT ERDF』イニシアティブを組織化し、プロジェクトがスタートした。

目標1:地方ウェールズの通信への投資活性化のため、自治体側に過失責任を負わせる。 目標2:この地域への通信会社の競争をうながす。 目標3:少ない人口・村落間の距離を克服するため、規模の利益を導入する。 ③協同ネットワークに参加した三つの郡 MARAN プロジェクトは、ウェールズの郡であるポウィズ、セレディオン、カーマセンシ

アを高速の無線バックボーンでつないで、インターネットとネットワークを共有する。この

三つの郡は、ウェールズの面積の 49%を占めるが、人口ではわずか 12%にすぎない。

郡 名 下図 人 口 セレディオン(Ceredigion) ④ 72,162 ポウィズ(Powys) ③ 123,600 カーマセンシア(Carmarthenshire) ⑥ 168,900

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図3-3:ウェールズ地方 (注:MARAN の成功により、⑤の郡と⑨の郡の一部が参入)

図3-4:MARAN プロジェクト

④ネットワークのアプリケーション ポウィズ、セレディオン、カーマセンシアの三つの郡内の学校・図書館・役場・美術館・

観光案内所・警察署等がネットワーク上につながれている。

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そのネットワーク上で動いているアプリケーションには、次のようなものがある。 遠隔教育、生涯教育 ウェブ放送 コンピュータ利用学習 ビデオ会議 デジタル・デモクラシー インターネット、WWW アクセス ウェブ・ホスティング 共同作業 自治体サービスおよび情報への住民アクセス

⑤今日での成果

Rhondda-Cynon-Taf 郡(人口 26 万)が MARAN プロジェクトのパートナーとして 加わりたいと正式に表明(2001 年 9 月)

Dyfed-Poyws 警察署も参加申込み。 Pembrokeshire CC も参加申込み。 ウェールズ議会が全ウェールズの自治体ネットワーク化の検討に入った。 MARAN は全ウェールズの自治体ネットワークの母体と見られている。 英国の地方自治体の IT 責任者団体である SOCITM から受賞。

図3-5:中央/西部ウェールズ地方の MLL の通信リンク

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図3-6:2001 年~2002 年現在のネットワーク

⑥デヴォン地方、その他での広帯域ネットワーク構築への政府支援 デヴォン地方は、ウェールズ地方の南に続くケルト海に長く突き出た半島の途中にあり、

人口は約 100 万、南と北に長い海岸線を持つ、静かで美しい観光地である。 英国南部の最後

の荒野である、ダートムァー国立公園が中央にある。 ウェールズ地方でのRural Area Networkのパイロット・プロジェクトに自信をつけた後、

政府の DTI(Department of Trade and Industry:貿易産業省)は、デヴォン地方の各自治

体のプロジェクトに対し 3,000 万ポンドの広帯域資金として補助金を出し、展開を図ってい

る。政府は、その 3,000 万ポンドの補助金でサポートするプロジェクトの詳細を発表し、地

域の広帯域プロジェクトに支援を確約した。 この計画には、ダートムァー国立公園のそばにある、人口 3,500 人のバックファストレィ

(Buckfastleigh)町も含まれており、地方自治体共同プロジェクトとして、広帯域モデル市

に育てようとしている。 広帯域インターネット接続を導入する先は、学校・病院・市役所・図書館等である。この

3,000 万ポンドは、英国政府の幾つかの地域開発庁が分担する。この他、South West of England Regional Agency 等いくつかの団体名が挙がっている。

このような小さな地方自治体へのブロードバンド導入に対する懸念に対して、DTI では『地

方自治体への高速インターネット導入への最善で最も効果的な方法を模索するための機会と

したい』と言っている。

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