2 農業の持続的発展 人と農地の問題解決に向けて - …...62.4% 複合経営, 37.6%...

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- 99 - 農業の持続的発展 (1) 人と農地の問題解決に向けて 「人・農地プラン」の作成及び見直し状況について () 人・農地プランの趣旨 我が国では、農業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など、「人と農地の 問題」が深刻であり、地域農業の将来について、5年後、 10 年後の展望が描けない地 域が増えています(図Ⅲ-2-1、図Ⅲ-2-2)。 人・農地プランは、各集落・地域における話し合いにより、地域農業の中心となる 経営体はどこなのか、中心となる経営体にどうやって農地を集めるのか、そして地域 農業のあり方をどうするのか等、地域における人と農地の問題の解決策を示すものと して作成していただく地域農業の「未来の設計図」です。 農林水産省では、人・農地プランを作成・見直しをしていただくため、都道府県の 推進活動及び各市町村が行う集落等の合意形成、検討会の開催等の経費を支援してい ます。 農業就業人口は 15 年間で4割減少。平均年齢は約 67 歳。 図Ⅲ-2-1 農業就業人口とその平均年齢の推移 耕地面積は半世紀間に約 150 ha 減少。耕作放棄地は年々増加。 資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」、「農林業センサス」 414 261 34 21 59.1 65.8 59.2 66.8 55 60 65 70 0 100 200 300 400 500 平成7年 12 17 22 (歳) (万人) 全国 近畿 全国 近畿 607 459 40 35 12 40 0.6 2 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 100 200 300 400 500 600 700 35 45 55 平2 平7 12 17 22 (万ha(ha全国 近畿 全国 近畿 図Ⅲ-2-2 耕地面積及び耕作放棄地の面積の推移 資料:農林水産省「農林業センサス」

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- 99 -

2 農業の持続的発展

(1) 人と農地の問題解決に向けて

ア 「人・農地プラン」の作成及び見直し状況について

(ア) 人・農地プランの趣旨

我が国では、農業者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など、「人と農地の

問題」が深刻であり、地域農業の将来について、5年後、10年後の展望が描けない地

域が増えています(図Ⅲ-2-1、図Ⅲ-2-2)。

人・農地プランは、各集落・地域における話し合いにより、地域農業の中心となる

経営体はどこなのか、中心となる経営体にどうやって農地を集めるのか、そして地域

農業のあり方をどうするのか等、地域における人と農地の問題の解決策を示すものと

して作成していただく地域農業の「未来の設計図」です。

農林水産省では、人・農地プランを作成・見直しをしていただくため、都道府県の

推進活動及び各市町村が行う集落等の合意形成、検討会の開催等の経費を支援してい

ます。

農業就業人口は 15 年間で4割減少。平均年齢は約 67 歳。

図Ⅲ-2-1 農業就業人口とその平均年齢の推移

耕地面積は半世紀間に約 150 万 ha減少。耕作放棄地は年々増加。

資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」、「農林業センサス」

414

261

34 2159.1

65.8

59.2

66.8

55

60

65

70

0

100

200

300

400

500

平成7年 12 17 22

(歳)(万人)

全国 近畿 全国 近畿

607

459

40 35

12

40

0.6 2

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0

100

200

300

400

500

600

700

昭35 昭45 昭55 平2 平7 平12 平17 平22

(万ha)(万ha)

全国 近畿 全国 近畿

図Ⅲ-2-2 耕地面積及び耕作放棄地の面積の推移

農業就業人口(棒グラフ)

耕作放棄地の面積(折線グラフ)

耕地面積(棒グラフ)

平均年齢(折線グラフ)

資料:農林水産省「農林業センサス」

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(イ) 人・農地プランのメリット

作成した人・農地プランを実現するため、プランに位置付けられた経営体は、次の

支援を受けることができます。

○青年就農給付金(経営開始型)

原則 45歳未満で独立・自営就農する方を対象とし、地域での就農を促進します。

○スーパーL資金の金利負担軽減措置

人・農地プランに地域の中心となる経営体として位置づけられた認定農業者を対

象とし、貸付当初5年間の金利を実質無利子化します。

○経営体育成支援事業

適切な人・農地プランに位置付けられた地域の中心となる経営体等を対象とし、

農業用機械等の導入による経営改善・発展を支援します。

(ウ) 人・農地プラン作成への取組状況

近畿管内は大都市を抱えて都市的な土地利用のポテンシャルが高い状況にあるた

め、農地の確保を図っていく人・農地プラン作成を推進する上で課題となる面が少な

くありませんが、都市近郊農業等、各地域の特色ある農産物の振興にも留意しつつ、

各地で取組が進められています。

平成 27 年3月末時点における近畿管内の人・農地プラン作成の取組状況は、人・

農地プランを作成しようとしている 156市町村のうち 135市町村(87%)で人・農地

プランが作成されており、作成数は着実に増加しています(表Ⅲ-2-1)。

都道府県名

人・農地プランを作成しよ

うとしている市町村数

左の進捗状況

人・農地プランの作成に至っている市町村数※

地域数

滋賀県 19 19 391

京都府 22 19 119

大阪府 24 17 26

兵庫県 35 32 280

奈良県 28 22 115

和歌山県 28 26 70

近畿 計 156 135 1,001

全国計《市町村数》 1,576(100%) 1,498(95%) -

地域数 14,414(100%) - 11,812(82%)

資料:近畿農政局調べ

※人・農地プランの作成に至っている市町村数は、当該市町村の地域の中に、既に人・農地プランが作成さ

れたところがある市町村の数。

注:( )書きは、人・農地プランを作成しようとしている市町村数または地域数に対する割合。

表Ⅲ-2-1 人・農地プランの進捗状況(3月末現在)

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また、人・農地プランは、一度作成すればそれで終わりというものではありません。

人・農地プランが作成された後も、定期的に又は随時に話合いを行う機会を設け、よ

り良い人・農地プランの作成に向けて見直しを進めていただくことが大切です。近畿

農政局としても、各地域の人と農地の問題の解決に向けた施策を円滑に実施するため、

事業に関する情報提供、意見等の把握を行う相談窓口を設置しています。

イ 農地中間管理機構について

(ア) 農地中間管理機構の趣旨

平成 25年 12月5日に「農地中間管理事業の推進に関する法律」及び「農業の構造

改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律」が成立

し、12月 13日に公布されました。

この法律に基づき、我が国農業の構造改革を推進し、農地の有効利用の継続や農業

経営の効率化を進める担い手への農地利用の集積・集約化を進めるため、都道府県段

階に農地中間管理機構を設置することとなりました。

農地中間管理機構の仕組みは、①農地を借り受け、②必要な場合には大区画化等の

条件整備を行った上で、③担い手に対して、その規模拡大や利用する農地の集約化に

配慮して転貸するものであり、地域の農地利用の最適化を図ることがねらいです。

(イ) 農地中間管理機構の設置状況

管内の各府県では、滋賀県、兵庫県及び和歌山県が平成 26 年4月1日に農地中間

管理機構を設置(県知事による農地中間管理機構の指定)しており、奈良県は4月 23

日、大阪府は5月1日、京都府は6月 20日に設置しています。

図Ⅲ-2-3 農地中間管理機構の仕組み

農地中間管理機構(都道府県に1つ) (農地集積バンク)

① 地域内の分散し錯綜した農地利用を整理し担い手ごとに集約化す

る必要がある場合や、耕作放棄地等について、農地中間管理機構が

借り受け

② 農地中間管理機構は、必要な場合には、基盤整備等の条件整備を行

い、担い手(法人経営・大規模家族経営・集落営農・企業)がまと

まりのある形で農地を利用できるよう配慮して、貸付け

③ 農地中間管理機構は、当該農地について農地としての管理

④ 農地中間管理機構は、その業務の一部を市町村等に委託し、農地中

間管理機構を中心とする関係者の総力で農地集積・耕作放棄地解消

を推進

手 借受け 受

貸付け

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表Ⅲ-2-2 農地中間管理機構の設置状況

府県名

機構の

指定日

事業規程

の認可日 事業開始日 農地中間管理機構の指定団体

滋賀県 4月 1日 6月 24日 7月 1日 (公財)滋賀県農林漁業担い手育成基金

京都府 6月 20日 6月 20日 7月 1日 (公社)京都府農業総合支援センター

大阪府 5月 1日 5月 26日 6月 2日 (一財)大阪府みどり公社

兵庫県 4月 1日 4月 1日 4月 1日 (公社)兵庫みどり公社

奈良県 4月 23日 6月 6日 5月 1日 (公財)なら担い手・農地サポートセンター

和歌山県 4月 1日 6月 4日 7月 1日 (公財)和歌山県農業公社

資料:近畿農政局調べ

(ウ) 農地中間管理事業の実施状況

平成 26年度の管内の機構による借入面積は 2,610ha、貸付面積は 2,404ha、貸付面

積のうち新規集積面積は 159ha(年間集積目標面積 9,000ha に対する機構の寄与度は

1.8%)となりました(表Ⅲ-2-3)。

農地中間管理事業の実施状況については、立ち上げ初年度であったため各府県の機

構により温度差はありましたが、今後、管内全ての府県において目標達成に向け新規

集積面積の実績を伸ばす努力をしていかなければならないと考えています。

表Ⅲ-2-3 農地中間管理事業の実施状況(平成 26 年度)

(単位:ha)

府県名

年間集積

目標面積

機構の借入・貸付面積(平成 27 年3月末)

借入面積 貸付面積

寄与度

③=

②/①

うち新規

集積面積

滋賀県 2,340 1,893 1,863 110 4.7%

京都府 1,170 155 93 13 1.1%

大阪府 230 3 2 1 0.4%

兵庫県 3,580 507 408 28 0.8%

奈良県 490 28 28 3 0.6%

和歌山県 1,190 23 11 4 0.3%

近畿計 9,000 2,610 2,404 159 1.8%

資料:農林水産省調べ

注:四捨五入の関係で計が一致しない場合がある。

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単一経営,

62.4%

複合経営,

37.6%

(2) 多様な農業経営を支える担い手の育成

ア 認定農業者の動向

近畿地域の認定農業者は平成 26 年3月末現在 10,810 経営体となり、平成 25 年3

月末現在に比べて 27経営体の増加となりました(図Ⅲ-2-4)。

営農類型では、果樹単一経営の割合が 19%となっています(図Ⅲ-2-5)。

年齢別(法人等除く)では、50歳代が 27%、60歳以上が 47%を占め、50歳未満は

26%となっています(図Ⅲ-2-6)。

図Ⅲ-2-4 認定農業者の数の推移(近畿地域) 図Ⅲ-2-6年齢別認定農業者の状況

10,860 11,24511,489 11,47210,950

10,78310,810

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

平成

20年

21年 22年 23年 24年 25年 26年

経営体数

図Ⅲ-2-5 営農類型別認定農業者の状況

・ 近畿地域の認定農業者数は3年ぶりに増加して 10,810経営体

29歳以下

95

(1%)30歳~39歳

735

( 8%)

40歳~49歳

1,703

(17%)

50歳~59歳

2,620

(27%)

60歳~64歳

1,905

(19%)

65歳以上

2,730

( 28%)

法人、共同申請を除く

法人、共同申請を

除く認定農業者数

9,788

認定農業者数 10,810 経営体

資料:近畿農政局調べ(各年次 3月末現在) 資料:近畿農政局調べ

12% 10% 9% 19% 4% 6% 2% 38%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

稲作 露地野菜 施設野菜 果樹類 花き・花木 畜産 その他 複合経営

資料:近畿農政局調べ

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イ 集落営農の組織化の動向

(イ)

近畿地域の集落営農数は 2,068 組織(平成 27 年2月1日現在)で、前年と比べて

17組織の増加となっています(表Ⅲ-2-7)。

府県別の集落営農をみると、滋賀、兵庫及び奈良で増加しました。なお、滋賀及び

兵庫で、近畿全体の8割を占めています。

893

288

2

823

27 15

857

316

3

817

29 14

861

324

3

826

29 14

856

322

2

828

29 14

867

319

2

836

30 14

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県

H23 H24 H25 H26 H27

・ 近畿地域の集落営農組織数は 2,068組織(平成 27年2月1日現在 概数)

資料:農林水産省「集落営農実態調査」(各年次2月1日現在)

注:平成 27年値は概数である。

図Ⅲ-2-7 集落営農

(集落営農)

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ウ 法人化の動向

・ 近畿地域の農業生産法人数は 649法人

近畿地域の農業生産法人数は前年に比べ 55法人増加し 649法人となり、そのうち、

株式会社と(特例)有限会社を合わせると 400法人になり、全体の 61.6%を占めてい

ます(図Ⅲ-2-5)。

府県別の農業生産法人は滋賀(235法人)、兵庫(153法人)、京都(126法人)の

順に多く、法人の増加数も平成 25年比で滋賀(30法人増)、兵庫(14法人増)、京

都(7法人増)、奈良(3法人増)、和歌山(1法人増)、大阪(0法人増)の順とな

っています(図Ⅲ-2-8)。

滋賀、京都、兵庫では米麦生産法人の割合が高く、3府県で近畿の米麦生産法人の

95.1%を占めます。果樹生産法人の割合が多いのは和歌山、奈良県となっています(図

Ⅲ-2-7)。

72

210 210 205 200 199 203 19757

117 128 138 149 178 200 232

0

4569

110 132150

177203

0

5

5

55

5

5

4

0

35

66

69

13

0

100

200

300

400

500

600

平成10年 20年 21年 22年 23年 24年 25年 26年

合同会社合資会社株式会社農事組合法人(特例)有限会社

649

129

380417

464492

538

594

図Ⅲ-2-9 農業生産法人の府県別推移

資料:近畿農政局調べ(各年次1月1日時点)

資料:近畿農政局調べ(各年次1月1日)時点)

(単位:法人数)

(単位:法人数)

図Ⅲ-2-8 農業生産法人数の推移

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野菜87法人

(41%)

複合59法人

(28%)

米麦等39法人

18%

果樹19法人

(9%)

工芸作物4法人

(2%)畜産(飼料用作

物)1法人 (0%)

花き4法人

(2%) その他1法人

(0%)

Ⅲ-2-10 農業生産法人の作物別割合 (単位:グラフ内の数値は法人数)

8

5

78

4

60

191

346

23

11

6

3

5

10

58

2

0

18

3

10

13

46

15

16

35

20

35

12

133

0

1

1

0

8

0

10

7

4

3

2

4

1

21

3

5

12

3

4

8

35

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

和歌山

奈良

兵庫

大阪

京都

滋賀

近畿

米麦作 果 樹 畜 産 そ 菜 工芸作物 花き・花木 その他

エ 農業生産法人以外の一般法人の農業参入の動向

・ 近畿地域における一般法人の農業参入は 214法人

改正農地法施行後の近畿管内における一般法人の農業参入は、平成 26年 12月末時

点で 214法人となっており、そのうち 100法人(46.7%)が兵庫への参入となってい

ます(図Ⅲ-2-8)。

一般法人のうち 87法人(41%)が主に野菜を栽培しており、複合経営の法人を含め

ると 146法人(68.2%)が野菜を栽培していることになります(図Ⅲ-2-9)。

0 0 0

13

2 312

28 31

100

20 23

0

20

40

60

80

100

120

滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山

旧制度での参入

新制度での参入

図Ⅲ-2-12 参入法人の営農類型 図Ⅲ-2-11 農業生産法人以外の一般法人の参入数

資料:近畿農政局調べ(平成 26 年1月1日時点)

資料:近畿農政局調べ(平成 26年 12月末日時点)

注:1)旧制度:改正農地法の施行前(H15.4~H21.12)

2)新制度:改正農地法の施行後(H21.12~H26.12)

参入法人

(214 法人)

資料:近畿農政局調べ(平成 26年 12月末日時点)

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オ 経営所得安定対策等の加入申請状況

・ 近畿地域の平成 26年度経営所得安定対策等の加入申請件数は横ばい

近畿地域の平成 26年度経営所得安定対策等の加入申請件数は、計 122,810件で平

成 25年度支払実績に比べ横ばいとなりました。また、府県別の動向をみると兵庫で

増加、京都、和歌山、滋賀、大阪、奈良で減少しました(図Ⅲ-2-13)。

平成 26年度加入申請件数の内訳を経営形態別にみると、個人 121、118件、法人 646

件、集落営農 1,046件となっており、平成 25年度支払実績と比べると個人と集落営

農の加入申請件数が横ばいで推移する中、法人が増加しました(表Ⅲ-2-4)。

7,971

5,802

62,391

3,137

20,598

22,911

122,810

8,247

6,027

61,490

3,294

21,038

23,344

123,440

0 50,000 100,000 150,000

和歌山

奈良

兵庫

大阪

京都

滋賀

近畿計

25年度

26年度

平成 26年度経営所得安定対策等のうち水田活用の直接支払交付金における戦略作物

の作付計画面積は、平成 25年度支払面積と比べると、加工用米、大豆、麦、WCS用稲

が増加する一方で、米粉用米、そば、なたねが減少しました(表Ⅲ-2-5)。

表Ⅲ-2-5 平成 26年度経営所得安定対策等のうち水田活用の直接支払交付金における戦略作物作付計画面積

資料:近畿農政局調べ 注:四捨五入の関係で、内訳と計が一致しない場合がある。(25年は支払実績面積)

資料:近畿農政局調べ 注:25年度は支払実績件数

(単位:ha)

(単位:件)

(件)

資料:近畿農政局調べ 注:25年度は支払実績件数

図Ⅲ-2-13 平成 26 年度経営所得安定対策

等の各府県別加入申請件数

表Ⅲ-2-4 平成 26年度経営所得安定対策

等の経営形態別の加入申請件数

区分 麦 大豆 飼料作物(除くWCS用稲)

WCS用稲 米粉用米 飼料用米 そば なたね 加工用米

滋 賀 7,356 5,849 171 224 40 383 443 23 1,303京 都 230 255 80 53 3 88 110 - 313大 阪 2 5 2 - 4 0 0 - -兵 庫 2,421 2,143 1,430 500 30 126 329 24 746奈 良 108 62 7 42 24 25 3 3 -和 歌 山 1 17 1 - - 2 - - -近 畿 計 10,118 8,331 1,691 819 101 624 885 50 2,362前 年 計 9,853 7,899 1,691 683 122 445 901 51 1,790増 減 265 432 0 136 -21 179 -16 -1 572対前年比 102.7% 105.5% 100.0% 119.9% 82.8% 140.2% 98.2% 98.0% 132.0%

個人 法人 集落営農 合計滋 賀 22,189 288 434 22,911

京 都 20,306 122 170 20,598

大 阪 3,132 5 0 3,137

兵 庫 61,766 199 426 62,391

奈 良 5,767 19 16 5,802

和 歌 山 7,958 13 0 7,971

近 畿 計 121,118 646 1,046 122,810

前 年 計 121,794 587 1,059 123,440

前 年 比 99.4% 110.1% 98.8% 99.5%

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- 108 -

カ 新規就農者の育成・確保

・ 近畿地域の新規就農者数(39歳以下)は近年、増加傾向

近畿地域の新規就農者数(39 歳以下)は近年、増加傾向にありますが、平成 25 年

は 611人です。

新規就農者の増加は、平成 21年度からの農の雇用事業や平成 24年度創設の青年就

農給付金などの新規就農支援策の効果が顕著にあらわれているためです。

形態別に見ると、新規参入者が6割以上を占めています(図Ⅲ-2-14、図Ⅲ-2

-15)。

図Ⅲ-2-14 新規就農者(39歳以下)の 推移(近畿)

231 235 217 334 312

147 182 209

291 299

0

100

200

300

400

500

600

700

H21 H22 H23 H24 H25

自営就農者 雇用就農者(人)

資料:近畿農政局調べ

図Ⅲ-2-15 新規就農者(39歳以下)の形態別推移(近畿)

71 85 79 60 64

146 127 117 159 154

161 205 230

406 393

0

100

200

300

400

500

600

700

H21 H22 H23 H24 H25

新規学卒就農者 Uターン就農者 新規参入者(人)

資料:近畿農政局調べ

611

611

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- 109 -

キ 女性の参画促進

(ア) 農村女性の動向

・ 近畿地域の農業就業人口に占める女性の割合は約5割

平成 26 年の近畿地域の農業就業人口(販売農家)は 18 万人で、全国と同様、女性

が全体の約5割を占めています(表Ⅲ-2-6)。近畿地域における女性農業就業人

口の年齢構成は、平成 26年では 60歳以上が全体の8割近くを占めており、全国と同

様、高齢化が進んでいます(表Ⅲ-2-7)。

表Ⅲ-2-6 農業就業人口(販売農家)(平成 26年) (単位:千人、%)

農業就業人口

(男女計)

うち女性 全体に占める

女性の割合

全国 2,266 1,141 50.4

近畿 181 90 49.7

資料:農林水産省「農業構造動態調査」

表Ⅲ-2-7 女性農業就業人口の年齢構成(平成 26 年)(単位:千人、%)

39 歳以下 40~59歳 60 歳以上 計

全国 59(5.2) 201(17.6) 882(77.3) 1,141

近畿 5(5.6) 16(17.8) 69(76.7) 90

資料:農林水産省「農業構造動態調査」(表中の括弧内は割合)

注:四捨五入の関係で計が一致しない。

(イ) 農村女性の社会参画

・ 政策・方針決定過程への女性の参画の促進

農業分野での政策・方針決定過程への女性の参画を促進するため、農業委員会やJ

A組織では女性役員等の登用目標を掲げ、その達成に取り組むとともに、地域の理

解・気運の醸成に向けた啓発活動を実施しています。

農業委員会では、委員数が減少する中、女性農業委員数は増加傾向にありますが、

平成 25年度では、総数に占める割合は全国が 6.3%、近畿は 4.7%と、依然低水準に

あります(表Ⅲ-2-8)。

一方、農協役員に占める女性の割合は、全国の約7%に対して、近畿管内では8%

とやや高くなっています(表Ⅲ-2-9)。

しかし、農業就業人口の女性の占める割合から比較すると、どちらも依然として低

い状況にあり、女性農業者の社会参画が十分に進んでいないことが課題となっていま

す。

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表Ⅲ-2-8 農業委員数に占める女性の状況 (単位:人、%)

平成 22年度 23 24 25

全国

農業委員数 36,330 36,034 35,729 35,514

うち女性 1,792 2,070 2,182 2,249

女性の割合 4.93 5.74 6.10 6.33

近畿

農業委員数 4,298 4,282 4,268 4,231

うち女性 155 187 198 200

女性の割合 3.61 4.37 4.63 4.72

資料:農林水産省経営局調べ(数値については、各年度 10 月 1日現在)

表Ⅲ-2-9 総合農協役員数に占める女性の状況 (単位:人、%)

平成 22年度 23 24 25 26

全国

農協役員数 19,161 18,990 18,910 18,792 18,616

うち女性 741 851 998 1,140 1,277

女性の割合 3.87 4.48 5.28 6.07 6.85

近畿

農協役員数 1,778 1,762 1,752 1,752 1,719

うち女性 77 86 97 125 138

女性の割合 4.33 4.88 5.54 7.13 8.02

資料:農林水産省「総合農協統計表」(平成 26年の数値は JA全中調べ)

・ 認定農業者に占める女性の割合は前年に比してやや減少

近畿地域における農業経営改善計画の認定数のうち、女性及び夫婦による共同申請

によるものは平成 26 年では 318 件と、認定農業者全体(9,966 人(法人除く))に

占める割合は 3.2%となっています。女性及び夫婦による共同申請の認定件数は、前

年に比して減少しており、今後とも女性の経営に対する明確な位置づけ等のメリット

を理解してもらいながら、認定数を増やしていく必要があります(図Ⅲ-2-16)。

図Ⅲ-2-16 近畿地域における農業経営改善計画認定数の推移(女性及び夫婦による共同申請)

資料:農林水産省「農業経営改善計画の営農類型別認定状況」(3月末日現在)

件 %

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(ウ) 女性起業の状況

・ 近畿における平成25年度の女性起業数は749件

・ 近畿管内の女性起業者は60歳以上が約6割

近畿地域における農村女性による起業活動は、近年、全体の経営体数はほぼ横ばい

となっています(図Ⅲ-2-17)。年齢構成をみると 39 歳以下は圧倒的に少なく、

60 歳以上が個人経営で 59%、グループ経営で 65%を占めており、高齢化と後継者不

足が課題です(図Ⅲ-2-18)。このような女性起業者は、地域に伝わる伝統食文化

や郷土食に関する知識が豊富なことから、これらを途絶えさせないためにも後継者の

育成に力を注ぐ必要があります。

図Ⅲ-2-17 近畿地域における女性起業数の推移

資料:近畿農政局「農村女性による起業活動実態調査」

図Ⅲ-2-18 女性起業の年齢構成(平成 25 年度)

資料:近畿農政局「農村女性による起業活動実態調査」

(参考)農村女性による起業活動とは、農村女性による、地域産物を活用した特産加工品づくりや、

直売所での販売、農家レストランの経営などの経済活動のことを言います。

2%

22%

59%

17%

個人経営

39歳以下

40~59歳

60歳以上

不明

1%

11%

65%

23%

グループ経営

39歳以下

40~59歳

60歳以上

不明

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(エ) 農村女性を応援する近畿農政局の取組

近畿農政局では、農山漁村の女性が一堂に会し、それぞれの活動等を通じて得ら

れた成果や経験をもとに情報や意見の交換研究を行い、男女共同参画社会の実現と

地域農山漁村の活性化を図る「近畿地域農山漁村女性のつどい」を昭和 44 年から

毎年度開催しています。

平成 26 年度は、10 月 20 日、滋賀県内で「第 46 回近畿地域農山漁村女性のつど

い」を開催しました。

さらに、平成 16年度からは「近畿農政局男女共同参画優良表彰」を実施しており、

男女共同参画の実現を目指して経営参画や社会参画等に取り組む優良事例及び顕著

な功績のあった団体・個人を表彰しています。毎年度、「近畿地域農山漁村女性のつ

どい」と同日開催で、表彰式を実施しています。

第 46 回近畿地域農山漁村女性のつどいの様子(左:表彰受賞者、右:基調講演)

農林水産省では平成 25 年 11 月より「農業女子プロジェクト」の取組を開始して

おり、この取組を通じて、女性農業者の活動を社会全体に発信し、その存在感を高

め、将来的には職業として農業を選択する女性の増加を図ることを目指していま

す。27 年2月現在、全国の女性農業者 250 人、連携企業として 20 社が参画してい

ます。

26 年度には、プロジェクトメンバーと連携企業とのコラボレーションによる新

商品等が開発されました。

また、近畿農政局では 27 年2月4日、近畿地域在住のプロジェクトメンバーを

参集した「近畿地域ブロック農業女子プロジェクト意見交換会」を大津市で開催し

ました。当日は 12 名のプロジェクトメンバーが参加し、情報交換が活発に行われ

ました。

左イラスト:農業女子プロジェクトロゴマーク 写真:意見交換会の様子

・「近畿地域農山漁村女性のつどい」及び「近畿農政局男女共同参画優良表彰」を実施

・「農業女子プロジェクト」にかかる取組を実施

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(3) 食料の生産基盤である農地の確保・有効利用の促進

ア 農地移動の動向

・ 近畿地域の農地の移動は横ばい

農地の権利移動面積は、水田・畑作経営所得安定対策の導入を背景に平成 18 年に

増加しましたが、その後は同対策加入に関連した権利移動が減少していた。近年は農

地集積対策事業の推進により微増ではあるが増加傾向になっており、平成 25 年は

4,982haとなりました(図Ⅲ-2-19)。

1,176637 711 629 613 628 634 562 518 557 563

2,6852,866 3,124

5,122 4,948 3,976 3,566 3,588 3,936 3,979 4,419

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

昭和

61年

平成

7年

17 18 19 20 21 22 23 24 25

自作地所有権移転 賃借権設定

4,982

資料:農林水産省「農地の移動と転用」(土地利用管理情報収集分析調査結果)

※H22 からは「農地の権利移動・借賃等調査結果」である。

図Ⅲ-2-19 農地の権利移動面積の推移(近畿地域)

(単位:ha)

4,536

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イ 荒廃農地再生対策の推進

・ 近畿地域の荒廃農地面積は約 9,800ha(うち農用地区域が 54.6%)

平成 25 年時点の全国の荒廃農地面積は 26 万 4,508ha であり、近畿地域の

同面積は 9,809ha(全国比 3.7%)です。このうち再生利用が可能な荒廃農地

面積は 4,586ha、再生利用が困難と見込まれる荒廃農地は、5,222ha となって

います(図Ⅲ-2-20)。 表Ⅲ-2-10 平成 25 年荒廃農地面積(実績値) (単位:ha)

府県

荒廃農地面

計(①+②)

①再生利用可

能な荒廃農地

②再生利用が困

難と見込まれる

荒廃農地

再生利用

された農

農用地区

農用地区

農用地区

農用地区

滋賀 1,559 888 503 349 1,056 539 54 45

京都 2,775 891 717 402 2,058 490 164 106

大阪 271 76 193 58 78 18 68 24

兵庫 1,919 1,424 931 747 987 677 252 210

奈良 1,117 595 793 477 324 118 72 40

和歌

山 2,168 1,477 1,449 1,036 719 441 196 155

近畿 9,809 5,351 4,586 3,069 5,222 2,283 806 580

全国 264,508 126,007 132,903 75,869 131,606 50,138 14,916 9,936

資料:農林水産省「平成 25年の荒廃農地の面積について」

注:1)調査は平成 25 年 1 月から平成 25 年 12 月までの間に実施したもので、東京電力福島第一原子力発電

所事故の影響により避難指示のあった福島県の市町等 12市町村を除いた実績値。

2)「①再生利用可能な荒廃農地」とは、抜根、整地、区画整理、客土等により再生することにより、通

常の農作業による耕作が可能と見込まれる荒廃農地。

3)「②再生利用が困難と見込まれる荒廃農地」とは、森林の様相を呈しているなど農地に復元するため

の物理的な条件整備が著しく困難なもの、又は周囲の状況からみて、その土地を農地として復元して

も継続的に利用することができないと見込まれるものに相当する荒廃農地。

・ 耕作放棄地再生利用緊急対策交付金※1による再生推進

近畿農政局では、平成 21年度より、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金の活用等

により耕作放棄地を再生しており、同交付金を活用した耕作放棄地再生予定面積は、

平成 26年度において約 28haとなっています。

※1 耕作放棄地再生利用緊急対策交付金

農地の引き受け手(周辺農家、企業等)が行う耕作放棄地の再生作業や土づくり、作物の作付け、加工品試

作・試験販売等の再生利用活動、及び再生農地において利用する農業用機械・農業用施設の整備、隣接農地

等を含めた用排水施設・農道等の基盤整備等を総合的に支援するための交付金

図Ⅲ-2-20 耕作放棄地の再生利用

荒廃農地 再生作業 土づくり 作物の作付け

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耕作放棄地の解消に向け、近畿農政局では耕作放棄地解消プロジェクトチームを組

織し、耕作放棄地が多い重点市町村※1について、課題把握のための現地調査、取組主

体や市町村との意見交換、さらなる解消に向けた各種関連制度の啓発活動などを実施

しています。

※1 平成 22年度 : 滋賀県甲賀市、京都府京田辺市、兵庫県淡路市

平成 23~24年度 : 滋賀県甲賀市、京都府南山城村、兵庫県淡路市

平成 25年度 : 大阪府貝塚市、奈良県山添村、和歌山県有田川町

平成 26年度 : 大阪府貝塚市、奈良県宇陀市、和歌山県紀の川市

・耕作放棄地の解消に向けた取組

事 例

耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を活用した取組

◆取組場所: 兵庫県豊岡市日高町

◆取組主体: (株)Teams

◆作業内容: 刈払、耕起、整地、土壌改良

◆栽培作物: そば、きゃべつ、はくさい、レタスなど

◆取組概要: 平成 21 年6月、建設業を営む2社で株式会社 Teams を立ち上げて農業参

入し、地域の耕作放棄地を再生。

担い手がおらず、地域で問題となっている耕作放棄地を解消し、当地で

の栽培条件に合った作物を生産しているほか、地産地消に取り組む一方で、

「地産”都”商」として都市部への販路拡大に取り組み、地域外のホテル

や飲食店への出荷、定期的な産直市を開催している他、就農支援として農

業技術指導、研修、定住支援などの取組みを行い、地域の雇用創出にも貢

献している。(※当交付金は平成 25 年に活用)

実施後(再生された農地) 再生作業実施前

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ウ 農業生産基盤や農村環境の整備

・ 農地を整備し、経営体を育成

近畿農政局では、食料の安定供給を支える基盤となる水田・畑地等の区画整理や、

ほ場に付随する農業水利施設の整備などを行い、農業生産性の向上を図っています。

また、農業と生活の場が一体となっている農村の暮らしを支えることを目的として、

集落排水施設、農村集落道や地域資源利活用施設(リサイクル・小水力等)など生活

環境を改善しています。

京都府亀岡市においては、桂川左岸約500haの農地の区画整理や排水改良を目的

に行われていた大規模な国営農地再編整備事業(亀岡地区)が、平成23年度に完

了し、農地が大区画に整形されたことで米の生産性が向上するとともに、水田の

排水が改良されたことで裏作である麦や大豆などの戦略的農作物の生産量が拡大

しました。また、事業対象地区の約5割に当たる概ね236haの農地が農事組合法人

などに集約され、経営規模が拡大し経営が安定したことから、新規就農者が増加

しました。

さらに、桂川右岸約540haにおいても平成26年度より国営緊急農地再編整備事業

(亀岡中部地区)が発足し、担い手への農地利用集積を進め、生産性向上と優良

農地の確保を図っていくこととしています。

水田の整備 a.国営緊急農地再編整備事業 b.農業競争力強化基盤整備事業

きめ細かな基盤整備と整備済み農地の簡易な整備 d.農業基盤整備促進事業

事業実施前の狭小な水田 事業実施後の大規模区画水田

畑地の整備 c.農業競争力強化基盤整備事業 (畑地帯担い手育成型・畑地帯担い手支援型)

【旧 畑地帯総合農地整備事業】

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・ 自然災害に対する適切かつ速やかな対応

近畿農政局管内では、近年、豪雨、地震等の甚大な自然災害に見舞われることが多

く、昨年に引き続き平成 26 年においても、豪雨により多くの農地・農業用施設等の

災害が発生しました。

被災した地域における農業生産活動の維持と安全性の向上を図り国土保全に資す

るため、速やかに対応しました。

(ア) 平成 26年 農地・農業用施設等の発生災害

(金額単位:百万円)

農 地 農業用施設等(※) 計 主 な 災 害

箇所数 被害額 箇所数 被害額 箇所数 被害額

滋 賀 38 30 116 110 154 140 台風 11号豪雨(8/8-8/10)

8月前線豪雨(8/15-8/17)

台風 19号豪雨(10/13-10/14)

京 都 994 809 1,234 1,688 2,228 2,497

大 阪 355 280 196 188 551 468

兵 庫 5,024 4,731 2,651 5,328 7,675 10,059

奈 良 181 189 54 83 235 272

和歌山 384 639 312 769 696 1,408

計 6,976 6,678 4,563 8,166 11,539 14,844

※農業用施設等被害額には、農道、水路、ため池、堰等のほか農村生活環境施設(集排、公園)、海岸及び地すべ

りを含む。

資料:近畿農政局調べ (H26.11.27 時点)

(イ) 職員の緊急派遣(水土里(みどり)災害派遣)

大規模な自然災害が発生した場合に、被災状況の把握や応急対策等を速やかに実施

することを目的とした「水土里災害派遣隊」として、平成 26年は、京都府福知山(ふ

くちやま)市、兵庫県丹波(たんば)市・淡路(あわじ)市・洲本(すもと)市・南

あわじ市及び奈良県五條(ごじょう)市に農村計画部資源課、整備部水利整備課・防

災課、土地改良技術事務所等から延べ 24名の職員を派遣し、ため池や農地被害状況、

山地崩壊状況等の現地調査、災害復旧に向けた助言・指導を行いました。

近畿農政局水土里災害派遣隊ホームページ

URL:http://www.maff.go.jp/kinki/seibi/bousai/midorihakentai.html

(ウ) 災害査定の対応

被災地域における早期の復旧工事着手のため、近畿農政局整備部防災課を中心に、

農林水産省農村振興局、関東農政局、北陸農政局、近畿農政局整備部、同農村計画部

及び管内国営土地改良事業関係の事務所・事業所等の職員による応援を受けながら、

平成 27年 1月中旬までに 76班(週)の災害査定を実施しました。

表Ⅲ-2-11 府県別被害状況