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トピックス1 2014年度上期の国内不動産売買取引額は 上期として過去最高に次ぐ水準に ��������� 2 トピックス2 大学のキャンパス再編に伴う 跡地活用・売却等の取組み概況 ���������� 6 マンスリーウォッチャー 全国的に地価は改善するも、早期に地価が上昇した 地域において地価の上昇率に鈍化がみられる 〜 2014年都道府県地価調査〜 ��������� 8 2014 11 November

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Page 1: November2014/07/01  · 2 November, 2014 みずほ信託銀行 不動産トピックス 2014年度上期の国内不動産売買取引額は 上期として過去最高に次ぐ水準に

トピックス1 2014年度上期の国内不動産売買取引額は上期として過去最高に次ぐ水準に����������2

トピックス2 大学のキャンパス再編に伴う跡地活用・売却等の取組み概況�����������6

マンスリーウォッチャー全国的に地価は改善するも、早期に地価が上昇した地域において地価の上昇率に鈍化がみられる〜2014年都道府県地価調査〜� ���������8

2014

11November

Page 2: November2014/07/01  · 2 November, 2014 みずほ信託銀行 不動産トピックス 2014年度上期の国内不動産売買取引額は 上期として過去最高に次ぐ水準に

2 November,�2014 � みずほ信託銀行 不動産トピックス

2014年度上期の国内不動産売買取引額は上期として過去最高に次ぐ水準に

株式会社都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査*1」によると、上場企業等が2014年度上期に公表した国内不動産の売買取引額は、上期実績として本調査開始以来の最高である2007年度上期に次ぐ水準まで増加しました。J-REITによる取得額が前年度同期に比べ減少する一方、海外のファンド・REIT等による物件取得が大幅に増加しました。

[図表 1-1]取引件数・取引額の推移取引件数は前年度同期に比べ大幅に減少

上場企業やJ-REIT等が2014年度上期(2014年4月〜 9月)に公表した国内不動産の売買取引件数は490件、取引額は2兆1,486億円でした。取引額は、上期実績としては本調査開始以来の最高額である2007年度上期(2兆1,659億円)に次ぐ額となりましたが、取引件数は前年度同期(580件)に比べ16%減少しました[図表1-1]。

J-REIT の取得額は全体の3分の1に

2014年度上期は、「J-REIT」の取得額が7,130億円と前期(9,569億円)に比べ25%減少し、取引額全体に占める割合は3分の1に縮小しました。2013年度は新規上場に伴う物件取得が上期(2,426億円)、下期(3,351億円)と多くみられましたが、2014年度上期は1,490億円にとどまったこと、また、不動産価格が上昇する中、低利回りの物件取得は配当利回りの低下につながるため、取得が難しい環境になってきたことなどが要因と考えられます[図表1-2、4]。海外のファンド・REIT 等の取得額・売却額がともに4千億円超海外のファンド・REIT等の取得額が4,183億

円、売却額が4,563億円と、売買ともに活発でした。高額事例としては、森トラストが米国ローンスターグループから「目黒雅叙園」等の土地・建物を取得しました。取得額は1,300億円程度とみられています。森トラストのプレスリリースでは、取得先は「雅秀エンタープライズ、合同会社ケーアイエーワン」と記載されています。また、米国ラサール インベストメント マネージメント インクが運用するファンドが、川崎市の物流施設3棟を米国フォートレス・インベストメント・グループのSPCから約550億円で取得するなど、売主、買主ともに海外のファンド等の事例もみられました[図表1-2〜 4]。

2014 年度上期の不動産売買取引額は 2 兆 1,486 億円

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

* 1:不動産売買実態調査は、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基づき東京証券取引所に開示されている固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などに公表された情報から、上場企業等が譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売却理由などについてデータの集計・分析を行っています。なお、本調査では、情報開示後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っています。

本集計では、海外所在の物件は除いています。また、今回の集計から以下のようにデータ整備方法を一部変更しました。(1)「外国のファンド・REIT等」の区分を以下のように変更しました。・�海外の投資資金を中心に組成したと思われるSPCやファンド(例:ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、AIG等あるいはそのグループ会社等が組成・出資したSPC・ファンド)・�海外REIT等(シンガポール、豪州等のREITやLPT)・�日本の株式市場に上場している、または上場していた法人(セキュアード・キャピタル・ジャパンなど)は除いている

(2)大規模複合建物の用途別取引状況を把握するため、取引額 300 億円以上の複合建物については、用途別取引額を延床面積等による按分で算出しました。

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14

取引件数

下期 上期

(件)

(年度)

(年度)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14

取引額 (億円)

下期 上期

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3みずほ信託銀行 不動産トピックス � November,�2014

[図表 1-2]買主業種セクター別取得額割合の推移

[図表 1-4]業種セクター別取得額・売却額の推移

[図表 1-3]売主業種セクター別売却額割合の推移

データ出所:�図表1-2〜 1-4は都市未来総合研究所�「不動産売買実態調査」(業種不明は除く)

0% 20% 40% 60% 80% 100% 08上期 08下期 09上期 09下期 10上期 10下期 11上期 11下期 12上期 12下期 13上期 13下期 14上期

J-REIT SPC・私募REIT等 事業法人・公共等・その他 海外のファンド・REIT等

建設・不動産 (年度)

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期

J-REIT

取得額 売却額 買越額

(億円)

(年度)

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期

SPC・私募REIT等

取得額 売却額 買越額

(億円)

(年度)

-15,000

-10,000

-5,000

0

5,000

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期

建設・不動産

取得額 売却額 買越額

(億円)

(年度)

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期

事業法人・公共等・その他

取得額 売却額 買越額

(億円)

(年度)

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期

海外のファンド・REIT等

取得額 売却額 買越額

(億円)

(年度)

-10,000

-5,000

0

5,000

10,000

0% 20% 40% 60% 80% 100% 08上期 08下期 09上期 09下期 10上期 10下期 11上期 11下期 12上期 12下期 13上期 13下期 14上期

J-REIT SPC・私募REIT等 事業法人・公共等・その他 海外のファンド・REIT等

建設・不動産 (年度)

国内の企業・ファンド等

J-REIT J-REIT

SPC・私募 REIT 等 SPC、 私募 REIT 等

建設・不動産 建設、 不動産

事業法人・公共等・その他

製造業 素材型、 組立加工型、 その他

運輸 ・通信 陸運、 海運、 空運、 倉庫・運輸、 通信

商業 小売業、 卸売業

金融 ・保険 銀行、 保険、 証券 ・商品先物、 その他金融

サービス 電気・ガス、 サービス

その他の事業法人 水産・農林、 鉱業、 医薬品

公共等・その他 公共、 公共等、その他法人、 個人

海外のファンド ・REIT 等 海外の企業、 ファンド、 REIT 等

業種セクター区分は以下のとおり(図表 1-7 も同じ)

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4 November,�2014 � みずほ信託銀行 不動産トピックス

ホテルの取引額は2,253億円

用途別では、ホテルが取引件数(61件)、取引額(2,253億円)とも大幅に増加しました。取引額は2013年度の年間取引額(1,542億円)を既に上回っています[図表1-5]。昨年7月に上場した星野リゾート・リート投資法人が、スポンサーである星野リゾートグループや米国ローンスターグループのSPC等から24件(約184億円)の物件を取得しました。資産運用ガイドラインを一部変更してホテルを中心的な投資対象に加えたインヴィンシブル投資法人が、米国フォートレス・インベストメント・

2014年度上期の東京その他17区における取引額は約4,400億円となり、全体取引額の21%を占めています。また、三大都市圏以外のその他(地方圏)の取引額が、2013年度上期の1,422億円から2013年度下期は3,607億円、2014年度上期は2,750億円と高水準で推移しています[図表1-6上]。立地別取引額を用途別にみると、東京その他17区では目黒雅叙園(約1,300億円)の取引が大きく寄与し、商業施設、ホテルの取引額は他の地域を上回り、事務所ビルも1,500億円を上回りました。地方圏ではホテル、商業施設、土地の取引額が大きな割合を占めています[図表1-6下]。

ホテルの取引件数・取引額がともに大幅増加

東京都心 6 区を除く17 区の取引額が全体の 21%を占める

グループ関連のSPC等から20件(約454億円)の物件を取得しました。また、ヒューリックが東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート(300億円超)と銀座アイタワー(メルキュールホテル銀座東京、100億円超)を取得しました[図表1-5]。

住宅は取引件数、取引額とも2期連続減少

一方、住宅は2013年度上期から2期連続して、取引件数、取引額ともに減少しました。特に、2014年度上期の取引件数は78件と、前年度上期(188件)に比べ110件減少したことが、全体の取引件数の減少に大きく影響しました[図表1-5]。

[図表 1-5]用途別取引件数 ・ 取引額の推移

[図表 1-6]立地別取引額

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」(その他用途、用途不明は除く)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」(立地不明は除く)

0

100

200

08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14

<取引件数>

事務所ビル

住宅

商業施設

ホテル

倉庫・物流施設

土地

(件)

(年度)上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期

<取引額>

08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14

事務所ビル

住宅

商業施設

ホテル

倉庫・物流施設

土地

(億円)

(年度)上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期

0

4,000

8,000

12,000

<立地別取引額の推移> 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

その他東京圏 大阪圏 名古屋圏 その他

(年度)

(億円)

都心3区 都心隣接3区 東京その他17区

08上期08下期09上期09下期10上期10下期11上期11下期12上期12下期13上期13下期14上期

<2014年度上期立地別取引額> (億円)0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500

大阪圏

名古屋圏

その他

事務所ビル 住宅 商業施設 ホテル 倉庫・物流 土地

都心3区

都心隣接3区

東京その他17区

その他東京圏地域区分は以下のとおり(図表 1-8 も同じ)

東京 23区都心 3区 千代田区、中央区、港区都心隣接 3区 新宿区、渋谷区、品川区東京その他 17区 東京 23区から上記 6区を除いた 17区

その他東京圏 東京 23区を除く東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県大阪圏  大阪府、京都府、兵庫県、奈良県名古屋圏 愛知県、三重県、岐阜県その他 地域 上記以外

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5みずほ信託銀行 不動産トピックス � November,�2014

住宅の取引件数が大きく増加した前年度の上期・下期と2014年度上期を比べると、東京圏(図表1-8では、都心3区、都心隣接3区、東京その他17区、その他東京圏の合計)の占める割合は62%〜67%と、大きな差はありませんでした。その他(地方圏)の件数割合は、前年度上期・下期が2割前後ありましたが、2014年度上期は9%にとどまった分、名古屋圏の割合が上昇しました[図表1-8]。住宅の価格規模は、10億円未満の件数割合が前年度上期は51%でしたが、2014年度上期は34%に低下する一方、50億円以上が14%に上昇しました[図表1-9]。結果として、2014年度上期の住宅の平均取引額は、本調査開始以来初めて20億円を上回り、23億円となりました[図表1-10]。

(以上、都市未来総合研究所 佐藤 泰弘)

住宅の平均取引額が 20 億円を上回る

J-REIT による住宅取得件数が大幅に減少

[図表 1-10]住宅:平均取引額の推移

[図表 1-8]住宅 : 立地別取引件数割合の推移

[図表 1-9]住宅:価格規模別件数割合の推移

[図表 1-7]住宅 : 買主セクター別取引件数・取引額の推移

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」(立地不明は除く)

データ出所:図表1-9〜 1-10は都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

(複数物件の価格しか公表されていないものは除く)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」(業種不明は除く)

2014年度上期に売買取引件数が大きく減少した住宅について、その背景は以下のとおりです。買主セクター別では、J-REITの取得件数が31件と大幅に減少したのが目立ちます[図表1-7左]。2013年度上期、下期には、住宅系J-REITがスポンサー企業やブリッジファンドからまとまった件数の物件を取得した事例が多数みられました。しかし、2014年度上期に上場した2法人のうち、インベスコ・オフィス・ジェイリート投

資法人の投資対象は大規模オフィスビルであり、日本リート投資法人も主な投資対象はオフィスビルであるため、上場時に取得した住宅は7物件(約180億円)にとどまりました。一方、2014年度上期の住宅の取引額は、前年度の上期・下期に比べ減少したものの、1,785億円と高水準でした。J-REITの取得額は758億円に減少しましたが、その他のセクターはいずれも前期を上回りました[図表1-7右]。

08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14 (年度)上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期

<住宅:買主セクター別取引件数> (件)

J-REIT

SPC・私募REIT等

建設・不動産

事業法人・公共等・その他

海外のファンド・REIT等

40

0

80

120

その他東京圏 大阪圏 名古屋圏 その他

(年度)

都心3区 都心隣接3区 東京その他17区

08上期08下期09上期09下期10上期10下期11上期11下期12上期12下期13上期13下期14上期

0% 20% 40% 60% 80% 100%

(年度)

08上期08下期09上期09下期10上期10下期11上期11下期12上期12下期13上期13下期14上期

0% 20% 40% 60% 80% 100%

10億円未満 10億円以上50億円未満 50億円以上100億円未満 100億円以上

0

10

20

30

08 上期

08 下期

09 上期

09 下期

10 上期

10 下期

11 上期

11 下期

12 上期

12 下期

13 上期

13 下期

14 上期 (年度)

(億円)

08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14 (年度)上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期

<住宅:買主セクター別取引額> (億円)

0

500

1,000

1,500J-REIT

SPC・私募REIT等

建設・不動産

事業法人・公共等・その他

海外のファンド・REIT等

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6 November,�2014 � みずほ信託銀行 不動産トピックス

大学のキャンパス再編に伴う跡地活用・売却等の取組み概況大学のキャンパス再編に伴い、移転跡地等の活用・売却等の方策をどうするかは当該大学にとって

重要な課題になるものと考えられます。以下、キャンパス再編に伴う跡地活用・売却等の取組み概況を事例に基づいてご紹介します。

首都圏、近畿圏の既成市街地における工場及び大学等の新規立地等を規制した工業(場)等制限法※1の2002年7月の廃止と、それに伴う文部科学省による大学学部設置の抑制方針の撤回以降、両都市圏では、大学キャンパスの新設、移転などの再編事例が多数みられます。文部科学省「学校基本調査」に基づいて、1都3県と近畿2府5県における2002年度と2013年度の立地大学数(国公私立合計)の増減を都府県別にみると、東京都(特に区部)の増加が著しく、次いで大阪府が多くなっています[図表2-1]。東京都における市区別の特徴として以下の事柄や事例が挙げられます[図表2-2左]。

◆�郊外から東京都心へのキャンパス移転等による千代田区、文京区における大学数の増加。◆�東京の主要ターミナル駅があり、神奈川、埼玉など近接県からも交通アクセスが良好な品川、渋谷、豊島の各区における大学数の増加。◆�手狭となった都心キャンパスを、区部の中で立地・敷地条件等が当該大学のニーズに適合した場所へと移転・新設したことによる江東区、足立区などにおける大学数の増加。他に、既存キャンパスの再開発で高度利用

を図る事例や、複数あるキャンパスを集約・統廃合する中でキャンパス跡地の一部または大半を売却したり賃貸する事例などがあります。(P7-で詳述)大阪府において市町別にみると、大阪市、次

いで堺市で大学の増加数が多くなっています[図表2-2右]。また中心部である大阪市以外に枚方市、茨木市でも大学数が増加しています。両市は、大阪府内からのみならず京都、兵庫など近接する

[図表2-2]東京都(左図:市区別)、大阪府(右図:市町別)における立地大学数(2002・13年度)

[図表2-1] 1都3県と近畿2府5県における立地大学数(2002・13年度)

データ出所:図表2-1、2-2のいずれも文部科学省「学校基本調査」

キャンパス再編の跡地等を財務負担軽減策や地域再生等の核拠点づくりなどに活用

※ 1:本稿では「工業等制限法」と「工場等制限法」の二つを総称する意味で「工業(場)等制限法」と表記する。前者の正式な名称は「首都圏の既成市街地における工業等制限に関する法律」、後者は「近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律」である。

(注 1):大学数は本部の所在地による。国公私立大学の合計数。図表 2-1 の東京都は、区部と市部を分けて表示した。(注 2):大学数の採録年度は、工業(場)等制限法が廃止された 2002 年度を起点とし、直近の 2013 年度を終点とした。(注 3):�紙面の制約上、大阪府は 2013 年度に 2以上の大学数がある市町、東京都市部は 2013 年度に 3以上の大学数がある市を選択して

グラフ化した。

0

2

4

6

8

10

12

立地大学数(国公私立合計)

(校)

大阪市

堺市

東大阪市

枚方市

茨木市

吹田市

熊取町

高槻市

寝屋川市

大東市

柏原市

2013年度 2002年度

0

2

4

6

8

10

12

14

16

東京都 市部

立地大学数(国公私立合計)

(校)

千代田区

中央区

港区新宿区

文京区

渋谷区

豊島区

品川区

大田区

目黒区

世田谷区

杉並区

練馬区

中野区

板橋区

北区台東区

墨田区

荒川区

江東区

足立区

葛飾区

江戸川区

八王子市

町田市

三鷹市

小平市

武蔵野市

調布市

多摩市

東京都 区部

2013年度 2002年度

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100 (校)

立地大学数(国公私立合計)

東京都

区部

東京都

市部

神奈川

埼玉

千葉

大阪

兵庫

京都

奈良

三重

滋賀

和歌山

2002年度 2013年度

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7みずほ信託銀行 不動産トピックス � November,�2014

[図表2-3]大学のキャンパス再編に伴う跡地活用・売却等の事例

データ出所:各大学の事業計画書、事業報告書等および新聞報道等の公表資料に基づき都市未来総合研究所作成

(注 4):表中の個々の事例に複数の大学が該当する場合や、一つの大学が複数の事例に該当する場合がある。(注 5):【3】に該当する大学が跡地等の活用方策を検討した結果として、上記【1】や【2】に該当する取組みを選択する可能性はあり得る。

府県からも概ね1時間半以内で通学できる立地条件にあることや、両市に立地していた大手製造業による工場統廃合等に伴い大学キャンパスに用途転換が可能な大規模画地が近年供給されたことなどが、大学の立地要因になったものと考えられます。茨木市では2015年度にも京都を本拠とする大学のキャンパスが新たに開設される予定です。大学拠点の移転や統廃合等に伴い移転後の跡地等の活用・売却等の方策をどうするかは当該大学にとって重要な課題になるものと考えられます。大学拠点の再編事例を、東京都、大阪府の

みならず地方中核都市にも範囲を広げて収集�し、再編後のキャンパスや施設をどうするかの視点から、事例を以下の三つに大別・整理しました�[図表2-3]。【1】�キャンパスや施設等の資産を元にした資金調達(主に資産の売却)。移転跡地等を売却し、それで得た資金を新しいキャンパス整備に充当する取組み。

【2】�移転後のキャンパスや施設を賃貸することで、中長期にわたる収入を確保して経年的に大学経営を支える取組み。

【3】�今後の活用方策を自治体など地域と連携・協力して中長期スパンで計画、策定する取組み。

【1】と【2】に該当する各大学においては、大学拠点の移転、統廃合等の再編にあたり、跡地等の売却や賃貸等による収入でキャンパス整備等に伴う財務上の負担をできる限り軽減しようとする姿勢がうかがえます。背景には18歳人口が減少し、大学間の学生獲得競争が激化する中、足下の支出を増してでもキャンパス整備等の設備投資を進める大学が少なくないことや、大学全般の財政状況が厳しさを増す中で収支バランスの維持や改善が多くの大学における経営課題になっていることなどが挙げられます。【3】においては、大学と自治体など地域が協力して、跡地等の今後の活用方策を複数の視点から検討する取組みがみられます。このような大学と地域による連携した取組みを通して、今後、例えば地域再生・活性化の核となる拠点等の形成が進むものと考えられます。

(以上、都市未来総合研究所 池田 英孝)

跡地等活用・売却方策 個別大学・法人による事例の概要【1】�跡地となる資産

を売却して資金調達

移転跡地を売却し、その資金を新しく整備するキャンパスへの設備投資に充当する取組み

◆�約 20年前に学部等を郊外へ移転した大阪市内中心部のキャンパスを売却するとともに、大阪駅至近に土地建物を新たに取得して社会人教育などの拠点を設ける。両物件の取引価格は概ね同水準。同大学は、「中心部の旧キャンパスの活用策を長年模索したが有効策なし。近隣の土地需要の動向から判断して不動産売却の好機と判断。同時に大阪駅至近に大学側のニーズに適する物件を確保できた。」◆�地方中核都市の中心部にあるキャンパス狭隘化等のため、外周部への移転プロジェクトを推進中。10ヘクタール近くの跡地を一括売却するため一般競争入札方式とし、小売企業が200億円超で落札。同大学は、「この売却に目途が立ったので、移転先の新キャンパス整備事業の更なる推進が期待できる。」◆�地方中核都市の中心部3地区に分散して立地するキャンパスの老朽化等に伴い、既存キャンパス内での再開発は敷地狭隘化や航空機騒音等の事情から限界があるため、外周部に統合・移転するプロジェクトを推進中。同統合・移転プロジェクトでは、中心部のキャンパス跡地の売却で得る資金で新キャンパスの施設整備費を賄うことを基本原則としている。◆�狭隘化した東京都心キャンパスを都区部に移転。跡地の大半を売却し、新キャンパス整備資金等に充当した。

【2】�跡地となる資産の所有を継続し、賃貸で経年的に資金を調達

移転後のキャンパスや施設を賃貸することで、中長期にわたる収入を確保して大学経営を支える取組み

◆�郊外キャンパスから東京都心キャンパスへの大学機能集約を進めている。郊外キャンパスから大学機能を移転した後、複数の余剰土地を小売企業等へ賃貸している。また東京都心でも賃貸ビルを取得して収益事業を行っている。◆�郊外キャンパスの移転跡地の一部に30年超の定期借地権を設定し、地元自治体に小学校用地として賃貸する方針。◆�廃止した短大の既存学生寮を、収益事業用として賃貸マンションに転換したことで、一定の安定収入を得て経営を支えている。

【3】�今後の活用方策を複数の視点から検討

今後の活用方策を自治体など地域と連携・協力して中長期スパンで計画、策定する取組み

◆�郊外キャンパスの大学機能の大半を東京都区部のキャンパスに移転する。移転跡地の一部は大学施設として活用するが、残りの大半について地元自治体と大学とが連携しながら跡地活用策を検討する。◆�郊外キャンパスの大学機能を都心外周部のキャンパスに移転する。今後、中期経営計画や事業計画において跡地利用計画を策定する。◆�大学の当初計画では埼玉県に立地する郊外キャンパスの大学機能を東京都心に移転し、教育・研究機能は廃止する予定であった。自治体からの教育・研究機能を維持することへの要望や、同自治体とのこれまでの良好な関係を踏まえ、大学は郊外キャンパスの廃止を見直すとともに新学部を設置。当該キャンパスの再開発の構想もある。

Page 8: November2014/07/01  · 2 November, 2014 みずほ信託銀行 不動産トピックス 2014年度上期の国内不動産売買取引額は 上期として過去最高に次ぐ水準に

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不動産トピックス 2014.11発  行 みずほ信託銀行株式会社 不動産業務部 〒 103-8670 東京都中央区八重洲 1-2-1 http://www.mizuho-tb.co.jp/編集協力 株式会社都市未来総合研究所 〒 103-0027 東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル 11 階 http://www.tmri.co.jp/

全国的に地価は改善するも、早期に地価が上昇した地域において地価の上昇率に鈍化がみられる�〜 2014年都道府県地価調査〜

[図表3-2]地価公示との共通調査地点における半年ごとの圏域別地価変動率の推移

[図表3-1]都道府県地価調査における圏域別対前年変動率の推移

データ出所:図表3-1、3-2とも国土交通省「都道府県地価調査」

2014年9月に公表された都道府県地価調査では、地価の上昇地点数の割合が全国的に増加しています。三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では、住宅地の2分の1弱の地点、商業地の3分の2強の地点でそれぞれ上昇しています。三大都市圏では、住宅地の地価は昨年までの下落から上昇に転じ、商業地の地価全ての地点でも昨年に引き続き上昇しています。その一方で、前回の地価下落から上昇への転換期�4カ年(2004年〜 2007年)と今回の転換期4カ年(2011年〜 2014年)を対前年変動率で比較すると、三大都市圏では住宅地、商業地ともに前回の4分の1程度の%ポイントの改善幅となっています[図表3-1]。東京都心部などを中心とした一部の地域において、投資不動産への需要増加による地価上昇がみられますが、2006年から2007年の急激な地価上昇とは異なり、全体的には1年あたりの改善・上昇は小幅です。また、地価公示との共通調査地点における6ヶ月毎の変動率は、すべての圏域で改善・上昇が続いていますが、直近の2時点(2014年1月1日時点と2014年7月1日時点)で比較すると、三大都市圏での上昇率は住宅地が0.1ポイント、商業地が0.2ポイントで共に減少、名古屋圏では住宅地が0.3ポイント、商業地が0.4ポイントの減少となり、地価が早期に改善・上昇した地域において上昇率の鈍化がみられます[図表3-2]。

(以上、都市未来総合研究所 大重 直人)

-10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0

0.0 2.0 4.0 6.0

全国 三大都市圏 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方圏

住宅地

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

(%)

住宅地

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

全国 三大都市圏 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方圏

2010/1/1~2010/7/1

2010/7/1~2011/1/1

2011/1/1~2011/7/1

2011/7/1~2012/1/1

2012/1/1~2012/7/1

2012/7/1~2013/1/1

2013/1/1~2013/7/1

2013/7/1~2014/1/1

2014/1/1~2014/7/1

(%)

全国 三大都市圏 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方圏

商業地

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0 (%)

商業地

全国 三大都市圏 東京圏 大阪圏 名古屋圏 地方圏

2010/1/1~2010/7/1

2010/7/1~2011/1/1

2011/1/1~2011/7/1

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(%)

-3.0

-2.5

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