プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

91 2.8 下肢の脈管 第 2 章 循環器系 } { ▶ ① 大腿動脈(p.287) 鼠径靱帯:上前腸骨棘〜恥骨結節 ・鼠径靱帯の下に血管裂孔筋裂孔がある。 ・大腿動脈は血管裂孔を通り大腿三角の中に出 る。 ・鼠径靱帯の中央では大腿動脈の拍動を触れる。 ・大腿動脈の枝である大腿深動脈は大腿伸筋群 や内転筋群を栄養する。 ・大腿動脈は内転筋腱裂孔を通り、膝窩に至り 膝窩動脈に移行する。 大腿動脈 大腿動脈 腸腰筋 大腿神経 大腿神経 大腿静脈 大腿静脈 寛骨臼 縫工筋 坐骨結節 下肢の動脈 筋裂孔と血管裂孔 大腿三角 大腿部の動脈と内転筋腱裂孔 血管裂孔 大腿動脈, 大腿静脈 筋裂孔 腸腰筋, 大腿神経 鼠径靱帯 腸腰筋 恥骨筋 長内転筋 大腿動脈 大腿深動脈 内転筋管と大内転筋 内転筋腱裂孔 ※大腿静脈より内側は大腿輪といい、リンパ管が通る §8. 下肢の脈管 − 学習のポイント − 1. 下肢の動脈 外腸骨動脈 → (血管裂孔) → 大腿動脈 → (内転筋腱裂孔) → 膝窩動脈 → (膝窩筋の下縁) → 前脛骨動脈と後脛骨動 脈に分かれる。前脛骨動脈は伸筋支帯をくぐって足背動脈 に移行。後脛骨動脈は、下腿後面を下行途中に腓骨動脈を 分岐。足底に至り、内側・外側足底動脈となる。 2. 下肢の静脈 大伏在静脈:内果の前を通り下腿内側、大腿内側を上行 し、大腿三角内の伏在裂孔より大腿静脈に注ぐ小伏在静脈:外果の後方を通って下腿後面を上行、膝窩 で膝窩静脈に注ぐ3. 下肢のリンパ 鼠径リンパ節を通り、腰リンパ本幹に至る外腸骨動脈 大腿動脈 血管裂孔 内転筋腱裂孔 膝窩筋の下縁 膝窩動脈 前脛骨動脈 足背動脈 後脛骨動脈 内 ・ 外側 足底動脈 腓骨動脈 ■ 1. 下肢の動脈 (p.287-288) 外腸骨動脈 大腿動脈 膝窩動脈 前脛骨動脈 腓骨動脈 後脛骨動脈 足背動脈

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Page 1: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

91 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

}{

▶ ① 大腿動脈(p.287)

・鼠径靱帯:上前腸骨棘〜恥骨結節

・鼠径靱帯の下に血管裂孔と筋裂孔がある。

・大腿動脈は血管裂孔を通り大腿三角の中に出

る。

・鼠径靱帯の中央では大腿動脈の拍動を触れる。

・大腿動脈の枝である大腿深動脈は大腿伸筋群

や内転筋群を栄養する。

・大腿動脈は内転筋腱裂孔を通り、膝窩に至り

膝窩動脈に移行する。

大腿動脈

大腿動脈

腸腰筋大腿神経

大腿神経

大腿静脈

大腿静脈

筋裂孔

血管裂孔

寛骨臼

縫工筋

坐骨結節

下肢の動脈

筋裂孔と血管裂孔

大腿三角

大腿部の動脈と内転筋腱裂孔

血管裂孔 大腿動脈, 大腿静脈

筋裂孔 腸腰筋, 大腿神経

鼠径靱帯腸腰筋

恥骨筋

長内転筋

大腿動脈大腿深動脈

内転筋管と大内転筋内転筋腱裂孔

※大腿静脈より内側は大腿輪といい、リンパ管が通る

§8. 下肢の脈管− 学習のポイント −

1. 下肢の動脈外腸骨動脈 → (血管裂孔) → 大腿動脈 → (内転筋腱裂孔) → 膝窩動脈 → (膝窩筋の下縁) → 前脛骨動脈と後脛骨動脈に分かれる。前脛骨動脈は伸筋支帯をくぐって足背動脈に移行。後脛骨動脈は、下腿後面を下行途中に腓骨動脈を分岐。足底に至り、内側・外側足底動脈となる。

2. 下肢の静脈大伏在静脈:内果の前を通り下腿内側、大腿内側を上行し、大腿三角内の伏在裂孔より大腿静脈に注ぐ。小伏在静脈:外果の後方を通って下腿後面を上行、膝窩で膝窩静脈に注ぐ。

3. 下肢のリンパ鼠径リンパ節を通り、腰リンパ本幹に至る。

外腸骨動脈

大腿動脈

血管裂孔

内転筋腱裂孔

膝窩筋の下縁膝窩動脈

前脛骨動脈

足背動脈

後脛骨動脈

内 ・外側足底動脈

腓骨動脈

■ 1. 下肢の動脈 (p.287-288)

外腸骨動脈

大腿動脈

膝窩動脈

前脛骨動脈

腓骨動脈

後脛骨動脈

足背動脈

Page 2: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

92 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

▶ ② 膝窩動脈(p.287-288)

▶ ③ 前脛骨動脈(p.288)

▶ ④ 後脛骨動脈(p.288)

▶ 足根管(p.288)

・内転筋腱裂孔を出た膝窩動脈は , 膝関節の後

面で数本の膝動脈を出して関節を養う。

・膝窩動脈は膝窩筋の下縁で前・後脛骨動脈に

分かれる。

・後脛骨動脈は脛骨神経とともに、ヒラメ筋と

深層の屈筋群との間を下行し、下腿屈筋群を

養う

・腓骨後面に沿う腓骨動脈を分岐する。

・後脛骨動脈は脛骨神経や後脛骨筋、長趾屈筋、

長母趾屈筋と共に足根管を通過し、その後、

内 ・ 外側足底動脈に分岐する。

・内果と屈筋支帯の間にできる管を足根管とい

う。

※ 足背近位部、長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の

間で足背動脈の脈を触れることができる。

※ 内果の後方部では後脛骨動脈の脈を触れる

ことができる。この動脈は屈筋支帯の深層

をくぐるので、足を内反させて屈筋支帯を

ゆるめると触知しやすい。

・前脛骨動脈は膝窩動脈より分かれ、下腿骨間

膜上端の裂孔を貫通して下腿前面に出る。

・前脛骨動脈は深腓骨神経とともに、前脛骨筋

の外側を下行し、下腿伸筋群を養う

・その後、伸筋支帯の下を通り、足背動脈に移

行する。

膝窩動脈

前脛骨動脈

前脛骨動脈深腓骨神経

浅腓骨神経

足背動脈

腓骨動脈

後脛骨動脈

膝窩動脈

前脛骨動脈と足背動脈

後脛骨動脈

足根管

後脛骨動脈

後脛骨動脈脛骨神経

脛骨神経

膝窩動脈

総腓骨神経

内側足底動脈 外側足底動脈

腓骨動脈 腓骨動脈

後脛骨筋長趾屈筋長母趾屈筋

内果

屈筋支帯

Page 3: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

93 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

▶ 参考)大腿前側の筋と脈管・神経

▶ 参考)殿部・大腿後側の筋と脈管・神経

大腿前側の筋と脈管・神経(浅層)

大腿前側の筋と脈管・神経(深層)

大腿後側の筋と脈管・神経(深層)

大腿筋膜張筋

大腿直筋

外側広筋

内側広筋

鼠径靱帯

鼠径靱帯

大殿筋(切断)

大殿筋(切断)

精索

薄筋

縫工筋腸腰筋

恥骨筋

長内転筋大内転筋

大腿動静脈 ・神経

上殿動静脈 ・神経

下殿動静脈 ・神経

大腿筋膜張筋大腿直筋(切断)中間広筋大腿直筋(切断)外側広筋

内側広筋薄筋

縫工筋(切断)

縫工筋(切断)

腸腰筋

恥骨筋(切断)

長内転筋(切断)大内転筋短内転筋

中殿筋

小殿筋梨状筋大腿方形筋大内転筋

腸脛靱帯

半腱様筋半膜様筋

薄筋

大腿二頭筋・ 長頭(切断)

大腿二頭筋・ 長頭(切断)

大腿二頭筋・ 短頭

内転筋管

坐骨神経膝窩動脈

脛骨神経

総腓骨神経

大腿動静脈 ・神経

Page 4: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

94 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

▶ 参考)下腿前側の筋と脈管・神経

▶ 参考)下腿外側の筋と脈管・神経

▶ 参考)下腿後側の筋と脈管・神経

短腓骨筋

前脛骨筋

前脛骨筋

長趾伸筋

長趾伸筋

外果

長母趾伸筋

長腓骨筋

長腓骨筋

腓腹筋

腓腹筋

腓腹筋・外側頭

腓腹筋・内側頭

ヒラメ筋

ヒラメ筋

上伸筋支帯下伸筋支帯 深腓骨神経

深腓骨神経

総腓骨神経

総腓骨神経

大伏在静脈

小伏在静脈

前脛骨動脈

足背動脈

浅腓骨神経

浅腓骨神経

下腿前側の筋と脈管・神経

下腿外側の筋と脈管・神経

腸脛靱帯

外側広筋

大腿二頭筋

大腿二頭筋

半腱様筋

半膜様筋

脛骨神経

腓腹筋・外側頭(切断)

腓腹筋・内側頭(切断)膝窩筋 総腓骨神経

膝窩動脈

後脛骨動脈

大腿二頭筋

半腱様筋

半膜様筋

脛骨神経 ヒラメ筋(切断)

長趾屈筋

長母趾屈筋後脛骨筋

下腿腿後側の筋と脈管・神経(深層)

下腿腿後側の筋と脈管・神経(浅層)

Page 5: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

95 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

▶ 参考)足底の筋と脈管

足底腱膜

足底方形筋 (切断)

小趾外転筋母趾外転筋

外側足底動脈

母趾内転筋

短母指屈筋

横頭 斜頭(切断)

母趾外転筋

短趾屈筋(切断)

内側足底動脈

外側足底動脈

大伏在静脈

大伏在静脈

浅鼠径リンパ節 深鼠径リンパ節

外腸骨リンパ節

伏在裂孔

小伏在静脈

浅在静脈

正常な血流静脈圧が高くなりると浅在静脈に血液が逆流

深部静脈

伏在裂孔

内側足底動脈

後脛骨動脈

足底の筋と脈管

下肢前面の皮静脈

下肢前面内側のリンパの流れ

下肢後面のリンパの流れ

伏在裂孔と深鼠径リンパ節

下肢後面の皮静脈

大 ・ 小伏在静脈は静脈瘤を生じやすい

■ 2. 下肢の静脈(p.288-289) (3) 下肢のリンパ(p.289-290)

・下肢の主な深静脈は動脈の伴行静脈

 → 動脈と同じ名前がついている。

・ 皮静脈は動脈に伴行せず、独自の走行をとる。

・下肢のリンパは鼠径部の大腿三角に向かって

流れる。

・大腿三角は下肢および外陰部のリンパの集

積地として , 多数のリンパ節が存在する。

(鼠径リンパ節)

・深部の鼠径リンパ節に集まったリンパは、

大腿輪を通って外腸骨リンパ節に注ぎ、腰リ

ンパ本幹を経由し胸管へと向かう。

・大伏在静脈は足背静脈網の内側より始まり、

下腿と大腿の内側を上行。伏在裂孔より大腿

静脈に注ぐ。

  → 伏在裂孔は大腿三角にある

・小伏在静脈は足背静脈網の外側より始まり、

下腿後側を上行。膝窩で膝窩静脈に注ぐ。

※ 大・小伏在静脈は静脈瘤を起こしやすい。何らかの原

因で深部静脈の静脈圧が高くなった場合、吻合部より

浅在静脈である大 ・ 小伏在静脈に血液が逆流し、うっ

滞することにより静脈瘤となる。立ち仕事、妊娠、血

栓性静脈炎などが原因となる。

足背静脈網

Page 6: プリント・2 8 循環器系 - 下肢の脈管

96 2.8 下肢の脈管第 2 章 循環器系

国家試験問題

問題 2-94 大腿動脈について誤っている記述はどれか。(鍼灸 -2-33)

 1.外腸骨動脈の続きである。 2.鼠径靱帯の下をくぐり、大腿の前面に出る。 3.坐骨神経に伴い大腿後面を下行する。 4.内転筋裂孔を出て膝窩動脈に続く。

問題 2-95 下肢の動脈について誤っている記述はどれか。(鍼灸 -9-21)

 1.貫通動脈は大腿深動脈から分岐する。 2.大腿動脈は大腿三角を通る。 3.前脛骨動脈は膝窩動脈から分岐する。 4.足背動脈は後脛骨動脈の延長である。

問題 2-96 下肢の動脈について正しい記述はどれか。(鍼灸 -15-25)

 1.大腿動脈は鼠径靱帯の上を通る。 2.膝窩動脈は総腓骨神経と伴行ずる。 3.前脛骨動脈は足根管を通過する。 4.後脛骨動脈は足底動脈弓を形成する。

問題 2-97 足底の大部分に血液を送るのはどれか。(鍼灸 -16-26)

 1.前脛骨動脈 2.後脛骨動脈 3.腓骨動脈 4.腓腹動脈

問題 2-98 下肢の動脈で拍動を触れるのはどれか。(鍼灸 -6-33)

 1.前脛骨動脈 2.後脛骨動脈 3.内側足底動脈 4.外側足底動脈

問題 2-99 下腿と大腿の内側部から血液を集め、大腿静脈に注ぐのはどれか。(あマ指 -12-32)

 1.外腸骨静脈 2.膝窩静脈 3.大伏在静脈 4.小伏在静脈

問題 2-100 体表から拍動の触れない動脈はどれか。(あマ指 -10-34)

 1.大腿動脈 2.膝窩動脈 3.腓骨動脈 4.足背動脈