2019年 技術シーズ集 - aist...2019/05/01  · シーズ集巻頭言...

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生活環境における 健康増進 健康状態の可視化 医療機器の高度化と レギュラトリーサイエンス Health Research Institute 健康工学研究部門 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 2019年 05 月 技術シーズ集 健康 工学 百歳を健康に生きる

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Page 1: 2019年 技術シーズ集 - AIST...2019/05/01  · シーズ集巻頭言 健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても 過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

生活環境における

健康増進健康状態の可視化

医療機器の高度化と

レギュラトリーサイエンス

Health Research Institute

健康工学研究部門国立研究開発法人 産業技術総合研究所

2019年05月技術シーズ集

健康工学

百歳を健康に生きる

Page 2: 2019年 技術シーズ集 - AIST...2019/05/01  · シーズ集巻頭言 健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても 過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

シーズ集巻頭言

健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても

過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

なく、日々の生活で心身ともに疲れず前向きに時には幸せを感じながら生きて

いく状態で、本研究部門は、「100歳を健康(幸)に生きる技術開発」と定義

付け、その実現に向けて研究開発を推進しています。

具体的に次の3つの研究課題(戦略課題)に取り組んでいます。

(1)医療機器の高度化とレギュラトリーサイエンス

(2)健康状態の可視化

(3)生活環境における健康増進

本研究部門は、このような研究課題を遂行する上で、四国、つくばを拠点とし、

地域産業ニーズを踏まえつつ、生命科学の分野だけでなく産総研が保有する複

合領域において健康関連産業創出への貢献を目指します。

ここに取りまとめたシーズ集は、当部門で得られた最近の成果を中心に、比較

的産業応用に近い技術を選びました。企業研究者、経営層の方々は勿論、一般の

方にもわかりやすく作成いたしました。是非、広くご活用いただくことをお願い

申し上げます。

令和元年5月1日

健康工学研究部門長

達 吉郎

Page 3: 2019年 技術シーズ集 - AIST...2019/05/01  · シーズ集巻頭言 健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても 過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

技術シーズ一覧 本冊子には、約 30件の技術シーズを収録しています。以下の技術マップから、

目的のシーズをお探し下さい。

生活環境における健康増進

健康状態の可視化

100歳を健康に生きる技術シーズ 技術マップ

(アウトカム)

光ピンセットE-02細胞ソータH-03

細胞操作技術

医療機器の高度化とレギュラトリーサイエンス

QOL向上・疾病の予防 疾病の診断・治療

ヒト

ヒト検体

生活環境

計測技術

糖質検出蛍光磁気ビーズD-01

機能評価系

生物発光レポーターH-01

(

技術の対象)

体外診断

医療機器

バイオ医薬

糖蛋白生産H-02

ナノ粒子有害性評価G-01有害イオン捕捉G-02銀系抗菌剤G-04

リスク評価・除去

薬機法ソフト開発A-01

穿刺補助機器A-03金属ナノ粒子A-02

音波で弾性率測定A-04

高適合性歯科補綴装置C-03

流体力学・血液適合性B-01動圧浮上遠心血液ポンプB-02血液凝固検出光センサB-03再生医療・無菌技術C-01

インプラントC-02

HbA1C識別SERS E-01紙の診断チップE-06細胞チップF-01POCTチップF-02抗体固定化F-03

●技術シーズの特徴

1 ヒトおよび生活環境因子を扱う

2 基礎から製品化まで取り組む

3 モノづくりと計測技術で「健康」に貢献

ナノ粒子有害性評価G-01有害イオン捕捉G-02銀系抗菌剤G-04

リスク評価・除去索引グループ別-番号

A-01

技術シーズ(キーワード)

技術

凡例

Page 4: 2019年 技術シーズ集 - AIST...2019/05/01  · シーズ集巻頭言 健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても 過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

技術シーズの活用

当部門の技術シーズや技術基盤をもとに、産業界や大学・公的研究機関、国・

自治体と連携して、ライフイノベーションに貢献します。ケースに応じた方法で

取り組みます。

・技術相談 必要に応じて秘密保持契約も可能

・特許ライセンス、ノウハウ開示 産総研の知財等を実施

・共同研究、委託研究、受託研究 分担を決めて研究を実施

・ベンチャー化 産総研自らが企業化

・プロジェクト形成 国等の研究プロジェクトに共に参画

本冊子は、当部門の技術の一部です。技術シーズ以外についても、関連する

技術分野で連携が可能です。ご相談ください。

連絡先 E-mail:[email protected]

生活環境における健康増進

健康状態の可視化

100歳を健康に生きる技術シーズ 技術マップ

(アウトカム)

光ピンセットE-02細胞ソータH-03

細胞操作技術

医療機器の高度化とレギュラトリーサイエンス

QOL向上・疾病の予防 疾病の診断・治療

ヒト

ヒト検体

生活環境

計測技術

糖質検出蛍光磁気ビーズD-01

機能評価系

生物発光レポーターH-01

(

技術の対象)

体外診断

医療機器

バイオ医薬

糖蛋白生産H-02

ナノ粒子有害性評価G-01有害イオン捕捉G-02銀系抗菌剤G-04

リスク評価・除去

薬機法ソフト開発A-01

穿刺補助機器A-03金属ナノ粒子A-02

音波で弾性率測定A-04

高適合性歯科補綴装置C-03

流体力学・血液適合性B-01動圧浮上遠心血液ポンプB-02血液凝固検出光センサB-03再生医療・無菌技術C-01

インプラントC-02

HbA1C識別SERS E-01紙の診断チップE-06細胞チップF-01POCTチップF-02抗体固定化F-03

技術シーズをもとにした製品・サービスのビジョン(例)

迅速なマラリア診断

長期耐久性と優れた血液適合性を持つ補助循環ポンプ

次世代バイオ医薬製造技術

血栓を外から光で検出低コストで医療診断

生物発光を利用して機能・毒性を測定

がん細胞を見逃さない

安全な水の確保

3Dプリンタでカスタムメイド医療

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索 引

つくばセンター・つくば東

・薬機法とガイドライン対応のソフト開発キット SCCToolKit ········· A-01

・金ナノ粒子で複合体を合成し放射線照射で活性化 ················· A-02

・針穿刺メカニズムと制御技術による穿刺補助 ····················· A-03

・再生軟骨組織を破壊せず、弾性率を瞬時に測定 ··················· A-04

・循環器系医療デバイスの流体力学解析・血液適合性評価 ··········· B-01

・長期耐久と優れた血液適合へ 動圧浮上遠心血液ポンプ ··········· B-02

・循環器デバイスの血栓を外から光学的に検出する ················· B-03

つくばセンター・つくば中央第6

・無菌接続技術 多様で柔軟な再生医療用細胞の培養加工 ··········· C-01

・患者にやさしい次世代型インプラントの開発と実用化 ············· C-02

・3次元レーザ積層造形技術を用いた高適合性歯科補綴装置 ·········· C-03

・蛍光性磁気ビーズを用いた糖質の高感度検出 ····················· D-01

四国センター

・表面増強ラマン散乱分光によるグルコースヘモグロビン識別 ······· E-01

・光学顕微鏡下の非接触 3次元マイクロ操作を自動化 ··············· E-02

・低コスト医療診断を実現する紙・フィルム・テープチップ ········· E-06

・細胞チップを用いた臨床診断と細胞機能解析への応用 ············· F-01

・マイクロチップ基板上での抗原抗体反応系の構築 ················· F-02

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・単純な構造のプラスチック製マルチ抗原抗体反応チップ ··········· F-03

・培養細胞による工業ナノ粒子の有害性評価技術 ··················· G-01

・有害イオンを捕捉する各種無機イオン交換体 ····················· G-02

・塩水中で使用可能な銀系抗菌剤 ································· G-04

・生物発光レポーターを利用したセルベースアッセイシステム ······· H-01

・免疫機能性素材の探索と開発 ··································· H-02

・レーザー光圧力を使ったマルチ細胞ソーター ····················· H-03

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関連特許および文献

・MITライセンスによるフリーオープンソースとして公開 http://scc.pj.aist.go.jp ・Chinzei K. et.al., MIDAS Journal (online) (2013) http://hdl.handle.net/10380/3422 ・鎮西清行、日本コンピュータ外科学会誌、14(3), 190-1 (2012)

・医用画像・HDTV映像処理を中心とするソフトウェア医療機器の開発と法規制対応 ・スマートフォン・タブレットとの連携システムの構築 ・医療機器以外の分野でも、一品制作システムの開発にも有効(遠隔監視など)

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

SCCToo lK i t は、OpenCV を拡張した 画像処理ライブラリ(ソースコード)です。内視鏡、エコー等の映像、CT、MRI等の医用画像・映像処理が主なアプリケーションです。サンプルプログラムとして内視鏡ビデオ映像プロセッサ等が含まれています。技術的特徴は、 - 安価・小型・簡単:汎用 PCを活用します。 - 実時間性:HDTV 映像取得から表示まで 0.1 秒の遅れ時間を達成。

- HDTV映像キャプチャ機器(Blackmagic Design社)に対応。

- Mac(macOS) - iOS アプリ化予定 産総研は SCCToolKitを使う「ヘルスソフトウェアの開発に関する基本的考え方」「GHS開発ガイドライン」に準拠したソフト開発をアシストします。

つくばセンター・つくば東

研究のねらい

医薬品医療機器法(薬機法)では単体ソフトウェアが規制の対象となりました。汎用のパソコン(PC)が医療機器に「変身」すると、破壊的な価格で製品供給が可能になります。

一方、法規制への対応で求められる技術水準、法規制の範囲外のソフトに望まれる技術水準や、汎用 PC等を活用するコツは明らかでありませんでした。

SCCToolKitは、医用画像・映像処理を中心とするソフトウェア開発キットです。ソースコードはオープンソースで公開、そして添付文書ひな形、リスクマネジメント文書等を開示します。

SCCToolKitによる「価格破壊」例

SCCToolKitによるシステム構築例

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 A-01

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つくばセンター・つくば東 研究のねらい

ナノ粒子の生物学、環境、光電子工学応用が広がるなか、ナノ粒子の物性評価技術、機能化技術、外部環境や外部エネルギーとの相互作用解明が重要課題となっている。

ナノ粒子に光、超音波、放射線を照射し、光吸収、散乱、振動、電子等を発生させる試験系と評価系を構築している。

一例として、金ナノ粒子を放射線照射で励起して、活性酸素を発生させ、放射線治療効果を高める研究を進めている。

関連特許および文献

・X線治療用増感剤(特 5182858)出願日 2007/12/26・J. Takahashi, M. Misawa, Int. J. Radiation Biol., 92-12,pp.774-89, 2016.・Misawa M, et al, J. Nanomedicine, 7(5), pp. 604-14, 2011.

・がん治療(光線力学療法、温熱療法等)、バイオマーカー検出等の医療応用・太陽電池の増感、有害ガスの分解低減、環境浄化等の省エネ環境技術応用・質量分析等の理化学機器の高感度化

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

金ナノ粒子に高エネルギーX線を照射すると、光電効果によって、光電子や Auger電子を発生する。この電子は、溶媒中の酸素を励起して、 活性酸素を発生する。 5~30nmの金ナノ粒子をがん細胞の核近傍に送達できれば、核を損傷してがん細胞にダメージを与えることができる。金ナノ粒子を腫瘍特異的に、がん細胞に集積させたあとに放射線照射することによって、細胞レベルで放射線感受性をコントロールできるので、取りすぎや取り残しのない新しい放射線治療が実現する。この技術では、塩濃度の高い生理環境中でナノ粒子を安定的に分散させ、金ナノ粒子をがん細胞特異的に取りこませ、核の近くに送達する技術がカギとなる。 本研究では、金ナノ粒子にこのような機能を付加するため、サイズ、電荷、吸着分子等の物性評価

とコロイド分散化技術、生体分子、タンパク、ペプチド等の接合技術、可視化のための標識化技術を開発し、in vitro および in vivoでの検証を行っている。この技術開発を通じて、分子標的型造影剤とナノ粒子増感剤による放射線治療をシームレスにつなぐセラノスティックス技術構築を目指している。

金ナノ粒子の腫瘍集積と放射線照射

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 A-02

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つくばセンター・つくば東

関連特許および文献

・特許第 5464426号、特許第 5751588号、特許第 5780517号;穿刺針刺入装置・Koseki, Coaxial Needle Insertion Assistant for Epidural Puncture, Proc. IROS2011・Nakagawa, Histological observation for Needle-Tissue Interactions, Proc. EMBC2013

・安全な穿刺が必要とされる硬膜外や深部静脈、肝臓など・針穿刺のトレーニング機器の開発や穿刺手技の評価など・針穿刺のバイオメカニクス、解析など

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

針の手応えは皮膚を切り開く力と皮膚との摩擦により決まります。本機器は切開力を摩擦力から分離し、切開抵抗だけを提示することで貫通を分かり易くします。針には内針が外針で覆われた二重針を用います。内針の側面を外針が覆うことで、摩擦力が内針にかかるのを妨げます。本機器が外針を押し、術者が内針を押すことで術者は切開力だけを感じることができます。 本機器で貫通が分かり易くなることを人間工学実験により検証しました。また、ディスポーザブルに適したプロトタイプを開発しました。 針穿刺機序を解析して、針穿刺に関する

様々な問題の解決に取り組んでいます。

穿刺補助装置の原理

ディスポ―ザブルなプロトタイプ

研究のねらい

針穿刺は小さな傷で、簡便、安価に薬液を体内に入れたり、血液や組織を採取したりできるため、最も広く頻繁に行われる手技です。

しかし、体内深部への穿刺においては、針先端が血管等に到達したかが分かり難く、安全で正確な針穿刺には熟練が必要です。

本研究では針が組織を貫通するときの手応えに着目し、その手応えを分かり易く使用者に提示することで、正確な注射を助ける穿刺補助機器を開発しました。

・空気圧駆動,制御弁

(非電気制御駆動)

・低価格化,大量生産,

使い捨て可能

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 A-03

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つくばセンター・つくば東

・製造業(その他製品)、医療・福祉業・再生医療用材料等の力学特性の非破壊評価・生体組織の力学特性に対する超音波計測

期待される連携・応用分野

研究のねらい

再生医療においては、移植される再生医療材料や無二の再生組織の力学特性を把握することが必要不可欠であり、これらを非破壊・非接触で測定できる方法が求められています。

本研究では再生軟骨を対象とし、その足場材料や培養組織の製造ラインでも使えるように、超音波を利用した非接触式の弾性率測定装置を開発しました。

本技術では実時間測定も可能となるために全数品質評価を実現でき、再生医療等製品の開発における高効率化にも貢献することが期待されます。

関連特許および文献

・Jpn. J. Appl. Phys., 51 (7), (2012) 07GF15・Jpn. J. Appl. Phys., 52 (7), (2013) 07HF24・いばらき医工連携推進事業(H24)により実施

新規技術の概要と特長

一般に弾性率を得るには、力と変位の関係が必要です。本研究では、この力の発生に超音波を利用し、変位の計測にLDV(レーザードップラー速度計)を利用します。超音波を再生軟骨組織に加えてそのときの変位信号を計測し、必要な信号処理及び校正を経て、弾性率が算出されます。 写真(右)は、試作した非接触式弾性率測定装置

です。試料皿の上に、測定対象となる試料を置くだけで弾性率が算出されるような構成としています。超音波発振や変位データの取得から、弾性率の算出やその経時変化のモニタリングに至るまで、PCを用いた処理を行います。 軟骨模擬材料や実際の再生軟骨組織(動物実験に

おいて培養、摘出されたもの)等を用いた実験を行い、本試作装置の有効性を確認しています。

非接触・実時間弾性率測定装置(試作)

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 A-04

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関連特許および文献

・西田ほか、可視化情報、33(131)、127-132、2013・西田ほか、ターボ機械、43(7)、394-402、2015・Maruyama, et al. 、Artificial Organs、29(4)、345-348、2005

・連携分野:製造業(医療機器)、製造業(精密機械)・応用分野:医療デバイス、人工臓器

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

私たちは、数値流体力学解析、流れの可視化実験、動物血を用いた血球破壊試験や血液凝固試験、および耐久性試験など、体外循環ポンプを開発する上で必須となる種々評価試験法を確立し、その評価結果が生体で再現することを確認しました。そして、これら評価試験結果を元に、体外循環ポンプの迅速かつ高い信頼性のある最適流体設計を実現しました。 これらを活用して、種々の循環器

系医療デバイスの開発・製品化とその承認申請に必要な試験データの提供にも実績を挙げています。

つくばセンター・つくば東 研究のねらい

従来、循環器系医療デバイスの開発には、流体性能と血液適合性の設計と検証に多くの費用と期間が必要であり、血液適合性評価は、動物実験に頼らざるを得ませんでした。

ところが、現在では、流れ解析、あるいは動物実験を代替するベンチ試験によって開発期間の短縮化が可能になりました。

私たちは、数値流体力学解析と流れの可視化実験、血球破壊と血液凝固のベンチ実験、さらには長期耐久性試験の結果を基に、動物実験を代替する迅速な最適流体設計を支援します。

医療機器

耐久性評価 血液適合性評価

流れの解析評価

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 B-01

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関連特許および文献

・特許第 5794576号; 遠心血液ポンプ・特許第 4866704 号; 遠心血液ポンプ・Kosaka R他, Artif Organs, 38(9), 733-740(2014)

・非接触駆動可能な遠心血液ポンプや透析ポンプ・摩耗粉を発生しない産業用ポンプ・食品、培養液や薬液の輸送用ポンプ

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

開発した動圧浮上遠心血液ポンプは、長期耐久性と優れた血液適合性を実現することを目的に、非接触式軸受である動圧軸受を採用しています。動圧軸受とは、羽根車とケーシング間の狭くなる軸受隙間に流体が入り込むことで生じる局所圧を利用して羽根車をセンサレスで浮上させる軸受です。開発ポンプでは、羽根車の上面と下面、内周面の 3 箇所に動圧軸受を採用しています。産総研で開発した動圧浮上遠心血液ポンプの特長

は、羽根車に作用する力のバランスを釣り合わせるポンプ形状とすることで、産業用の動圧軸受の軸受隙間数μmに比べて、非常に大きい軸受隙間 150μm以上を実現することができることです。血液ポンプにおいて、血液適合性に重要な軸受隙間を広げることにより、アクリル製の試作血液ポンプを使用して、市販血液ポンプよりも優れた血液適合性と、1ヶ月の非接触駆動を確認することが出来ました。

研究のねらい

心臓手術時や手術後の数時間から数日使用可能な従来の補助循環ポンプから、埋込型人工心臓を適用するまでの数ヶ月使用可能な長期補助循環ポンプが必要とされています。

従来の補助循環ポンプは、短期使用が前提である接触式の軸受を採用しているため、軸受の磨耗や、軸受部での溶血や血栓形成などの血液適合性に課題が残っています。

非接触軸受である動圧軸受を血液ポンプに応用することで、ポンプ内の羽根車を非接触で回転駆動させ、長期耐久性と優れた血液適合性を持つ補助循環ポンプを実現することが出来ます。

図 1 開発した動圧浮上遠心血液ポンプ

つくばセンター・つくば東

図 2 動圧浮上遠心血液ポンプの内部構造

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 B-02

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関連特許および文献

・特開 2017-150966(2017/08/31) ・D Sakota et al., Biomedical Optics Express, 98(1),190-201, 2019 ・D Sakota et al., Artificial Organs, 38(9) , 733-740, 2019

・血液適合性評価を含む医工連携 ・血栓梗塞症(心筋梗塞, 脳梗塞等)の非侵襲診断、ヘルスケア技術 ・心臓血管外科手術、術後管理技術

期待される連携・応用分野

研究のねらい

心疾患は国内死因の第2位であり、心疾患患者の救命に使用される心肺補助装置では、血栓や過剰な抗凝固薬投与による出血の問題が全体の約30%を占めています。

本研究は、循環器系デバイス深部の微細な血栓形成を血液回路の外からリアルタイムに光学的に検出する技術開発です。

血液の凝固を常時監視することで、製品に関連する重篤な合併症の減少、心疾患救命率向上に貢献します。

つくばセンター・つくば東

新規技術の概要と特長

血液が凝固すると、フィブリンという繊維状の個体が析出し、周囲血液細胞を取り込み、これを血栓と呼びます。 我々は、血栓に含まれる赤血球の量は、周囲血液と異なることを明らかにしました。この差を可視および近赤外光を用いて検出することで、従来常時監視不可能であった循環器系デバイス深部の血栓をリアルタイムかつ血液回路の外側から検知することに成功しました。 現在、市販血液ポンプ用の安価で小型

な血栓検出センサを開発中です。 本技術は、デバイスに組込んで使用す

ることも、既存の血液回路の外側に装着して用いることも可能です。

図 1 光による血栓検出の原理

図 2 ポンプ内の血栓検出

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 B-03

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関連特許および文献

・除染パスボックス設計ガイドライン 2010・無菌接続インターフェース設計ガイドライン 2012・ヒト細胞培養加工装置設計ガイドライン(改訂) 2015

つくばセンター・つくば東

・細胞製造システム・開発ガイドラインに沿った医工連携・国際標準化策定

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

再生医療においては、細胞培養技術や組織再生技術の高度化および加工プロセスの複雑化により、効率的な再生医療用細胞製造のために様々な装置を組み合わせ、統合するシステム化が求められている。本技術により、種々の再生医療に用いる細胞培養・加工用装置類について、無菌環境を維持した状態での脱着が実現し、再生医療等製品の多様化が可能になる。この無菌接続装置を介して国内各企業の関連装置を自由に無菌的に脱着することができるようになり、ユニバーサルな細胞製造システム、流通ネットワークを構築することができる。また、本技術の標準化により、市場に出回る細胞加工装置群の結合による一貫した無菌製造システムの構築が可能となり、国内外の再生医療産業化の促進が期待される。 現在、ISO/TC 198(ヘルスケア製品の滅菌)/WG 9(無菌操作)において、日本がプロジェクトリ

ーダーとして主導し、関係各国のコンセンサスを踏まえた本技術に関する標準文書の作成を進めている。これにより細胞製造システムの国際市場における優位性の確保に寄与する。また、医療機器開発ガイドライン等に沿った製品開発の技術協力も可能である。

研究のねらい

再生医療用細胞は滅菌ができず、無菌的操作による培養加工が必須である。培養加工操作は煩雑で、多くの装置を使用し培養期間が長期化することが多く、厳密な無菌環境の維持が課題である。

本研究では、アイソレータシステムを基礎とし、細胞を培養加工する複数の装置同士を無菌的かつユニバーサルに組み合わせ・脱着することが可能な無菌接続技術・装置を開発する。

無菌接続技術・装置に関連する国際標準化を進めており、安心・安全な再生医療用細胞の培養加工操作を実現し、装置のグローバル市場への展開に貢献する。

複数・多種類の細胞培養加工装置間の無菌的な脱着を可能とする無菌接続装置

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 C-01

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関連特許および文献

・特許 2102778 号;生体用チタン合金・次世代(高機能)人工股関節・ハイブリット型人工骨・骨補填材ガイドライン・カスタムメイド骨接合材料・カスタムメイド人工関節(股関節,膝関節,足関節)

・効率的な薬事製造承認取得・低コスト高性能部材製造技術・短納期設計および加工技術

連携・応用分野

新規技術の概要と特長

ステンレス鋼と Co-Cr-Mo合金に比べて、生体適合性が優れる Ti合金では、Zr、Nb、Taなどを添加することで、力学特性、疲労特性、長期間の耐食性と生体適合性が高くなります。これらの疲労強度の高い材料を積極的に用いることで信頼性と安全性の高い製品の開発が可能となります。特に欧米人に比べて小柄な東洋人の骨格構造に最適な製品の開発と早期の実用化を目指しています。さらに、急速な進化をとげる3Dプリンタなど、 新しい技術が、患者にやさしい医療を実現します。

CT データから最適な整形インプラントを設計製作する技術も進んでおり、この分野の輸入依存率を下げる効果も期待できます。具体的には、患者のCT等のデータ

から患者に最適なインプラントの設計製造、安全性の検証を行い、医師の確認後、加工を行い、1週間程度での製品の製造を目標としています。

研究のねらい

欧米人に比べて小柄な東洋人骨格構造に最適な製品の開発と早期の実用化が必要となります。耐久性の高い材料を積極的に用いることで信頼性と安全性の高い製品が開発できます。

超高齢化社会を迎え、整形インプラントの使用量が増加し、また、設計製造技術の進歩に伴い、患者の骨格構造に最適化した個別対応型(カスタムメイド)インプラントの開発を支援します。

インプラントの評価技術に関しては、ガイドライン、規格等に基づく試験方法の開発および、インプラント産業への参入の障壁の低減化に積極的に貢献することが重要となります。

製造技術の革新と患者に優しいインプラント開発

つくばセンター・つくば中央第6

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 C-02

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関連特許および文献

・積層造形医療機器開発ガイドライン 2015(手引き)[総論]・三次元積層造形技術を用いた歯科補綴装置の開発ガイドライン(手引き)

・積層造形技術を用いた患者に最適な歯科補綴物の歯科技工所での薬事製造承認取得が可能・作業時間を短縮して歯科医院への供給が可能・適合性の高い義歯の供給の実現

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

3次元レーザ積層造形技術を用いて、患者に最適な歯科補綴修復物(人工の義歯等)を実用化するために必要となる評価技術を取りまとめることで、従来の技術により作製された場合に比べて、耐久性と適合性等に優れ、臨床使用できることが可能となります。 部材での評価技術の検討

をし、組織観察、疲労特性、耐食性、溶出試験、引張試験等を行い、補綴物の力学安全性(耐久性等)評価技術の検討、さらに破損リスクの高いクラスプでの検討も進んでおり、積層造形技術を用いた患者に最適な歯科補綴物の歯科技工所での薬事製造承認取得、作業時間を短縮して歯科医院への供給が可能となり、 適合性の高い義歯の供給を実現します。

歯科補綴装置の名称

製造技術の革新と患者に優しい歯科補綴装置の開発

つくばセンター・つくば中央第6 研究のねらい

80歳で残存歯数が約 20本あれば食品の咀嚼が容易であると日本歯科医師会で推奨されています、高齢化社会に向け、高適合性歯科補綴装置の実用化が不可欠となります。

過酷労働等による歯科技工所の減少に伴い、3次元レーザ積層造形技術を用いて、患者に最適な歯科補綴修復物(人工の義歯等)の開発を支援します。

評価技術の検討および薬事製造承認申請に活用できる指針を取りまとめることが重要となります。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 C-03

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つくばセンター・つくば中央第6

関連特許および文献

・特 4893964;新規化合物、該化合物を含むペプチド又はタンパク質の分析用試薬、及び該分析試薬を使用する分析方法

・鈴木祥夫、久野敦、千葉靖典、Sensors and Actuators B-Chemical, 220, 389-397(2015)

研究のねらい

近年、糖質に関する研究が目覚ましく進歩しており、癌、免疫受容体、受精、発生・分化、感染症、バイオ医薬品開発等において、重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。

糖質を標的とする診断薬等の開発において、糖質とそれを認識するプローブとの結合力は一般的な抗原‐抗体反応と比較して弱いため、新たな評価技術の開発が求められている。

高いエネルギー移動効率の FRETを誘起する独自の化合物とレクチンおよび磁気ビーズを融合することにより、糖質の高感度検出に成功した。

・研究用試薬開発・バイオセンサー技術、測定技術開発・創薬スクリーニング技術開発

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

①環境応答性が高いシアノピラニル基と標識化試薬として汎用性の高いダンシル基が、高いエネルギー移動効率の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を誘起するエネルギードナーとエネルギーアクセプターの組み合わせとして有望であることを見出した(図 1)。②上記蛍光物質を用いてレクチンによる単糖、二糖の蛍光検出を行ったところ、糖-レクチン間の相互作用をダンシル基-シアノピラニル基間の距離に依存した蛍光強度の変化を用いて検出することに成功した。③磁気ビーズ表面にレクチンおよび蛍光物質を修飾し、種々の濃度の糖質を添加したところ上記②と同様の蛍光強度の変化および磁気ビーズを用いることによる糖質の高感度検出が達成された(一例として、レクチンとしてConAを用いた場合、0.1nMのマルトースを検出することに成功)。さらに、ConA以外のレクチン(WGA、AAL等)についても、それぞれ親和性の高い糖質を識別することに成功した(図 2)。

励起波長:340nm蛍光波長:510nm

励起波長:480nm蛍光波長:550nm

OO

NC CN

N

SO OHN

ダンシル基 シアノピラニル基

0

20

40

60

80

100

Con A WGA AAL

蛍光

強度

の変

化量

(%

図2 蛍光団と種々のレクチンを修飾した磁気ビーズと

種々の糖質との反応前後における蛍光強度

■:α-Man, ■:Fucose, ■:Melibiose,

図 1 ダンシル基とシアノピラニル基の構造と

光学特性照射

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 D-01

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研究のねらい

高血糖症や糖尿病の人口増加が社会問題となっている。現在、糖尿病予防のための安価、簡便、高速な診断技術の一層の発展が求められている。

グルコースヘモグロビンの識別方法として HPLC法などが用いられている。表面増強ラマン散乱分光を用い、従来法(血液の必要量 1μL、測定時間数分程度)を向上する。

表面増強ラマン散乱(SERS)分光によりグルコースヘモグロビン(HbA1c)とヘモグロビン(HbA)のスペクトル識別を行うことにより将来的に数秒で定量可能とし診断に貢献する。

関連特許および文献

・Kiran M. S., Itoh T., et al., Anal. Chem., 82(4), 1342-1348 (2010).

・病院、健康機器メーカーとの連携 ・HbA1cの定量への応用と糖尿病予防への展開

期待される連携・応用分野

Hb HbA1cHb HbA1c

図1

図2

Hb HbA1cHb HbA1c

図1

図2

新規技術の概要と特長

開発した新規技術の核心は SERS分光により HbA1cと HbAのスペクトル識別を数秒で行うことである。この結果、糖尿病指標分子であるグルコースヘモグロビンの診断時間が数秒に短縮される可能性がある。従来、HbA1c 測定法としてラテックス凝集法と HPLC 法がある。ラテックス凝集法とはラテックス粒子表面に検体中の HbA1c を吸着させ、これに抗 HbA1c 剤を反応(抗原抗体反応)させ、このとき生ずるラテックスの凝集を濁度として測定し標準曲線より全血中のHbA1c濃度を求める手法である。HPLC 法では HbA1c と HbA との電気的性質の違いを利用してイオン交換カラムクロマトグラフィーで分離する手法である。両法の所要時間は 10分程度であり、必要サンプル量は最小で 1μL程度である。SERS分光では、HbA1c単一分子の測定が可能なため基本的にサンプル量を HbA1cの不均一性が現れる(1 nL 程度)まで低減できる。所要測定時間はサンプル準備を除き数十秒である。現行のサンプル準備時間(3時間)については大幅な短縮が可能である。

図 1. HbA(A)と HbA1c(B)の SERSスペクトル。HbA1cのSERSスペクトルの 800 cm-1にHbAでは現れないバンドがある。挿入図は銀ナノ粒子と分子の凝集体。それぞれ右パネルが暗視野照明像、左パネルが SERS像。

図 2. HbA(A)と HbAに糖を自然吸着させた HbA(B)の SERSスペクトル。糖付加した HbAの SERSスペクトルの 800 cm-1に HbA1cの指標となるバンドが現れる。挿入図は銀ナノ粒子と分子の凝集体。それぞれ右パネルが暗視野照明像、左パネルがSERS像。

四国センター

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 E-01

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関連特許および文献

・特開 2013-235122; 微小物の 3次元操作装置. ・特許 5686408号; 微粒子のアレイ化法および装置. ・Tanaka Y., Optics and Lasers in Engineering, Vol.111, 65-70 (2018).

・光多点クランプ法:細胞操作の必要となる応用分野、Micro-TAS、マイクロマシン組立など ・動的微粒子アレイ:Micro-TAS内の微小球の自動操作、各種アレイ型センサの自動組立 ・3次元時分割・ハイブリッド光ピンセット光学系:光ピンセットが適用できる全ての分野

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

光学顕微鏡下で、サブ〜数十ミクロンサイズの微小物を非接触操作できる光ピンセットは、マイクロデバイス中などの閉鎖環境での遠隔操作も可能であるため、非常に強力なマイクロ操作ツールである。一般的に、操作対象となる細胞などは、多くが非球状な形状をしているが、従来の光ピンセットで安定して捕捉、操作できるのは球形に限られていた。また、細胞操作などではルーチンワークとして大量の試料を処理することが必要であるが、熟練者の手作業に頼っているのが現状である。我々は、光ピンセット技術と画像処理などの高度自動化技術の融合により、汎用的非接触3次元マイクロ操作技術の開発と、開発した基盤技術の多様な分野への応用をめざして研究を展開している。これまでに、非球状な微小物(楕円状の珪藻や棒状のウイスカなど)を自動的に認識・捕捉し、安定してマイクロ操作できる「光多点クランプ法」、多数の微粒子を同時・並列的に操作して「動的微粒子アレイ」を作るアルゴリズム (図 1)などを開発した。また、大規模な動的アレイを作成できるハイブリッド光学系や、複数微粒子を3次元操作できる3次元時分割光ピンセット系 (図2)を提案し、有効性を実証した。

四国センター

研究のねらい

DNAチップなどの静的アレイに代わる動的微粒子アレイの作成、顕微受精などの熟練作業の半自動化など、光学顕微鏡下のマイクロ操作の自動化・高精度化のニーズは多い。

非接触マイクロ操作技術である光ピンセット技術と画像処理などの高度自動技術を融合化することで、光学顕微鏡下の汎用的な非接触 3次元マイクロ操作技術を確立する。

従来の光ピンセット技術では捕捉の困難であった非球状の微小物や細胞を、閉鎖環境下で複数同時に非接触 3次元マニピュレーションできる技術を提供する。

図 1.動的微粒子アレイ作成の様子

図 2.6面体頂点位置で捕捉された微粒子の 3次元回転の様子

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 E-02

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四国センター

研究のねらい

微量の試験液でバイオ・化学分析を行うマイクロ流路チップは、費用、耐久性、使い易さにおける難点が実用化の障害になっています。

従来の医療用検査紙とは異なり、半導体製造技術で作製する高度なマイクロ流路チップと同等の精度・感度が得られるため、偽陽性・偽陰性の問題を大きく低減できます。

本チップが普及すれば、血液中の各種バイオマーカーや HIV 等の感染症に対するその場診断・早期発見、新薬の開発に対し、飛躍的な迅速化・効率化が期待できます。

新規技術の概要と特長

一滴の血液と展開液を滴下するだけで血漿成分( 回収率:60-80%、抽出時間:30-90 秒)が抽出され、血中試料を迅速に検出できる、簡便・超安価なマイクロ流路チップを開発しました。 殆どの医療用検査紙は、紙片の変色・発光で判定を行いますが、本チップは透明シート上にクリアに結果が表れるため、精度・感度に優れています。 現場で、簡便、迅速、安価(血球分離操作不要、送液装置不要、インキュベート時の乾燥が大きく

低減、1~3 円/チップ)に検知する事をめざし、多様なニーズに対応したマイクロ流路チップの作製に成功しました。

関連特許および文献

・WO/2014/051033 (2014/04/03)

・水質や動植物の健康状態などを現場で簡易にモニタリングする技術 ・全血からマイクロ流路を用いて計測する技術 ・簡便で低コストな検査チップの作製技術

期待される連携・応用分野

紙・フィルム・テープチップの使い方と特徴

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 E-06

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四国センター

関連特許および文献

・Sci Rep 2016 ;6:30136. doi: 10.1038/srep30136. ・Biosensors and Bioelectronics (in press) ・WO 2010/027003 (2010/03/11), 3/060531(USA), 09811528.0 (EPC)

・医学 ・細胞工学 ・国際貢献

研究のねらい

背景:赤血球に感染するマラリアや血中に循環する循環がん細胞(CTC)の診断など、正確かつ迅速な診断法が求められている。

目的:一細胞レベルでの検出感度で、血中に存在する標的細胞の検出を行い、正確な診断応用を目指す。

意義:細胞チップの診断応用で、マラリアでは発症前診断が、CTC 検出では従来法では困難なCTC 検出が期待される。

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

ポリスチレン製マイクロチップ基板上に直径105μm、深さ50μmのマイクロチャンバーを2万個程度作製しレーザー表面処理を行うことで、 各マイクロチャンバー底に赤血球や白血球を定量的に単層配列可能な細胞チップを開発した。 各マイクロチャンバーには赤血球を約100 個、白血球は約50個を定量的に単層配列可能となり、一枚のマイクロチップ基板でそれぞれ200万個及び100万個 の観察が可能になる。 マラリア診断では、観察時間15 分で既存のギムザ染色法の200 倍の超高感度で赤血球に感染したマラリア原虫の検出が可能になる。CTC診断では、多重染色による一細胞観察を行うことで、既存法のようにEpCAM 発現に依存しないがん細胞検出が可能になり、CTC の見逃しがない正確ながん細胞検出が期待される。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 F-01

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四国センター 研究のねらい

通常、数日必要とされる血中バイオマーカーの定量検出を、抗原抗体反応をオンチップ化することで「その場診断」Point Of Care Testing (POCT)へ応用することが求められている。

マイクロ流路上の任意の部分に各種バイオマーカー検出のための一次抗体を吐出・固定化することで、マイクロ空間を用いた抗原抗体反応系の構築を行う。

マイクロチップを利用した抗原抗体反応の POCT への応用を可能とすることで、より的確かつ迅速な診断と効果的な治療法の選択が実現できる。

関連特許および文献

・Yatsushiro S., et al., PLoS One, 6(4), e18807 (2011).・Abe K., et al., PLoS One , 8( 1), e53620 (2013).・特開 2010-8109; 抗原抗体反応を利用した標的物質検出用チップ.

・臨床検査学・予防医学・生化学

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

血液中の特定のタンパク質を高感度・定量的に検出するため 2 種類の抗体を用いたサンドイッチELISA法が頻用される。現状の96穴プレートを用いたサンドイッチELISA 法では mL単位の血液と試薬と数時間の解析時間が必要で、医療現場でPOCTへの応用は難しい。そこで環状ポリオレフィン製マイクロチップ基板(住友ベークライト社製)表面に形成したマイクロ流路表面を固相面として利用し、pL単位の液滴のハンドリングが可能な微細化インクジェットを用いて一次抗体をマイクロ流路表面の任意の部分へ吐出・固体化することで、迅速・省サンプルで既存の96穴 ELISA法と同等に正確な血中タンパク質の検出系を構築した。同一マイクロチップ基板に複数の流路を形成して、複数種類の抗体固定を行うことでマルチ検出チップの構築を行っている。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 F-02

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研究のねらい

背景:健康情報関連マーカー時系列情報の蓄積と活用に向け、極微量のサンプルで、多数種のマーカー物質濃度が、迅速かつ簡便に測定できる装置が求められています。

目的:マイクロ流路型抗原抗体反応チップを実現するため、基板の製造容易性、抗体固定化方法、流路形成方法などの課題を解決しました。

意義:構造が単純であるため低コストで作製可能でありながら、単一流路内で複数種類の血中タンパク質を同時測定可能なプラスチック製小型チップを開発しました。

四国センター

関連特許および文献

・特許第 4999007号;抗原抗体反応を利用した標的物質検出用チップ ・M. Tanaka, T. Ooie, Y. Yamachoshi, T. Nakahara, M. Hino, R. Akamine and M. Kataoka, J.

Laser Micro / Nanoengineering, 5(1), 35(2010)

・ディスポーザブル健康診断チップの開発 ・新規バイオマーカーの探索支援

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

本チップは、単純な微小溝構造を有するプラスチック製基板をベースとして、インクジェットによる抗体固定化の後、粘着フィルムを貼付することで流路を形成します。反応場となる流路体積が微小であることから、抗体・試薬等が極微量で済み、チップコストの低減につながるうえ、必要な検体試料は数マイクロリットルです。さらに、 単一流路に種類の異なる抗体を固定化することにより、 一検体に対して同時多項目検出も可能です。一つの例として、 骨粗鬆症のバイオマーカーである I 型プロコラーゲン C 末端プロペプチド(P1CP)の検出を行ったところ、既存のELISA法と同等の性能を示しました。

図 マルチ抗原抗体反応チップ作製技術と

化学発光によるマーカー検出結果

インクジェット技術:抗体固定

マルチマーカー測定チップ

抗原濃度150ng/ml

600ng/ml

抗原抗体反応によるマーカー検出

チップ用フィルム:流路形成

表面処理

溝加工

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 F-03

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四国センター

図.工業ナノ粒子の細胞による影響評価の概要

研究のねらい

工業ナノ粒子は、日焼け止めや触媒などに利用されている重要な工業材料であるが、粒子径の小ささから、有害性が懸念されている。しかし現在のところ標準となる有害性評価系が無い。

動物実験の縮小が推進される中、培養細胞を用いた、信頼性のあるナノ粒子の有害性評価系を提案する。炎症誘発性と酸化ストレス負荷に焦点を絞り、培養細胞での評価を行う。

本技術では、国際標準(ISO)化を目指す技術を含む、総合的な有害性評価を行う。急性毒性については動物試験の結果との相関性も確認しており、製品の管理に役立つ。

関連特許および文献

・特開 2012-029683; ナノ炭素材料の細胞培養液中分散方法・Horie M., et al., Metallomics, 4(4), 350-360 (2012).・Horie M., et al., Chem. Res. Toxicol., 25(3), 605-619 (2012).

・安価で迅速なナノ粒子の有害性評価と管理・ナノ粒子の細胞影響メカニズムの解析に基づく新規材料の開発・細胞を用いた有害性評価系の開発

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

ナノ粒子(1~100nm の直径を持つ粒子)は、有害性が懸念されており、製品として生産・販売を行うためには、有害性評価のデータが求められる。しかし、従来の化学物質とは異なり、ナノ粒子には国際的なコンセンサスを得た標準的な評価方法が存在しない。従来の化学物質と同様の手法は、時として人為的影響を招く場合がありナノ粒子には適さないという報告がある。ナノ粒子の有効利用のためには、人為的影響を排除した信頼性のある正確な評価方法によって、データを取得する必要がある。本技術は、細胞試験のためのナノ粒子培地分散液の調製と、ナノ粒子の細胞影響メカニズムに基づいた総合的な細胞影響評価によって、動物試験の結果ともリンクした正確な評価技術を提供する。下記考慮すべきナノ粒子の細胞影響メカニズムを把握しつつ、細胞毒性、炎症誘発性、酸化ストレス負荷等の影響評価を行い、ナノ粒子の 生体に対する有害性を評価する。

・ナノ粒子はタンパク質等を吸着しやすい。

・ナノ粒子は金属イオンを溶出する場合が

ある。

・分散液の状態は細胞毒性評価に影響する。

・ナノ粒子は細胞内に取り込まれる。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 G-01

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四国センター

研究のねらい

飲料水等に含まれる必須ミネラルは残しつつ、 微量でも健康に有害なイオンを選択的に取り除く技術の開発が求められています。

無機イオン交換体の結晶性や細孔構造を精密に制御することで、 特定の有害イオンに対して高い捕捉性が発現します。

開発した有害イオン選択性無機イオン交換体は、低濃度でも高い捕捉性を示すため、水道水や地下水等の浄水技術への応用が期待できます。

関連特許および文献

・特許第 4547528号(2010/07/16);硝酸イオン選択的吸着剤、その製造方法、それを用いた硝酸イオン除去方法および硝酸イオン回収方法

・特許第 4963032号(2012/04/06);リン吸着剤 ・特許第 5540283号(2014/05/15);臭素酸イオン除去剤

・無機イオン交換体による水処理システム ・浄水場におけるリスク管理 ・地下水の浄水

期待される連携・応用分野

層状複水酸化物を用いた有害イオン選択性捕捉剤の設計

新規技術の概要と特長

水環境中から陰イオンを効率よく除去する方法としてイオン交換法があり、一般的には陰イオン用のイオン交換樹脂が用いられています。しかし、特定イオンに対して高い選択性を持つイオン交換樹脂はほとんどありません。 一方、 無機イオン交換体には、 イオン交換場の結晶構造に起因して、特異的なイオン交換性を示すものが多く存在しています。私たちは、層状無機イオン交換体の結晶性、層間制御、層間への分子挿入等によって、微量でも健康に有害なイオンを選択的に捕捉できる各種無機イオン交換体を開発しています。

その他、井戸水等の地下水などの還元性環境

で存在する 3価のヒ素を 5価と同様に捕捉する材料や、層状無機イオン交換体を利用した塩水中でも使用可能な抗菌剤の開発を行っています。

開発済みの有害イオン捕捉剤 〇 硝酸イオン選択性層状複水酸化物 〇 臭素酸イオン選択性層状複水酸化物 〇 リン酸イオン選択性層状複水酸化物 〇 過塩素酸イオン選択性層状化合物

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 G-02

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研究のねらい

水系用抗菌剤には有機系抗菌剤がよく用いられるが、 有害性の問題がある。 銀系無機抗菌剤は抗菌性に優れ安全性も高いが、水系では抗菌性が失活するため使用できない。

抗菌性失活の原因は、抗菌成分の銀イオンが塩化物イオンと反応して塩化銀になるためである。本研究では、塩水中で安定な銀錯体を抗菌成分とする無機抗菌剤を開発した。

開発した銀系無機抗菌剤は、塩水中においても抗菌効果を示すため、従来の銀系抗菌剤で適用できなかった広範な水環境での応用が期待できる。

四国センター

関連特許および文献

・特許第 4982837号(2012/05/11);海洋付着菌用抗菌剤

・医療用抗菌剤 ・バイオフィルム付着防止剤

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

銀系無機抗菌剤は安全性が高く、多種類の菌に対して抗菌効果を示す。また、有機系抗菌剤に比べて耐熱性が高く、熱可塑性・熱硬化性のプラステック製品への練り込みが可能で、文房具、塗料、繊維、紙などさまざまな製品に使用されている。 しかしながら、 水系では抗菌性が大幅に低下するため使用用途が限定される。これは、溶出した抗菌成分の銀イオンが、水中に溶存する塩化物イオンと即座に反応して塩化銀となり、銀イオンの抗菌力が失われるためである。 本技術シーズの銀系抗菌剤は、 銀錯体を無機化合物に担持した銀錯体担持抗菌剤である。

銀イオン単独に比べて塩水中で安定な銀錯体を抗菌成分とすることで、海水系でも有効な抗菌性を示す。開発した銀錯体担持抗菌剤は、適用する水環境の pHが高いほど優れた抗菌効果を発揮する。

銀錯体担持抗菌剤(本技術シーズ)

銀錯体

従来の銀系無機抗菌剤

Ag+

Cl-

細菌

塩水中で安定な銀錯体は、AgCl生成が抑制され、抗菌性を発揮する。

溶出したAg+は、塩水中のCl-と反応してAgClとなり、 抗菌性が失活する。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 G-04

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四国センター

研究のねらい

発光レポーターであるルシフェラーゼを用いたセルベースアッセイは、遺伝子発現をはじめとする様々な細胞内情報を定量的に測定するための解析ツールとして汎用されています。

これまで独自に開発した生物発光レポーター群を活用し、従来よりも効率的且つ高精度に評価可能なセルベースアッセイシステムの構築を目指しています。

細胞から発する複数種の発光をリアルタイム且つハイスループットに測定することで、複数のマーカー遺伝子の発現変動のキネティクスを精密に計測するシステムを開発しています。

関連特許および文献

・第 5164085号、US8383797、細胞内発光イメージングのために最適化されたルシフェラーセ 遺伝子 ・第 4385135号、US7572629、DE602004030104.3-08、CN1784496、FR1621634、

GB1621634、マルチ転写活性測定システム

・薬効、食品機能、化学物質毒性等の評価 ・機能性評価用発光細胞作製、発光検出装置開発

期待される連携・応用分野

新規技術の概要と特長

独自に開発した生物発光レポーターと、 鳥取大学医学部が開発した 人工染色体ベクターの技術を融合し、従来のセルベースアッセイシステムよりも効率的且つ高精度に細胞応答を検出できるシステムを構築しました。 具体的には、生体リズム遺伝子発現

や炎症応答反応などをはじめとする様々な細胞応答を、96ウェルプレートを用い、リアルタイムに計測することに成功しました。 現在、構築したシステムを利用し、

種々のセルベースアッセイを実施しています。

発光細胞を用いたマーカー遺伝子発現のリアルタイム発光計測

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 H-01

Page 28: 2019年 技術シーズ集 - AIST...2019/05/01  · シーズ集巻頭言 健康で長寿を全うすることが人類社会における最大の課題であると言っても 過言ではありません。健康とはただ単に肉体的に病気でない状態を言うのでは

四国センター

研究のねらい

バイオ医薬品の早期開発および薬効の向上を目指して、 機能性糖タンパク質を生産する糖鎖改変パン酵母株の開発を目指す。

酵母の細胞表層は数種の多糖類から形成されており、 糖鎖を含めたこれらの多糖が免疫細胞を活性化することが分かっている。開発糖鎖改変酵母を利用してワクチンの効果を増強するアジュバントの開発を目指す。

天然由来成分から免疫機能を活性化する物質の探索を行う。

関連特許および文献

・特許 5119466号; 酵母の製造方法、酵母、及び糖タンパク質又はβ-グルカンの製造方法 ・ Abe H. et al., J. Oleo Sci., 67, 335-344 (2018). ・ Abe H. et al., Glycobiology, Vol.26, pp1248-1256 (2016)

新規技術の概要と特長

バイオ医薬の低抗原化と薬効の向上を目指して、必要な糖鎖を均一に持ったタンパク質を生産することができるパン酵母株の開発を目指す。また、パン酵母の細胞壁構成成分は生体内において強い免疫誘導活性を持つことが知られている。酵母細胞壁は数種の多糖類から形成されており、このような多糖および糖鎖が免疫細胞を活性化することが分かっている。 そこで、パン酵母の糖鎖改変によってアレルギー改善効果やワクチンアジュバント効果などの免疫増強効果の高い酵母株の開発を目指している。また、天然由来成分から免疫制御活性を見出し、機能性食品への応用を目指す。

・創薬スクリーニング ・ワクチンアジュバントへの応用 ・機能性食品への応用

期待される連携・応用分野

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 H-02

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四国センター

研究のねらい

細胞を個々に判別し、選り分けて回収する細胞ソーター(セルソーター)は、がん細胞診断、再生医療、医薬品開発など、基礎研究から臨床検査まで広く用いられています。

レーザー光圧力とマイクロ流体チップにより、従来法では得られなかった多種類の細胞の分離・回収や、より無菌・コンタミレスな新しいセルソーター技術を開発しています。

無菌・コンタミレスでの細胞分取を強く求められる iPS 細胞等の高精度分離精製技術などとして期待されます。

関連特許および文献

・特許第 4512686号;微粒子の分別回収方法および回収装置(2010年 5月 21日) US Patent. 7,428,971;Method for sorting and recovering fine particles, and apparatus for recovery(2008年 9月 30日)

・多種類の細胞を一度に分取するマルチセルソーティング ・無菌かつコンタミレスの状態を必要とする iPS細胞等の高精度分離精製技術 ・(単一)細胞のマイクロ流体チップ型集積解析チップへの応用

期待される連携・応用分野

レーザー光圧力とマイクロ流体チップによるマルチソーティングの原理(左図)と実証図(右図)

新規技術の概要と特長

マイクロからナノメートルの大きさの微粒子(細胞など)をレーザー焦点に引きつける光圧力を利用して、分離・回収したい目的の細胞のみを微小流路中で運動方向を変えることで分離・回収することができます。微細加工技術で作製された密閉のマイクロ流体チップを用いているため、回収場所を高度に並列化・集積化することで、従来技術よりはるかに多種類の細胞を一度に無菌かつコンタミなしで分離・回収できます。また、細胞に限らず誘電体微粒子であれば分離・回収できるため、医療・生命科学以外の分野でも広く応用できます。

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 シーズ集2019 H-03

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Health Research Institute健康工学研究部門国立研究開発法人 産業技術総合研究所

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百歳を健康に生きる技術シーズ集(第 9版)健康工学

(令和元年5月1日印刷)

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