2 化粧品 gmp の実施 · 2016. 10. 26. · 16 2 化粧品gmp の実施...

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2 化粧品 GMP の実施 この工場ではどのような化粧品を製造していますか? 当社では「化粧品製造販売業許可」及び「化粧品製造業許可」を取得しており、 本工場は多くの製品の受託製造(OEM を行い、多くの種類の製品を製造して います。一部、自社ブランドもあります。 次のような製品を製造しています。 基礎化粧品(スキンケア)として 化粧水、乳液、洗顔料、クリーム 仕上げ化粧品(メイクアップ)としてファンデーション、眉墨(アイ ブロー)、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、口紅、頬紅(チーク)、 白粉(フェイスパウダー)、マニキュア その他製品として 歯磨き、シャンプー、リンス、石けん(身体を洗う ための石けん) OEM Original Equipment Manufacturing(他社ブランドの製品を製 造)または Original Equipment Manufacturer (他社ブランドの製品を製 造する企業) 化粧品の種類

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  • 16

    2 化粧品 GMP の実施

    この工場ではどのような化粧品を製造していますか?

    当社では「化粧品製造販売業許可」及び「化粧品製造業許可」を取得しており、

    本工場は多くの製品の受託製造(OEM )*を行い、多くの種類の製品を製造して

    います。一部、自社ブランドもあります。

    次のような製品を製造しています。

    ・ 基礎化粧品(スキンケア)として 化粧水、乳液、洗顔料、クリーム

    ・ 仕上げ化粧品(メイクアップ)としてファンデーション、眉墨(アイ

    ブロー)、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、口紅、頬紅(チーク)、

    白粉(フェイスパウダー)、マニキュア

    ・ その他製品として 歯磨き、シャンプー、リンス、石けん(身体を洗う

    ための石けん)

    OEM*:Original Equipment Manufacturing(他社ブランドの製品を製

    造)または Original Equipment Manufacturer(他社ブランドの製品を製

    造する企業)

    化粧品の種類

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    「良い化粧品」の製造のための化粧品 GMP(自主基準)を施行する意義を教えて

    ください。

    「良い化粧品」とは、先に述べたように、設計どおりの化粧品を正しく製造し、し

    かもその品質が保証されていなければなりません。しかし、「良い化粧品」の評価

    は、出来上がった化粧品(最終化粧品といいます)の一部を抜取った検体の試験

    検査結果だけでは、その化粧品全体を保証することは出来ません。化粧品の品質

    は原料・資材受入・保管・製造・試験の工程の一連の流れで作り上げていかなけ

    ればなりません。そのためには、どうしても化粧品GMP(新自主基準)を正確

    に守り続けなければなりません。

    一般的な化粧品の製造の工程を次図に示します。

    確認検査

    原料・資材・保管の 秤量

    入荷

    出荷

    ここで化粧品 GMP(自主基準)の運用に際しての基本的なことを教えていただけ

    ませんか?

    判りました。 製造の担当責任者であります製造工程責任者に説明させます。

    化粧品GMP(自主基準)運用に際しての基本的な考えとして、「ハード」及び「ソ

    フト」という面からから先ず見直します。

    充填

    包装検査

    一般的な化粧品の製造工程流れ図

    製造

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    「ハード」とは施設・設備を指します。化粧品を製造するためには行政の基準で

    ある「薬局等構造設備規則」に適合し、衛生的な設備・施設で製造しなければなり

    ません。

    判りますね!

    皆さんが、食事をする際、食器が汚され、ゴキブリが目に付き、ハエが飛び交っ

    ている食堂で食欲はわきますか。不快感ばかりが募りますね。

    化粧品は、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え皮膚もしくは

    毛髪を健やかに保つ」機能を有するものです。荒れた皮膚に塗布することもあり

    ます。化粧品が微生物に汚染されたり、温度、湿度、紫外線等により品質が劣化

    し、それによって人体に悪い影響を及ぼす可能性もあります。また製品から虫や

    毛髪が検出されたら、皆さんはどう思いますか。二度とその製品を購入する気は

    しないでしょう。どのような衛生環境で製造しているか疑問に感じられる方も多

    いことでしょう。病原性微生物が混入の“おそれ”があれば、回収せねばならず、

    企業としての社会的信頼性は大きく損なう事になります。

    化粧品の製造は清潔で衛生的な環境下で製造しなければなりません。また製造に

    使用する仕込み水(生産用水)、機器を洗浄する洗浄水等が微生物で汚染されたも

    のであってはなりません。

    このように、先述した GMP3原則を遵守することは製造する上で必須の要件にな

    ります。

    また、立派な設備・施設を設けておれば、それで充分なのでしょうか?否、そう

    ではありません。よい設備・施設を運用するルールが必要です。

    作業所や設備の適切な衛生レベルを保持し、維持するため、「わが社ではこのよう

    な方法で定期的に清掃・保守点検する」というルールを策定し、行動する必要が

    あるのです。

    その他にも、他製品の成分の混入を防ぐため(異種混入)、各製造段階で製造に使

    用中の主要機器や運搬機具類・容器等に取扱っている製品の品名、ロット番号等

    を表示する決まりや、作業所の清掃、機械器具の洗浄の義務、作業者の健康状態

    の報告の決まり、作業室への関係者以外の立入禁止ルール、施設・設備の定期整

    備等々の約束ごとを書類に残し、またこれらのことを正確に実施した記録をとり、

    保管するなどを行います。これらの記録は、時には製造の正当性の証拠として管

    理することが必要です。

    化粧品 GMP(自主基準)ではこれらのルールを「ソフト」と称します。重要なこ

    とは、「ハード」と「ソフト」とが両車輪として運用していくことです。「ハード」

    が不足しているところは「ソフト」でカバーし、「ソフト」の不足は「ハード」で

    補う等、互いに補完し、連携しあって GMP の目的を達成していくということです。

    これらの関係摸式を下記に示します。

    製造工程

    責任者

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    化粧品 GMP(自主基準)

    文書類・記録 施設・設備 (ソフト) (ハード)

    化粧品 GMP(自主基準)の構成

    ソフト

    ハード

    すいません。基本的なことをお伺いします。 先ほど化粧品 GMP(自主基準)の

    ガイドラインについて解説されましたが、そのガイドラインはどのような条項で

    構成されていますか。簡単にご説明願えませんか。概略で結構ですが。

    これを委細説明するには相当の時間と根気が必要です。生産部門あるいは関連す

    る部署へ配属される方は、必ずや一度は目を通さなければならない基準書であり、

    特に製造に携わる人にとっては“バイブル”でもあります。

    その各記載条項について要求される事項を「原則」として纏めて記述しています

    ので、その解説について簡単に述べます。 我慢して聞いてください。

    本ガイドラインは ⒘条項より構成され、その内、第 1 条及び 2 条項は、適用範

    囲及び用語・定義であり省略いたします。それぞれの条項で要求されている原則

    で、概要を説明します。

    ハード

    ソフト

    化粧品GMP

    化粧品 GMP

    化粧品 GMP(自主基準)は

    ハードとソフトが互いに補完しながら回転する!!

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    第 3 条 従業員に関する原則

    所定の品質の製品を生産、管理及び保管する適切な教育・訓練を受けている

    こと。

    第 4 条 構造設備に関する原則

    構造設備は、①製品の保護を確保 ②清掃、衛生管理および保守が行える ③

    製品、原料及び包材の混同のリスクを最小限にすること。

    第 5 条 機器に関する原則

    機器は、本来の目的に適し、清掃し、衛生管理し、保守できるようにする。 こ

    のガイドラインの適用範囲内のすべての器機に適用すること。

    第 6 条 原料及び包装材料に関する原則

    原料及び包装材料は、最終製品の品質に関連して定められた判定基準に合致

    すること。

    第 7 条 生産に関する原則

    製造作業及び包装作業の各段階において、所定の特性を満たす最終製品を生

    産するように措置を講ずること。

    第 8 条 最終製品に関する原則

    最終製品は、定められた判定基準を満たすこと。 保管、出荷及び返品は最

    終製品の品質を維持できる方法で管理すること。

    第 9 条 品質管理試験室に関する原則

    「従業員」、「構造設備」、「委託」及び「文書化」について述べた原則を品質

    管理試験室に適用すること。

    第 10 条 規格外品の処理

    不合格となった最終製品、バルク製品、原料及び包装材料が対象。

    再加工した製品の判定基準に合致していることを品証責任者が照査する。

    第 11 条 廃棄物に関する原則

    廃棄物は、適時、衛生的な方法で処分する。

    第 12 条 委託に関する原則

    委託者と受託者の間で契約書又は合意書を作成し、相互確認し、管理するこ

    と。

    第 13 条 逸脱に関する原則

    逸脱は、決定を裏付ける十分なデータが必要。逸脱の再発防止の是正措置を

    行う。

    第 14 条 苦情及び回収に関する原則

    製造所に伝達された欠陥製品に関する苦情は、適宜照査、調査及び追跡を行

    う。欠陥の再発防止行う。製品の回収措置は定期的に評価を行う。

    第 15 条 変更管理に関する原則

    製品の品質に影響を及ぼす可能性のある変更は、十分なデータに基づいて品

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    質保証責任者が承認し、実施する。

    第 16 条 内部監査に関する原則

    内部監査は、化粧品 GMP の実施及びモニターし、必要な場合は、是正措置を

    提案するように計画された手順であること。

    第 17 条 文書化に関する原則

    各企業は、組織構造及び製品の種類に適した独自の文書システムを立ち上げ、

    設計し、備え付け、維持すること。

    化粧品の品質保証を、国内はもとより国際的にも信頼を得られるものにするには、

    本 GMP(ISO22716 自主基準) の遵守が必須です。

    本規範は、欧米、アジアなどの世界各国で国内法や自主基準などとして採用され

    ており、また、一部、法令への適用としている国もあります。 国外へ輸出をする

    業者にとってもこの規範の採用を欠かすことはできません 。

    ルールを決め、これを書類にするということですが、製造に関する書類にはどの

    ような書類が必要ですか?

    書類の作成にはルールがあるのですか?

    専門的になりましたね。

    皆さん。ちょっと聞いてください! 皆さん 良くチェンストアーのファースト

    フードの店に行きますね。どこの店に行っても同じ味で美味しいですね。これは

    どうしてでしょうか。これはね。美味しい料理を作り出すマニュアルが出来上が

    っているからです。

    例えば、「この原料は、仕込み量がどのぐらいで、どのぐらいの時間加熱、揚げ油

    の温度、時間、調味料の加減等」が決まっており、また出来上がった料理に対し

    て本社担当部では味をチェックしているから、何時も顧客に満足できる料理を提

    供できるのです。

    化粧品を製造する場合も同じです。製造に関連する決まりごとを事細かにルール

    (基準書を含む)化し、このルールを手順書にして関係者の承認を受けます。現

    場では、この手順書の記載事項を守って製造しなければなりません。化粧品 GMP

    (自主基準)運用を、医薬品 GMP 運用を参考にすると、基準となる文書はつぎの

    4文書である。

    ① 製品標準書は、品目ごとの製造方法、規格試験法、保管条件など製造管理

    及び品質管理に関するものです。

    ② 製造管理基準書は、化粧品の製造管理を適切に行うため、原料、製品等の

    保管及び設備機器、従業員、作業の管理に関するものです。

    ③ 品質管理基準書は、化粧品の品質管理を適切に行うため、原料、製品等の

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    検体の採取方法や試験検査の結果の判定方法及び判定結果を関連部門への

    伝達に関するものです。

    ④ 衛生管理基準書は、構造設備の衛生管理、職員の衛生管理その他

    必要な事項について記載したものです。

    一方、手順書は、設計どおりの品質の化粧品を製造するため、「要求されている手

    順書の項目に関連する業務を円滑に且つ適切に行える手順を明確にしたもの」で

    す。化粧品 GMP(新自主基準)で開示されています 23 種の手順書モデルを下表に

    掲示致します。

    GMP の花を咲かし、実がなるにはこれら標準書の記載内容ならびに手順書の記載

    事項を守り、実施することです。

    製造・品質管理(GMP)という

    美しい花瓶

    よい化粧品という美しい花

    1 組織に関する手順 9 製造作業手順書 17 逸脱手順書

    2 教育訓練手順書 10 包装作業手順書 18 苦情処理手順書

    3 構造設備維持手順書 11 規格外品処理手順書 19 回収手順書

    4 器機手順書 12 廃棄物手順書 20 変更管理手順書

    5 原料取扱、保管手順書 13 委受託手順書 21 内部監査手順書

    6 包装材料の取扱、保管手順書 14 品質管理試験室手順書 22 文書化手順書

    7 供給者の評価、選定手順書 15 最終製品出荷許可手順書 23 衛生管理手順書

    8 生産用水の品質管理手順書 16 最終製品保管管理手順書

    優れた手順書類

    優れた設備

    品質部門

    責任者

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    各々の化粧品にはその製品固有の特性があります。例えば、基礎化粧品である乳

    液を製造する場合、その原料・包装資材の特性、加工時の特性、充填時の特性、

    包装特性、保管特性、出荷特性、運搬過程の特性で決まります。なお、これらの

    品質特性は製品標準書に記載されています。これらの特性を縦糸とすれば、定め

    られた作業所での必要な実施事項、ここでは種々の運転操作手順書類が横糸にな

    ります。作業する人達は、これらの縦糸と横糸を織り交ぜて、製品規格に適合し

    た品質“布”を織り上げていく事になります。この関係を次の図で示します。

    標準書記載項目

    製品に関連する各特性(縦糸)

    横 製

    品 規 格

    設定したルールは当局の通知や市場のニーズ、日々の製造において抽出された改

    善テーマ、科学の進歩、経済性等から変更しなくてはならないことが生じますね。

    その場合はどうしますか?

    いい質問ですね!

    決めたルールは、当局の要求、科学の進歩、経済性等から時間経過によっては見

    直や変更しなければならない事態が発生することがあります。また、、作業過程で

    不都合な部分やおかしな点はないか等、評価し直さなければならないのです。そ

    のため、これらの現象が発生した時には、その現象の内容を正確に記録し、調査

    しなければなりません。

    従って、変更の実施に際し、変更が化粧品の品質に悪影響を及ぼさないかなどを

    事前に確認する必要があります。独断と偏見で、エイ ヤーと変更することは許

    されません。変更する際には、「その理由を明確にして、関係者の承認を得た上で、

    実施する」というルールを決めておくことが必要です。このように、基本はまず

    定められた手順書どおり正確に実施することです。

    記録も同じです。記録のつけ方にもルールがあるのです。決して鉛筆で記入して

    はなりません。鉛筆ではデータの改ざんや消えてしまう危険性があります。ボー

    製品規格

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    ルールは常に

    手入れをして

    大きく育てる

    ルペンなど消え難いものを使用しなければなりません。

    間違って記入したときは、訂正前の数字などが見えるようにして線を引き、正し

    い値を線のそば(上側あるいは下側)に記入し、日付と訂正者のサインの記入が

    必要です。

    化粧品 GMP(自主基準)を知らないで、化粧品を製造することは、道路法規を知

    らないで自動車を運転するようなものです。

    なお、ルールの見直しについて次の図で示すような手順に従って変更します。(専

    門的にはこれを PDCA サイクルあるいはデミングサイクルと申します)

    改善計画

    ルールの見直し ルールの設定

    評価・検討 実 施

    改 善 (A) 実 行 (D)

    記 録 チェック(C)

    ルール見直しの手順(PDCA サイクル)

    (P)