振動工学2¼Ž1 2自由度系の自由振動 図3.1に示す直線振動系の代...

40
振動工学2

Upload: buikhue

Post on 07-May-2019

244 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

振動工学2

3章 2自由度の振動

3.1 2自由度系の自由振動

図3.1に示す直線振動系の代

表例で説明する.質点 の平衡位置からの変位を とすると,2自由度の運動方程式は

21,mm

21, xx

( ) 02212111 =−++ xkxkkxm

( ) 02321222 =++− xkkxkxm (3.1)

ばね なら,系の運動はが独立した1自由度系の運動

となる. があるために の運動に が,また の運動に が互いに影響を与えている.このように座標の相互干渉で表される運動を連成振動という.

02 =k ,1m

2m

2k 1m

2x2m 1x

の調和振動解は, (3.2)

ここに, は振幅,位相,円振動数を示す.式(3.1),(3.2)より

(3.3)

21,mm

( )φωtAx += sin1( )φωtBx += sin2

φ,ωBA ,,

( ) 02

2

121 =−−+ BkAωmkk

( ) 02

2322 =−++− BωmkkAk

( ) 02

2322

2

2

121 =−+−

−−+=

ωmkkk

kωmkkω

振幅 なので

(3.4)

系の固有円振動数はこれより求まる.上式を特性方程式または固有振動数方程式という.

0, BA

式(3.4)を整理すると

(3.5)

これより,固有円振動数 は

(3.6)

で与えられる.

021

1332212

2

32

1

214 =++

+

++

+−

mm

kkkkkkω

m

kk

m

kkω

21, nn ωω

2

2

2

1

n

n

ω

ω

21

2

2

2

2

32

1

21

2

32

1

21

4

1

2

1

mm

k

m

kk

m

kk

m

kk

m

kk+

+−

+

++

+

ここで に対する振幅比を , に対するそれを とすると,式(3.3)より

(3.7)

1nω 2nω11 BA

22 BA

12

2

1232

2

1121

2

1

1 1

κk

ωmkk

ωmkk

k

B

A n

n

=−+

=−+

=

22

2

2232

2

2121

2

2

2 1

κk

ωmkk

ωmkk

k

B

A n

n

=−+

=−+

=

このとき,次の関係式が得られる.

(3.8)

( )

+−+=−+== 32

2

121

2

1121122

1|

1kk

m

mkkωmkkκk nωω n

( )

+−+=−+== 32

2

121

2

2121222

1|

2kk

m

mkkωmkkκk nωω n

( ) 04

1

2

2

21

2

32

2

121 +

+−++m

kmkk

m

mkk

( ) 04

1

2

2

21

2

32

2

121 +

+−+−m

kmkk

m

mkk

したがって,上式より,となることは, では

, は同相で振動し, では逆相で振動することを意味する.この各固有円振動数に対応する振動振幅の様子を示すものとして振動モード線図がある.

,01 111 = κBA01 222 = κBA 1nω

1m2m 2nω

図3.2は, の振幅を1とした1次 振動と2次 振動もモード線図を示し,特にこの場合正規振動モードという.

1m ( )1nω

( )2nω

この振動モード状態での振動が単独に生ずることはまずない.通常,これらが複雑に絡み合った複雑な運動になる.各質点の運動は

(3.9)

( )11111 sin1 φtωAx nn +=次モード:

( )22221 sin2 φtωAx nn +=次モード:

( )111112 sin, φtωAκx nn +=

( )222222 sin, φtωAκx nn +=

( )成分1x ( )成分2x

の関係が線形結合したものとして以下のように表わされる.

図3.3は,式(3.10)の様子を計算シミュレーションで示したものである.この場合の条件は, ,とし,同図(a),(b)は ,であり, (c),(d)は ,である.

( ) ( )22211121111 sinsin φtωAφtωAxxx nnnn +++=+=

( ) ( )2222111122122 sinsin φtωAκφtωAκxxx nnnn +++=+=(3.10)

321 kkk == 321 mmm ==

( ) 2

2 srad25.0=mk ( ) 2srad25.0=mk

( ) 2

2 srad016.0=mk ( ) 2srad25.0=mk

初期条件やパラメータの設定値では随分と異なった波形となる.

3.2 2自由度系の強制振動

2自由度系の自由振動より,自

由度の数だけ固有振動数が存在することが分かった.次に,図3.4に示すように,質量

に周期的外力 が作用する強制振動応答を考えてみる.系の運動方程式は

となる.

1m ωtF cos

( ) ωtFxkxkkxm cos2212111 =−++

0221222 =+− xkxkxm (3.11)

強制振動を

とすると,式(3.11)より

ωtAx cos1 =ωtBx cos2 =

(3.12)

( ) FBkAωmkk =−−+ 2

2

121

( ) 02

222 =−+− BωmkAk(3.13)

したがって,振幅 はクラメールの公式よりBA,

( )( )

( )( )ωΔ

Fωmk

ωΔ

ωmk

kF

A2

22

2

22

2

0 −=

=

( )

( ) ( )ωΔ

Fk

ωΔ

k

Fωmkk

B 22

2

121

0=

−+

=

(3.14)

( )( )2

222

2

2

121

ωmkk

kωmkkω

−−

−−+=

ただし

(3.15)

ここで

とおくと,結局,強制振動振幅は

( )( ) 2

2

2

22

2

121 kωmkωmkk −−−+=

222111 , mkωmkω ==

112 , kFδmmα st ==(3.16)

( )( ) ( ) ( ) ( ) αωωωωωωαωω

ωωδA st 2

12

2

2

2

1

2

12

2

2

11

1

−−−+

−=

( ) ( ) ( ) ( ) αωωωωωωαωωδB st 2

12

2

2

2

1

2

12 11

1

−−−+=

(3.17)

(3.18)

となる.また固有円振動数 は, より21, nn ωω ( ) 0=ωΔ

2

1nω

2

2nω

( ) ( ) 2

2

2

1

22

2

2

1

2

2

2

1

2

1

2

1ωω

ωαωωαω−

++++

= (3.19)

図3.5は, の場合の

および の振幅特性を示している.固有振動数はそれぞれ となる.負の振幅量は,1自由度系と同様,強制力に対する変位振動の位相差が180°遅れることを意味する.

21, 1221 === mmαωω stδA

stδB417.1,707.0 1211 == ωωωω nn

振幅特性のみを考える場合は,符号を無視して波線のように絶対値で表す. において振幅がA,B無限大となり共振現象を生じることは1自由度系の拡張として理解される.

21, nn ωω

式(3.17),(3.18)から, とおくと

(3.20)

となる.すなわち, に 外力が作用しても振幅は0である.

222 mkωω ==

( )αωω

δBA st

2

12

,0−

==

1m ωtF cos

換言すれば,図3.6の示すように補助系の固有振動

数 が外力振動数 と一致するようにすれば,主振動系の質量 の振動変位を0にすることができる.

( )πmkπω 22 222 = ( )πω 2

1m

このような補助振動系を動吸振器といい,一定振動数の強制力には非常に効果的な制振が可能.しかし,パラメータ変動には性能が劣化するのが欠点.

この欠点を補うものが動粘性吸振器である.

路面変動の車体への影響を調べるための上下振動モデルであり,

は車体に, は車輪に相当し,これらはばね上質量およびばね下質量と呼ばれる.この振動系が正弦波状路面を水平に一定速度 出進むときの運動は,水平方向を ,歯面形状を とすると

2m

1m

vy

( )yX

( ) ( ) 01121211 =−+−+ Xxkxxkxm

( ) 012222 =−+ xxkxm

3.3 動粘性吸振器

前節の動吸振器が狭帯域の吸振器であるのに対して広帯域の吸振が可能であるのが動粘性吸振器である(図3.7).補助系にダンパcがあるのが特徴である.系の運動方程式は, にが作用するとき

1m ωtF cos

( ) ( ) ωtFxkxkkxxcxm cos221212111 =−++−+

( ) ( ) 01221222 =−+−+ xxkxxcxm (3.21)

強制力を とおいた複素数表示により解析を行う.

すなわち, の変位における位相情報を とすると

となる.ただし,である.式(3.22)と(3.21)より

FωtF →cos tje ω

21,mm

21,φφ

( ) tjφtjeAAex ωω

==+ 1

1( ) tjφtj

eBBex ωω==

+ 2

2

(3.22)

21 ,jφjφ

BeBAeA ==

( ) ( )

( ) ( ) 02

2

22

221

2

1

=++−++−

=+−+++−

BjcωkωmAjcωk

FBjcωkAjcωkkωm

よって

(3.23)

これより複素振幅 は

(3.24)

( )( )

=

+−+−

+−+−+

02

222

2

2

121F

B

A

jcωωmkjcωk

jcωkjcωωmkk

A

( )

( )( )

( )ωΔ

jcωωmkF

ωΔ

jcωωmk

jcωkF

A+−

=+−

+−

=2

22

2

22

2

0

ここで

(3.25)( )( )

( ) jcωωmkjcωk

jcωkjcωωmkkωΔ

+−+−

+−+−+=

2

222

2

2

121

いま,主振動系の固有円振動数を 補助系の固有円振動数を 質量比 減衰係数比 固有振動数比 静たわみ

無次元化周波数 とすれば,式(3.24)から

(3.26)

が得られる.式(3.26)の特性を理解するためとした例を図3.8 に示す.これをもとに防振設計に必要な条件について述べる.

,111 mkω =

,222 mkω =,12 ωωβ =

,1kFδst =

,12 mmα =,2 22kmcζ =

1ωωp =

( )( )( ) ( ) 22222222222

2222222

1141

4

pαpβζpαβpβp

pβζpβ

δ

A

st +−+−−−

+−=

1,201 == βα

まず特性曲線の特徴として,減衰係数比 の如何にかかわらず不動点P,Qを通ることである.特に, の

場合 と は一体となり, の固有円振動数を有する1自由度振動系となる.その振幅は

(3.27)

ζ

1m 2m αωω += 11

( ) 211

1lim

pαδ

A

sts +−

=→

一方 の場合は

(3.28)

したがって不動点P,Q条件は式(3.27)と(3.28)を等値することから得られる.

0=ζ

( )( ) 22222

22

0 1lim

pαβpβp

δ

A

sts −−−

−=

これより(3.29)

これより,不動点P,Qの位置 に関して

(3.30)

の関係が得られる.

( ) 0

2

2

2

112 22

24 =

++

+

++−

α

βp

α

βαp

21, pp

( ) α

βαpp

+

++=+

2

112 22

2

2

1

防振設計の観点からは強制振動数の広い範囲に対して振幅量 はできる限り小さいことが望ましい.そのための と の条件を調べる.

まず不動点P,Qの高さを等しくする条件は,位相関係を考慮して

(3.31)

これより(3.32)

stδA

β ζ

( ) ( ) 2

2

2

1 11

1

11

1

pαpα +−

−=

+−

αpp

+=+

1

22

2

2

1

式(3.30),(3.32)より,最適 は

(3.33)

となる. を与える は,式(3.33)を(3.29)に代入して

(3.34)

このとき,P,Qの高さは,式(3.27)(3.34) より

(3.35)

( )optββ =

αβopt

+=

1

1

optβ 21, pp

2

2

2

1

p

p

++=

α

α

α 21

1

1

αδ

A

st

21+=

次に の最適値 の条件を調べる.

不動点Pで がpに関して最大値をとるように選んだと,Qで最大値をとるように選んだ との平

均値を最適値 にする方法を述べる.

ζ ( )optζ=

stδA

( )pζζ = ( )

Qζζ =

( )optζ

および の条件より

(3.36)

(3.37)

が得られる.したがって式(3.38)が成り立つ.

(3.38)

021

2

2

2=

==

optββpp

st

 δ

A

p02

22

2

2=

==

optββpp

st

 δ

A

p

( )

+−

+=

23

183

2

α

α

α

αζ p

( )

++

+=

23

183

2

α

α

α

αζQ

( )3

22

22 18

3

22 α

αζζ

km

Qpopt

opt+

=+

==

に設定した場合の特性曲線を図3.9に示す.等高した不動点P,Qにおいて,振幅はほぼ最大値になっていることが分かる.

9091016790101 .,β.,ζα optopt ===

3.4 減衰要素のみで結合される実用吸振器

前節で述べた動粘性吸振器の補助振動系を形成するばね を設計することは極めて難しいので,これを取り去って が と減衰要素で結合した形が実用される場合が多い.図3.10は内燃機関のクランク軸のねじれ振動の吸振器として用いられるフードダンパ(Den Hartog,1956)の例で,油の粘性力を利用している.

2k

2m1m

図3.11は,工作機械などにおいて主軸のねじれ振動を減衰させるランチェスタダンパ(Den Hartog,1979)を示し,乾性摩擦力(クーロン力)を利用するものである.軸回転に対して相対的に回転可能な2枚の円盤ⓐと軸に固定された

円板ⓒとの間にある摩擦リングⓑの接触圧力をボルトⓓで調節するのが重要である.