2019年度職員の海外研修報告書 令和元年11月15日 事務局長 殿 … ·...

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別紙2 2019年度職員の海外研修報告書 令和元年11月15日 事務局長 殿 名古屋大学文系教務課 事務職員 恵善 渡航期間 令和元年9月24日(火) 令和元年9月29日(日) 6日間 研修タイプ及び番号、訪問国 A-1 タイ 参加者氏名等(本人含む、派遣当時) 属(部・課、係・担当等) 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員 小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員 古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長 小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員 磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員 松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員 研修テーマ 「違いに気づき、そこから学ぶ研修」 訪問機関等 (敬称略) 訪問機関等名:日本貿易振興機構バンコク事務所 対応者及び 担当者氏名 鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所愛知県バンコク産業情報 センター Director 訪問機関等名:Chulalongkorn University 対応者及び 担当者氏名 Sukalin Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director Nattakarn Chamsuwanwong Global Academic Affairs Division Non-Degree Unit Head of Unit

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別紙2

2019年度職員の海外研修報告書

令和元年11月15日 事務局長 殿

所 属 名古屋大学文系教務課 職 名 事務職員 氏 名 薛 恵善

① 渡航期間

令和元年9月24日(火) ~ 令和元年9月29日(日) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国 A-1 タイ

③ 参加者氏名等(本人含む、派遣当時)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

「違いに気づき、そこから学ぶ研修」

⑤ 訪問機関等 (敬称略)

訪問機関等名:日本貿易振興機構バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所愛知県バンコク産業情報

センター Director

訪問機関等名:Chulalongkorn University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

Nattakarn

Chamsuwanwong

Global Academic Affairs Division

Non-Degree Unit Head of Unit

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訪問機関等名:Nagoya University Bangkok Office

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya

Chenchittikul 副所長・特任助教

Nattha

Phetcharat 事務補佐員

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 一等書記官

訪問機関等名:独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 副センター長

濱端 悠祐 国際協力員

訪問機関等名:Kasetsart University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division

Foreign Relations

Officer

Kornkanok

Wangbenjaporn International Studies Center, Office of the Registrar

Management and

Administrative

Officer

訪問機関等名:Mahidol University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Theeta

Rojnkureesatien International Relations Division

International

Relations Officer

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別紙2

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

日本では既に立秋を過ぎていた 9 月 24 日~29 の日程で、まだ真夏の日差しが照らしつけるバン

コクに渡航した。現地では、政府機関・行政法人としては JETRO(日本貿易振興機構)バンコク事務

所、在タイ日本大使館、JSPS(日本学術振興会)バンコク研究連絡センターを訪問し、大学としては

チュラロンコン大学、カセサート大学、マヒドン大学を訪問した。

1. 9 月 25 日(水) ①日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所

鈴木太郎氏と 1 時間程度面談し、日本とタイと

の経済的交流状況、対泰貿易および日本企業の現

地進出等について説明を頂いた。タイは日本の経

済的パートナーとして非常に重要な位置を占めて

おり、企業や役所からの日本人駐在員数は 10 万

人程度に上り、JETRO バンコク事務所も世界一

大きいものであるという。JETRO 海外オフィス

では、タイに進出を図る企業へ産業動向・投資環

境・設立手続等の情報を発信する等、タイ進出を

支援しており、同様にタイ企業の日本進出も支援

している。タイ企業に限らず外資企業が日本進出

は、海外のノーハウ・競争により日本の地域の活

性化、地域雇用の活性化につながるなどの効果が

あるという。鈴木氏はジェトロのバンコク事務所

に出向されている愛知県庁の職員でいらっしゃり、バンコクオフィスは世界 3 か所に設置されている

愛知県の海外事務所の一つでもある。タイの企業のみならず外資企業が日本進出興味深いことは、タ

イも現在少子高齢化が進んでおり、人件費も高くなっていっているとのことだった。そのため、ベト

ナムやミャンマーなど周辺国から人件費の安い労働者の流入が増加しており、外資企業の製造拠点も

タイではないそれらの国に移りつつあるとのことだった。今後のタイの産業の動向としては、これま

で農業・漁業など第 1 次産業中心であった産業構造を、第 3 次産業もしくは最先端の第 4 次産業への

従事者の割合を高めるための政策(Thailand 4.0)にシフトしているとのことだった。その影響もあ

ってか、インターネットやスマートフォンの普及率はバンコクの場合 70%以上で、メッセンジャーア

プリのラインの使用率も 60%程度に上るという。タイの町を歩いていると、日本食レストランが非常

に多く、その人気を体感することができたが、その数は全国 3,000 店舗以上に上るとのことだった。

日系スーパーマーケットが次々と進出することにより日本食材の調達が容易になったこと、日本食チ

ェーン店の進出も日本食ブームの理由の一つだという。その他、ASEAN の中でも訪日観光客数が最

も多く、日本からと日本への輸出額も ASEAN の中で最も高いなど、日本とタイは貿易を中心とした

経済的結び付きが強い分、JETRO はタイにおける活動に力を入れている様子であった。

2. 9 月 25 日(水)②チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)

チュラロンコン大学は名古屋大学のバンコクオフィスが位置している大学でもあり、泊まっていた

ホテルから徒歩圏内に位置している、都心の中心部にあるとてもアクセスの良いところであった。同

大学は最寄り駅の MRT サムヤン駅周辺の土地を所有しており、駅と直通するショッピングモールの

Chamchuri Square, Samyan Mitrtown の立ち上げを初めとするこの一帯の開発をリードしたとい

う。キャンパスは 一つだけであったが、敷地は 3 つの駅に渡っており、学内をシャトルバスが走って

いるほどその存在感は大きかった。打ち合わせが行われた場所は大学の International Affairs のオフ

イスがある建物の 18 階で、20 階程度あるとても大きい建物だった。3 人の対応者に面談に応じてい

ただき、大学紹介ビデオをはじめ、1 時間未満程度の質疑応答の時間の後、先方の次の打ち合わせの

ため会は終了した。印象深かったことは、学部の授業の場合 Active learning を採用しており、25 万

人が同時にアクセス可能な専用の e-learning サイトから 100 コース以上のオンラインコースが提供

されており、在学生の他に一般にも公開されているとのことだった。中には NUS や精華大学など外国

の大学と連携しているものもあり、インターネットを通して一般の人にまで大学の授業が利用できる

ようにする、国立大学としての地域貢献と収入を同時に得られる方法と思われた。また、広報手段と

して大学のホームページのみならず SNS の活用は日本の大学でもよくある広報手段だが、大学のライ

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ンアカウントがメインの一つであることは、ど

のアプリよりも学生に浸透しているアプリを活

用し、情報発信を行っていることが斬新だった

(これはチュラロンコン大学に限らず、訪問し

た全大学共通だった)。大学の魅力国立大学「企

業などの面接では、本学の学生の履歴書はまず

横に取っておくだろう(大学の名前だけで通る

だろう)」という担当者の説明からも、タイの最

古で最高名門の高等教育機関であるほど、その

プライドが高いことが感じ取られた。同大学を

訪問したのは今回の研修初日で、はじめての大

学訪問であったため訪問当時は比較ができなか

ったが、後で振り返ると、後日訪問したカセサ

ート大学、マヒドン大学とは割愛してくれた時

間や対応人数、資料の準備等が異なっていたが、

これもその故だろうか。ミーティングを終えて出てきた建物を出ると、そこにはトヨタの電気自動車

(CU TOYOTA Ha:mo)が停車されており、アマートフォンのアプリケーションを利用し登録する

ことで公キャンパス内や共交通の駅までの移動手段として 30 バーツ/20 分の料金でカーシェアリン

グ感覚で使用でき、学内に 20 箇所のチャージス

テーションを設置しているとのことだった※。大

学に、広く利用できるこのようなものが設置され

ていることは私にはとても珍しく感じられ、建物

や商業施設の持ち主でもある同大学を見て、大学

の取り組みが 教育・研究活動に留まらず、どこま

で広がりを持てるかを見ることができたと思われ

る。

※ 参照 URL :https://www.cutoyotahamo.com/en/

3. 9 月 25 日(水)③名古屋大学バンコク事務所

チュラロンコン大学関係者との打ち合わせ後には、徒歩で同キャンパス内にある本学のバンコク事

務所に向かった。今年で創立 5 周年を迎えた同事務所は、タイにおける本学の学術・国際イベントの

開催の現地支援、タイ人学生向けの Study fair への参加など、本学のタイにおける国際交流の窓口と

なっている。現地では、職員が常駐していない大学

を含め 50 大学以上がバンコクに事務所を設けてお

り、その運営について情報交換と交流を目的とする

在タイ日本大学ネットワーク(JUNThai)の一員

として参加するなど、活発な活動をされている。現

地で偶然日程が重なりご一緒させていただいた、セ

ンター長の生命農学研究科・村瀬教授も、JDP プロ

グラムやタイにおける共同研究活動などにおいて、

事務所の活躍は欠かせないと話されており、交流活

動の際は密に事務所と連携されていることだった。

事務所は本学の規定に基づく運営となるため、経費

の執行等に当たり現地事情とは合わない部分も多

くあるなど、その運営においては困難点もあるように感じられたが、本学の対タイ戦略のみならず、

研究者レベルでの交流においても本学のバンコク事務所は大きな役割を果たしていることが実感でき

た一週間だった。

4. 9 月 26 日(木)①在タイ日本国大使館

2 日目の朝は、広い敷地と規模を誇る在タイ日本国大使館に訪問し、ご家族と一緒に赴任している

久芳一等書記官にお話しを伺った。借り上げ車両で中に入る際に厳重な警備と何重ものゲートを通り、

中に入ると携帯電話を全員預けての入館となった。建物内も多数の事務室で分かれており、日本から

の派遣者が 60 名、現地の職員が 100 名程度勤務しているとのこと。在留日本人数が世界で 2 番目

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別紙2

に多いバンコクである※(5 万 2,871 人, 2017 年

10 月現在)分、世界 215 ある大使館の中で上位 5

位に入る大きさは、頷くことができる規模であった。

大使館の設置目的は日本人の保護、日本とタイの関

係推進、国際社会での協力が挙げられるが、特に貿

易、政治問わず様々な国家間の葛藤が相次ぐ今日に

おいては、タイとの友好関係を基盤とした連携がさ

らに重要になるとのことで、ホワイト国からの除外

を巡る最近の韓国との葛藤が例に挙げられた。バン

コクメトロ(MRT)など基盤施設への日本政府の資

金協力等の過去の投資等に起因する日本人に友好的

な社会的な雰囲気もあってか、政府機関からの駐在

員のみならず日本企業の進出も多く、大使館

もそのような企業のために無料で日本人弁護

士に法律相談を行うことができるサービスを

実施しているという。なお、タイの国費留学

生の大使館推薦選抜はタイ全国から非常に人

気があり、毎年多くの応募があるとのことで、

世界で3番目に多い国費留学生数を日本に出

している(平成 29 年 5 月 1 日現在)。しか

し地方からの出願者には願書や研究計画書の

作成などに必要な情報獲得のためのインフラ(インターネット)の利用さえ困難である者もいるなど、

バンコクとの格差が大きいという一面もあるとのこと。本研修にて訪問した大学関係者のお話にもあ

ったように、タイ人学生に魅力ある留学先になるためには、英語コースの充実が最も求められるとい

うことを、書記官も話されていた。

※同年度のデータでタイ全体の在留日本人数は世界 4 位である(7 万 2,754 人)。

参照 URL: https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/world.html

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_suishin/09/

5. 9 月 26 日(木)②日本学術振興会(JSPS)バンコク研究連絡センター

お昼前には JSPS のバンコクオフィスを訪問し、冨山副センター長と、東北大学から出向されてい

る国際協力員の濱端国際協力員にバンコクオ

フィスの業務内容および JSPS の事業概要に

ついてお話しを伺った。同オフィスは市内の

高層オフィスビルディングの 10 階に位置し、

国際交流基金と同じフロアをシェアしてお

り、バンコク内では現地大学や機関、現地研

究者に対する JSPS の事業説明会や現地の学

術関係機関等が開催するイベントへの参加

などを主な業務となっているとのこと。国際

協力員の方からは今後応募する人向けに国際

学術交流研修の応募要領や選考過程、注意点

についての説明があった。タイの主力研究に

ついて説明を伺うことができたが、本学内で

行われているタイとの共同研究は生命農学が中心でカセサートと生命農学専攻においてジョイントデ

ィグリープログラムを開設しているということもあり、主力研究は農業というイメージが強いが、今

後は 教育省は科学イノベーション省が一緒になった政治的な背景や第 4 次産業従事者を養成する政

府の Thailand4.0 政策の影響もあり、最先端事業への即戦力を求めるようになっていくとのことだっ

た。なお、現地での受診経験の話に加え、海外から医療観光に訪れるほどの医療大国にしては、タイ

は医療人材が少ないため、先進医療研究にも力を入れているとの話も伺うことができた。これまでの

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業務で本学の教員が海外の研究者との共同研究で JSPS の事業に応募し、不採用となるケースを見て

きたため、JSPS 事業に応募する教員のグラント獲得において大学職員がサポートできることは何か

という質問をしたが、専門的な応募の内容に対してできることはあまりないが、不採用となった後も

研究が継続できる外枠を充実させること、学内等の不要な手続を省かせてあげることなどができるの

ではないかという助言をいただくことができた。

6. 9 月 26 日(木)③カセサート大学(Kasetsart University)

移動中の車両の中で本学事務所が用意してくださったお弁当でお昼を済ませ、約 1 時間程度を走り

午後はカセサート大学の各分野の担当者と 1 時間半程度のミーティングを行った。前日に訪問したチ

ュラロンコン大学とは異なり、会議室の各席にはマイクがついており、各種資料や茶菓子が用意され

ていた。特に力を入れているのは、大学が掲げている政策理念でもある「Green University」で、7

つのキャンパスにおける車

の通行量を制限し、キャンパ

ス内の多くの場所で電気自

動車のシャトルバスを提供

することで交通手段による

大気汚染を防ぐなど、 同大

学の出発が農業大学であっ

た分、環境保存や大地の再建

を重要視していた。茂った並

木など緑が多いことが、敷地

の 21%が木々、30%以上を

作物が占めている※ことが

見て取れた。なお、印象的な取り組みとしては KU Happy Place Center(同大学の学生の精神的な

サポートを行う施設)があり、支援が必要な学生に対する精神科医の配置や Buddy 制度の実施、就職

支援、ハラスメント相談などを行っているとのこと。特に鬱病に関するオープントークと影で話され

がちな精神疾患を表に出して共論化する試みが垣間見えた。同センターでは妊婦学生が在学時に感じ

る不便を軽減するための支援も行っているとのことで、これも日本ではあまりない取り組みに思われ

た。国際関係では、EU が提供する教育プログラムの Erasmus+の、フィンランドやトルコとのモビ

リティプログラムにも申請しているなど、相手大学のランク等に注目し、関係性を深めたい大学を中

心に研究者や学生の交流を積極的に行っているとのことだった。

※参照 URL:http://kugreensdgs.ku.ac.th/setting-and-infrastructure/

7. 9 月 27 日(金) マヒドン大学(Mahidol University)

マヒドン大学は日程の前半に訪問した訪問先と異なり、バンコク市内から約 1 時間を車で移動する

ため、最も早い時間に 集合し、出発した。他の大学と異なり、マヒドンは 3 つのグループに分けて各

テーマに沿ったディスカッションを行い、キャンパスツアーやランチミーティングを含め 4 時間程度

を予定してくださった。1969 年に総合大学となった同大学は、病院を 7 つも保有している医学部中

心の大学で、日本との国際協力も医学を中心に行っており、本学とは部局間協定に基づいた看護学科

との学生交流を行っている。他の特徴としては音楽大学に力を入れており、その音楽大への取り組み

の一つとしてプリンスマヒドンホールという大講堂を所有しており、ベルリンフィルハーモニーオー

ケストラおよびロンドンシンポニーオーケストラも講演を行うほど、優れた音響施設を持っていると

いう。当方は International Affairs and PR グループに参加し、議論を行った。印象的だったことは、

構成員の対外活動を非常に重要視しており、4 件以上の課外活動が卒業要件になっているとのことだ

った。その活動を促進させる取り組みの一環として、ASEAN 国家中の 1 つへの一週間のフィールド

トリップを支援する「MU Backpack Scholarship」で、年間学生や教職員の約 60 グループが海外

に出ているとのことだった。このプログラムは特に応募者たちが 旅程をデザインや相手国の関係者へ

のコンタクトなどを全て構成させ、必要な予算を獲得するという DIY 型のプログラムであることが興

味深かった。教職員に関しては全学から支給される Visiting Professor の旅費支援もあり、年間 20

名を上限に募集を行っているという。広報業務は、20 名のスタッフがウェブ・ビデオ・デザインなど

6 グループに分かれており、入試や教務関連者や部局などと密に連絡をとり、最新情報を仕入れるこ

とに重点をおいているとのことだった。なお、前半に訪問した 2 大学同様、SNS を積極的に活用して

いることだったが、マヒドン大の場合、同窓生のみならず各分野のインフルエンサー(influencer)

を雇用し、ブランドビルディングを行っているとのことで、さらに、Youtube チャンネルは、外注管

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別紙2

理をしているとの話が印象的だった。午前中の情報交換セッションの後は、キャンパスツアー用に制

作された車両に乗り国際部の職員の説明を聞きながらキャンパスの各所を一周し、午後からは用意さ

れていたお弁当を取りながらランチミーティングを行った。ランチミーティングでは International

Relation Division の部長(Director)のとの懇談が行われた。 国際部長の Ms.Senapadpakorn か

らは職員の人事異動について質問があり、「日本では大学職員の異動があると聞いたが、特に管理職に

おいて、後任を決める際の困難点はないか。その基準は何か。」 と質問があったが、個人的には、こ

れは人事異動がほとんどない海外の大学だからこそできる、制度の違いを如実に表す質問だったと思

われる。

8. 国際学術コンソーシアムへの参画についての各大学の見解

訪問した3大学からは、国際学術コンソーシアムに参加する目的として、国際的な視野を養い、SDGs

を基盤にした世界各大学および機関とのコラボレーションを推進するためとの回答であり、

Erasmus+プログラムやそれぞれが参画しているコンソーシアムのイベントに積極的に参加するな

ど、学術コンソーシアムを通じての研究交流のみならず学生・職員のモビリティは共通の関心事であ

ることがわかった。本学のコンソーシアム業務上では、学生を対象にするイベントに日本人学生の応

募率が少ないことが課題になっているため、そのような困難点があるかについて質問をしたが、チュ

ラロンコン大学とカセサート大学、マヒドン大学では異なる回答が得られた。前者では、留学生でな

くても、学生たちの対外活動への意欲はとても高く、そのような困難はないとのことだったが、後者

からは、イベントの時期によってはテスト期間と重なるなどで学生の参加率が低いことがあり、その

ような場合は「IR(International Relation) Embassador」と、対外・内の国際活動のために 任命さ

れた学生たちに声をかけるようにしているとのことだった。特に同大学は「AUN Health Promotion

Network (AUN-HPN)」というコンソーシアムの事務局を務めながら、コンファレンス等の開催もし

ているなどが、特に ASEAN の中でのプレゼンスを高めるための取り組みとして紹介された。事務組

織において、参加している国際学術コンソーシアム別の担当がいるか、という質問には、地域別に担

当が分かれてはいるが、コンソーシアム別の担当はいないということであり、大学がホストとなるイ

ベントがある際には担当に関わらず総出で手伝うとのことが、本学の組織と類似している部分がある

ように思われた。なお、ASEAN 地域およびアジアを中心としたコンソーシアムへの参画を重視して

いるということが共通の回答であったことは、タイの大学の国際戦略方針の現れでもあると思う。

⑦ 研修により得られた成果

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制服姿の学生たち。カセサート大学にて。

⑧ 本学への提言

新しい環境に触れ、異なる考え方に目覚ます

上述したように、マヒドン大学の国際部長からの質問は極めて新鮮であった。今の組織にいながら「人

事は大学もしくは上が決めるもの」という考え方が自然と定着しており他の選択肢があると考えたこと

がなかった私は、その質問を受け、一瞬固まっていた。彼女

の質問は、後任の人事に、前任者が関わることができること

を前提にしたものだったのである。これだけではなく、「大学

生になると制服から離れ私服に変わる」、「大学の電気自動車

は実験用」、「学生への周知手段はメールや学内にある掲示

板」、など、バンコクで過ごした 5 日間は、これまでの生活

経験や業務により何となく固着していた概念をひっくり返

す、殻を破る経験の連続であった。今後の業務においては、

今回の経験から得られた刺激を活かし、1 つのやり方だけが

存在すると考えず、様々な角度から考えると様々な可能性が

生まれることを常に念頭におきたい。

他大学職員との交流

勤務先や職務、年齢や関心事も異なる他大学の職員とともに 5 日間生活できたことは、それぞれ視点

が異なり、話し合いの中でお互い学ぶような場面が多々あった。一方で、普段の仕事では経験できない、

違う世界の一面を経験したいという共通の目標もあり、研修先や文化体験を一緒にしながら交流できた

ことは、有意義な経験や思い出となった。

コミュニケーションの媒体としての英語

今回の研修では、日本語以外に英語が共通語になっており、日本の政府機関での懇談やタイ事務所の

職員が時々通訳に入ってくださった折以外は、全て各機関の対応者との英語による会話が必要であっ

た。ただし、訪問した我々も、先方の対応者の方々もお互い英語を母国語としないため、コミュニケー

ションは決して容易ではなかったように思われる。さらに、本研修は議論に参加できる応募者の英語能

力を前提としないため、今後このような研修においては、お互いこのような問題を乗り越えられる十分

な事前調整や資料のやりとり等により、より充実したコミュニケーションを図ることで、よりお互いを

理解し、学び合うという本来の目的を達成できるのではないかと思われる。

タイ人の留学希望者に魅力ある大学になるためには

訪問したいずれの大学関係者もが口を揃えて話したことは、英語のコースの拡充させてほしいとのこ

最終日には、文化体験で王宮を訪問した。 暁の寺(Wat a Lun)が見える食堂にて、昼食後。

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別紙2

【謝辞】

本研修への参加の機会を与えてくださった本学教育推進部国際連携課の皆様、現地で何から何までお世

話になった本学バンコク事務所のウィラヤー副所長およびナッター事務補佐員、訪問した各機関の対応者

の皆様に感謝を申し上げます。

とだった。日本文化への関心がとても高く、日本語の看板なども容易に見かけられるバンコクの町であ

るにもかかわらず、日本の大学の日本語のコースより英語コースへの進学を希望する学生が多いことを

不思議に思ったが、その意味では、既に G30 が定着している本学は、アドバンテージがあるとも考え

られた。大使館推薦の国費留学生の選考を行っている大使館の書記官も同様のことを話され、タイ全体

的な日本文化への高い関心や留学への要望が実際に日本留学につながるようにするためには、英語プロ

グラムや奨学金制度の充実が不可欠であることが伝わってきた。

広報手段の多様化

訪問した3大学で、広報手段として最も頻繁に使われているとものとしてあがったのは、SNS およ

びホームページであった。本学も WEB のホームページが活性化しており、Youtube など SNS のアカ

ウントも開設しているが、実際活用されているとは言いにくい。タイの大学では Youtube やツイッタ

ー、インスタグラム、フェイスブックの他にもラインのアカウントも運営しており、とりわけマヒドン

大学の場合は Youtube チャンネルを外注により管理しつつ、キッズチャンネルを運営し、大学の活動

の広報という目的以外に一般向けの情報提供も行っているとのことだった。学生向けのお知らせなど

も、ラインアカウントをもって行われることが多いというような、現在の本学の業務の在り方では少し

違和感を覚える部分も、そのようなやり方が浸透している環境では、効率のいい方法になり得ると思わ

れる。大学の従来のやり方にとらわれず、入学希望者や在学生、地域の方に名古屋大学の活動について

広く知ってもらえる機会を与え、必要な情報がより手に入りやすくする手段は何かを考慮し、時期の流

れや社会一般のニーズを踏まえた広報手段の工夫が必要になってくると思われる。

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別紙2

2019年度職員の海外研修報告書

令和元年 10月28日 事務局長 殿

所 属 研究協力部研究支援課 職 名 事務職員 氏 名 杜 方可

① 渡航期間

令和元年 9月24日(火) ~ 令和元年 9月29日(土) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 A-1 タイ)

A-1 タイ

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

タイにおける研究環境及び研究支援の現状を調査することで、

本学の研究支援の強みと弱みを見つける。

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所

愛知県バンコク産業情報センター Director

訪問機関等名:Chulalongkorn University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Nattakarn

Chamsuwanwong Global Academic Affairs Division Head of Unit

Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

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訪問機関等名:Nagoya University Bangkok Office

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya

CHENCHITTIKUL 名古屋大学バンコク事務所 副所長・特任助教

Narrha

PHETCHARAT 名古屋大学バンコク事務所 事務補佐員

訪問機関等名:Japan Embassy

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 在タイ日本国大使館 一等書記官

訪問機関等名:日本学術振興(JSPS)バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 日本学術振興会 バンコク研究連絡センター 副センター長

濱端 悠祐 日本学術振興会 バンコク研究連絡センター 国際協力員

訪問機関等名:Kasetsart University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kornkanok

Wangbenjaporn

International Studies Center,

Office of the Registrar

Management and

Administrative Officer

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division Foreign Relations Officer

訪問機関等名:Mahidol University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Theeta

Rojnkureesatien International Relations Division

International

Relations officer

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別紙2

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所

事務所の業務は以下三つに分かれる:

1.海外起業者へのサポート

2.日本に進出する企業へのサポート

3.外国人観光客を日本に誘致

タイの概況について紹介してくださった。タイ

は穏やかな国であり、日本と同様に、少子高齢化の

国である。近年、タイの高等教育の在学率(2016

年では 49.1%)が高くなり、国立大学が 33 校あ

る。同時に、タイは世界最大級日本人社会と言われ

る。日本人向けの病院、幼稚園、学校、スーパなど

が集中的にある。また、日本食飲食店の進出が続

き、バンコクでは約 1700 店があり、タイ全国で

は約 3000 店がある。

Chulalongkorn University

チュラロンコーン大学は 1917 年に創立されたタイで最古の国立大学であり、タイの最高学府であ

る。学生数は 37000 人で、19 の学部がある総合大学である。そのうちに約 4%は外国人留学生で

ある。正規日本留学生は 16 人、交換留学生をも含めれば、約 180 人日本留学生がいるらしい。また、

タイでは大学生も日常的に制服を着ている。制服の形は決まっており、シャツのボタンやベルトでそれ

ぞれの大学を区別しているという話を伺い、日本との大きな違いを感じた。

・タイの新入試システムについて

2018 年度から有効となるタイ大学統一入学制

度(TCAS)という新しい大学入学制度を正式に開

始した。新しい制度の下で、高校生は大学の入学資

格を得るために、5 つの競争ステージが用意され

ることとなる。第 1 ラウンドは、受験生の成績や

彼らのポートフォリオを元にした定員制度を用い

ており、筆記試験はなく、入学基準は大学が設定し

て実施される。第 2 ラウンドは、別の定員制度が

用いられ、特に優秀な生徒のために大学独自の選

考方法で試験が実施される。第 3 ラウンドは、「ジ

ョイント型直接入試」と呼ばれ、受験生は国立教育

研究所による統一試験を受ける必要がある。試験

には、タイ政府の学力テスト(O-Net)、一般適正審査(Gat)、職業適性審査(Pat)に加え、9 つの

主要科目がある。受験生は 4 学部を選択することができる。第 4 ラウンドは、一般入試である。試験

科目は第 3 ラウンドの主要科目と同様であり、受験生は 4 学部を選択することができる。最後は、「独

立直接入試」と呼ばれ、大学が独自の入試方法を用いて、受験生を選考することができる。

・研究支援について

研究者などの派遣と招へいについて、大学からファンディングが提供される。チュラロンコーン大学

は大阪大学との共同研究がある。一部分の国際交流事業プロジェクトは、効率よく運営されるため、大

学レベルではなく、部局単位で運営されている。

Nagoya University Bangkok Office

名古屋大学バンコク事務所は 2014 年協定校チュラロンコーン大学にて設立した。常駐者はウィラ

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ヤーさん(副所長)とナッターさん(事務補佐員)二人である。

・業務内容は以下 6 つがある。

1.名古屋大学とタイの教育機関との交流の促進・イベント開催

(NU Fair in Bangkok 2015、CU Centennial Ceremony 2017 など)

2.学生派遣活動

(G30、June Fair(Study Fair at Embassy)、高校訪問など)

3.教育機関と産業機関とのコラボレーションの促進

(CU-NU Jiont Symposium、MOU signing ceremony など)

4.名古屋大学の学生や職員・教員の現地サポート

(全学教養科目学生研修の実施、職員海外研修の実施など)

5.タイ支部名古屋大学同窓会の活動のサポート

6.日系機関・企業との良好関係の維持

・事務所としての課題

名古屋大学の周知情報や事務通知がすぐに届かないことに困っている。例えば、東海国立大学機構の

件について、学外の方から情報を得る前に、学内通知がなかった。部局の締切などをも通知してこない

場合が多い。

Japan Embassy

在タイ日本国大使館は大規模の日本大使館である。日本からの職員は約 60 人であり、現地職員は

約 100 人である。以下事項について、説明してくださった。

・大使館の仕事

大使館の仕事は日本人の保護、日本とタイの関係構築、国際社会での協力に分かれている。

・タイの概観

タイの気候は雨期と乾期に分かれる。3~5 月が一番暑く、

日中 40 度を超える日もある。タイの面積は 51 万平方キロ

メートルであり、日本の約 1.4 倍(使える土地は日本の約

10 倍)である。タイの人口は約 6891 万人(うち、バンコ

クに約 860 人)である。バンコクと地方の経済の格差が大

きい。タイの国民のほとんどが仏教徒(約 95%)である。

・日本との友好関係

留学生数:タイ→日本 3962 人(2018)、

日本→タイ 345 人(2012)

日本の教育機関における英語プログラムが少ないことは、

タイ学生の日本への留学の妨げである。また、情報共有の格

差も大きい。優秀な学生が留学しようと思っても、情報が手

に入りにくい。日本にどんな大学があるとかもわからない学

生もたくさんいる。それに対して、一つの課題がある。日本

の大学がタイに事務所を設立するコストが高いという課題

です。解決するため、いくつかの大学が連携して共同の事務

所やオフィスを設立すべき。

日本学術振興(JSPS)バンコク研究連絡センター

日本学術振興会バンコク研究連絡センターは、日本学術振興会(JSPS)の 3 番目の海外研究セン

ターとして平成元年(1989 年)に開設されました。東南アジアの中心地としての地の利を活かし、

日本と ASEAN 地域全体の学術交流の促進を目的としています。

最初に、冨山副センター長が JSPS の概要や国際事業について説明してくださった。

・JSPS の仕事

1.学術研究の助成(科研費 75000 件課題/年)

2.研究者の養成(特別研究員、海外特別研究員など)

3.国際交流の促進(外国人研究者招へい事業、論文博士号取得希望者に対する支援事業、二国間交流

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別紙2

事業、研究拠点形成事業など)

・バンコク研究連絡センターの業務

1.JSPS 国際事業の東南アジアでの広報

2.JSPS 同窓会の活動サポート

3.大学の国際化支援

次に濱端国際協力員が、JSPS 国際学術交流研修について、自身の経験や感想を交えながら情報を

伝えてくださった。JSPS 国際学術交流

研修は、⼤学等の職員を対象として、国際交流に関する幅広い⾒識と⾼度な実務能⼒を有する専⾨的な職員の養成を⽬的とした国際学術交流研修である。受講者は「国際協⼒員」として、JSPS 東京本部における国際学術交流の実務研修(1 年間)およびJSPS 海外研究連絡センターにおける海外実務研修 (1 年間)、という 2 年間の研修を受講する。

最後に、研修職員の質問に対して、二国

間交流事業の採用に関する情報から、大

学事務職員のキャリア形成に至るまで、

幅広く情報提供してくださった。

Kasetsart University

カセサート大学はタイで最初の国立農科大学であり、タイ国内で3番目に古い歴史ある大学で、

1943 年の創立以来、現在に至るま

で幅広い分野の学部を設立し続けて

いる。現在、4 つのキャン

パスに 28 学部で構成されており.、

学生数 68,000 人を超えるタイ国

内でもっとも規模の大きい大

学の一つである。2010 年からは主

要方針として国際化の強化を図り、

世界の主要大学との学術交流、共同

研究活動などに多くの支援を実施し

ている。

・農学領域の研究以外に、実用的な研究が重視されている。例えば、健康食品の開発など。

・学内に「Happy Place Center」という施設が設置され、学生たちのメンタル支援、障害者学生の支

援などの業務が行われる。メンタル支援として、相談窓口、メンタルケア、メンタルに関する講演会、

メンタルに関する書籍や自習できる落ち着く空間の提供などがある。障害者学生の数について、入学オ

リエンテーションの際にアンケートで把握している。

・大学が運営している学生向けの健康保険があり、学生なら誰でも安く契約できる。

・グリーンキャンパスに力を入れている。図書館の机や椅子などがリサイクル製品である。

Mahidol University

マヒドン大学は、バンコクに本部を置くタイ王国の国立大学である。1943 年に設置された。 創立

は 1888 年にラーマ 5 世によって設置されたシリラート病院の設置まで遡り、1943 年にタイで初

めて医科大学として設立されたタイの国立大学。現在は 16 学部、9 つの研究所、5 つのカレッジ、5

つのセンターを有する総合大学へと発展し、キャンパスはバンコクを中心に 4 つ有している。大学名

は、「タイの医療の父」とも言われるマヒドン・アデゥンヤデート(ラーマ9世の父)王子に由来する。

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・大学主要収入は附属病院収入、政府補助および学

費である。

・研究経費は主に財団や企業からである。

・国際共同研究分野について、農学、医学、工学、

建築学のが多い。

・学部では、英語プログラムがあまりない。大学院

では、英語プログラムがある。

・招へい研究者(Visiting professor)は年に約 20

人がいる。研究者の海外派遣にも力を入れている。

・事務職員の課題:仕事が多いため、済んだ仕事の

フィードバックする余裕があまりない。

文化見学

・王宮を見学

王宮は 1782 年に建設された。国王の

宮殿、即位式の建物、王室守護寺院のエメ

ラルド仏寺院などのほか、宮内庁や官庁

などの建物が、四方を長さ 1,900 メート

ルの壁に囲まれた面積 218,000 平方メ

ートルの敷地に建てられている。1782

年ラーマ 1 世は即位後、チャオプラヤー

川の西側にあるトンブリーは王都として

相応しくないと考え、対岸の東側のバン

コクへと遷都した。トンブリーはアユタ

ヤー陥落後 15 年間ダークシン王の都で

あった。ラーマ 1 世は宮殿のほかに行政

を司る各種省庁なども王宮に建てられ

た。ドゥースイット・マハー・プラ-サー

ト宮殿とプラ・マハー・モンティエン建物

群は王宮内で最初に建てられた。

・ワットポー寺院

涅槃仏で有名な王宮寺院、ワット・ポーが

王宮の南側にある。ラーマ 3 世によって造

立された涅槃仏は、全長 46 メートル、高

さ 15 メートル。その大きさもさることな

がら、特に興味深いのが仏像の足の裏であ

る。足の裏には仏教の世界観を現した 108

の図が、美しい螺鈿細工によって描かれて

います。寝釈迦仏の周りを一周できる作り

になっていて、背後からは後頭部も見る事

ができる。枕にまで細かい装飾が施されて

いる。また、ラーマ1世から4世を祀る色

鮮やかな仏塔は寺院にある。緑の塔がラー

マ1世、白の塔がラーマ2世、黄色の塔が

ラーマ3世、青の塔がラーマ4世を表して

いるそうである。

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別紙2

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、名古屋大学教育推進部国際連携課国際総務係あて提出願います。

1.今回の海外研修に通じて、他大学(タイの3つの大学とメンバーたちの大学)の研究支援について

知ることができた。新聞やニュースなどを日常的に読む習慣を身につけることに努力し、事務職員と

して、研究者たちの研究を理解しようという意欲が大切だと教えてくださって、大変勉強になった研

修でした。

2.日本学術振興会(JSPS)バンコク研究連絡センターを訪問した際に、冨山副センター長は JSPS

のことではなく、自分のキャリアについても詳しく紹介してくださった。冨山副センター長は自分の

キャリア目標に対して、長年勉強し続け、少しずつ目標に接近して、最終的に達成できた、という話

を聞かせていただいて、感動しながら大変勉強になったと思う。もちろん、JSPS への理解が深まっ

たことや、国際学術交流研修について非常に有意義な情報を得ることが出来た。

1.名古屋大学の周知情報や事務通知がすぐに届かないことに困っているようである。例えば、東海国

立大学機構の件について、学外の方から情報を得る前に、学内通知がなかった。部局の締切などをも

通知してこない場合が多い。したがって、情報共有のため、名古屋大学バンコク事務所をも周知メー

リングリストに入れればいかがでしょうか。

2.バンコクの交通が渋滞しやすく、研修中移動していた時にも、渋滞という原因で、よく訪問先と約

束した時間より遅くなったりしていた。また、日タイ両側のメンバーがすべて英語が得意なわけではな

いので、たまに Veeraya CHENCHITTIKUL さんや Narrha PHETCHARAT さんの通訳が必要とな

る。したがって、渋滞の時間や通訳の時間などをも予想しながら、日程案に反映できたらよかったと思

った。

3.他大学を知るために、職員との意見交換以外に、キャンパスを回して、自分の目で発見することも

不可欠である。訪問した 3 つの大学のうちに、マヒドン大学しか「キャンパス見学」ができなかった

ことに対して、少し残念なところだと思った。

1.まずは、今回の研修の機会をくださった、事務局長はじめ研究支援課、国際連携課の皆様、そして

当日のアテンドまでしてくださった名古屋大学バンコク事務所の皆様に、心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

2.今回の海外研修の参加者は、勤務されている大学の部課は様々だったが、それぞれの視点および

業務に立ち、関心をもって訪問先で積極的に討論することができた。移動中でも、レンタルワゴンの

中に自分の大学・部署の業務について、意見交換できて、よかったと思う。また、タイの経済、教育

事情の研修が先にあったので、大学等教育機関への訪問時の理解が深くまでできた。

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別紙2

2019年度職員の海外研修報告書

令和元年10月31日 事務局長 殿

所 属 名古屋大学 文系事務部経理課 経理企画グループ

職 名 事務職員 氏 名 小島 真理子

① 渡航期間

令和元年9月24日(火) ~ 令和元年9月29日(土) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国 A-1 タイ

③ 参加者氏名等(本人含む、派遣当時)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

国際力の向上 現地事情の取得 新たな大学間交流の発掘

⑤ 訪問機関等 (敬称略)

訪問機関等名:日本貿易振興機構バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所愛知県バンコク産業情報

センター Director

訪問機関等名:Chulalongkorn University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

Nattakarn

Chamsuwanwong

Global Academic Affairs Division

Non-Degree Unit Head of Unit

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訪問機関等名:Nagoya University Bangkok Office

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya

Chenchittikul Deputy Director

Nattha

Phetcharat

Administrative

Assistant

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 一等書記官

訪問機関等名:独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 副センター長

濱端 悠祐 国際協力員

訪問機関等名:Kasetsart University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division

Foreign Relations

Officer

Kornkanok

Wangbenjaporn International Studies Center, Office of the Registrar

Management and

Administrative

Officer

訪問機関等名:Mahidol University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Theeta

Rojnkureesatien International Relations Division

International

Relations Officer

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別紙2

日本貿易振興機構バンコク事務所

JETRO では、①海外ブリーフィングサービス②ビジネスサポートセンター③海外ミニ調査サービ

ス④ジェトロ海外情報ファイル(J-File)⑤貿易相談この5つを柱として業務をされている。実際の事

例を交えながら、愛知県より出向されている鈴木様より、タイの概要とアセアン経済についてご説明い

ただいた。

日本→海外への事業展開の支援は

もとより、海外→日本への事業展開

も支援しているとのことで、愛知県

へ IT 企業を誘致した際のお話しも伺

えた。設立支援だけでなく、その後の

支援にも力を入れているそうで、現

地企業や現地大学とのマッチングも

行っているとのこと。

政治変動(軍政からの脱却)や人口

構造の変化(少子高齢化)、経済構造

(地域格差と第一次産業の生産効率

の低さが課題)などのタイの現状の

簡単な説明もいただき、その後の研

修にも大変生かされた。

ご説明者が地方自治体からの出向

者とのこともあり、他自治体とのつ

ながりをお尋ねしたところ、国際経

済活動支援を専門として人員を派遣

している例は少なく、あっても事業上でのつながりは薄いとのことであった。自治体同士での情報や

リソースの共有も効果的ではないかと感じた。

Chulalongkorn University

Chulalongkorn 大学はタイで も

古い歴史を持つ、国際的にも権威ある

大学の一つである。キャンパスはバン

コク市内のもっとも賑やかな一角にあ

り、その繁華街にある様々な商業施設

などのオーナーでもある。そのため、資

金面でも大変恵まれていて、珍しい経

営スタイルをもつ大学である。タイの

大学では、キャンパス内(もしくはキャ

ンパス間)を走るシャトルバスが一般

的だが、こちらのキャンパスには日本

の企業が参画して一人乗り電気自動車

も導入されているようであった。

各研修生が事前に質問していた事項

について回答いただき、研修生から随

時質問をしていった。その中でも印象

的であったものをいくつかあげる。

① オンライン学習コースの充実

各分野でのコースの用意が多数あり、一般にも公開されているものもある。すでに 25 万人の受講

実績があり、他大学とコラボレートしたクラスもある。受講完了すると確認テストのようなものを受

け、受講証明書のようなものが入手できるとのこと。

JETRO 玄関前にて鈴木様と

Chulalongkorn 大学の皆様と

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② 入学システムについて

2018 年度より TCAS という新しい入試制度が開始された。日本でいう AO 入試のような筆記試

験なしのステージから、センター試験のようなステージまで 5 つのステージが設けられて、受験者も

大学側もより多角的に選考が行われるようになった。<<参考:日本学術振興会【ニュース・タイ】大学

審議会 新入試システムの運用を開始 https://00m.in/1zoay >>

③ 給与体系について

タイコース、国際コース、英語コースと大きく分けて 3 種のコースが設けられているが、英語での

指導を前提として雇用されていない教員が英語での講義をする場合には、そのインセンティブとして

いくらか追加で支払うとのこと。

Nagoya University Bangkok Office

2014 年 4 月に、Chulalongkorn 大学のキャンパス内

に設立。①タイの教育機関との交流促進やイベント開催②名

古屋大学への学生のリクルート③産学官連携の促進④名古

屋大学の学生や教職員の現地サポート⑤名古屋大学同窓会

タイ支部のサポートを主な業務としている。

現在 50 以上の日本の大学が事務所をタイに設けている

が、これは世界的にもまれなほどの密集率である。そういっ

た中で、各大学との連携をはかるため Japan University

Network in Thailand(JUNThai) という会合が、2015

年 1 月より設置されている。タイが政治的に不安定な局面

にあり、セキュリティ上での不安を各大学が抱え、その情報

交換が重要となった背景もあり始まった会合であるが、メン

バー校も多くなり活動の幅を広げようとしている。現在、費

用や役割の分担、対外的な窓口の役割をどう設けるかを協議しているとのこと。在タイ日本国大使館、

日本学術振興会(JSPS)バンコク研究連絡センター、日本学生支援機構(JASSO) 、国際交流基金(The

Japan Foundation)、科学技術振興機構(JST)などの公的機関が、常任オブザーバー機関として参

加をしており、各業界からの注目度も高い。実際に今回の他の訪問先にて、話題にもあがった。

各大学の事務所はそれぞれ法人格の種類から違い、NGO として活動している大学(例:大阪大学、

京都大学)、企業として活動している大学(例:上智大学)など様々である。名古屋大学は法人格を持

たないままでの運営を行っているが、税務での煩雑さがない一方で、資金の管理の難しさ(銀行口座を

開設できない)や各契約を現地で行えないなどの問題も抱えている。

名古屋大学への学生のリクルートを主な業務のひとつとしているが、学内での情報共有プロセスが

確立されておらず、情報が届いたころには申し込み期日がすぎてしまっていたということも発生して

しまっている。在外事務所というロケーションもあるが、これは改善すべき事項であると感じた。また

雇用条件や出張のルールなども日本基準となってしまうとのことであった。不都合を感じることも多

いはずである。たとえば派遣社員であったとしても、タイでは勤続年数と評価によって昇給のチャンス

がある。一般に、在外事務所での報酬に対して、物価換算に注視することはあっても、現地での事情に

焦点をあてることは多くない。国や地域での事情を鑑みて、各条件やルールを公平かつ効率的に決定

していけると、優秀な人材の確保、無駄の削減ができるはずだと感じた。

在タイ日本国大使館

在タイ日本国大使館は、市街中心部からほど近い各国の大使館が並ぶ一角にある。地下鉄 MRT の駅

も近く、道の反対側には大きな公園が広がる気持ちの良いエリアである。他地域の大使館に足を運んだ

ことがあるが、敷地面積の広さと施設の充実度合いは世界屈指であろう。

今回ご対応くださった久芳様は、文部科学省からの出向者とのことで、元々は英語が得意でなかった

こと、それをどう克服したかなど、近しい話題から、大使館が抱えるミッションなど壮大なお話まで和

やかにお話しいただいた。

国費留学生の選定も大使館が行うが、かつて彼らは特別な存在で、卒業後は国内の要職に就くことが

バンコク事務所にて説明を受ける

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別紙2

多かったそうだが、いまでは学生の層も厚くなり様々な

路に進むとのことであった。経済成長を経て、国民全体

の教育レベルが上がり、学生の層が厚くなったことが要

因ではないかとのことであった。たしかに行程中も全く

不安を感じることもなく、経済的な豊かさを感じること

が多かった。

バンコクは地理的にも歴史的にも日本と近しい間柄

であり、皇室と王族との関係も伝統的に良好とのこと

で、実際に今の大使館の敷地は王族からの提供があった

という逸話もある。さらに良い関係にしていけるように

更なる相互協力と理解が必要だと感じた。

独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター

JSPS は 1932 年 12 月に創設

され、科学研究費助成事業などの

学術研究への助成や、特別研究員

事業などの若手研究者養成を行っ

ている。バンコク研究連絡センタ

ーは 1989 年に開設され、日本と

ASEAN 地域全体の学術交流の促

進を行っている。

今回ご対応くださった、冨山副

センター長、濱端様(国際協力員)

ともに国立大学からの出向者であ

り、JSPS の概要や国際事業につ

いてのご説明だけでなく、大学職

員としてのキャリア形成について

も意見交換をすることができた。

お二人とも、向学心を絶えず持ち、

そしてそれに対して努力を重ねていらっしゃって、自分自身の刺激となるディスカッションであった。

JSPS の基幹事業である科研費をはじめ、若手研究者の支援や、国際事業を広げようとしている中

で、海外事務所の存在感の高まりとともに、大学職員のステップアップの場ともなっているようであっ

た。

玄関前にて皆様と

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Kasetsart University

Kasetsart 大学はタイで 初の国立農科大学として

設立され、4 つのキャンパスに 28 の学部をもつ。そ

の中でもメインキャンパスはバンコク市内の北部にあ

り、市内中心部から高速道路でのアクセスが可能で利

便性も高い。 農科大学としてのルーツからか、大変牧

歌的な雰囲気を持つキャンパスであった。農作物や加

工品を売る売店もあり、地域とのつながりも感じられ

た。キャンパス内には、定期的にキッチンカーが並び、

学生や教職員の満足も高いようであった。夕方 5 時す

ぎに訪れたが、学生を中心に大変賑わっていた。

訪問時には国際部はもちろん、各分野の担当者が大

勢出席くださり、大変温かくお迎えいただいた。それは

こちらが恐縮してしまうほどに丁寧で和やかで、感動

を覚えるほどであった。

各研修生が事前に質問していた事項について回答

いただき、研修生から随時質問をしていった。その中でも印象的であったものをいくつかあげる。

① HAPPY PLACE CENTER

精神的な問題を抱える学生を支援するためのセンター。学生課によって運営されており、Counseling

Service Center と Service for Supporting Student with Special Needs で構成されている。月 100

人の相談者が訪れ、必要があれば医療機関へつなぐことも行っている。病気についてのセミナーの開催や、

関連する図書類の提供もある。

② 多様な経済的支援

寄付金が主な原資である返済不要なもの、生協が提供するもの、大学収入があった場合のもの等、

様々な奨学金が利用可能。大学が健康保険を運営しており、通院 2000THB、入院 8000THB が支給さ

れるとのこと。対象とならない病気もあるが、たとえば熱帯地域に多いデング熱は対象となる。EU がヨ

ーロッパ地域向けに提供する教育プログラム、Erasums+にも参加しており研究者や学生、基金の受け入

れも行っている。

<<参考:European Commission https://ec.europa.eu/programmes/erasmus-plus/node_en >>

③ 大学の国際化

国際学術コンソーシアムも、タイプ

ログラムを中心とする学生の参加が多

いとのことで、学生の国際化が図られ

ている。日本では国際学術イベントを

開催しても、日本人学生の参加割合が

低い。このあたりに日本の国際化の遅

れを実感する。

④ 就職支援

就職支援としては、セミナーの開催

や学生向けのアプリの開発、就職説明会

を開催しているとのこと。タイでは失業率が 1.2%と低く、また Kasetsart 大学は国内有数の国立大学で

あるから、積極的な支援という印象はなかったが、学生が必要としたときに提供できるサービスをという姿

勢が見えた。

⑤ 留学生支援

無料のイベントやお祭りを開催し、留学生同士はもちろんタイ人学生との交流も促進している。タイの

観光ツアーを企画したり、食べ物や芸能文化をテーマとしたイベントを行ったり、相互理解を深めるような

内容となっている。

どうしても留学生は出身国ごとに集まってしまう。それはとても自然なことで、けして悪いことではな

い。だがその出身が本人だけだとどうであろうか。何か困ったことが起きた時に日常的に相談する相手が少

キッチンカーが構内に並ぶ

会議室にて皆様と

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別紙2

ないということは、メンタル面での問題だけでなく安全面でも問題である。そういった問題を解決するため

にも、こういった取り組みはとても大切だ。名古屋大学でも国際教育交流センターを中心として、様々な取

り組みをなされているが、改めてその重要性を感じた。

⑥ 国際プログラム・英語プログラム担当教員の処遇

国際プログラム・英語プログラムの担当教員の処遇についてお尋ねしたところ、授業料から異なるため

給与形態が全く異なるとのことであった。

研究者を引き付けるキッカケはけして給与だけではないが、動機付けとして有意であることは明白であ

る。

Mahidol University

Mahidol 大学はタイで初め

て医科大学として設立された

国立大学である。その創立は、

1888 年のラーマ 5 世によっ

て設置されたシリラート病院

まで遡る。現在は 16 学部、9

つの研究所、5 つのカレッジ、

5 つのセンターを有する総合

大学への成長している。QS

World University Ranking

では、医学分野で世界トップ

100 にランクされている。

今回はメインキャンパスで

ある、Salayal キャンパスにお

邪魔した。バンコク市街から西

に 30 ㎞、車で 1 時間ほど。

喧噪と離れて落ち着いた雰囲

気のキャンパスである。緑化さ

れたキャンパスとして評価が高く(UI Green Metric World University Ranking にて国内 1 位)、区

画整理は万全でありながら自然な空気感を保っており、

その美しさに感嘆した。

訪問時には、国際部を中心として各分野の担当者は出

席くださり、和やかな雰囲気でお迎えいただいた。

各研修生が興味ある分野ごとにグループに分かれ、そ

れぞれの専門の職員との意見交換を行った。その中でも

印象的であったものをいくつかあげる。

① 充実した国際プロジェクト予算

教員・職員・学生ともに、国際化のためのプログラ

ムや予算が潤沢であるという印象であった。たとえば、

学生向けであれば自分で研修先や旅程等、全てコーディ

ネートするようなもの、教職員向けであれば外国人研究者の招へい旅費や、自ら訪ねるための旅費、会

議費など、自由度が高いプログラムが多いようであった。

学内での各プログラムの認知度は高く、応募が開始されるとすぐに枠が埋まってしまうとのことで

あった。海外に目が向くことが大変自然なこととして定着していると感じた。

② 現代的な広報手法

Mahidol 大学の皆様と

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SNS(facebook, twitter など)を活用した広報は、多くの大学で行われているが、いち早く

YOUTUBE でのチャンネル開設をしている。大学の保有するチャンネルは複数あり、国内向け、子

供向け、海外向けとターゲットをよく絞っている。その管理は外部企業に委託しており、ヘルスケア

に強い専門性も助け、ストレッチ動画やエクササイズ動画、健康の啓蒙動画など、言葉が分からない

ままでも楽しめる動画も多く、総じて再生回数も数十万回を超えているようであった。

<<参考 https://www.youtube.com/user/mahidolchannel≫

③ 国際力豊かな職員

今回の訪問では、各分野からご参加いただいたが、皆さん大変英語が堪能で Mahidol 大学のスタ

ッフのレベルの高さを感じた。特に国際部では、英語ネイティブの職員を専門職員として雇用してい

るそうで、国際展開力に力を入れていらっしゃった。実際に、プレゼンテーションや意見交換の方法

も、大変洗練されていて、とても理解しやすかったし、良い印象を受けた。

今回、主に接遇を担当してくださった、Theeta Rojnkureesatien さんは高校生のころから、タイ

から英語圏へ留学をされていたそうで、磨き抜かれた実力を感じる方であった。国際理解について「私

たちは同じだけど違う」という言葉が印象的で、それぞれの違いを尊重することの重要性を共感しあっ

た。各職員の語学力もそうだが、自分を表現することに長けた方が多い印象であった。

④ トップレベルの芸術系学部

医科薬科大学としての印象が強い

Mahidol 大学だが、芸術系の学部も強

化しているようであった。国内で一番

といわれる音楽のために設計された

Prince Mahidol Hall(写真参照)を有

し、敷地内にある東南アジアの森林を

模したエリアでは民族楽器専攻コース

がそちらで演奏することもあるとのこ

と。

訪問時には、近く、ベルリンフィル

が来校し演奏会が開かれるとのこと

で、ポスターやラッピングされたバス

が走行していた。

広い意味で「癒すこと」を考え広が

っていった学術領域と推測されるが、十

分な環境と資金力があることがみてと

れた。

意見交換会を終え、キャンパス内を走るトロリー

バスにてキャンパス内の見学もさせてくださった。

生命系の学部が持つ農場とその即売所があり、地域

とのつながりも感じられたり、また学生・教員向け

の宿舎も整備されていたりと、そこで過ごすひとの

ことが考えられたキャンパスであった。加えて、教

職員が缶や瓶などの資源ごみを持ち込むと、いくら

かの現金と替えるというシステムがあったり、先述

のように整備された緑化が進んだキャンパスであ

ったりと、持続可能性にも目が向けられていること

を感じさせるキャンパスであった。

Prince Mahidol Hall

開放的なトロリーバスでキャンパスツアー

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別紙2

文化体験

市街地にある、王宮と Wat Phra Kaeo(エ

メラルド寺院)を訪れた。仏教が国の基礎で

あり、また独自の発展を遂げていったことが

見て取れた。

⑥ 研修により得られた成果

⑦ 本学への提言

1. 自分の今を知れた 観光客ではなく、ビジネスパーソンとして何がどれだけできるか肌で感じられた。

2. アジアの今を知れた 数字や写真だけでない、今のアジアを見ることができた。 教育機関だけでなく、在外政府関係機関を訪問できたのも、知見が広がった。

3. 課題が見えてきた 自分の言語力と、表現力を成長させる必要があると改めて感じられた。

1. 労働環境の整備 国や地域によって労働環境は大きく異なる。様々な事情に合わせて完全なる等価とすることは難しいかもしれないが、給与の物価換算だけではなく労働事情を調べる必要があると感じた。

2. 外国人研究者と学生のリクルート強化

国内外問わず、優秀な人材の確保はすべての大学の課題であり、人口構造の変化、ヒト・モノ・情報の流動性の高まりなど様々な背景を伴い、その重要性は高まるばかりである。本学でも G30 プログラムの充実をはかり、その卒業生の活躍ぶりは国内外でも反響を呼んでいるが、優秀な教員の確保維持がまず直面する課題の一つだ。 日本では国立大学の授業料は省令に基準額が定められたおり、その自由度は低い。近年では、値上げに向けて動く大学もいくつか見受けられるが、まだまだ少数である。 本学でもまずは一部のプログラムから授業料の値上げを実施し、それを原資として教員へのインセンティブを設定してはどうであろうか。外国人教員の向けには、給与だけではなく、例えば行政手続きの代行や、住居確保のサポートや借り上げ住宅の用意もインセンティブとして十分に機能するであろう。 また留学生候補への窓口となりえる部門の強化も必要だ。例えば海外拠点への情報伝達経路の確立、英語での情報の充実、プログラムの質の向上、教員情報の充実等があげられ

Wat Phra Kaeo にて

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⑧ 感想

る。

3. 教職員・学生の海外渡航の機会の充実 千葉大学が令和 2 年度入学者から、学部生・大学院生への留学必修化を実施する。基本的に短期(1 週間から 2 箇月程度)で、実践力に直接はつながらないかもしれないが、旅行目的ではなく他の国を訪れるという経験はかけがえのない財産となるはずだ。 教職員へは、海外研修や国際研究のための奨励金などを設定してはどうであろうか。特に、現状では全体の意識改革が必要な局面にあると推測されるから、ある程度の語学研修や海外研修を必修にしても良いのではないだろうか。

4. Mahidol 大学との全学協定締結 本学と Mahidol 大学との交流実績はまだまだ少ない。今回の訪問で痛感したが、大変進歩的で、素晴らしい大学である。 メディカルツーリズム大国であるタイをけん引し、1986 年から Tourism and Hospitality Management プログラムを設け、早くから多角的に医療をとらえていたMahidol 大学から学ぶべきことは多いはずだ。特に本学の所在する愛知県は、あいち医療ツーリズム推進協議会を設置するなど、積極的に推進している自治体である。本学へのこの分野での活躍は期待されるばかりだ。 こういった背景から、従来の部局単位でなく、大学全体での交流を働きかけていけたらと望む。

5. 在外事務所の他大学との共同利用 在外事務所は国際共同研究や、留学生のリクルートなど、どの大学にとっても大変有用な存在である。ただ、その特殊性、人員の確保、資金の管理、現地法の遵守、そしてもちろん管理経費と、大学にとってコストがかかり維持が難しい存在でもある。 対外的にも、例えば日本の大学と何かプロジェクトを始めたいという時や日本に留学したいという時に、窓口が一つであればよりスムーズに 適な答えを出せるだろう。 コストと利便性というこの 2 点で、ぜひ他大学との共同利用を検討してはいかがだろうか。

マルクスは資本論で「Ich bin ich, spiegelt sich der Mensch zuerst in einem andren Menschen. (人間はまず他人のなかに自分を映してみるのである。)」と書いた。彼は、、物の価値について論じるためにこの一文を用いたが、これは国際感覚を身につける重要性をも表している。自国を知るには、他国を知り、他国を通じて自らを理解するしかないのだ。 日本ではパスポート取得率が低い。先進国 低水準といわれる。4 人に 1 人しかパスポートを持たない。その原因は、島国であるということ、航空券代が比較的高価であること、国内で生活が十分完結できてしまうこと、様々考えられるが、とにかく私たちは日本から出ない。もちろんそれ故にユニークな文化を形成できたし、それは私たちの個性でもある。 しかし、ヒト・モノ・情報の流動性が高まり、小さくなりつつある世界では国際協力・国際競争が必要不可欠だ。国際社会から孤立しては、我々は生きていけない。そうした時に、自らを知らず何ができるだろうか。 幕末、世界の貨幣相場を知らないまま鎖国を解き、日本貨幣と海外貨幣の交換比率の非均衡が生じた。そのため、日本から大量の金が流出し大きな経済混乱が生じた。この事件に限らず、あらゆる時代あらゆる地域で、そのものの価値を知らないままに交易をしたために生じた経済混乱は存在する。このように、その価値その本質を見極めることは、自らに近いものであっても、大変に難しい。 私は幸運なことに旅行として海外を訪れることは少なくなかった。それでも目的を変え、「仕事」として他国を知ることは、また新たな視点を得られたと確信している。自分がビジネスパーソンとして、どれだけ何が出来るのか、また本学が国外からどのように見られているのか、それを肌で感じられた 6 日間は何年もの価値があったと感じている。またこういっ

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別紙2

た機会がいただけるその日まで、日々精進を怠らぬようにしたい。

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別紙2

2019年度事務職員の海外研修報告書

令和元年10月31日 名古屋大学 事務局長 殿

大学・所属 岐阜大学・ 教育学部総務係

職 名 事務職員 氏 名 小川 明衣子

① 渡航期間

令和元年9月24日(火) ~ 令和元年9月29日(日) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 タイ)

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

訪問機関等名:日本貿易振興機構バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所愛知県バンコク産業情報

センター Director

訪問機関等名:Chulalongkorn University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

Nattakarn

Chamsuwanwong

Global Academic Affairs Division

Non-Degree Unit Head of Unit

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訪問機関等名:Nagoya University Bangkok Office

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya

Chenchittikul 名古屋大学バンコク事務所 Deputy Director

Nattha

Phetcharat 名古屋大学バンコク事務所

Administrative

Assistant

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 在タイ日本国大使館 一等書記官

訪問機関等名:独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター 副センター長

濱端 悠祐 独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター 国際協力員

訪問機関等名:Kasetsart University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division

Foreign Relations

Officer

Kornkanok

Wangbenjaporn International Studies Center, Office of the Registrar

Management and

Administrative

Officer

訪問機関等名:Mahidol University

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Theeta

Rojnkureesatien International Relations Division

International

Relations Officer

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別紙2

⑤ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

日本貿易振興機構バンコク事務所(JETRO) 日本貿易振興機構バンコク事務所では、バンコク事務所

ではミッションに基づき、貿易促進活動、企業進出サポー

ト、タイ企業の日本への誘致を行っている。タイに企業進

出が続くのは、設備されたインフラ・外資優遇政策、通商

政策・地政学的な優位性など魅力があるため。

年数回、セミナーを開催しタイ企業が日本進出へするこ

とへの補助も行っている。

タイへの企業進出が進む要因は、整備の整った工業団地、

大規模な空港がある点や、外資優遇政策、通商政策を進め

ている点、メコン地域の中心に位置するという地政学的な

優位性などが挙げられた。

また、「タイランド 4.0」という中所得国の罠を回避する

ため、持続可能な経済成長の実現を、目指すタイ政府の政策についてお話を伺った。タイ政府は「タ

イランド 4.0」を加速させるため、先行的に東部3県に東部経済回路(Eastern Economic Corridor:

ECC)を設置し、産業を誘致することを決定した。さらに、ECC を実現させるために、空運・道路輸

送・鉄道輸送等の交通インフラを重点的に投資することを予定している。タイが、ASEAN 諸国の中

でも中心的な国とされるのは、地形を生かした政策を着実に進めている点にあるのだと学んだ。

Chulalongkorn University チェラロンコーン大学は 1917 年に創立されたタイ最古の国立大学であり、19の学部と274の

専門コースがある総合大学である。学内は広く、キャンパス内は無料のシャトルバスや、学生も利用

可能な電気自動車導入されていた。広報活動も多岐にわたり、Facebook、LINE、Twitter といった

SNS メディアを活用している。最新のニュースは、はやく、広く周知できる点から、Web が推奨さ

れている。一方で、紙媒体でも広報活動は行われていた。ニーズにあった情報提供が大切であると感

じた。

タイの大学入試制度 TCAS についても、説明があった。TCAS とは年に5回種類の異なる方法で入

学試験を実施する制度である。1回目は学力試験を実施しないポートフォリオによる入試、2回目は、

地域を限定とした特別入試、3 回目は、受験者が同一の試験を受け、入学を希望する大学へ出願する

入試(ダイレクトアドミッション)4回目は、受験者が同一の試験を受け、4つの大学へ優先順位を

つけ、出願する入試方法、優先度が高い大学から合否判定がされる。5回目は、大学ごとに行う独自

の入試方法である。チュラロンコーン大学は4回目の入試で定員が満員になるため。5回目は例年実

施されないという。このことからも、チュラロンコーン大

学がタイ国内で人気であることが伺えた。

また、タイでは奨学金制度も学生が大学を選ぶ重要な観

点であるため、入学する前から申請できるもの、入学後に

も申請できるものなど、様々な形式の奨学金制度が整備さ

れていた。

チュラロンコーン大学の魅力は、伝統のある大学のため

同窓会同士が独自のネットワークを持っている点。都市に

位置するため施設が充実している点。が挙げられた。所属

大学の魅力を学外者に話せることは職員として大切なこ

とだと実感した。

Nagoya University Bangkok Office 2014 年4月にチュラロンコーン大学内に設立された。名古屋大学とタイの教育機関との交流の促

進・イベントの開催、学生派遣活動、教育機関とのコラボレーションの促進サポートといった名古屋

大学とタイの教育期間を繋げる活動を行なっている。

スタッフは、助教のウィラヤー氏と、事務職員のナッター氏の2名が常駐で運営している。タイに

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は無人の事務所も合わせて、約50の日本の大学の事務所があり、定期的に会議を行い、それぞれが

抱えている問題やタイの情勢についての情報共有を行なっている。

在タイ日本国大使館 在タイ日本大使館では、大使館の役割・タイの概観・日本とタイの友好関係についてお話を伺った。

在タイ日本大使館の仕事は、日本人の保護・日本とタイとの関係構築・国際社会での協力の3点が挙

げられた。大使館は、総務部・政務部・領事部・経済部・国際機構部・広報文化部の6つの部に分か

れており、それぞれが役割を持って大使館を運営している。

タイの気候は雨期(6月〜10月)と乾期(11月〜5月)と分か

れている。面積は約51万平方キロメートルと日本の約1.4 倍の面積

がある。農業に使える土地は、日本の10倍と言われている。人口は

約7,000万人で首都であるバンコクに約 860 万人が生活してい

る。農村部と都市部には経済格差がある。タイ国民はほとんどが仏教

徒であり、国王は仏教の保護者という立場である。ASEAN 諸国の中

でも発展し、豊かな国とされているタイでは、経済成長が停滞気味で

あり、先進国のワナに陥ることを懸念している。

タイと日本の友好関係は、600年以上の交流関係があり、伝統的

に友好関係が維持されている。貿易に関しては、日本への輸出の割合

は、9.3%と世界第3位であり、日本からの輸入割合は、14.5%で

あり、世界で第2位となっている。タイから日本への留学生数は、

3,962 人(2018 年)であり、英語で学べる大学が少ないため、タ

イの学生は日本の大学への留学を敬遠する傾向がある。

大使館の役割からタイの国内の概要を幅広く学ぶことができた。

独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター 日本学術振興会バンコク研究連絡センターは、日本

学術振興会の3番目の海外研究センターとして平成

元年に開設された。日本人4名、タイ人1名で運営し

ている。主に広報活動や同窓会(JSPS 同窓会)の取

りまとめ、シンポジウムの開催、現地大学との共同研

究、研究者交流等の学術国際交流活動等を行ってい

る。同センターでは、タイとの共同研究をマッチング

する際には、NRCT(タイ学術研究会議)の協力を得

て実施している。現在、タイでは日本の自然科学系の

共同研究機関とのマッチングを望んでいることがわ

かった。

また、日本学術振興会バンコク研究連絡センターで

は、大学職員の海外実も研修の場として、国公私立大学等の職員を対象に、「国際協力員」としてセン

ターでの実務等に携わることにより、学術国際交流の専門的職員育成を行なっている。実施センター

は、ワシントン、サンフランシスコ、ボン、ロンドン、ストックホルム、ストラスブール、バンコク、

北京の8センターがある。

Kasetsart University カセサート大学は、タイ1943年に創

設された、農学系の国立大学である。学生

数は約 60,000 名の大学である。

学生支援も充実しており、KU Happy

Center という保健センターがある。KU

Happy center では、病気(体調不良)、

学習障害、身体不自由、聴覚障害、視覚障

害、言語不自由、統合失調感情障害といっ

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別紙2

た、主に7つの症状に対応している。その他にも、学生相談も行なっており、月に 100 人程度の学生

が訪れる。個別対応として、身体不自由の学生には車椅子の貸し出しや、聴覚に障害がある学生には、

補聴器の貸し出しを行い、快適な学生生活を送れるように補助し、試験の際には個別に試験会場を設

け、一人一人に適した環境を提供している。また、うつ病に関するセミナーを定期的に開催し、うつ

病でない人もうつ病に対して理解を深める場を提供している。規模の大きな大学だからこそ、細かな

サポートが必要となるのだと学んだ。

奨学金制度は様々なタイプがある。同窓会や企業が支出する、奨学金や、生協と連携して支払われ

る奨学金、大学の利益の一部を使用した奨学金、政府からの奨学金などが挙げられた。いずれも全て

無償のため返金する必要はない。ただし、給付学生は大学の行事の手伝いを大学から依頼されること

がある。

カセサート大学には、独自の健康保険がある。民間の保険会社を使用せず、大学内で運営している。

年間 100 タイバーツを支払えば学年を問わず、同一の手当てが受けられる。

一方で、学生ローン制度は、タイ政府が運営している。対象となるのは、親の収入が20バーツ以

下の学生、または国内で求められている分野を学習している学生が制度利用の対象者となる。低金利

で借りられ、就職後に返済すれば良い制度となっている。支給される金額は 2,400 タイバーツ/月で

ある。

カセサート大学の学生が留学をするにあたり、気にしていることは、奨学金制度であるため、奨学

金制度の充実はタイの留学生を増やすために必要なことだと感じた。

広報活動として、カセサート大学の Web サイトは英語とタイ語に対応している。Facebook を学

部ごとに使用し、学部内の詳細な情報を発信している。その他に、大学の冊子を作成し、協定大学へ

定期的に送ることもある。

カセサート大学は、「Green Campus」を魅力としており、図書館も自然に優しい作りとなってい

る。

Mahidol University マヒドン大学は、タイの国立大学であり、194

3年に初めての医科大学として創設された。キャン

パスはバンコクを中心に、4つ有している。現在は、

16学部、9つの研究所、5つのカレッジ、5つの

センターを有する総合大学へと発展した。大学内を

移動するために、学内バスも運用されていた。

大規模な大学のため、広報活動も活発だった。広

報部が本部に設置されており、広報総括担当、web

担当、写真担当、デザイン担当に担当を分け、大学

について情報発信をする。発信は、ホームページ、

Facebook などの SNS が主流である。ホームペー

ジは、タイ語と英語に対応しているが、タイ語を英

語に翻訳するため、一番新しい情報はタイ語で発信

され、英語での情報発信に時差が生じる。また、学

部ごとにホームページがあり学部の詳細について

は学部のホームページを確認することを推奨して

いる。もちろん、紙媒体でも広報活動をしており、

毎月ニュースレターを大学内で発行している。発行

部数は約3,000部に及び、付属病院にも配布して

いる。学外向けには3ヶ月に1度英語で発行されて

いる。

様々な広報活動の中でも一番興味を惹かれたの

は、YouTube を使用した広報活動である。マヒドン大学では「Mahidol channel」という独自のチ

ャンネルを開設し、マヒドン大学の情報を全世界に発信していた。現在2,403 本の動画が投稿されて

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おり、チャンネル登録者数は67.4万人に上る。子供向けチャンネルもあり580本の動画と29万

人のチャンネル登録者がいる。このチャンネルは外注であるが実際にマヒドン大学に所属する教員が

登場する。こうした広報活動はマヒドン大学を親しみやすいイメージを与え、YouTube を活用する

ことで、全世界に24時間体制で広報活動していることになる。

文化体験 最終日は、バンコク市内の文化施設を視察した。

⑥ 研修により得られた成果

⑦ 本学への提言

⑧ 感想

本研修に参加し、2つの成果を得られた。

1つ目に、学生の多くはインターネットを使用して大学の情報を集めるため、インターネットを使用

した広報活動が、これから留学生を獲得するためには欠かせないとことがわかった。特に、奨学金制度

について留学生の関心は高いため、留学生用の奨学金制度の充実と留学生にとってわかりやすく、充実

したホームページが必要だとわかった。

また、大学のチャンネルを作り動画投稿することは、実際の日本での生活や授業の様子を知ることが

でき、留学への実感が湧くため、良い広報になるのではないかと感じた。

2つ目は、他大学の職員とそれぞれの大学の事情や情報を共有することができた。所属大学以外に目

を向けることで改めて、所属大学について考え、視野を広げることができた。

参加者がそれぞれの研修テーマ・目的を持って研修に参加することで、新たな視野が広がり良い刺激

になりました。一方で、質問時間が不足することや、回答が機関によって得られないことがあったため、

共通の研修テーマがあった方が良いのではないかと思いました。

また、事前に研修参加者の質問事項を日本語で共有できると、より効率的に質疑応答が進められるの

ではないかと思いました。

今回の研修を通じて、自分が今まで目の前の業務に必死で、所属大学以外に目を向けていなかったこ

とを感じました。タイで訪問した大学でのお話はもちろん、一緒に研修に参加したメンバーの話は新鮮

でした。

また、グローカル化が進む中で実際に現地へ行き、日本の大学にタイの学生が何を望んでいるかを聞

くことができたことは、とても貴重な経験だと思いました。

最後に、今回の研修に参加する機会をいただけたことに感謝申し上げます。

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別紙2

注)研修者ごとに作成し、名古屋大学教育推進部国際連携課国際総務係宛に提出願います。

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別紙2

2019年度事務職員の海外研修報告書

令和2年 1 月 14日 名古屋大学 事務局長 殿

大学・所属 三重大学学務部入試チーム 職 名 事務職員 氏 名 磯田 恭之

① 渡航期間

令和元年9月24日(火) ~ 令和元年9月29日(日) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国 A-1 タイ

③ 参加者氏名等(本人含む、派遣当時)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

・タイ国内の大学入試制度や入試業務等について知見を深める。

・タイ国内大学における学生支援業務に関する取り組みについて学ぶ。

・タイ国内大学等の国際化に向けた取り組みについて学ぶ。

⑤ 訪問機関等 (敬称略)

訪問機関等名:日本貿易振興機構バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所愛知県バンコク

産業情報センター Director

訪問機関等名:チュラロンコン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Sukalin Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

Nattakarn

Chamsuwanwong

Global Academic Affairs Division

Non-Degree Unit Head of Unit

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訪問機関等名:名古屋大学バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya Chenchittikul Deputy Director

Nattha Phetcharat Administrative

Assistant

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴

一等書記官

訪問機関等名:独立行政法人日本学術振興会バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大

副センター長

濱端 悠祐 国際協力員

訪問機関等名:カセサート大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division

Foreign Relations

Officer

Kornkanok

Wangbenjaporn

International Studies Center, Office of the

Registrar

Management and

Administrative

Officer

訪問機関等名:マヒドン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Chonlada

Prommachartsuntorn

International

Relations Officer

Izsaya Wattanaviboon International Relations Division Educator

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別紙2

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

JETRO バンコク事務所【9/25 訪問】

JETRO バンコク事務所は、74 ある JETRO

海外事務所の中で最大規模を誇っており、日

本企業の海外進出サポートやタイ・ASEAN

地域企業の日本への進出支援、インバウント

向けの訪日観光客支援などの業務が行われ

ている。また、事務所内には愛知県が駐在員

事務所「バンコク産業情報センター」を設置

しており、愛知県内の企業に特化した海外支

援のサポートなども行われている。

ここでは、愛知県から出向されている鈴木様

にタイの一般概況や経済状況、海外企業との

ビジネスマッチングなどについてご説明い

ただいた。

・タイの経済状況について

現在、新興国から抜け出した後に経済成長が停滞する「中所得国の罠」といった状況に陥っていると

されている。タイ経済の現状は、産業別 GDP シェア 9%の第一次産業に全就業者の 31%が占める非

効率な経済構造となっている。また、近年のバーツ高や賃金の上昇の影響などにより、より低コスト

を求めタイ以外の ASEAN 周辺国へ工場の進出が進んでいる。今後は、産業の高度化を図ることが急

務とされており、タイ政府は、「タイランド 4.0」という経済政策ビジョンを掲げ、東部経済回廊(EEC)

の整備や各種恩典政策を行っている。

チュラロンコン大学【9/25 訪問】

チュラロンコン大学は、1917 年にタイで最初

の大学として設立され、現在は学生数約 3 万

7000 人、19 学部・506 の専門プログラム(学

部課程 113・大学院過程 393)を有する総合

大学である。(うちインターナショナルプログラ

ムは 87 プログラムで実施。)大学内では、学内

を循環するバスの運行や学生へ電気自動車や自

転車の貸し出しが行われており、学生の利便性

向上だけでなく、環境面にも配慮した形となっ

ている。また、キャンパス内に商業施設やオフ

ィスなどからなる複合ビルを 2 棟所有してい

る。

・教務等について

授業について、80%以上の出席がないと単位認定の試験を受けられないとのことであった。また、

出席確認については、概ね日本と変わらない印象を受けた。

学部課程において、オンラインによる通信制の授業も多く行われているとのことであった。

・入試制度について

タイの大学では、2018 年度よりタイ大学統一入学制度(TCAS:Thai university Central Admission

System)という入試制度を導入しており、受験生には5つのラウンドが用意されている。

試験制度は、NIETS(The National Institute of Educational Testing Service)という政府機関が

決定し、高校教員を通して周知される。また、各大学も Web ページや Facebook 等を使い、各ラウ

ンドの募集要項を公表している。入試における事務職員の役割であるが、各ラウンドごとの定員を計

算し、要項を公表することである。

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—5つのラウンドについてー

第 1 ラウンド:筆記試験がなく、受験生の成績やポートフォリオによって選考が行われる。募集基準

は各大学が個別に定めている。

第 2 ラウンド:優秀な学生を確保するために、各大学が独自に定めた選考基準により行われる入試で

あり、居住地域を限定した定員枠等が設けられている。

第 3 ラウンド:直接入試と呼ばれ、NIETS が実施する O-Net、GAT/PAT、9つの主要科目テスト

の成績等を用いて選考を行う方式である。受験生は全国にある大学の中から 4 つの学部・学科を志望

することができるが、募集学部・学科は政府が力を入れている学問分野に限定されているようである。

第 4 ラウンド:第 3 ラウンドと同様、NIETS が実施する試験の成績等を用いて選考を行う方式で、受

験生は 4 つの学部・学科を志望することができる。日本のセンター試験に最も近い試験形態である。

第 5 ラウンド:各大学が独自に個別の試験を実施する方式である。なお、チュラロンコン大学では、

第 5 ラウンドは実施されていない。

名古屋大学バンコク事務所【9/25 訪問】

名古屋大学バンコク事務所は、タイや

ASEAN 諸国の学術活動等の拠点として

2014 年4月にチュラロンコン大学内に

開設された。

事務所には、ウィラヤー特任助教とナッタ

ー事務補佐員が常駐しており、名古屋大学

とタイの教育機関との交流促進活動や留学

生確保に向けた活動、教職員・学生の現地

サポートなど多岐にわたる業務を行ってい

る。

ここでは、お二人から業務内容や事務所運

営の課題、日本の他大学現地事務所との交

流(JUNThai)等についてお話を伺った。

・Japan University Network in Thailand (JUNThai)について

タイには日本の大学 50 校以上が現地事務所を構えており、各大学が情報共有や課題等の協議する場

として 2014 年 12 月、JUNThai が設立され、タイ国内の教育機関や日系企業から注目を集めてい

る。名古屋大学も創立メンバーとして参加している。

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別紙2

在タイ日本国大使館【9/26 訪問】

在タイ日本大使館では、文科省から出向されている久芳一等

書記官に大使館の役割やタイの概観(政治・外交・教育等)

についてお話いただいた。

大使館の役割は、①日本人の保護②相手国との関係構築③国

際社会での協力の3つで、在タイ日本大使館では、6 部門に

約 160 名(日本から職員 60 名、現地職員 100 名)の方が

勤務されている。大使館の役割として、日本人の現地での経

済活動を支えるための情報提供等も行っており、海外で経済

活動を行う際は一度相談に来てほしいとのことであった。

日本への留学生数は、英語のみで学ぶことのできる大学が日

本に少ないこともあり、2018 年現在で 3962 名(世界 9

位)である。大使館推薦へは、約 1000 人の応募があるとの

ことであった。

日本学術振興会バンコク研究連絡センター【9/26 訪問】

日本学術振興会は、学術研究事業(科研費助

成事業・二国間共同研究事業)や研究者の養

成事業(特別研究員・外国人研究者招へい事

業・論文博士号に対する支援)、学術研究で

の国際交流の促進などを行う機関で、海外に

11 の連絡センターを設置している。バンコ

ク研究連絡センターは 1989 年に設立さ

れ、現在は 5 名(日本人 4 名・タイ人 1 名)

で業務を行っている。同じフロアには、国際

交流基金、日本学生支援機構のバンコク事務

所も置かれている。ここでは、冨山副センタ

ー長と濱端国際協力員から JSPS やバンコ

ク研究連絡センターについての概要や国際

学術交流研修制度について説明いただいた。

また、当日はお会いできなかったが、三重大

学の臼井主任が国際協力員として派遣されており、身近な方が海外で活躍されていらっしゃることを

大変誇りに思った。

カセサート大学【9/26 訪問】

カセサート大学は、1943年に設立

されたタイで最初の農科大学であり、

現在は4つのキャンパスに29学

部・学生数約6万7000人を有する

総合大学となっている。三重大学もカ

セサート大学とは国際交流協定を締

結しており、交流活動を行っている。

訪問させていただいた Bangkhen キ

ャンパスは、学内に市場やキッチンカ

ーなどが出店しているエリアがあり、

学生などで活気にあふれていた。

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・学生支援体制について

①保険制度

カセサート大学では、学生が年間 100 バーツで加入することのできる健康保険を大学独自で運営して

いる。保険の対象となるのは、事故や病気(虫垂炎やデング熱など)、食中毒、ケガなどで、1 回あた

り通院の場合は 2000 バーツ、入院の場合は 8000 バーツの補償が受けられるとのことであった。

②奨学金制度

奨学金制度は、返済不要のものが 4 種類ある。奨学金の原資としては、「企業や同窓会等からの寄附金」、

「寄附金の預入利息」、「大学収入」、「政府」である。返済が不要である代わりに、大学の行事等に協

力することが条件となっている。

また、タイでは奨学金のほかに、低所得者層(年収 20 万バーツ以下)の学生向けに政府が運営して

いる低金利(1%)の学生ローンがあり、月 2400 バーツを貸与することができる。返済期間につい

ては、卒業後 15 年間である。

③障害のある学生への支援

身体に障害のある学生の把握については、入学時のオリエンテーションで行い、施設の改修などのサ

ポート体制をとっているほか、就職支援も行っているとのことであった。

メンタルヘルスで問題を抱えている学生については、「HAPPY PLACE CENTER」という支援セン

ターを設け、カウンセリング等の相談対応を行っており、毎月 100 人ほどの利用があるとのことであ

った。またこのセンターでは、学生向けに、うつ病などメンタルヘルスに問題を抱える学生へのサポ

ート方法について理解を高めるセミナーを行っているとのことであった。

マヒドン大学【9/27 訪問】

マヒドン大学は、17 学部・学生数 2 万 9 千

人を有する総合大学である。マヒドン大学は、

1888 年に設立されたタイで最初の病院であ

るシリラート病院が前身とされている。現在

は、6 つのキャンパス(Salaya・Bangkok

Noi ・ Phaya Thai ・ Kanchanaburi ・

Nakhorn Sawan・Amnaj Charoen)に

17 学部・2 万 9 千人の学生が学んでいる。

入試・広報面においては、大学 Web サイトや

Facebook 等の SNS を活用しているほか、

オープンキャンパスも実施されているとのこ

とであった。

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別紙2

・教務支援

授業について、80%以上の出席がないと単位認定の試験を受けられないとのことであった。出席確

認については、1 年生の必須授業では指紋による出席確認が行われている授業もあるとのことである。

e ラーニングによる授業も積極的に行われており、地方のキャンパスでもメインの Salaya キャンパス

と同じ授業が受けることのできるよう整備を進めているとのことであった。具体的には、大学の方針

として各学部が 1 つ以上の e ラーニングを行うことや、オンライン上でオフィスアワーやスクーリン

グができる掲示板の設置が挙げられる。この掲示板では、教員は学生からの質問に対し、時間内に回

答しなければならないといった決まりも設けられている。

・学生支援について

学生部では、「学生サービス」、「カウンセリング」、「学生寮の運営」の3部門に分かれて業務を行って

いる。

「学生支援」では、入学式・卒業式の運営や入学後のオリエンテーション、同窓会といった卒業後の

支援も行っている。「カウンセリング」業務では、マヒドンフレンズセンターを設置し、学生や教職員

カウンセリングを行っている。

①マヒドンフレンズセンター

マヒドン大学では、精神面での問題や様々なトラブルを抱える学生・教職員向けにマヒドンフレンズ

センターを設置しており、24 時間体制で相談にあたっている。相談は、窓口、Facebook、hotline

(電話)で受け付けており、毎年30~40 人ほどの相談があるとのことである。また、各学部にもカ

ウンセラーがおり、カウンセラーを通じて対応が必要な学生を把握することもあるとのことであった。

そのほかフレンズセンターでは、学費問題の相談も受け付けており、困っている学生には休暇中に学

内でアルバイト(日給 300 バーツ程度)をさせているとのことであった。

②障害学生への対応

障害を持った学生でも平等に学生生活が送れるよう、修学面でのサポートや施設のバリアフリー化を

行っている。伺った事例としては、目の不自由な学生には黒板の字を大きく書いたり、点字教材の使

用、テスト時間の延長やテスト問題の読み上げを行っているとのことである。また、就職支援も行っ

ているとのことであった。

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文化施設見学【9/28 訪問】

「ワットプラケオ・王宮」、「ワットポー寺院」を見学し、タイの歴史や文化に触れることができた。

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

研修のテーマとしていた 3 点(タイ大学の大学入試制度、学生支援業務、国際化に向けた取り組み)について、概ね知見を深めることができた。 今回訪問させていただいた3大学の学生支援や教務支援、国際化に向けた取り組みについては、本学(三重大学)よりも優れていると感じたものが多々あり、今後業務の中で参考にしていきたい。 また、タイ国内の一般概況や経済状況等について、ご説明いただく機会もあり大変勉強になった。

本学(三重大学)への提言として2点挙げる。 ・留学生受け入れ体制の充実 少子化の影響による学生定員の確保が、今後問題になると想定される中で、日本で学びたいと考えている優秀な留学生の受入れは必要不可欠であると考える。受け入れ体制の充実に向け、「英語で受けることのできる授業の増加」や「多様な入試制度の導入」、「奨学金の充実」、「卒業の就職支援といったサポート体制の充実」等を実施していく必要があると考える。 ・事務職員の国際化 留学生や外国人研究者の対応や海外協定校との各種やり取り等、大学の更なる国際化には事務職員の国際化を進めていく必要があると考える。今回参加させていただいた海外研修や語学研修を設けていただきたいと考える。

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別紙2

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、名古屋大学教育推進部国際連携課国際総務係宛に提出願います。

今回の研修で初めて訪れたタイ・バンコクであったが、街には高層ビルが建ち並び、MRT やBTS といった公共交通機関が発達しているなど想像していた以上に発展していました。一方で、昔ながらの市場など魅力ある場所や観光地も多数あり、日本人観光客が多く訪れているのではないかと感じました。 今回の研修を通して、タイは経済・外交・大学連携など様々な点で重要なパートナーであると感じました。特に大学連携といった点では、国内の 50 大学以上がタイに事務所を構え、タイを中心とした東南アジア地域で研究交流や留学生確保などの取り組みをされており、三重大学は遅れを取っていると感じました。海外に単独で事務所を構えることは難しいかと思いますが、複数の大学(他の国公立大や県内の大学)と連携し事務所を設置することができれば、大学のさらなる国際化につながるのではないかと思います。 また、この研修では、自身の語学力のなさを痛感する場面が多数ありました。この反省を活かし、自身の語学力(英語)向上に取り組んでいきたいと思います。 最後になりますが、このような研修の機会を与えてくださった、名古屋大学教育推進部国際連携課や三重大学企画総務部人事労務チームの皆様、研修中帯同いただきお世話いただいた名古屋大学バンコク事務所の方々にこの場を借り感謝申し上げます。

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別紙2

2019年度事務職員の海外研修報告書

令和元年10月31日 名古屋大学 事務局長 殿

大学・所属 愛知教育大学・教務課 職 名 副課長 氏 名 古川 ゆう子

① 渡航期間

令和元年9月24日(火) ~ 令和元年9月29日(日) 6日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(例 タイ)

A-1タイ

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学事務部門 学術情報部研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

タイの大学における学生への修学支援

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:日本貿易振興機構(JETRO)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 日本貿易振興機構バンコク事務所

愛知県バンコク産業情報センター Director

訪問機関等名:チュラロンコン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

Nattakarn

Chamsuwanwong Global Academic Affairs Division

Head of

Non-Degree Unit

訪問機関等名:名古屋大学バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Veeraya

CHENCHITTIKUL 名古屋大学バンコク事務所 副所長・特任助教

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Nattha

PHETCHARAT 名古屋大学バンコク事務所 事務補佐員

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 在タイ日本国大使館 一等書記官

訪問機関等名:日本学術振興会(JSPS)

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 日本学術振興会 バンコク研究連絡センター 副センター長

濱端 悠祐 日本学術振興会 バンコク研究連絡センター(東北大学) 国際協力員

訪問機関等名:カセサート大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Kornkanok

Wangbenjaporn

International Studies Center,

Office of the Registrar

Management and

Administrative

Officer

Pratthana

Thirakiettkun International Affairs Division

Foreign Relations

Officer

訪問機関等名:マヒドン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Chonlada

Prommachartsuntorn International Relations Division

International

Relations Officer

Izsaya Wattanaviboon Educator

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

はじめに(バンコク研究連絡センター資料参照)

・タイの教育制度:6-3-3-4制

小学校,中学校の義務教育に加え,1999 年の国家教育法により,国立高校も無償で教育を受け

ることができる。また,2009 年から,幼稚園・保育園の3年間も無償となり,小学校入学前から

高校卒業までの 15 年間,国立学校に通えば経済状況に関係なく平等に教育を受けることができる体

制が整っており,95%以上の人がこの制度を利用して教育を受けている。大学進学率については,

60%台だが,大学のレベルに大きな開きがある。

・学年歴:小・中・高5月~3月。大学8月~5月

・大学数:国立 84 校,私立及びカレッジ 72 校

・授業時間:1講義3時間。1日3コマ(9:00-12:00,13:00-16:00,17:00-20:00)

・タイへ留学するメリット:インターナショナルコースがあり,英語で講義を受けることができる。英

語圏よりも学費と生活コストが安く(日本の1/3)タイ語も学べる。また,日系企業も多く進出

しているため暮らしやすい。

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別紙2

■日本貿易振興機構(JETRO)

ジェトロバンコク事務所(愛知県バンコク事務所)は,世界で最も大

きな規模の事務所で,愛知県からの出向3年目となる鈴木氏より,ジェ

トロの主な業務及びタイの概況と ASEAN 経済について説明いただい

た。

【ジェトロの主な業務】

海外進出企業支援,現地の情報発信,海外企業の日本誘致サポート,訪日外国人観光客のインバウ

ンド等,日本(特に愛知県)経済の活性化のための支援を行っている。

【タイの概況】

・日本よりも少子高齢化が深刻

・人件費の安い周辺諸国へ労働者が流れており,経済が不安定

・タイ経済は,第一次産業(農業・漁業)の就業者の割合が 31%と

高いが,GDP(国内総生産)は9%と低く非効率な経済構造とな

っており,経済の高度化を図るためには第一次産業の就業者割合を

減らし,付加価値の高い製造業,サービス産業の就業者の割合を高

めることが急務。

・バンコク周辺部と地方の所得格差,貧富の差が大きい

タイは,他の ASEAN 諸国に比べ大規模な空港や舗装道路網,安定した電力供給等のインフラが整備

されており,企業へのサポート体制が充実している。また,日本人専用の医療機関や日本人学校が集積

していること,3000 店舗を超える日本食飲食店等の進出等,日本人の生活支援体制が整っていること

から,日系企業がタイへ進出する理由が納得できた。

■チュラロンコン大学

【大学の概要】

1917 年高等教育制度を確立するために創立された,タイで最も古

い歴史を持つ国立の総合大学。タイの東大とも言われ学生の学力は高

く,経済的に恵まれた環境の学生が多い。各学部・研究所所属の図書

館が 38 ヶ所あり,中でも中央図書館の蔵書数は 100 万冊以上。

・組 織:19 学部(教育学部あり),274 の専門コース

・学生数:約 37880 人(うち留学生 731 人)

・教員数:約 2950 人

・タイランキング 2019:2位

【学習支援】

・学部,課程ごとに e ラーニングを実施しており,一般対象のオ

ンラインコース(科目等履修)も開講している。アクセス数も

25 万人となり,60%の到達度で履修証明書が発行される。

【入試・広報】

・2018 年度入学者入試から,新入試制度(TCAS)を導入。年

5回異なる種類の入試を実施し,各大学がどの回に参加するか

選択。学生は志望校が参加する入試を受験後,合格し入学する

場合は,以降の入試は受験できない。

・広報は,SNS やフェイスブックを利用している。人気のあるプ

ログラムによって,使用する言語を分けている。

↑⼤学⽣が着⽤する制服

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また,大学の魅力については,同窓生の力があること,留学生によりネットワー

クが広がること,バンコクの都心にあり交通の便が良いこと,施設が充実している

こと,就職率が良い(大学枠がある)こと等が挙げられた。

今回時間の都合で,大学の施設を案内いただくことはできなかったが,トヨタや

デンソーなど日本の企業名が書かれた一人用の小型電気自動車が気になったため

調べてみたところ,タイトヨタ創立 55 周年とチュラロンコン大学創立 100 周年

を記念する共同プロジェクト(大学や駅など特定の場所で電気自動車をシェアする

ことで渋滞や大気汚染などの解決策を探る)で,2017 年 12 月から 2018 年に

かけて計 30 台導入された EV シェアサービスであることがわかった。ジェトロで

学んだ日本企業の取り組みを身近に感じた。

■名古屋大学バンコク事務所

名古屋大学バンコク事務所のウィラヤー副所長(特任助教)とナッター事務補

佐員から,事務所の設立や業務内容について説明いただいた。

バンコク事務所は,2014 年4月に協定校のチュラロンコン大学の中に設立さ

れ,ウィラヤー副所長とナッター事務補佐員の2名体制で,名古屋大学の学生や

教職員のサポートを行っている。

また,バンコクには 50 以上の日本の大学事務所が集結しているため,それぞ

れの大学が直面していることを協議したり,情報共有する場として,2014 年 12

月に設立された「JUNThai(Japan University Network Thailand)」の創立メンバーとしてボランテ

ィア活動等を行っている。

【主な業務】

・名古屋大学とタイの教育機関との交流の促進・イベント開催

・学生派遣活動

・教育機関と産業機関とのコラボレーションの促進

・名古屋大学の学生や職員・教員の現地サポート

・名古屋大学同窓会タイ支部のサポート

・日系機関・企業との友好関係の維持

タイに置かれている日本の大学の事務所は,多くの大学が協定校の中に設置されており,全ての事務

所に職員が常駐しているわけではないとのこと。事務所を設置することで,タイにおける大学の認知度

が上がり,留学生の受入や学生の派遣増加等の成果がある一方で,法人取得,常駐職員の雇用形態,費

用面等,運営面での課題が多いことがわかった。

■在タイ日本国大使館

文部科学省からの出向2年目となる久芳氏から,大使館の業務及び日本とタ

イの友好関係について説明いただいた。

バンコク大使館は,世界で3番目に大きく東南アジアの拠点となっており,

日本人(約 60 名)とタイ人(約 100 名)の職員が在籍している。日本にと

ってタイは,重要な戦略的パートナーで,東南アジア最大規模の日本企業の拠

点となっている。また,タイの挨拶である「ワイ(合唱してのお辞儀)」は,

日本の「礼」と共通する感覚があり馴染みやすい反面,経済面では日本とは全

く異なる格差社会となっている。

【大使館の主な業務】

①日本人の保護(旅券,証明書等の対応),②日本とタイの関係構築,③国際社会での協力

【タイの概況】

・一人あたり GDP 約 6600 ドル(日本:39000 ドル)

・一日あたりの賃金 約 310 バーツ(約 1100 円)

・食料自給率 200% 農業が強い(日本:66%)

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別紙2

・失業率1%(日本 2018:2.4%)

【タイと日本の友好関係】

・600 年以上の交流関係。タイ王室と日本の皇室の関係は緊密。

・日本への輸出割合(自動車等)9.3%(中国,米国に次いで3位)

ただし,生産労働人口が減少

・日本からの輸出割合(機械・自動車部品等)14.5%(中国に次

いで2位)

・年間訪日タイ人数 113.2 万人(2018 年)

※うち留学生数 3962 人

※大使館推薦の国費留学生 50 名(応募者 1000 名以上)

・年間訪タイ日本人数 154.4 万人(2017) ※うち留学生数 345 人

少子化が進むタイでは,東南アジアのハブ大学になることを戦略としており,日本からの留学生を送

り出して欲しいこと,また,大学の質を向上させるためにも,就職先と連携し,東南アジア留学生を確

保して欲しいとの要望があった。さらに,日本の大学生に対しては,海外で働くには英語は必須だが,

TOEIC の点数が高くても仕事では通用しない。自分の専門に関する英語の勉強と留学経験による日常の

コミュニケーションスキルを磨くことが重要とのアドバイスをいただいた。

■日本学術振興会(JSPS)

富山副センター長から,日本学術振興会の業務及びバンコク研究連

携センターの役割やタイとの共同研究(二国間交流事業)等について

説明いただいた。

バンコク研究連絡センターは,日本人4名(うち2名国際協力員),

タイ人1名の5名体制で,主に東南アジアでの広報活動や ASEAN エ

リアの同窓会のサポート,大学の国際化支援を行っている。

タイとの共同研究(二国間交流事業)では,高等教育とイノベーションを合わせ,農業等において,

即戦力がありすぐに役立つ(成果がでる)研究等を進めている。

【日本学術振興会の主な業務】

①学術研究の助成:科学研究費助成事業

(年間 75000 件の研究課題)

②研究者の養成:特別研究員,海外特別研究員,若手研究者海外挑

戦プログラム

③学術研究に関する国際交流の促進:外国人研究者招へい事業,論

文博士号取得希望者に対する支援事業

【国際学術交流研修制度とは】

・全国の大学や大学共同利用機関の事務職員を対象にした実務研修

制度

・任期2年(1年目:国内実務研修,2年目:海外実務研修)

・募集若干名(10 月中旬~12 月中旬,1月選考)

科研費に関する大学職員としてできる支援として,申請書の校閲だ

けでなく,申請内容に関する情報収集など,誰でもできる支援のしく

みづくりや採択されなかった場合の大学としての支援制度の整備が必

要であるとアドバイスいただいた。

また,東北大学から国際協力員として派遣されている濱端氏から,国際学術交流研修制度について説

明いただき,少ない人数で影響力のある仕事を行うため,語学力よりも「仕事力」が必要となる。「大学

のグローバル化は,事務職員のグローバル化から」ということで,この制度を多くの事務職員に広め,

是非チャレンジして欲しいとのアドバイスをいただいた。

バンコク研究連絡センターの HP で ご紹介いただきました。

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■カセサート大学

【大学の概要】

1943 年創立のタイで3番目に歴史のある,最初の

国立農科大学で,「農業,食物,技術,革新で世界一

の研究大学」をめざしている。2010 年から国際化の

強化を図り,世界の主要大学との学術交流,共同研究

活動などを支援している。

・組 織:28 学部(教育学部あり),4キャンパス

・学生数:約 68000 人(タイ最大の学生数)(留学生 577 人)

・教員数:約 2958 人

・タイランキング 2019:4位

【学生支援】

・メンタル的な問題を抱えている学生を支援する「HAPPY PLACE

CENTER」は,個人向けのカウンセリングだけでなく,周囲の学生の

ためのトークアクティビティやストレス解消の活動等,学生,保護者,

教職員向けの情報提供を始め,学生の心身や健康問題に関連する様々

なサービスを提供している。

・学生寮を改装して,肢体不自由学生が生活できる環境を整えている。また,授業支援として,車椅

子,拡大鏡,補聴器等の貸出しと,試験の別室受験や時間延長等の配慮を行っている。

【奨学金等】

・タイ政府が運営している「学生ローン基金(親の年間収入 20 万バーツ未満)」:月 2400THB。

使途は自由。超低金利で就職後に返済。滞納者(6割超)が多いため勤務先の給与から天引きし,

強制的に回収する計画が進められている。

・企業・同窓会等の寄附金:無償。返済なし。大学行事等のアルバイトを依頼する。

・健康保険:大学が運営(他大学は民間保険会社へ委託)。学生一人あたりの掛け金 100THB。

通院時は 2000THB,入院時は 8000THB が支払われる。

【留学生】

・タイの学生は,どこの大学に留学したいかではなく,奨学金の有無で留学先を決定している。

・留学生を支援する窓口として,International Studies Center が設置されており,国際化の強化に

向けた様々なプログラムを実施している。また,様々なイベント(インターナショナルフードフェ

ア等)を催し,留学生が交流する機会を設けている(日本人留学生 97 人)。

大学の魅力については,農科大学ということもあり,グ

リーンキャンパスが挙げられた。さらに,リサイクル活動

にも力を入れているとのことで,Carbon Foot print(商

品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るま

でのライフサイクル全体を通して輩出されるCO2の排出

量を算定し,商品やサービスにわかりやすく表示する仕組

み)を表示するモニターが設置されていた。

また,構内には大学構内とは思えないほどの屋台やキッ

チンカーが並び,多くの学生で賑わっており,とても活気があった。

■マヒドン大学

【大学の概要】

1888 年に設立されたシリラート病院を起源として,1943 年タイで

初めて設置された国立の医科大学。現在は,総合大学へ発展。1986 年

に英語による学士課程プログラム「Mahidol University International

College / MUIC」を設立する等、国際交流にも力を注いでいる。

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別紙2

・組 織:16 学部,9研究所,5カレッジ,5センター

・学生数:約 29200人(留学生 1358 人)

・教員数:約 3900 人

・タイランキング 2019:1位

【学生支援】

・「マヒドンフレンドセンター」を設置し,精神科医が 24 時間体制で

カウンセリングサービスを行う等,学生の自立支援を行っている。

また,周囲の学生のトレーニングも行っている。

・年間相談件数各学部 30 人~40 人。各学部にスタッフを配置。

・自傷行為のある学生は,シリラート病院へ入院させる。

・企業の講演等の就職支援も行っているが,弱視の場合はコールセンター等,職種が限られる。

・障害学生支援として,テスト時間の延長,質問の読み上げ等を行っており,拡大器等の備品の貸出

し等,各大学ではいろいろ取り組んでいるが,タイ政府はそれほど力を入れていない。

・障害学生を支援する学生のボランティア制度がある。

・発達障害をもつ学生の発見については,トレーニングを受けた友達や教員が本人にセンターへ行く

よう促す。センターへ来た場合は,何度も面談を重ね,信頼関係を築き問題を解決していくが,セ

ンターに来ない場合はどうすることもできない。

【奨学金】

・タイ政府の低金利ローン(年利1%)は,親の所得や学期中の大学でのアルバイトが条件となる。

就職後 15 年以内に返済する必要があるが,就職できなかった場合は2年間猶予される。

・大学の奨学金は返済の必要なし。成績や経済状況等により各学部から1年ごとに推薦。優秀な学生

は,卒業までの4回推薦を受けることも可能だが,推薦枠は大学の予算によって毎年変動する。

また,災害に遭った場合や相談中に家庭が貧しいことが発覚した場合は,長期の休みに大学でアル

バイトをさせる。1日 300THB。

【修学支援】

・e ラーニングが充実しており,クラスに参加できない,ついていけ

ない学生は,e ラーニングを活用している。

・e ラーニングには,学生対象のスモールプライベートオンラインコ

ースと一般対象のオンラインコースがある。

・1年生の必修授業は,指紋スキャンで出欠を確認。

情報交換の後,無料で学内を移動できるトラムに乗っ

て,構内を案内していただいた。広大な敷地の中には,

コンサートホール(Prince Mahidol Hall)もあり,大

学の講堂としてだけでなく,コンサートや

イベント等でも活用されているとのこと

だった。また,構内に流れている川辺で,

キャンパス名物とされる「オオトカゲ」を

見ることができた。

■市内文化施設

地下鉄やスカイトレイン,水上バスを乗り継ぎ,王宮とワット・ポ

ー(涅槃仏寺院)に向かった。王宮ではタイ文化を象徴する煌びやか

な建物が立ち並ぶ中に,タイと中国の貿易が盛んだったこと思わせる

中国風の石像が多く目に付いた。これは,貿易を終え中国からタイへ

戻る船を安定させるために船底に置いた石像だとか。

途中,トゥクトゥクにも乗車することができ,施設だ

けでなくいろいろな体験をすることができた。

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⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

注)研修者ごとに作成し、名古屋大学教育推進部国際連携課国際総務係宛に提出願います。

タイ文化を通して歴史や経済,日本との関係等,目的以上のことを学ぶことができた。

まず,テーマとした修学支援では, e ラーニング講習や離れたキャンパス同士の遠隔講義が充実してお

り,中でも,クラスに馴染めない,大学の授業についていけない学生の支援策として e ラーニング講習が

活用されていたことは,とても有効だと感じた。e ラーニング講習は,学習成果や学びの質保証面であま

り良い印象がなかったが,学生支援の方法の一つとして考え直す機会となった。

障がい学生支援では,タイ政府はそれほど力を入れていないにもかかわらず,訪問した大学では様々な

取組がなされており,学生の不安やストレスを軽減するためのサポート体制や,当該学生の周囲の学生に

対するトレーニング等,本学が見習うべき取組が多数ありとても勉強になった

また,大学のグローバル化のために必要な留学生の確保については,英語による授業数を増やすこと,

受入条件の日本語能力試験レベルを下げること,大学独自の奨学金制度を設けること等,今以上に留学生

を支援する体制の整備が必要であると感じた。

参加者の選定について,語学力を問わないとのことで,今回,英語が得意ではない私が参加する機会を

いただいたが,先方の話をリアルタイムで全て理解することができなかったため,その場で質問をするな

ど,より詳しい情報を得ることができず残念だった。通訳を介してでは,情報交換に時間がかかり,先方

にも迷惑をかけてしまうので,英語ができる人が参加した方がよりよいのではと思った。また,今回のメ

ンバー7人中,男性が1人しかいなかったため,せめて同性が2人はいるような配慮も必要だと思った。

訪問先への手土産について,訪問先の大学で,手土産や昼食等を用意してくださったり,上位の管理職

が対応してくださったりと,こちらが恐縮するほど手厚く歓迎してくださるので,持参した手土産(各大

学の概要とお菓子)だけでは申し訳なく感じた。手土産(お菓子)を参加者で用意するのはもちろんだが,

参加大学としてもう少し検討(最低でも大学グッズは必要)した方がよいと思った。

初めてタイを訪問し,ビルの壁面や街の至るところに飾られた国王の写真(肖像画)や街中の祭壇の多

さに,タイの生活には国王(王族)と宗教(仏教)が深くかかわっていることを強く感じた。バンコクの

印象としては,大通り沿いは高層ビルやショッピングセンターが建ち並び,想像していたよりも都会的で

驚いたが,路地に入るとカットフルーツの屋台や問屋街があったりと,印象が全く異なり貧富の差を感じ

るほどだった。

訪問先の大学は,タイでもトップクラスに入る大学ばかりで,事務職員の英語も必須と伺った。対応し

ていただいた事務職員の方々も英語が堪能で,ほとんどの説明が英語で行われたため,自分の英語力のな

さと,学生の英語力向上方策を検討している立場として,改めて「大学のグローバル化は,事務職員のグ

ローバル化から」という言葉を痛感した。ちなみに,タイでは「男性は働かない」と聞いていたが,対応

してくださった大学職員は,管理職の方を含めどの大学もほぼ女性だった。

毎日の研修後は,メンバー全員で地下鉄に乗り込み,ナイトマーケットやショッピングモール等いろい

ろな場所に出かけ,見たこともない果物やタイ料理を堪能した。タイ

のゆったりとした生活を肌で感じることができ,とても充実した6日

間を過ごすことができた。

最後に,今回の研修参加にあたり,現地でサポートいただいたバン

コク事務所のお二人を始め,名古屋大学のご担当の皆さま,また,行

動を共にした6名のメンバーに,心より感謝いたします。

貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。

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別紙2

令和元年度事務職員の海外研修報告書

令和元年10月30日 名古屋大学 事務局長 殿

大学・所属 愛知県立大学 研究支援・地域連携課

職 名 主任 氏 名 松原 美里

① 渡航期間

令和元 年 9 月 24 日(火) ~ 令和元 年 9 月 29 日(日) 5 日間

② 研修タイプ及び番号、訪問国(A-1 タイ・バンコク)

③ 参加者氏名等(本人含む)

氏 名 所 属(部・課、係・担当等) 職 名

薛 恵善 名古屋大学 教育推進部 国際連携課 国際連携係 事務職員

杜 方可 名古屋大学 研究協力部 研究支援課 外部資金係 事務職員

小島 真理子 名古屋大学 文系事務部 経理課 研究支援グループ 事務職員

古川 ゆう子 愛知教育大学 教務課 副課長

小川 明衣子 岐阜大学 教育学部 総務係 事務職員

磯田 恭之 三重大学 学務部 入試チーム 事務職員

松原 美里 愛知県立大学 研究支援・地域連携課 事務職員

④ 研修テーマ

外国の研究機関を見ることで、共通点や相違点を知る。

日本、愛知県立大学について、外から見直す機会とする。

看護学部がナワミンタラティラート大学、愛知県立芸術大学がチェンマイ大学と交流があるため、

視察をすることで、今後の業務の参考としたい。

⑤ 訪問機関等

訪問機関等名:JETRO バンコク事務所

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

鈴木 太郎 様 JETRO バンコク事務所

愛知県バンコク産業情報センター Director

訪問機関等名:チュラロンコン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Ms. Nattakarn

Chamsuwanwong Global Academic Affairs Division

Head of Non-

Degree Unit

Ms. Sukalin

Wanakasemsan Global Academic Affairs Division Director

訪問機関等名:名古屋大学バンコク事務所

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対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Ms. Veeraya

Chenchittikul 名古屋大学バンコク事務所 副所長・特任助教

Ms. Nattha

Phetcharat 名古屋大学バンコク事務所 事務補佐員

訪問機関等名:在タイ日本国大使館

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

久芳 全晴 様 広報文化部 一等書記官

訪問機関等名:日本学術振興会バンコク研究連絡センター

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

冨山 大 様 副センター長

濱端 悠祐 様 国際協力員

訪問機関等名:カセサート大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Ms. Araya

Bijaphala International Affairs Kasetsart University Director

訪問機関等名:マヒドン大学

対応者及び

担当者氏名 所 属 役 職

Ms. Wanpimon

Senapadpakorn International Relations Division Director

Ms. Izsaya

Wattanaviboon Educator

(※カセサート大学、マヒドン大学については、多くの方がご対応くださったので、一部のみ記載した)

訪問機関等名:王宮、ワット・ポー寺院を見学

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別紙2

⑥ 調査・学習内容等(1 ページ以上)

【タイ王国について】

・人口:約 6,641 万人、バンコクに約 830 万人(12.6%)が集中している(2018 年タイ内務省)。

日本以上の少子高齢化社会。

・宗教:ほとんどが上座部仏教、一部イスラム教。僧の地位が非常に高い。信仰が厚く、最終日に訪れ

たエメラルド寺院では、多くの方が熱心にお参りをしていた。

・ASEAN の中心:タイは東南アジアの発展を主導してきた。ロケーションが有利で、東南アジアの

ハブとして、世界から注目されている。

・政治体制:国王を元首とする立憲君主制。2014 年のクーデターから軍事政権が続いていたが、2017

年タイ王国憲法の公布・施行、2019 年 3 月の選挙により、民主化した。ただし軍事政権の影響は

残っており、完全ではない。また、国王が代わり、過渡期であるといえる。

・格差社会:バンコクは経済が発展しているが、地方(国境周辺等)は貧困で、格差が広がっている。

教育や情報等にも差があり、貧富が固定されてしまう傾向にある。

・中所得国の罠:一方で、ある程度の経済成長したところで、成長が鈍化している。戦略の転換が必要

である。

政治、経済とも転換期である。

・医療大国:医療サービスや医療設備の水準が高い。メディカルツーリズムに力を入れている。

・日本との関係:タイ進出日系企業は 5,000 以上。日本飲食店の進出が続いている。タイ在住日本人

は 7 万人以上。日本にとって重要なパートナーである。

【タイの大学について】

・教育制度:日本と同様 6-3-3-4 制を導入している。近年高等教育の進学率が上昇している。

・入試:新しい入試制度(TCAS)が導入された。5 種の試験がある。1~5 の順に実施され、合格が

決まった者は、別の試験は受けられない。概要は以下のとおり。

1 ポートフォリオ:学習活動を始めとする活動のすべてをポートフォリオにまとめて大学に提出する。

2 クォータ(地域指定):大学が指定した地域のみ受験できる。共通試験の受験が必要。

3 直接入試:共通試験を受験し、大学に出願する。

4:Admisson:共通試験を受験し、センターに提出する。専門知識の試験がある。

5:大学独自:各大学独自の試験を受験する。

また、別にインターナショナル学生の入試を実施している。

優秀な学生を獲得するために試行錯誤している。

・教務(特に e ラーニング):講義の e ラーニング化が始まっている。

チュラロンコン大学では、一般の人が受けられる e ラーニングが公開されている。受講後は、修了証

が発行される。

マヒドン大学では、欠席した学生、復習が必要な学生等が、後から受講できるようになっている。ま

た、学部によっては、他キャンパスでの講義に e ラーニングを取り入れているところもある。さらに

拡充するため、学部で 1 つ以上の e ラーニングコースをつくるよう取り組んでいる。

・学生支援:発達障害等の学生等への支援が充実している。

カセサート大学では、Happy Place Center を設置し、学生の支援を行っている。

マヒドン大学では、Mahidol Friends Center を設置し、専門のスタッフを配置している。メールや電

話による相談は、24 時間受けつけている。学部にもスタッフを配置し、Mahidol Friends Center が

教育を行っている。

・国際交流:日本への留学については、費用と言語が課題である。日本では、日本語による講義がほと

んどで、英語コースの整備はできていない。世界で活躍するためには、英語が必要不可欠と考えられて

いるため、英語コースのあるところへの留学を希望する。

・研究:研究資金等について、直接の意見交換はできなかった。大学案内や Web サイトを見ると、研

究資金の獲得、学際的な研究等に力を入れていることが確認できる。

例えば、マヒドン大学では、以下の 3 分野に特に力を入れている:医学及び健康科学、先進技術、強

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い(レジリエンス)社会。学際的研究を行い、地域、国際的に、社会・経済発展に貢献している。

プロジェクトの一例:すべての血清型のためのデング熱の抗体、ドライバーの眠気アラート、低侵襲の

ロボット手術等。

・広報:複数言語による Web サイトの整備、SNS の活用、ニューズレターの発行等、大学の魅力や

研究・教育の成果の発信が充実している。基本的には、タイ語・英語による発信であるが、内容によっ

て中国語を取り入れる等、ターゲットを定めて広報を行っている。

【日本学術振興会国際学術交流研修について】

大学職員等を対象として、専門的な職員の養成のため、国際学術交流研修を行っている。1年間の東京

本部での研修の後、1 年間「国際協力員」として海外実務研修を行う。

日本学術振興会は、9 か国 10 か所に海外研究連絡センターを設置し、学術研究における国際交流の

支援を行っている。(アメリカ(ワシントン、サンフランシスコ)、ドイツ、イギリス、スウェーデン、

フランス、タイ、中国、エジプト、ケニア、また、ブラジルには海外アドバイザーを設置)

【海外拠点について】

50 以上の日本の大学がタイに海外拠点を持っており、JUNThai(Japanese University Network

in Thailand、在タイ日本大使館や日本学術振興会バンコク研究連絡センターも参加)において情報共

有・交換やネットワークづくりを行っている。一方で、撤退する大学も少なくない。

海外に資産を持つことを検討した際、海外に拠点があればスムーズかもしれないと考えたことがあっ

た。しかし、名古屋大学バンコク事務所では、法人格がなく、契約等ができないため、テレビ会議シス

テムのネットワークの契約がとても高額で煩雑だったと聞いた。雇用や日本との情報共有等課題があ

る。

⑦ 研修により得られた成果

⑧ 本学への提言

⑨ 感想

各大学の魅力、優れた取り組みを知ることにより、自らについて見直すきっかけとなった。また、課

題を共有することができた。

タイは、協定や交換留学はあるが、少し遠いというイメージであった。国際化が進むなかで、タイを

拠点として、東南アジアさらには世界各国とつながる可能性があると知り、タイは重要な国であると

感じた。

タイと日本の関係、社会や経済において共通する課題を学び、重要なパートナーであることを認識し

た。現在の友好な関係を維持しながら、お互いの発展・課題解決のために、さらに交流を深めていき

たい。

本学の国際交流活動の際には、いつもご支援いただき、ありがとうございます。現地事務所のかたに

も大変お世話になっております。今後も、東海地方の大学の国際交流において、ご支援・ご助言いた

だけたら幸いです。

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別紙2

注)研修者ごとに作成し、名古屋大学教育推進部事業推進課事業推進第二係宛に提出願います。

日々の業務において、英語(語学)の必要性を感じることが増えてきたが、今回の研修でもそれを痛

感した。JETRO、大使館、JSPS 等日本語での意見交換でも、話を聞くばかりになってしまった。

知識や経験の不足を感じた。自分の意見を持ち、発言できるようになりたい。

今回は、貴重な機会をくださりありがとうございました。研修メンバーのみなさま、サポートしてく

ださった名古屋大学のみなさま、ありがとうございました。そして、バンコク事務所のウィラヤーさ

ん、ナッターさんには本当にお世話になりました。心より感謝申し上げます。