2)余裕時間の短縮による効果 ①便益算定の考え方 :...

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2)余裕時間の短縮による効果 ①便益算定の考え方 道路整備により、平均的な所要時間が短縮するだけでなく、 所要時間の変動(ばらつき)が減少し、到着予定時刻に遅刻 しないために見込む余裕時間も短縮すると考えられます。余 裕時間が短縮すると、道路利用者は出発時刻を以前より遅く することができ、遅くした時間は他の有効な活動に利用でき ることから、この出発時刻を遅らせることができる効果を余 裕時間の短縮による走行時間短縮便益として試算することと しました。 【概念図】 余裕時間の短縮による走行時間短縮便益の概念 ある確率で約束時間内に 到着するために見込む所要時間 平均所要時間 3020従来の時間短縮便益 平均時間短縮:10分 余裕時間短縮: 5分 今回の試算対象 2015※ 所要時間は参考値 - 15 -

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Page 1: 2)余裕時間の短縮による効果 ①便益算定の考え方 : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの交通量(台/日) TR ijl : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの余裕時間(分)

2)余裕時間の短縮による効果

①便益算定の考え方

道路整備により、平均的な所要時間が短縮するだけでなく、

所要時間の変動(ばらつき)が減少し、到着予定時刻に遅刻

しないために見込む余裕時間も短縮すると考えられます。余

裕時間が短縮すると、道路利用者は出発時刻を以前より遅く

することができ、遅くした時間は他の有効な活動に利用でき

ることから、この出発時刻を遅らせることができる効果を余

裕時間の短縮による走行時間短縮便益として試算することと

しました。 【概念図】 余裕時間の短縮による走行時間短縮便益の概念

ある確率で約束時間内に

到着するために見込む所要時間

平均所要時間

30分 20分

整備前

整備後

従来の時間短縮便益平均時間短縮:10分

余裕時間短縮: 5分今回の試算対象20分 15分

※ 所要時間は参考値

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Page 2: 2)余裕時間の短縮による効果 ①便益算定の考え方 : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの交通量(台/日) TR ijl : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの余裕時間(分)

②便益算定のフローと算定式

余裕時間の短縮による便益は、以下の手順及び算定式より

試算しました。

① 道路区間毎に余裕時間を算出

する。

② 対象道路網の総余裕時間を算

出する。

③ 車種別時間価値、余裕時間の

短縮による便益を享受する交

通量割合より、対象道路網の

余裕時間短縮による走行時間

費用を算定する。

④ ①~③の算定を整備前後で行

い、その差が「余裕時間の短

縮による走行時間短縮便益」

余裕時間の短縮による走行時間短縮便益 : BTR = BTRo-BTRw

余裕時間の短縮を考慮した走行時間費用 : BTRi = Σ(βj×BTRijr)

ここで、 BTRi : 整備 iの場合の走行時間費用

BTRijr : 整備 i、車種 jの余裕時間費用(円/年)

また、時間費用は次式で表される。

BTRijr = γj×Σ(Qijl×TRijl×αj)×365

Qijl : 整備 iの場合のリンク lにおける車種 jの交通量(台/日)

TRijl : 整備 iの場合のリンク lにおける車種 jの余裕時間(分)

αj : 車種 jの時間価値原単位(円/分・台)

βj : 車種 jの余裕時間短縮による便益を享受する移動者の割合

γj : トリップ長分布を考慮して総余裕時間を算定する換算係数

i: 整備有の場合 W 、なしの場合 O 、j: 車種、l: リンク

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③便益の算定例

余裕時間が同じように短縮しても、移動目的や例えば物流

事業者のような時間指定の有無等の移動者の特性によって余

裕時間の短縮による走行時間短縮便益は異なります。

当該事業において算定した余裕時間の短縮効果は、「①到着

時刻の指定があり」、かつ指定時刻に早く着いてしまった場合

に「②指定の時刻まで待機した移動者」のみを対象に算定し

た結果であり、「③到着時刻の指定がない移動者」や、指定時

刻に早く着いてしまった場合に「④早めに目的の活動を始め

る、または別の活動をして時間を有効活用した移動者」は、

便益算定の対象とはしていません。

便益算定の設定、条件等 Ⅰ.日平均旅行速度と非遅刻確率余裕時間の関係

実測データ(プローブカー調査)及びアンケート調査により設定

非遅刻確率余裕時間(単位:分/km)

自動車専用道路平均旅行速度 40km/h 45km/h 50km/h 55km/h 60km/h 65km/h 70km/h 75km/h 80km/h 85km/h 90km/h 95km/h

乗用車類 1.679 1.210 0.872 0.628 0.453 0.326 0.235 0.169 0.122 0.088 0.063 0.046貨物車類 1.640 1.182 0.852 0.614 0.442 0.319 0.230 0.165 0.119 0.086 0.062 0.045

一般道2車線平均旅行速度 5km/h 10km/h 15km/h 20km/h 25km/h 30km/h 35km/h 40km/h 45km/h 50km/h 55km/h

乗用車類 5.614 3.817 2.595 1.764 1.199 0.815 0.554 0.377 0.256 0.174 0.118貨物車類 5.483 3.727 2.534 1.723 1.171 0.796 0.541 0.368 0.250 0.170 0.116

一般道多車線、DID外平均旅行速度 5km/h 10km/h 15km/h 20km/h 25km/h 30km/h 35km/h 40km/h 45km/h 50km/h 55km/h

乗用車類 8.431 5.947 4.195 2.959 2.087 1.472 1.038 0.732 0.517 0.364 0.257貨物車類 8.233 5.807 4.096 2.889 2.038 1.438 1.014 0.715 0.505 0.356 0.251

一般道多車線、DID内平均旅行速度 5km/h 10km/h 15km/h 20km/h 25km/h 30km/h 35km/h 40km/h 45km/h 50km/h 55km/h

乗用車類 10.152 7.194 5.098 3.613 2.560 1.814 1.286 0.911 0.646 0.458 0.324貨物車類 9.914 7.026 4.979 3.528 2.500 1.772 1.256 0.890 0.631 0.447 0.317

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Ⅱ.トリップ長分布を考慮して総余裕時間を算定するための換算係数(γ)

実測データ(プローブカー調査)により設定 表 重み付け平均換算係数(γ)

乗用車類 小型貨物 普通貨物

自動車専用道路 0.608 0.698 0.536

一般道路 0.631 0.787 0.566 Ⅲ.余裕時間短縮による便益を享受する交通量割合(β)

アンケート調査により設定

表 余裕時間短縮による便益享受交通量割合

車種 β 乗用車類 10.4% 小型貨物 27.6% 普通貨物 27.6%

Ⅳ.車種別の時間価値原単位

費用便益分析マニュアルより

表 車種別時間時間価値原単位

車種 時間価値原単位 乗用車類 45.78 小型貨物 47.91 普通貨物 64.18

単位:円/分・台(平成20年価格)

④便益の試算結果 Ⅰ.余裕時間の短縮による走行時間短縮便益(H42)

走行時間費用(余裕時間)

(億円/年) ①整備あり ②整備なし

余裕時間短縮便益 (億円/年)

阿歴内道路 1,376.62 1,376.75 0.13 Ⅱ.便益表

基準年 平成21年度 単年便益(H42) 0.13 億円

基準年における現在価値※ 2.61 億円

※)は、供用後50年間の便益額として試算した値(参考値)

阿歴内道路の整備により、所要時間の変動(ばらつき)が

減少し、到着予定時刻に遅刻しないために見込む余裕時間が

短縮する効果として、約2.6億円の便益が試算されました。

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(3)定性的な効果

「地吹雪による通行止めの解消や視程障害の改善による走行環境の向上が期待されます。」

<冬期通行障害の状況>

釧路中標津道路は、釧路・根室圏の拠点都市である釧路市と

中標津町・標津町を結ぶ地域高規格道路です。

なかでも当該区間は、冬期の地吹雪による視程障害により通

行止めが多発しており、通行車両が大幅な迂回を強いられるな

ど交通の安全性や確実性が確保されていない状況にあります。

さらに、平成20年4月には暴風雪により約70台の自動車

が立ち往生する事態も発生しました。

当該事業の整備により、冬期の交通障害が解消され、安全性

及び確実性が向上することが期待されます。

■視程障害による迂回の状況 ■防雪林による視程障害改善効果

地吹雪により

視程障害が発生 通常のルート

2時間4分

防雪林帯により、地吹雪の発生を抑えます

迂回ルート

2時間56分

■吹雪視程障害による通行止めの状況(H20.4.1)

冬期障害(視程障害)

<通行止め>H14~H20年度

回数=6回、時間=93h

資料:釧路開発建設部調べ

吹雪に巻き込まれた貨物車 吹雪による道路への堆雪

・ 通行止めの影響でバスが全便運休となったが、すでに釧路に向かっていたバスは阿歴内付近で吹きだまりに閉じこめられ、乗客 6名が約 8時間車輌の中で過ごしました。

【釧路市内・バス会社】・ 通行止めにより釧路方面への生乳輸送が大幅に遅れました。 【ホクレン中標津支所】

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「農水産品の流通の利便性向上が図られます。」

<生乳流通の利便性向上>

釧路・根室地域は、農業産出額に占める生乳生産額の割合が

高く、平成18年度で約7割となっており、全国の生産量でも

約2割占めています。

中標津町、別海町にある生乳工場は釧路・根室地域の中でも

全体の約5割を占めており、加工された乳製品は当該路線を利

用して、毎日釧路港へ向けてミルクローリーで輸送され、道外

の大都市圏などへ出荷されています。

当該事業の整備により、中標津町、別海町から道外の大都市

圏への乳製品の流通の利便性向上が期待されます。

■釧路・根室地域の農業産出額内訳

■釧路港への生乳輸送状況

・ 大雪などによる通行止で、乳業工場の貯蔵量が限界に達し、 悪のケースは廃棄せざるを得ない状況になるため通行止めにならない道路網ができることを強く望んでいます。【ホクレン中標津支所】

・ 生乳の本州輸送には「ホクレン丸、第2ほくれん丸」を毎日利用するので、17:30までにホクレン生乳ヤードに到着しなければなりません。釧路港と根室管内を結ぶ国道272号上で隘路のひとつが解消されることの効果は大きいです。

【生乳輸送業者】

「ほくれん丸、第2ホ

クレン」による輸送

ミルクローリーによる

輸送

資料:北海道農林水産統計年報(H18) 資料:農畜産物及び加工食品の

移出実態調査(H19)

■生乳生産量の全国シェア ■釧路・根室地域からの乳製品出荷先

生乳72.7%

耕種2.9%

その他畜産24.3% H18

農業産出額

約1,269億円関東

62.8%

道内

18.2%

近畿11.9%

その他

全国

7.1%

H18

乳製品出荷量

約17万トンその他道内30.7%

(約250万トン)

釧路・根室地域

16%(約130万トン)

その他全国53.3%

(約434万トン)

H18全国生乳生産量

約814万トン

資料:北海道農林水産統計年報(H18)

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<水産品流通の利便性向上>

釧路・根室地域の漁獲量は、全道の約3割を占め、羅臼町や

標津町等では鮭、ほたて貝、すけとうだらなど多様な魚種が水

揚げされています。

羅臼町、標津町、別海町で漁獲された鮭は道内の鮭漁獲量の

約23%のシェアを誇っており、それらの水産品は、年間を通

じて当該路線を経由し道外または釧路市内の水産加工場へ出荷

されています。

当該路線の整備により、これら水産品の流通の利便性向上が

期待されます。 ■鮭の漁獲量 ■羅臼町・標津町・別海町 ■北海道の漁獲量

における魚種別漁獲量

斜里町14.8%

網走市9.4%

その他44.7%

別海町6.2%

標津町7.5%

根室市7.7%

羅臼町9.7%鮭漁獲量

北海道17.2万t(H19)

宗谷支庁16.5%

その他13.6%

根室支庁16.1%

釧路支庁12.2%

胆振支庁6.4%

島支庁16.3%

網走支庁19.0%

北海1,

道計350千t

釧路・根室支庁で

全道の約3割 するめいか

10%

たら2%

その他7%

すけとうだら11%

こまい5%

ほっけ4%

鮭36%

ほたて貝25%

漁獲量(H19)

111,356 t渡

資料:北海道水産現勢(H19) 資料:北海道水産現勢(H19) 資料:北海道水産現勢(H19)

■水産品の輸送状況

出荷ピーク 8月~11月 【ほたて貝】 噴火湾、伊達方面へ 出荷時期 4月~7月 【すけとうだら】 釧路方面へ 出荷ピーク 11月~3月

【鮭】 釧路方面、本州(三陸)方面へ

鮭の水揚げ (羅臼町)

水産加工場

(釧路白糠工業団地内)

・ 阿歴内道路の整備による冬の輸送安全性の向上はもとより、地域高規格道路の全線整備で輸送時間短縮されることにより鮮度の高い魚を出荷できるようになることが期待されます。【羅臼町鮮魚買受人組合】

・ 加工原料となる魚を根室・網走のオホーツク海沿岸から集めているため、地域高規格道路の整備により時間が短縮された場合には、鮮度が向上するだけでなく時間短縮分を加工時間に振り替えることが可能となります。【水産加工事業所】

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「高次医療施設へのアクセス向上が見込まれます。」

釧路・根室地域の高度医療施設は釧路市に集積しており、3

次救急医療は市立釧路総合病院に依存しています。周辺地域で

は人口が減少しているにもかかわらず、釧路市への救急搬送は

約300件と横ばいで推移しており、当該路線整備の必要性が

高まっています。

当該路線の整備により、振動等による患者の負担等が軽減さ

れ、高度な医療機能を有する釧路市への救急搬送時における迅

速性、安定性・安全性の向上が図られます。 ■中標津町・標津町・別海町・羅臼町から釧路市への救急搬送ルート ■中標津町・標津町・別海町・羅臼町から釧

路市への救急搬送数

59 51 61 58 55 39 46

137121 103 113 139

120 104

5545 48 50

45

47 50

55

48 6680

8197

82

0

50

100

150

200

250

300

350

H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20

(件) 羅臼町 中標津町 標津町 別海町

資料:釧路開発建設部調べ

・三次医療機関に搬送する場合は脳疾患の人が多いため、搬送中の振動も悪影響を与え、揺れることの少ない道路となれば、患者さんの負担も少なくなると思います。

■診療科目数 : 23 科 市立釧路総合病院 ■病床数 : 647 床

【診療科目】

内科、消化器内科、心臓血管内科、呼吸器内

科、小児科、外科、心臓血管外科、整形外

科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人

科、耳鼻咽喉科、眼科、精神科、神経科、麻

酔科、リウマチ科、アレルギー科、放射線科、

リハビリテーション科、歯科、歯科口腔外科

【根室北部消防事務組合消防本部】 ・国道 272 号が地吹雪で通行止めになると、標茶町近くの国道 391 号も通行止めになることが多いため、約 40kmも長くなる海岸沿いの道路を迂回路として数回使用したことがあります。 【根室北部消防事務組合消防本部】

資料:中標津町 HP、市立釧路病院 HP

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「日常活動圏中心都市である釧路市へのアクセス向上が見込まれ、生活利便性の向上が期待されます。」

中標津町、別海町、標津町、羅臼町の住民の日常医療(通院・

入院)は、医療施設の充実した日常活動圏中心都市である釧路

市に依存しています。

当該地域の医療施設にはない診療科目もあることから、釧路

市への通院を必要とするケースもあり、特に入院を必要とする

患者の釧路市への依存率は約3割と高くなっています。

釧路市立総合病院と当該地域を結ぶ唯一の公共機関である路

線バスは年間約6万人が利用しており、生活交通を支える当該

路線では交通の安全性や確実性の確保が課題となっています。

当該事業の整備により、冬期の地吹雪による視程障害が解消

するとともに、釧路市へのアクセス向上が図られ、地域住民の

生活利便性向上が期待されます。

その他19.0%

釧路市28.2%

中標津町別海町標津町羅臼町

52.9%

入院平成18年5月

717人/月

中標津町別海町標津町羅臼町

78.5%

釧路市15.4%

その他6.1%

通院平成18年5月15,229人/月

■釧路市への通院ルート(中標津町・標津町・別海町・羅臼町)

■ 住民の受療状況

(中標津町・標津町・別海町・羅臼町)

・ 内科に通うために市立釧路総合病院へ月に2、3回通院しており、通行止めで通院できないと非常に困ります。

【羅臼町民】・ 産婦人科に月2回通院しています。

【別海町民】・ 釧路労災病院に通っています。予約通院

のため、予約日に行けないと、予約が無効になり困ります。【羅臼町民】

・ 小児科に検査と薬をもらうために道路を利用しています。通行止めがあると困ります。【別海町民】

・ 発表会や大会に参加するために釧路に行く場合がありますが、地吹雪に遭うと思っても欠場する訳にいかず、早めに出発していますがとても心配です。

【別海町民】

資料:患者受療動向調査 (平成 18 年 5 月)

■市立釧路総合病院-羅臼間路線バス利用客数

資料:阿寒バス株式会社ヒアリング結果

56,781

66,649

74,523 72,920

64,63661,250 63,168 64,720

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20

(人)釧路市への通院

は約2割

釧路市への入院

は約3割

資料:患者受療動向調査 (平成 18 年 5 月)

釧路労災病院

釧路市立病院-羅臼間バス 便 数:平日4往復/日 所要時間:約 3時間 50 分 ※主に通院などに利用する

生活交通路線に指定されている。

【中標津町・標津町・別海町・羅臼町にない診療科目】 ・心臓血管内科

・消化器内科

計 8科目

・心臓血管外科

・脳神経外科

・口腔外科

・形成外科

・呼吸器内科

・神経内科

資料:病院なび HP市立釧路総合病院

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「重要港湾へのアクセス向上が見込まれます。」

重要港湾に指定されている釧路港の年間取扱量は、平成19

年で約1,800万トンとなっており、基幹産業である酪農の

ための飼料や、冬期に欠かせない石油製品など、釧路・根室地

域の生活において重要な品目の供給拠点となっています。

釧路港の取扱貨物の約1割が石油製品であり、毎日当該路線

を利用して周辺町に輸送され1ヶ月の輸送量は約1万トンです。

当該事業の整備によって、釧路港とのアクセスの向上が見込

まれるとともに、冬期における物流の安全性・安定性の向上が

期待されます。

木材チップ11.7%

紙・パルプ

10.9%

石油製品

9.5%

石炭

8.1%その他

輸送車両

6.6%

その他

53.3%

取扱量1,843万t(H19)

石油製品70.8%

重油16.2%

セメント8.1%

LPG1.5%

木製品0.7% 化学薬品

0.2%動植物性

製造飼肥料2.4%

周辺町への搬出入の計1.4万トン/月

(H16.9)

周辺町:別海町、中標津町、標津町、羅臼町 資料:国土交通省「港湾調査(陸上出入貨物調査)(H16)」 H16.10 の 1 ヶ月調査の結果

■釧路港の貨物取扱量 ■釧路港の取扱貨物量の品目構成 ■周辺町への輸送状況

資料:北海道港湾統計年報(H19)

移入40.6%

移出33.1%

輸入25.8%

輸出0.6%104千トン

7,484千トン

6,094千トン

4,747千トンH19

釧路港年間取扱量

約1,840万トン

資料:北海道港湾統計年報(H19)

■石油製品の輸送状況 (1 ヶ月当たり)

■ 石油製品の釧路港から

周辺町への輸送割合

99.8%

99.7%

99.9%

99.9%

40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中標津町

別海町

標津町

羅臼町

石油製品の輸送

・中標津・別海方面(SS:6 箇所):輸送頻度:毎日 16~20k タンクローリー 2 台/日 ・羅臼・標津方面(SS:3 箇所):輸送頻度:毎日 16~20k タンクローリー 1 台/日

資料:国土交通省「港湾調査(陸上出入貨物調査)(H16)」

・ 釧路港から道東方面へ石油製品を輸送しています。石油製品は家庭用暖房利用の他、牛舎の暖房にも利用されるため、出来る限り輸送計画通りに配送できるよう努めています。阿歴内道路整備により、これまで雪や地吹雪に弱かった箇所が改善されるようになることが期待されます。

【石油製品輸送業者】

石油コンビナート(西港区)

燃料の搬入(中標津町)

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CO2排出量は、整備無しでは、780,577(t-CO2

/年)ですが、当該事業の整備により、780,273(t-C

O2/年)となり、整備されない場合に比べ、304(t-CO

2/年)の削減が見込まれます。

CO2削減量

304t-CO2/年

森林換算

約29ha

(札幌ドーム約5個分に相当)

※対象地域:釧路支庁・根室支庁

※平成 42 年将来交通量推計を基に算出

※森林のCO2排出量は10.6t-CO2/ha・年として試算

出典:『土地利用、土地利用変化及び林業に関するグッド・プラクティス・ガイダンス(優良手法指針)』

※札幌ドーム面積は建築面積5.5haを使用し換算

「自動車からのCO2排出量の削減が見込まれます。」

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3.事業の進捗の見込み

当該事業は、平成17年度に事業化し、平成19年度に用地

補償、及び工事着手しています。

今後の見込みについては、引き続き事業が順調に進んだ場合、

平成20年代前半の事業完了を予定しています。

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Page 13: 2)余裕時間の短縮による効果 ①便益算定の考え方 : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの交通量(台/日) TR ijl : 整備iの場合のリンクlにおける車種jの余裕時間(分)

地元自治体等で構成する北海道釧路地方総合開発促進期成会

より、事業促進を要望されています。

期成会等名称 会長 主な構成メンバー 要望内容

北海道釧路地方

総合開発促進期成会 釧路市長

釧路市、鶴居村、釧

路町、厚岸町、浜中

町、標茶町、弟子屈

町、白糠町

【要望内容】

物流拠点間のアクセス強化や

大消費地まで遠いというハンデ

ィ解消を図るため、高規格幹線

道路網を中心とした物流ネット

ワークの整備が不可欠であると

して、阿歴内道路を含む釧路中

標津道路の整備要望あり。

根室地方

総合開発促進期成会 根室市長

根室市、羅臼町、中

標津町、標津町、別

海町

【要望内容】

住民生活の利便性、産業振興・

観光開発の推進など地域の活性

化のため、根室・釧路圏の各都

市・空港・港湾の連携強化、災

害時の代替性確保のための、釧

根トライアングル整備構想を中

心とした道路網の整備を要望

(阿歴内道路を含む釧路中標津

道路の整備要望あり。)

釧根トライアングル

整備構想連絡会議 根室市長

釧路市、根室市、中

標津町、釧路町、厚

岸町、浜中町、標茶

町、弟子屈町、鶴居

村、白糠町、別海町、

標津町、羅臼町、北

見市、網走市、美幌

町、大空町など各市

町村の行政、議会、

各種経済団体など

【要望内容】

釧路・根室の両地域が人・物

の交流、観光、人々の生活を守

る緊急医療や災害発生時の協力

体制、教育文化施設の相互利用

など21世紀の新しい地域づく

りを進めるため、地域内の道路

ネットワーク(地域高規格道路

釧路中標津道路・阿歴内道路)

の整備要望あり。

4.関係する地方公共団体等の意見

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5.対応方針(案)

阿歴内道路は、釧路中標津道路の一部を形成することにより、

安全・安心な交通の確保と物流効率化の支援や個性ある地域の

形成、円滑なモビリティの確保に寄与する事業と考えられる。

以上のことを勘案すれば、「事業の必要性等」「事業の進捗

の見込み」「コスト縮減の取り組み」の視点により、当初から

事業の必要性、重要性は変わらないと考えられることから、事

業継続とする。

項目

安全地吹雪による通行止めの解消や視程障害の改善

農水産品の流通利便性向上

日常生活都市へのアクセス向上

重要港湾へのアクセス向上

暮らし 高次医療施設へのアクセス性向上

環境 CO2排出量の削減

 事業の進捗状況・ 見込み

(※)は、供用後50年間の便益額として試算した参考値。

 定性的な効果

・冬期の交通障害が解消され、安全性及び確実性が向上することが期待される。(当該事業区間の通行止実績:6回/7年)

活力

・乳製品や水産品の流通の利便性向上が期待される。(釧路・根室地域の生乳生産量:約130万t/年)

・周辺地域から釧路市へのアクセス向上が図られ、地域住民の生活利便性向上が期 待される。(周辺4町の釧路市への通院依存率約2割)

・重要港湾釧路港へのアクセス向上が見込まれるとともに、冬期における物流の安全 性・安定性の向上が期待される。(周辺4町への石油輸送は釧路港から約10割)

・高度な医療機能を有する釧路市への救急搬送時におれる迅速性の向上、安定性・ 安全性の向上が期待される。(周辺4町から釧路市への救急搬送282件/年)

・当該道路の整備により自動車からのCO2排出量304(t-CO2/年)の削減が期待 される。

 地域の特殊性を 考慮した便益の検討

冬期の視程障害解消による走行性向上効果 B=0.80億円(※)

便益試算値を考慮したB/C B/C=1.3(※)

余裕時間の短縮による効果 B=2.6億円(※)

細目 内容

 費用便益比(B/C)

B/C=1.2(事業全体)

B/C=2.0(残事業)

 3便益によるB/C   ・走行時間短縮   ・走行経費減少   ・交通事故減少

事業の進捗状況 ・平成21年度末見込みで、用地進捗率70%、事業進捗率58%。

今後の見込み ・引き続き事業が順調に進んだ場合、平成20年代前半の事業完成を予定。

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