20131109 眼科専門医試験のために知っておきたい知識 @第2回 鴨川眼科研究会(kgk)...

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加藤 浩晃 京都府立医科大学 眼科 眼科専門医試験のために 知っておきたい知識 2013.11.9 第2回鴨川眼科研究会(KGK)

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Health & Medicine


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加藤 浩晃

京都府立医科大学 眼科

眼科専門医試験のために

知っておきたい知識

2013.11.9 第2回鴨川眼科研究会(KGK)

~眼科専門医試験のための~

眼科諸検査入門

今年の専門医問題から抜粋!

知っておきたい専門知識

<本日のMenu>

~眼科専門医試験のための~

眼科諸検査入門

<本日のMenu>

その① 視力検査

その② 屈折検査

その①

視力検査

まずは○×クイズから!

Q1 標準指標1.0のLandolt環の太さは外径の

20%である。

Q3 視力表の標準照度は、2000ルクスである。

Q2 視角が2分に相当する視力は0.2である。

視力 とは・・・

2点を2点として識別できる能力

判別可能な最小の2点がつくる視角=最小視角

視角 視角:単位(分)

視力=

1

最小視角(分)

視力検査 Landolt環を使用する

視力1.0の視標

視力検査 Landolt環を使用する

視力1.0の視標

視力=

1

最小視角(分)

1

1(分)

1.0=

視力検査 Landolt環を使用する

《測定条件》

①検査距離:5 m

②指標の明るさ:500±125 ルクス

③室内の明るさ:50 ルクス以上

(指標の明るさを超えない)

視力1.0の視標

視力=

1

最小視角(分)

1

1(分)

1.0=

視力の種類

①小数視力 :0.5、1.0など小数で表した視力

日本で使用、最小視角の逆数で表す

②分数視力 :20/20、4/6など分数で表わした視力

(分数を小数に直せば小数視力と同じ)、欧米で使用

③logMAR視力 :最小視角の対数をとった視力

視力が悪いほど値が大きい

logMAR視力=log最小視角=log

1

小数視力

視力検査表

①標準視力検査表 ③ETDRSチャート②logMAR視力表

低視力者のわずかな視力変化を検出できる

臨床試験で使用

10字多く見えれば2段階

15字多く見えれば3段階の視力改善

(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)

乳幼児・小児の視力検査

①PL法 ③OKN法

(視運動性眼振法)

②TAC法

(Teller Acuity Card)

④森実ドットカード⑥字ひとつ視力表⑤絵ひとつ視力表

(絵視標)

縞模様が水平に動くと

見えている目は視運動性眼振

縞が見えなくなったとき

視運動性眼振が消失

~2歳

2歳~ 6~8歳

では○×クイズの正解は

Q1 標準指標1.0のLandolt環の太さは外径の

20%である。

Q3 視力表の標準照度は、2000ルクスである。

Q2 視角が2分に相当する視力は0.2である。

正解は・・・○正解は・・・○正解は・・・○正解は・・・○

正解は・・・正解は・・・正解は・・・正解は・・・××××

正解は・・・正解は・・・正解は・・・正解は・・・××××

視力=

1

最小視角(分)

1

2(分)

0.5=

標準照度は500±125ラドルクス

その②

屈折検査

またまた○×クイズから!

Q1 若年には倒乱視が多い。

Q2 強主経線が垂直方向のものは直乱視である。

Q3 レフラクトメーターで測定すると強主経線は

R1として表示される。

まず、乱視って?

乱視 =網膜上で一点にピントを結ばない状態

正乱視 :円柱レンズ(凹レンズ)で矯正できる

不正乱視 :円柱レンズで矯正できない

円錐角膜、角膜移植術後眼など

円柱レンズ(凹レンズ)で矯正できる

正視 直乱視 倒乱視

強主経線

強主経線

正乱視

乱視軸

180°前後

(0~30°150~180°)

90°前後

(60~120°)

90°

180°

若年 高齢

他覚的屈折検査

①レフラクトメーター(レフケラトメーター)

②検影法(スキアスコピー/レチノスコピー)

検査距離:50cm

縦長の開散光の光を被験者の瞳孔に入れて水平に移動

②検影法(スキアスコピー/レチノスコピー)

検査距離:50cm

縦長の開散光の光を被験者の瞳孔に入れて水平に移動

②検影法(スキアスコピー/レチノスコピー)

検査距離:50cm

縦長の開散光の光を被験者の瞳孔に入れて水平に移動

②検影法(スキアスコピー/レチノスコピー)

検査距離:50cm

縦長の開散光の光を被験者の瞳孔に入れて水平に移動

+1、+2 ・・

- 1、 - 2 ・・

自覚的屈折検査

①乱視表(放射線乱視表)

正視 直乱視 倒乱視

ぼやけたところや明瞭なところがあるか?

均一に見える90°方向が明瞭

180°方向がぼやける

180°方向が明瞭

90°方向がぼやける

乱視軸 :ぼやけている方向に円柱レンズの軸を合わせる!

①乱視表(放射線乱視表)

正視 直乱視 倒乱視

ぼやけたところや明瞭なところがあるか?

均一に見える90°方向が明瞭

180°方向がぼやける

180°方向が明瞭

90°方向がぼやける

乱視軸 :ぼやけている方向に円柱レンズの軸を合わせる!

②クロスシリンダー法

0.5D=cyl-1.00D Ax90°

+ +

・乱視の検出

・乱視軸の決定

・乱視度数の決定

《やれること》

乱視の検出

クロスシリンダーの軸を90~180°、45~135°に置いて、

回転させて表裏を入れ替えてどちらがよく見えるか聞く

乱視軸の決定

見やすかった軸の方向に円柱レンズを装用させる

軸を挟むようにクロスシリンダーを回転させて

表裏どちらがよく見えるか聞く

乱視度数の決定

検眼枠の円柱レンズの軸とクロスシリンダーの軸を重ねて

クロスシリンダーを回転させて表裏の見え方を聞く

++

③赤緑テスト(red-green test)

赤地の黒図形と緑地の黒図形の

どちらの輪郭がはっきり見えるかを聞く

では最初の○×クイズに戻ると

Q1 若年には倒乱視が多い。

Q3 レフラクトメーターで測定すると強主経線は

R1として表示される。

Q2 強主経線が垂直方向のものは直乱視である。

正解は・・・正解は・・・正解は・・・正解は・・・××××若年には直乱視が多い

正解は・・・○正解は・・・○正解は・・・○正解は・・・○

強主経線

90°

正解は・・・正解は・・・正解は・・・正解は・・・××××強主経線はR2に表示される

今年の専門医問題から抜粋!

知っておきたい専門知識

<本日のMenu>

その① 屈折矯正

その② 緑内障手術

その①

屈折矯正

25B31

30歳の男性、近視性乱視に対して両眼のLASIKをうけた。

右眼の裸眼視力が低下したため追加照射を受けたが

視力が改善しないため来院した角膜形状解析の結果を示す。

視力低下の原因はどれか。

a ドライアイ

b keratectasia

c central island

d レーザー偏心照射

e diffuse lamellar keratitis

LASIK(laser in situ keratomileusis)

LASIK

Epi LASIK

角膜上皮を剥離しないので疼痛がほとんどない

LASIKでは上皮切開縁以外の実質の切開面では

ほとんど創傷治癒反応は起きない

⇒外傷による切開面の解離の可能性

追加照射が可能

フラップを作成した後の角膜切除にエキシマレーザーを使用

LASIK術後の合併症

① Diffuse lamellar keratitis(DLK)

層間の炎症細胞浸潤

最初は点状の白い混濁

発症頻度は5%

まれな病気ではない

※遅れると面状の混濁になりフラップが融解してしまう

【治療】 ステロイド点眼⇒内服⇒フラップ下洗浄

② フラップのしわ

視力には影響しないことが多い

しわが瞳孔領にかかり視力低下や

見えにくさの訴えがあるとき

→早期にしわのばし手術

LASIK術後の合併症

③ epithelial ingrowth(上皮迷入)

LASIK術後の合併症

角膜上皮のフラップ下への迷入

ゆっくり起きる、術後1~3ヶ月になって発見

まれにmelting(上皮細胞が実質細胞を溶かす)こともある

④ フラップ下感染

ブドウ球菌

LASIK術後の合併症

非定型抗酸菌症

フラップ下

斑状・顆粒状の白色混濁

※ニューキノロンはほとんど反応しない!

医療従事者にはMRSAが多い

★ keratectasia(医原性円錐角膜)

LASIK術後の合併症

角膜厚が薄くなったために角膜が前方突出してきたもの

PRKよりLASIKで起こりやすい

角膜厚を削り過ぎない!

円錐角膜疑いの患者には手術を行わない!!

LASIK適応検査

= Keratectasiaの予防

① 円錐角膜疑い患者の発見

TMSによる円錐角膜スクリーニング

≪正常角膜≫

Klyce/Maedaの方が感度が高い

② 角膜後面の異常

オーブスキャン

≪正常角膜≫

・後面エレベーションマップ

平均曲率半径55.0D以下

後面の前方突出47μm以下

中心の色調3色以内

・角膜厚470μm以上

③ 術後の角膜厚

レーザー照射後の角膜の厚みを250μm以上にする

角膜厚の測定精度には±25μmの測定誤差あり

⇒術前の計算上は術後予想される角膜厚を275μmは確保するべき

<レーザー偏心照射>

エキシマレーザー中の眼球運動などにより、

目的の位置からずれてレーザーが照射

された状態

<central island>

エキシマレーザーの照射中に生じたガスで、

レーザーが遮られて中央部の切除が不十分

になった状態

エキシマレーザーによる合併症

25B31

30歳の男性、近視性乱視に対して両眼のLASIKをうけた。

右眼の裸眼視力が低下したため追加照射を受けたが

視力が改善しないため来院した角膜形状解析の結果を示す。

視力低下の原因はどれか。

a ドライアイ

b keratectasia

c central island

d レーザー偏心照射

e diffuse lamellar keratitis

25B31

30歳の男性、近視性乱視に対して両眼のLASIKをうけた。

右眼の裸眼視力が低下したため追加照射を受けたが

視力が改善しないため来院した角膜形状解析の結果を示す。

視力低下の原因はどれか。

a ドライアイ

b keratectasia

c central island

d レーザー偏心照射

e diffuse lamellar keratitis

その②

緑内障手術

25B38

62歳の男性、開放隅角緑内障に対して上方から繰り返し

線維柱帯切除術を受けたが眼圧のコントロールが不良であった。

下方から緑内障手術を行った。眼圧は13mmHg。術後3日目

の所見を示す。今後注意すべきなのはどれか2つ選べ。

a 角膜形状

b 前房深度

c 前房フレア値

d 虹彩色素沈着

e 角膜内皮細胞密度

緑内障シャント手術

Baerveldtインプラント MeltenoインプラントAhmedバルブ

①チューブ(管)

②チューブ+房水確保のためのプレート

EX-PRESS(アルコン)

MeltenoインプラントAhmedバルブ

①チューブ(管)

②チューブ+房水確保のためのプレート

EX-PRESS(アルコン)

Baerveldtインプラント

緑内障シャント手術

EX-PRESS™(アルコン)

TLEに準じて作成した強膜弁下で前房に差し込む

TLEの強角膜トンネルの代わり

緑内障シャント手術

第3世代(前房型)

前房から結膜下へ房水を導くチューブ

+赤道部の結膜下で一定容積の空間を維持する円板

(欠点)角膜内皮障害、虹彩刺激症状

第4世代(後房型)

取水チューブを前房ではなく後房に入れる!

+赤道部には変わらず房水吸収のための円板を置く

硝子体手術をして、経毛様体扁平部濾過(pars plana

filtration)をできるようにする必要がある!!

緑内障チューブシャント手術

2013/3/18 バルベルト(前房型)

<2013年3月19日 術翌日>

2013/3/18 バルベルト(前房型)

0

10

20

30

40

50

60

2013/3/1 2013/4/1 2013/5/1 2013/6/1 2013/7/1 2013/8/1 2013/9/1 2013/10/1

2013/3/18 バルベルト(前房型)

<2013年3月~現在の経過>

Rd R6

Cr R4

Rd R4

コソプト R2

Cr R6

チューブを結紮しているバイクリルが切れるまで高眼圧期がある!

25B38

62歳の男性、開放隅角緑内障に対して上方から繰り返し

線維柱帯切除術を受けたが眼圧のコントロールが不良であった。

下方から緑内障手術を行った。眼圧は13mmHg。術後3日目

の所見を示す。今後注意すべきなのはどれか2つ選べ。

a 角膜形状

b 前房深度

c 前房フレア値

d 虹彩色素沈着

e 角膜内皮細胞密度

25B38

62歳の男性、開放隅角緑内障に対して上方から繰り返し

線維柱帯切除術を受けたが眼圧のコントロールが不良であった。

下方から緑内障手術を行った。眼圧は13mmHg。術後3日目

の所見を示す。今後注意すべきなのはどれか2つ選べ。

a 角膜形状

b 前房深度

c 前房フレア値

d 虹彩色素沈着

e 角膜内皮細胞密度