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1 ビタミン 水溶性ビタミン エネルギー産生 ビタミンB 1 ビタミンB 2 ナイアシン ビオチン パントテン酸 造血 葉酸 ビタミンB 12 その他 ビタミンB 6 ビタミンC 脂溶性ビタミン ビタミンA ビタミンD ビタミンE ビタミンK text p47- ほとんどの水溶性ビタミ ンは補酵素の一部分 それ自体が補酵素として 機能:ビタミンC(抗酸化 剤) カルボキシ基が酵素とア ミド結合するのみ:ビオ チン ホルモン様作用:ビタミンA, ビタミンD 抗酸化作用: ビタミンE 補酵素機能: ビタミンK 190621(1講時)生化学

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Page 1: 190621(1講時)生化学 ビタミン 水溶性ビタミン 脂 …onishi/190621Vitamins.pdf1 ビタミン 水溶性ビタミン エネルギー産生 ビタミン B1 ビタミン

1

ビタミン

水溶性ビタミン

エネルギー産生

ビタミンB1

ビタミンB2

ナイアシン

ビオチン

パントテン酸

造血

葉酸

ビタミンB12

その他

ビタミンB6

ビタミンC

脂溶性ビタミン

ビタミンA

ビタミンD

ビタミンE

ビタミンK

text p47-

• ほとんどの水溶性ビタミンは補酵素の一部分

• それ自体が補酵素として機能:ビタミンC(抗酸化剤)

• カルボキシ基が酵素とアミド結合するのみ:ビオチン

• ホルモン様作用:ビタミンA, ビタミンD

• 抗酸化作用: ビタミンE• 補酵素機能: ビタミンK

190621(1講時)生化学

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ビタミンの名称 機能

ビタミンA

レチノイドレチノールレチナールレチノイン酸

カロテノイドβ-カロテン

ビタミンD コレカルシフェロールエルゴカルシフェロール

ビタミンE トコフェノールトコトリエノール

ビタミンKフィロキノンメナキノンメナジオン

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3

名称 (化学名) 活性型(補酵素型) 機能

ビタミンB1 チアミン TPP(チアミンピロリン酸) 補酵素(糖質代謝)

ビタミンB2 リボフラビン FMN, FAD 補酵素(酸化還元反応の水素運搬体)

ナイアシン ニコチン酸ニコチン酸アミド NAD, NADP 補酵素(酸化還元反

応の水素運搬体)

ビオチン ビオチン カルボキシラーゼの補酵素 補酵素(炭酸固定反応)

パントテン酸 パントテン酸 CoA(補酵素A,コエンザイムA)

補酵素(アシル基供与体)

ビタミンB6

ピリドキシンピリドキサールピリドキサミン

PLP(ピリドキサールリン酸) 補酵素(アミノ酸代謝)

葉酸 葉酸 THF(テトラヒドロ葉酸) 補酵素(核酸代謝,アミノ酸代謝)

ビタミンB12 コバラミン アデノシルコバラミン,メチルコバラミン

補酵素(核酸代謝,アミノ酸代謝)

ビタミンC アスコルビン酸 アスコルビン酸 抗酸化作用,補酵素(水酸化反応)

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ビタミンA系(レチノイド)レチナールレチノールレチノイン酸

カロテノイド天然色素 (赤,黄,橙,紫).多くはビタミンA前駆体.

4

還元

酸化

11-trans-retinol

111

12 µgのβ-カロテンは1 µgのレチノールに相当(食品).(総ビタミンAをレチノール当量で示す)

図3-12

ニンジンをはじめとする各種野菜に橙色を与えるb-カロテンの開裂によって体内で生成.レチナールとなり,これからレチノールやレチノイン酸が作られる.

ビタミンA

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5

全trans-レチノール↓

11-cis-レチノール↓

11-cis-レチナールオプシン

ロドプシン(視覚色素)

オプシン

全transレチナール

text p49図3-13参

ビタミンAと視覚 網膜の色素上皮細胞において全trans-レチナールは異性化され,11-cis-レチノールとなり,さらに酸化されて11-cis-レチナールとなる.

このアルデヒドがオプシンのLys残基と反応結合し,ロドプシンとなる.

光があたると,レチナールが11-cis-から全trans-に変換し,ロドプシン全体の構造が変化し,レチナールがタンパク質から遊離する.

構造変化の過程でGタンパク質(トランスジューシン)を活性化し,神経伝達を起こす.

ビタミンAの欠乏により暗反応が遅くなり,弱い光の中での視力が低下する

還元

網膜で,レチナールは光感受性タンパク質のオプシンと結合し,桿体ではロドプシン,錐体ではヨードプシンを形成する.

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レチノイン酸は標的組織において遺伝子発現や細胞分化に関与

腸内粘膜でレチノール,β-カロテンが吸収↓

腸内粘膜で長鎖脂肪酸とエステル結合する.キロミクロン成分としてリンパ系に分泌,肝臓に取込まれ貯蔵

↓必要に応じて放出される.レチノール結合タンパク質と結合し肝外の組織に輸送

↓標的細胞表面の受容体に結合し,レチノールだけが細胞内に入る

↓細胞質内でレチノイン酸となり核内へ移行し,核受容体と結合

↓ある特定の遺伝子のプロモーターに結合し転写を調節する

レチノイン酸核受容体(RAR, RXR)• レチノイン酸受容体 (RAR): 9-cis-レチノイン酸,全trans-レ

チノイン酸と結合• レチノイドX受容体 (RXR): 9-cis-レチノイン酸と結合

ビタミンD,甲状腺ホルモンなどの核内受容体と二量体を形成し,ホルモン作用に関与する

6ビタミンAの欠乏,過剰はビタミンDや甲状腺ホルモンの機能を傷害

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ビタミンAの作用• 視覚作用• 細胞分化や遺伝子発現に関与• 成長促進

ビタミンAの欠乏により食欲低下(味蕾の角質化が原因か?).骨の成長が遅れて,神経系の発育に見合う成長速度が維持できずに,中枢神経系の障害が生じる

• 免疫細胞の分化• 正常な生殖

男性:精子形成,女性:胎児吸収の阻害など• 上皮細胞の維持

正常な上皮細胞の分化,粘液の分泌に重要

ビタミンA欠乏症夜盲症 night blindness(緑色認識弱化→暗順応遅延→夜盲症)眼球乾燥症 xerophthalmia(角膜のケラチン化,完全失明)

ビタミンA過剰症 hypervitaminosis AビタミンAが結合タンパク質に結合しきれなくなると非結合型による組織障害を引き起こす.中枢神経系(脳圧亢進),肝臓(組織変化を伴う肝腫大),カルシウム代謝(長骨肥厚,髙Ca血症,軟部組織石灰化),皮膚(過剰乾燥,落屑,脱毛症) 7

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ビタミンD作用: カルシウムの吸収と恒常性の維持

ホルモン様作用をもつ

D2からD7のうち,生理活性のあるものは2つ• エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)植物由来(食品)• コレカルシフェロール(ビタミンD3)動物由来(食品)

生合成される:acetylCoA→→7-デヒドロコレステロール→ビタミンDは肝臓と腎臓でそれぞれ水酸化されて活性型1,25-(OH)2ビタミンD

欠乏症(小児)くる病 rickets(成人)骨軟化症 osteomalacia

8

text p20,88参照

小腸上皮細胞に対して:カルシウムやリンの吸収を促進骨に対して:カルシウムの放出を促す腎尿細管に対して:カルシウムの再吸収を促進核内受容体に作用して遺伝子の転写調節

血漿Ca濃度を↑

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9

エルゴステロール

7-デヒドロコレステロール

ビタミンD2エルゴカルシフェロール

ビタミンD3コレカルシフェロール

紫外線

紫外線

プロビタミンD ビタミンD 25-OHビタ

ミンD1,25-(OH)2ビタミンD

25-水酸化酵素(肝)

1α-水酸化酵素(腎近位尿細管)

紫外線

1

25

25

1

1

1

3

3

3

3

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活性型ビタミンD(1,25-(OH)2VD )の作用①自身の量の調節:24-ヒドロキシラーゼを誘導し,腎の1-ヒドロキシラーゼを阻害②血中カルシウム濃度の維持

腸管からのカルシウム吸収の増加血流を介して標的細胞に到達すると,細胞内に入り受容体と結合し,核内に移行し,特異的なDNAと相互作用し(転写調節),その結果,特異的なカルシウム結合タンパク質の合成が増え,カルシウム吸収が促進カルシウム排出の抑制(遠位尿細管から再吸収促進)骨吸収(骨芽細胞を介して破骨細胞の形成を促し骨塩の動員促進)

③その他 インスリンの分泌副甲状腺ホルモンの合成分泌甲状腺ホルモンの合成分泌インターロイキン合成(T細胞)免疫グロブリン産生(B細胞)抑制単球の分化細胞増殖の調節

10

大部分の作用は,ステロイドホルモンのように,核内受容体と結合して遺伝子発現を促進することによる

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ビタミンEトコフェロール(α, β, γ, δ)とトコトリエノール( α, β, γ, δ )がある.α-トコフェロールが最も生理活性が高い.ビタミンEは総称

機能:細胞膜および血漿リポタンパク質の主要な抗酸化剤.不飽和脂肪酸の酸化を防止し,フリーラジカルを捕捉し,細胞膜の機能保全に働く.(膜にはリン脂質の成分として多価不飽和脂肪酸が多く含まれ,非常に酸化を受けやすい)自身が酸化されてトコフェロールキノンになることにより抗酸化作用.

11

図3-14

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12

活性酸素1. 呼吸のために酸素を取り込み,クエン酸回路,酸化的リン酸

化などで利用してエネルギー(ATP)産生に使う.この時,酸素自身は還元されて水分子になる.副生成物として“活性化された酸素分子”を生じ,活性酸素 active oxygenあるいはreactive oxygen species (ROS)と総称される.

2. 酸素(3O2,三重項酸素)よりもさらに反応性の高い酸素原子.

3. 核酸,タンパク質,細胞膜や血漿リポタンパク質などの脂質に傷害を与える(がん,アテローム性動脈硬化症,冠動脈疾患,自己免疫性疾患).

4. 生成を加速:放射線,加齢,炎症,紫外線,化学物質5. 生体には活性酸素除去システムが備わっている.

text p.347参照

2 •O2- + 2 H+ H2O2 + O2

2 H2O2 2 H2O + O2

スーパーオキシドアニオンラジカル

スーパーオキシドジスムターゼ

カタラーゼ

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13

三重項酸素 triplet oxygen 3O2

スーパーオキシドアニオンラジカル

superoxide anion radical O2

-•

ヒドロキシラジカル hydroxy radical HO•

一重項酸素 singlet oxygen 1O2

光のエネルギーによって,2個の不対電子が対を作って一方の原子のπ軌道に入り他方が空になったもの.三重項酸素より22 kcal エネルギー高い

過酸化水素 hydrogen peroxide H2O2

活性酸素

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ラジカル(遊離基,フリーラジカル)は不対電子をもつ反応性の高い分子.他の分子と衝突して電子を引き抜くか,供与して安定な状態になる.寿命が非常に短い(10-9~10-12秒).衝突した相手の分子を新たなラジカルにする(あるいは分子を破壊).生物にとって最も傷害性の高いラジカルは酸素ラジカルである.

スーパーオキシドアニオンラジカル O2-•

ヒドロキシラジカル HO•

ラジカルは分子の熱あるいは光による分解,放射線分解,電子線照射,金属還元などにより生じる.

14

抗酸化ビタミン●ビタミンA●ビタミンC●ビタミンE●β-カロテン

これらは活性酸素種と反応して無害化する

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ビタミンK Koagulation(独)coagulation(英)

作用カルボキシラーゼの補酵素

• 血液凝固因子(Ⅱ, Ⅶ, Ⅸ,Ⅹ,プロテインC, プロテインS)

• オステオカルシン

生成した γ-カルボキシグルタミン酸残基 (Gla) はカルシウムと結合して,血液凝固,石灰化の調節などに働く.

腸内細菌叢 15

α

γ

ビタミンK作用をもつ3つの物質

ビタミンK2(メナキノン)ビタミンK2(メナキノン)微生物チーズ,納豆

ビタミンK3(メナジオン)

ワルファリン(ビタミンK拮抗阻害薬脳梗塞,心筋梗塞予防)

ビタミンK欠乏症:新生児メレナ(新生児における消化管からの出血)

合成活性最強体内でK2になる.副作用強いのでヒトには使用しない

ビタミンK1(フィロキノン)植物

図3-16

図3-15

翻訳後修飾(Glu残基をカルボキシ化する反応)

CO2

ビタミンK

(NADPH)

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チアミン(ビタミンB1)

欠乏症• 脚気 beriberi末梢神経に異常が起こる多発性神経炎• Wernicke脳症ウェルニッケ中枢神経障害(B1不足,アルコール依存,摂食障害)• 多量の糖質摂取→ピルビン酸利用障害→

乳酸蓄積→致死的な乳酸アシドーシス16

ピルビン酸 + CoA + NAD+ アセチルCoA + CO2 + NADH + H+

TPP, FAD, Mg2+, リポ酸

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体

ビタミンB1(チアミン)

体内に吸収後,リン酸化され,チアミンピロリン酸(TPP)として糖質代謝の補酵素として機能

ピルビン酸デヒドロゲナーゼ2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ(TCA回路)分岐α-ケト酸デヒドロゲナーゼ(分岐アミノ酸の異化)

グルコース(解糖系)

クエン酸(TCA回路)

白米

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リボフラビン(ビタミンB2)体内でFMN, FADになり,酸化還元反応に補酵素として関与.

電子運搬体クエン酸回路ミトコンドリア呼吸鎖脂肪酸酸化アミノ酸酸化

欠乏症皮膚炎口角症(口角の亀裂),舌炎(平坦で,紫がかって見える舌)

リボフラビンビタミンB2

FMNフラビンモノヌクレオチド

FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)

ATPADP

ATPPPi

17

リボフラビン:フラビン+リボース

リン酸化

アデニル酸が結合

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ニコチン酸とニコチン酸アミドの総称①補酵素②ADP-リボースの供給(NAD)タンパク質のADPリボシル化核タンパク質のポリADP-リボシル化

ナイアシン

NAD+

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNADH

(還元型)

NADP+

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸

18

ニコチン酸

酸化経路,特に解糖,クエン酸回路,ミトコンドリアの呼吸鎖における酸化還元反応

ミトコンドリア外で行われる脂肪酸合成,ステロイド合成,ペントースリン酸経路のような還元を含む過程

ビタミンB3

• 食事摂取ニコチン酸は肝臓に取り込まれニコチン酸アミドに変換貯蔵

• 各細胞でNAD,NADPに変換利用• 脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)の補酵素• 体内で合成可能(肝でTrpから) 50%• 欠乏症:ペラグラpellagra

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ピリドキシン(ビタミンB6)

• アミノ酸代謝およびグリコーゲン代謝に必要アミノ基転移,脱炭酸グリコーゲンホスホリラーゼ

• ステロイドホルモン作用において重要ホルモン-受容体複合体をDNA結合から遊離させ,ホルモン作用を終結させる

19

欠乏症:稀.結核治療薬,イソニアジドはピリドキサールリン酸と不活性型の誘導体を形成して結核治療中にビタミンB6欠乏症を誘発する.

ピリドキサミン

ピリドキサール

イソニアジド

ピリドキサールリン酸(PLP)活性型補酵素

ピリドキシン

ビタミンB6 5’-リン酸エステルピリドキシン ピリドキシンリン酸ピリドキサール ピリドキサールリン酸ピリドキサミン ピリドキサミンリン酸6つの化合物がB6活性(相互変換する)

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葉酸 folic acid体内でテトラヒドロ葉酸 THFに変換される核酸のプリンおよびピリミジン塩基合成,アミノ酸代謝に必要

セリン + THF → グリシン + メチレンTHFウリジル酸 + メチレンTHF → チミジル酸 + THF

テトラヒドロ葉酸(THF)活性型補酵素

葉酸

20

プテリジン環 p-アミノ安息香酸 グルタミン酸

B12欠乏→葉酸欠乏症:巨赤芽球性貧血不足すると,胎児の二分脊椎(妊婦)

5’-ホルミルTHF

5’-メチルTHF 5 10

還元(+ 4H)

5’-メチレンTHF

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21

葉酸 ジヒドロ葉酸 テトラヒドロ葉酸

ジヒドロ葉酸還元酵素

葉酸還元酵素

メトトレキサート

メトトレキサート

メトトレキサート(葉酸代謝拮抗剤)は抗がん剤に用いられる

DNA合成に必須な反応デオキシウリジン一リン酸 チミジン一リン酸

TH葉酸 DH葉酸

チミジル酸シンターゼ

ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することに基づく核酸合成の阻害

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コバラミン(ビタミンB12)植物に存在しない.微生物により合成.動物由来食品:肝臓,全乳,卵,カキ,

新鮮エビ,豚肉,鶏肉

補酵素型― メチルコバラミンアデノシルコバラミン

分子内にCoを含むので赤色核酸の合成,メチル基転移反応,アミノ酸代謝

22

動物細胞内で補酵素型ビタミンB12を必要とする酵素は2つのみ• メチルマロニル-CoA ムターゼ• メチオニンシンターゼ

シアノコバラミン:(抽出する際にシアノ基が結合)

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作用①メチオニンシンターゼ:ホモシステインをメチル化してメチオニンを合成

メチルTHF THFホモシステイン メチオニン

B12(メチルコバラミン)

②メチルマロニルCoAムターゼ:メチルマロニルCoAをスクシニルCoAに変換脂肪酸 メチルマロニルCoA スクシニルCoA TCA回路へ

B12(アデノシルコバラミン)

欠乏:葉酸の代謝を損なう.その結果,赤血球産生を妨げ,未熟な赤血球前駆細胞が循環血流中に出現(巨赤芽球性貧血=悪性貧血)欠乏の原因

• ビタミンB12の回腸からの吸収不全(吸収に必要な胃分泌内因子が不足)• 菜食主義(植物には含まれていない)

B12の作用と欠乏症

23

-(CH2)2-S-CH3

メチルTHFがTHFに戻る唯一の経路-(CH2)2-SH

B12が欠乏すると,ホモシステインの蓄積とメチルテトラヒドロ葉酸の蓄積

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24

食物からのB12の吸収に結合タンパク質が必要

B12(タンパク質に結合)を食べる

胃:胃酸とペプシンの作用でB12は遊離.コバロフィリンと結合.

十二指腸:膵プロテアーゼの作用でコバロフィリンが部分分解し,B12 は遊離.胃壁細胞由来の内因子に結合.

回腸:回腸上皮細胞表面に存在する多機能受容体であるキュブリンに結合し,体内に取り込まれる

唾液腺由来

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パントテン酸• 補酵素A(coenzyme A, CoA)

の構成成分

CoAはチオール(-SH)を含み,チオールエステルとしてアシル基を運搬する

アシル基(R-CO-)ホルミル基 HCO-アセチル基 CH3CO-プロピオニル基 C2H5CO-ブチリル基 C3H7CO-マロニル基 -COCH2CO-スクシニル基 -CO(CH2)2CO-

クエン酸回路,脂肪酸合成と酸化,アセチル化およびコレステロール合成の諸反応に関与 補酵素A(CoA)

25

パントテン酸

チオエタノールアミン

ATP

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ビオチンカルボキシ化反応において補酵素として,活性二酸化炭素の担体となる主に脂質・糖質代謝に関わる

アセチルCoAカルボキシラーゼプロピオニルカルボキシラーゼピルビン酸カルボキシラーゼ

欠乏症は稀(多くの食品に含有.腸内細菌産生)生の卵白を多く摂取した場合(卵白タンパク質アビジンがビオチンと結合) 26

CH3CO~SCoA -OOCCH2CO~SCoA

酵素―ビオチン―COO- 酵素―ビオチン

ADP + Pi ATP + HCO3-

アセチルCoA マロニルCoA

脂肪酸合成

ビタミンH

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アスコルビン酸(ビタミンC)

27

アスコルビン酸(還元型)

デヒドロアスコルビン酸(酸化型)

モノデヒドロアスコルビン酸ラジカル

anti-scorbutic acid抗壊血病効果をもつ酸

• 強い還元力(抗酸化作用)• コラーゲン合成の際のプロリン,リシン残基の水酸化

欠乏症:壊血病 scurvyコラーゲンの生成が障害され,組織の結合力が弱まり脆弱な組織毛細血管の脆弱性(易出血性),骨,筋の脆弱化,歯肉崩壊,歯の脱落,骨折

歯肉炎皮下出血

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28

アスコルビン酸の作用

①プロリン,リシン残基の水酸化 プロリルヒドロキシラーゼリシルヒドロキシラーゼ

②アドレナリン合成フェニルアラニン,チロシンからカテコールアミンの合成

(ドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリン)③葉酸→テトラヒドロ葉酸④腸での食物中からの無機鉄の吸収を促進する Fe3+ → Fe2+

⑤ステロイドホルモンの生成を助け,分解を防ぐ

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29

微量栄養素:ビタミンとミネラルビタミン:微量で作用する低分子有機化合物の栄養素.種々の生命活動に必要であるが自ら合成することができず,食事からとらなくてはならないもの.13種

例外) トリプトファン → ナイアシンアセチルCoA → ビタミンD3

ミネラル:食事から適切に摂取されなくてはならない.

不足→ 鉄欠乏性貧血(鉄)テタニー(Ca)低ナトリウム血症

過剰→ 毒性症状

190621(1講時)生化学

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化学名 ビタミン 補酵素

チアミン

リボフラビン

ナイアシン

ピリドキシン

葉酸 葉酸

コバラミン

ビオチン ビオチン

パントテン酸 パントテン酸

アスコルビン酸

K

補酵素の構成成分となるビタミン

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スーパーオキシドスーパーオキシドアニオンラジカル

酸素分子が1電子還元を受けたものさまざまな成分と反応し,ヒドロペルオキシラジカル,脂質ペル

オキシラジカルなどを生成ほかの活性酸素の前駆体になる最も重要な活性酸素水溶液中で不均化により過酸化水素と酸素分子になる生体内では不均化反応はスーパーオキシドディスムターゼ

(SOD)によって触媒される

˙O2-

2 ˙O2- + 2 H+ ⇄ H2O2 + O2

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過酸化水素 H2O2

活性酸素である フリーラジカルではない Fenton反応によって極めて反応性の高い

ヒドロキシラジカルを生成する

Fe2+ + H2O2 ⇄ Fe3+ + HO˙ + OH-

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ヒドロキシラジカル HO˙

活性酸素の中で最も高い反応性 生体内では,Fenton反応から生成する スーパーオキシドと過酸化水素から遷移金属イオン存在

下,Harber-Weiss反応で生じる

Fe3+ + O2- ⇄ Fe2+ + O2

˙O2- + H2O2 ⇄ HO˙ + H+

水へのX線,γ線の照射で生成する

2 H2O + X線 → H+ + e- + 2 HO˙ + H˙

放射線によるDNA損傷はヒドロキシラジカルが原因と考えられている

強力な1電子酸化剤であり,近傍にある核酸,タンパク質,脂質などの生体成分と無差別に反応する

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一重項酸素 1O2Singlet oxygen

基底状態の酸素(三重項)が光などによって反結合性軌道にある不対電子が励起し,もう一方の不対電子の軌道に昇位して生じる.

電子対を形成する ラジカルではない 生体内で,過酸化水素と次亜塩素酸塩との反応,脂質ペルオ

キシラジカルの反応などから生成すると考えられる.

ポルフィリン血症:光毒性による皮膚障害(ポルフィリン分子の蓄積による一重項酸素の生成が原因と考えられている.

3O2

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Glu-Cys-Gly|S| ⇌ 2 Glu-Cys-GlyS|

Glu-Cys-Gly

酸化型グルタチオン 還元型グルタチオンGSSG GSH

還元+2H

酸化-2H

-H -Hアスコルビン酸 ⇌ モノデヒドロアスコルビン酸 ⇌ デヒドロアスコルビン酸

+H +H

デヒドロアスコルビン酸 + 還元型グルタチオン ⇌

アスコルビン酸 + 酸化型グルタチオン

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柑橘類の果汁の摂取 壊血病が治癒肉や牛乳の摂取 ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)が治癒タラの肝油 くる病の予防

壊血病の症状:筋力低下,歯肉の腫脹と出血,打撲傷の頻発壊血病の原因:コラーゲンの合成不全壊血病の治癒:コラーゲン合成に必要な補酵素のビタミンC含有食品摂取

ペラグラの症状:体重減少,皮膚炎,うつ病,痴呆ペラグラの原因:ナイアシン欠乏

くる病の症状:骨軟化(小児)くる病の原因:カルシウムとリン酸の不適切な摂取

(骨にカルシウムを取り込むのに不可欠なビタミンDの欠乏)