1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091...

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260 刑事訴訟事件に関する分析 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 第1回報告書の公表後の平成17年11月に,公判前整理手続及び期日間整理手続に関する刑事訴訟法の規 定が施行された。これに伴い,事件票を改訂し,公判前整理手続及び期日間整理手続の運用に関する統計項 目を追加した。そこで,本項では,公判前整理手続及び期日間整理手続の運用に関する統計数値を見ること とする。 1.5.1 公判前整理手続 刑事通常第一審事件において,公判前整理手続に付され本件調査期間に終局した人員は336人 (0.4%)である。 否認事件や合議事件,裁判員裁判対象事件については,公判前整理手続に付された事件の方が,付さ れなかった事件よりも,平均審理期間が短くなっている。また,公判前整理手続に付された事件の方が, 付されなかった事件より,平均開廷回数が少なく,平均開廷間隔も短くなっている。公判前整理手続に 付された事件では,連日的開廷に準じた集中的な審理が行われていることがうかがわれる。 平均取調べ証人数は,総数や自白事件では,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった 事件よりも多くなっているのに対し,否認事件では少なくなっているが,本件調査期間におけるデータ だけからは,公判前整理手続と取調べ証人数との間に一定の傾向を見いだすことは困難である。 平均証人尋問公判回数や平均被告人質問公判回数は,公判前整理手続に付された事件の方が,付され なかった事件よりも少なくなっている。 ○ はじめに 公判前整理手続とは,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため,第1回公判期日前に, 事件の争点及び証拠の整理を行う手続である。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」 という。)49条は,裁判員裁判対象事件については,必ず公判前整理手続に付さなければならないこととし ているが,現段階では,裁判員制度が施行されていないことから,公判前整理手続に付すか否かは,裁判所 の裁量にゆだねられている。その結果,現状では,大まかな傾向として,裁判員裁判対象事件であれば原則 的に公判前整理手続に付す運用と,裁判員裁判対象事件か否かを問わず,真に争点及び証拠の整理が必要と 考えられる事件を公判前整理手続に付す運用とが混在しているようである。 公判前整理手続に関する規定が施行されたのは平成17年11月であり,前記のとおり,本件調査期間にお ける運用実績も極めて限定的なものである。また,公判前整理手続の導入後間がないため,同手続に付すべ き事件の選定基準,同手続における争点や証拠の整理の在り方等についての考え方が固まっておらず,この 点に関する先例の集積も十分でない。その意味で,現在のところは,手続の運用に当たる裁判所,検察官及 び弁護人のいずれも,より効果的な手続の運用を目指し,様々な取組みを重ねている途上であるといえる。 本件調査期間の公判前整理手続に関するデータは,以上のような運用の過渡期とも言うべき状況の下での 運用を前提とするものであり,そのサンプル数も限定的なものである。したがって,これらのデータにより, 公判前整理手続の運用等に関し,ある程度の傾向をうかがい知ることはできるとしても,ここから直ちに, 同手続の効果や限界を分析したり,今後の運用について明確な予測をしたりすることは困難であり,かつ, 相当でもないことに,十分留意しておく必要がある。

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Page 1: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

260

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 第1回報告書の公表後の平成17年11月に,公判前整理手続及び期日間整理手続に関する刑事訴訟法の規定が施行された。これに伴い,事件票を改訂し,公判前整理手続及び期日間整理手続の運用に関する統計項目を追加した。そこで,本項では,公判前整理手続及び期日間整理手続の運用に関する統計数値を見ることとする。

1.5.1 公判前整理手続

 刑事通常第一審事件において,公判前整理手続に付され本件調査期間に終局した人員は336人(0.4%)である。 否認事件や合議事件,裁判員裁判対象事件については,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件よりも,平均審理期間が短くなっている。また,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件より,平均開廷回数が少なく,平均開廷間隔も短くなっている。公判前整理手続に付された事件では,連日的開廷に準じた集中的な審理が行われていることがうかがわれる。 平均取調べ証人数は,総数や自白事件では,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件よりも多くなっているのに対し,否認事件では少なくなっているが,本件調査期間におけるデータだけからは,公判前整理手続と取調べ証人数との間に一定の傾向を見いだすことは困難である。 平均証人尋問公判回数や平均被告人質問公判回数は,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件よりも少なくなっている。

○ はじめに 公判前整理手続とは,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため,第1回公判期日前に,事件の争点及び証拠の整理を行う手続である。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」という。)49条は,裁判員裁判対象事件については,必ず公判前整理手続に付さなければならないこととしているが,現段階では,裁判員制度が施行されていないことから,公判前整理手続に付すか否かは,裁判所の裁量にゆだねられている。その結果,現状では,大まかな傾向として,裁判員裁判対象事件であれば原則的に公判前整理手続に付す運用と,裁判員裁判対象事件か否かを問わず,真に争点及び証拠の整理が必要と考えられる事件を公判前整理手続に付す運用とが混在しているようである。 公判前整理手続に関する規定が施行されたのは平成17年11月であり,前記のとおり,本件調査期間における運用実績も極めて限定的なものである。また,公判前整理手続の導入後間がないため,同手続に付すべき事件の選定基準,同手続における争点や証拠の整理の在り方等についての考え方が固まっておらず,この点に関する先例の集積も十分でない。その意味で,現在のところは,手続の運用に当たる裁判所,検察官及び弁護人のいずれも,より効果的な手続の運用を目指し,様々な取組みを重ねている途上であるといえる。 本件調査期間の公判前整理手続に関するデータは,以上のような運用の過渡期とも言うべき状況の下での運用を前提とするものであり,そのサンプル数も限定的なものである。したがって,これらのデータにより,公判前整理手続の運用等に関し,ある程度の傾向をうかがい知ることはできるとしても,ここから直ちに,同手続の効果や限界を分析したり,今後の運用について明確な予測をしたりすることは困難であり,かつ,相当でもないことに,十分留意しておく必要がある。

Page 2: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  261

○ 公判前整理手続に付された終局人員等 【表48】は,本件調査期間における地方裁判所の刑事通常第一審事件の終局人員及びそのうち公判前整理手続に付された人員を自白・否認別に示したものである。公判前整理手続に付された人員は,終局人員総数7万5370人中336人(0.4%)となっている。このうち,否認事件で公判前整理手続に付された人員は,否認事件の終局人員5199人中159人(3.1%)である。また,【表49】は,公判前整理手続に付された人員及びその平均審理期間を罪名別に示したものであるが,殺人や傷害致死の実施率が比較的高くなっている。

【表48】公判前整理手続に付された終局人員

(注) 1 ( )内は終局人員に対する割合(%)である。2 終局人員には被告事件についての陳述に入らずに終局した人員を含む。3 その他の1人は公判前整理手続に付されたが,公判が1度も開かれずに被告人死亡による公訴棄却で終局した人員である。4 公判前整理手続に付され,かつ,期日間整理手続にも付された人員が6人ある。

【表49】公判前整理手続に付された終局人員及びその平均審理期間(主要罪名別及び自白否認別等)

区分

年次

終局人員 公判前整理手続に付された人員 自 白 否 認 その他

平成18年 75,370(0.4)336

(0.2)176

(0.2)159

(0.001)1

総数 殺人強盗・同致死傷

傷害致死

強姦・同致死傷

現住建造物等放火 

覚せい剤取締法違反

強制わいせつ・同致死傷 

危険運転致死

傷害 恐喝

公 

判 

前 

整 

理 

手 

うち自白終局人員 176 48 38 21 15 12 2 8 4 1 4

平均審理期間(月) 4.7 4.0 4.5 6.0 4.3 4.4 2.5 4.8 4.5 4.5 7.1

うち否認終局人員 159 62 17 16 10 10 9 2 3 6 3

平均審理期間(月) 5.8 5.1 5.4 7.6 5.4 7.5 5.5 9.0 6.0 4.3 3.5

うち合議事件・自白

終局人員 166 38 - 8 - -

平均審理期間(月) 4.7 4.5 - 4.8 - -

うち合議事件・否認

終局人員 138 16 5 2 2 -

平均審理期間(月) 5.9 5.4 5.4 9.0 5.8 -

公判前整理手続実施率(%) 0.4 16.3 3.2 16.0 3.9 8.1 0.1 0.9 13.7 0.1 0.3

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262

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

 次に,【表50】は,本件調査期間における合議事件(法定合議事件及び裁定合議事件)の終局人員数及びそのうち公判前整理手続に付された人員を自白・否認別に示したものである。公判前整理手続に付された人員は5899人中305人(5.2%)である。

【表50】公判前整理手続に付された合議事件の終局人員

(注) 1 ( )内は合議事件の終局人員に対する割合(%)である。2 終局人員には被告事件についての陳述に入らずに終局した人員を含む。3 その他の1人は公判前整理手続に付されたが,公判が1度も開かれずに被告人死亡による公訴棄却で終局した人員である。

(注) 1 ( )内は裁判員裁判対象事件の終局人員に対する割合(%)である。2 終局人員には被告事件についての陳述に入らずに終局した人員を含む。3 その他の1人は公判前整理手続に付されたが,公判が1度も開かれずに被告人死亡による公訴棄却で終局した人員である。

 さらに,前記のとおり,公判前整理手続は,裁判員法施行後においては,裁判員裁判対象事件では必ず付さなければならないこととされているところ,本件調査期間における裁判員裁判対象事件の終局人員及びそのうち公判前整理手続に付された人員を自白・否認別に示した【表51】によれば,本件調査期間における裁判員裁判対象事件の終局人員は2877人であり,終局人員のうち,公判前整理手続に付された人員は270人(9.4%)にとどまっている。そのうち,否認事件については,949人中121人(12.8%)が公判前整理手続に付されているのに対し,自白事件では,1833人中148人(8.1%)が同手続に付されているにとどまる。

【表51】公判前整理手続に付された裁判員裁判対象事件の終局人員

区 分

年次等終局人員

自 白 否 認 その他

平成18年

合議事件 5,899(69.4)4,091

(28.1)1,658

(2.5)150

うち公判前整理手続に付された人員

(5.2)305

(2.8)166

(2.3)138

(0.02)1

区 分

年次等終局人員

自 白 否 認 その他

平成18年

裁判員裁判対象事件 2,877(63.7)1,833

(33.0)949

(3.3)95

うち公判前整理手続に付された人員

(9.4)270

(5.1)148

(4.2)121

(0.03)1

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  263

○ 公判前整理手続と国選弁護事件・私選弁護事件 【表52】は,公判前整理手続に付された人員につき自白・否認別に国選弁護人が選任された事件と私選弁護人が選任された事件の件数を示したものであり,【表53】は合議事件に関するもの,【表54】は裁判員裁判対象事件に関するものである。いずれの場合にも,私選弁護人選任率が,刑事通常第一審事件(25.0%。【表1】参照)と比べて高くなっており,特に,否認事件については4割近くの事件において私選弁護人が選任されている。

【表52】自白否認別及び国選私選別の公判前整理手続に付された終局人員

公判前整理手続に付された人員   自白 否認

国選 私選 国選 私選

全 件 数336 176

69.9%123

34.7%61 159

69.2%110

38.4%61

(注)国選弁護人と私選弁護人の両方がついた人員は双方に重複して計上した。

【表53】自白否認別及び国選私選別の公判前整理手続に付された終局人員(合議事件)

公判前整理手続に付された人員   自白 否認

国選 私選 国選 私選

合議事件305 166

71.7%119

31.9%53 138

68.1%94

39.1%54

(注)国選弁護人と私選弁護人の両方がついた人員は双方に重複して計上した。

【表54】自白否認別及び国選私選別の公判前整理手続に付された終局人員(裁判員裁判対象事件)

公判前整理手続に付された人員   自白 否認

国選 私選 国選 私選

裁判員裁判対象事件 270 148

74.3%110

29.7%44 121

71.1%86

37.2%45

(注)国選弁護人と私選弁護人の両方がついた人員は双方に重複して計上した。

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264

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

○ 公判前整理手続期日の回数等 【図55】は,自白・否認別の平均公判前整理手続期日回数及び公判前整理手続期日回数の分布を示したものである。 公判前整理手続の平均期日回数は2.1回であり,期日回数2回の事件が最も多く(37.5%),次いで期日回数1回の事件(35.1%),期日回数3回の事件(14.6%)の順となっている。期日を開かずに公判前整理手続が終了した人員も4人いる。このうち,否認事件の平均期日回数は2.5回であり,自白事件の1.7回より多くなっている。期日回数の分布を見ても,否認事件の方が,期日回数が多い事件の割合が高くなっている。

【図55】自白・否認別の平均公判前整理手続期日回数及び公判前整理手続期日回数の分布

35.1

40.9

34.7

37.5

18.9

10.2

14.6

8.2

4.5

6.9 3.120.8

48.3

6.3 3.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

否認(平均期日回数2.5回)

自白(平均期日回数1.7回)

総数(平均期日回数2.1回)

0回 1回 2回 3回 4回 5回 6,7回 8~10回

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  265

○ 公判前整理手続と平均審理期間        【図56】は,公判前整理手続の有無別に自白事件・否認事件ごとの平均審理期間を示したものである。前記のとおり,裁判員制度が実施されていない現時点では,裁判員裁判対象事件や複雑な否認事件等,真に争点及び証拠の整理が必要と考えられる事件を選んで公判前整理手続に付すという運用がされているように思われ,総数で見ると,公判前整理手続に付された事件の方が平均審理期間が長くなっている。これは,公判前整理手続に付されなかった事件の大半は,審理期間の短い単独事件の自白事件であることが影響しているためである(裁判員制度実施後も,基本的にはこのような傾向が続くものと予想される。)。その意味では,総数を対象とした場合,公判前整理手続に付された事件と付されなかった事件とでは,対象事件の内容に質的な違いがあり,両者の審理期間の実情等を比較する場合の母数としては適切とはいえないと思われる。これに対し,審理に一定の時間を要する否認事件(その平均審理期間は8.9月であり,刑事通常第一審事件総数(3.1月)の3倍近くとなっている。)について見ると,公判前整理手続に付された事件(前記のとおり公判前整理手続に付された終局人員は159人。同手続に付された終局人員合計336人の47.3%)の平均審理期間(5.8月)は,同手続に付されなかった事件(8.9月)より相当短くなっている。内訳を見ると,公判前整理手続に付された事件では,当然のことながら,受理から第1回公判期日までの期間は長くなっているが,第1回公判期日から終局までの期間は,同手続に付されなかった事件の方が大幅に長くなっている。第1回公判期日から終局までの期間に限ると,公判前整理手続に付されなかった事件の平均審理期間は,同手続に付された事件の約3.9倍となっている。

【図56】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均審理期間

(注)総数には,被告事件についての陳述に入らずに移送等で終局した事件を含む。

2.1 1.8 2.4

7.1

3.8 3.6

1.5

4.0

1.5 1.8

1.6

1.4

1.2

1.81.1

0.01.02.03.04.05.06.07.08.09.010.011.012.013.014.0

(月)

第1回から終局公判前整理手続に付された日から公判前整理手続終了日受理から第1回

公判前整理手続期間

公判前あり(総数)

公判前なし(総数)

公判前整理手続期間

公判前あり(自白)

公判前なし(自白)

公判前整理手続期間

公判前あり(否認)

公判前なし(否認)

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266

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

 次に,【図57】は,比較的重大な事件の多い合議事件(前記のとおり公判前整理手続に付された終局人員は305人。同手続に付された終局人員合計336人の90.8%)について,また,【図58】は,重大事件である裁判員裁判対象事件(前記のとおり公判前整理手続に付された終局人員は270人。同手続に付された終局人員合計336人の80.4%)について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均審理期間を示したものである。合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件,否認事件のいずれを見ても,公判前整理手続に付された事件の平均審理期間が付されなかった事件を下回っている。特に,否認事件では,公判前整理手続に付された事件の第1回公判期日から終局までの期間が顕著に短くなっている。公判前整理手続に付されなかった事件の第1回公判期日から終局までの平均審理期間は公判前整理手続に付された事件と比べると,合議事件で約6.2倍,裁判員裁判対象事件で約6.5倍となっている。

【図57】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均審理期間(合議事件)

(注)総数には,被告事件についての陳述に入らずに移送等で終局した事件を含む。

2.1 1.8 2.5

11.1

3.8 3.61.8

4.1

1.9 2.0

5.71.43.6

1.81.1

0.01.02.03.04.05.06.07.08.09.010.011.012.013.014.0

(月)

第1回から終局公判前整理手続に付された日から公判前整理手続終了日受理から第1回

公判前整理手続期間

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

公判前整理手続期間

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

公判前整理手続期間

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  267

 そこで,以下は,本件調査期間の公判前整理手続に付された終局人員の大部分を占め,かつ,分析対象としても適当であると考えられる合議事件及び裁判員裁判対象事件について,公判前整理手続に関連するデータを見ていくこととする。

○ 公判前整理手続と平均開廷回数 【図59】は,合議事件について,【図60】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均開廷回数を示したものである。合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件,否認事件のいずれを見ても,公判前整理手続に付された事件の平均開廷回数が付されなかった事件のそれを下回っている。特に,否認事件では,その傾向が顕著であり,公判前整理手続に付されなかった事件の平均開廷回数を,同手続に付された事件のそれと比べると,合議事件で約2.3倍,裁判員裁判対象事件で約2.2倍となっている(ただし,後記1.6のとおり,公判前整理手続に付された事件では,連日的開廷に準じた運用により集中的な審理が実施され,1開廷当たりの開廷時間も,同手続に付されなかった事件より長くなっている例が多いものと推測されるため,平均開廷回数の減少が,直ちに総開廷時間の減少に直結するものではないことには注意を要する。)。

【図58】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均審理期間(裁判員裁判対象事件)

(注)総数には,被告事件についての陳述に入らずに移送等で終局した事件を含む。

2.1 1.7 2.5

11.0

3.8 3.51.8

4.12.1 2.0

6.51.3 4.3

1.71.0

第1回から終局公判前整理手続に付された日から公判前整理手続終了日受理から第1回

0.01.02.03.04.05.06.07.08.09.010.011.012.013.014.0

(月)

公判前整理手続期間

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

公判前整理手続期間

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

公判前整理手続期間

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

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268

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

【図60】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷回数(裁判員裁判対象事件)

【図59】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷回数(合議事件)

3.45.3

2.63.7 4.3

9.7

(2.1) (1.7)(2.6)

(8.0)

(6.0)

(4.0)

(2.0)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0平均開廷回数 公判前整理手続期日の平均回数

平均開廷回数(回)

公判前整理手続期日の

平均回数(回)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

3.3

5.9

2.54.1 4.2

9.4

(2.0) (1.7) (2.4)

平均開廷回数 公判前整理手続期日の平均回数

(8.0)

(6.0)

(4.0)

(2.0)

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0平均開廷回数(回)

公判前整理手続期日の

平均回数(回)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

Page 10: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  269

○ 公判前整理手続と平均開廷間隔 【図61】は,合議事件について,【図62】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均開廷間隔を示したものである。合議事件,裁判員裁判対象事件とも,受理から終局までの平均開廷間隔には大きな違いがないが,第1回公判期日から終局までの平均開廷間隔は,公判前整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件を大幅に下回っており,公判前整理手続に付された事件では,連日的開廷に準じた運用により集中的な審理を実施する運用が一般的になっていることがうかがわれる。 以上の検討からは,公判前整理手続に付された事件においては,充実した争点整理を前提に,連日的開廷に準じた公判審理が実施されることより,平均開廷回数及び第1回公判期日から終局までの平均開廷間隔の双方が減少し,平均審理期間,特に第1回公判期日から終局までの平均審理期間が短くなったものと考えられる。

【図61】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷間隔(合議事件)

【図62】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷間隔(裁判員裁判対象事件)

1.4 1.4 1.4

0.4 0.4 0.4

1.4

1.1

1.41.51.8

1.5 1.4

0.4 0.4

1.0

0.4

1.1

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

(月) 受理から終局 第1回から終局

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

1.4 1.41.4

0.40.40.4

1.4

1.1

1.41.6

1.81.5 1.4

1.2

0.4

1.0

0.40.4

受理から終局 第1回から終局

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

(月)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

Page 11: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

270

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

○ 公判前整理手続と平均取調べ証人数 【図63】は,合議事件について,【図64】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均取調べ証人数を示したものである。合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件では,公判前整理手続に付された事件の方が平均証人数が多くなっている反面,否認事件では,公判前整理手続に付された事件の方が平均証人数が少なくなっている。

【図63】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均取調べ証人数(合議事件)

【図64】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均取調べ証人数(裁判員裁判対象事件)

1.20.9

1.9

0.9

3.7

2.7

1.61.9

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(人)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

1.11.0

2.6

3.4

1.71.81.8

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(人)

Page 12: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  271

 公判前整理手続は,争点や証拠を真に必要なものに絞り込む機能を果たすことが期待されているから,一般的には,同手続に付すことは,取調べ証人数を減少させる要因であると言うことができるが,もとより証人数は事案ごとにその具体的な内容により定まることであり,同手続に付されていない事件と単純に比較することは相当でない。また,本件調査期間においては,真に争点及び証拠の整理が必要と考えられる事件を選んで公判前整理手続に付された場合が多いと思われ,その点では,公判前整理手続に付され本件調査期間に終局した事件は,平均証人数が多くなる要素を持った事件であると言うことができる。他方,公判前整理手続に付され本件調査期間に終局した事件は,同手続が導入された平成17年11月以降に受理された事件であり,その審理期間は最長でも1年2月であるのに対し,公判前整理手続に付されなかった事件には,これより審理期間が長い事件も相当数含まれていると思われる。そして,審理期間の長い事件ほど取調べ証人数が多くなる傾向があることにかんがみると,公判前整理手続に付されなかった事件も,統計上,平均証人数が多くなる要素を持っているという面もある。 このように本件調査期間における公判前整理手続の有無別の平均証人数のデータは,いまだ同手続の運用の初期の段階で,同手続に付された終局人員も少なく,上記のような様々な過渡期特有の要素が混在したものであり,これらのデータだけからは,公判前整理手続と取調べ証人数に関して何らかの傾向を見いだすことは困難であり,相当でもないと考えられる。

○ 公判前整理手続と証人尋問公判回数,被告人質問公判回数等 【図65】は,合議事件について,【図66】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均証人尋問公判回数を示したものである。開廷回数の場合と同様,合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件,否認事件のいずれを見ても,公判前整理手続に付された事件の平均証人尋問公判回数が,付されなかった事件のそれを下回っている。特に,否認事件では,その傾向が顕著であり,公判前整理手続に付されなかった事件の平均証人尋問公判回数を,同手続に付された事件のそれと比べると,合議事件で約2.2倍,裁判員裁判対象事件で約2.0倍となっている(ただし,開廷回数の場合と同様,公判前整理手続に付された事件では1開廷当たりの開廷時間が長くなっている例が多いものと推測されるため,平均証人尋問公判回数の減少が,直ちに証人尋問に要する総時間の減少に直結するものではないことには注意を要する。)。

Page 13: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

272

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

【図65】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均証人尋問公判回数(合議事件)

【図66】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均証人尋問公判回数(裁判員裁判対象事件)

1.5

2.1

1.1 1.2

3.9

1.81.8

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

1.4

2.1

1.01.2

3.6

1.81.8

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

Page 14: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  273

 なお, 【図67】は,合議事件について,【図68】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の証人1人当たりの平均証人尋問公判回数を示したものである。合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件,否認事件のいずれを見ても,公判前整理手続に付された事件の数値が,付されなかった事件のそれを下回っており,否認事件では0.6回(同手続に付されなかった事件では0.9回)となっている。このことからも,公判前整理手続に付された事件では,集中した審理により,1回の公判期日等において複数の証人を尋問している場合が多いことがうかがわれる。

【図67】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の証人1人当たりの平均証人尋問公判回数(合議事件)

0.60.90.90.9

0.70.9

0.6

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

【図68】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の証人1人当たりの平均証人尋問公判回数(裁判員裁判対象事件)

0.60.90.90.9

0.70.9

0.6

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

Page 15: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

274

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

他方,【図69】は,合議事件について,【図70】は,裁判員裁判対象事件について,それぞれ公判前整理手続の有無別及び自白・否認別の平均被告人質問公判回数を示したものである。上記平均証人尋問公判回数と同様,合議事件,裁判員裁判対象事件とも,総数,自白事件,否認事件のいずれを見ても,公判前整理手続に付された事件の平均被告人質問公判回数が,付されなかった事件のそれを下回っている。特に,否認事件では,その傾向が顕著であり,公判前整理手続に付されなかった事件の平均被告人質問公判回数を,同手続に付された事件のそれと比べると,合議事件及び裁判員裁判対象事件のいずれにおいても約1.7倍となっている(ただし,平均被告人質問公判回数の減少が,直ちに被告人質問に要する総時間の減少に直結するものではないことも,上記証人尋問公判回数の場合と同様である。)。

【図69】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均被告人質問公判回数(合議事件)

【図70】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の平均被告人質問公判回数(裁判員裁判対象事件)

1.41.1

1.41.7

2.9

1.8

2.9

1.8

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

1.4

2.0

1.11.5 1.7

2.9

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(回)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

Page 16: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  275

1.5.2 期日間整理手続

 平成18年度の地方裁判所通常第一審事件の終局人員における期日間整理手続に付された人員は56人(0.1%)にすぎず,何らかの運用傾向を見いだすのは,公判前整理手続の場合にもまして困難である。

○ はじめに 期日間整理手続とは,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため,第1回公判期日後の審理の経過にかんがみ必要と認められる場合に,事件の争点及び証拠の整理を行う手続であり,公判前整理手続と同時に導入されたものである。 期日間整理手続についても,導入後間がないこともあり,どのような場合に期日間整理手続に付され,どのような手続が行われるのかといった点については,いまだ十分な実例もなく,運用が固まっていない状況にあることは公判前整理手続と同様である。制度本来の在り方からすれば,公判前整理手続が効果的に行われれば,重ねて期日間整理手続に付する必要はないはずであり,公判前整理手続に付された事件について更に期日間整理手続に付するのは,予想外の事情が判明した場合や,様々な事情により公判前整理手続を十分行い得なかった場合などが想定されよう。また,裁判員制度実施後の裁判員裁判の審理を念頭に置くと,第1回公判期日後,期日間整理手続に付し,場合により公判前整理手続で定められた公判の日程(裁判員の職務従事予定期間)に変更が生じるという事態は極力回避すべきである。したがって,公判前整理手続に付された事件について重ねて期日間整理手続に付するというケースが大幅に増えることはないとも予測し得るところである。他方,公判前整理手続には付さなかったものの,第1回公判期日以降の審理の経過に照らし,期日間整理手続に付する必要が出てくる場合もあり得るところであろう。 本件調査期間に終局した事件のうち,期日間整理手続に付された人員は56人にとどまっており(【表71】参照),ここから何らかの運用傾向を見いだすことは,公判前整理手続の場合より更に困難であるが,事件票の改訂により把握することが可能となったデータを一通り概観することとする。

○ 期日間整理手続に付された終局人員 【表71】は,本件調査期間における地方裁判所の刑事通常第一審事件の終局人員のうち,期日間整理手続に付された人員を自白・否認別に示したものであり,期日間整理手続に付された人員は56人にとどまっている(このうち6人では,公判前整理手続にも付されている。)。なお,これらの事件の中には,平成17年11月の期日間整理手続に関する規定の施行前に受理された事件も含まれていることに注意を要する。

【表71】期日間整理手続に付された終局人員

区分

年次

終局人員 期日間整理手続に付された人員 自 白 否 認

平成18年 75,370(0.1)56

(0.02)16

(0.1)40

(注) 1 ( )内は終局人員に対する割合(%)である。 2 終局人員には被告事件についての陳述に入らずに終局した人員を含む。 3 公判前整理手続に付され,かつ,期日間整理手続にも付された人員が6人ある。

Page 17: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

276

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

○ 期日間整理手続期日の回数等 【図72】は,自白・否認別の平均期日間整理手続期日回数及び期日間整理手続期日回数の分布を示したものである。自白事件の平均は1.5回,否認事件の平均は2.3回となっている。自白事件・否認事件とも,回数1回の事件が最も多く,否認事件でも60%以上の事件が2回以内に手続を終えている。また,事件数は少ない(16人)が,自白事件では全件が2回以内に手続を終えている。

【図72】自白・否認別の平均期日間整理手続期日回数及び期日間整理手続期日回数の分布

5.0

6.3

5.4

35.0

50.0

39.3

27.5

43.8

32.1

15.0

10.7

12.5

8.9

5.0

3.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

否認(平均期日回数2.3回)

自白(平均期日回数1.5回)

総数(平均期日回数2.0回)

0回 1回 2回 3回 4回 6,7回

Page 18: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  277

○ 期日間整理手続と平均審理期間,平均開廷回数,平均開廷間隔,平均取調べ証人数 【図73】は,期日間整理手続の有無別に自白事件・否認事件ごとの平均審理期間を示したものである。総数,自白事件,否認事件とも,期日間整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件よりも平均審理期間が長くなっている。 【図74】は,期日間整理手続の有無別に自白事件・否認事件ごとの平均開廷回数を示したものであり,【図75】は,期日間整理手続の有無別に自白事件・否認事件ごとの平均開廷間隔を示したものである。総数,自白事件については,期日間整理手続に付された事件の方が,付されなかった事件よりも,平均開廷回数が多く,かつ,平均開廷間隔は長いが,否認事件については,平均開廷回数は,期日間整理手続に付された事件の方が付されなかった事件より若干多い程度であり,また,平均開廷間隔は,期日間整理手続に付された事件と付されなかった事件とで同じとなっている。 【図76】は,期日間整理手続の有無別に自白事件・否認事件ごとの平均取調べ証人数を示したものである。期日間整理手続に付された事件の平均取調べ証人数は,同手続に付されなかった事件のそれより相当多くなっている。 ただし,前記のとおり,本件調査期間に終局した期日間整理手続に付された事件はごく少ないため,上記の点から一般的な傾向を見いだすことは困難であることに留意する必要がある。

【図73】期日間整理手続の有無別及び自白否認別の平均審理期間

2.41.5 1.5 1.5

2.71.9

1.6 1.2

6.95.9

6.9

3.5

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

(月) 受理から第1回 第1回から終局

期日間整理手続なし

(否認)

期日間整理手続あり

(総数)

期日間整理手続なし

(総数)

期日間整理手続あり

(自白)

期日間整理手続なし

(自白)

期日間整理手続あり

(否認)

Page 19: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

278

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

【図74】期日間整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷回数

【図75】期日間整理手続の有無別及び自白否認別の平均開廷間隔

7.07.4

2.4

3.6

2.7

3.6

2.7

6.3

期日間整理手続なし

(否認)

期日間整理手続あり

(総数)

期日間整理手続なし

(総数)

期日間整理手続あり

(自白)

期日間整理手続なし

(自白)

期日間整理手続あり

(否認)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

(回)

1.31.1

1.41.4

1.1

1.3 1.3

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

(月)

期日間整理手続なし

(否認)

期日間整理手続あり

(総数)

期日間整理手続なし

(総数)

期日間整理手続あり

(自白)

期日間整理手続なし

(自白)

期日間整理手続あり

(否認)

Page 20: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  279

【図76】期日間整理手続の有無別及び自白否認別の平均取調べ証人数

3.7

0.80.8

1.3

0.7

4.7

2.5

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(人)

期日間整理手続なし

(否認)

期日間整理手続あり

(総数)

期日間整理手続なし

(総数)

期日間整理手続あり

(自白)

期日間整理手続なし

(自白)

期日間整理手続あり

(否認)

Page 21: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

280

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

1.6 開廷時間

 終局人員1人当たりの平均開廷時間は,合議事件で214.0分(自白事件165.8分,否認事件419.9分),単独否認事件で270.5分である。また,公判期日等1回当たりの平均開廷時間は,合議事件で60.4分(自白事件52.4分,否認事件81.1分),単独否認事件で55.3分である。 公判前整理手続の有無別に,合議事件や裁判員対象事件の終局人員1人当たりの平均開廷時間を見ると,同手続に付された事件の方が長くなっている。また,同じく合議事件や裁判員対象事件の公判期日等1回当たりの平均開廷時間を見ても,同手続に付された事件の方が長くなっている。 公判前整理手続に付された事件の方が公判期日等1回当たりの平均開廷時間が長くなっていることに,同手続に付された事件の開廷回数及び開廷間隔の状況を併せ考えると,同手続に付された事件においては,連日的開廷に準じた集中的な審理をしていることがより明確になったといえる。

○ はじめに これまでの検討でも明らかなとおり,従来の刑事訴訟の審理は,公判期日を一定の間隔(開廷間隔)を置いて開廷するという審理方式(集中的な審理と対比して,比喩的に「五月雨式審理」と呼ばれることもある。)が主流であった。 しかし,平成21年5月までに実施される裁判員制度の下での刑事裁判の審理は,すべての事件について公判前整理手続に付し(裁判員法49条),争点を絞り,証拠関係を必要にして十分なものに厳選した上で(刑事訴訟規則189条の2によれば,「証拠調べの請求は,証明すべき事実の立証に必要な証拠を厳選して,これをしなければならない。」と規定されている。),公判を連日的に開廷し,継続的に審理を行う(刑事訴訟法281条の6第1項)というものになる予定である。また,法律専門家でない国民から選ばれる裁判員の負担が過重なものにならないようにしつつ,その職責を十分果たすことができるよう,審理を迅速で分かりやすいものにする必要があり(裁判員法51条参照),現在,法曹三者において,模擬裁判等を通じた検討が重ねられているところである。審理のイメージとしては,公判廷での審理を見聞きしたことだけで被告人が有罪かどうかという点や量刑を判断することができるような,公判廷中心の審理が検討されており,このような審理イメージの下では,特に重大事件について,犯罪に至る経緯や周辺事情まで詳細に審理,判断するといった従来の審理(比喩的に「精密司法」と呼ばれることもある。)から,事案の核心の解明を中心とした審理になるものと思われる。 このように,今後,裁判員裁判対象事件の審理を中心に,刑事訴訟の審理形態(開廷回数,開廷間隔等)は大きく変容することが予想されることから,今後,継続的に刑事訴訟事件の審理期間の状況を検討する場合,単に開廷回数や開廷間隔を見るだけでは,的確な比較検討が困難になる可能性がある。このような観点もあって,検証検討会においても,具体的な開廷時間に関するデータを把握する必要性が指摘されたところである。そこで,今回,事件票が改訂され,合議事件及び単独否認事件で,平成17年11月以降に第1回公判期日が開かれた事件について,公判が開かれた合計時間及び期日外等の証人尋問の合計時間(以下「開廷時間」という。)が調査項目に加えられた。 ところで,本件調査期間に終局した合議事件及び単独否認事件の総数は9440人であるのに対し,本件調査期間の開廷時間の報告対象となったもの(以下「報告対象人員」という。)は7097人(75.2%)となっている。また,報告対象人員は,平成17年11月以降に第1回公判期日が開かれたものが対象であり,受理後第1回公判期日までの期間(2か月前後)を考慮しても,審理期間が1年4か月前後を超えるものは含まれない可能性が高い。したがって,報告対象人員のデータだけから,刑事訴訟事件の開廷時間の状況に関する傾向を正確に読み取ることは困難であるし,相当ではない(今後,平均開廷時間や開廷時間の分布に大きな

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  281

変化がなければ,事例が一定数集積されるまでは,平均開廷時間も増加していく可能性もあるが,他方,開廷時間は,裁判員裁判に向けた審理の在り方の見直し等の結果いかんにも大きく影響されると予想されるので,現時点で,今後の開廷時間の動向について明確な予測を立てることは困難である。)。 このような限界があることを留保しつつ,報告対象人員について,その開廷時間の状況について見ることとする。

○ 報告対象人員の開廷時間の状況 【表77】は,報告対象人員の概要を示したものである。本件調査期間に終局した合議事件及び単独否認事件の総数は9440人であり,うち合議事件が5899人(自白その他4241人,否認事件1658人),単独否認事件が3541人である。報告対象人員は7097人(合議事件4384人,単独否認事件2713人)であり,全体の75.2%(合議事件74.3%,単独否認事件76.6%)となっている。

【表77】開廷時間報告対象人員

総 数 合議事件 単独否認事件自 白 否 認 その他

終局人員 9,440 5,899 4,091 1,658 150 3,541

開廷時間報告対象人員

(75.2)7,097

(74.3)4,384

(86.8)3,551

(50.2)832

(0.7)1

(76.6)2,713

(注) ( )内は終局人員に対する割合(%)である。

 【図78】は,報告対象の終局人員1人当たりの平均開廷時間を示したものである。報告対象の終局人員総数で4時間弱(235.6分),合議事件で3時間30分余り(214.0分),そのうち合議自白事件では2時間40分余り(165.8分),合議否認事件では7時間弱(419.9分)となっている。また,単独否認事件の平均開廷時間は4時間30分余り(270.5分)である。

【図78】終局人員1人当たりの平均開廷時間

(注)  開廷時間を調査しているのは,合議事件全部及び単独事件のうち否認事件であるため,「総数」とあるのはこれらの事件の総数である。

214.0

165.8165.8

419.9

270.5

235.6

総数 合議事件総数 合議自白事件 合議否認事件 単独否認事件

(分)

0.0

60.0

120.0

180.0

240.0

300.0

360.0

420.0

480.0

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282

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

 【図79】は,公判期日等1回当たりの平均開廷時間を示したものである。報告対象人員総数で58.0分,合議事件で60.4分(合議自白事件52.4分,合議否認事件81.1分),単独否認事件で55.3分となっている。公判期日等の中には,比較的短時間で済む判決宣告期日も含まれていることから,証人尋問や被告人質問を実施する公判期日等の開廷時間は,この平均値よりは長くなっている可能性がある。

【図79】公判期日等1回当たりの平均開廷時間

 前記のとおり,合議自白事件,合議否認事件,単独否認事件とでは,その終局人員1人当たりの平均開廷時間には大きな違いがあるが,公判期日等1回当たりの平均開廷時間を見ると,1回当たり50分余りから1時間20分余りの公判期日等を一定間隔で開くという審理が行われていることがうかがわれる。

○ 公判前整理手続に付された事件の開廷時間の状況 本件調査期間において公判前整理手続に付された事件の審理期間,開廷回数,開廷間隔の状況は前記のとおりであり,いまだ過渡期の段階にあり断定的なことは言い得ないものの,同手続に付されなかった事件に比べ,開廷回数が少なく,開廷間隔も短くなり,その結果審理期間も短くなっている。このように,公判前整理手続に付された事件では,その審理も,連日的開廷に準じた集中的な審理が行われているものと推測される。そこで,以下では,報告対象人員のうち公判前整理手続に付された事件の開廷時間の状況を見ることとする(ただし,公判前整理手続に付された事件の審理期間等の検討の場合と同様に,合議事件及び裁判員裁判対象事件を対象とすることとする。)。 【表80】は,公判前整理手続に付された報告対象人員の内訳を示したものである。報告対象人員のうち,公判前整理手続に付されたのは324人(公判前整理手続に付された終局人員全体の96.4%)となっている。そのうち合議事件は303人であり,更に裁判員裁判対象事件は268人である(公判前整理手続に付された終局人員全体の336人には,単独自白事件の人員が10人,公判が開かれずに公訴棄却で終局した人員が1人,第1回公判期日は平成17年11月1日よりも前であったが,その後追起訴事件について公判前整理手続に付された人員1人が含まれている。)。

60.4

52.4

81.1

55.358.058.0

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

総数 合議事件総数 合議自白事件 合議否認事件 単独否認事件

(分)

(注)  開廷時間を調査しているのは,合議事件全部及び単独事件のうち否認事件であるため,「総数」とあるのはこれらの事件の総数である。

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  283

【表80】公判前整理手続に付された事件の開廷時間報告対象人員

総数 公判前整理手続に付された事件 合議

総数

単独否認事件

裁判員対象事件総数

合議自白

合議否認

裁判員対象事件自白

裁判員対象事件否認

終局人員 9,440 336 305 166 138 21 270 148 121

開廷時間報告対象人員

(75.2)7,097

(96.4)324

(99.3)303

(100.0)166

(99.3)137

(100.0)21

(99.3)268

(100.0)148

(99.2)120

(注) ( )内は終局人員に対する割合(%)である。

(終局人員1人当たりの平均開廷時間) 【図81】は,合議事件について,公判前整理手続の有無別に,自白事件・否認事件ごとの終局人員1人当たりの平均開廷時間を示したものである。公判前整理手続に付された事件の平均開廷時間は,合議事件総数では7時間余り(420.9分),そのうち合議自白事件では4時間20分余り(263.2分),合議否認事件では10時間10分余り(612.0分)となっており,いずれの場合も,同手続に付されなかった事件の平均開廷時間を大きく上回っている。

【図81】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の終局人員1人当たりの平均開廷時間(合議事件)

0.0

60.0

120.0

180.0

240.0

300.0

360.0

420.0

480.0

540.0

600.0

660.0

(分)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

420.9

198.7

263.2

161.1161.1

612.0

382.1

Page 25: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

284

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

 【図82】は,裁判員裁判対象事件について,公判前整理手続の有無別に,自白事件・否認事件ごとの終局人員1人当たりの平均開廷時間を示したものである。公判前整理手続に付された事件の平均開廷時間は,裁判員裁判対象事件総数では6時間40分余り(405.5分),そのうち自白事件では4時間10分余り(250.6分),否認事件では10時間足らず(596.6分)となっており,いずれの場合も,同手続に付されなかった事件の平均開廷時間を上回っている。

405.5

222.8

405.5

222.8250.6

179.7

596.6

386.1

0.0

60.0

120.0

180.0

240.0

300.0

360.0

420.0

480.0

540.0

600.0

660.0

(分)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

【図82】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の終局人員1人当たりの平均開廷時間(裁判員裁判対象事件)

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1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  285

Ⅲ125.5

55.8

144.3

55.8

100.4

50.5

144.3

71.3

0.0

30.0

60.0

90.0

120.0

150.0

180.0

(分)

合議

公判前あり(総数)

合議

公判前なし(総数)

合議

公判前あり(自白)

合議

公判前なし(自白)

合議

公判前あり(否認)

合議

公判前なし(否認)

(公判期日等1回当たりの平均開廷時間) 【図83】は,合議事件について,公判前整理手続の有無別に,自白事件・否認事件ごとの公判期日等1回当たりの平均開廷時間を示したものである。公判前整理手続に付された事件の公判期日等1回当たりの平均開廷時間は,合議事件総数では2時間余り(125.5分),そのうち合議自白事件では1時間40分余り(100.4分),合議否認事件では2時間20分余り(144.3分)となっており,いずれの場合も,同手続に付されなかった事件の平均開廷時間の2倍前後となっている。

【図83】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の公判期日等1回当たりの平均開廷時間(合議事件)

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286

Ⅲ 刑事訴訟事件に関する分析

(本件調査期間における終局事件の開廷時間についての留意点) 以上見たところからは,公判前整理手続に付された事件の公判期日等1回当たりの開廷時間は,同手続に付されなかった事件のそれを大きく上回っている。前記1.5.1で見た公判前整理手続に付された事件の開廷回数及び開廷間隔の状況をも併せ考えると,本件調査期間における公判前整理手続に付された事件において,従前に比べて1回当たりの開廷時間を大幅に増やした公判期日等を,連日的開廷に準じた短い開廷間隔で開き,集中的な審理をしていることがより明確になったということができよう。 ところで,前記のとおり,終局人員1人当たりの平均開廷時間は,公判前整理手続に付された事件が,同手続に付されなかった事件を大きく上回っている。前記のとおり,公判前整理手続に付され本件調査期間に終局した事件は,同手続の導入後間がない段階(同手続が必要的とされる裁判員裁判もいまだ実施されていない。)においては,真に争点及び証拠の整理が必要と考えられる事件を選んで同手続に付されている場合が多いと思われるところ(公判前整理手続に付された割合も合議事件,裁判員裁判対象事件とも1割にも満

123.9

57.552.1

142.9

57.5

98.6

52.1

142.9

70.7

0.0

30.0

60.0

90.0

120.0

150.0

180.0

(分)

裁判員事件

公判前あり(総数)

裁判員事件

公判前なし(総数)

裁判員事件

公判前あり(自白)

裁判員事件

公判前なし(自白)

裁判員事件

公判前あり(否認)

裁判員事件

公判前なし(否認)

 【図84】は,裁判員裁判対象事件について,公判前整理手続の有無別に,公判期日等1回当たりの平均開廷時間を示したものである。公判前整理手続に付された事件の平均開廷時間は,裁判員裁判対象事件総数では2時間余り(123.9分),そのうち自白事件では1時間30分余り(98.6分),否認事件では2時間20分余り(142.9分)となっており,いずれの場合も,同手続に付されなかった事件の平均開廷時間の2倍前後となっている。

【図84】公判前整理手続の有無別及び自白否認別の公判期日等1回当たりの平均開廷時間(裁判員裁判対象事件)

Page 28: 1.5 公判前整理手続及び期日間整理手続 - Courts合議事件 5,899 (69.4) 4,091 (28.1) 1,658 (2.5) 150 うち公判前整理手続に 付された人員

1 地方裁判所における刑事訴訟事件(第一審)の審理の状況

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  287

たない。),そのような事件は,争点の数,証拠関係に照らし,審理に多くの時間を要するものが多いと思われ*6*7,このことが終局人員1人当たりの平均開廷時間に影響を及ぼしている可能性がある。この点は,公判前整理手続に付された事件の平均証人数が,合議否認事件で2.7人,単独否認事件で3.2人であり,いずれも否認事件全体の平均証人数(2.5人)を上回っているのに対し,公判前整理手続に付されなかった事件の平均証人数は,合議否認事件で1.7人,単独否認事件で1.6人にとどまり,いずれも否認事件全体の平均証人数を下回っていること(【図85】)からもうかがわれるところである。

【図85】開廷時間報告対象事件の公判前整理手続の有無別の平均取調べ証人数(否認事件)

2.52.7

1.7

2.6

3.2

1.61.81.8

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

(人)

単独・否認

公判前なし

否認事件全体

合議・否認

公判前あり

合議・否認

公判前なし

裁判員・否認

公判前あり

裁判員・否認

公判前なし

単独・否認

公判前あり

*6 裁判員裁判対象事件については,裁判員制度施行後は,そのすべてについて公判前整理手続が実施されるが,その他の事件については,なお,事案の内容や証拠関係に照らして必要性の高いものが公判前整理手続に付されるという運用がされる可能性がある。

*7 このほか,開廷時間については平成17年11月以降に第1回公判期日を開いた事件が対象とされていることから,公判前整理手続に付され,本件調査期間に終局した事件の審理期間は最長でも1年2月にとどまる。そして,公判前整理手続に付された事件では,1回当たりの開廷時間が長い公判期日を短い開廷間隔で開いているのに対し,同手続に付されていない事件では,1回当たりの開廷時間が短い公判期日を公判前整理手続に付された事件に比べて長い開廷間隔で開いている。その結果,開廷時間の合計が長い事件については,公判前整理手続に付された事件では,本件調査期間に終局して今回のデータに含まれる可能性が高いといえるのに対し,公判前整理手続に付されていない事件では,本件調査期間には終局せず,今回のデータに含まれない可能性があると考えられる。