14.介護予防の効果に関する研究 - daido-life-welfare.or.jp · 2015-03-04 ·...
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14.介護予防の効果に関する研究
~公民館カフェに集まり活動することに焦点をあてて~
○保坂 由里子(北杜市役所 介護支援課 地域包括支援センター)
篠原 美幸 中田 はるみ 浅川 享子
【目的】
北杜市は高齢化が進んでおり、地区行事等地域の繋がりも減少しつつある。
交通機関も充分でないことから、自ら歩いて行動できる公民館を拠点に集いの場「公民館カフェ
(仮称)」を提供することで介護予防に効果が上がるのではと考えた。
そこで、定期的な運動や交流をはかる場の提供、健康知識の普及等地域で高齢者の自立した生
活を支えるシステムとして介護予防サポートリーダーを育成しながら「公民館カフェ(仮称)」構
築とその有効性を検証した。
【方法】
1 実施期間:平成 25 年9月~平成 26 年3月
2 分析方法:実施前後でロコモチェックを用いて機能評価を行う。
また、フォーカスグループインタビュー法を用いて効果を検証する。
【結果】
1 介護予防サポートリーダーを育成しての「公民館カフェ」構築
1)介護予防サポートリーダーの育成
月1回 研修会を実施し「公民館カフェ」で行う「貯筋体操」「ラジオ体操」「みんなの体
操」など体操実施と確認、ミニ健康講座の情報提供を行う。
研修会を定期的に行うことは、サポートリーダー自身の運動の再確認や高齢者の接し方や
個々に対しての運動支援の実際など「公民館カフェ」実施において困ったことの意見交換や
情報交換の場となった。
2)先進地や類似事業などの実践地区への研修
先進地見学として選定した茨城県城里町は北杜市同様に高齢化率が高く介護認定率は
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15%と低い町である。
高齢化率が高いにもかかわらず介護認定率が低い要因として、2005 年から行政・社協・ボ
ランティアが一体となりシルバーリハビリ体操指導士養成事業を実施し元気な高齢者が「シ
ルバーリハビリ体操指導士」ボランティアとして地域でふれあいサロンを開催している。
参加者のみならずボランティアの介護予防にもつながっており、歩いて行ける公民館で実
施し、2005 年から少しずつ会場を増やし現在は、町内全域でふれあいサロンを行っている。
取り組んできた経過や特徴、効果など今後についての研修を行わせていただきこれからの
取り組みの参考となった。
3)高齢者の集いの場「公民館カフェ」の実施
提供できる方法として次の3つのタイプを考えた
A;出前講座に依頼があった地区で役員・保健福祉推進員等の協力を得ながら介護予防サ
ポートリーダーが「公民館カフェ」として引き継ぐタイプ
B;既存の無尽会・趣味の会等に介護予防サポートリーダーが出向き「公民館カフェ」と
し実施するタイプ
C;介護予防サポーター自ら地区に「公民館カフェ」を立ち上げるタイプ
タイプ 実施地区 検討会 開始 H26年度
A 武川町宮脇 H25.7 H25.9~月 1回 継続
A 高根箕輪お達者クラブ H25.8 H25.9~月 1回 継続
A 小淵沢久保地区 H25.10 H25.11~月1回 継続
B 小淵沢宮久保地区 H25.12 H25.12~ 毎週 継続
B 須玉町仁田平地区 H25.11 実施しない。別の会で対応
C 明野町浅尾地区 H25.12 H26.1~月 1回 継続
C 須玉町御所地区 H25.12 H26.1~月 1回 継続
C 高根町蔵原 H26.2 H26.2~月 1回 継続
今回は8地区で「公民館カフェ」を実施、7地区が次年度へ継続となった。
2 公民館カフェの効果あるいは成果
1)効果を検証するためのフォーカスグループインタビュー実施
○6時 25 分には必ずみんなの体操をするようになった。身体の調子が良くなった。
○ベッドの中で足の運動をしている。動きがよく体の調子が良くなった。
○立ち仕事が多く、腰の負担が多い。つま先上げの運動をするようになった。風呂やベッド
でやるようになった。身を持って良くなったと感ずるまでには至っていないが継続して行
なっている
○天気の良い日には1日 1.5 時間ウォーキングをしている。6時 25 分からテレビ体操をして
いる。もっと多くの人に「公民館カフェ」に参加してもらいたい。「自分の体は自分で守る」
ということが大切。老後は健康でありたい。
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○左膝のレントゲンで骨がずれていると言われた。痛みにも波がある。いい時には運動したい。
○ウォーキングやダンベルを以前からやったり、やらなかったりしている。自分は公民館カ
フェに半分くらいしか参加できていないが継続してもらいたい。
○家でもできる体操なのでしている。腰の具合がだいぶ良くなった。
○トイレ後のスクワットは自然に習慣になっている。体操は意識せず自然にするようになった。
○腰痛がある。整体に通院している。(本日の体操時もふらついていた)。痛みはよくなった
が重い物は持てない。継続して運動は続けたい。
○腰痛で整形受診中。痛み止めの注射もしている。平成 25 年3月から3か月間民間の運動施
設に通ったが、その後疲れて家事ができなかった。公民館カフェは皆勤賞。まだ効果は実
感していない。
○3年前から股関節痛があり痛み止め内服をしているが、寒さもあり痛む。入浴後運動して
いる。カセットにとっておいて午前にラジオ体操第1をしている。
○7年前からウォーキングをしている。毎日1時間近く習慣になっている。脳梗塞があるの
で片足立ちは大変であるが頑張りたい。
○7年前からウォーキングをしている。ラジオ体操1・2は毎日している。週1回体操教室
に参加している。
○食生活改善推進員もしていて忙しいが終了したらこちらに力を入れたい。減塩している夫
の内服も半分になった。
○夫の両親の介護に役立てたいために介護予防サポートリーダーになった。今回も誰かの役
にたとうと思って参加したら自分のためにもなった。精神的にも元気になって良かった。
○定期的に集まり、人とおしゃべりができ楽しく運動ができることがうれしい。今後も継続
してほしいとの参加者の声により3タイプ(A・B・C)とも定期的に実施することによ
り次年度も継続となった。
2)実施前後のロコモチェックの結果
*6か月間、継続的に運動を行うことによりロコモチェックがほぼ全項目でよくなっており、
下肢筋力が向上した。
57%
73%70%
89%
80%
89% 91%
81%
100%
85%
100% 100%
89%
100%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1 2 3 4 5 6 7
ロコモチェック
前
後
1 片足で靴下が履ける 2 家の中で躓かない 3 手すりなしで階段を上
がれる 4 横断歩道を青信号のうちに渡れる 5 15分続けて歩ける 6
2㎏持って歩ける 7 力のいる家事ができる
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【考察】
1.高齢者が「公民館カフェ」に参加することにより、①公民館の予約・鍵の開閉を担ってくれ
る人が自然と出てきた。②日常生活の中で朝起きてラジオ体操やウォ―キングを行うように
なった、運動を意識せず行うようになった。③親のために介護予防サポートリーダーになった、
今回も人のためと研修会に参加したら自分のためになり、精神的にも元気になったなどと介護
予防サポートリーダー自身の心身向上につながった。④二次予防事業の卒業者が公民館カフェ
に参加し本人・家族とも行き場ができたと喜び、生活が前向きになった。
これらのことより、高齢者自身が「より元気になる」「役割の再確認」「高齢者相互に健康づ
くりを刺激」などと介護予防効果が期待できたと考えた。
2.介護予防サポートリーダーが毎月研修に参加することで、①運動やミニ健康情報を学び、介
護予防サポートリーダー同士で実施方法などの情報交換を行うことで自分の居住地域で「公民
館カフェ」を実施することができた。②地域では介護予防サポートリーダーが毎回来て運動や
日頃の状態など高齢者に声掛けをすることにより高齢者も安心して集うことができる。このこ
とにより高齢者の健康増進、介護予防をサポートするためには地域で介護予防事業に協力して
くれる人材が必要性で、人材がいることで継続に繋がったと考える。
3.公民館カフェに参加した元気な高齢者については、6か月間では介護認定されずに健康寿命
が維持できるまでの効果はわからなかったが、継続的に運動を行うことにより①片足で靴下が
履けるようになったり、家の中で躓かなくなったりとロコモチェックは向上していた。②定期
的に公民館に集まり人と会いおしゃべりをすることで、もっと多くの人に「公民館カフェ」に
参加してもらいたい、「自分の体は自分で守る」老後は健康でいたいなどと、自分の健康に関心
をもち、健康寿命に意識を向けることができたと考える。
4.「公民館カフェ」は参加者が、①自らできる鍵の開閉や体操後の茶話会の準備を行う、②介護
サポートリーダーがいない地区では、次回は自分が介護予防サポートリーダーになり「公民館
カフェ」を行っていきたいと養成講座に参加する方が出るなど、高齢者の主体性やその人らし
さを引き出すきっかけづくりになったと考える。
5.介護保険要支援認定の高齢者が、「公民館カフェ」に参加したことで、①新しい行き場所がで
きた。②要支援認定者・家族とも「公民館カフェ」に参加することにより生活行動に自信がつ
き更新しなかったなど、要支援認定者の自立目標として位置づけられると考えた。
【おわりに】
これからの介護予防は、高齢者の運動機能や栄養状態の改善を求めるだけでなく日常生活の
活動を高め、家庭や社会への参加を促し、高齢者一人一人の生きがいや自己実現のための取り
組みを行うことが大切であるといわれている。
今回のように、介護予防サポートリーダーを育成し、介護予防サポートリーダーが主体的に
取り組む「公民館カフェ」を地域に展開することは、人と人とのつながりを通じ、高齢者自身
に役割や生きがい、高齢者同士の助け合いなどの学びの場となるとともに地域づくりにつなが
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ると考える。今後も高齢者が自ら歩いて行ける場所で介護予防事業が展開できる「公民館カ
フェ」の充実を図っていきたい。
【謝辞】
介護予防の効果に関する研究の実施にあたり、山梨県立大学 看護学部 看護学科 佐藤悦
子教授にはご協力いただき厚く御礼申し上げます。また、このような取り組みに助成をいただ
いた大同生命厚生事業団に深く感謝申し上げます。
【経費使途明細】
項 目 使 途 金額
人件費 9月~4月給与 122,400 円
消耗品費 T シャツ、現像、CD-R、事務用品等 105,179 円
旅費交通費 視察時交通費、ガソリン他 17,919 円
交際費 体操講師謝礼、手土産代他 29,992 円
支払手数料 振込手数料 920 円
会議費 視察時食事代 23,590 円
合 計 300,000 円
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