20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

26
学学学学学学学学学学学学学 学学学学学 学学 体: 学学学学学学学 学学学学 学学学学 GLOCOM 学学学学学 学学 学学学学 学学学学学学学学学学学学学学学学学 「」 2010.6.11. 学 学学学学学学学学学

Upload: tomoaki-watanabe

Post on 30-Jun-2015

322 views

Category:

Documents


6 download

TRANSCRIPT

Page 1: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

学会とウィキペディアの協力体制の模索:情報社会学会の

試み渡辺智暁

国際大学 GLOCOM 主任研究員・講師土木学会「応用力学ウィキペディアフォーラム」 

2010.6.11. 於:東京大学地震研究所

Page 2: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

自己紹介

・ウィキペディアとのかかわり・情報社会学会とのかかわり・研究者としてのフィールドと勤務先・そのほか(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)

Page 3: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

基本的なアイディア

・査読付きの論文を、ウィキペディアで利用させて頂くこと。

具体的な課題

・投稿規程のすりあわせ・文化ギャップ対策(説明など)・フロー、体制の確立・広報・拡張

Page 4: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

ウィキペディアの事情/都合

・出典として参照するだけでなく、文章をそのまま使わせてもらえるとより効率的。・専門家だからといって特別待遇できるわけでもない。・日本語圏では、オンラインで読める文献の量もまだ限られている。(ニュースサイトのアーカイブ、政府刊行物、シンクタンクの報告書、等々)・学者にとって業績になる査読つき論文は、ウィキペディアにとっても特にありがたいリソース

Page 5: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

研究者の都合

・学者にとってはウィキペディアへの参加は業績として評価されない。・各種の障壁:ルールやガイドラインを覚えないといけない/ウィキ記法を覚えないといけない/扱いにくい(相手にしたくないような)人がいる。・(一般に、ウィキペディアでの活動は、他の参加者以外から評価されづらい)・自著の論文が広く読まれるなら、悪い気はしない。

Page 6: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

情報社会学会

・情報化と共に変容する社会を研究する学会・オンライン Q&Aサイトやソーシャルブックマーク、ウィキペディアなどを扱った論文、ワークショップなども扱う

Page 7: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

本当に直接参加ではだめなのか?

・懸念材料は多い・応用力学Wikipediaプロジェクトが反証・「呼びかけておいてきちんと応対できないと申し訳ない」→「きちんと応対」を考え始めるとかなり大変・学者の中にはコラボレーションが得意でない人もいる

Page 8: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

ウィキペディアにおける専門家の待遇

・身元を明かすことを求められていない・「自称」専門家についても、証明する手立てに乏しい・専門家でもコラボレーションに向かない人がいる・英語版では著名な参加者の経歴詐称事件もあった

→特別扱いはしない。 他の参加者同様、貢献の内容、態度などによって判断する。

 「証拠が示されなくても専門家の意見だから尊重する」ということには必ずしもならない。

※とは言っても、何となく信用してしまう人もいる。 専門家であることを振りかざすと逆に懐疑的に受け止められることも。

Page 9: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

連携主な課題:・ウィキペディアとして希望する記事は、原著論文ではなく、レビュー・解説論文・私見・価値判断を抑えて書いてもらう必要がある・既存の項目と重複がない方が(権利処理等の都合上)便利・誰でも書き換えや二次利用をしてよい、というライセンスにも同意してもらう必要がある→ガイドラインとしてまとめ、執筆者に参照してもらっている。(現在テスト中)

Page 10: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

連携

その他の課題・自著論文の引用・参照は「バイアス」と見なされうる・法的な課題 - プライバシーや個人情報の扱い(私人の氏名、犯罪歴);引用の扱い等

  ※学会誌によくあるような「投稿者に責任を全面的に負わせる方式」とは異なるアプローチ

Page 11: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

連携

大まかなフロー

 ・WP 執筆案内 ・ IS 査読、掲載、ウィキペディアへの投稿 ・W  フォーマットなどの修正、その他の基準に照らした判断・修正

Page 12: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

その他の試み

・ウィキ記法やフォーマット、アカウント作成から投稿までの作業など、テクニカルな部分を扱う体験型のワークショップ(スケジュール調整中)

・ウィキペディアの文化、慣習、制度、ルールなどを扱うワークショップ(議論段階)

Page 13: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

背景にある問題意識

・ウィキペディアの成長・信頼性や品質の問題・専門家との関係

Page 14: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

ウィキペディアの成長規模の上では一人前(を通り越している)

ウィキペディア日本語版:約 65 万項目、 2-8 億語 ?世界大百科事典:約 8.3 万項目、 7,000 万字 (’88)                                  約 9 万項目 (’07)日本大百科全書:約 13 万項目エンカルタ 2007: 3.6 万項目、 4 千万字kotobank 48 万語;イミダス  18 万語http://www.kn-concierge.com/sedaiinfo/contents.htmlhttp://homepage3.nifty.com/ytt/sedai/image/ens_8-1.jpghttp://www.japanknowledge.com/contents/intro/cont_nipponica.html

Page 15: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

ウィキペディア英語版  300 万項目、 18 億語Encyclopaedia Britannica:   6.5 万項目、 0.44 億語

http://www.britannicastore.com/The-Encyclopaedia-Britannica-2010-Copyright/invt/printset10

ウィキペディアの成長

Page 16: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

品質に関する調査 質的には、同等か、それほど見劣りしない程度(正確性・網羅性)Nature (2005) Encyclopaedia Britannicaとの比較 自然科学系The Independent (2006)多分野Rosenzweig(2006) 複数の百科事典と比較;歴史分野Chesney (2006) 多分野Rector(2008) 複数の百科事典と比較;歴史分野Clauson   et al. (2008) 専門的リファレンスと比較;医薬品分野※Clauson et al. のみ、網羅性に大きな差を指摘。 ドイツの比較調査でも、ドイツ語版の質についてほぼ同等の結果

Chesney (2006). An empirical examination of Wikipedia’s credibility. First Monday, v.11, n.11 URL: http://firstmonday.org/issues/issue11_11/chesney/index.html

Giles (2005) Special Report: Internet encyclopaedias go head to head, Nature, v.438, pp.900-901 (15 December 2005)Hickman , Martin and Roberts, Geneviève (2006). Wikipedia under the microscope over accuracy. The Independent, February 13, 2006Rector(2008). Comparison of Wikipedia and other encyclopedias for accuracy, breadth, and depth in historical articles” Reference Services

Review v.36 n.1 pp.7-22.Rosenzweig, Roy (2006). Can history be open source? Wikipedia and the future of the past.   The Journal of American History, v.93, n.1

pp.117-46. URL: http://chnm.gmu.edu/resources/essays/d/42Clauson K.A., Polen H.H., Kamel Boulos M.N., Dzenowagis J.H. (2008). "Scope, completeness, and accuracy of drug Iinformation in Wikipedia"

The Annales of Pharmacotherapy 42(12) pp.1814-21

Page 17: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

(私見・感想)

・包括的な調査は存在していない。・実際に遜色ない質になっている記事が多くても不思議ではないかも。・日本語版のクオリティについては、英独と

同等とは考えられない。・編集過程でどういう問題が起こりうるかをつぶさに見た者としては、信じがたい気持ちもないではない。(ソーセージ問題)

Page 18: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

閲覧者の 94%が日本語版を信頼

 

 信頼性に関する評価

「十分信頼できると思う」

14.40 (%)

「まあまあ信頼できると思う」

79.92

「あまり信頼できないと思う」

5.27

 「全く信頼できないと思う」

0.41・  2006 年 インターネットコム株式会社・ gooリサーチ調査・サンプル: 20-50 代のネット利用者  1060人・内 47%にあたる閲覧経験者の意見の分布

Page 19: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

長期的な課題

  A)ウィキペディアの熱心な支持者  B) 広告・宣伝・売名に興味がある人  C) 政治・信条などを広めたい人ウィキペディアが有名になるにつれ、 B)、 C)の割合が増える。→対処は大変になる

※白紙化・落書きなどは大きな問題にならない

Page 20: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

ウィキペディアと専門媒体の競合

・知恵蔵  2007 年休刊・イミダス  2007 年休刊・Microsoft Encarta 2009 年販売終了

※いずれも専門家の手による有償のコンテンツ。

※知恵蔵オンラインは読者の参加も導入 ( 英語圏では Encarta、 Encyclopaedia

Britannicaも)

Page 21: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

競争の構図ウィキメディア財団: 40人弱のスタッフ、世界中の無償ボランティア、 200 言語以上で展開、無料提供、転載・転売・加工自由

世界屈指の人気サイト月間ユニーク訪問者数 3 億人程度2001 年発足

平凡社大百科事典:全 34 巻、 9 万項目、 7000 万字、 7000 名の執筆陣  35 万円での提供

→ウィキペディアの方が低コストで類似品を生産・提供できる

 が、「粗製濫造」にならないようにしなければ、社会にとっては損かも知れない。

  ※もうひとつの重要な課題は「情報リテラシーの強化」

Page 22: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

専門家への依存性

・ウィキペディアは、学説上の論争を展開・解決する場ではない。(それはアカデミアの役目)・ウィキペディアは、諸説を紹介する場所

有象無象の参加者がいる中で必然的に生じる編集方針上の意見対立

X… 実質的な議論によって解決O… 形式的な基準(信頼できる情報源に掲載されているか否か)に照らした判断で解決

Page 23: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

専門家への依存性

・ウィキペディアは、学術研究の成果を集約する場所ではあっても、成果を判断する場所ではない。・専門家集団の犯している間違いには、そのままウィキペディアも従う・クオリティ・コントロールの重要な部分は、学術雑誌の査読のような制度に依存している。

※学術研究以外に、報道に関してもほぼ同じことが言える。

Page 24: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

専門家の判断への依存性

・記載内容の取捨選択、特定の事象の形容の仕方などについて意見対立が起こる場合、「信頼できる情報源」に拠って解決する。・このような情報源を明示できないと、(自称)専門家の意見であっても採用されるとは限らない。

Page 25: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

まとめ

・ウィキペディアは低コストで、利便性の高い資料を生み出している・その量は市販の類似製品を大きく凌ぐものになってきている・品質には依然として気がかりな点がある・人気の点でも恐らくウィキペディアは無視できない存在になっている→専門家の手をより直接的に借りた取り組み

Page 26: 20100611 学会とウィキペディアの協力体制の模索

この資料のライセンスこの発表資料を 2種類のライセンスで提供し、利用者が選べるようにするために、利用許諾に関する注意書きを以下に記します。

・ この発表資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ )でライセンスされています。

・ この発表資料は、 CC-BY-SA 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ )でライセンスされています。

参考までに、本作品のタイトルは「学会とウィキペディアの協力体制の模索:情報社会学会の試み」で、原著作者は渡辺智暁です。本作品に係る著作権表示はなく、許諾者が本作品に添付するよう指定した URIもありません。