2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性

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Health & Medicine


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Page 1: 2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性
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ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるスピロノラクトンについては、中等症~重症( NYHA 分類でクラス III または IV )の収縮期心不全患者の全死因死亡と心血管イベントによる入院を減らすとの報告がある。エプレレノンも、左室収縮機能障害と心不全を合併した急性心不全患者の全死因死亡と心血管イベントによる入院のリスクを低減することが示されている。こうしたデータに基づき、現行のガイドラインでは、中等症~重症の慢性収縮期心不全患者と、心筋梗塞に心不全を合併した患者に対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の投与を推奨している。そこで今回、軽症の慢性収縮期心不全患者に対するエプレレノンの有効性と安全性を調べるため、二重盲検の無作為化試験を実施することとなった。

BACKGROUND

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METHODSStudy Patients

登録条件は、( 1 ) 55 歳以上、( 2 ) NYHA 分類でクラス II( 3 ) 駆出分画が 30 %以下(または、 30 %超 35 %以下で、心電図の QRS 間隔が 130msec 超)( 4 ) ACE 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬( ARB )のいずれかまたは両方と β 遮断薬が併用されており、推奨用量または最大耐用量投与されている( 5 )過去 6 カ月間に心血管イベントによる入院歴がある(または入院歴はないが血清 BNP 値が 250pg/mL 以上、もしくは NT-proBNP が男性で 500pg/mL 以上、女性では 750pg/mL 以上)とした。

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主要な除外基準・急性心筋梗塞・ NYHAⅢ またはⅣの心不全・血清 K 値≧ 5.0mmol/l  ・ eGFR30ml/m 未満・カリウム保持性利尿薬を必要とする患者・他の臨床的に重大な合併症のある患者  etc.

METHODSStudy Patients

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・エプレレノン群とプラセボ群への割り付けはコンピュータ化無作為化システムを用いて行った。・エプレレノンは一日一回 25mg から開始し、 4 週後に一日一回 50mg に増量した( eGFR が 30-49ml/m であった場合は 25mg を隔日で開始し、その後連日とした)。

METHODSStudy Procedures  ( randamized, double b- plasebo-)

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・患者は 4 ヶ月毎に評価され、血清 K 値が 5.5-5.9mmol/lの場合、試験薬の投与量を減量し、血清 K 値が6.0mmol/l 以上の場合は中断された。・試験薬が減量あるいは中断された場合は 72 時間以内に再検し、血清 K 値が 5.0mmol/l 以下となった場合に限り再開となった。

METHODSStudy Procedures

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Primary outcome心血管系が原因の死亡、または心不全による入院からなる複合イベントSecondary outcome心不全による入院、全死因死亡、心血管死亡、あらゆる原因による入院など( table2 参照)

METHODSStudy Outcomes

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当初の試算では 2584 名の登録が予定されたが、予想されたよりイベントが少なく、プロトコールが修正されサンプルサイズ 3100 名まで増加された( 2009 年 6 月) 。 中間解析でエプレレノン群の優位性が示され 2010 年 5月 25 日をもって試験中断となった( 2011 年 10 月に終了すると見積もられていた。) 

METHODSStatistical Analysis

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Outcome ITT 解析、 Kalpan-Meier 解析、 Cox 解析を使用し、  主要患者背景で調節した多変量モデルで解析された。

2 群間の背景 連続変数→ t 検定 カテゴリー変数→Fisher 検定 感度解析は Cox単変量モデルで行われた 20 のサブグループ解析が Cox 解析で行われた NNT 解析も施行

METHODSStatistical Analysis

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2006.3.30 ~ 2010.5.2529 カ国 278 施設で 2737人の患者を対象にし、1364人をエプレレノン群に 1373人をプラセボ群に割り付けた。

RESULTSStudy Patients

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EF が 30 %超 35 %以下で、心電図の QRS 間隔が 130msec 超の条件に該当したのは エプレレノン群 : 45人( 3.3 %) プラセボ群 : 51人( 3.7 %) 入院歴はないが血清 BNP 値が 250pg/mL 以上、もしくは NT-

proBNP が男性で 500pg/mL 以上、女性では 750pg/mL 以上 エプレレノン群 : 195人( 14.3 %) プラセボ群 : 190人( 13.8 %) 2 群間の有意差があったのは DM,心臓再同期療法の既往のみでそ

の他全て有意差なし

RESULTSStudy Patients

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容量調整局面後、 5 ヶ月の時点において高容量( 50mg )を投与されていたのはエプレレノン群: 60.2 %プラセボ群 : 65.3 %また、同時点での平均の投与量はエプレレノン群: 39.1±13.8mgプラセボ群 : 40.8±12.9mg

RESULTSStudy-Drug Administration and Follow-up

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・試験は追跡期間の中央値が 21 カ月になった時点で、エプレレノンの利益が明らかになったとして早期中止された。・試験打ち切り時点で、試験薬を中断となっていたのは エプレレノン群: 222人( 16.3 %) プラセボ群 : 228人( 16.6 %)・無作為化から最終投与日までの期間の中央値は エプレレノン群: 533 日 プラセボ群 : 494 日

RESULTSStudy-Drug Administration and Follow-up

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Fig.1   Death from cardiovascular causes or hospitalization for heart failure

RESULTSStudy Outcomes

356人(25.9%)

249人( 18.3% )

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RESULTSStudy Outcomes

213人(15.5%)

171人( 12.5% )

Fig.2   Death from any cause

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RESULTSStudy Outcomes

491人(35.8%)

408人( 29.9% )

Fig.3   hospitalization for any reason

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RESULTSStudy Outcomes

253人(18.4%)

164人( 12.0% )

Fig.4   hospitalization for heart failure

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RESULTSStudy Outcomes

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複合イベントを 1 年間に 1 件減らすための治療必要数 (NNT) は 19人( 95 %信頼区間 15-27人)。 1 年間の 1 死亡を遅らせるための治療必要数は

51人となった。 サブグループ解析も行ったが、エプレレノンの利益はどの患者群にも一貫して認められた (Figure2参照 )

RESULTSStudy Outcomes

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RESULTSsafety

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・軽度の収縮期心不全( NYHAⅡ クラスの症状)を有する患者において、推奨される治療にエプレレノンを追加することによる効果を評価した結果、複合イベントを経験したのはエプレレノン群: 249人( 18.3 %) プラセボ群: 356人( 25.9 %)調整後ハザード比は 0.63 ( 95 %信頼区間 0.54-0.74 、 P< 0.001 )。・複合イベントを 1 年間に 1 件減らすための治療必要数は19 ( 15-27 )になった。・サブグループ解析も行ったが、エプレレノンの利益はどの患者群にも一貫して認められた。

Discussion

Page 22: 2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性

エプレレノンなどミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの心不全患者に対する心血管保護作用のメカニズムは完全には解明されていない。アルドステロンとコルチゾールの両者によるミネラルコルチコイド受容体の活性化は心不全の病態生理に重要な役割を果たしており、心不全患者ではミネラルコルチコイド受容体は過剰発現している。 ACE 阻害薬、 ARB 、 βブロッカーを用いた治療にもかかわらず、軽症の心不全患者は持続的にアルドステロンおよびコルチゾールのレベルが上昇していることがあると報告されている。

Discussion

Page 23: 2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性

ミネラルコルチコイド受容体の活性化は、実験モデルにおいて心臓の線維化を促進することが示されており、心不全や心筋梗塞後の患者においてミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストは細胞外基質のターンオーバーを減少させると報告されている(心筋のリモデリングを抑制している)。実験や臨床試験はミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストが心不全の進行においていくつかの重要なメカニズムに関与していることを示唆している。

Discussion

Page 24: 2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性

エプレレノンを投与された患者では想定通り、高カリウム血症の発生率の増加を認めた。これにより、経時的にカリウム値を測定し、それに応じたエプレレノンの容量の調節の必要性が強調された。今回の研究では高カリウム血症のリスクを最小限にするためにK≧5.0mmol/L および eGFR≦30ml/m の患者を除外した。一方で、低カリウム血症のリスクはエプレレノン群で有意に減少した。この事実は「収縮期心不全患者では K≦4.0 の状態があらゆる死亡リスク増加に関与する」という点において重要である。

Discussion

Page 25: 2016.6.24 軽度の心不全患者におけるエプレレノンの有効性

・今回の研究では 55 歳以上、 EF≦30 、最近の入院歴などといった心血管系リスクの増加因子を持った患者を対象としたため、すべての軽度の症状を有した患者に当てはめることはできない場合がある。・試験が早期中止されたことは治療効果の過大評価につながる可能性がある。

LIMITATION

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推奨される治療に加えてエプレレノンを用いると、収縮期心不全で軽度の症状を示す患者の死亡リスクと入院リスクが低下すること。また、すべての死亡率、心血管系が原因の死亡率、すべての入院率、心不全による入院率についても同様に低下することを示した。

CONCLUSION