2020 03 25 16.17.18...(第3種郵便物認可) 第1452号 2020年(令和2年)3月25日 16...

3
2020 年(令和 2 年)3 月 25 日 16 第 1452 号 (第 3 種郵便物認可) モノづくり革新をリードする計測・測定分野 「測定工程の進化とトレンドを探る」 「測定工程の進化とトレンドを探る」 30 30 使3 6 ジェービーエムエンジニアリング 執行役員 エンジニアリング営業部 部長 前田 弥生 氏 ベクトリックス 代表取締役 小長井 和裕 氏 マグネスケール 執行役員 計測システム事業部 事業部長 満田 寿 氏 マーポス 営業技術部 部長 樋口 幸一 氏 ミツトヨ 執行役員 研究開発本部 副本部長 阿部 誠 氏 10 紙面座談会

Upload: others

Post on 09-Jul-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 2020 03 25 16.17.18...(第3種郵便物認可) 第1452号 2020年(令和2年)3月25日 16 モノづくり革新をリードする計測・測定分野 「測定工程の進化とトレンドを探る」

2020 年(令和 2年)3月 25日 16第 1452 号(第 3種郵便物認可)

モノづくり革新をリードする計測・測定分野

「測定工程の進化とトレンドを探る」「測定工程の進化とトレンドを探る」測定人材の不足と自動化提案

――アナログからの転換、前提条件

が増え、3次元や真円

度測定機など一部を除

き、あらゆる計測・測

定機器を、自動化も含

めトータルに提案できる

ようになりました。人

材不足に対するソリュー

ションの引き出しが増え

たわけです。ただ改めて

現場を見ると、測定に

限らず加工もそうです

が、人手不足と同時に、

技術の継承が非常に難

しい状況にあると感じま

すね。

満田(マグネスケー

ル) 測定検査には高

度なスキルが要求される

側面があります。言い

換えれば特定の人にし

か任せられない測定が

あるということです。だ

からこそ人材不足解決

に絡んでは自動化とデ

ジタル化への移行がカギ

になるでしょう。現状で

は大手メーカーさんでさ

え、ちょっとした測定は

マニュアルでやるという

会社が多く、デジタル

化がなかなか進んでいま

せん。弊社の製品は単

体の測定デバイス中心で

すが、このような状況で

デジタル化によって測定

工数を削減しましょう、

省人化にもつながりま

すよという提案を進め

ています。仮に月産30万

個の全数検査が必要な

現場があるとして、デジ

タル化で一個当たり30秒

短縮できたとなれば、相

当な工数削減と生産性

向上が可能になります。

けれど実際には、膨大

な測定を人手で一生懸命

されている現場は今も

相当にあるということで

す。

小長井(ベクトリッ

クス) おっしゃるよ

うに現場はまだかなり

アナログですよ。私ども

では測定機器のデータ

を、メーカーを問わす、

また出力方式でデジマ

チックとRS―232C

の違いを問わず、すべて

無線で集め一元管理して

活用する商品の製造販

売に特化していますが、

この商品が使える前提

条件は、測定機器がデ

ジタルであることと、測

定データを出力できるこ

となんです。

 

だからデジタル化の動

きは高い関心をもって見

ていますが、実際のとこ

ろ遅れている。その一つ

には、厳しい言い方だけ

ど、現場がデジタル移行

に抵抗している面があり

ます。いわばジョブ・セ

キュリティ(雇用保障)

の絡みですね。大昔の話

になるけど、駅の改札で

パパパッと名人芸で切符

を切っていた職員が自動

改札になっていなくなっ

た。それに似た状況を想

像し恐れるような、職

場を守ろうという意識

が現場にあるように思い

ます。まあ大手だと効

率的な配置転換を行な

うのだろうけれど、現場

からは抵抗するように

「デジタルにしてモノが

測れるほど簡単な仕事

じゃないよ」といった意

見もよくお聞きします。

前田(JBMエン

ジニアリング) 弊

社はCAMベンダーとし

てスタートして以降、今

はロボティクス、3Dプ

リンター、計測関連と事

業を展開していて、私も

いろんな現場を見ます

が、特定の加工工程で、

ある種ステータスを伴う

仕事はあったし、特に測

定工程は生産技術でも

優れた技術者が担うと

いうことが続いたかと思

います。しかし今は、そ

ういう方も、もういな

くなってきたなという印

象ですね。技術の継承

が難しいとの話が出まし

たが、今は測定器のメモ

リが読めない若い方も現

場にいらっしゃる。ノギ

スの構造が分かっていな

いとか。現場の若い人に

基礎を教えた経験もあ

ります。

本紙 現場で測定値が

読めないってあり得ます

か?(ありますねと複

数の声)

樋口 パソコンからス

マホの時代に移行し、

キーボードさえ叩くこと

が減っているのにアナロ

グのメモリを読むなんて

あり得ない、そんな感覚

も広がっていますよね。

そういう意味では、人が

自ら測る部分は無くな

らないと思いますが、自

動化し、無人化する領

域は今後もっと広がると

思います。加工機から

加工機へロボットがワー

クを渡し、その過程に

計測ステーションがあっ

て、そこで自動測定を

行ないたい。そういうお

引き合いは現実にいま多

くいただいています。た

だ一方で、自動化はいら

ないから安くしてという

声もやはり相当残ってい

ます。

阿部(ミツトヨ)

弊社は創業時のマイ

クロメータの開発以降、

ずっと現場の測定という

ことに関わっています。

デジタル化は過去から世

界の最先端を走る形で

ノギス、マイクロメータ、

その他スモールツールと

進めてきました。開発

当初は機械の中のクーラ

ント液や油などの環境が

ネックでしたが、その後

はクーラント液にずぶず

ぶ漬かっても機能できる

ようになり、工程の中で

手軽に扱えるようにな

りました。

 

測定人材については、

皆さんのお話とともに、

日本の大学で測定、計

測、精密の名がつく講座

や研究室、それから学

部もほとんど無くなって

いることを危惧します。

これは教育の現場から

産業界への人材供給とい

う点でも、また人材育

成という観点からも問

題です。弊社としてビ

ジネスとはまた別の視点

で、教育を通じた測定

人材の育成に長年取り

組んでいますが、教育の

見直しということも大

事でしょうね。

 モノづくりの品質保証に欠かせない計測・測定分野で進化と革新が進む。高精度・高スループット

といった基盤技術の進歩もさることながら、自動測定の拡がりやインライン化・オンマシン化等によ

る前後工程を含めた工数削減などに市場の関心が高い。さらに各種測定データやモニタリング技術を

活用しての機械監視、検証、解析等も「計測・測定分野」が担う事業として定着方向にあり、CAD

情報と連動しての測定パス生成の大幅効率化、リバースエンジニアリングの提案も浸透しだした。

 こうした現実を平たく言葉にすれば、従来の計測・測定の定義はもう狭義の捉え方で、実際のビ

ジネスは計測・測定の枠を超え、大きく広がりを見せるようにも映る。

 そこで革新の断面図を探ろうと、測定分野の有力企業幹部に集まってもらい、最近のユーザーニー

ズやソリューションのトレンド、今後の課題など様々を語り合ってもらった。

                         (3月6日、都内ホテルで実施/進行・本紙)

ジェービーエムエンジニアリング執行役員 エンジニアリング営業部        部長 前田 弥生 氏

ベクトリックス 代表取締役 小長井 和裕 氏

マグネスケール執行役員 計測システム事業部     事業部長 満田 寿 氏

マーポス 営業技術部部長 樋口 幸一 氏ミツトヨ

執行役員 研究開発本部副本部長 阿部 誠 氏

ジェービーエムエンジニアリング

執行役員エンジニアリング営業部部長前田 弥生氏

ベクトリックス 代表取締役 小長井

和裕氏

樋口(マーポス)

 

少子高齢化で人口自

体が減っているので、ど

の業界も人手が足りな

い状況が続くと思います

が、測定工程の人手不

 産業界で人手不足が深刻だ。特に測定工程で人材不足感が強いとの指摘を

多く耳にする。そんななかで測定メーカー各社は、自動化提案に余念がない。

まずはこの人材不足のテーマから座談会を進めた。

足については弊社にとっ

て追い風と捉えていま

す。つまり省人化の提

案がやりやすくなってき

ている。弊社はこの10年

ほどでグループ会社の数

紙面座談会

Page 2: 2020 03 25 16.17.18...(第3種郵便物認可) 第1452号 2020年(令和2年)3月25日 16 モノづくり革新をリードする計測・測定分野 「測定工程の進化とトレンドを探る」

2020 年(令和 2年)3月 25日17 第 1452 号 (第 3種郵便物認可)

マーポス株式会社

マーポスフレキシブルソリューションOPTOFLASH オプトフラッシュは小型のシャフトやボルトなどを迅速に広範囲で品質管理でき、サイクルタイムはわずか2秒で100の静的測定を高速で実行することが可能な2D光技術に基づいた精密測定ソリューションです。工場における使用を想定した構造により、測定室生産現場に最適なソリューションです。OPTOFLASH オプトフラッシュは工場において高い生産性を サポートします。

広 がる計 測の可能 性

ベクトリックス 代表取締役 小長井

和裕氏

関心事にオンマシンと非接触

――二進一退の繰り返しにピリオドか?

データ一元管理が改革のベースに

――5G時代到来で、一気呵成の有効活用へ

本紙 機上測定と非接

触を話題にしましたが、

ほかに測定分野で新しい

変化などは?

満田 弊社マグネス

ケールの測定デバイス

は、加工機や組立ライ

ンの中での採用ととも

に、ポストプロセス計測

にもご使用いただいてい

ますが、最近多いのは

データの生値が欲しいと

いうご要望ですね。そ

こでPLCやPCに大容

量の測定データをいかに

高速で上げていくかが私

どものテーマになってい

て、各種オープンネット

ワーク(EtherNet/IP

、 EtherCAT

、PROFIBUS

等)への対応を図りなが

らお客様のご要望にお応

えしようとしています。

お客様がラダーレスでプ

ログラムを組む傾向にあ

るなど、トレンドの変化

を注視しながらの取り組

みです。

前田 (測定分野以外の

ソフト含め)オープンネッ

トワークにぶら下がるア

プリケーションを提供す

る当社としても、オープ

ンネットワークの動向は

気になります。

満田 オープンネット

ワークを用いて測定器と

PLCをつなげる場合に

必要なソフトウェアを提

供していくことが重要で

す。動きは5G時代に

なって加速するでしょう

ね。本紙 

話にでた「測定

の生値が欲しい」という

のは、全数検査のエビデ

ンスが要るから、といっ

た理由ですか?

満田 抜き取り検査で

も今はOK/NG判定

で終わるのではなく、生

データを分析して、変化

点管理、傾向管理をした

いという流れが強まって

います。

樋口 私どもは欧米の

自動車大手との付き合い

が長いのですが、計測結

果を残すための統計処理

は必須で、実際にはユー

ザーごとに考え方が違う

から、各ユーザー向けに

カスタマイズした統計ソ

フトを何十年も前からつ

くってきました。対して

日本のユーザーは「統計

など必要ない」という時

代が続いたけれど、Io

Tが言われ出し、膨大な

データを溜めて活用でき

る環境となって、日本も

ここに目を向けるように

なっています。

小長井 測定データ

をいかに活かすかは、日

本でもこれからの大きな

テーマです。先ほど申し

上げたように、我々ベク

トリックスでは、あらゆ

る測定データを無線で収

集して一元管理する装置

の開発販売に特化してい

て、余談ですが、日本精

密測定機器工業会の正会

員で唯一、測定機を作っ

ていないのが弊社なんで

す。

 

で、測定機を作ってい

ないからどの測定機メー

カーの商品も扱えるとい

う奇異な立場を利用し

(笑)、測定データをいか

に管理するかというニッ

チな部分に取り組んでい

て、ようやくこの数年で

すよ、測定結果をPCに

取り込み検査表を出す

というビジネスがモノに

なってきたのは。それ以

前は名のある大手さんし

か買わなかった。IoT

がいわれ、また中小製造

業、町工場の経営者の世

代交代が進むようになっ

て使ってもらえるように

なりました。お話にあっ

たように、抜き取り検査

で合否判定するだけでな

く、データを生かすとい

う流れが、大手から中小

へようやく広がりだした

と思います。

阿部 データの出力に

ついては、当社のデジマ

チックも公開しているの

で、採用されている他社

さんはいらっしゃいます。

小長井 細かく言い

ますと、RS―232C

という出力方式ひとつを

とっても、測定器メーカー

毎にプロトコルやデータ

フォーマット等のデータ

形式の違いがあって、一つ

のパソコンのデータシート

に入力できないという問

題があります。そこで私

どもの独自の送信機(商

品名テレメジャー)で統

一したデータ形式にデジ

マチックも含めて変換し、

無線送信することで、こ

の問題を解決しました。

 

分かりやすく喩えで

利点をいえば、健康診断

の結果を即座に出せると

いったソリューションにな

ります。というのも、健

康診断では血圧や血糖値

など項目別に、データを

個別のPCで管理してい

て、そのデータを次の段

本紙 機上計測をはじ

め、従来の計測・測定と

は異なる効率的なプロセ

スを求める動きは具体的

に広がっています。

阿部 測定ハンドツー

ルは以前から工程の中で

使っていただいています

が、3次元や画像のよう

な大きなシステム測定機

は、加工ラインなどから

離れた恒温の測定室に

鎮座していて、そこで選

ばれたオペレーターが測

定を担当するという形

が長らく標準でした。し

かしモノづくりのスルー

プットが上がり、また品

質情報の工程へのフィー

ドバックを早くしようと

いうなかで、タクトタイ

ム的にこのスタイルでは

難しいことがあり、段取

りの途中や工程間、さ

らに突きつめてオンマシ

ンで測定をしようという

流れになっているわけで

す。もっともこれは今に

始まったことでなく、私

が入社した若い頃からの

テーマでした。また当時

と違ってパソコンの動作

が速くなり、記憶媒体の

容量も大幅に上がった結

果、かねてからのテーマ

がやりやすくなってオン

マシン測定などの機運が

上がっているわけです。

本紙 機上計測だけで

も、やり方や目的はさま

ざまですね。

樋口 当社の場合、イ

ンプロセスゲージの定

寸装置を研削盤に搭載

し、オンマシンで計測

するという提案を設立

(1952年)当初から

やっていて今も得意分野

です。ただ工作機械も

いろいろあるわけで、例

えばマシニングセンタを

使った金型加工などで

も、機械精度が上がって

いるからそのまま機上で

計測しようとの動きがこ

の10年ほど出ているわけ

ですが、実際にはCAM

メーカーさんとのノウハ

ウ共有が必要だったり、

補正加工のニーズにどれ

だけ対応できるかなど難

しい面があります。

小長井 次工程へ渡す

のに最低限のチェックを

しようと、ノギスで工作

機械の中のワークを測っ

てみるといったことは以

前からあったわけで、実

は機上測定はずうっと昔

からやっているわけです。

今日ここでは自動化・効

率化との絡みでの話に

なっていますが、一方で

品質保証への対応という

問題も残るし、何をどん

な機械で作っているかで

計測・測定の形も変わっ

てきますよね。機上計測

の形はさまざまです。

前田 そういう意味で

は、測定機メーカーさん

は品質保証に関わる仕

事をされていますが、当

社はそこまでいかず、機

上計測の結果に基づいて

ダイレクトに切削パスの

経路補正をするという工

程改善や、あるいは最終

工程に負荷を掛けない為

のオンマシン計測を、ソ

リューションとして提供

しています。機上での測

定は温度環境その他を

考えると精度が出せるわ

けはなく、やはり最後は

測定室で測るべきであっ

て…。

阿部 工作機械は主に

鉄でできていて、加工で

生じる熱や環境温度の

影響を受けて公差許容

域を上回って膨張しがち

です。だからこの対策に

工作機械メーカーが取り

組み、一方で測定機器も

頑張って補正をかけ、温

度変化の問題を可能な

限りクリアにしてきまし

た。でもワークも同じよ

うに伸び縮みしているわ

けで、ワークの温度変化

にまで対応できるかとな

ると、現状なかなか上手

い方法がなく、おそらく

個別に対応しながら、限

られた範囲で測定値を

活かすということになる

かと思います。

満田 その温度変化に

関しては、弊社も同じ

ような認識を持っていま

す。ワークは概ね金属で

すし、弊社の製品の素材

はほぼ同じ膨張係数を

持つ金属で出来ています

から、温度変化による測

定誤差という課題につい

てはクリアできていると

思っています。それと測

定器に内蔵されているセ

ンサの特性変化も非常に

重要です。つまり特性変

化にどれだけ耐性を持っ

ているかという意味で

は、弊社の測定器は一般

の現場環境で使用が可能

だといえます。ただおっ

しゃるように機上測定は

なお難しい点が多く、限

界があります。マーケッ

ト的にもオンマシン測定

は盛り上がったり、やや

下火になったりを繰り返

している感じですよね。

 一方で機外測定のニー

ズも増えていて、弊社で

も、先の国際ロボット展

で、ローダーでワークを

運ぶ過程において、ロボッ

ト先端のグリッパーに側

長センサを組み込み、つ

かみながら測るという提

案を行い好評でした。

本紙 最近の話題とし

て「非接触測定」もマー

ケットの関心を集めてい

ます。

満田 これも機上測定

に似ていて、盛り上がっ

ては下火になっています

ね。阿部 

そう、繰り返し

ていますね。

前田 非接触の保証精

度が上がってきて、どこ

までもっとやれるかとい

う感じにはなっています

が。満田 

冷静に見て、接

触と非接触の組み合わせ

はこれから増えてくると

思います。

阿部 その通りですね。

本紙 それは、接触・

非接触の複数の測定器を

利用する方法で?

マーポス 営業技術部部長樋口

幸一氏

マグネスケール執行役員計測システム事業部事業部長

満田

寿氏

 デジタル化・自動化が普及しない現実も浮かんたが、それでも測定の場をニア

ライン、インライン、オンマシンと加工ライン/生産設備のより近くで行い、工

数と時間を縮減させる取り組みは積極化している。関心の高い機上計測(測定)

を中心に、やはり活用が広がる非接触測定について話を聞いた。

 測定方法の変革と同時に、大容量の測定データを多方向

に活かす動きも現場サイドで広がっている。この動きは5G

時代を迎えて加速すると思われるが、どうなのか。

ミツトヨ執行役員研究開発本部副本部長

阿部

誠氏

前田 いや、一台に双

方の機能があって、金型

だと曲面は非接触のス

キャン機能を使って確認

し、穴はタッチで、と。

阿部 当社でいえば、

さまざまなタイプの3次

元測定機に、非接触レー

ザーセンサーを取り付け

たハイブリッドタイプな

どがあります。また、あ

まり活字にならない非接

触の実績を言えば、誰が

使っても測定機が壊れる

ことはないと、実は東南

アジアの日系メーカーさ

んからの採用がかなり早

かったですね。接触式だ

と、先端をガチャンとぶ

つけて、300万円の損

失なんてこともあるわけ

ですから。そういうリス

クがないという利点も非

接触にはあります。

樋口 当社もインプロ

セスゲージの業界などに

非接触タイプを提供して

いて、ラインアップも大

幅に増やしています。シ

リコンウエハだと、接触

式で傷をつけるわけには

いかないから非接触を望

まれるし、話に出たハイ

ブリッドタイプをご提案

する例も多いですよ。た

だ非接触はワークの汚れ

に弱いうえ、塗膜など

の厚みもネックになりま

す。そこを個別にクリア

にしていくことは欠かせ

ません。

阿部 私はたまたま光

学スキャナーのISO規

格開発をやっているので、

非接触式についていろん

な話を聞いたりデータを

みていますが、確かに非

接触の精度は上がってい

ます。ただ国内で提案す

ると、どこかで使って成

功したところはあるの?

とまず聞かれる(笑)。

誰かが使うのを待って、

上手くいけばウチもとい

うスタイルが多いようで

すね。

満田 そう、よく聞き

ますね。

前田 そう、私が勤務

する名古屋だと、○○社

が採用と分かれば皆さん

パッと投資態度を変えて

(笑)。いやまあ、それは

そうとして、非接触の精

度が上がる中で新たに使

える分野、またそうでは

ない分野、よく考察して

採用すべきでしょうね。

満田 非接触の人気が

数年ごとに盛り上がっ

ては下火になるというの

は、非接触を上手く使っ

て成功したところと、そ

うではないところが常に

あるからだと思います

ね。例えば自動車向けに

新しいコンポーネントが

生まれ、測定を非接触に

変えてうまくいったとこ

ろは非接触を継続して導

入するけど、そうでない

と接触に戻る。今は精度

が上がった分、一気に普

及という期待もあります

が、個人的には同じ歩み

が今後も続くような気

がします。

階で個人別にまとめると

いう2段構えになってい

る。時間がかかるんです。

あらゆるデータを無線で

送って一つにまとめられ

れば効率はうんと上がり

ます。

 

で、そうするために弊

社では測定機器メーカー

をひとつひとつ回って、一

社一社頭を下げて(笑)、

出力仕様を聞いて対応し

ていったんです。そんな

ことをやる会社は他にな

く、このビジネスは今の

ところ世界で当社だけで

すよ。

満田 汎用性の高いイ

ンターフェースというの

は、測定機器メーカーに

とっても大変有難いと思

います。実はメーカー間

同士では個別でのつなが

りは広がっていて、例え

ば弊社はマーポスさんの

機器につながる製品があ

ります。

前田 でもそういうこ

とは普段、測定機メー

カーさんはオフィシャル

におっしゃらないですよ

ね(笑)。

測定が、非測定分野を改革する

――トレーサビリティを犠牲にした事業も

 測定機器メーカーの提案は広がり、展示会などでも前後工程

を組み合わせた「ライン全体の効率化」提案などがよく見られ

る。また工程監視などの領域でも事業拡大が進んでいるようだ。

本紙 さて、本来の計

測・測定からは若干離れ、業界ではマシンモニタリ

ングやインスペクション

の分野に活躍の場を見

出そうとの動きもでてい

て、成果も伝えられてい

ます。

樋口 私どもマーポス

では、グループ傘下に加

わった企業の技術資源を

ベースに、例えば圧力や

振動などからプレス機

械の状態を監視するシス

テムや、切削加工やマシ

ン、工具をモニタリング

するシステムを強化して

います。これらはミクロ

ンオーダーでなになにを

測るといったことではな

く、工程を監視して最終

的な製品や部品がどうい

う圧力や工具で加工され

たかをトレースするとい

うもので、ドイツやイギ

リスの航空機関連の加工

では、こうやって工程の

トレーサブルを残すのが

必須になっています。日

本でもようやくこうした

マシンモニタリングが意

識され、およそ2、3年

前から、インダストリー

4・0やIoTへの関心の

高まりとともに採用が増

えています。工具磨耗や、

機械異常を事前に検知

するシステムの提案も増

やしています。

 

また、当社はイタリア

本社ですが、日本では古

(次頁に続く)

Page 3: 2020 03 25 16.17.18...(第3種郵便物認可) 第1452号 2020年(令和2年)3月25日 16 モノづくり革新をリードする計測・測定分野 「測定工程の進化とトレンドを探る」

2020 年(令和 2年)3月 25日 18第 1452 号(第 3種郵便物認可)

う。実は、ジェネレーティ

ブデザインもトポロジー

最適化も言葉として流

行っていますが、誰も実

践していなくて、ソフト

はあるけど絵に描いた餅

です。ソフトの可能性を

布教活動しながら、創

造的なモノづくりに使っ

てもらう、そこに貢献し

たいですね。

満田 私どもマグネス

ケールでは、それぞれの

アプリケーションに対応

したシステムの提案を行

なっています。そのため

にいくつかのモジュール

を商品化していて、例え

ば弊社の測定器と他の

センサ(アナログ系)の

信号を完全同期させる

システムや、カムシャフ

トの位相角が正確に計

測できるシステムなどを

通じ、特定分野へのソ

リューションを展開して

います。

本紙 取り組みは多岐

にわたるようですが、こ

こで視点を変え、こう

した新規の取り組みと、

測定機メーカーが担い、

守ってきたトレーサビリ

ティの常時確立というこ

とを対峙させると、違っ

た議論が生まれそうで

す。

阿部 ミツトヨは計量

トレーサビリティにしっ

かり根づいた測定が最も

得意な領域であってきた

わけで、そこに照らして、

オンマシンやラインの中

の測定となると、多少語

弊があるかもしれません

が、トレーサビリティを

少し犠牲にしても実現し

たい、といった形になっ

てしまいます。けれど一

方、現場で測定値を集め

ることでインスペクショ

ンなどに貢献するのは可

能なわけです。そこで結

果的に品質保証に欠か

せないトレーサビリティ

から離れるのは悩ましい

けれど、お客様のニーズ

を聞きながら是々非々で

ソリューションを提供す

る、それが今のやり方と

いう判断になっています。

 

そんななかで新たな

チャレンジには、センサ

やコンポーネント、ソフ

トウェアの品揃えが非常

に大事になります。長い

歴史の中で生んだ数々の

自社製品をモジュール化

したり、アッセンブリし

て対応するところもある

でしょうし、同時にアラ

イアンスや協業関係が重

要になってくると見てい

ます。

本紙 その部分では、

やはりアライアンスを

もっと広げられる?

阿部 どれだけドラス

チックに広げるかは経営

判断ですが、業界の傾向

として広がるのは間違い

ないでしょうね。

満田 弊社の場合も、

基準の原器を持っている

会社として同じジレンマ

があります。それでもお

客様のご要望にお応えし

て、インラインでの計測

環境を改善しましょうと

いう提案をせざるを得な

い状況にあります。

本紙 話題に上がった

機上測定などで、ユー

ザーが品質保証を確保

できるといった誤解を持

つ恐れはないのでしょう

か?阿部 

機上測定だと温

度条件を犠牲にしてしま

うので、例えば出荷の検

査表には使いにくいけれ

ど、工程改善には役立ち

ますと、そのあたりはミ

ツトヨの責任としてしっ

かり説明しています。

 

ただ業界を見渡すと、

品質保証との関係が曖昧

なままで、商品やシステ

ムが流れているケースも

指摘されています。

前田 お客様の運用面

まで責任は持つ必要はな

いということは言えるん

でしょうが。

満田 それはお客様

がクオリティチェーンマ

ネージメントをどれだけ

トレースする覚悟がある

どうかにも関わってくる

問題です。

◇――――◇

本紙 話は尽きません

が、もう時間が迫ってき

ました。最後に改めて今

後の抱負などを。

小長井 モノづくりは

モノ測りという言葉が

あって、測定の重要さは

今後も強く認識される

と思います。そんななか

で測定機を作っていない

測定機関連メーカーだか

らこそできる事業を推進

し、測定業界と製造業、

そして社会に貢献してい

きたいですね。

前田 私どもは一気通

貫のモノづくりをテーマ

にしていますが、他方、

レーザー積層マシンなど

もやっていて、これまで

の捨てる除去加工に代え

て付加加工を提案すると

か、付加加工を金属加

工だけでなく全くの異業

種、極端な話それが例え

ば建築やアパレルとか向

けにも提案できるんじゃ

ないかといったことを考

えています。と同時に、

測定に近いところでは、

パソコンを介してできる

ことが広がっているので、

測定や解析のビジネスを

進め、先ほど申し上げた

新しい提案にも挑戦した

いですね。

樋口 申し上げたよう

に製品ラインアップが増

え、計測測定に関わるこ

とであれば、接触、非接

触、あるいは非破壊検査

と提案できることが増え

ています。すべての業界、

すべてのお客様のニーズ

に沿ってソリューション

を提供できると考えてい

て、がんばっていきます

よ。阿部 

ミツトヨは、日

本にある日本の測定機

メーカーとして、これか

らも断トツの商品と断ト

ツのソリューションを提

供し、日本のモノづくり

に貢献していきます。

満田 ミツトヨさん、

やはり格好いいですね

(笑)。私どもはローカル

5Gのインフラが今後ど

のように整備されていく

かを見極めています。A

Iについても昨今、安価

なAI用ハードウェアと

開発キットが提供される

ようになり、それを使っ

てマシンダウンタイムの

削減に寄与する自己診

断機能を併せ持つような

ものを検討しています。

そうしたソリューション

を含め、場合によっては

今回の座談会出席の皆様

と最適な測定環境を作

り上げていければと思い

ます。

本紙 皆様、本日は有

難うございました。

こで視点を変え、こう

る、それが今のやり方と

いう提案をせざるを得な

工程改善やマシンモニタリング、インスペクション…

工程改善やマシンモニタリング、インスペクション…

計測・測定分野発で新たなソリューションが増加中

計測・測定分野発で新たなソリューションが増加中

れていますが、狙いの方

向はまた少し違う面もあ

る?前田 

測定機メーカー

さんが基本、品質保証の

部分を狙うとすれば、私

どもはそうじゃなくて

もっと革新的な、例え

ばジェネレーティブデザ

イン(人が無意識にとら

われる慣習などを超え

た斬新な形を、人間と

コンピュータが共同で作

り出すデザイン)の提供

といったものを狙いたい

と思っています。例えば

皆さんのテーブルにある

コップも、既成概念でこ

うした形と決めてきて

そうなっているわけです

が、もっと違う、機能的

なデザインに変えられる

かもしれない。そこを、

寸法的なものはどうすべ

きでしょうと測定機メー

カーさんに相談しなが

ら追っていければと思い

ます。そうやって新しい

モノづくりを日本として

創造していくべきでしょ

で確認して肉を盛ると

いった状況です。そうし

た状況に対し弊社では、

3DCADも測定機も

ソフトもお持ちだから、

だったらつなげて正確に

合理的に修理をやりま

しょうよと。これが今の

提案の第一歩ですね。

本紙 すると、計測測

定を新たな事業の柱にさ

損や磨耗した部分をCA

D上の理論値(CADモ

デル)と比較し修正する

のにこのソフトを活かす

と。冒頭でデジタル化の

遅れの話がでましたが、

大手自動車メーカーでも

修理はまだ目視です。金

型や治工具や部品などの

ここが磨り減っている、

ここが壊れていると目視

い機械を大事に使うとい

う風潮もあるので、そう

した古い機械にも対応で

きるモニタリングシステ

ムを、デバイスメーカー

さんといっしょになって

提供できればと思います

ね。本紙 

JBMEさんは、

米国製の測定関連のソフ

トをベースに、3次元C

ADを使ったリバースエ

ンジニアリングや、CA

Dの製品製造情報(PM

I)と連動した測定経路

生成でタクトタイムを上

げるといった提案を進め

ていますね。

前田 そういう形で貢

献したいとは思います

が、いまおっしゃったの

はいわばCMベースでの

うたい文句であって、リ

バースや測定に活用する

には、実際にはハードが

こなれていないと難しい

面があります。現実的

にはメンテナンス面での

貢献が大きいですね。欠

(前頁からの続き)